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JP2006039052A - 光機能回路 - Google Patents

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JP2006039052A JP2004216166A JP2004216166A JP2006039052A JP 2006039052 A JP2006039052 A JP 2006039052A JP 2004216166 A JP2004216166 A JP 2004216166A JP 2004216166 A JP2004216166 A JP 2004216166A JP 2006039052 A JP2006039052 A JP 2006039052A
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Tomohiro Shibata
知尋 柴田
Masahiro Yanagisawa
雅弘 柳澤
Hiroshi Takahashi
浩 高橋
Tsutomu Kito
勤 鬼頭
Takashi Saida
隆志 才田
Ikuo Ogawa
育生 小川
Senta Suzuki
扇太 鈴木
Toshikazu Hashimoto
俊和 橋本
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

【課題】 小型で作製が容易な、複数の機能を実行する光機能回路を提供する。
【解決手段】 仮想的なメッシュにより画定される仮想的なピクセルの各々が有する屈折率により、入力ポートから入射された光信号が多重散乱しながら分岐し、出力ポートから出射されるように決定された空間的な屈折率分布が形成された波動伝達媒体502,503を複数備え、少なくとも1つの波動伝達媒体は、中間クラッド層を介して他の波動伝達媒体と、光の伝搬方向と平行する平面において重ね合わされ、中間クラッド層を介して光学的に結合されている。
【選択図】 図5

Description

本発明は、光機能回路に関し、より詳細には、2次元的な屈折率分布に応じた多重散乱によりホログラフィックに波動を伝達させるホログラフィック波動伝達媒体を用いた光機能回路に関する。
光通信分野においては、光の分岐、干渉を容易に実現できる光回路として、光導波路構造を利用した集積光部品が開発されてきた。光の波動としての性質を利用した集積光部品は、光導波路長の調整により光干渉計の作製を容易にしたり、半導体分野における回路加工技術を適用することにより、光部品の集積化が容易になる。
このような光導波路構造は、光導波路中を伝搬する光を屈折率の空間的分布を利用して空間的な光閉じ込めを実現する「光閉じ込め構造」である。光回路を構成するためには、光配線などを用いて、各構成要素を縦列的に接続することとなる。このため、光導波路回路の光路長は、光回路内で干渉現象などを生じさせるために求められる光路長よりも長くならざるを得ず、その結果、光回路そのものが極めて大型になってしまうという問題があった。
たとえば、典型的なアレイ導波路格子を例にとると、入力ポートから入力された複数の波長(λj)の光は、スラブ導波路を有するスターカプラにより分波・合波を繰り返し、分波された光が出力ポートから出力されるが、波長の千分の1程度の分解能で光を分波するために要する光路長は、導波路を伝搬する光の波長の数万倍となる。また、光回路の導波路パターンニングをはじめとして、偏光状態に依存する回路特性を補正するための波長板などを設けるための加工も施す必要がある。(例えば、非特許文献1参照)。
また、光回路の小型化のためには、光を導波路中に強く閉じ込める必要がある。従って、光導波路は、極めて大きな屈折率差を有する必要がある。例えば、従来のステップインデクッス型の光導波路では、比屈折率差が0.1%よりも大きな値となるように、屈折率の空間的分布を有するように光導波路を設計する。このような大きな屈折率差を利用して光閉じ込めを行うと、回路構成の自由度が制限されてしまう。特に、光導波路中での屈折率差を、局所的な紫外線照射、熱光学効果または電気光学効果などにより実現しようとしても、得られる屈折率の変化量は高々0.1%程度である。光の伝搬方向を変化させる場合には、光導波路の光路にそって徐々に向きを変化させざるを得ず、光回路長は必然的に極めて長いものとなり、その結果として光回路の小型化が困難になる。
