以下、本発明の実施の形態につき代表的な例を示して詳細に説明する。
本発明の放射線硬化性組成物は、シリカ粒子、及び、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを含有する放射線硬化性組成物であって、シリカ粒子の含有量が25重量%以下で、24℃における粘度が0.5〜10Pa・sの範囲にあり、且つ、粘度と温度との関係を示す下記式(1)における定数bが2000以下であることを特徴とする。
logη=a+b/T (1)
〔式(1)において、ηは粘度(Pa・s)、Tは絶対温度(K)、a及びbは定数である。〕
以下、その放射線硬化性組成物を構成する各成分について、詳述する。
[放射線硬化性組成物の構成成分]
(1)シリカ粒子、及びその他無機成分
本発明の放射線硬化性組成物において、シリカとは、珪素酸化物一般を指し、珪素と酸素の比率や、結晶であるかアモルファスであるかは問わない。該シリカ粒子としては、工業的に販売されている、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、粉体のシリカ粒子等の外、アルコキシシランなどの原料から誘導、合成されたシリカ粒子も挙げることができるが、放射線硬化性組成物としての混合や分散のしやすさから、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、或いは、アルコキシシランなどの原料から誘導、合成されたシリカ粒子がより好ましい。
本発明において、シリカ粒子は超微粒子であることが好ましく、数平均粒径は、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。数平均粒径が小さすぎると、超微粒子の凝集性が極端に増大して、硬化物の透明性や機械的強度が極端に低下する傾向となったり、量子効果による特性が顕著でなくなる傾向がある。又、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは15nm以下、最も好ましくは12nm以下である。
また、該シリカ粒子は、好ましくは粒径30nmより大きいシリカ粒子が、さらに好ましくは粒径15nmより大きいシリカ粒子が、放射性硬化性組成物に対して、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。又は硬化物に対して好ましくは1体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。多く含有していると、光の散乱が大きくなるので、透過率が低下し、好ましくない。
上記数平均粒径の決定には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察像より測定される数値を用いる。即ち、観察される超微粒子像と同面積の円の直径を該粒子像の粒径と定義する。こうして決定される粒径を用い、例えば公知の画像データの統計処理手法により該数平均粒径を算出するが、かかる統計処理に使用する超微粒子像の数(統計処理データ数)はできるだけ多いことが望ましい。例えば、再現性の点で、無作為に選ばれた該粒子像の個数として最低でも50個以上、好ましくは80個以上、更に好ましくは100個以上とする。硬化物中の体積%の計算は、上記により決定される粒径を直径とする球の体積で換算する。
溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子としては、例えば、固形分10〜40重量%のものを用いることができる。その分散媒の具体例としては、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ等のエステル類;ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン等の炭化水素類;ケトン類;エーテル類;およびこれらの混合物が挙げられ、これらの中でも、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、およびこれらの混合物が、有機成分との相溶性がよく、得られる硬化物の透明性の点から好ましい。尚、ここで、シリカ粒子としては、界面活性剤やシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を施したものを用いることができる。表面処理剤を用いることで、凝集や粒子の粗大化を防止でき、高分散でかつ透明な放射線硬化性組成物を得ることができる。
また、アルコキシシランなどの原料から誘導、合成されたシリカ粒子としては、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子が挙げられる。従来からある通常のシリカ粒子は、一般にその粒径分布がブロードで、例えば50nmより大きな粒径の粒子を含んでいるために、透明性が不良となることが多く、また粒子が沈降しやすい問題もある。大きな粒径の粒子を分離したもの(いわゆるカット品)も知られているが、2次凝集しやすい傾向があり、透明性が損なわれるものがほとんどである。その点、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解という特定の合成法によれば、非常に小さな粒径のシリカ粒子が安定して得られ、かつそのシリカ粒子は凝集しにくい性質を有しているので、高い透明性を得ることができる利点がある。
ここで、加水分解物とは、少なくとも加水分解反応を含む反応により得られる生成物を指し、脱水縮合などを伴っていてもよい。また、加水分解反応は脱アルコール反応も含む。アルコキシシランは、珪素原子にアルコキシ基が結合した化合物であって、これらは、また加水分解反応及び脱水縮合反応(或いは脱アルコール縮合)によりアルコキシシラン多量体(オリゴマー)を生成する。後述する水や溶媒に対してアルコキシシランオリゴマーが相溶性を持つために、本発明に用いるアルコキシシランのアルキル鎖は長すぎないことが好ましく、通常炭素数1〜5程度であり、好ましくは炭素数1〜3程度である。具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
本発明のシリカ粒子は、このアルコキシシランオリゴマーを出発原料とするのが好ましい。アルコキシシラン単量体(モノマー)を出発原料としないのは、粒径の制御が難しいこと、粒径の分布がブロードになりやすく、粒径が揃いにくいこと、等の傾向があるため、透明な組成物を得にくくなること、及びモノマーに毒性を有する種類のものがあり、安全衛生上好ましくないこと、等の理由による。オリゴマーの製造は、例えば特開平7−48454号公報に記載の方法等公知の方法によって行うことができる。
アルコキシシランオリゴマーの加水分解は、特定の溶媒中にてアルコキシシランオリゴマーに一定量の水を加え、触媒を作用させることによって行う。この加水分解反応により、シリカ超微粒子を得ることができる。その溶媒としてはアルコール類、グリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうち1種類ないし2種類以上を組み合わせて使用することができるが、中でもアルコール類、エーテル類、及びケトン類が特に好ましい。
アルコール類の具体例としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール,nブチルアルコール、イソブチルアルコール、オクタノール、n−プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等が挙げられる。エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、メトキシプロパノール、メトキシブタノール等が挙げられる。ケトン類の具体例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。親水性であるシリカ粒子を安定に存在させるためには、これらアルコール類やケトン類のアルキル鎖は短いほうが好ましい。特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メトキシプロパノール、メトキシブタノールである。中でも、メタノール、テトラヒドロフランは、アルコキシオリゴマーの加水分解の際に発生するメタノールを除去し易い利点がある。
該アルコキシシランオリゴマーの加水分解反応に必要な水の量は、アルコキシシランオリゴマーの有するアルコキシ基のモル数の、通常0.05倍以上、より好ましくは0.3倍以上である。水の量が少なすぎると、シリカ粒子が十分な大きさに成長せず、従って所期の特性を発現できないため好ましくない。但し、水の量は、通常、アルコキシシランオリゴマーが有するアルコキシ基のモル数の1.5倍以下、より好ましくは1.3倍以下とする。水の量が過度に多いと、アルコキシシランオリゴマーがゲルを形成しやすくなるため好ましくない。アルコキシシランオリゴマーは使用される溶媒や水に対して相溶性があることが好ましい。
加水分解に際して用いる触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、金属アルコキシド、ホウ素化合物等のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができるが、とりわけ金属キレート化合物及び有機酸が好ましい。該金属キレート化合物の具体例としてはアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトナート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)等が挙げられ、これらの中から1種類ないし2種類以上を組み合わせて用いることができるが、とりわけアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)が好ましく用いられる。
また、有機酸の具体例としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの中から1種類ないし2種類以上を組み合わせて用いることができるが、とりわけマレイン酸が好ましく用いられる。マレイン酸を用いた場合は、放射線硬化を行って得た硬化物の色相が良好で、黄色みが小さい傾向があるという利点があり、好ましい。
これら触媒成分の添加量は、その作用を十分に発揮する範囲であれば特に制限はないが、通常アルコキシシランオリゴマー100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.5重量部以上である。但しあまり多量でも作用は変わらないため、通常、10重量部以下が好ましく、より好ましくは5重量部以下である。
アルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子を用いることで、従来一般に充填成分として用いられているシリカ粒子に比べて、遙かに粒径の揃った微細な超微粒子を放射線硬化性組成物に添加できる利点がある。また、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子は凝集しにくい性質もあるため、放射線硬化性組成物に均一に分散できる利点もある。これによれば、シリカ粒子を大量に添加しても放射線透過性を損なうことがないので、寸法安定性や機械的強度を高めるために十分な量のシリカ粒子を添加できる。さらに、このような特定の製法により得られるシリカ粒子と、後述するシランカップリング剤等のシリカ粒子の表面処理剤を併用し、これに後述するモノマー又は/及びそのオリゴマーを添加することで、適切な量のシリカ粒子を凝集させずに分散させられる利点がある。従って、本発明により得られる放射線硬化物は、透明性と寸法安定性、機械的強度、密着性等を兼ね備えた優れた性質を持つ利点がある。
