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JP2006191285A - アレイスピーカシステムおよびそのオーディオ信号処理装置 - Google Patents

アレイスピーカシステムおよびそのオーディオ信号処理装置 Download PDF

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JP2006191285A JP2005000642A JP2005000642A JP2006191285A JP 2006191285 A JP2006191285 A JP 2006191285A JP 2005000642 A JP2005000642 A JP 2005000642A JP 2005000642 A JP2005000642 A JP 2005000642A JP 2006191285 A JP2006191285 A JP 2006191285A
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Jinya Ito
仁哉 伊藤
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

【課題】 指向性を高くすることのできるアレイスピーカシステムを提供する。
【解決手段】 アレイスピーカシステム1は、複数のスピーカ3が並設されたスピーカアレイスピーカアレイ5と、複数のスピーカ3から出力されるべきオーディオ信号をスピーカアレイ5内の各スピーカの位置に応じてスピーカ3毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部15とを備え、アレイ用遅延回路部15は、スピーカアレイ5の外側のスピーカと比べて内側のスピーカの遅延量を大きく。また、アレイスピーカシステム1は、オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割する。アレイ用遅延回路部15は、周波数帯域に応じて遅延量を異ならせ、低域のオーディオ信号ほど遅延量を増大させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、指向性能を向上したアレイスピーカシステムに関する。
従来、ライブ会場やコンサート会場などの広い会場で使用するのに適したスピーカシステムとして、複数のスピーカを配列したアレイスピーカシステムが提案されている。典型的には、アレイスピーカシステムは、垂直方向にスタックされた複数のスピーカで構成されている。このようなアレイスピーカシステムは、例えば特許文献1に開示されている。
ところで、ライブ会場などでは、できるだけ遠くまで音量を落とさないようにすることが望ましく、そのためには、指向性を高くすることが求められる。従来一般には、指向性を高くするために、アレイスピーカシステムを構成する一つ一つのスピーカ単体が主として改良されてきている。
特開2002−199484号公報(第4−6ページ、図1)
しかしながら、従来のアレイスピーカシステムにおいては、5〜10kHzといった高音域では望ましい高い指向性が得られているものの、それより低い音域では指向性が低下してしまうといった問題があった。
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、指向性を高くできるアレイスピーカシステムを提供することにある。
本発明のアレイスピーカシステムは、複数のスピーカが並設されたスピーカアレイと、前記複数のスピーカから出力されるべきオーディオ信号を前記スピーカアレイ内の各スピーカの位置に応じてスピーカ毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部とを備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイの外側のスピーカと比べて中央寄りのスピーカのオーディオ信号を遅延させる。
この構成により、スピーカアレイの外側のスピーカから内側のスピーカに行くに従って遅延量を増大させることで、スピーカの位相を好適に調整でき、スピーカ単体の指向性が同じでも、スピーカアレイ全体のアレイ方向の指向性を向上できる。
本発明のアレイスピーカシステムにおいて、前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイ全体の指向性を高める凹曲線状のスピーカ配置におけるオーディオ出力方向のスピーカ間の位置差と等価な遅延量を生じる。この構成により、複数のスピーカを上記の凹曲線状に配置したのと同じ状態が得られ、これにより指向性を向上できる。
