JP2006143590A - 粘膜適用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 粘度低下を抑制した粘膜適用組成物を提供する。
【解決手段】 カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに酸性ムコ多糖類を含有することを特徴とする粘膜適用組成物は、粘度が安定に維持されており、ドライアイなどの粘膜乾燥症状の予防効果、乾燥に起因する各種疾患の治療効果に優れている。
【選択図】 なし
【解決手段】 カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに酸性ムコ多糖類を含有することを特徴とする粘膜適用組成物は、粘度が安定に維持されており、ドライアイなどの粘膜乾燥症状の予防効果、乾燥に起因する各種疾患の治療効果に優れている。
【選択図】 なし
Description
本発明は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する組成物の粘度低下が抑制され、細胞保護効果に優れた粘膜適用組成物等に関する。
眼粘膜や鼻粘膜、口腔内粘膜等に適用される粘膜適用組成物においては、成分の生物学的利用能を高めるために、粘膜への組成物の滞留性を向上する必要がある。そこで、カルボキシメチルセルロースナトリウムといった粘稠化剤を配合して、滞留性を向上させる製剤設計が行われている。このような粘膜滞留性は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有することによって組成物に付与される粘性に起因している。そこで、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する粘膜適用組成物においては、適度な粘度を設定すること及び所望の設定粘度を長期的に安定に保持することが重要であった。
セルロース系高分子は、熱により部分分解が起こり粘度低下がおこることが知られている。これまでに、生物粘着剤又は粘度増強剤であるポリマー、例えばポリアクリル酸類、アクリル酸塩コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類、セルロース,セルロース誘導体,デキストラン,ヒアルロン酸のような多糖類の分解が、溶液やスラリー中の金属イオンによって促進されるが、EDTAよりも遊離イオンと錯体化する能力が大きいキレート化剤であるホスホン酸又はホスホン酸エステルを使用することによって、遊離の金属イオンを減少させポリマーの組成物の粘度を崩壊、分解又は他の不活性化の速度を減少できることが分かっている(特許文献1)。
しかしながら、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する粘膜適用組成物の実用化にいたる技術として十分ではなかった。
ところで、カルボキシメチルセルロースナトリウムには保水作用があり、ドライアイに代表される眼粘膜の乾燥に起因する角膜上皮細胞障害を治療する効果があることがわかっている(特許文献2)。したがって、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する粘膜適用組成物において粘度低下を抑制することは、前述した粘膜滞留能の保持のみならず、細胞障害治療効果を安定に保持するうえでも重要である。
そこで本発明は、カルボキシメチルセルロースナトリウムによる粘度の低下が抑制された粘膜適用組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、課題解決のために鋭意検討の結果、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに酸性ムコ多糖類を含有することによって、組成物の粘度低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者は、かかる知見に基づいて開発されたものである。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(10)に掲げる粘膜適用組成物である。
(1)カルボキシメチルセルロースナトリウムと酸性ムコ多糖類を含有する粘膜適用組成物、
(2)20℃での粘度が1.5mPa・s以上10万mPa・s以下である請求項(1)に記載の粘膜適用組成物、
(3)カルボキシメチルセルロースナトリウムの25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s〜8000mPa・sである(1)又は(2)に記載の粘膜適用組成物、
(4)カルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度が0.6〜1.0である(1)乃至(3)に記載の粘膜適用組成物、
(5)さらに、無機塩類又は/及び緩衝剤を含有する(1)乃至(4)に記載の粘膜適用組成物、
(6)さらに、非イオン性界面活性剤を0.001〜5%(w/v)で含有する(1)乃至(5)に記載の粘膜適用組成物、
(7)さらに、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩を0.0001〜1%(w/v)含有する(1)乃至(6)に記載の粘膜適用組成物、
(8)粘膜適用組成物が、点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である(1)乃至(7)に記載の粘膜適用組成物、
