以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、実施の形態と称する)を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る蓋付き容器(以後、反応容器と称する)の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器1は、外部から導入される試料と試薬とを保持する容器部11と、この容器部11の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部12(容器用蓋)とを備える。
容器部11は、平板状の台座部11aと、この台座部11aの底面と直交する方向に突出して成る突出部11bとを備える。この容器部11の一つの側面(図1のx−z平面に平行な側面)は凸型形状をなし、この凸型形状をなす側面と直交する方向(図1のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。突出部11bには、試料や試薬を保持し、それらの試料と試薬とを反応させる保持部13が設けられている。この保持部13は、突出部11bの上端面に平行な正方形状の開口を有しており、その保持部13の内部は直方体状の空間をなす。この保持部13における試料と試薬との反応結果は、所定の光を保持部13に透過させることによって光学的に測定される。このため、容器部11および蓋部12は、光を透過する透明な樹脂またはガラスを用いて実現される。
蓋部12は、平板状の主板部12aと、この主板部12aの対向する端部の各々から当該主板部12aと直交する方向に延出して成る側板部12bおよび12cと、を備える。この蓋部12の一つの側面(図1のx−z平面に平行な側面)は、容器部11の凸型形状をなす側面と嵌合可能な凹型形状をなす。また、蓋部12は、その凹型形状をなす側面と直交する方向(図1のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。
この蓋部12には、容器部11に設けられる保持部13に試料を導入する分注部14が設けられている。図2は、分注部14の詳細な構成を示す図であり、図1の分注部14付近を鉛直方向(図1のz軸方向)に切断したときのA−A線部分縦断面図である。この分注部14は、液体を含む微量の試料を保持する液体保持部141、試料の計量を行う計量部142、計量部142の底部から当該計量部142が設けられる側面と反対側の側面まで貫通されて成る吐出部143、および液体保持部141と計量部142とを接続する流路144を備える。
計量部142は、流路144を介して液体保持部141から導入される試料を所定の体積に計量する。また、吐出部143は計量部142に比べて径が小さいために流路抵抗が大きく、計量部142に導入された試料の液面に通常の大気圧程度の圧力が加わっていても、吐出部143から試料が吐出されてしまうことはない。なお、吐出部143の内壁面に疎水性樹脂(例えばポリフッ化エチレン、ポリテトラフルオロチレン)などを塗布することによって疎水性を持たせてもよい。
以上の構成を有する分注部14において、液体保持部141に導入された試料は、毛細管力によって流路144から計量部142へと導入される。この後、計量部142に導入された試料の液面に対して外部から大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることにより、計量部142で正確に計量された試料が吐出部143から吐出される。計量部142に対して試料を吐出するための圧力を加える場合には、例えば計量部142上方の空間を被覆し、この被覆した空間内に大気圧よりも顕著に大きいパルス状の空気圧を発生させればよい。
その後、計量部142の上方から加えていた圧力を解除して大気圧状態に戻すと、液体保持部141の試料の一部は流路144を介して空になった計量部142へ再び導入される。これ以後は、液体保持部141に試料を追加導入しながら、上述した一連の操作を繰り返すことにより、計量部142の容積を基本単位として、基本単位の任意の整数倍の容積分の試料を吐出部143から保持部13に吐出させることができる。このような分注部14においては、計量部142に試料が導入される段階で吐出量は厳密に計量されるため、試料を液体保持部141に導入する際にはその液体保持部141からあふれない程度の量を大まかに導入しておけばよい。
計量部142の容積は、たかだか数ml(ミリリットル)程度であり、より好ましくは数百μl(マイクロリットル程度)、さらに好ましくは数十〜数百nl(ナノリットル)程度である。このように、反応容器1は微量の検体試料の分析を行う分析装置への適用が想定されるものである。この場合の反応容器1の大きさは、一辺の長さが数mm(ミリメートル)〜数cm(センチメートル)程度である。
なお、以上説明した分注部14の構成はあくまでも一例に過ぎず、例えば液体保持部141や流路144を設けることなく、計量部142と吐出部143とから分注部を構成することも可能である。また、分注部の各部位の形状も図2に示すものに限られるわけではなく、任意である。
図3は、容器部11と蓋部12を嵌合することによって反応容器1を組み立てた状態を示す斜視図である。より具体的には、突出部11bの上端面と蓋部12の主板部12aの側面のうち側板部12bおよび12cが延出する側の側面(内側面)とが接するように蓋部12を容器部11の突出部11bに載置した状態を示す斜視図である。また、図4は、図3の矢視B方向の側面図である。これらの図3および図4からも明らかなように、容器部11と蓋部12とを嵌合して反応容器1を組み立てた状態(嵌合状態)において蓋部12が容器部11に対してスライドする方向に平行な方向(図4のy軸方向)の容器部11の長さL11は、同じ方向の蓋部12の長さL12よりも長い(L11>L12)。
ところで、図3および図4に示す状態では、蓋部12が保持部13の開口面上に位置していない。したがって、この状態で保持部13の上方から開口を介して保持部13に試薬を導入することができる。このように、保持部13の形成位置は容器部11(特に突出部11b)と蓋部12との大きさに依存して決められるものである。
図5は、図3および図4に示す状態からy軸正の方向に蓋部12をスライドさせることによって到達可能な別の状態を示す図である。より具体的には、蓋部12をスライドさせることによって図4と反対側の側面同士が同一平面上に来るように位置合わせを行った場合を示す図である。この図5に示す場合、吐出部143の下端が保持部13の開口面の直上に位置している。したがって、この状態で計量部142に導入された試料の液面に対して大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることにより、計量部142で正確に計量された試料を保持部13に吐出させる。
図5に示す状態で試料を吐出すると、すでに保持部13に導入されていた試薬との間で反応が生じる。この反応の結果を用いて試料の分析を行う場合には、保持部13の下方に設けられる光照射領域Tに対してレーザダイオードなどによって所定の光を照射し、この照射した光が保持部13内の反応液を透過してくる光をフォトダイオードなどによって受光することにより、試料と試薬との反応によって得られる反応液の吸光度を測定する。その後、分析装置は、測定結果に基づいて試料の成分の分析演算を実行する。
反応液の吸光度の測定を正確に行うためには、突出部11bの光照射領域Tを含む側面が保持部13の内側面と平行でなければならない。また、容器部11と蓋部12とを嵌合して組み立てたときに側板部12bおよび12cが容器部11の光照射領域Tまで延出しない程度の長さであることが好ましい。なお、容器部11のうち、この光照射領域Tのみを、透過率の高い石英などの材料によって実現してもよい。
試料吐出後の保持部13は、その開口面が吐出部143の先端を介して外気と接続されるが、この吐出部143の径は微小なため、外部からの影響は少ない。特に、液体保持部141に流路144を介して計量部142に流出する試料が残っていれば、試料の吐出後に圧力を解除することによって再び計量部142に試料が導入されるため、保持部13の開口は外部から完全に遮蔽される。この結果、保持部13で保持される液体成分の蒸発を防止することができ、より精度の高い試料の分析を行うことが可能となる。