本発明のアレイスピーカシステムにおいて、前記アレイ用遅延回路部は、スピーカ単体の指向角と、前記スピーカアレイのスピーカ数およびスピーカ間隔に応じた遅延量を生じる。この構成により、スピーカアレイの指向性が高くなる適切な遅延量を生じさせることができる。
本発明のアレイスピーカシステムは、前記オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割する周波数分割手段を備え、前記アレイ用遅延回路部は、周波数帯域に応じて遅延量を異ならせる。この構成により、周波数帯域毎に指向性が高くなるように遅延特性を調整して、各周波数帯域の位相を調整でき、全周波数域で高い指向性を得ることができる。
本発明のアレイスピーカシステムにおいて、前記アレイ用遅延回路部は、複数の周波数帯域に分割されたオーディオ信号のうちの低域のオーディオ信号ほど遅延量を増大させる。この構成により、高音域の高い指向性を維持しつつ、低音域の指向性を向上できる。
本発明のアレイスピーカシステムは、前記アレイ用遅延回路部における各スピーカの遅延量を周波数帯域毎に調整する調整手段を備えている。この構成により、実際の指向性を調べながら遅延特性を調整して指向性を高くできる。
本発明の別態様は、複数のスピーカが並設されたスピーカアレイから出力されるオーディオ信号を処理するオーディオ信号処理装置であり、この装置は、前記オーディオ信号を前記スピーカアレイ内の各スピーカの位置に応じてスピーカ毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部を備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイの外側のスピーカと比べて中央寄りのスピーカのオーディオ信号を遅延させる。この態様によっても、上述したようにアレイスピーカシステムの指向性を向上できる。
本発明のオーディオ信号処理装置は、前記オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割する周波数分割手段を備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記周波数帯域に応じて遅延量を異ならせる。この構成によっても、上述したようにアレイスピーカシステムの指向性を向上できる。
上述のように、本発明は、オーディオ信号をスピーカアレイ内の各スピーカの位置に応じてスピーカ毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部を設け、スピーカアレイの外側のスピーカと比べて中央寄りのスピーカの遅延量を大きくすることにより、スピーカ間の位相を好適に調整でき、スピーカアレイ全体の指向性を向上できるという効果を有するアレイスピーカシステムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態のアレイスピーカシステムについて、図面を用いて説明する。
本発明の実施の形態に係るアレイスピーカシステムを図1に示す。
図1において、アレイスピーカシステム1は複数のスピーカ3を備えており、複数のスピーカ3は垂直方向にスタックされて、スピーカアレイ5を形成している。図1の例では5つのスピーカ3が示されている。各スピーカ3にはアンプ7が接続されており、複数のアンプ7はオーディオ信号処理装置9の出力側に接続されており、オーディオ信号処理装置9の入力側にはミキサ11が接続されている。オーディオ信号処理装置9は、ミキサ11から入力されたオーディオ信号を各スピーカ3に供給する。
オーディオ信号処理装置9は、周波数分割部13、アレイ用遅延回路部15およびイコライザ部17を備えている。周波数分割部13は、入力されたオーディオ信号を複数の周波数帯域の信号に分割する。アレイ用遅延回路部15は、後述するように、スピーカ毎、周波数帯域毎にオーディオ信号を遅延させるように構成されている。イコライザ部17は、従来一般のイコライザの構成を備えている。
オーディオ信号処理装置9とそのイコライザ部17およびアレイ用遅延回路部15は、DSPで実現することができる。オーディオ信号処理装置9は、従来のイコライザのDPSにアレイ用遅延回路部15の機能を付加することで実現されてもよい。また、オーディオ信号処理装置9はミキサ11に組み込まれてもよい。
図2は、オーディオ信号処理装置9の構成をアンプ7およびスピーカ3と共に示している。オーディオ信号処理装置9は、概略的には、図1にも示したとおり周波数分割部13、アレイ用遅延回路部15およびイコライザ部17を備えており、これらが入力側から出力側に向けて上記の順番で配置されている。