本発明において、通常、上記シリカ粒子、特に上述のように形成したシリカ粒子は極性が強く水やアルコール等に対して相溶性を有し、後述するモノマー又は/及びそのオリゴマーには相溶性を有しない場合が多い。このため、モノマー及び/又はそのオリゴマーを添加した際に凝集を起こしたり白濁を起こしたりする虞があり、その防止のため、上記シリカ粒子は、必要に応じて、粒子表面を表面処理により保護することができる。
即ち、親水性官能基及び疎水性官能基を有する表面処理剤の添加等によりシリカ粒子表面を疎水性化し、モノマー又は/及びそのオリゴマーに対する相溶性を持たせ凝集や白濁を防ぐものである。その表面処理の方法としては、分散剤や界面活性剤の添加、又はシランカップリング剤等で表面を修飾する方法が好ましく用いられる。
分散剤としては、各種インク、塗料、電子写真用トナーなどの微粒子分散液に使用される、高分子分散剤から選択して使用することもできる。このような高分子分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤等から適宜選択して使用される。具体例としては、商品名で、例えば、「EFKA」(エフカ アディティブス社製)、「Disperbyk」(ビックケミー(BYK)社製)、「ディスパロン」(楠本化成社製)等を挙げることができる。分散剤の使用量は、シリカ粒子に対して10〜500重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜300重量%である。
また、界面活性剤としては特に限定はないが、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、又は両性系の高分子或いは低分子の各種非水系用界面活性剤から選択して用いることができる。具体的には、スルホン酸アミド系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース3000」)、ハイドロステアリン酸系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース17000」)、脂肪酸アミン系、ε−カプロラクトン系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース24000」)、1,2−ヒドロキシステアリン酸多量体、牛脂ジアミンオレイン酸塩(ライオンアクゾ社製「デュオミンTDO」)などが挙げられる。界面活性剤の使用量は、シリカ粒子に対して10〜500重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜300重量%である。
特に、シリカ粒子はシランカップリング剤で表面処理することが好ましい。シランカップリング剤は、珪素原子にアルコキシ基及び官能基を有するアルキル基が結合した構造の化合物で、シリカ粒子の表面を疎水性化する役割を持つ。そのシランカップリング剤としては、その目的を達成するものであれば特に限定されないが、放射線硬化性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキルトリアルコキシシランが特に好ましい。その前者の具体例としては、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、又、後者の具体例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、エイコシルトリエトキシシラン、トリアコンチルトリエトキシシラン等、及び、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等によってエステル化された構造のアルコキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤による表面処理では、基本的には、シランカップリング剤のアルコキシ基とシリカ粒子表面上のヒドロキシ基との間で脱アルコール反応を経てSi−O−Si結合を生じることとなる。但し、該シランカップリング剤は、シリカ粒子の表面処理時に部分的に加水分解される場合がある。従って、シリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理した後の組成物としては、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解生成物、及び、それらの縮合物からなる群より選ばれる化合物により表面処理されているシリカ粒子を含む。この他、シランカップリング剤同士及び/又はシランカップリング剤とその加水分解生成物との縮合物も存在する場合がある。ここで、シランカップリング剤の加水分解生成物とは、シランカップリング剤が含有するアルコキシシラン基の一部又は全部が加水分解反応を経てヒドロキシシランすなわちシラノール基になったものであり、例えば、シランカップリング剤がエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランの場合は、エポキシシクロヘキシルエチルヒドロキシジメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルジヒドロキシメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリヒドロキシシランがそれにあたる。また、シランカップリング剤同士及び/又はシランカップリング剤とその加水分解生成物との縮合物とは、アルコキシ基がシラノール基と脱アルコール反応を経てSi−O−Si結合を生じたもの、あるいはシラノール基が他のシラノール基と脱水反応を経てSi−O−Si結合を生じたものである。
本発明において、シランカップリング剤の使用量は、シリカ粒子の1重量%以上が好ましく、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。シランカップリング剤の使用量が少なすぎると、シリカ粒子表面が十分に疎水性化されず、モノマー及び/又はそのオリゴマーとの均一な混合に支障を来す場合がある。逆に多すぎるとシリカ粒子と結合しないシランカップリング成分が多数混入することになり、得られる硬化物の透明性、機械物性等に悪影響を及ぼし易くなるため好ましくない。好ましくは400重量%以下、より好ましくは350重量%以下、更に好ましくは300重量%以下である。
なお、本発明においては、シリカ粒子以外のその他の無機成分を含有することもできる。その他の無機成分には特に制限はないが、例えば無色の金属又は、無色の金属酸化物が用いられる。具体的には銀、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、粘土鉱物粉末等が挙げられる。好ましくは、アルミナ、酸化亜鉛、又は酸化チタンである。これらのその他の無機成分の製造法としては特に限定はないが、市販品をボールミル等の粉砕機で粉砕する方法、ゾルゲル法で製造する方法等の方法が粒径を小さくできるので好ましい。さらに好ましくは、ゾルゲル法で製造する方法である。また、シリカ粒子以外のこれらの無機成分においても、必要に応じて粒子表面を表面処理により保護することができる。
本発明において、その他の無機成分は超微粒子であることが好ましく、数平均粒径は好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。数平均粒径が小さすぎると、超微粒子の凝集性が極端に増大して、硬化物の透明性や機械的強度が極端に低下する傾向となったり、量子効果による特性が顕著でなくなる傾向がある。又、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは15nm以下、最も好ましくは12nm以下である。
また、該その他の無機成分は、好ましくは粒径30nmより大きいその他の無機成分が、さらに好ましくは粒径15nmより大きいその他の無機成分が、放射性硬化性組成物に対して、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。又は硬化物に対して好ましくは1体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。多く含有していると、光の散乱が大きくなるので、透過率が低下し、好ましくない。これらの数平均粒径の決定方法としては、前述と同様の方法が挙げられる。
本発明の放射線硬化性組成物中のシリカ粒子及びその他の無機成分の含有量は、組成物の粘度の温度依存性を低下させるためや、硬化物の寸法安定性や硬度特性、或いは積層体としての層間密着性を高めるために、含有させることが必要であり、放射線硬化性組成物に対して、0.1重量%以上含むことが好ましい。より好ましくは1重量%以上である。または放射線硬化物に対して0.05体積%以上含むことが好ましい。より好ましくは0.5体積%以上である。
但し、組成物の粘度の温度依存性を低く保ため、また硬化物の透明性や機械的強度を高く保つためには多すぎないことが好ましく、放射線硬化性組成物に対して、25重量%以下とし、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下とする。又は放射線硬化物に対して好ましくは13体積%以下とし、より好ましくは10体積%以下、更に好ましくは7体積%以下とする。このうち、シリカ粒子及びその他の無機成分の合計量に対するシリカ粒子の含有割合としては、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、上限は特に存在しない。
(2)ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマー
本発明の放射線硬化性組成物において、ウレタン結合を有するモノマーとしては、例えば、クロロギ酸エステルとアンモニア又はアミンとを反応させる方法、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物とを反応させる方法、尿素とヒドロキシル基を有する化合物とを反応させる方法等により得られる化合物、及び該化合物が反応性基を有する場合にそれをオリゴマー化した化合物を挙げることができる。このうち、一般的にはウレタンオリゴマーを用いるのが簡便であり、該ウレタンオリゴマーは、通常、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシル基を有する化合物とを常法により付加反応させることにより製造される。
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート類が挙げられる。これらのうち、得られるウレタンオリゴマーの色相が良好である点で、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートの1種類又は2種類以上を組み合わせて用いるのが好ましい。