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、所定の開口を介して外部から導入される試料と試薬とを保持する容器部と、前記容器部に組み合わされて成り、前記容器部に対して前記開口による開口面上を少なくとも含む所定の方向にスライド可能な蓋部と、を備えることにより、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。
また、この実施の形態1によれば、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。
従来、試料の微量化に伴う反応容器の小型化を実現する際には、使用後の反応容器をいかに洗浄するかという問題が生じるのが常であった。この問題を解決する方策として、反応容器を使い捨てにすることが想起されるが、反応容器の形状が複雑であればあるほど作成にコストがかかるため、非経済的であるという問題が新たに生じる結果となっていた。この実施の形態1に係る反応容器によれば、凹凸形状の嵌め合わせによって組み立てられる簡易な構成を有するので、製造コストを低く抑えることができ、使い捨てという形態で使用する場合にも好適である。したがって、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
(実施の形態1の変形例)
図6は、この実施の形態1に係る反応容器の一変形例の概要を示す図であって、当該反応容器を組み立てたときの図2の矢視C方向の側面図(x−z平面に平行な側面)に相当する図である。この図6に示す反応容器110は、容器部111と蓋部112とから成る。このうち容器部111は、平板状の台座部111aと、この台座部111aの底面と略直交する方向に突出して成る突出部111bとを備える。この突出部111bのうち、蓋部112と嵌合する部分の側面は、上方(図6の+z方向)に行くにしたがって幅が広くなる逆テーパ形状をなす。
他方、蓋部112は、平板状の主板部112aと、この主板部112aの対向する端部の各々から当該主板部112aと直交する方向に延出する側板部112bおよび112cと、を備える。主板部112aと側板部112bおよび112cとの内側面は、上述した突出部111bの逆テーパ形状と嵌合可能な蟻溝形状をなす。
容器部111と蓋部112とを組み合わせて反応容器110を組み立てる際には、容器部111の突出部111bの逆テーパ部分に対して蓋部112の蟻溝部分の位置合わせを行い、蓋部112をy軸方向にスライドさせながら容器部111に嵌め込んでいく。
なお、容器部111が有する保持部113、および蓋部112に設けられる分注部114の構成は上述した反応容器1の保持部13、および分注部14とそれぞれ同じである。したがって、保持部113への試料の分注や試薬の導入も反応容器1と同様に行えばよい。
以上の構成を有する反応容器110によれば、容器部111と蓋部112の嵌合部分が蓋部112の容器部111に対するスライド方向を所定の1次元方向に規定して誘導する誘導手段をなすので、容器部111と蓋部112とをより確実に連結することができる。この結果、例えば蓋部112に図6の鉛直方向上向き(+z方向)の力が作用しても、蓋部112が容器部111から離間することがないため、反応容器110の組立時の安定性も増加する。特に蓋部112が分注部114を有する場合には、導入した試料が外部に漏れたりするのを防止することができるので一段と好ましい。
図7は、この実施の形態1に係る反応容器の別な変形例の概要を示す図であって、図6と同様の方向(図2の矢視C方向に相当)から見た側面図である。この図7に示す反応容器120は、反応容器1とそれぞれ略同形の容器部121と蓋部122とから成る。このうち、容器部121の突出部121b側面には、当該反応容器120を組み立てた状態で蓋部122がスライドする方向(図7のy軸方向)に沿って平行かつ一様に微小に突出して成るガイド部125が設けられる。他方、蓋部122の内側面には、そのガイド部125を嵌合可能な溝部126がスライド方向に沿って平行かつ一様に設けられている。したがって、この反応容器120では、ガイド部125と溝部126とが合わさって誘導手段の少なくとも一部をなす。
以上の構成を有する反応容器120によれば、上述した本実施の形態1の一変形例に係る反応容器110と同様の効果を得ることができる。なお、この反応容器120の場合にも、保持部123および分注部124の構成は、反応容器1における保持部13および分注部14の構成とそれぞれ同じである。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器2は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部21と、この容器部21の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部22とを備える。
容器部21は、平板状の台座部21aと、この台座部21aの底面と直交する方向に突出して成る突出部21bとを備える。この容器部21の一つの側面(図8のx−z平面に平行な側面)は凸型形状をなし、この凸型形状をなす側面と直交する方向(図8のy軸方向)に沿って一様な外形をなす。突出部21bの略中央部には、試料や試薬を保持し、それらの試料と試薬とを反応させる保持部23が設けられている。この保持部23は、突出部21bの上端面に平行な正方形状の開口を有しており、その保持部23の内部は直方体状の空間をなす。この実施の形態2においても、保持部23における試料と試薬の反応結果を光学的に測定するため、容器部21および蓋部22は、透明な樹脂またはガラスを用いて実現される。
蓋部22は、平板状の主板部22aと、この主板部22aの対向する端部の各々から当該主板部22aと直交する方向に延出する側板部22bおよび22cと、を備える。この蓋部22の一つの側面(図8のx−z平面に平行な側面)は、容器部21の凸型形状をなす側面と嵌合可能な凹型形状をなす。また、蓋部22は、その凹型形状をなす側面と直交する方向(図8のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。
この蓋部22には、保持部23に試料を導入する分注部24と、保持部23の開口面と略同形の断面を有して主板部22aを貫通する開口部25とが設けられている。このうち分注部24は、上記実施の形態1で説明した分注部14と同様、液体保持部241、計量部242、吐出部243、および流路244を有する。この分注部24の分注時の動作は、分注部14の分注時の動作と同じである。
図9は、以上の構成を有する容器部21と蓋部22とを嵌合して反応容器2を組み立てた状態を示す図であり、図8のD−D線縦断面図である。この図9からも明らかなように、容器部21と蓋部22とを嵌合して反応容器2を組み立てた状態(嵌合状態)において、蓋部22が容器部21に対してスライドする方向に平行な方向(図9のy軸方向)の容器部21の長さと蓋部22の長さは等しい。
この図9に示す状態、すなわち容器部21の凸型形状をなす側面と蓋部22の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態では、保持部23の開口は蓋部22の主板部22aによって完全に外部から遮蔽される。したがって、試薬を保持部23に導入した後などにこの図9に示す状態で保存すれば、試薬の液体成分の蒸発を防止することができる。さらに、この図9に示す状態で容器部21と蓋部22とを接着固定すれば、反応容器2の輸送や保存を行う際に保持部23に保持される液体成分の蒸発に加えて外部への液漏れも防止することができる。
図10は、蓋部22に設けられる開口部25の上方から保持部23に試薬を導入する際の容器部21と蓋部22との位置関係を示す図であり、図9と同じ切断面で見た断面図である。この図10では、図9に示す状態から蓋部22をy軸負の方向(図10で左方)にスライドさせて位置決めを行ったときの状態を示している。この状態において、開口部25が保持部23の開口面の上方に位置するため、蓋部22を取り外すことなく、開口部25の上方から試薬を保持部23に導入することができる。