(9)酸性ムコ多糖類が、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン多硫酸エステル、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸またはそれらの塩から選択される少なくとも一種である(1)乃至(8)に記載の粘膜適用組成物。
さらに、本発明は、下記(10)に掲げる方法である:
(10)カルボキシメチルセルロースナトリウム及び酸性ムコ多糖類を組成物中に配合することにより、組成物の粘度を安定化する方法。
なお、本明細書中、特に言及しない場合、%はw/v%を意味するものとする。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(10)に掲げる粘膜適用組成物である。
(1)カルボキシメチルセルロースナトリウムと酸性ムコ多糖類を含有する粘膜適用組成物、
(2)20℃での粘度が1.5mPa・s以上10万mPa・s以下である請求項(1)に記載の粘膜適用組成物、
(3)カルボキシメチルセルロースナトリウムの25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s〜8000mPa・sである(1)又は(2)に記載の粘膜適用組成物、
(4)カルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度が0.6〜1.0である(1)乃至(3)に記載の粘膜適用組成物、
(5)さらに、無機塩類又は/及び緩衝剤を含有する(1)乃至(4)に記載の粘膜適用組成物、
(6)さらに、非イオン性界面活性剤を0.001〜5%(w/v)で含有する(1)乃至(5)に記載の粘膜適用組成物、
(7)さらに、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩を0.0001〜1%(w/v)含有する(1)乃至(6)に記載の粘膜適用組成物、
(8)粘膜適用組成物が、点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である(1)乃至(7)に記載の粘膜適用組成物、
(9)酸性ムコ多糖類が、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン多硫酸エステル、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸またはそれらの塩から選択される少なくとも一種である(1)乃至(8)に記載の粘膜適用組成物。
さらに、本発明は、下記(10)に掲げる方法である:
(10)カルボキシメチルセルロースナトリウム及び酸性ムコ多糖類を組成物中に配合することにより、組成物の粘度を安定化する方法。
なお、本明細書中、特に言及しない場合、%はw/v%を意味するものとする。
本発明の粘膜適用組成物は、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに酸性ムコ多糖類を含有することによって、組成物の粘度低下が抑制される。組成物を所望の粘度で維持できることは、ひいては、粘膜適用組成物の使用感や薬物滞留性等の性能の変動を抑制することになる。また、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに酸性ムコ多糖類を併用することによって、細胞の保護効果が増し乾燥への抵抗性が強化され、細胞生存率が相乗的に増加する。したがって、ドライアイ、ドライノーズ、ドライマウスなどの粘膜が乾燥状態を呈する疾患や症状の予防や改善に優れた効果を有する粘膜適用組成物を提供することができる。
本発明の粘膜適用組成物に用いるカルボキシメチルセルロースナトリウムは、公知の高分子化合物である。当業者が通常粘膜適用組成物に用いるカルボキシメチルセルロースナトリウムを特に制限なく用いることができるが、本発明においては、好ましくは、25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s〜8000mPa・sのものが用いられ、より好ましくは20mPa・s〜6000mPa・s、特に好ましくは20mPa・s〜3000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウムを用いる。また、カルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度は、通常0.1〜3.0の範囲を用いることができるが、本発明の粘膜適用組成物には、好ましくは0.6〜1.0、より好ましくは0.6〜0.9、特に好ましくは0.7〜0.9を用いるとよい。
カルボキシメチルセルロースナトリウムは市販のものを利用することができ、例えば第一工業製薬株式会社から販売されているセロゲン(登録商標)シリーズPR-S(25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s〜40mPa・s、エーテル化度0.70〜0.85)、P−715A(25℃、2%水溶液の粘度が80mPa・s〜140mPa・s、エーテル化度0.60〜0.70)、F−SC(25℃、2%水溶液の粘度が300mPa・s〜400mPa・s、エーテル化度0.70〜0.85)、AG−GUM(25℃、2%水溶液の粘度が900mPa・s〜1500mPa・s、エーテル化度0.70〜0.85)等、ダイセル化学工業株式会社から販売されているCMCダイセルシリーズ、日本製紙ケミカル株式会社から販売されているサンローズFシリーズ等が利用できる。
本発明において粘膜適用組成物中のカルボキシメチルセルロースナトリウムの含有量は、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜5%、特に好ましくは0.01〜3%程度である。
