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JP2006261219A - 半導体発光素子 - Google Patents

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JP2006261219A JP2005073248A JP2005073248A JP2006261219A JP 2006261219 A JP2006261219 A JP 2006261219A JP 2005073248 A JP2005073248 A JP 2005073248A JP 2005073248 A JP2005073248 A JP 2005073248A JP 2006261219 A JP2006261219 A JP 2006261219A
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Abstract

【課題】 高濃度にp型ドーパントを含んだコンタクト層を最上層とする半導体発光素子において、上記コンタクト層からのドーパント拡散を効果的に抑制し、高輝度且つ低駆動電圧であることに加え、半導体発光素子を駆動させる上で、経時的な発光出力の低下及び駆動電圧の上昇を未然に防止する構造を得る。
【解決手段】 半導体基板1上に、少なくともn型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5が結晶成長され、更にそれらの最上層に1×1019/cm3以上のp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層7が積層され、更にその上にITO膜8から成る電流分散層が形成された半導体発光素子において、前記コンタクト層7とp型クラッド層5との間に、V族元素としてリンを含み、尚且つ前記半導体基板1に対し結晶の格子不整合率が±0.3%以内であるIII−V族半導体で構成した緩衝層6を設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体発光素子に関わり、特に、透明導電膜を電流分散層に用いた高輝度半導体発光素子に関するものである。
従来、半導体発光素子である発光ダイオード(以下、LEDと略す)は、GaPの緑色、AlGaAsの赤色がほとんどであった。しかし、近年、GaN系やAlGaInP系の高品質結晶をMOVPE(有機金属気相成長)法で成長できる様になったことから、青色、緑色、橙色、黄色、赤色の高輝度LEDが製作できる様になった。
MOVPE法で形成したエピタキシャルウェハは、これまでに無かった短波長の発光や、高輝度を示すLEDの製作を可能とした。しかし、高輝度を得るためには、LEDのチップ面内に均一に電流が注入される様、電流分散特性を良くする必要があり、この目的で電流分散層の膜厚を厚く成長する必要があった。例えばAlGaInP系のLED素子では、電流分散層の膜厚を5μm〜10μm程度まで厚くする必要があった。このため、電流分散層の成長にかかる原料費用が多くなり、必然的にLED素子の製造コストが高くなって、AlGaInP系LEDを安価に製作する妨げとなっていた。
そこで、充分な透光性を有し且つ良好な電流分散特性を得られる電気特性を有する膜として、金属酸化物のITO(Indium Tin Oxide)や、ZnO(Zinc Oxide)を電流分散層に用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
金属酸化膜を用いた透明導電膜は、キャリア濃度が非常に高く、薄い膜厚で十分な電流分散を得ることができる。従って、このITO膜を電流分散層として用いれば、従来、電流分散層として半導体層を5μm〜10μm程度まで厚くしていた方法を必要とせず、その分のエピタキシャル層が不要となる為、安価に高輝度のLED素子、及びLED素子用エピタキシャルウェハを製造できる様になる。
特開平8−83927号公報
しかしながら、ITO膜を窓層に用いた場合、半導体層と金属酸化物であるITO膜との間に接触抵抗が発生してしまい、順方向動作電圧が高くなるという課題がある。すなわち、透明導電膜(透明電極)としてのITO膜はn型半導体であり、一方、これと接する上側クラッド層はp型半導体である。従って、LEDに対して順方向の動作電圧を印加すると、透明導電膜(透明電極)とp型クラッド層との間は逆方向バイアス状態となることから、結果として電流が殆ど流れない。
この解決策として、電流分散層とは別個に、コンタクト層として薄膜の高キャリア濃度層をITO膜と接する様に設け、トンネル接合により低電圧でLEDを駆動させる方法が考えられる。ここでコンタクト層は、例えば1×1019/cm3以上に高濃度にp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層である。