図11は、分注部24によって試料を保持部23に吐出する際の容器部21と蓋部22との位置関係を示す図であり、図9と同じ切断面で見た断面図である。この図11では、図9に示す状態から蓋部22をy軸正の方向(図11で右方)にスライドさせて位置決めを行ったときの状態を示している。この状態において、分注部24の液体保持部241に所定の試料を導入すると、流路344で作用する毛細管力によって試料は計量部242に流入し、所定の体積の試料が計量される。その後、計量部242に導入された試料大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることによって計量部242で正確に計量された試料を吐出部243から保持部23に吐出させる。
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態2によれば、蓋部に保持部の開口面と同じ形状の断面を有する開口部を設けることにより、試薬の導入が一段と容易となる。
さらに、この実施の形態2によれば、反応容器を組み立てた状態で蓋部のスライド方向に平行な方向の長さが容器部と蓋部とで同じであるため、保持部の開口を塞いだ状態で容器部と蓋部との側面を一致させることができ、取り扱いが一段と容易になる。また、蓋部の位置に応じて保持部の開口を外部から完全に遮蔽することができるので、試薬導入後の試薬の液体成分の蒸発を防止したり、反応後の液体の液漏れを防止したりすることが可能となる。
(実施の形態2の変形例)
図12は、この実施の形態2の一変形例を示す図であり、上述した反応容器2の縦断面図である図9に相当する縦断面図である。この図12に示す反応容器201は、上述した容器部21と、この容器部21の上方に配置されて突出部21bの水平長手方向(図のy軸方向)に沿ってスライド可能な蓋部221とを備える。蓋部221は、上述した蓋部22と同様に分注部24および開口部25を有する。
図12からも明らかなように、容器部21と蓋部221とを嵌合して反応容器201を組み立てた状態において、突出部21bの水平長手方向の長さは蓋部221の同じ方向の長さよりも長いが、蓋部221を適当な位置までスライドさせることにより、保持部23の開口を外部から遮蔽することができる(図12に示す状態)。したがって、上述した蓋部22と同様、保持部23内の乾燥を抑えて試薬の液体成分の蒸発を防止するとともに、反応後の反応液の液漏れを防止することができる。
図13は、この実施の形態2の別な変形例を示す図であり、図12と同じ切断面を有する縦断面図である。この図13に示す反応容器202は、容器部21と、嵌合状態において突出部21bの水平長手方向の長さが上述した蓋部221よりもさらに短い蓋部222とを備える。蓋部222には開口部が形成されていない。このため、試薬を保持部23に導入する際には蓋部222をスライドさせて保持部23を露出させて行うが、反応後の保持部23の開口を外部から遮蔽することは可能である(図13の状態)。したがって、この場合にも反応容器201と同様の効果を得ることができる。
図14は、この実施の形態2のさらに別な変形例の概要を示す縦断面図であり、図12と同じ切断面を有する縦断面図である。この図14に示す反応容器203は、上述した各反応容器と同様に容器部213と蓋部223とを備える。この反応容器203の場合、容器部213に設けられる保持部233の開口面をなす正方形の一辺の長さが容器部213の水平方向の幅に対して相対的に大きいため、蓋部223をどのようにスライドさせて位置合わせを行ったとしても、その開口を外部から完全に遮蔽することができない。
このような場合には、図15に示すように、計量部242を含む分注部24の上方を、適当な粘性を有する液体Lによって被覆することによって保持部233の開口を外部から遮蔽してもよい。また、図16に示すように、蓋部223の上面に遮蔽用のシートSを貼付することによって保持部233の開口を外部から遮蔽してもよい。
(実施の形態3)
図17は、本発明の実施の形態3に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器3は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部31と、この容器部31の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部22とを備える。このうち、蓋部22は上記実施の形態2で説明したものと同じであり、分注部24(液体保持部241、計量部242、吐出部243、および流路244を有する)と開口部25とを有する。
容器部31は、上述した容器部21と同様の外形をなし、平板状の台座部31aと、この台座部31aの底面と直交する方向に突出して成る突出部31bとを備える。この突出部31bには、正方形状の開口を有する保持部33が設けられている。また、突出部31bの上端面には、保持部33の開口面をなす正方形の一辺の長さに比べて顕著に小さい径を有する溝部36が穿設されている。この溝部36は、保持部33の開口面から凸型形状をなす二つの側面のうち一方の側面まで達しており、蓋部22を嵌合して反応容器3を組み立てた状態では蓋部22との間で保持部33と外部とを接続する孔部をなす。この孔部は、分注部24に導入された試料を吐出部243を介して保持部33に吐出する際、保持部33内部の空気の一部を反応容器3の外部へ放出するエア抜き用の流路としての機能を有する。
なお、反応容器3を組み立てた状態において、容器部31の突出部31bの水平長手方向(図17のy軸方向)の長さと、蓋部22の同じ方向の長さとは同じであればよいが、蓋部22の長さの方が短くても構わない。このうち、図17に示すように容器部31と蓋部22のy軸方向の長さが等しい場合には、容器部31の凸型形状をなす側面と蓋部22の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態(初期状態とする)において、保持部33の開口は主板部22aによって外部から遮蔽されている。
また、溝部36は必ずしも直線である必要はなく、曲線でも構わない。また、溝部36を設ける代わりに、保持部33の側壁から図17でx−z平面に平行な凸型形状の側面に溝部36の深さと同程度の径を有する孔部を形成し、この孔部をエア抜き用の流路としてもよい。このような孔部を形成する場合には、試料や試薬が混入しないようにできるだけ突出部31bの上端面に近い位置にその孔部を形成する方がより好ましい。
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができるまた、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態3によれば、保持部と反応容器の外部とを空間的に接続する孔部を設けることにより、試料の分注時に保持部内の空気の一部を反応容器の外部へ放出することができ、試料の分注を一段と確実かつ円滑に行うことが可能となる。
(実施の形態3の変形例)
図18は、この実施の形態3の一変形例に係る反応容器の蓋部の構成を示す上面図であり、図19は図18の矢視E方向の側面図である。これらの図に示す蓋部32は、分注部24および開口部25とそれぞれ同じ構成を有する分注部34(液体保持部341、計量部342、吐出部343、および流路344を有する)および開口部35に加えて、溝部361を有する。この溝部361は、分注部34の吐出部343から試料の吐出を行うにあたって蓋部32を容器部31に対してスライドして位置決めを行ったとき、容器部31に設けられる溝部36と対向する位置となるように形成されており、溝部36と合わせて保持部33と外部とを接続する孔部をなす。なお、この蓋部32を用いる場合には、容器部側に溝部36を設ける必要はない。すなわち、上記実施の形態2に係る反応容器2の容器部21を適用してもよい。
図20は、この実施の形態3の別な変形例に係る反応容器の蓋部の構成を示す上面図である。同図に示す蓋部37は、分注部34の計量部342と開口部35との間に溝部362が設けられており、この溝部362の一方の端部は開口部35に達している。このような構成を有する蓋部37を用いると、吐出部343から試料が吐出される際、保持部33内の空気は蓋部37との間で孔部をなす溝部362を通過して開口部35から外部へと放出される。したがって、蓋部32の場合と同様、容器部側に溝部を設ける必要はない。この意味で、容器部としては容器部21を用いてもよいし容器部31を用いてもよい。
以上説明した本実施の形態3の変形例に係る反応容器が、上記実施の形態3と同様の効果を奏することはいうまでもない。