Y. Hibino, "Passive optical devices for photonic networks", IEIC Trans. Commun., Vol.E83-B No.10, (2000).
そこで、従来の光導波路回路、ホログラフィック回路を用いた光回路よりも小型で、緩やかな屈折率分布、すなわち小さな屈折率差でも充分に高効率の光信号制御を可能とする波動伝達媒体を用いることにより、高効率で小型の光回路を実現する。しかしながら、複数の機能を実行する光機能回路を実現しようとすると、1つの機能の光回路を複数接続する必要があり、光機能回路全体の小型化には限度があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、小型で作製が容易な、複数の機能を実行する光機能回路を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、仮想的なメッシュにより画定される仮想的なピクセルの各々が有する屈折率により、入力ポートから入射された光信号が多重散乱しながら分岐し、出力ポートから出射されるように決定された空間的な屈折率分布が形成された波動伝達媒体を複数備え、少なくとも1つの波動伝達媒体は、中間クラッド層を介して他の波動伝達媒体と、光の伝搬方向と平行する平面において重ね合わされ、前記中間クラッド層を介して光学的に結合されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記中間クラッド層は、3μm以下であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の前記波動伝達媒体は、シリコン基板上の石英系ガラス光導波路で構成されていることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、ホログラフィック波動伝達媒体を多層に重ね合わせることにより、複数の機能を実行することのできる光機能回路を、1つの基板上で作製することができ、製造工程の短縮とともに回路の小型化を図ることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の光機能回路は、複数の散乱点により画定されるホログラフィック波動伝達媒体であり、2次元的な屈折率分布に応じた多重散乱によりホログラフィックに波動を伝達させる。このようなホログラフィック波動伝達媒体を多層に重ね合わせることにより、複数の機能を実行することのできる光機能回路を、1つの基板上で作製することができ、製造工程の短縮とともに回路の小型化を図ることができる。
最初に、本願発明に用いる波動伝達媒体の基本的概念について説明する。ここでは、光回路へ適用することから、波動伝達媒体中を伝搬する「波動」は「光」である。なお、波動伝達媒体にかかる理論は、一般の波動方程式に基づいて、媒質の特性を指定するものであり、一般の波動においても原理的に成り立ち得るものである。波動伝達媒体は、コヒーレントな光のパターンを入力して所望の光のパターンを出力させるために、波動伝達媒体中を伝搬する順伝搬光と逆伝搬光の位相差が、波動伝達媒体中の何れの場所においても小さくなるように屈折率分布が決定される。屈折率分布に応じた局所的なレベルのホログラフィック制御を多重に繰り返すことにより、所望の光のパターンが出力される。
図1を参照して、本実施形態にかかる波動伝達媒体の基本構造を説明する。図1(a)に示したように、光回路基板1の中に、波動伝達媒体により構成される光回路の設計領域1−1が存在する。光回路の一方の端面は、入力光3−1が入射する入射面2−1である。入力光3−1は、波動伝達媒体で構成された空間的な屈折率分布を有する光回路中を多重散乱しながら伝搬し、他方の端面である出射面2−2から出力光3−2として出力される。図1(a)中の座標zは、光の伝搬方向の座標(z=0が入射面、z=zが出射面)であり、座標xは、光の伝搬方向に対する横方向の座標である。なお、本実施形態では、波動伝達媒体は、誘電体からなるものと仮定し、空間的な屈折率分布は、波動伝達媒体を構成している誘電体の局所的な屈折率を後述する理論に基づいて設定することにより実現される。
入力光3−1が形成している「場」(入力フィールド)は、光回路を構成する波動伝達媒体の屈折率の空間的分布に応じて変調され、出力光3−2の形成する「場」(出力フィールド)に変換される。換言すれば、本発明の波動伝達媒体は、その空間的な屈折率分布に応じて入力フィールドと出力フィールドとを相関づけるための(電磁)フィールド変換手段である。なお、これら入力フィールドおよび出力フィールドに対して、光回路中での伝搬方向(図中z軸方向)に垂直な断面(図中x軸に沿う断面)における光のフィールドを、その場所(x,z)における(順)伝搬像(伝搬フィールドあるいは伝搬光)と呼ぶ(図1(b)参照)。