しかし、コンタクト層は、トンネル接合の目的を達成し且つできるだけ活性層で発光した光に対し吸収層として作用しないようにする必要がある。このため、コンタクト層は、高キャリア濃度層であると共に薄膜に形成する必要性があり、それが故に、成長時の熱等により容易にドーパント拡散を起こし易いという問題があった。このコンタクト層のp型ドーパントの拡散という問題は、次の2つの弊害を招いていた。
第1の弊害は、LED素子の出力低下を招くことである。コンタクト層から拡散したp型ドーパントはLED素子の深さ方向に濃度拡散し、LED素子の活性層にまで拡散すると活性層内の欠陥となる。その欠陥は非発光再結合成分となり、結果的にLED素子の出力が低下する。
第2の弊害は、LED素子の駆動電圧(順方向動作電圧)が上昇することである。p型ドーパントの拡散により、薄膜の高キャリア濃度層であるコンタクト層の実質的なキャリア濃度が低下することから、上述したトンネル接合が達成しにくくなり、トンネル電圧が上昇する。これによってLED素子の駆動電圧が上昇するのである。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高濃度にp型ドーパントを含んだコンタクト層を最上層とする半導体発光素子において、上記コンタクト層からのドーパント拡散を効果的に抑制し、高輝度且つ低駆動電圧(初期特性が良好)であることに加え、半導体発光素子を駆動させる上で、経時的な発光出力の低下及び駆動電圧の上昇(寿命特性の悪化又は信頼性の低下)を未然に防止する構造とした半導体発光素子を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1の発明に係る半導体発光素子は、半導体基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が結晶成長され、更にそれらの最上層(半導体層の最上層)に1×1019/cm3以上のp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層が積層され、更にその上に金属酸化物材料から成る電流分散層が形成された半導体発光素子において、前記コンタクト層と前記p型クラッド層との間に、V族元素としてリン(P)を含み、尚且つ前記半導体基板に対し結晶の格子不整合率が±0.3%以内であるIII−V族半導体で構成した緩衝層を具備することを特徴とする。
ここで、上記格子不整合率は、格子不整合率=(aepitaxial layer−asubstrate)/asubstrateの式によって求められるものである。但し、aepitaxial layerとはエピタキシャル層の格子定数のことであり、asubstrateとは、基板の格子定数のことである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の半導体発光素子において、前記電流分散層がITOであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の半導体発光素子において、前記電流分散層の膜厚Dが、(7/10)d≦D≦(13/10)d(但し、理想的な電流分散層の膜厚d=A×λ/(4×n)、A:定数、λ:発光素子の発光ピーク波長、n:前記電流分散層の屈折率)の関係式を満たし、更に定数Aが正の奇数であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載の半導体発光素子において、前記電流分散層が真空蒸着法か又はスパッタ法によって形成され、更にキャリア濃度が成膜直後の状態で8×1020/cm3以上であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載の半導体発光素子において、前記n型クラッド層、活性層、p型クラッド層が(AlXGa1-XYIn1-YP(但し、0≦X≦1、0.4≦Y≦0.6)で構成されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載の半導体発光素子において、前記コンタクト層の主たるドーパントがZnであり、更にそのキャリア濃度が1×1019/cm3以上であり、更に組成がAlXGa1-XAs(但し、0≦X≦0.2)であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6に記載の半導体発光素子において、前記コンタクト層の膜厚が1nm以上30nm以下であることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載の半導体発光素子において、前記緩衝層の膜厚が0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項8に記載の半導体発光素子において、前記緩衝層が発光波長に対し光学的に透明であることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項9に記載の半導体発光素子において、前記緩衝層がAlInP又はAlGaInPであることを特徴とする。