(実施の形態4)
図21は、本発明の実施の形態4に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器4は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部41と、この容器部41の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部42とを備える。
容器部41は、上述した容器部21と同様の外形をなし、平板状の台座部41aと、この台座部41aの底面と直交する方向に突出して成る突出部41bとを備える。この突出部41bには、正方形状の開口を有する保持部43が設けられている。また、容器部41には、保持部43の側面から突出部41bの一側面まで貫通されて成る孔部461が設けられている。図21に示す場合、この孔部461の貫通方向は、反応容器4を組み立てた状態で蓋部42が容器部41に対してスライドする方向に直交する方向(図21のx軸方向)である。
蓋部42は、平板状の主板部42aと、この主板部42aの対向する端部の各々から当該主板部42aと直交する方向に延出する側板部42bおよび42cと、を備え、上述した蓋部22と同様の外形をなす。この蓋部42には、試料を導入し、この導入した試料を保持部43に吐出する分注部44と、保持部43の開口面と略同形の断面を有して主板部42aを貫通する開口部45とが設けられている。このうち分注部44は、上記実施の形態1で説明した分注部14と同様、液体保持部441、計量部442、吐出部443、および流路444を有する。
また、蓋部42の一方の側板部(図21の場合には側板部42b)には、反応容器4を組み立てた状態で当該蓋部42が容器部41に対してスライドする方向と直交する方向(図21のx軸方向)に貫通されて成る孔部462が設けられている。この孔部462の径は、容器部41の孔部461の径と同じである。
図22は、以上の構成を有する容器部41と蓋部42を嵌合することによって反応容器4を組み立てた状態における図21の矢視F方向の側面図である。この図22に示すように、容器部41と蓋部42とを嵌合して反応容器4を組み立てた状態(嵌合状態)において、蓋部42が容器部41に対してスライドする方向に平行な方向(図22のy軸方向)の容器部41の長さと蓋部42の長さは等しい。また、図22に示す状態、すなわち容器部41の凸型形状をなす側面と蓋部42の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態(初期状態とする)において、保持部43の開口は主板部42aによって外部から遮蔽されている。さらに、保持部43の側面から突出部41bの側面に開通する孔部461も側板部42bによって塞がれている。したがって、図22に示す状態において、保持部43の開口は外部から完全に遮蔽されている。
以上の構成を有する反応容器4において、保持部43に試薬を導入した後、図22に示す状態で反応容器4を保存すれば、試薬の液体成分の蒸発を防止することができる。また、この図22に示す状態で容器部41と蓋部42とを接着固定すれば、その後の保存や輸送等の際に保持部43で保持される反応液の液漏れを防止することができる。
図23は、分注部44によって試料を保持部43に吐出する際の容器部41と蓋部42との位置関係を示す図であり、図22と同じ矢視F方向の側面図である。また、図24は、図23のG−G線断面図である。これらの図23および図24に示す状態は、図22に示す状態から蓋部42をy軸正の方向(図23で右方)にスライドさせて位置決めを行った状態を示している。この状態では、孔部461の突出部41b側の端部の位置と孔部462の側板部42b内側の端部の位置とが重なることにより、保持部43の側面から側板部42bの外側面に達する一直線状のエア抜き用流路が開通する。
このため、図23および図24に示す状態において、計量部442に導入された試料に大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることによって計量部442で正確に計量された試料を吐出部443から保持部43へ吐出させると、保持部43内部の空気の一部が孔部461および462を通って外部へ放出される。
なお、保持部43に試薬を導入する際には、図25の側面図に示すように、開口部45が保持部43の開口面の上方に位置するように蓋部42をスライドさせて位置決めを行えばよい。
以上説明した本発明の実施の形態4によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態4によれば、エア抜き用流路をなす孔部が蓋部のスライド方向と直交する方向に貫通するように設けられ、試料分注時においてのみ保持部と外部とを接続するため、分注時以外における保持部の密閉性を一段と高め、反応液の漏れを確実に防止することが可能となる。
(実施の形態5)
図26は、本発明の実施の形態5に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器5は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部51と、この容器部21の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部52とを備える。
図27は、上述した各実施の形態と同様に容器部51と蓋部52とを嵌合して反応容器5を組み立てた状態を示す図であり、図26の矢視H方向の側面図である。以下、これらの図26および図27を参照して容器部51および蓋部52の構成を説明する。
まず、容器部51は、平板状の台座部51aと、この台座部51aの底面と直交する方向に突出して成る突出部51bとを備える。突出部51bには、正方形状の開口を有する保持部53が設けられている。また、台座部51aは、突出部51bが突出するのと同じ方向に突出して成る4つの突起部511、512、513、および514を備える。この4つの突起部511〜514は同形状をなし、各突起部が台座部51aに対して突出する高さは、突出部51bが台座部51aに対して突出する高さよりも低い。各突起部の上端面は、台座部51aの底面に対して鋭角をなす斜面形状をなす。
次に、蓋部52は、平板状の主板部52aと、この主板部52aの対向する端部の各々から当該主板部52aと直交する方向に延出する側板部52bおよび52cと、を備える。この蓋部52には、試料を導入し、この導入した試料を保持部53に吐出する分注部54と、保持部53の開口面と略同系の断面を有して主板部52aを貫通する開口部55とが設けられている。このうち分注部54は、上記実施の形態1で説明した分注部14と同様、液体保持部541、計量部542、吐出部543、および流路544を有する。
側板部52bは、その略中央部付近の端部から(図26、27で下方に)さらに突出して成る突起部521および522を有する。この突起部521および522は、反応容器5を組み立てた状態で蓋部52が容器部51に対してスライドして所定の位置まで達した場合、容器部51側に設けられる突起部511および512の上端面に当接可能な形状(斜面形状)をなす。なお、側板部52cにも同様の突起部523および524(図示せず)が設けられる。これらの突起部523および524の形状は、蓋部52が有する対称性により、突起部522および521の形状とそれぞれ同じである。
図27からも明らかなように、容器部51と蓋部52とを嵌合して反応容器5を組み立てた状態(嵌合状態)において、蓋部52が容器部51に対してスライドする方向に平行な方向(図27のy軸方向)の容器部51の長さと蓋部52の長さは等しい。また、図27に示す状態、すなわち容器部51の凸型形状をなす側面と蓋部52の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態(初期状態とする)において、保持部53の開口は主板部52aによって外部から遮蔽されている。
図28は、試薬導入時の容器部51と蓋部52の位置関係を示す図であり、図26の矢視H方向の側面図である。この図28では、図27に示す状態から蓋部52をy軸負の方向(図28で左方)にスライドさせることにより、突起部512と突起部522の対向する斜面同士、および突起部513と突起部523の対向する斜面同士(図示せず)がそれぞれ当接することによって蓋部52のそれ以上のスライドを妨げる。さらにこの場合、蓋部52が静止した状態で開口部55が保持部53の直上に来るので、蓋部52を取り外すことなく、開口部55の上方から保持部53に試薬を導入することができる。