ヒドロキシル基を有する化合物としては、2個以上のヒドロキシル基を有するポリオール類が好ましく用いられ、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等のアルキルポリオール及びこれらの多量体であるポリエーテルポリオール、及びこれらのポリオールや多価アルコールと多塩基酸から合成されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらにより得られるウレタンオリゴマーは、ヒドロキシル基を有する化合物として該ポリエーテルポリオールを含有するものであるのが好ましく、該ウレタンオリゴマー1分子中のポリエーテルポリオールに由来する構成単位の平均含有量が、20重量%以上であるのが好ましく、25重量%以上であるのが更に好ましく、30重量%以上であるのが特に好ましい。また、90重量%以下であるのが好ましく、80重量%以下であるのが更に好ましく、70重量%以下であるのが特に好ましい。このポリエーテルポリオールの含有割合が小さすぎると、これにより得られるウレタンオリゴマーを含有する組成物の硬化物として脆くなり、また弾性率が高過ぎて内部応力を生じ易く、変形の原因になる傾向となり、逆に大きすぎると、硬化物として表面硬度が低下し、傷が付き易くなる等の問題を生じ易い傾向となる。
また、上記ヒドロキシル基を含有する化合物の一部を、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基〔なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとし、以降も同様とする。〕を併せ持つ化合物とすることで、ウレタンアクリレートオリゴマーを製造することができる。その(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物の使用量としては、通常、全ヒドロキシル基含有化合物中の30〜70%であり、その割合に応じて、得られるオリゴマーの分子量を制御することができる。
ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコール化合物のモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。
さらに、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物1分子と、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物2分子とを付加反応させることにより、両末端に(メタ)アクリロイル基を有する、ウレタンオリゴマーを製造することができる。特に、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーは、得られる樹脂硬化物の密着性や表面硬化度がさらに増すという利点がある。
これらのイソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物との付加反応は、公知の方法、例えばイソシアネート基含有化合物存在下に、ヒドロキシル基含有化合物と付加反応触媒、例えばジブチルスズラウレートとの混合物を50〜90℃の条件下で滴下することにより行うことができる。
上述のようなウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーとしては、透明性の高い材料が好ましく、例えば、芳香環を有していない化合物であるのが好ましい。芳香環を含有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを用いた硬化性組成物及び硬化物は、得られるものが着色物であったり、最初は着色していなくても保存中に着色したり着色が強まってしまうこと、いわゆる黄変、がある。これは芳香環を形成する二重結合部分が、エネルギー線によってその構造を不可逆的に変化させることがこれらの原因であると考えられている。このため、該モノマー又は/及びそのオリゴマーは、芳香環を有しない構造を持つことで、色相の悪化が無く、かつ光線透過性も低下することなく、オプトエレクトロニクス用途など、無色透明が要求される用途への応用に特に適する利点がある。
ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーにおいて、芳香環を有しないモノマー又は/及びそのオリゴマーは、上記の中で、芳香環を含まないイソシアネート基含有化合物と芳香環を含まないヒドロキシル基含有化合物とを付加反応することにより製造できる。例えば、イソシアネート化合物として、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートの1種類又は2種類以上を組み合わせて用いるのが好ましい。
本発明において、経時においても被着材との密着性が低下しないという点で、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーは、更に、例えば、スルホン酸基、燐酸基、カルボキシル基、及びそれらの3級アミン化合物中和塩若しくは金属塩等の酸性基を有するのが好ましい。
本発明の放射線硬化性樹脂組成物において、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーとしては、通常、放射線硬化性官能基を有する。これにより、ウレタン結合を有するモノマーやオリゴマーが放射線硬化網目構造に組み込まれて一体となるため、凝集性が増し、結果として凝集破壊が起きにくく、密着性が向上する利点がある。また、酸素の自由な移動を制限する効果も高まるので、表面硬化度も向上する利点がある。
放射線硬化性基としては、放射線による重合性を有する基であれば特に制限はないが、ラジカル反応性を有する基、光カチオン硬化型グリシジル基のような光カチオン反応性を有する基、光アニオン反応性を有する基、及びチオール基のような光チオール・エン反応性を有する基が挙げられ、このなかでもラジカル反応性を有する基が好ましい。
このようなラジカル反応性を有する官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基などが挙げられるが、そのなかでも重合反応速度、透明性、塗布性の点から(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。(メタ)アクリロイル基を用いる場合、全放射線硬化性官能基数の50%以上が(メタ)アクリロイル基であれば構わない。
さらに該モノマー又は/及びそのオリゴマーは、1分子中に、放射線硬化性基を2個以上有する化合物を主体とするのが好ましい。ここで「主体とする」とは、全モノマー又は/及びそのオリゴマーの50重量%以上を占めることを言う。この場合、放射線による重合反応により3次元の網目構造を形成し、不溶不融の樹脂硬化物を与えることができる。本発明においては、放射線硬化性官能基を、活性エネルギー線(例えば紫外線)、電子線などの放射線で重合させることにより、超微粒子が高度に分散された状態のまま高速で硬化させることができる。放射線硬化は一般に秒単位の非常に高速で進む。従って、超微粒子がその硬化過程において移動したり凝集したりといった好ましくない現象を防ぐことが可能となり、従って高度な透明性を有する硬化物を得ることができる。これに対して熱重合は数十分〜数時間単位と時間がかかるため、重合中に超微粒子が移動し凝集したりして白濁してしまう虞があるため好ましくない。
本発明においては、ウレタン結合を有するモノマーのみを用いてもよいし、ウレタン結合を有するオリゴマーのみを用いてもよいし、両者を混合して用いても良い。該モノマーは、該オリゴマーと比較して低粘度な液状であるものが多いので、他の成分と混合する場合に有利である。また、コーティングや注型成形等の成形がしやすい利点がある。ただし、中には毒性を有するものがあり、注意が必要である。一方、オリゴマーは、概して粘度が高く、取り扱いが難しい場合がある。しかしながら、表面硬化度に優れ、硬化収縮が小さい傾向があり、また硬化物の機械的特性、特に引っ張り特性や曲げ特性が良好であるものが多い利点がある。
また、本発明においてウレタン結合を有するモノマーやオリゴマーは親水性であっても良いが、疎水性であることが好ましい。また、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーとしては、なかでも分子量が比較的高いオリゴマーを用いるのが好ましい。好ましくは分子量が1000以上であり、より好ましくは分子量2000以上である。また、通常、5万以下、好ましくは3万以下、さらに好ましくは2万以下、より好ましくは1万以下、特に好ましくは5000以下である。
このような比較的高分子量の該オリゴマーを用いることにより、硬化物の表面硬化度、密着性が向上する傾向がある。その理由は明らかではないが、該オリゴマーを含む組成物は、硬化収縮も小さくなる傾向があることから、官能基密度が比較的小さく硬化反応が効率的に行われること、硬化収縮による密着界面における残留歪みが小さいこと等が、表面硬化度及び密着性向上に関係していると推定される。なお、このような高分子量のオリゴマーは1種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いても良い。また、より低分子量の他のモノマーやオリゴマーと併用しても良い。分子量が著しく高いオリゴマーを用いる場合には、組成物の粘度が上昇し、成形性や作業性が悪化することがあるが、この場合は低分子量のオリゴマーやモノマー、反応性希釈剤の添加量を増加させることにより改善できる。
本発明の放射線硬化性組成物に、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを用いると、得られる硬化物の経時密着性や表面硬化度が増すという利点がある。ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを用いたときに密着性が向上する現象は、ウレタン結合の電気的極性によって、被着体との相互作用が強められることに由来すると考えられる。また、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを用いたときに表面硬化度が向上する理由は明らかではないが、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを一定量以上含有する組成物中においては、ウレタン結合の電気的極性に由来する分子内水素結合や分子間水素結合が形成され易いために、有機分子の凝集性が高められ、結果として酸素の組成物中における自由な移動を阻害し、ラジカル重合阻害が抑制されていること等が、その主な理由であると推定される。
該モノマー又は/及びそのオリゴマーの含有量としては、通常、放射線硬化性組成物中に40重量%以上が好ましく、さらに好ましくは50重量%以上であり、又、95重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは90重量%以下である。少なすぎると硬化物を形成するときの成形性や機械強度が低下し、クラックが生じやすくなるため好ましくない。逆に多すぎると、硬化物の表面硬度が低下するため好ましくない。
(3)他のモノマー又は/及びそのオリゴマー
本発明の放射線硬化性組成物には、前記ウレタン結合を有するモノマー及び/又はそのオリゴマーの外に、その他の放射線硬化性モノマー又は/及びそのオリゴマー、好ましくは2官能又は3官能の(メタ)アクリレート化合物を混合して用いてもよい。