本発明の粘膜適用組成物に用いる酸性ムコ多糖類としては、コンドロイチン硫酸 、コンドロイチン多硫酸エステル、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラト硫酸またはそれらの塩が例示できる。なかでも好ましくは、コンドロイチン硫酸 、コンドロイチン多硫酸エステル、ヒアルロン酸またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の酸性ムコ多糖類である。特に好ましくは、コンドロイチン硫酸 、ヒアルロン酸またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の酸性ムコ多糖類である。これらは、例えばサケや鶏冠等の動物から得られたものや微生物から得られたもの等、由来はいずれであってもよく、市販のものを利用することもできる。市販品としては、キューピー株式会社より「ヒアルロンサンHA−AM、HA−QA」、生化学工業株式会社、マルハ株式会社より「コンドロイチン硫酸ナトリウム」等の市販品が例示できる。塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属との塩などが例示できるが、ナトリウム塩、カリウム塩が好適に用いられる。本発明には、塩の状態の酸性ムコ多糖類を用いる方が安定性の観点から好ましい。
本発明に用いる酸性ムコ多糖類の平均分子量は、通常1〜1000万の範囲であり、好ましくは2〜800万の範囲、より好ましくは5万〜500万の範囲、特に好ましくは10万〜300万の範囲である。より具体的に、例えば、本発明に用いるヒアルロン酸又はその塩を用いる場合は、平均分子量が10〜500万の範囲にあるものが好ましく、50〜400万の範囲にあることがより好ましく、60万〜250万の範囲にあることが特に好ましい。より具体的に、例えば、本発明に用いるコンドロイチン硫酸又はその塩を用いる場合は、平均分子量が1〜300万の範囲にあるものが好ましく、2〜150万の範囲にあることがより好ましく、5万〜50万の範囲にあることが特に好ましい。
本発明に用いる酸性ムコ多糖類の粘膜適用組成物への含有量は、分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常、粘膜適用組成物中の濃度として、0.001〜10%、好ましくは0.005〜5%、さらに好ましくは0.005〜3%、特に好ましくは0.005〜1%程度で用いることができる。また、酸性ムコ多糖類は、カルボキシメチルセルロースナトリウム1重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、特に好ましくは0.02〜3重量部程度で用いることができる。
より具体的に、酸性ムコ多糖類がヒアルロン酸又はその塩である場合、粘膜適用組成物に対する含有量は、組成物に付与する所望の粘度に応じて適宜設定することができ分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、ヒアルロン酸又はその塩の組成物中の濃度として、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜5%、さらに好ましくは0.005〜2%、特に好ましくは0.005〜1%程度で用いることができる。酸性ムコ多糖類がコンドロイチン硫酸又はその塩である場合、粘膜適用組成物に対する含有量は、組成物に付与する所望の粘度に応じて適宜設定することができ分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、コンドロイチン硫酸又はその塩の組成物中の濃度として、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜5%、さらに好ましくは0.01〜2%、特に好ましくは0.01〜1%程度で用いることができる。
本発明の粘膜適用組成物には、緩衝剤を配合することが好ましい。本発明に用いる緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、HEPES緩衝剤、MOPS緩衝剤などが挙げられる。より具体的には、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムなど 、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、HEPES、MOPSなどの化合物や、これらの群から選ばれる2種以上の化合物の組み合わせ等が挙げられる。
好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。
特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤またはリン酸緩衝剤である。
特に好ましい緩衝剤はより具体的には、ホウ酸緩衝剤としてはホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩,ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸とホウ酸塩との組み合わせが挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩,リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、リン酸とリン酸塩との組み合わせが挙げられる。