図29は、分注部54による試料分注時の容器部51と蓋部52との位置関係を示す図であり、図26の矢視H方向の側面図である。この図29では、図27に示す状態から蓋部52をy軸正の方向(図29で右方)にスライドさせることにより、突起部511と突起部521の対向する斜面同士、および突起部514と突起部524の対向する斜面同士(図示せず)がそれぞれ当接することによって蓋部52のそれ以上のスライドを防止する。この状態において、吐出部543の位置が保持部53の開口面の直上に来る。
以上の説明からも明らかなように、容器部51と蓋部52とにそれぞれ設けられる突起部は、蓋部52の容器部51に対するスライド量を制限する制限手段の少なくとも一部をなすとともに、分注部54と保持部53の開口との相対的な位置決めを行う位置決め手段の少なくとも一部をなす。
以上説明した本発明の実施の形態5によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができるまた、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態5によれば、容器部と蓋部に突起部を設けることにより、蓋部の容器部に対する過度のスライドを防止するとともに、試料分注時や試薬導入時の状態への位置合わせを容易に行うことができるので、一段と正確かつ迅速に試料および試薬を導入することが可能となる。
(実施の形態5の変形例)
図30は、この実施の形態5の一変形例に係る反応容器の構成を示す側面図である。上述した反応容器5の場合、蓋部52では、光照射領域Tの空間を確保するため、側板部52b(および52c;この段落の括弧内対応)の中央部付近には突起部を設けることができず、その中央部付近を挟んで二つの突起部521、522(および523、524)を設けなければならなかった。これに対して図30に示す反応容器501の場合、容器部551の高さが容器部51の高さよりも高く形成され、保持部553の深さも保持部53の深さより深く形成されているため、蓋部552の側面中央部付近に等脚台形の側面形状をなす突起部554を一つ設ければよい。したがって、蓋部552の加工が容易となり、一段とコストを低減することが可能となる。
図31は、この実施の形態5の別な変形例に係る反応容器の構成を示す側面図である。同図に示す反応容器502は、容器部561の突出部561b側面の略中央部付近に、組立時における蓋部562のスライド方向(図の左右方向)と直交する方向に突出して成る3角柱状の突起部565が設けられている。また、蓋部562の側板部562bの側面には、突起部565と当接する斜面を備えた突起部566および567が当該側板部562bから(図31で下方に)さらに突出して設けられる。この蓋部562は、上述した蓋部52と同様の構成を有する分注部564(液体保持部、計量部、吐出部、および流路を有する)を備えるが、開口部はない。
ところで、図示はしないが、突出部561bの反対側の側面にも、上述した突起部565と同様の突起部が容器部561に設けられる一方、突起部566および567と同様の突起部が側板部562cに設けられる。以後の説明では突起部565、566および567についてのみ記載するが、反対側の対応する突起部においても(左右を逆転すれば)同様の状態が生じていることは勿論である。
図32は、反応容器502で試薬を導入する際の容器部561と蓋部562の位置関係を示す図である。この図32では、図31に示す状態から、蓋部562を容器部561に対して図の水平右方向にスライドさせることにより、突起部565と突起部567の斜面同士が当接した状態を示している。この状態において、突起部565と突起部567は、蓋部562の同じ方向(水平右方向)へのそれ以上のスライドを妨げるとともに、保持部563の開口を露出させる。
図33は、反応容器502で試料を分注する際の容器部561と蓋部562の位置関係を示す図である。この図33では、図31に示す状態から、蓋部562を容器部561に対して図の水平左方向にスライドさせることにより、突起部565と突起部566の斜面同士が当接した状態を示している。この状態において、突起部565と突起部566は、蓋部562の同じ方向(水平左方向)へのそれ以上のスライドを妨げるとともに、分注部564が有する計量部および吐出部を保持部563の開口面の直上に配置させる。
以上説明した反応容器502においても、上述した実施の形態5に係る反応容器と同様の効果を得ることができる。特にこの反応容器502の場合には、蓋部562が開口部を持たないため、小型化を図る上で好適である。
なお、突起部の形状はここまで説明したものに限られるわけではなく、例えば図34に示す反応容器503のように、容器部571に対して台座部571aから棒状に突出して成る突起部573および574を設けるとともに、蓋部572に対して同じく棒状に突出して成る突起部575および576を設けてもよい(図34の裏側の側板部にも同様の突起部を設けることはいうまでもない)。この場合には、突起部同士の当接面が蓋部572のスライド方向(図34の水平方向)と直交するため、蓋部572の容器部571に対する過度のスライドを一段と確実に防止することが可能となる。
(実施の形態6)
図35は、本発明の実施の形態6に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器6は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部61と、この容器部61の上方に配置されて容器部61に対して所定の方向にスライド可能な蓋部62とを備える。
容器部61は、平板状の台座部61aと、この台座部61aの底面中央部からその底面と直交する方向に柱状に突出して成る突出部61bとを備える。突出部61bには、外部から導入される試料や試薬を保持し、それらの試料と試薬とを反応させる保持部63が形成されている。この保持部63は、突出部61bの上端面に平行な正方形状の開口を有しており、その保持部63の内部は直方体状の空間をなす。
蓋部62は、平板状でその表面が正方形をなす主板部62aと、この主板部62aの各端部から当該主板部62aと直交する方向にそれぞれ延出する4つの側板部62c、62d、62e、および62fを備える。このうち、主板部62aには分注部64が設けられている。この分注部64は、上面から導入される試料を保持する液体保持部641に対して4つの計量部が各々別な流路を介して接続されて成る。より具体的には、4つの計量部642a、642b、642c、および642dの各々が、流路644a、644b、644c、および644dを介して液体保持部641に接続されている。4つの計量部642a〜642dの中には、異なる内容積を有する計量部が含まれていてもよく、図35に示す場合には、4つの計量部642a〜642dの内容積が全て異なる。
図36は、図35に示す蓋部62の上下を逆にして(−z方向から+z方向を)見たときの斜視図である。この図36に示すように、計量部642a、642b、642c、および642dには、液体保持部641が形成されるのと反対側の面に貫通する吐出部643a、643b、643c、および643dがそれぞれ設けられている。
容器部61に蓋部62の主板部62aを載置して反応容器6を組み立てた状態のうち、台座部61aの鉛直方向(図35のz軸方向)の4つの側面の各々が蓋部62の4つの側面のいずれかと同一平面上に揃った状態(初期状態とする)において、保持部63の開口は主板部62aによって外部から遮蔽されている。
以上の構成を有する反応容器6では、蓋部62を容器部61に対して所定の2次元方向(図35のx−y平面に平行な2次元面上)にスライドさせることができる。蓋部62は、主板部62aの各端部に対して4つの側板部62b〜62eが延出しているため、蓋部62の主板部62aと直交する任意の切断面による縦断面図は凹型形状をなす。このため、主板部62の表面のうち側板部62b〜62eが延出する側の表面を突出部61bの上端面に載置し、この載置した蓋部62の主板部62aと突出部61の上端面とを接触させながらその蓋部62を2次元的にスライドさせれば、側板部62b〜62eが過度のスライドを防止するストッパーの機能を果たし、蓋部62が容器部61から離間することはない。この意味で、側板部62b〜62eは蓋部62のスライド量を制限する制限手段の少なくとも一部をなす。