周波数分割部13は、上述したように入力されたオーディオ信号を電気的に複数の周波数帯域の信号に分割する。本実施の形態では、オーディオ信号が、0〜500Hz、500〜1kHz、1〜2kHz、2〜4kHz、4〜16kHzの5つの帯域に分割される。周波数分割部13は複数のバンドパスフィルタで構成されている。
アレイ用遅延回路部15は複数の遅延回路21で構成されている。遅延回路21の数はスピーカ3の数と同じであり、遅延回路21とスピーカ3は1対1で対応している。これら遅延回路21は周波数分割部13と接続されており、周波数分割部13で分割されたオーディオ信号が、すべての遅延回路21に入力される。
各々の遅延回路21は、図2に示されるように更に小さく分かれていて、複数の遅延回路要素で構成されている。複数の遅延回路要素は、周波数分割部13で分割される複数の周波数帯域、すなわち、0〜500Hz、500〜1kHz、1〜2kHz、2〜4kHz、4〜16kHzとそれぞれ対応している。そして、複数の周波数帯域の信号はこれら複数の遅延回路要素に振り分けられて、個別に遅延処理される。
上記構成において、複数の遅延回路21では遅延量が個別に設定され、各々の遅延回路21では遅延回路要素毎に、すなわち、周波数帯域毎に個別に遅延量が設定される。このような構成により、アレイ用遅延回路部15では、スピーカ毎に、そして、周波数帯域毎に遅延量を異ならせ、オーディオ信号の位相を調整できる。
イコライザ部17は、スピーカ3と同数の複数のイコライザ23で構成されている。そして、各々の遅延回路21が各イコライザ23と接続されており、各イコライザ23の出力側が各アンプ7を介して各スピーカ3に接続されている。このような構成により、複数の遅延回路21の出力信号がそれぞれ異なる複数のスピーカ3から出力される。
また、オーディオ信号処理装置9には、調整操作部25が設けられている。調整操作部25は、ボタン、レバー、ダイヤル等の操作部材で構成されており、アレイ用遅延回路部15およびイコライザ部17の設定を調整するためにユーザによって操作される。調整操作部25は、本発明の調整手段を構成しており、アレイ用遅延回路部15の遅延量を調整する。調整操作部25の操作に応じて各遅延回路21の各遅延回路要素の遅延量が調整され、これにより、遅延量がスピーカ毎に、そして周波数帯域毎に調整される。
図3(a)および図3(b)は、スピーカ毎の適切な遅延量を説明するための図である。ここでは、一つの周波数帯域の信号について説明する。概略的には、図3(a)は、指向性が高い好適なスピーカ配置を示しており、図3(b)はアレイ用遅延回路部15の遅延量の設定を示しており、アレイ用遅延回路部15は、図3(b)の遅延量設定によって、図3(a)のスピーカ配置と等価の状態を実現するものである。
まず、図3(a)には、凹曲線状のスピーカ配置が示されている。すなわち、5つのスピーカS1〜S5が、凹曲線Lに沿って配置されている。凹曲線Lは、スピーカアレイ全体の指向性を高めるように設定されている。凹曲線Lは、パラボラアンテナと同様の原理に基づいている。パラボラアンテナでは、周知のように、アンテナを曲面で構成することで高い指向性が得られる。図3(a)でも、同様の原理に従い、複数のスピーカを凹曲線Lに沿って配置している。
図3(a)のスピーカ配置では、オーディオ出力方向Xの位置がスピーカ間で異なっており、外側から内側に行くに従ってスピーカ位置が後ろに下がる。具体的には、外端のスピーカS1、S5が一番前にあり、その内側のスピーカS2、S4がスピーカS1、S5より後方にあり、中央のスピーカS3がさらに後方にある。スピーカS1、S5の位置を基準とすると、スピーカS2、S3、S4は、それぞれ、オーディオ出力方向Xに距離d2、d3、d4だけ後方にある。この場合、d2=d4<d3である。
スピーカS1〜S5には、上記のようなオーディオ出力方向Xの位置差があるので、同一距離の地点への音の到達時間にも差が生じ、スピーカS2、S3、S4からの音が遅れる。スピーカS1、S5に対するスピーカS2、S3、S4の到達時間差をt2、t3、t4とすると、t2=d2/V、t3=d3/V、t4(=t2)=d4/Vである。ここで、Vは音速である。
本実施の形態のアレイ用遅延回路部15は、図3(a)のスピーカ間の到達時間差を遅延量調整によって実現するものである。
すなわち、図3(b)の遅延量設定では、スピーカアレイの外側のスピーカと比べて内側のスピーカの遅延量を大きくし、内側のスピーカに行くほど遅延量を大きくする。具体的には、図示のように、外端のスピーカS1、S5の遅延量t1、t5が0である。そして、スピーカS2、S3、S4の遅延量は、それぞれ、t2=d2/V、t3=d3/V、t4=d4/Vであり、上述したスピーカ間の到達時間差と一致している。このようにして、上記のスピーカ配置におけるスピーカ間の位置差と本実施の形態の遅延量設定が等価になる。そして、スピーカが一直線に並んでいても、上記のスピーカ配置と同様のオーディオ出力がスピーカアレイ全体として実現され、高い指向性が得られる。