好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。
特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤またはリン酸緩衝剤である。
特に好ましい緩衝剤はより具体的には、ホウ酸緩衝剤としてはホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩,ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸とホウ酸塩との組み合わせが挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩,リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、リン酸とリン酸塩との組み合わせが挙げられる。
本発明の粘膜適用組成物において緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、緩衝剤として用いる化合物の総量として、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜3%、より好ましくは0.005〜1.5%程度で用いられる。またコンタクトレンズ洗浄剤においては、通常0.001〜15%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.001〜7%程度で用いられる.緩衝剤によって、組成物のpHを、pH4.0〜10.0、好ましくは5.0〜9.0、特に好ましくは5.5〜8.5に調整するとよい。
本発明の粘膜適用組成物には無機塩類を配合することが好ましい。無機塩類としては、塩化カリウム又は/及び塩化ナトリウムが挙げられる。
本発明の粘膜適用組成物において無機塩類の含有量は、無機塩類の種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜1%、より好ましくは0.005〜0.5%程度で用いられる。
本発明の粘膜適用組成物には、非イオン性界面活性剤を配合することが好ましい。本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、通常当業者が粘膜適用組成物に利用しうるものを用いることができ、例えばポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)−ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)ブロックコポリマー (例えば、ポロクサマー407 、ポロクサマー235 、ポロクサマー188 など) ;ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) ,モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) ,POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65) などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5 ,POE硬化ヒマシ油10 ,POE硬化ヒマシ油20 ,POE硬化ヒマシ油40 ,POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60 ,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POE(9) ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4) セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類などが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類から選ばれる非イオン性界面活性剤であり、特に好ましくは、ポロクサマー407、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。
本発明の粘膜適用組成物において非イオン性界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜1%、より好ましくは0.005〜0.5%程度で用いられる。
本発明の粘膜適用組成物にはエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩を配合することが好ましい。また、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩、非イオン性界面活性剤、無機塩類、緩衝剤を組み合わせて配合することがより好ましい。かかるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)などが例示できる。これらは、1種又は2種以上配合でき、薬理学的に又は生理学的に許容される塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)として使用してもよい。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)である。
本発明の粘膜適用組成物中におけるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩の含有量は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、好ましくは0.0001〜1%、より好ましくは0.0005〜0.5%、特に好ましくは0.001〜0.3%程度である。