図37は、試料の分注を行う際の蓋部62の容器部61に対する位置決めの概要を示す説明図である。同図においては、容器部61および蓋部62の鉛直方向の中心軸が揃っている初期状態を状態(I)とし、計量部642a内の試料を保持部63に吐出する状態を状態(II)とし、状態(I)から状態(II)へ遷移するときの蓋部62の容器部61に対するスライド動作の概要を示している。
この図37に示す場合、蓋部62を容器部61に対して水平2次元方向に相対的に移動させるが、最終的な位置決めは、蓋部62の内側面の頂点62A(主板部62a、側板部62c、および側板部62dの境界点)を突出部61b上端面の一つの頂点61Aに合わせることによって行う。この意味で、二つの頂点61Aおよび62Aが接する状態(II)に達したとき、吐出部643aが保持部63の開口面の直上に来るように蓋部62の形状を設定すればよい。なお、他の吐出部643b、643c、および643dの位置も同様にして決められることは勿論である。
以上説明した本発明の実施の形態6によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態6によれば、蓋部を容器部に対して2次元的にスライドさせることができ、試料を分注する際の蓋部の容器部に対する位置決めが容易である。特に、保持部の開口を蓋部で塞ぐことができるため、試薬や反応液の液体成分の蒸発を防止するという意味で好適である。
さらに、この実施の形態6によれば、蓋部に容積の異なる複数の計量部を備えた分注部を設けることにより、多様な試料の分注を実現することが可能となる。
(実施の形態6の変形例)
図38は、この実施の形態6の一変形例に係る反応容器の蓋部の構成を示す斜視図である。同図に示す蓋部65には4つの分注部66a、66b、66c、および66dが設けられている。各分注部は、上記実施の形態1で説明した分注部14と同じく液体保持部、計量部、吐出部、および流路の組から成る。液体保持部や計量部の容積は、全て同じであってもよいし、分注部ごとに異なっていてもよい。なお、この蓋部65の上下を逆にして見たときの斜視図は図36と同じである。以上の構成を有する蓋部65を用いると、4つの分注部66a〜66dに対してそれぞれ異なる試料を導入することが可能となる。したがって、保持部63に試料を吐出する際には、上述した実施の形態6と同様に蓋部65の容器部61に対する位置決めを行えばよい(図37を参照)。
図39は、この実施の形態6の別な変形例に係る反応容器の構成を示す説明図である。同図に示す反応容器601は、容器部611と蓋部612の形状が上述した反応容器6と異なる。以下、より具体的な形状を説明する。容器部611は、台座部611aおよび突出部611bが6角柱をなす。突出部611bには、6角柱状の空間をなして試料や試薬を保持する保持部613が形成されており、この保持部613の側面のうち対向する1組の側面は、突出部611bの側面のいずれかに平行である。これにより、保持部613のいずれかの側面を光照射領域Tとすることができる。
蓋部612は、正6角形の表面を有する主板部612aと、この主板部612a表面の正6角形の各辺から当該主板部612aと直交する方向に延出して成る6つの側板部612b、612c、612d、612e、612f、および612gと、を有する。主板部612aには、6つの分注部614a、614b、614c、614d、614e、および614fが形成されている。これらの分注部の構成は、上記実施の形態1で説明した分注部14の構成と同じである。
以上の構成を有する反応容器601においては、蓋部612を容器部611に対して2次元的にスライドさせて突出部611b上端面の正6角形の頂点と蓋部612の裏側の正6角形の頂点のうちいずれか一組の頂点同士が接する状態に遷移することにより、いずれか一つの分注部に設けられる吐出部が保持部613の開口面直上に位置する。したがって、上記の如く位置決めを行った後、該当する分注部に導入された試料に大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることにより、その試料を保持部613に導入することができる。この意味では、6つの分注部614a〜614fに異なる種類の試料を導入しておけば、多様な試料を保持部613に導入することが可能となる。
図40は、この実施の形態6のさらに別な変形例に係る反応容器の構成を示す説明図である。同図に示す反応容器602は、容器部621と蓋部622とを備える。容器部621は、3角柱状の台座部621aと、この台座部621aから上方に柱状に突出して成る突出部621bとを備える。この突出部621bには、その上端面を開口とする直方体形状の保持部623が形成されている。突出部621bの外形は底面が正3角形である3角柱の一部を切り欠いた形状をなす。この切り欠き部分は突出部621bの一つの側面と平行であり、かつ保持部623の一組の対向する側面に平行である。この結果、切り欠き部分の側面を光照射領域Tとすることができる。
蓋部622は、正3角形の表面を有する主板部622aと、この主板部622a表面の正3角形の各辺から当該主板部622aに直交する方向に延出して成る3つの側板部622b、622c、および622dと、を有する。主板部622aには、3つの分注部624a、624b、および624cが形成されている。これらの分注部の構成は、上記実施の形態1で説明した分注部14の構成と同じである。
以上の構成を有する反応容器602においても、試料を分注する際には、蓋部622を所定の2次元方向にスライドさせることにより、突出部621b上端面の正3角形の頂点のうちのいずれかを蓋部612の裏面側の正3角形の頂点のうちのいずれかに合わせることによって蓋部622の容器部621に対する位置決めを行う。そしてこの位置決めの結果、いずれかの分注部に設けられる吐出部が、保持部623の開口面直上に位置するので、該当する分注部に大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることにより、その分注部に導入された試料を保持部623に吐出させることができる。したがって、この場合にも、上述した反応容器601の場合と同様の効果を得ることができる。
ところで、より一般には台座部と直交する方向にn角柱状(nは3以上の整数)に突出して成る突出部を備えた容器部とn角形の主板部を有する蓋部(n組の分注部を具備)とを組み合わせることによって反応容器を形成することができる。この意味では、nが無限大の極限である円柱状に突出して成る突出部と円形の主板部を有する蓋部との組み合わせによって反応容器を形成することもできる。ただし、突出部の形状によっては、上述した反応容器602の突出部621bの場合と同様、光照射領域Tを設けるために容器部の一部を切り欠く必要がある。なお、蓋部の表面はm角形(m≠nであるような3以上の整数)としてもよい。また、台座部の形状は突出部の形状によらずに任意である。
(実施の形態7)
図41は、本発明の実施の形態7に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器7は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部71と、この容器部71の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部72とを備える。
容器部71は、平板状の台座部71aと、この台座部71aの底面と直交する方向に突出して成る突出部71bとを備える。この突出部71bには、液体を含む試料または試薬を保持し、それらの試料と試薬とを反応させる3つの保持部73a、73b、および73cが突出部71bの長手方向(図41のy軸方向)に沿って等間隔で形成されている。各保持部は、突出部71bの上端面に平行な正方形状の開口を有しており、その内部は直方体状の空間をなす。以後の説明の便宜上、保持部73a〜73cは全て同一形状をなすものとする。この場合、容器部71は、上記実施の形態2に係る反応容器2の容器部21を3つ連結したものと本質的に同じである。