以上に、一つの周波数帯域に着目したときの、遅延量調整とそれによる位相調整について説明した。
次に、図4を参照し、周波数帯域に応じた好適な遅延量設定について説明する。一般的にスピーカ単体では高音域(高周波数)の指向性が高く、低音(低周波数)になるほど指向性が低くなる傾向がある。アレイスピーカにおいても、本実施の形態の遅延量調整がなされないと、周波数が小さくなるにしたがって指向性が低くなる。
そこで、周波数が小さくなるほどアレイ用遅延回路部15での遅延量を大きくすることが好適である。これにより、周波数が小さくなるほど、遅延量調整による指向性向上効果が大きくなり、したがって、周波数帯域間の指向性の差を低減できる。
具体的には、図4に示されるように、同じスピーカであっても、低い周波数帯域の遅延量を大きくする。本実施の形態では、オーディオ信号は、前述のように、0〜500Hz、500〜1kHz、1〜2kHz、2〜4kHz、4〜16kHzの5つの帯域に分割されている。最も低い周波数帯域0〜500Hzの遅延量が最大に、最も高い周波数4〜16kHzの遅延量が最小に設定される。4〜16kHzの周波数帯域では、遅延量制御がなくとも望ましい指向性が得られるので、本実施の形態では遅延量が0に設定されている。
上記の周波数帯域ごとの好適な遅延量設定は、図3(a)に示した凹曲線状のスピーカ配置を使って説明することもできる。図3(a)では、凹曲線Lが、スピーカアレイ全体の指向性を高くするスピーカ配置を示していた。異なる周波数帯域で同じ指向特性を得ようとした場合、凹曲線Lの曲率は周波数帯域によって変わり、そして、周波数が低くなるほど、アレイ正面から見たときの凹部の深さが大きくなる。したがって、凹曲線Lと等価の遅延量をオーディオ信号に付与するには、周波数が低くなるほど遅延量を大きくすればよい。そこで、本実施の形態は、周波数帯域毎に遅延量を変えて低域の遅延量を大きくしており、これにより、各々の周波数帯域で好適な凹曲線状のスピーカ配置と等価のオーディオ出力を実現でき、周波数帯域間の指向角の差を低減し、定指向性制御を可能にしている。
次に、図5を参照し、上述した遅延量の好適な設定を数式でもって説明する。ここでは、説明を簡単にするために、スピーカの数が3つであるとする。
図5は、3つのスピーカを図3(a)で説明した凹曲線に沿って配置した状態を示しており、両端にスピーカS1、S3が配置され、中央にスピーカS2が配置されており、スピーカS2がスピーカS1、S3より後方にある。図5において、θはスピーカ単体の指向角であり、aは隣接するスピーカ間のY方向の距離であり、dはスピーカS1、S3とスピーカS2のX方向の距離である。ここで、X方向はオーディオ出力方向であり、Y方向はスピーカアレイ方向であって、オーディオ出力Xに対して直角である。
図5中で、角θaは、線s1−s2(スピーカS1、S2を結ぶ直線)がオーディオ出力方向Xに対して成す角度である。指向性を高くするには、θa=θにするとよい。したがって、d=a/(tanθa)=a/(tanθ)となる。そして、スピーカS2の適当な遅延量tは、t=d/V=d/(tanθ)/Vとなる(Vは音速)。
このように、各スピーカにおける好適な遅延量は、スピーカ単体の指向角、スピーカアレイのスピーカ数およびスピーカ間隔によって決まる。この点は、スピーカの数が3以上の場合も同様である。すなわち、スピーカの数とスピーカ間隔(図5の符号a)で、両端のスピーカ間のアレイ方向の距離が決まる。この距離とスピーカ単体の指向性により、指向性を高めるスピーカ配置の凹曲線が決まる。凹曲線は両端のスピーカを通り、かつ、その形状が指向性に応じて変わる。このような凹曲線に沿ってスピーカを配置したときと同じオーディオ出力状態が得られるように遅延量が設定される。
なお、上記の説明において、指向角とは、指向性を表すパラメータであり、スピーカの正面中央の左右で所定量だけ音量が落ちる地点を表す角度であり、指向角が小さいほど指向性が高くなる。指向角の定義は、より詳細には下記の通りである。スピーカでは、一般的に正面軸上の音圧が最も高くなり、スピーカ(音源)を中心とした円を描くと、円に沿って正面軸から離れるほど音圧が小さくなる。ここで、正面軸と円の交点を0dBとする。そして、円上で音圧が所定量になる点とスピーカを線で結ぶ。所定量は−6dBとする。この−6dBの線が正面軸に対して成す角度が、指向角である。つまり、指向角は、−6dB以上である扇形領域の中心角の半分(または、扇形領域における正面軸(対象軸)の片側領域の中心角)である。