該2官能又は3官能の(メタ)アクリレート化合物としては、脂鎖式ポリ(メタ)アクリレート、脂環式ポリ(メタ)アクリレート、芳香族ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン等の2価の(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、グリセリントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート等の3価の(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート等の4価の(メタ)アクリレート類等の不定多価の(メタ)アクリレート類等が例示される。これらのうち、架橋生成反応の制御性から上記2価の(メタ)アクリレート類は好ましく用いられる。また、硬化物の架橋構造の耐熱性、表面硬度の向上等を目的として、3官能以上の(メタ)アクリレート類が好ましく添加される。その具体例としては、上記に例示されたトリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート等の他、イソシアヌレート骨格を有する3官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
また、ポリエーテル(メタ)アクリレートを用いると、組成物の粘度の温度依存性を低下させ得る場合がある。そのポリエーテル(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリブチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、またはS等のビスフェノールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、またはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、またはS等のビスフェノールの水添誘導体のジ(メタ)アクリレート、及び、各種ポリエーテルポリオール化合物と他の化合物とのブロック、またはランダム共重合体のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
更に、接着性、密着性を向上させる目的で、水酸基を含有した(メタ)アクリレート化合物が好ましく添加される。具体的な化合物の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記に例示の(メタ)アクリレート類のうち、得られる重合体の透明性と低光学歪み性をバランスよく実現する点で特に好ましいのは、下記成分A及び下記成分Bを添加使用することである。成分Aは、下記一般式(I) で示される脂環骨格を有するビス(メタ)アクリレートである。
〔式(I) において、Ra 及びRb はそれぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を示し、Rc 及びRd はそれぞれ独立して、炭素数6以下のアルキレン基を示し、xは1又は2を、yは0又は1を、それぞれ表す。〕
上記一般式(I) で示される成分Aの具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのトリシクロデカン化合物及びペンタシクロデカン化合物は、複数種を併用してもよい。
成分Bは下記一般式(II)で表される硫黄原子を有するビス(メタ)アクリレートである。
〔式(II)において、Ra 及びRb は上記一般式(II)におけるRa 及びRb と同じものが用い得、各Re はそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表す。各Arはそれぞれ炭素数が6〜30であるアリーレン基又はアラルキレン基を表し、これらの水素原子はフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。各Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、各Xが全て酸素原子の場合、各Yのうち少なくとも一つは硫黄原子又はスルホン基(−SO2 −)を、各Xのうち少なくとも1つが硫黄原子の場合、各Yはそれぞれ硫黄原子、スルホン基、カルボニル基(−CO−)、並びにそれぞれ炭素数1〜12のアルキレン基、アラルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレンエーテル基、アルキレンチオエーテル基及びアラルキレンチオエーテル基のいずれかを表し、j及びpはそれぞれ独立して1〜5の整数を、kは0〜10の整数を表す。またkが0の時はXは硫黄原子を表す。〕
上記一般式(II)で示される成分Bを具体的に例示すれば、α,α’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−p−キシレン、α,α’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−m−キシレン、α,α’−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−2,3,5,6−テトラクロロ−p−キシレン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルホン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、2,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、5,5′−テトラブロモジフェニルケトン、β,β′−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルエーテル、β,β′−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルチオエーテル等が挙げられ、これらは複数種を併用してもよい。
上記成分A及び成分Bの中でもビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン=ジメタクリレートは優れた透明性及び耐熱性を有し、特に好適に用いられる。これらのその他の放射線硬化性モノマー又は/及びそのオリゴマーの使用量は、無機成分以外の組成物に対して50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは30重量%以下である。
(4)反応性希釈剤
本発明の放射線硬化性組成物には、組成物粘度の調整などの目的で、反応性希釈剤を添加しても良い。本発明において反応性希釈剤とは、低粘度の液状化合物であって、通常、単官能の低分子化合物である。例えば、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、メルカプタン類などが挙げられる。そのような化合物の具体例としては、芳香族ビニル系モノマー類、ビニルエステルモノマー類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸エステル類、ジ(メタ)アクリレート類等が挙げられるが、色相や光線透過性の点で好ましいのは芳香環を有しない構造を持つ化合物である。中でも、(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレートが、良好な色相及び粘度を有する点で、特に好ましく用いられる。
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物も、本目的に使用することができる。組成物のガラスへの密着性が向上する場合があり好ましい。
これらの反応性希釈剤の使用量は、無機成分以外の組成物に対して0.5〜80重量%、好ましくは1〜50重量%である。少なすぎると希釈効果が小さく、一方多すぎると硬化物が脆くなりやすく機械強度を低下させる傾向があり、また硬化収縮も大きくなるので好ましくない。
(5)重合開始剤
本発明の放射線硬化性組成物においては、活性エネルギー線(例えば紫外線)によって進行する重合反応を開始させるために、通常、重合開始剤を添加することが好ましい。かかる重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物であるラジカル発生剤が一般的であり、公知のかかる化合物が使用可能である。かかるラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等が例示され、これらの複数種を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及びベンゾフェノンであり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの併用がより好ましい。
又、これらのラジカル発生剤の中で、本発明の放射線硬化性組成物の硬化物を波長380〜800nmのレーザーを光源とする光記録媒体等に用いる場合は、読み取りに必要なレーザー光が十分に該硬化物層を通過するように、ラジカル発生剤の種類及び使用量を選択して用いることが好ましい。この場合、得られる硬化物層がレーザー光を吸収し難い短波長感光型のラジカル発生剤を使用するのが特に好ましい。このような短波長感光型ラジカル発生剤としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
かかるラジカル発生剤の添加量は、放射線硬化性官能基を含有するモノマー又は/及びそのオリゴマーの総和100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上である。但し、通常10重量部以下、好ましくは9重量部以下、更に好ましくは8重量部以下、特に好ましくは7重量部以下である。この添加量が多すぎると重合反応が急激に進行して光学歪みの増大をもたらすだけでなく色相も悪化する場合があり、また少なすぎると組成物を十分に硬化させることができなくなる場合がある。尚、電子線によって重合反応を開始させる場合には、上記ラジカル発生剤を用いることも出来るが、ラジカル発生剤を使用しない方が好ましい。
又、重合開始剤としては、これらのラジカル発生剤と共に、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の増感剤が併用されてもよい。
(6)溶媒
本発明の放射線硬化性組成物には、溶媒を使用しても良い。溶媒は、無色透明なものが好ましい。具体的にはアルコール類、グリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。アルコール類の具体例としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、オクタノール、n−プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン類の具体例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、又は、アセトンが特に好ましい。但し、溶媒の使用量は、硬化反応時の操作性などの点から考えると少ない方が好ましく、組成物に対して、95重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下、最も好ましくは無溶媒である。