蓋部72は、平板状の主板部72aと、この主板部72aの対向する端部の各々から当該主板部72aと直交する方向に延出する側板部72bおよび72cと、を備える。この蓋部72の一つの側面(図41のx−z平面に平行な側面)は、容器部21の凸型形状をなす側面と嵌合可能な凹型形状をなす。また、蓋部72は、その凹型形状をなす側面と直交する方向(図41のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。
この蓋部72には、試料を導入し、この導入した試料を吐出する3つの分注部74a、74b、および74cと、保持部73a〜73cの開口面と同形の断面を有し主板部72aを貫通する3つの開口部75a、75b、および75cとが、主板部72aの長手方向(図41のy軸方向)に沿って交互に設けられている。このうち分注部74a〜74cは、上記実施の形態1で説明した分注部14と同様に液体保持部、計量部、吐出部、および流路をそれぞれ有する。このような構成を有する蓋部72は、上記実施の形態2に係る反応容器2の蓋部22を3つ連結したものと本質的に同じである。
図42は、以上の構成を有する容器部71と蓋部72とを嵌合して反応容器7を組み立てた状態を示す図であり、図41のI−I線縦断面図である。この図42からも明らかなように、容器部71と蓋部72とを嵌合して反応容器7を組み立てた状態(嵌合状態)において、蓋部72が容器部71に対してスライドする方向に平行な方向(図42のy軸方向)の容器部71の長さと蓋部72の長さは等しい。また、図42に示す状態、すなわち容器部71の凸型形状をなす側面と蓋部72の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態(初期状態とする)において、保持部73a〜73cの開口は主板部72aによってそれぞれ外部から遮蔽されている。
図43は、各保持部に試薬を導入する際の容器部71と蓋部72の位置関係を示す図であり、図42に示す状態からy軸負の方向(図43で左方)に蓋部72をスライドさせて位置決めを行った状態を示す断面図である。さらに、図44は、各保持部に試料を分注する際の容器部71と蓋部72の位置関係を示す図であり、図42に示す状態からy軸正の方向(図43で右方)に蓋部72をスライドさせて位置決めを行った状態を示す断面図である。
この実施の形態7に係る反応容器7は、上記実施の形態2に係る反応容器2を3つ連結したものに相当するため、図42に示す状態は、図9に示す状態と本質的に同じである。また、図43および図44にそれぞれ示す状態は、図10および図11にそれぞれ示す状態と本質的に同じである。したがって、図43に示す状態での試薬の導入は図10に示す状態での試薬の導入と同様に実施することができ、図44に示す状態での試料の分注は、図11に示す状態での試料の分注と同様に実施することができる。
以上の説明においては、容器部71に形成される保持部の数と、蓋部72に設けられる分注部および開口部の数はすべて3であったが、これはあくまでも一例に過ぎず、その数は任意であり、互いに異なっていてもよい。例えば、蓋部に設けられる分注部は一つであってもよい。このように分注部が一つの場合には、予め分注部内の液体保持部に対して一度だけ液体を導入し、その後は蓋部のスライドと蓋部上面への圧力の加減圧によって各保持部への試料の分注を行えばよく、効率的な試料の分注を実現することが可能となる。
また、容器部71に形成される複数の保持部の容積が異なっていてもよいし、蓋部に形成される複数の分注部のうち液体保持部や計量部の容積がそれぞれ異なっていてもよい。例えば、各計量部の容積を変えることにより、容積の異なる試料を各保持部に吐出させたり、種類の異なる試料を各保持部に吐出させたりすることが可能となる。
以上説明した本発明の実施の形態7によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態7によれば、容器部か複数の保持部を備えるとともに、蓋部が複数の分注部を備えているため、より多様な試料の分注や試薬の導入を効率よく実施することが可能となる。
(実施の形態8)
図45は、本発明の実施の形態8に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器8は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部81と、この容器部81の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部82とを備え、これら容器部81と蓋部82とが4本の連結部材86によって連結されて成る。
容器部81は、平板状の台座部81aと、この台座部81aと直交する方向に突出する突出部81bとを備える。台座部81aの底面をなす長方形の四隅には、連結部材86を挿通するための4つの挿通用孔部811a、811b、811c、および811dが、底面と直交する方向に穿設されている。容器部81の一つの側面(図45のx−z平面に平行な側面)は凸型形状をなし、この凸型形状をなす側面と直交する方向(図45のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。この突出部81bの略中央部には、試料や試薬を保持し、それらの試料と試薬とを反応させる保持部83が形成されている。この保持部83は、突出部81bの上端面に平行な正方形状の開口を有しており、その保持部83内部は直方体状の空間をなす。
蓋部82は、平板状の主板部82aと、この主板部82aの対向する端部の各々から当該主板部82aと直交する方向に延出する側板部82bおよび82cとを備える。主板部82aの四隅には、連結部材86を挿通するために、4つの挿通用孔部821a、821b、821c、および821dが主板部82aと直交する方向に穿設されている。この蓋部82の一つの側面(図45のx−z平面に平行な側面)は、容器部81の凸型形状をなす側面と嵌合可能な凹型形状をなす。また、蓋部82は、その凹型形状をなす側面と直交する方向(図45のy軸方向)に沿って一様な外形を有する。
上述した容器部81と蓋部82とを嵌合して反応容器8を組み立てる際、容器部81の挿通用孔部811a〜811dと蓋部82の挿通用孔部821a〜821dとで対応する挿通用孔部同士(ここでは符号の末尾のアルファベットが同じ挿通用孔部同士を対応させる)の位置を上下方向に合わせ、それらを一つの連結部材86によって連結固定する。これにより、容器部81と蓋部82とが強固に連結された反応容器8が形成される。なお、連結部材86の本数は4本以外でも構わない。例えば、突出部81bを挟んだ両側で固定されていればよいのであれば、少なくとも2本の連結部材86があればよい。このように、連結部材86の本数は、反応容器8の大きさや用途に応じて適宜定められる。
以上の構成を有する反応容器8において、連結部材86を介して容器部81と蓋部82とを連結固定する前に、予め保持部83に所定量の試薬を導入することも可能である。この場合には、試薬導入後に容器部81と蓋部82とを連結固定することによって、保持部83の開口を外部から遮蔽した状態を確実に保ちながら反応容器8の保存または運搬を行うことができる。したがって、導入した試薬の液体成分が蒸発したり漏れ出したりするのを確実に防止することができる。
試薬を導入した後、分注部84によって試料の分注を行う際には、まず連結部材86を切断し、上述した各実施の形態と同様に、蓋部82が容器部81に対して所定の一次元方向(図45のy軸方向)にスライド可能な状態にする必要がある。図46は、連結部材86を所定の切断装置によって切断する場合の概要を示す説明図である。この図46に示す切断装置801は、反応容器8を自動または手動により誘導するガイド用通路802と、このガイド用通路802の途中に設けられて連結部材86を切断する切断部803とを備える。
この切断装置801を用いた連結部材86の切断は次のように行われる。ガイド用通路802に導入された反応容器8が、そのガイド用通路802を所定の方向(図46で水平右方)に進んでいくと、切断部803が連結部材86を通過する際にまず進行方向に対して前方側(図46で右方)に位置する連結部材86が先に切断される。その後、反応容器8がさらにガイド用通路802を進んでいくと、進行方向に対して後方側(図46で左方)に位置する連結部材86が切断される。したがって、図46は、全ての連結部材86の切断が終了した後の状態を示している。なお、連結部材86は、例えば樹脂を用いて形成することができる。この場合には、切断部803として半田こてやカッターなど、樹脂を溶融または切断可能なものを適用すればよい。