本発明の粘膜適用組成物中におけるこれらの成分は、総量として、0.01〜5%配合するのが好ましく、特に好ましくは0.05〜3%程度である。
発明の効果を利用するものであればその使用用途は特定されず、医薬品、医薬部外品、雑品等の各種分野において、眼科用組成物、耳鼻科用組成物、口腔用組成物、咽頭用組成物等、粘膜に適用される組成物に利用することができる。例えば、点眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる点眼剤を含む、また、点眼薬ともいう。)、洗眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる洗眼剤を含む、また、洗眼剤ともいう。)、眼軟膏剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)、点鼻剤、鼻洗浄液、口腔用剤、口腔内洗浄剤などが挙げられる。好ましくは、点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤であり、特に好ましくは、点鼻剤、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液に有用である。
なお、本明細書中でコンタクトレンズとは、ハード、ソフト、酸素透過型ハード、カラーなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。
なお、本明細書中でコンタクトレンズとは、ハード、ソフト、酸素透過型ハード、カラーなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。
本発明の粘膜適用組成物は、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有するのに適している。粘膜適用組成物に通常用いられる充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸、局所麻酔成分、ステロイド成分などが例示できる。具体的には、以下に挙げる成分が例示できる。
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
アミノ酸:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウムなど。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなど。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
アミノ酸:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウムなど。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなど。
また、本発明の粘膜適用組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、香料または清涼化剤、安定剤などの各種添加剤を挙げることができる。
以下に本発明の粘膜適用組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
増粘剤:例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの薬理学的に許容される塩など。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
界面活性剤:例えば、上記した非イオン性界面活性剤以外にも、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
香料又は清涼化剤:例えば、上記したメントール、カンフル、ボルネオール以外の、ゲラニオール、リュウノウ、ウイキョウ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
増粘剤:例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの薬理学的に許容される塩など。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
界面活性剤:例えば、上記した非イオン性界面活性剤以外にも、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
香料又は清涼化剤:例えば、上記したメントール、カンフル、ボルネオール以外の、ゲラニオール、リュウノウ、ウイキョウ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
本発明の粘膜適用組成物は、所望の効果を得るために適切な粘度に初期設定して設定粘度を長期的に安定に保持することができる。眼科用組成物の粘度は、眼粘膜に適用した時の差し心地(使用感)や薬物滞留能、ドライアイなどの疾患の治療等に多大な影響を与えることから、適切な粘度を設計し、設計した粘度が長期的に安定に保持されることが重要となる。適切な粘度を設定する場合において、例えば眼科用組成物では20℃における粘度が1.5mPa・s以上に保持して設計することが好ましく、通常1.5〜300mPa・s、好ましくは、2〜200mPa・s、特に好ましくは5〜100mPa・s、更に好ましくは10〜80mPa・s程度に設計することができる。鼻科用組成物では20℃における粘度が2mPa・s以上に保持して設計することが好ましく、通常2〜10万mPa・s、好ましくは、50〜1万mPa・s、特に好ましくは100〜5000mPa・s程度に設計することができる。