<発明の要点>
本発明の要点は、電流分散層にITO又はその他の透明導電膜を用い、更に上記電流分散層と接する様に高キャリア濃度の薄膜コンタクト層を備えた半導体発光素子において、上記コンタクト層と接する側の半導体層として、V族元素としてリン(P)を含むIII−V族半導体から成る緩衝層を、コンタクト層とp型クラッド層との間に設けた点にある。
上述したトンネル接合によりLEDを低電圧で駆動させる構造とするためには、p型コンタクト層が高キャリア濃度で薄膜であることが必要である。薄膜であり且つp型ドーパントが例えばZnが通常1×1019/cm3以上の高濃度にドープされることから、このコンタクト層からp型ドーパントのZnが拡散して弊害をもたらす。すなわち、p型ドーパントのZnがLED素子の深さ方向へ濃度拡散することでLED素子の発光出力低下を招く。また、コンタクト層のキャリア濃度が低下することとなり、駆動電圧(順方向動作電圧)の上昇を招く。
これらの問題の解決策としては、コンタクト層とp型クラッド層との間に、p型ドーパントのZnの拡散を抑止する緩衝層を設けるのが有効と考えられる。この材料として、例えばAlGaAsやAlAsは、発光波長に対し光学的に透明であり、且つAlGaInPなどの4元系材料と比べて結晶成長が容易で、更には発光部を構成するAlGaInP系材料との格子整合性がほぼ一致することから、LED素子の動作電圧を低くすることが可能な材料として、ここでも適用できるものと考えられる。
しかし、本発明者等が鋭意研究した結果、上記p型ドーパントの拡散による弊害の問題は、上記緩衝層を構成する材料が、V族元素としてAsを用いた発光波長に対し透明な半導体材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層などを用いたときに顕著であり、AlGaAsやAlAsは不適当であることを見出した。
そこで本発明では、高濃度にp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層とp型クラッド層の間に設ける緩衝層の材料にAlGaAsやAlAsを採用せず、次のように工夫している。
すなわち、第一の条件として、緩衝層には、活性層に対し透明なAs系材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層を用いずに、V族元素としてリン(P)を含むIII−V族半導体を用いる。これにより発光出力と駆動電圧に関して優れた初期特性と高信頼性を得る。
また、第二の条件として、緩衝層には、同じP系であるGaPなどの格子不整合系のワイドバンドギャップ材料を用いずに、半導体基板に対し結晶が格子整合するIII−V族半導体を用いる。これにより初期の動作電圧も低く抑える。
この両条件を満たすIII−V族半導体の具体例としては、発光波長に対し光学的に透明であるAlGaInPやAlInPがある。
本発明によれば、高濃度にp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層とp型クラッド層との間に、V族元素としてリン(P)を含み、尚且つ前記半導体基板に対し結晶が格子整合するIII−V族半導体で構成した緩衝層を設けているので、コンタクト層からのドーパント拡散を効果的に抑制し、高出力なLED素子を作製することができると共に、LED素子を駆動させる上で、経時的な発光出力の低下、及び駆動電圧の上昇を未然に防止することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例を中心に説明する。
図1に本実施形態に係る発光ダイオードの構成を示す。この発光ダイオードは、半導体基板であるn型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファ層2、n型AlGaInPクラッド層(単にn型クラッド層ともいう)3、アンドープAlGaInP活性層(単に活性層ともいう)4、p型AlGaInPクラッド層(単にp型クラッド層ともいう)5が順次に結晶成長されて発光部が構成され、更にそれらの最上層つまりp型クラッド層5上に、高濃度にp型ドーパントが添加されたAs系のp型AlGaAsコンタクト層(単にp型コンタクト層ともいう)7が積層されている。更にそのp型コンタクト層7上に、金属酸化物材料から成る電流分散層として、透明導電膜であるITO膜8が積層され、その表面側に表面電極9が、また裏面側に裏面電極10が形成されている。
上記n型クラッド層3、活性層4、p型クラッド層5は、(AlXGa1-XYIn1-YP(但し、0≦X≦1、0.4≦Y≦0.6)で構成される。