全ての連結部材86が切断された反応容器8は、蓋部82が容器部81に対して所定の1次元方向にスライド可能となるので、その後試料を分注部84(の液体保持部)に導入し、蓋部82を適宜スライドさせることによって分注部84の吐出部が保持部83の直上に来るように位置決めを行う。その後、分注部84に導入された試料に大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることによって所定量の試料を保持部83に吐出させる。
以上説明した本発明の実施の形態8によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態8によれば、反応容器を使用するまでは容器部と蓋部とを連結固定し、保持部内の試薬を密閉することができるので、試薬を保持したまま保存または運搬することが可能となる。
なお、連結部材は必ずしも樹脂製である必要はない。例えば、ピアノ線や糸などを用いて容器部と蓋部とを連結してもよいし、適当な粘着テープによってその両者を連結してもよい。これらの場合には、切断部803をカッター等の刃物類によって実現すればよい。
ところで、上述した切断装置801の機能を、反応容器を用いた検体試料の分析を行う分析装置に具備させてもよい。これにより、連結部材の切断から検体試料の分析までの一連の工程を円滑かつ迅速に行うことができる。
(実施の形態9)
図47は、本発明の実施の形態9に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器9は、外部から導入される試料や試薬を保持する容器部91と、この容器部91の上方に配置されて所定の1次元方向にスライド可能な蓋部92と、容器部91および蓋部92から成る組を4組収納可能な中空状のカートリッジ93と、を備える。
図48は、容器部91および蓋部92の構成を示す図である。同図に示す容器部91は、平板状の台座部91aと、この台座部91aの底面と直交する方向に突出して成る突出部91bとを備える。この突出部91bには、同形状をなす3つの保持部94が設けられる。他方、蓋部92は、平板状の主板部92aと、この主板部92aの対向する端部の各々から当該主板部92aと直交する方向に延出する側板部92bおよび92cと、を備える。主板部92aには同形状をなす3つの計量部95が設けられており、各計量部95の底面には、反対側の主板部92a表面に貫通する吐出部96が穿設されている。
容器部91と蓋部92とを嵌合した状態(嵌合状態)において、蓋部92が容器部91に対してスライドする方向に平行な方向の容器部91の長さと蓋部92の長さは等しい。また、容器部91の凸型形状をなす側面と蓋部92の凹型形状をなす側面とを同一平面上に揃えた状態(カートリッジ93へ収納される状態)において、各保持部94の開口は主板部92aによって外部から遮蔽されている。
図49は、図47のJ−J線断面図であり、反応容器9の縦断面図である。この図49に示すように、カートリッジ93には、液体を保持する中空円筒形状の液体保持部97が設けられている。この液体保持部97は、当該カートリッジ93に容器部91と蓋部92とから成る組を最大限収納したときの各蓋部92上の計量部95の総数と同じ数だけ設けられる(図47に示す場合には12個)。各液体保持部97は、容器部91と蓋部92とを嵌合して当該カートリッジ93に収納したときに蓋部92に形成される計量部95うちのいずれかの直上に位置するように形成されており、各液体保持部97の径は直下に位置する計量部95の径よりも大きい。なお、液体保持部97の下部に、計量部95の径よりも小さい径を有する流路を形成し、この流路を介して液体保持部97から計量部95に試料を導入するようにしてもよい。
ところで、容器部91に形成される保持部94は、カートリッジ93に収納される状態において吐出部96の下に位置しないことが好ましい(図49を参照)。これは、カートリッジ93に容器部91と蓋部92とを収納するに先立って容器部91に試薬を導入した場合、カートリッジ93に収納した状態で保持部94内の試薬の蒸発や変性を防止することができるからである。
以上の構成を有する反応容器9において、計量部95に導入した試料を吐出して分注する際には、容器部91と蓋部92とをカートリッジ93から取り出し、吐出部96が保持部94の開口面の直上に位置するように蓋部92を容器部91に対してスライドさせることにより、蓋部92の容器部91に対する位置決めを行う。その後、上述した各実施の形態で説明したのと同様、大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることにより、計量部95で正確に計量された試料を吐出部96から吐出させる。
なお、容器部91や蓋部92の表面に疎水性を持たせてもよい。このようにすることで、仮にそれらをカートリッジ93から取り出すときに計量部95に導入されない試料が漏れ出しても、疎水性のために容器部91や蓋部92に試料が浸透することはないのでより好ましい。
以上説明した本発明の実施の形態9によれば、簡易な構成によって内容物の蒸発を確実に防止し、小型化を図る上でも好適な反応容器を提供することができる。また、分注部を蓋部に設けることにより、試料分注時の分注部との相対的な位置決めを簡易な構成のもとで精度よく行うことが可能となる。この結果、試料を微量化しつつも精度の高い分析を行うことができる反応容器を低コストで提供することが可能となる。
また、この実施の形態9によれば、複数組の容器部と蓋部とを一つのカートリッジに収納することにより、蓋部に設けられる計量部に一括して試料を導入することが可能となる。このため、試料導入の手間が少なくて済み、試料の導入をより迅速に行うことができる。
さらに、この実施の形態9によれば、容器部に設けられる保持部に予め試薬を導入してから容器部と蓋部とをカートリッジに収納する場合、保持部の開口面を蓋部で塞ぐ上、さらにカートリッジで容器部と蓋部とを保持するため、保持部を外部から遮蔽し、保持部内の試薬の蒸発や漏れを確実に防止することができる。
また、この実施の形態9によれば、特に容器部や蓋部を小型化した場合、それらをカートリッジにまとめて収納することにより、分注時の取り扱いが一段と容易になる。
なお、一つのカートリッジに収納可能な容器部と蓋部の数は上述したものに限られるわけではない。また、カートリッジに収納する容器部と蓋部についても、上述した容器部91と蓋部92の組以外のサイズを有するものを適用することができる。例えば、上記実施の形態2に係る反応容器2(図8を参照)、および上記実施の形態7に係る反応容器7(図41を参照)を適宜組み合わてカートリッジ93に過不足なく収納した場合も、得られる効果は同じである。
(実施の形態9の変形例)
図50は、この実施の形態9の一変形例に係る反応容器の構成を示す斜視図である。同図に示す反応容器901は、上述した反応容器9とは異なるカートリッジ98を備える。このカートリッジ98は、上面部に正方形状の開口部99が設けられており、これが液体保持部の機能を果たす。したがって試料を導入する際には、この開口部99に試料を導入することにより、蓋部92の上面に形成される各計量部95に試料を一括して導入することができる。
計量部95に導入された試料を各保持部94に分注する際には、カートリッジ98から容器部91と蓋部92と取り出し、吐出部96が保持部94の開口面の直上に位置するように蓋部92を容器部91に対してスライドさせることによって位置決めを行った後、計量部95で正確に計量された試料に大気圧よりも顕著に大きい圧力を加えることによってその試料を吐出させる。
この実施の形態9の一変形例によれば、各計量部への試料の導入が一段と容易なため、カートリッジ内の全ての保持部に対して同じ試料を一括して導入する場合などに好適である。
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜9を詳述してきたが、本発明はそれらの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態を適当に組み合わせることによって実現される実施の形態も含まれることは勿論である。このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。