本発明の粘膜適用組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整して用いる。浸透圧は、100〜1200mOsm、好ましくは100〜600mOsm、特に好ましくは150〜400mOsm程度であり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.4〜4.1、好ましくは0.3〜2.1、特に好ましくは0.5〜1.4程度である。
本発明の粘膜適用組成物は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内のpHに調整して用いる。pHは、通常、pH4.0〜10.0、好ましくは5.0〜9.0、特に好ましくは5.5〜8.5である。pHの調整は、前記緩衝剤、pH調整剤などを用いて行うことができる。
本発明の粘膜適用組成物は、公知の方法により製造でき、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器への充填工程等を加えることができる。
また、本発明は、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び酸性ムコ多糖類を組成物中に配合することにより、組成物の粘度を安定化する方法である。なお、カルボキシメチルセルロースナトリウムや酸性ムコ多糖類については、本発明の組成物に関する前述の記載に従って行うことができる。
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
粘度の測定方法
粘度測定方法は円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい−平板形回転粘度計」の項に記載の方法)に従った。具体的には、市販の円すい−平板形回転粘度計と適宜選択されたロータとを用いて測定した。
粘度の測定においては、市販の粘度計、例えば、E型粘度計[トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本)から販売]、シンクローレクトリックPC 型(ブルックフィールド、米)、フェランティシャーリー(フェランティ、英)、ロートビスコR (ハーケ、独)、IGK ハイシャーレオメーター(石田技研、日本)、島津レオメーターR (島津製作所、日本)、ワイセンベルグレオゴニオメーター(サンガモ、英)、メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス、米)等を利用できる。そして、これらの市販の粘度計とローターを適宜選択し、披検試料測定毎にJIS Z8809により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として適宜調整することにより、20℃における粘度を測定することができる。
粘度の測定方法
粘度測定方法は円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい−平板形回転粘度計」の項に記載の方法)に従った。具体的には、市販の円すい−平板形回転粘度計と適宜選択されたロータとを用いて測定した。
粘度の測定においては、市販の粘度計、例えば、E型粘度計[トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本)から販売]、シンクローレクトリックPC 型(ブルックフィールド、米)、フェランティシャーリー(フェランティ、英)、ロートビスコR (ハーケ、独)、IGK ハイシャーレオメーター(石田技研、日本)、島津レオメーターR (島津製作所、日本)、ワイセンベルグレオゴニオメーター(サンガモ、英)、メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス、米)等を利用できる。そして、これらの市販の粘度計とローターを適宜選択し、披検試料測定毎にJIS Z8809により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として適宜調整することにより、20℃における粘度を測定することができる。
具体的には、円すいと平円板との間の角度αの隙間に試料を入れ、円すい又は平円板を一定の角速度ω若しくはトルクTで回転させ、定常状態に達したときの平円板又は円すいが受けるトルク若しくは角速度を測定し、試料の粘度ηを次式により算出することによって粘度を測定した。
η =100×(3α/2πR3)・(T /ω)
η :試料の粘度(mPa ・s)(Pa ・s =103 mPa・s )
α :平円板と円すいがなす角度(rad)
π :円周率
R :円すいの半径(cm)
T :平円板又は円すい面に作用するトルク(10−7N・m)
ω :角速度(rad/s)
η =100×(3α/2πR3)・(T /ω)
η :試料の粘度(mPa ・s)(Pa ・s =103 mPa・s )
α :平円板と円すいがなす角度(rad)
π :円周率
R :円すいの半径(cm)
T :平円板又は円すい面に作用するトルク(10−7N・m)
ω :角速度(rad/s)
本試験における各比較例、各実施例の粘度は、E型粘度計の1種であるTVE−20L形粘度計コーンプレートタイプ(トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本))を用いて、以下の測定条件の下で測定を行った。