上記p型コンタクト層7はAlXGa1-XAs(但し、0≦X≦0.2)からなり、膜厚は1nm以上30nm以下であり、p型ドーパントとしてのZnが、キャリア濃度1×1019/cm3以上という高濃度に添加されている。
電流分散層であるITO膜8の膜厚Dは、(7/10)d≦D≦(13/10)d(但し、理想的な電流分散層の膜厚d=A×λ/(4×n)、A:定数、λ:発光素子の発光ピーク波長、n:前記電流分散層の屈折率)の関係式を満たし、定数Aは正の奇数である。この電流分散層であるITO膜8は真空蒸着法か又はスパッタ法によって形成され、成膜直後の状態で8×1020/cm3以上のキャリア濃度を有する。
そして、この発光ダイオードの特徴として、上記p型コンタクト層7とp型クラッド層5との間に、V族元素としてリン(P)を含み、且つ、半導体基板であるn型GaAs基板1に対し結晶が格子整合するIII−V族半導体で構成したp型緩衝層6を具備する。このp型緩衝層6は、具体的には発光波長に対し光学的に透明であるAlGaInP又はAlInPから成り、膜厚が0.5μm以上5μm以下に形成される。
この様に、p型緩衝層6に、活性層に対し透明なAs系材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層を用いずに、V族元素にP系で構成されたAlGaInP又はAlInPを用いることによって、優れた初期特性と高信頼性を得ることができる。また、同じP系であるGaPなどの格子不整合系のワイドバンドギャップ材料を用いずに、基板に格子整合するAlGaInP又はAlInP系材料によって構成することで、初期の動作電圧も低く抑えることができる。
<試作例>
本発明の効果を確認するため、以下の比較例1、2及び実施例1、2を試作した。
[比較例1:緩衝層にAlGaAsを用いた]
比較例1として、図3に示した構造の発光波長630nm付近の赤色LED用エピタキシャルウェハを作製した。エピタキシャル成長方法、エピタキシャル層膜厚、エピタキシャル構造や電極形成方法及びLED素子製作方法は、以下の通りである。
n型GaAs基板1上に、MOVPE法で、n型(Siドープ)GaAsバッファ層2(膜厚200nm、キャリア濃度1×1018/cm3)、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層3(膜厚400nm、キャリア濃度1×1018/cm3)、アンドープ(Al0.1Ga0.90.5In0.5P活性層4(膜厚600nm)、p型(Mgドープ)(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層5(膜厚400nm、キャリア濃度1×1018/cm3)、p型(Mgドープ)Al0.8Ga0.2As緩衝層6(膜厚2μm、キャリア濃度1×1018/cm3)、p型(Znドープ)Al0.1Ga0.9Asコンタクト層7(膜厚3nm、キャリア濃度7×1019/cm3)を、MOVPE法で、順次積層成長させた。
MOVPE成長での成長温度は上記n型GaAsバッファ層2から上記p型緩衝層6までを650℃とし、上記p型コンタクト層7は550℃で成長した。その他の成長条件は、成長圧力約6666Pa(50Torr)、各層の成長速度は0.3〜1.0nm/sec、V/III比は約200前後で行った。但し、p型緩衝層6及びp型コンタクト層7のV/III比は10とした。因みにここで言うV/III比とは、分母をTMGaやTMAlなどのIII族原料のモル数とし、分子をAsH3、PH3などのV族原料のモル数とした場合の比率(商)を指す。
MOVPE成長において用いる原料としては、例えばトリメチルガリウム(TMGa)、又はトリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、等の有機金属や、アルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)等の、水素化物ガスを用いた。例えば、上記n型GaAsバッファ層2の様なn型層の添加物原料としては、ジシラン(Si26)を用いた。上記p型クラッド層5の様なp型層の導電型決定不純物の添加物原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いた。但し、p型コンタクト層7のみはジエチルジンク(DEZn)を用いた。
その他に、n型層の導電型決定不純物の添加物原料として、セレン化水素(H2Se)、モノシラン(SiH4)、ジエチルテルル(DETe)、ジメチルテルル(DMTe)を用いることもできる。その他に、p型クラッド層及びp型緩衝層のp型添加物原料として、ジメチルジンク(DMZn)、ジエチルジンク(DEZn)を用いることもできる。
更に、このLED用エピタキシャルウェハをMOVPE装置から搬出した後、当該ウェハの表面、つまりp型コンタクト層7の表面側へ、真空蒸着法によって膜厚270nmのITO膜8を形成した。本構造では、このITO膜8が電流分散層となる。