(7)その他の補助成分
本発明の放射線硬化性組成物には、製造される硬化物が本発明の目的を著しく逸脱しない限りにおいて、必要に応じて添加剤などのその他の補助成分を加えてもよい。その他の補助成分としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、あるいは光吸収剤等の安定剤類;ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、金属繊維、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、フラーレン類などを総称して無機充填成分と称する。);帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、表面張力調整剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;モノマー又は/及びそのオリゴマー、または無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類等が例示される。これら補助成分の添加量は、製造される硬化物が本発明の目的を著しく逸脱しない限り制限されないが、通常、放射線硬化性組成物の20重量%以下である。
また、本発明の放射線硬化性組成物には、機械的特性や耐熱性を向上させたり、各種特性のバランスをとるためなどの目的で、放射線硬化性以外のモノマー又は/及びそのオリゴマーを更に混合してもよい。そのモノマー又は/及びそのオリゴマーの種類は特に限定されないが、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂モノマー又は/及びそのオリゴマー等が使用される。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン;ポリメチルメタクリレート;ポリアリレート、「O−PET」(カネボウ社製)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエーテルスルホン;「ゼオネックス」(日本ゼオン社製)、「アートン」(JSR社製)等の脂環式熱可塑性樹脂;「アペル」(三井化学社製)等の環状ポリオレフィン等が挙げられ、透明性及び寸法安定性の観点からポリカーボネート又はポリエーテルスルホンが好ましい。該熱可塑性樹脂の使用量は、無機成分以外の組成物に対して20重量%以下が好ましい。又、熱硬化性樹脂モノマー又は/及びそのオリゴマーとしては、エポキシ系樹脂;「リゴライト」(昭和電工社製)等が用いられ、透明性及び寸法安定性の観点から高純度のエポキシ系樹脂が好ましい。該熱硬化性樹脂の使用量は、無機成分以外の組成物に対して50重量%以下が好ましい。
[放射線硬化性組成物の物性]
本発明の放射線硬化性組成物は、24℃における粘度が0.5Pa・s以上であり、好ましくは1.0Pa・s以上であり、特に好ましくは1.5Pa・s以上である。また、10Pa・s以下であり、好ましくは5.0Pa・s以下であり、特に好ましくは3.0Pa・s以下である。0.5Pa・sより小さすぎると厚みが50μm以上の硬化物を形成するのが困難となるので、そのような厚い硬化物を必要とする情報記録媒体等の用途に対しては用いることができない。逆に10Pa・sより大きすぎると平滑な表面の硬化物を形成しにくくなる。粘度は、E型粘度計、B型粘度計、又は振動型粘度計によって測定すればよい。粘度を調整する方法としては、希釈剤の添加、溶媒添加、放射線硬化性オリゴマーの分子量制御、増粘剤の添加、又はレオロジー制御剤の添加などの手法があり、好ましくは、希釈剤の添加、放射線硬化性オリゴマーの分子量制御、増粘剤の添加が用いられ、さらに好ましくは希釈剤の添加が用いられる。
そして、本発明の放射線硬化性組成物は、粘度(Pa・s)と絶対温度(K)との関係を表す理論式としてのアンドレードの粘度式、η=AeE/RTを変形した下記式(1)における定数bが2000以下であることを必須とし、定数bは、1800以下であるのが好ましく、1600以下であるのが特に好ましい。定数bが2000より大きい場合には、塗膜形成時の環境温度依存性が大きくなって、多少の温度変化によっても塗布ムラや膜厚不均一等を生じ易くなり、均一な厚みの硬化物の層を得ることができないこととなる。
logη=a+b/T (1)
〔式(1)において、ηは粘度(Pa・s)、Tは絶対温度(K)、a及びbは定数である。〕
ここで、前記式(1)における定数bは、硬化性組成物について、例えば、15℃(T=288K)、20℃(T=293K)、25℃(T=298K)、30℃(T=303K)、40℃(T=313K)における各粘度ηを測定して、1/Tに対するlogηをプロットして得られる近似直線における勾配として求めることができる。又、その近似直線の縦軸との交点として定数aが求められ、その定数aは、本発明の目的の達成を確実にするためには、−6.5以上であるのが好ましく、−6以上であるのがより好ましく、−5.5以上であるのが特に好ましい。
また、本発明の放射線硬化性組成物は、本発明の目的の達成を確実にするためには、前記24℃における粘度を〔η24〕としたとき、26℃における粘度〔η26〕の低下量〔η24−η26〕の〔η24〕に対する割合〔{(η24−η26)/η24}×100〕が、10%以下であるのが好ましく、8.5%以下であるのがより好ましく、7%以下であるのが特に好ましい。
また、本発明の放射線硬化性組成物は、25℃における表面張力が50mN/m以下であることが好ましい。さらに好ましくは、40mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、特に好ましくは30mN/m以下である。表面張力が高すぎると、コーティング時の組成物の塗れ広がり性が悪化し、コーティング時に必要な組成物量が多くなるばかりでなく、欠陥が生じる原因となるため好ましくない。表面張力は小さければ小さいほどよいが、通常10mN/m以上である。表面張力は表面張力計(例えば、協和界面科学(株)社製「CBVP−A3型」)を用いて測定すれば良い。表面張力を調整する方法としては、前記表面張力調整剤の添加が挙げられる。
また、本発明の放射線硬化性組成物の透明性は、組成物が硬化して得られる硬化物がその用途に応じて透明であればよく、組成物自体の透明性について特に限定はないが、好ましくは550nmにおける光路長0.1mmの光線透過率が80%以上、より好ましくは85%以上である。さらに好ましくは、400nmにおける光路長0.1mmの光線透過率が80%以上、より好ましくは85%以上である。この光線透過率が低すぎると、硬化時の透明性が大きく損なわれる傾向があり、硬化物が光学記録媒体に用いられる場合、記録された情報の読み出し時に読み出しエラーが増加するので好ましくない。
また、本発明の放射線硬化性組成物としては実質的に溶媒を含有しないことが好ましい。実質的に溶媒を含有しないとは、揮発性を有するかもしくは低沸点のいわゆる有機溶剤の含有量が非常に少ない状態を言い、組成物中の溶媒含有量が通常5重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、とりわけ好ましくは0.1重量%以下である。簡易的には該有機溶剤の臭気が観測されない状態をいう。
[放射線硬化性組成物の製造]
本発明の放射線硬化性組成物は、ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーと任意成分としての他の成分の混合物中に、シリカ粒子が均一に分散混合する方法であれば特に限定はないが、具体的には、例えば、(1a)シリカ粒子粉末を調製し、適当な表面処理を施した後、適当に液状状態にしたモノマー又は/及びそのオリゴマーと任意成分としての他の成分の混合物に直接分散させる方法、(1b)シリカ粒子粉末を調製し、適当な表面処理を施した後、適当に液状状態にしたモノマー又は/及びそのオリゴマーに直接分散させ、次いで、任意成分としての他の成分を加える方法、(2a)適当に液状状態にしたモノマー又は/及びそのオリゴマーと任意成分としての他の成分の混合物中でシリカ粒子を合成する方法、(2b)適当に液状状態にしたモノマー又は/及びそのオリゴマー中でシリカ粒子を合成し、次いで、任意成分としての他の成分を加える方法、(3)液体媒体中においてシリカ粒子を調製し、該液体媒体にモノマー及び/又はそのオリゴマーと任意成分としての他の成分を溶解させた後、溶媒を除去する方法、(4a)液体媒体中にモノマー及び/又はそのオリゴマーと任意成分としての他の成分を溶解させ、該液体媒体中においてシリカ粒子を調製した後、溶媒を除去する方法、(4b)液体媒体中にモノマー及び/又はそのオリゴマーを溶解させ、該液体媒体中においてシリカ粒子を調製し、次いで、任意成分としての他の成分を加えた後、溶媒を除去する方法、(5)液体媒体中においてシリカ粒子及びモノマー及び/又はそのオリゴマーを調整した後、任意成分としての他の成分を加え、溶媒を除去する方法等が挙げられる。このうち(1a)、(1b)、及び(3)が、透明性が高く保存安定性の良好なものが得られやすいので好ましく、さらに好ましくは(3)である。
上記(1a)及び(1b)の方法として具体的には、(A)表面処理剤でシリカ粒子を改質する工程、(B)ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマー、及び任意成分としての他の成分を混合させる工程、並びに必要に応じて(C)10〜100℃の温度下で溶媒を除去する工程、を順次行う方法が挙げられる。この製造方法によれば、シリカ粒子の2次凝集や粒子径の粗大化を防ぎ、高度に分散された放射線硬化性組成物を容易に得ることができる。
上記(A)の工程は、室温にて、通常は0.5〜24時間撹拌操作を行い、反応を進行させるが、100℃以下の温度で加熱してもよい。加熱すると反応速度が増し、より短時間で反応を行わせることができるが、シランカップリング剤同士の重合が起こって白濁する場合があるので、その加熱の温度は好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下とする。上記(B)の工程は、上記(A)の工程における反応が十分に終了してから行う必要がある。上記(A)の反応が十分に進行する以前に(B)の操作を行うと、モノマーやそのオリゴマーが均一に混ざらなかったり、後工程において組成物が白濁したりするため好ましくない。(B)の工程は室温にて行うことができるが、モノマーやそのオリゴマーの粘度が高い場合や、モノマーやそのオリゴマーの融点が室温以上の場合は、加熱して行うことができる。上記(C)の工程においては、主として水及びアルコール、ケトンなどの溶媒の除去が行われる。ただし必要な範囲で除去されれば良く、必ずしも完全に除去されなくても良い。なお、温度が記載された範囲よりも低いと、溶媒の除去が十分に行われず好ましくない。逆に高すぎると、組成物がゲル化しやすくなるため好ましくない。
前記(3)の方法として具体的には、(a)溶媒、表面処理剤又は希釈剤等の液体媒体中において、アルコキシシランのオリゴマーを10〜100℃の温度下で加水分解しシリカ粒子を合成する工程、(b)シリカ粒子を表面保護する工程、(c)ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマー、及び任意成分としての他の成分を混合させる工程、並びに(d)10〜75℃の温度下で溶媒を除去する工程、を順次行うことにより行うことが好ましい。この製造方法によれば、粒径が揃ったシリカ超微粒子が高度に分散された放射線硬化性樹脂組成物をより容易に得ることができる。