図6は、スピーカ数が異なる場合の遅延量設定を示している。図6(a)ではスピーカが4個であり、図6(b)ではスピーカが6個である。図6(a)、図6(b)でも、上述の実施の形態と同様に、指向性を高める凹曲線状のスピーカ配置が想定される。このようなスピーカ配置と同じオーディオ出力状態が得られるように、すなわち、スピーカ間の音の到達時間差が同じになるように、各スピーカの遅延量が調整される。スピーカ数は、図6の例に限定されず、スピーカ数がさらに多くてもよい。このように、本実施の形態の遅延量制御は、任意のスピーカ数のスピーカアレイに対して適用できる。
以上に、凹曲線および数式を用いて好適な遅延制御を説明したが、上記の説明は本実施の形態の指向性向上の原理を示したものである。実際のシステムで遅延量を調整するときに、上記原理に従って遅延量が予め求められてもよいが、そうでなくてもよい。図2の調整操作部25を操作して、遅延量を調整しながら、スピーカアレイの指向角を測定し、指向角が小さくなり、好ましくは最小になるように各スピーカ、各周波数帯域の遅延量を調整してもよい。
次に、上述したアレイスピーカシステム1の動作を説明する。オーディオ信号は、ミキサ11からオーディオ信号処理装置9の周波数分割部13に入力される。周波数分割部13では、オーディオ信号が、0〜500Hz、500〜1kHz、1〜2kHz、2〜4kHz、4〜16kHzの5つの帯域に分割される。これら複数の帯域のオーディオ信号が、アレイ用遅延回路部15の複数の遅延回路21のすべてに入力される。
各遅延回路21では、各帯域のオーディオ信号が別々の遅延回路要素にて異なる遅延量だけ遅延される。アレイ用遅延回路部15では、上述したような遅延量設定に従い、スピーカ毎、周波数毎に異なる遅延量がオーディオ信号に付与される。
各スピーカ用のオーディオ信号は、遅延処理を経た後、さらに、該当スピーカ用のイコライザ23での処理を受け、オーディオ信号処理装置9から出力される。さらに、各スピーカ用のオーディオ信号は、該当スピーカ用のアンプ7を経て、該当スピーカ3から出力される。これにより、スピーカアレイ5の発生音には、スピーカ間および周波数帯域間で、アレイ用遅延回路部15の遅延処理による時間差が生じる。
図7は、本実施の形態による指向性の向上効果を示す模式図である。図7において、横軸は周波数であり、縦軸は指向角である。指向角が小さいほど、指向性が高くなる。ここでは目標指向角を10度とする。図中のラインAは、遅延制御を行わないときのスピーカアレイの指向特性を示している。ラインBは、垂直方向(スタック方向)の目標指向特性を示している。ラインAでは、周波数4kHz以上の高音域でのみ、目標指向角10度が達成されている。しかし、周波数が4kHz未満では目標指向角10度が達成されず、周波数が低くなるほど指向角が大きくなっている。これに対して、ラインBの目標指向特性では、より広い範囲で指向角が目標指向角に設定されている。本実施の形態によれば、上述したようなスピーカ間、周波数帯域間の遅延量制御によって、ラインAの指向特性を、ラインBの目標指向特性へと近づけることができる。
以上に本発明の実施の形態に係るアレイスピーカシステム1について説明した。本実施の形態によれば、スピーカアレイの外側のスピーカ3と比べて中央寄り(内側)のスピーカ3のオーディオ信号を遅延させ、内側に行くに従って遅延量を増大させることで、スピーカ毎の位相を好適に調整でき、スピーカ単体の指向性が同じであっても、スピーカアレイ全体のアレイ方向の指向性を向上できる。
また、本実施の形態によれば、スピーカアレイ5の全体の指向性を高める凹曲線状のスピーカ配置におけるオーディオ出力方向のスピーカ間位置差と等価な遅延量をスピーカアレイ5に生じさせており、これにより、複数のスピーカ3を上記の凹曲線状に配置したのと同じ状態が得られ、指向性を向上できる。
また、本実施の形態によれば、スピーカ単体の指向角、スピーカアレイ5のスピーカ数およびスピーカ間隔に応じた遅延量をスピーカアレイ5に生じさせており、これにより、スピーカアレイ5の指向性が高くなる適切な遅延量を生じさせることができる。
また、本実施の形態によれば、オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割して、周波数帯域に応じて遅延量を異ならせており、これにより、周波数帯域毎に指向性が高くなるように遅延特性を調整して、周波数帯域毎の位相を調整でき、高いレベルの定指向性が得られるように指向特性を改善でき、そして、全周波数域で高い指向性を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、複数の周波数帯域に分割されたオーディオ信号のうちの低域のオーディオ信号ほど遅延量を増大させることで、高音域の高い指向性を維持しつつ、低音域の指向性を向上して、全帯域の指向性を高くできる。