この時、ITO膜蒸着の同一バッチ内にセットした評価用ガラス基板を取り出し、Hall測定が可能なサイズに切断し、ITO膜単体の電気特性を評価した所、キャリア濃度1.09×1021/cm3、移動度18.4cm2/Vs、抵抗率2.88×10-4Ω・cmであった。
そして、このエピタキシャルウェハの上面に、レジストやマスクアライナなどの一般的なフォトリソグラフィプロセスに用いられる器材と周知の方法を駆使して、表面電極9である直径110μmの円形電極を、マトリックス状に真空蒸着法で形成した。蒸着後の電極形成はリフトオフ法を用いた。上記表面電極9は、ニッケル(Ni)、金(Au)を、それぞれ20nm、500nmの順に蒸着した。更に、エピタキシャルウェハの底面には、全面に裏面電極10を同じく真空蒸着法によって形成した。上記裏面電極10は、金・ゲルマニウム合金(AuGe)、ニッケル(Ni)、金(Au)を、それぞれ60nm、10nm、500nmの順に蒸着し、その後、電極の合金化であるアロイ工程を、窒素ガス雰囲気中にて400℃に加熱し、5分間熱処理することで行った。
その後、上記の様にして構成された電極付きLED用エピタキシャルウェハを上記円形の表面電極9が中心になる様にダイシング装置を用いて切断し、チップサイズ300μm角のLEDベアチップを作製した。更に上記LEDベアチップをTO−18ステム上にマウント(ダイボンディング)し、その後、更にマウントされた該LEDベアチップに、ワイヤボンディングを行い、LED素子を作製した。
そして、上記の通りに作製されたLED素子の初期特性を評価した結果、20mA通電時(評価時)の発光出力0.95mW、動作電圧1.84Vという初期特性を有するLED素子を得ることができた。
更に、当該LED素子を常温、常湿の環境下にて50mAで駆動させ、そのまま168時間(1週間)の連続通電試験を行った。その結果、試験前の状態との相対比較値は、出力52%、動作電圧+0.06V(約3%増)となっていた。
また、LED素子作製直後の状態と、LED素子作製後、上記の条件で通電試験を行った後の状態のLED素子のSIMS分析を行った。その結果、通電試験後の本比較例1のLED素子では活性層内にまでp型コンタクト層のドーパントであるZnが拡散し、混入している様子が確認された。本比較例1に示したLED素子の素子ライフ、つまり信頼性が低下する原因はこのドーパント拡散によるものである。
[比較例2:緩衝層にGaPを用いた]
比較例2として、図3に示した構造の発光波長630nm付近の赤色LED用エピタキシャルウェハを作製した。エピタキシャル成長の方法、エピタキシャル層膜厚、エピタキシャル層構造やLED素子製作方法は、基本的に上記比較例1と同じにした。以下に上記比較例1とは異なる点を列挙し、それに伴い詳細な説明をする。
本比較例2では、p型緩衝層6にGaPを用いた。膜厚は比較例1と同じく2μmとし、キャリア濃度、及びドーパントも比較例1と同じに設定した。
次に、上記の様に作製したLED用エピタキシャルウェハを素子化するが、そのプロセスは上記比較例1と同じである。
この様に作製されたLED素子の初期特性を評価した結果、20mA通電時(評価時)の発光出力1.03mW、動作電圧1.96Vの初期特性を有するLED素子を得ることができた。更に、上記比較例1と同じ条件で通電試験を行った所、出力の相対値は102%、動作電圧+0.008V(約0.4%増)であった。
以上の様に、緩衝層に、活性層に対し透明なAs系材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層を用いずに、V族元素にP系で構成されたGaPを用いることによって、高信頼性なLED素子を得ることができた。しかしながら、GaPは基板、又はクラッド層などの4元系材料に対し、格子定数の不整合度が大きいことと、バンドの接合位置によって、大きなバンド不連続の関係となり、GaP/Pクラッド間に大きな電位障壁が生ずることから動作電圧が高くなってしまう。従って、P系材料であるGaPを用いることでLED素子の素子ライフは良好なものとすることができたが、LED素子の動作電圧自体は著しく高くなってしまった。
[実施例1:緩衝層にAlGaInPを用いた]
実施例1として、図1に示した構造の発光波長630nm付近の赤色LED用エピタキシャルウェハを作製した。エピタキシャル成長の方法、エピタキシャル層膜厚、エピタキシャル層構造やLED素子製作方法は、基本的に上記比較例1と同じにした。以下に上記比較例1とは異なる点を列挙し、それに伴い詳細な説明をする。
本実施例1では、p型緩衝層6に(Al0.8Ga0.20.5In0.5Pを用いた。膜厚は比較例1と同じく2μmとし、キャリア濃度、及びドーパントも比較例1と同じに設定した。すなわちp型(Mgドープ)(Al0.8Ga0.20.5In0.5P緩衝層(膜厚2μm、キャリア濃度1×1018/cm3)6とした。