上記(a)の工程では、液体媒体なかで、アルコキシシランのオリゴマー、触媒及び水を加えてアルコキシシランのオリゴマー加水分解を行いシリカ粒子を合成する。液体媒体は特に限定はないが、モノマー及び/又はそのオリゴマーと相溶性があるものが好ましい。具体的には、溶媒、表面処理剤又は希釈剤等が用いられる。表面処理剤及び希釈剤は前述と同様である。溶媒としては、好ましくはアルコール類又はケトン類が用いられ、特に好ましくはC1 〜C4 のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンが用いられる。液体媒体の量は、アルコシシシランのオリゴマーに対して0.3〜10倍用いるのが好ましい。
触媒としては、蟻酸、マレイン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;及びアセチルアセトンアルミニウム、ジブチルスズジラウレート、ジズチルスズジオクタエート等の金属錯体化合物等の加水分解触媒が使用される。使用量は、アルコシシシランのオリゴマーに対して0.1〜3重量%が好ましい。水はアルコシシシランのオリゴマーに対して10〜50重量%が好ましく添加される。加水分解温度は、10〜100℃で行い、これより低いと、シリカ粒子が形成される反応が十分に進行せず、好ましくない。逆に高すぎるとオリゴマーのゲル化反応が起こりやすくなるため好ましくない。加水分解時間は30分〜1週間が好ましい。
上記(b)の反応は、シリカ粒子を表面保護する工程で、表面保護剤としては、界面活性剤、分散剤、シランカップリング剤等が挙げられる。界面活性剤又は分散剤を用いる場合には、表面保護剤を添加して、室温〜60℃の温度にて30分〜2時間程度攪拌して反応させる方法、添加して反応させた後、室温にて数日間熟成させる方法等が挙げられる。添加する際は、表面保護剤の溶解性が非常に高い溶媒を選択しないことが重要である。表面保護剤の溶解性が非常に高い溶媒を用いた場合、無機成分への保護が十分に行われないか、もしくは保護プロセスに多大な時間を要するため、好ましくない。表面保護剤の溶解性が非常に高い溶媒の場合には、例えば、溶媒と表面処理剤の溶解度値(SP値)の差が0.5以上になる溶媒を用いると、無機成分への保護が十分に行われることが多い。
シランカップリング剤を用いる場合には、表面保護反応は室温(25℃)にて進行する。通常は0.5〜24時間撹拌操作を行い、反応を進行させるが、100℃以下の温度で加熱してもよい。加熱すると反応速度が増し、より短時間で反応を行わせることができるが、シランカップリング剤同士の重合が起こって白濁する場合があるので、その加熱の温度は好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下とする。
シランカップリング剤を用いる場合には、系中に水を添加しない方が好ましいが、水を添加しても良い。但しその際、添加する水の量が過度に多いと、シリカ粒子の表面保護が十分になされていない状態で加水分解及び脱水縮合反応が進行し、組成物の白濁やゲル化の原因となる。特に、組成物中のシリカ粒子の濃度が大きい場合は、組成物の白濁やゲル化が顕著となるので注意が必要である。水の好ましい添加量は、シランカップリング剤由来のアルコキシ基及びアルコキシシラン由来の残存アルコキシ基が加水分解するのに必要な量に対して、30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、又、130モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは110モル%以下の量である。シランカップリング剤は、複数回に分割して添加してもよい。又、シランカップリング剤を用いる場合には、アルコキシ基の加水分解、及びシラノール結合の生成を促進するために触媒が添加されるのが好ましい。その触媒としては、脱水縮合反応に用いられる公知の触媒が使用できるが、中でも、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート等のスズ化合物が好ましい。
上記(c)の工程は、上記(b)の反応が十分に終了してから行う必要がある。その確認は、反応液中のシランカップリング剤の残存量を測定することで行える。通常、反応液中のシランカップリング剤の残存量が、仕込み量に対して10%以下になったときである。上記(b)の反応が十分に進行する以前に(c)の操作を行うと、モノマーやオリゴマーが均一に混ざらなかったり、後工程において組成物が白濁したりするため好ましくない。(c)の工程は室温(25℃)にて行うことができるが、モノマーやオリゴマーの粘度が高い場合や、モノマーやオリゴマーの融点が室温(25℃)以上の場合は、30〜90℃に加熱して行ってもよい。混合時間は30分〜5時間が好ましい。
上記(d)の工程においては、主として液体媒体として用いた溶媒やアルコキシシランオリゴマーの加水分解により生成したなどの溶媒の除去が行われる。ただし必要な範囲で除去されれば良く、必ずしも完全に除去されなくても良い。前述の実質的に溶媒を含有しない組成物程度に除去されていることが好ましい。なお、温度が記載された範囲よりも低いと、溶媒の除去が十分に行われず好ましくない。逆に高すぎると、組成物がゲル化しやすくなるため好ましくない。温度は段階的にコントロールしてもかまわない。除去時間は、1〜12時間が好ましい。又、20kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下の減圧化で除去することが好ましい。又0.1kPa以上で除去することが好ましい。圧力は徐々に減圧にしても構わない。
以上説明した好ましい製造方法によれば、樹脂組成物に後から充填材(シリカ粒子など)やシランカップリング剤等の表面処理剤を添加し充填材を分散させる方法に比べて、より粒径が小さい超微粒子を、しかも大量に、凝集させることなく分散させられる利点がある。従って得られる放射線硬化性組成物は、放射線透過性を損なうことなく、硬化物の硬化収縮や機械的強度を高めるために適切な量のシリカ粒子が分散されたものとなる。そして、それを硬化させて得られる放射線硬化物は、透明性、高表面硬度及び低硬化収縮性を有し、密着性を兼ね備えると共に、耐熱・耐湿変形性を併せ持つ利点がある。
[放射線硬化物の製造]
本発明の放射線硬化性組成物から本発明の硬化物を製造するには、先ず、該組成物を所望の形状とするために、基材に塗布するか或いは所望の形状の型に注入する。基材に塗布するには、ダイコート法、ディップコート法、スピンコート法、各種ロールコート法等の公知の方法が用いられるが、特に20〜300μmの厚みを有する厚膜の硬化物を製造するためには、均一で欠陥のない膜や層が得られ易いという点でスピンコート法が好ましい。又、注型するには、キャビティを備えた所謂成形型と同様の形式のものや、ガラス或いはプラスチック等の2枚の板の間にスペーサーを挟んでキャビティを形成した形式のもの等の該キャビティ内に組成物を注入することによりなされる。その際、注型に用いられる型は、少なくとも一面が、放射線透過性を有している必要がある。
上記放射線硬化性組成物の硬化物は、組成物に放射線(活性エネルギー線や電子線)を照射して重合反応を開始させるいわゆる「放射線硬化」によって得られる。重合反応の形式に制限はなく、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合などの公知の重合形式を用いることができる。これら重合形式の例示のうち、最も好ましい重合形式はラジカル重合である。その理由は定かではないが、重合反応の開始が重合系内で均質かつ短時間に進行することによる生成物の均質性によるものと推定される。
上記放射線とは、必要とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して該重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等)、又は粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。本発明において好ましく用いられる放射線の一例は、エネルギーと汎用光源を使用可能であることから紫外線、可視光線、及び電子線が好ましく、最も好ましくは紫外線及び電子線である。
紫外線を用いる場合、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤(前記例示参照)を重合開始剤とし紫外線を放射線として使用する方法が採用される。この時、必要に応じて増感剤を併用してもよい。上記紫外線は、波長が通常200〜400nmの範囲であり、この波長範囲は好ましくは250〜400nmである。紫外線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波によって紫外線を発生させる構造の紫外線ランプ等、公知の装置を好ましく用いることができる。該装置の出力は通常10〜200W/cmであり、該装置は、被照射体に対して5〜80cmの距離に設置するようにすると、被照射体の光劣化や熱劣化、熱変形等が少なく、好ましい。
本発明の組成物は、また電子線によっても好ましく硬化することができ、機械特性、特に引張伸び特性に優れた硬化物を得ることができる。電子線を用いる場合、その光源および照射装置は高価であるものの、開始剤の添加が省略可能であること、及び酸素による重合阻害を受けず、従って表面硬度が良好となるため、好ましく用いられる場合がある。電子線照射に用いられる電子線照射装置としては、特にその方式に制限はないが、例えばカーテン型、エリアビーム型、ブロードビーム型、パルスビーム型等が挙げられる。電子線照射の際の加速電圧は10〜1000kVが好ましい。
これらの放射線は、照射強度を、通常0.1J/cm2 以上、好ましくは0.2J/cm2 以上として照射する。又、通常20J/cm2 以下、好ましくは10J/cm2 以下、さらに好ましくは5J/cm2 以下、より好ましくは3J/cm2 以下、特に好ましくは2J/cm2 以下で照射する。照射強度がこの範囲内であれば、放射線硬化性組成物の種類によって適宜選択可能である。ウレタン結合を有するモノマー又は/及びそのオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の場合、照射強度は2J/cm2 以下が好ましい。又、縮合脂環式アクリレートからなるモノマー又は/及びそのオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の場合、照射強度は強度は3J/cm2 以下が好ましい。
かかる放射線の照射エネルギーや照射時間が極端に少ない場合は重合が不完全なため放射線硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されない場合がある。該照射時間は通常1秒以上とし、好ましくは10秒以上とする。ただし、逆に極端に過剰な場合は黄変等光による色相悪化に代表される劣化を生ずる場合がある。従って照射時間は通常3時間以下とし、反応促進と生産性の点で好ましくは1時間程度以下とする。