また、本実施の形態によれば、遅延回路における各スピーカの遅延量を周波数帯域毎に調整する調整手段を設けたことで、実際の指向性を調べながら遅延特性を調整して指向性を高くできる。
なお、図1の例では、スピーカアレイのスピーカ数が5個であったが、既に説明したように、スピーカ数はこれに限定されない。また、アレイスピーカシステムでは、スピーカアレイが1列でなくてもよく、2列以上のスピーカアレイが設けられてもよい。
その他、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
以上のように、本発明にかかるアレイスピーカシステムは、スピーカ毎に異なる遅延量をオーディオ信号に付与することでスピーカアレイ全体の指向性を向上できるという効果を有し、ライブ会場用スピーカ等として有用である。
本発明の実施の形態におけるアレイスピーカシステムのブロック図 オーディオ信号処理装置の構成を示す図 (a)指向性を高くする凹曲線状のスピーカ配置を示す図 (b)指向性を高くする遅延量設定を示す図 周波数帯域ごとに異なる遅延量設定を示す図 遅延量の計算式を説明するための図 (a)スピーカ数が4個の場合の遅延量設定を示す図 (b)スピーカ数が6個の場合の遅延量設定を示す図 遅延量制御による指向特性の向上を示す図
符号の説明
1 アレイスピーカシステム
3 スピーカ
5 スピーカアレイ
7 アンプ
9 オーディオ信号処理装置
11 ミキサ
13 周波数分割部
15 アレイ用遅延回路部
17 イコライザ部
21 遅延回路
23 イコライザ
25 調整操作部

Claims (8)

  1. 複数のスピーカが並設されたスピーカアレイと、前記複数のスピーカから出力されるべきオーディオ信号を前記スピーカアレイ内の各スピーカの位置に応じてスピーカ毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部とを備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイの外側のスピーカと比べて中央寄りのスピーカのオーディオ信号を遅延させることを特徴とするアレイスピーカシステム。
  2. 前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイ全体の指向性を高める凹曲線状のスピーカ配置におけるオーディオ出力方向のスピーカ間位置差と等価な遅延量を生じることを特徴とする請求項1に記載のアレイスピーカシステム。
  3. 前記アレイ用遅延回路部は、スピーカ単体の指向角、前記スピーカアレイのスピーカ数およびスピーカ間隔に応じた遅延量を生じることを特徴とする請求項1または2に記載のアレイスピーカシステム。
  4. 前記オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割する周波数分割手段を備え、前記アレイ用遅延回路部は、周波数帯域に応じて遅延量を異ならせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアレイスピーカシステム。
  5. 前記アレイ用遅延回路部は、複数の周波数帯域に分割されたオーディオ信号のうちの低域のオーディオ信号ほど遅延量を増大させることを特徴とする請求項4に記載のアレイスピーカシステム。
  6. 前記アレイ用遅延回路部における各スピーカの遅延量を周波数帯域毎に調整する調整手段を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載のアレイスピーカシステム。
  7. 複数のスピーカが並設されたスピーカアレイから出力されるオーディオ信号を処理するオーディオ信号処理装置であって、
    前記オーディオ信号を前記スピーカアレイ内の各スピーカの位置に応じてスピーカ毎に異なる遅延量だけ遅延させるアレイ用遅延回路部を備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記スピーカアレイの外側のスピーカと比べて中央寄りのスピーカのオーディオ信号を遅延させることを特徴とするオーディオ信号処理装置。
  8. 前記オーディオ信号を複数の周波数帯域に分割する周波数分割手段を備え、前記アレイ用遅延回路部は、前記周波数帯域に応じて遅延量を異ならせることを特徴とする請求項7に記載のオーディオ信号処理装置。
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