次に、上記の様に作製したLED用エピタキシャルウェハを素子化するが、そのプロセスは上記比較例1と同じである。
この様に作製されたLED素子の初期特性を評価した結果、20mA通電時(評価時)の発光出力1.05mW、動作電圧1.84Vの優れた初期特性を有するLED素子を得ることができた。
更に、上記比較例1と同じ条件で通電試験を行った所、出力の相対値は102%、動作電圧+0.004V(約0.2%増)であった。
以上の様に、緩衝層に活性層に対し透明なAs系材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層を用いずに、V族元素にP系で構成されたAlGaInPを用いることによって、優れた初期特性と高信頼性を得ることができた。また、同じP系であるGaPなどの格子不整合系のワイドバンドギャップ材料を用いずに、基板に格子整合するAlGaInP系材料によって構成することで、初期の動作電圧も低く抑えることができた。
また、LED素子作製直後の状態と、LED素子作製後、上記の条件で通電試験を行った後の状態のLED素子のSIMS分析を比較例1と同じく行った。その結果、通電試験後の本実施例1のLED素子では活性層内にp型コンタクト層のドーパントであるZnが混入する様子は無く、上記コンタクト層から殆ど拡散していないことが確認された。つまり、本実施例1に示した通り、緩衝層6にAlGaInPを用いることによって、LED素子のドーパント拡散を抑止することができた。
[実施例2:緩衝層にAlInPを用いた]
実施例2として、図1に示した構造の発光波長630nm付近の赤色LED用エピタキシャルウェハを作製した。エピタキシャル成長の方法、エピタキシャル層膜厚、エピタキシャル層構造やLED素子製作方法は、基本的に上記比較例1と同じにした。以下に上記比較例1とは異なる点を列挙し、それに伴い詳細な説明をする。
本実施例2では、p型緩衝層6にAlInPを用いた。膜厚は比較例1と同じく2μmとし、キャリア濃度、及びドーパントも比較例1と同じに設定した。すなわちp型(Mgドープ)AlInP緩衝層6(膜厚2μm、キャリア濃度1×1018/cm3)とした。
次に、上記の様に作製したLED用エピタキシャルウェハを素子化するが、そのプロセスは上記比較例1と同じである。
この様に作製されたLED素子の初期特性を評価した結果、20mA通電時(評価時)の発光出力1.06mW、動作電圧1.84Vの優れた初期特性を有するLED素子を得ることができた。
更に、上記比較例1と同じ条件で通電試験を行った所、出力の相対値は101%、動作電圧約+0.004V(約0.2%増)であった。
以上の様に、緩衝層6に、活性層に対し透明なAs系材料、例えば高Al混晶比のAlGaAs層を用いずに、V族元素にP系で構成されたAlInPを用いることによって、優れた初期特性と高信頼性を得ることができた。また、同じP系であるGaPなどの格子不整合系のワイドバンドギャップ材料を用いずに基板に子整合するAlInP系材料によって構成することで、初期の動作電圧も低く抑えることができた。
また、LED素子作製直後の状態と、LED素子作製後、上記の条件で通電試験を行った後の状態のLED素子のSIMS分析を比較例1と同じく行った。その結果、通電試験後の本実施例のLED素子では活性層内にp型コンタクト層のドーパントであるZnが混入する様子は無く、上記コンタクト層から殆ど拡散していないことが確認された。つまり、本実施例2に示した通り、緩衝層にAlInPを用いることによって、LED素子のドーパント拡散を抑止することができた。
<最適条件に付いての根拠>
第1に、金属酸化物から成る電流分散層、例えばITO膜と接するオーミックコンタクト層は、極めて高濃度に導電型決定不純物が添加されている必要がある。具体的には、亜鉛(Zn)が添加されたコンタクト層の場合、その結晶材料はAl混晶比が0から0.2までのGaAs、又はAlGaAsであることが望ましく、そのキャリア濃度は1×1019/cm3以上が好適であり、これは高ければ高い程好ましい。ITO膜は基本的にn型の半導体材料に属し、また、LEDは一般的にpサイドアップで作製される。この為、ITO膜を電流分散層に応用したLEDは導電型が基板の側からn/p/n接合となってしまう。この為にLEDではITO膜とp型半導体層との界面に大きな電位障壁が生じ、通常は非常に動作電圧の高いLEDとなってしまう。この問題を解消する為、p型半導体層には非常に高いキャリア濃度を有するコンタクト層が必要となるのである。また、上記したコンタクト層のバンドギャップが狭い所以は、その方が高キャリア化が容易であることに強く依存する。
更に、上記コンタクト層の高キャリア濃度化と連動して、コンタクト層と接するITO膜のキャリア濃度も、トンネル電圧を低減するには重要である。またそれは、上述したコンタクト層と同様の理由で、高ければ高いほど好ましく、具体的には8×1020/cm3以上のキャリア濃度を有していることが好ましい。