該放射線の照射は、一段階でも、あるいは複数段階で照射してもよく、その線源として通常は放射線が全方向に広がる拡散線源を用い、通常、型内に賦形された前記重合性液体組成物を固定静置した状態又はコンベアで搬送された状態とし、放射線源を固定静置した状態で照射する。また、前記重合性液体組成物を適当な基板(例えば樹脂、金属、半導体、ガラス、紙等)上の塗布液膜とし、次いで放射線を照射して該塗布液膜を硬化させることも可能である。
[放射線硬化物の物性]
本発明の放射線硬化物は、通常、溶剤等に不溶不融の性質を示し、厚膜化した際であっても光学部材の用途に有利な性質を備え、密着性、表面硬化度に優れていることが好ましい。具体的には、低い光学歪み性(低複屈折性)、高い光線透過率、寸法安定性、高密着性、高表面硬度、及び一定以上の耐熱・耐湿変形性を示すことが好ましい。また、硬化収縮が小さいほど好ましい。
本発明の放射線硬化物は、通常5cm以下の膜厚を有する。好ましくは1cm以下、さらに好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下である。又、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは70μm以上、最も好ましくは85μm以上の膜厚を有する。
そして、本発明の放射線硬化物は、100±5μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚100±5μmの硬化物層を形成した積層体において、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度がHB以上を有するのが好ましく、F以上を有するのが更に好ましく、H以上を有するのが特に好ましい。
又、本発明の放射線硬化物は、100±5μmの厚さにおいて、550nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのが更に好ましく、89%以上であるのが特に好ましい。さらに好ましくは、400nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは89%以上である。光線透過率は、例えば、ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて室温で測定すればよい。
又、本発明の放射線硬化物は、基板に対する密着性に優れ、例えば、基板上に膜厚100±5μmの硬化物層を形成した積層体を、80℃、85%RHの環境下に100時間さらに好ましくは200時間置いた後の基板に対する密着面積の割合が、当初密着面積に対して、好ましくは50%以上を保持でき、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは100%を保持できるものである。
又、本発明の放射線硬化物は、直径130mm、厚さ1.2±0.2mmのポリカーボネート製円板上に膜厚100±5μmの硬化物層を形成した積層体を、80℃、85%RHの環境下に100時間置いた後、該積層体を平板上に静置し、全円周における該平板からの離間距離として測定した反り量が1.0mm以内であり、前記円板状積層体の円周を4等分した各点における同様の反り量の平均値が0.7mm以下であるのが好ましく、0.5mm以下であるのがさらに好ましい。
さらには、本発明の放射線硬化物は、硬化収縮が小さく、例えば、好ましくは3体積%以下であり、より好ましくは2体積%以下である。又、熱膨張が小さく、例えば、5mm×5mm×1mmの板状試験片を用いて、圧縮法熱機械測定(TMA;SSC/5200型;セイコーインスツルメント社製)にて加重1g、昇温速度10℃/分で、40℃から100℃までの範囲を10℃刻みで測定し、その平均値として算出した線膨張係数が、好ましくは13×10-5/℃以下、より好ましくは12×10-5/℃以下、さらに好ましくは10×10-5/℃以下、特に好ましくは8×10-5/℃以下である。又、耐熱性に優れるものであり、硬化物のガラス転移温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上のものである。又、耐溶剤性にも優れ、例えば、トルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン等に対して良好な耐溶剤性を有する。
又、本発明の硬化物は、シリカ粒子などの無機物質微粒子を含有するが、該微粒子は、有機物である樹脂マトリクスと異なる光学特性を有する物質であるため、硬化物が総体として有機物単独では実現し得ない特異な屈折率とアッベ数とのバランスを有するという特徴を有する場合がある。かかる特異な屈折率とアッベ数とのバランスは、レンズやプリズム等光の屈折を利用し、複屈折が小さいことが望ましい用途において有用である場合があり、具体的にはナトリウムD線波長において23℃で測定される屈折率nD とアッベ数νD との関係を表す下記数式の定数項Cが1.70〜1.82の範囲を逸脱するような場合をいう。
nD =0.005νD +C
樹脂材料の成形体では、一般に厚みが大きくなるに従って複屈折も大きくなる。本発明において、上記シリカ粒子を使用することにより、本発明の硬化物は厚みの増大の割には従来になく複屈折の増加率が小さくなるという特徴を獲得する場合がある。従って、後述する本発明の光学部材のように、厚み0.1mm以上という比較的厚い成形体として本発明の硬化物を使用する場合、低複屈折率化の点で有利である。
[放射線硬化物の用途]
本発明の放射線硬化物は、複屈折で代表される光学歪みが小さく、良好な透明性を有し、優れた寸法安定性や表面硬度等の機能特性を有するため、光学材料として優れる。ここでいう光学材料とは、それを構成する材料の光学特性、例えば透明性、吸発光特性、外界との屈折率差、複屈折の小ささ、前記の特異な屈折率とアッベ数とのバランス等を利用する用途に用いられる成形体一般を指す。具体例としては、ディスプレイパネル、タッチパネル、レンズ、プリズム、導波路、光増幅器等のオプティクス、オプトエレクトロニクス用部材が挙げられる。
本発明の光学材料は2種類に大別される。第1の光学材料は前記硬化物の成形体である光学材料であり、第2の光学材料は前記硬化物の薄膜を一部の層として有する成形体である光学材料である。つまり、前者は光学材料の主体が前記硬化物でありその他に該硬化物でない材質の任意の薄膜(コート層)を有していてもよいものであり、一方、後者は光学材料の主体は前記硬化物でなくてもよい材質で構成され、一部の層として該硬化物の薄膜を有するものである。いずれの光学材料も、樹脂、ガラス、セラミクス、無機物結晶、金属、半導体、ダイヤモンド、有機物結晶、紙パルプ、木材等の任意の固体素材基板上に密着して成形されたものであってもよい。
上記第1の光学材料の寸法に制限はないが、前記硬化物の部分の光路長は、光学材料の機械的強度の点で下限値は、通常0.01mmであり、好ましくは0.1mm、更に好ましくは0.2mmである。一方、光線強度の減衰の点で該上限値は、通常10000mmであり、好ましくは5000mm、更に好ましくは1000mmである。上記第1の光学材料の形状に制限はないが、例えば平板状、曲板状、レンズ状(凹レンズ、凸レンズ、凹凸レンズ、片凹レンズ、片凸レンズ等)、プリズム状、ファイバー状等の形状が例示される。
上記第2の光学材料の寸法に制限はないが、前記硬化物薄膜の膜厚は、機械的強度や光学特性の点で下限値は、通常0.05μmであり、好ましくは0.1μm、更に好ましくは0.5μmである。一方、該膜厚の上限値は、薄膜の成形加工性や費用対効果バランスの点で、通常3000μmであり、好ましくは2000μm、更に好ましくは1000μmである。かかる薄膜の形状に制限はないが、必ずしも平面状でなくてもよく、例えば球面状、非球面曲面状、円柱状、円錐状、あるいはボトル状等の任意形状の基板上に成形されていてもよい。
本発明の光学材料には、必要に応じて任意の被覆層、例えば摩擦や摩耗による塗布面の機械的損傷を防止する保護層、半導体結晶粒子や基材等の劣化原因となる望ましくない波長の光線を吸収する光線吸収層、水分や酸素ガス等の反応性低分子の透過を抑制あるいは防止する透過遮蔽層、防眩層、反射防止層、低屈折率層等や、基材と塗布面との接着性を改善する下引き層、電極層等、任意の付加機能層を設けて多層構造としてもよい。かかる任意の被覆層の具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電膜やガスバリア膜、有機物コーティング層からなるガスバリア膜やハードコート等が挙げられ、そのコーティング法としては真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。
本発明の光学材料の具体例を更に詳細に例示すると、眼鏡用レンズ、光コネクタ用マイクロレンズ、発光ダイオード用集光レンズ等の各種レンズ、光スイッチ、光ファイバー、光回路における光分岐、接合回路、光多重分岐回路、光度調器等の光通信用部品、液晶基板、タッチパネル、導光板、位相差板等各種ディスプレイ用部材、光ディスク基板や光ディスク用フィルム・コーティングを初めとする記憶・記録用途、更には光学接着剤等各種光通信用材料、機能性フィルム、反射防止膜、光学多層膜(選択反射膜、選択透過膜等)、超解像膜、紫外線吸収膜、反射制御膜、光導波路、及び識別機能印刷面等各種光学フィルム・コーティング用途等が挙げられる。
[光学記録媒体]
本発明でいう光学記録媒体とは特に限定はされないが、好ましくはブルーレーザーを用いる次世代高密度光学記録媒体が好ましい。この光学記録媒体としては、基板において誘電体膜、記録膜、反射膜など(以下、これらの層を総称して記録再生機能層という。)を形成した面に保護膜が形成される光学記録媒体であって、波長380〜800nmのレーザー光、好ましくは波長450〜350nmのレーザー光を用いる光学記録媒体を意味する。
次に、基板について説明する。基板の一主面上には、光情報の記録・再生に使用するための凹凸の溝が設けられており、例えば、スタンパを用いた光透過性樹脂の射出成形によって形成される。基板の材料は、光透過性材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂及びガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等において最も広く用いられ、安価であるので最も好ましい。基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、一方、20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは3mm以下であるが、通常は、1.2±0.2mm程度とされる。基板の外径は、一般的には120mm程度である。
記録再生機能層は、情報信号を記録再生可能又は再生可能な機能を発揮されるように構成された層であり、単層であっても複数の層からなってもよい。記録再生機能層は、光学記録媒体が、再生専用の媒体(ROM媒体)である場合と、一度の記録のみ可能な追記型の媒体(Write Once媒体)である場合と、記録消去を繰り返し行える書き換え可能型の媒体(Rewritable媒体)である場合とによって、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。
例えば、再生専用の媒体においては、記録再生機能層は、通常、Al、Ag、Au等の金属を含有する単層で構成され、例えば、記録再生機能層は、スパッタ法によりAl、Ag、Au反射層を基板上に成膜することによって形成される。