ここで、「フィールド」とは、一般に電磁場(電磁界)または電磁場のベクトルポテンシャル場を意味している。本実施形態における電磁場の制御は、光回路中に設けられた空間的な屈折率分布、すなわち誘電率の分布を変えることに相当する。誘電率はテンソルとして与えられるが、通常は偏光状態間の遷移はそれほど大きくないので、電磁場の1成分のみを対象としてスカラー波近似しても良い近似となる。そこで、本明細書では電磁場を複素スカラー波として扱う。なお、光の「状態」には、エネルギ状態(波長)と偏光状態とがあるため、「フィールド」を光の状態を表現するものとして用いる場合には、光の波長と偏光状態をも包含し得ることとなる。
また、通常、伝搬光の増幅や減衰を生じさせない光回路では、屈折率の空間的分布を決めると、焦点以外の入力光3−1の像(入力フィールド)は、出力光3−2の像(出力フィールド)に対して一意的に定まる。このような、出射面2−2側から入射面2−1側へと向かう光のフィールドを、逆伝搬像(逆伝搬フィールドあるいは逆伝搬光)と呼ぶ(図1(c)参照)。このような逆伝搬像は、光回路中の場所ごとに定義することができる。すなわち、光回路中での任意の場所における光のフィールドを考えたとき、その場所を仮想的な「入力光」の出射点として考えれば、上記と同様に出力光3−2の像に対して、その場所での逆伝搬像を考えることができる。このように、光回路中の各場所ごとに逆伝搬像が定義できる。
特に、単一の光回路において、出射フィールドが入射フィールドの伝搬フィールドとなっている場合には、光回路の任意の点で、伝搬フィールドと逆伝搬フィールドとは一致する。なお、フィールドは、一般的に、対象とする空間全体の上の関数であるが、「入射フィールド」または「出射フィールド」という場合は、入射面あるいは出射面におけるフィールドの断面を意味している。また、「フィールド分布」という場合でも、ある特定の断面に関して議論を行う場合には、その断面についてのフィールドの断面を意味している。
屈折率分布の決定方法を説明するためには記号を用いるほうが見通しがよいので、各量を表すために以下のような記号を用いることとする。なお、対象とされる光(フィールド)は、単一状態の光には限定されないので、複数の状態の光が重畳された光を対象とされ得るべく、個々の状態の光にインデックスjを充てて一般的に表記する。
・ψj(x):j番目の入射フィールド(複素ベクトル値関数であり、入射面において設定する強度分布および位相の分布、ならびに、波長および偏波により規定される。)
・φj(x):j番目の出射フィールド(複素ベクトル値関数であり、出射面において設定する強度分布および位相分布、ならびに、波長および偏波により規定される。)
なお、ψj(x)およびφj(x)は、回路中で強度増幅、波長変換、偏波変換が行われない限り、光強度の総和は同じ(あるいは無視できる程度の損失)であり、それらの波長も偏波も同じである。
・{ψj(x)、φj(x)}:入出力ペア(入出力のフィールドの組み。)
{ψj(x)、φj(x)}は、入射面および出射面における、強度分布および位相分布ならびに波長および偏波により規定される。
・{n}:屈折率分布(光回路設計領域全体の値の組。)
与えられた入射フィールドおよび出射フィールドに対して屈折率分布を1つ与えたときに光のフィールドが決まるので、q番目の繰り返し演算で与えられる屈折率分布全体に対するフィールドを考える必要がある。そこで、(x,z)を不定変数として、屈折率分布全体をn(x,z)と表しても良いが、場所(x,z)における屈折率の値n(x,z)と区別するために、屈折率分布全体に対しては{n}と表す。
・ncore:光導波路におけるコア部分のような、周囲の屈折率に対して高い屈折率の値を示す記号。
・nclad:光導波路におけるクラッド部分のような、ncoreに対して低い屈折率の値を示す記号。
・ψj(z,x,{n}):j番目の入射フィールドψj(x)を屈折率分布{n}中をzまで伝搬させたときの、場所(x,z)におけるフィールドの値。
・φj(z,x,{n}):j番目の出射フィールドφj(x)を屈折率分布{n}中をzまで逆伝搬させたときの、場所(x,z)におけるフィールドの値。
本実施形態において、屈折率分布は、すべてのjについてψj(ze,x,{n})=φj(x)、またはそれに近い状態となるように{n}が与えられる。
「入力ポート」および「出力ポート」とは、入射端面および出射端面におけるフィールドの集中した「領域」であり、例えば、その部分に光ファイバを接続することにより、光強度をファイバに伝搬できるような領域である。ここで、フィールドの強度分布および位相分布は、j番目のものとk番目のものとで異なるように設計可能であるので、入射端面および出射端面に複数のポートを設けることができる。さらに、入射フィールドと出射フィールドの組を考えた場合、その間の伝搬により発生する位相が、光の周波数によって異なるので、周波数が異なる光(すなわち波長の異なる光)については、位相を含めたフィールド形状が同じであるか直交しているかの如何にかかわらず、異なるポートとして設定することができる。