測定条件:
TVE−20L形粘度計コーンプレートタイプに付属の標準コーンロータ(図1における円すい1に相当)(平円板と円すいがなす角度=1°34'、半径(R)=2.4cm)をフルスケール・トルク673.7×10-7 Nm のスプリングを介してモータで回転させる。測定時、粘度計は回転軸が水平面に対して垂直になるように設置する。
被検試料1mlをコーンロータの所定の位置(平円板)に載置し、温度が20.0℃になるまで放置する。次いで、装置を被検試料の粘度に応じた回転数で回転させ、表示された粘度を読み取る。高精度の測定結果を得るために、被検試料測定前に、JIS Z 8809 により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として用い、測定値が標準液の粘度に一致するように調整する。なお、TVE-20L形粘度計コーンプレートタイプ以外の市販の機種を用い、上記と同様にコーンロータを選択して実施し、適宜校正することにより、同等の結果を得ることもできる。
使用ローター:標準ローター(1°34′、R=2.4cm)
回転数 :5rpm
試料量 :1ml
測定温度 :20℃
時間 :3分後の粘度を測定値とした。
測定条件:
TVE−20L形粘度計コーンプレートタイプに付属の標準コーンロータ(図1における円すい1に相当)(平円板と円すいがなす角度=1°34'、半径(R)=2.4cm)をフルスケール・トルク673.7×10-7 Nm のスプリングを介してモータで回転させる。測定時、粘度計は回転軸が水平面に対して垂直になるように設置する。
被検試料1mlをコーンロータの所定の位置(平円板)に載置し、温度が20.0℃になるまで放置する。次いで、装置を被検試料の粘度に応じた回転数で回転させ、表示された粘度を読み取る。高精度の測定結果を得るために、被検試料測定前に、JIS Z 8809 により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として用い、測定値が標準液の粘度に一致するように調整する。なお、TVE-20L形粘度計コーンプレートタイプ以外の市販の機種を用い、上記と同様にコーンロータを選択して実施し、適宜校正することにより、同等の結果を得ることもできる。
使用ローター:標準ローター(1°34′、R=2.4cm)
回転数 :5rpm
試料量 :1ml
測定温度 :20℃
時間 :3分後の粘度を測定値とした。
試験例1 粘度安定性試験
試験例の調製は表1に示す処方に従った。具体的には、試験例4又は5の調製方法を示す。コンドロイチン硫酸ナトリウム(商品名「コンドロイチン硫酸ナトリウム」生化学工業株式会社)、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビン酸カリウム及びホウ酸を50mlの精製水中にて攪拌溶解して、さらに0.2gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(表中はCMCとする。商品名「セロゲンPR−S」又は商品名「AG−GUM」を使用した)を添加して攪拌溶解させ、ホウ砂を攪拌溶解しながら添加してpHを調整した後、精製水を適量加えて全体を100mlとして、粘度を測定した。
その後、透明ガラス瓶に10mL充填し密栓して、60℃の恒温槽(ナガノ科学機械製作所製 CH20−11M)内にて2週間保管した。2週間保管後に再度粘度を測定した。熱処理前後における粘度測定値から、下記数式1により粘度低下抑制率(%)を算出した。結果は、表1に示す。
試験例の調製は表1に示す処方に従った。具体的には、試験例4又は5の調製方法を示す。コンドロイチン硫酸ナトリウム(商品名「コンドロイチン硫酸ナトリウム」生化学工業株式会社)、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビン酸カリウム及びホウ酸を50mlの精製水中にて攪拌溶解して、さらに0.2gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(表中はCMCとする。商品名「セロゲンPR−S」又は商品名「AG−GUM」を使用した)を添加して攪拌溶解させ、ホウ砂を攪拌溶解しながら添加してpHを調整した後、精製水を適量加えて全体を100mlとして、粘度を測定した。
その後、透明ガラス瓶に10mL充填し密栓して、60℃の恒温槽(ナガノ科学機械製作所製 CH20−11M)内にて2週間保管した。2週間保管後に再度粘度を測定した。熱処理前後における粘度測定値から、下記数式1により粘度低下抑制率(%)を算出した。結果は、表1に示す。
(数式1)
粘度低下抑制率(%)=(1−60℃2週間保管後のCMC及びコンドロイチン硫酸ナトリウム含有水溶液粘度低下量÷60℃2週間保管後のCMC含有水溶液粘度低下量)×100
粘度低下抑制率(%)=(1−60℃2週間保管後のCMC及びコンドロイチン硫酸ナトリウム含有水溶液粘度低下量÷60℃2週間保管後のCMC含有水溶液粘度低下量)×100
試験の結果、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する組成物の粘度低下が、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有することによって抑制できることが確認された。
試験例2 乾燥誘発細胞障害試験