追記型の媒体においては、記録再生機能層は、通常、Al、Ag、Au等の金属を含有する反射層と有機色素を含有する記録層とをこの順に基板上に設けることによって構成される。このような追記型の媒体としては、スパッタ法により反射層を設けた後、スピンコート法により有機色素層を基板上に形成するものを挙げることができる。また、追記型の媒体としての他の具体例としては、記録再生機能層が、Al、Ag、Au等の金属を含有する反射層と、誘電体層と、記録層と、誘電体層とをこの順に基板上に設けることによって構成され、誘電体層と記録層とが無機材料を含有するものも挙げることができる。このような追記型の媒体においては、通常、スパッタ法により反射層と、誘電体層と、記録層及び誘電体層とが形成される。
書き換え可能型の媒体においては、記録再生機能層は、通常、Al、Ag、Au等の金属を含有する反射層と、誘電体層と、記録層と、誘電体層とをこの順に基板上に設けることによって構成され、誘電体層と記録層とが無機材料を含有するのが一般的である。このような書き換え可能型の媒体においては、通常、スパッタ法により反射層、誘電体層、記録層、及び誘電体層が形成される。また、書き換え可能型の媒体としての他の具体例としては、光磁気記録媒体を挙げることができる。記録再生機能層には、記録再生領域が設定されている。記録再生領域は、通常、記録再生機能層の内径よりも大きい内径と、記録再生機能層の外径よりも小さい外径との領域に設けられる。
図1は、書き換え可能型の光学記録媒体10における記録再生機能層5の一例を説明するための断面図である。記録再生機能層5は、基板1上に直接設けられた金属材料から形成された反射層51と、相変化型材料により形成された記録層53と、記録層53を上下から挟むように設けられた2つの誘電体層52及び54とで構成される。
反射層51に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましく、特に放熱効果が期待できるAu、Ag又はAl等の金属が好ましい。また、反射層自体の熱伝導度制御や、耐腐蝕性の改善のため、Ta、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr,Si等の金属を少量加えてもよい。少量加える金属の添加量は、通常、0.01原子%以上20原子%以下である。なかでも、Ta及び/又はTiを15原子%以下含有するアルミニウム合金、特に、Al1-x Tax (0<x≦0.15)なる合金は、耐腐蝕性に優れており、光学記録媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。また、Agに、Mg,Ti,Au,Cu,Pd,Pt,Zn,Cr,Si,Ge、希土類元素のいずれか一種を、0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金は、反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
反射層51の厚さは、通常、40nm以上、好ましくは50nm以上、一方、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。反射層51の厚さが過度に大きいと、基板1に形成されたトラッキング用溝の形状が変化し、さらに、成膜に時間がかかり、材料費も増える傾向にある。また、反射層51の厚さが過度に小さいと、光透過が起こり反射層として機能しないのみならず、反射層51の一部分に、膜成長初期に形成される島状構造の影響が出やすく、反射率や熱伝導率が低下することがある。
2つの誘電体層52及び54に使用する材料は、記録層53の相変化に伴う蒸発・変形を防止し、その際の熱拡散を制御するために用いられる。誘電体層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等の弗化物等の誘電体材料を用いることができる。これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、弗化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。
このような誘電体材料の具体例としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の金属の酸化物;Ti、Zr,Hf、V、Nb,Ta、Cr、Mo、W、Zn,B、Al、Ga、In、Si,Ge、Sn、Sb、及びPb等の金属の窒化物;Ti、Zr,Hf、V,Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga,In、及びSi等の金属の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の金属の硫化物;セレン化物もしくはテルル化物;Mg、Ca等の弗化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。例えば、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と酸化物、窒化物、炭化物、弗化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の硫化物、特にY2 O2 Sを主成分とする耐熱化合物の混合物は好ましい誘電体層組成の一例である。より具体的には、ZnS−SiO2 、SiN、SiO2 、TiO2 、CrN、TaS2 、Y2 O2 S等を挙げることができる。これら材料の中でも、ZnS−SiO2 は、成膜速度の速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささ及び優れた耐候性から広く利用される。誘電体層52及び54の厚さは、通常、1nm以上、500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができ、誘電体層としての役目を十分果たすことができる。また、500nm以下とすれば、誘電体層としての役目を十分果たしつつ、誘電体層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止することができる。
記録層53を形成するための材料としては、例えば、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、AgInSbTe等の組成の化合物が挙げられる。なかでも、{(Sb2 Te3 )1-x (GeTe)x }1-y Sby (0.2≦x≦0.9、0≦y≦0.1)合金または(Sbx Te1-x )y M1-y (ただし、0.6≦x≦0.9、0.7≦y≦1、MはGe、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、Taより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とする薄膜は、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相転移が可能である。さらに、繰り返しオーバーライトを行った時に偏析が生じにくいといった利点があり、最も実用的な材料である。
記録層53の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。このような範囲とすれば、アモルファス状態と結晶状態との十分な光学的コントラストを得ることができる。また、記録層53の膜厚は、通常30nm以下、好ましくは20nm以下である。このような範囲とすれば、記録層53を透過した光が反射層で反射することによる光学的なコントラストの増加を得ることができ、また熱容量を適当な値に制御することができるので高速記録を行うことも可能となる。特に、記録層53の膜厚を10nm以上、20nm以下とすれば、より高速での記録及びより高い光学的コントラストを両立することができるようになる。記録層53の厚さをこのような範囲にすることにより、相変化に伴う体積変化を小さくし、記録層53自身及び記録層53の上下と接する他の層に対して、繰り返しオーバーライトによる繰り返し体積変化の影響を小さくすることができる。さらに、記録層53の不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられ、ノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
反射層51、記録層53、誘電体層52及び54は、通常スパッタリング法などによって形成される。記録層用ターゲット、誘電体層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
保護層3は、本発明の放射線硬化性組成物をスピンコートし、これを放射線硬化させた硬化物からなり、記録再生機能層5に接して設けられ、平面円環形状を有している。保護層3は、記録再生に用いられるレーザー光を透過可能な材料により形成されている。保護層3の透過率は、記録・再生に用いられる光の波長において、通常、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、89%以上であることが必要である。このような範囲であれば、記録再生光の吸収による損失を最小限にすることができる。一方、透過率は、100%になることが最も好ましいが、用いる材料の性能上、通常、99%以下となる。
このような保護層3は、光ディスクの記録再生に用いる波長405nm付近の青色レーザー光に対して十分に透明性が高く、かつ基板1上に形成された記録層53を、水や塵埃から保護するような性質を持つことが望ましい。加えて、保護層3の表面硬度は、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度がB以上であるのが好ましい。硬度が小さすぎると、表面に傷が付きやすいため好ましくない。硬度が大きすぎること自体の問題はないが、硬化物が脆くなる傾向となり、クラックや剥離が生じやすく好ましいことではない。
さらに、保護層3と記録再生機能層5との密着性は高いほうが好ましい。さらに経時密着性も高いほうが好ましく、80℃、85%RHの環境下に100時間、さらに好ましくは200時間置いた後の該保護層3と記録再生機能層5との密着面積の割合が、当初密着面積の50%以上を保持しているのが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは100%である。
保護層3の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは70μm以上、特に好ましくは85μm以上である。膜厚をこのような範囲とすれば、保護層3表面に付着したゴミや傷の影響を低減することができ、また記録再生機能層5を外気の水分等から保護するのに十分な厚さとすることができる。一方、通常300μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは115μm以下である。膜厚をこの範囲とすれば、スピンコートなどで用いられる一般的な塗布方法で均一な膜厚を容易に形成することができる。保護層3は記録再生機能層5をカバーする範囲に均一な膜厚で形成されることが好ましい。
上記のようにして得られた光学記録媒体は、単板で用いてもよく、2枚以上を貼り合わせて用いてもよい。そして、必要に応じてハブを付け、カートリッジへ組み込めばよい。