ここで、電磁界は、実数ベクトル値の場で、かつ波長と偏光状態をパラメータとして有するが、その成分の値を一般な数学的取扱いが容易な複素数で表示し、電磁波の解を表記する。また、以下の計算においては、フィールド全体の強度は1に規格化されているものとする。図1(b)および図1(c)に示したように、j番目の入射フィールドψj(x)および出力フィールドφj(x)に対し、伝搬フィールドと逆伝搬フィールドとをそれぞれの場所の複素ベクトル値関数として、ψj(z,x,{n})およびφj(z,x,{n})と表記する。これらの関数の値は、屈折率分布{n}により変化するため、屈折率分布{n}がパラメータとなる。記号の定義により、ψj(x)=ψj(0,x,{n})、および、φj(x)=φj(ze,x,{n})となる。これらの関数の値は、入射フィールドψj(x)、出射フィールドφj(x)、および屈折率分布{n}が与えられれば、ビーム伝搬法などの公知の手法により容易に計算することができる。
以下に、空間的な屈折率分布を決定するための一般的なアルゴリズムを説明する。図2に、波動伝達媒体の空間的な屈折率分布を決定するための計算手順を示す。この計算は、繰り返し実行されるので、繰り返し回数をqで表し、(q−1)番目まで計算が実行されているときのq番目の計算の様子が図示されている。(q−1)番目の計算によって得られた屈折率分布{nq-1}をもとに、各j番目の入射フィールドψj(x)および出射フィールドφj(x)について、伝搬フィールドと逆伝搬フィールドとを数値計算により求め、その結果を各々、ψj(z,x,{nq-1})およびφj(z,x,{nq-1})と表記する(ステップS220)。
これらの結果をもとに、各場所(z,x)における屈折率n(z,x)を、次式により求める(ステップS240)。
n(z,x)=nq-1(z,x)−αΣjIm[φj(z,x,{nq-1})*・ψj(z,x,{nq-1})]
・・・(1)
ここで、右辺第2項中の記号「・」は、内積演算を意味し、Im[]は、[]内のフィールド内積演算結果の虚数成分を意味する。なお、記号「*」は複素共役である。係数αは、n(z,x)の数分の1以下の値をさらにフィールドの組の数で割った値であり、正の小さな値である。Σjは、インデックスjについて和をとるという意味である。
ステップS220とS240とを繰り返し、伝搬フィールドの出射面における値ψj(ze,x,{n})と出射フィールドφj(x)との差の絶対値が、所望の誤差dよりも小さくなると(ステップS230:YES)計算が終了する。
以上の計算では、屈折率分布の初期値{n}は適当に設定すればよいが、この初期値{n}が予想される屈折率分布に近ければ、それだけ計算の収束は早くなる(ステップS200)。また、各jについてφj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})を計算するにあたっては、パラレルに計算が可能な計算機の場合は、jごと(すなわち、φj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})ごと)に計算すればよいので、クラスタシステム等を利用して計算の効率化を図ることができる(ステップS220)。また、比較的少ないメモリで計算機が構成されている場合は、式(1)のインデックスjについての和の部分で、各qで適当なjを選び、その分のφj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})のみを計算して、以降の計算を繰り返すことも可能である(ステップS220)。
以上の演算において、φj(z,x,{nq-1})の値とψj(z,x,{nq-1})の値とが近い場合には、式(1)中のIm[φj(z,x,{nq-1})*・ψj(z,x,{nq-1})]は位相差に対応する値となり、この値を減少させることで所望の出力を得ることが可能である。
屈折率分布の決定は、波動伝達媒体に仮想的メッシュを定め、このメッシュによって画定される微小領域(ピクセル)の屈折率を、各ピクセルごとに決定することと言い換えることもできる。このような局所的な屈折率は、原理的には、その場所ごとに任意の(所望の)値とすることができる。最も単純な系は、低屈折率(n)を有するピクセルと高屈折率(n)を有するピクセルのみからなる系であり、これら2種のピクセルの空間的分布により全体的な屈折率分布が決定される。この場合、媒体中の低屈折率ピクセルが存在する場所を高屈折率ピクセルの空隙として観念したり、逆に、高屈折率ピクセルが存在する場所を低屈折率ピクセルの空隙として観念したりすることができる。すなわち、本発明の波動伝達媒体は、均一な屈折率を有する媒体中の所望の場所(ピクセル)を、これとは異なる屈折率のピクセルで置換したものと表現することができる。