第2に、上述したコンタクト層の膜厚は1nmから30nmの範囲にあることが好ましい。何故ならば、上記コンタクト層は、何れも活性層で発光した光に対し吸収層となるバンドギャップを有している為、図2に示すように、膜厚が厚くなるに連れ、発光出力が低下してしまう。
従って、図2から分かるように、コンタクト層の膜厚は、その上限をおよそ30nmとすることが好ましく、より好ましくは25nmまでである。また、コンタクト層の膜厚が1nm未満になってくると、今度は1TO膜とコンタクト層との間でのトンネル接合が難しくなってくる為、低動作電圧化、動作電圧の安定化が困難になる。従って、ITO膜と接するコンタクト層の膜厚には最適値があり、それは1nmから30nmなのである。
第3に、ITO膜(電流分散層)の膜厚Dが、(7/10)d≦D≦(13/10)d(但し、理想的な電流分散層の膜厚d=A×λ/(4×n)、A:定数、λ:前記電流分散層に入射する光の波長、n:前記電流分散層の屈折率)の関係式を満たし、更にその定数Aが正の奇数であることが好ましい。
LED用エピタキシャルウェハ上に形成されるITO膜は、半導体層と空気層とのおよそ中間の屈折率を有し、光学的に反射防止膜としての機能を有する。そのため、LEDの光取り出し効率を向上させ、より出力の高いLED素子を得るには、上記の式に則った膜厚設計とすることが好ましいのである。
しかし、ITO膜は至極当然のことながら、厚くすればするほど、透過率が悪くなる傾向にある。ITO膜の真性な透過率が低下すると、活性層より放射される光がITO膜によって吸収される割合が増加するため、結果として発光出力が低下する。
さらに、前記電流分散層の膜厚が増加するにつれ、前記電流分散層の中での光の干渉が増え、光取り出し効率の高い波長領域が狭くなってしまう。これらについて、GaAs基板上にITO膜を適宜形成し、その試料に対し垂直に光を入射して、このときの反射光のスペクトルを測定した結果を図4に示す。
即ち、これらの理によって、より好ましい(理想的な)電流分散層の膜厚dは、上記の関係式にあり、なおかつ、定数Aは1又は3である方が良い。最も好適な例としては、定数Aは1である。また、更に、LED用エピタキシャルウェハ上に形成される電流分散層、例えばITO膜の膜厚Dは、上記の計算式により求まる理想的な電流分散層の膜厚dの±30%以内の範囲であれば良い(つまり、(7/10)d≦D≦(13/10)dの関係式を満たせば良い)。これは、反射防止膜として光学的に反射率の低い波長帯域、つまり、光取り出し効率の高い波長帯域は、ある程度の幅を有するからである。例えば、反射防止膜として、ITO膜の形成されたLED用エピタキシャルウェハに対して垂直に光を入射したときの反射率が、15%以下となる膜厚Dの許容値は、上記式より求まる膜厚dの±30%の範囲にあるのである。膜厚Dは膜厚dの±30%の範囲よりも大きくなったり小さくなったりすると、反射防止膜としての効果は小さくなり、LEDの出力が低下してしまうのである。
第4に、コンタクト層とpクラッド層との間に介入する緩衝層は、その膜厚が0.5μm以上、5μm以下であることが好ましい。0.5μm以上となる由縁は、活性層から表面電極までの距離が近すぎると、LED素子作製時のワイヤーボンディング工程において、場合によってはLED素子を超音波振動などで破壊させるおそれがあるからである。逆に、上限を5μm以下と定める由縁は、LED素子の電流分散特性はコンタクト層上に設けられたITO膜によって、十分な効果が期待できる。その為、上記緩衝層には、電流分散特性は求めるものではない。仮に、10μm程度の厚膜な緩衝層を設けたとしても、前述したITO膜による電流分散効果が支配的なので、LED素子としての飛躍的な出力向上は望めない。むしろ、LED素子の製造にかかるコストが高くなり、LED素子の原価を上げてしまうというデメリットが生ずる。従って、上記緩衝層の膜厚は、およそ0.5μmから5.0μm程度の範囲にあることが好ましいのである。
また、本発明では、場合により、緩衝層とp型クラッド層との組成が同一となり得る場合がある。この場合、好適な膜厚設定としては、活性層の上端からコンタクト層までの距離が1μm以上、5μm以下となる設計にすることが好ましい。
<他の実施例、変形例>
[変形例1]
本発明における実施例においては、どの構造においても活性層とクラッド層との間に何も介在させない構造とした。しかし、ここに例えば真性なアンドープ層を設けたり、多少導電型不純物を含んでいようとも擬似的にアンドープ層となる様な擬似アンドープ層を設けたり、比較的キャリア濃度が低い低キャリア濃度クラッド層を設ける構造を採用しても良い。このような構造としても、単にLED素子の出力の信頼性が向上するなどの追加的な効果が生じるだけであり、この構造の下でも、同様に本発明の効果を得ることができる。