試験例の調製は、表2に示す処方に従った。具体的には、表3に示す組成であるオペガード(登録商標、千寿製薬株式会社)約90mlに0.3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(表中はCMCとする。商品名「セロゲンF-SC」を使用した。)或いは0.5gのコンドロイチン硫酸ナトリウム(商品名「コンドロイチン硫酸ナトリウム」生化学工業株式会社)を攪拌しながら溶解させて、オペガード(登録商標)を適量加えて全体を100mlとした。
試験に用いる細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清を添加したMedium199(日本インビトロジェン株式会社)にウサギ角膜上皮細胞株(SIRC)を懸濁後、96wellマイクロタイタープレートに播種しフルグロースになるまで培養した。細胞の培養上清を除去し、各試験例を5μlずつウエルに添加した。その96wellマイクロタイタープレートを37度で約2時間インキュベートし、細胞を乾燥させた。その後、生細胞検出試薬WST-8(登録商標、同仁化学株式会社)を10%(v/v)添加したMedium199(10%WST-8)を各ウエルに100μlずつ添加し30分間、37℃、5%CO2下で培養し、各ウエルの450nmにおける吸光度(吸光度I)を測定した。 また上記乾燥処理細胞と同条件で培養し乾燥処置を施さなかったSIRC細胞(非乾燥細胞群)に10%(v/v)WST-8を添加し同様の処置し、吸光度(吸光度II)を測定した。
下記数式1により乾燥処置後の細胞生存率(%)を算出した。試験結果は表2に示した。
試験例の調製は、表2に示す処方に従った。具体的には、表3に示す組成であるオペガード(登録商標、千寿製薬株式会社)約90mlに0.3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(表中はCMCとする。商品名「セロゲンF-SC」を使用した。)或いは0.5gのコンドロイチン硫酸ナトリウム(商品名「コンドロイチン硫酸ナトリウム」生化学工業株式会社)を攪拌しながら溶解させて、オペガード(登録商標)を適量加えて全体を100mlとした。
試験に用いる細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清を添加したMedium199(日本インビトロジェン株式会社)にウサギ角膜上皮細胞株(SIRC)を懸濁後、96wellマイクロタイタープレートに播種しフルグロースになるまで培養した。細胞の培養上清を除去し、各試験例を5μlずつウエルに添加した。その96wellマイクロタイタープレートを37度で約2時間インキュベートし、細胞を乾燥させた。その後、生細胞検出試薬WST-8(登録商標、同仁化学株式会社)を10%(v/v)添加したMedium199(10%WST-8)を各ウエルに100μlずつ添加し30分間、37℃、5%CO2下で培養し、各ウエルの450nmにおける吸光度(吸光度I)を測定した。 また上記乾燥処理細胞と同条件で培養し乾燥処置を施さなかったSIRC細胞(非乾燥細胞群)に10%(v/v)WST-8を添加し同様の処置し、吸光度(吸光度II)を測定した。
下記数式1により乾燥処置後の細胞生存率(%)を算出した。試験結果は表2に示した。
(数式1)
細胞生存率(%)=100×( 吸光度I − 10%(v/v)WST-8添加ウエルの450nm吸光度 )÷( 吸光度II − 10%(v/v)WST-8添加ウエルの450nm吸光度 )
細胞生存率(%)=100×( 吸光度I − 10%(v/v)WST-8添加ウエルの450nm吸光度 )÷( 吸光度II − 10%(v/v)WST-8添加ウエルの450nm吸光度 )
試験の結果、コンドロイチン硫酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウムをともに含有する組成物では、細胞生存率が相乗的に高くなることが確認された。したがって、コンドロイチン硫酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースを含有する組成物がドライアイやドライマウスに代表されるような粘膜乾燥状態に対して細胞を保護し、粘膜組織障害の予防又は治療効果に優れることが示された。
実施例
表中の各実施例は、単位をg/100mlとして記載するものとする。また、表中、「点眼薬」とあるのは点眼薬(剤)、「洗眼薬」とあるのは洗眼薬(剤)、「人工点」とあるのは人工涙液型点眼薬(剤)、「装着液」とあるのは、コンタクトレンズ装着液、「CL用剤」とあるのはコンタクトレンズケア用剤をそれぞれ意味するものとする。これらの各実施例において、粘度低下が抑制されていた。
表中の各実施例は、単位をg/100mlとして記載するものとする。また、表中、「点眼薬」とあるのは点眼薬(剤)、「洗眼薬」とあるのは洗眼薬(剤)、「人工点」とあるのは人工涙液型点眼薬(剤)、「装着液」とあるのは、コンタクトレンズ装着液、「CL用剤」とあるのはコンタクトレンズケア用剤をそれぞれ意味するものとする。これらの各実施例において、粘度低下が抑制されていた。
Claims (4)
- カルボキシメチルセルロースナトリウムと、酸性ムコ多糖類を含有する粘膜適用組成物。
- 20℃での粘度が1.5mPa・s以上10万mPa・s以下である請求項1に記載の粘膜適用組成物。
- 粘膜適用組成物が、点鼻剤、点眼薬、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である請求項1又は2に記載の粘膜適用組成物。
- カルボキシメチルセルロースナトリウム及び酸性ムコ多糖類を組成物中に配合することにより、組成物の粘度を安定化する方法。
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