[変形例2]
本発明における実施例においては、発光波長630nmの赤色LED素子のみを作製例としたが、同じAlGaInP系の材料を用いて製作されるそれ以外のLED素子、例えば発光波長560nm〜660nmのLED素子においても本発明を適用することができ、この時に用いられる各層の材料、キャリア濃度、特にウインドウ層においては一切の変更点を持たない。従って、LED素子の発光波長を本発明の実施例と異なる波長帯域とした構造においても、同様に本発明の効果を得ることができる。
[変形例3]
本発明における実施例においては、バッファ層上に直接n型クラッド層を積層する構造とした。しかし、例えば上記バッファ層とn型クラッド層との間に、DBR(分布ブラッグ反射層)設けたLED素子の構造とすることもできる。
[変形例4]
本発明における実施例においては、表面電極の形状を円形のものとして説明したが、表面電極は、その他の異形状、例えば四角、菱形、多角形等の電極形状であってもよい。
[変形例5]
本発明における実施例においては、半導体基板にGaAsを用いた例のみを挙げたが、この他にも、Geを出発基板とするLED用エピタキシャルウェハや、出発基板をGaAs又はGeとし、これを後に除去し、代替の自立基板としてSiやSi以上の熱伝導率を有する金属基板を用いたLED用エピタキシャルウェハにおいても本発明の意図する効果を得ることができる。
本発明の実施例1及び実施例2にかかるAlGaInP系赤色LEDの断面構造図である。 コンタクト層の膜厚と発光出力の減衰率を示した図である。 比較例1及び比較例2にかかるAlGaInP系赤色LEDの断面構造図である。 GaAs基板上に形成されたITO膜の反射率スペクトルを示した図である。
符号の説明
1 n型GaAs基板
2 n型GaAsバッファ層
3 n型AlGaInPクラッド層(n型クラッド層)
4 アンドープAlGaInP活性層(活性層)
5 p型AlGaInPクラッド層(p型クラッド層)
6 p型緩衝層
7 p型AlGaAsコンタクト層(p型コンタクト層)
8 ITO膜
9 表面電極
10 裏面電極

Claims (10)

  1. 半導体基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が結晶成長され、更にそれらの最上層に1×1019/cm3以上のp型ドーパントが添加されたAs系コンタクト層が積層され、更にその上に金属酸化物材料から成る電流分散層が形成された半導体発光素子において、
    前記コンタクト層と前記p型クラッド層との間に、V族元素としてリンを含み、尚且つ前記半導体基板に対し結晶の格子不整合率が±0.3%以内であるIII−V族半導体で構成した緩衝層を具備することを特徴とする半導体発光素子。
  2. 請求項1に記載の半導体発光素子において、
    前記電流分散層がITOであることを特徴とする半導体発光素子。
  3. 請求項2に記載の半導体発光素子において、
    前記電流分散層の膜厚Dが、(7/10)d≦D≦(13/10)d(但し、理想的な電流分散層の膜厚d=A×λ/(4×n)、A:定数、λ:発光素子の発光ピーク波長、n:前記電流分散層の屈折率)の関係式を満たし、更に定数Aが正の奇数であることを特徴とする半導体発光素子。
  4. 請求項3に記載の半導体発光素子において、
    前記電流分散層が真空蒸着法か又はスパッタ法によって形成され、更にキャリア濃度が成膜直後の状態で8×1020/cm3以上であることを特徴とする半導体発光素子。
  5. 請求項4に記載の半導体発光素子において、
    前記n型クラッド層、活性層、p型クラッド層が(AlXGa1-XYIn1-YP(但し、0≦X≦1、0.4≦Y≦0.6)で構成されていることを特徴とする半導体発光素子。
  6. 請求項5に記載の半導体発光素子において、
    前記コンタクト層の主たるドーパントがZnであり、更にそのキャリア濃度が1×1019/cm3以上であり、更に組成がAlXGa1-XAs(但し、0≦X≦0.2)であることを特徴とする半導体発光素子。
  7. 請求項6に記載の半導体発光素子において、
    前記コンタクト層の膜厚が1nm以上30nm以下であることを特徴とする半導体発光素子。
  8. 請求項7に記載の半導体発光素子において、
    前記緩衝層の膜厚が0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする半導体発光素子。
  9. 請求項8に記載の半導体発光素子において、
    前記緩衝層が発光波長に対し光学的に透明であることを特徴とする半導体発光素子。
  10. 請求項9に記載の半導体発光素子において、
    前記緩衝層がAlInP又はAlGaInPであることを特徴とする半導体発光素子。
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