上述した屈折率分布決定のための演算内容を要約すると次のようになる。波動をホログラフィックに伝達させ得る媒体(光の場合には誘電体)に、入力ポートと出力ポートとを設け、入力ポートから入射した伝搬光のフィールド分布1(順伝搬光)と、入力ポートから入射した光信号が出力ポートから出力される際に期待される出力フィールドを出力ポート側から逆伝搬させた位相共役光のフィールド分布2(逆伝搬光)と、を数値計算により求める。フィールド分布1およびフィールド分布2を、伝搬光と逆伝搬光の各点(x,z)における位相差をなくすように、媒体中での空間的な屈折率分布を求める。なお、このような屈折率分布を得るための方法として最急降下法を採用すれば、各点の屈折率を変数として最急降下法により得られる方向に屈折率を変化させることにより、屈折率を式(1)のように変化させることで、2つのフィールド間の差を減少させることができる。このような波動伝達媒体を、入力ポートから入射した光を所望の出力ポートに出射させる光部品に応用すれば、媒体内で生じる伝搬波同士の多重散乱による干渉現象により、実効的な光路長が長くなり、緩やかな屈折率変化(分布)でも充分に高い光信号制御性を有する光回路を構成することができる。
図3に、本発明の一実施形態にかかる光合分波回路を示す。上述したアルゴリズムにしたがって、約200回の繰り返しにより、図3(a)に示した屈折率分布を有する1×2光合分波回路が得られる。ここで、図中の光回路設計領域1−1内の黒色部分は、コアに相当する高屈折率部(誘電体多重散乱部)1−11であり、黒色部以外の部分はクラッドに相当する低屈折率部1−12であり、導波路より屈折率の低い散乱点である。クラッドの屈折率は、石英ガラスの屈折率を想定し、コアの屈折率は、石英ガラスに対する比屈折率が1.5%だけ高い値を有する。光回路のサイズは縦300μm、横140μmである。屈折率分布を求める際の計算に用いられたメッシュは、300×140である。
図3(b)に、光合分波回路の透過スペクトルを示す。出力ポートaからは1.31μmの光信号が出力され、出力ポートbからは1.55μmの光信号が出力され、波長による光合分波器が形成されていることがわかる。
次に、入力ポートに入力された光信号から、さらに1.49μmの光信号を合分波する回路を考える。図4に、複数の回路部品を組み合わせた光機能回路の一例を示す。入力された光信号の中から、1.49μmの光信号を抽出するフィルタ回路を、上述したアルゴリズムにしたがって、約200回の繰り返しにより計算する。求められた屈折率分布を有する第1波動伝達媒体411が形成された石英基板401を作製する。図3に示した波動伝達媒体である第2波動伝達媒体412が形成された石英基板402を作製する。光信号を分岐するY分岐回路が形成された石英基板403の出力ポートと、各々の入力ポートとを接続する。
波長1.31μmと1.49μmと1.55μmの光信号を入力すると、第1波動伝達媒体411から1.49μmの光信号が出力され、第2波動伝達媒体412から1.31μmと1.55μmの光信号が出力され、3波長を分波する光機能回路を実現することができる。光の進行方向を逆にすると、3波長を合波する光機能回路を実現することができる。
図5に、複数の回路部品を組み合わせた光機能回路の他の例を示す。石英基板404に、図3に示した波動伝達媒体である第2波動伝達媒体412と、フィルタ413とを形成する。フィルタ413は、波長1.49μmの光信号を反射して、他の出力ポートに出力し、1.31μmと1.55μmの光信号を透過する。第2波動伝達媒体412からは、1.31μmと1.55μmの光信号が各々の出力ポートから出力され、3波長を分波する光機能回路を実現することができる。光の進行方向を逆にすると、3波長を合波する光機能回路を実現することができる。
図6に、本発明の第1の実施形態にかかる光機能回路を示す。光機能回路は、図4に示した波動伝達媒体を重ね合わせた構造を有する。ここで、各々の波動伝達媒体502,503の屈折率分布の計算は、個々の波動伝達媒体を計算する場合と異なる。すなわち、それぞれの屈折率分布の計算において、以下の制約条件を設けて、計算する。
Figure 2006039052
なお、波動伝達媒体502,503の結合部分におけるフィールドの傾きは、小さいほどよく、ここでは、波動伝達媒体502,503を重ね合わせる角度θを、20度とする。好適には、角度θは、0〜30度である。
波長1.31μmと1.49μmと1.55μmの光信号を入力すると、波動伝達媒体503から1.49μmの光信号が出力され、波動伝達媒体502から1.31μmと1.55μmの光信号が出力され、3波長を分波する光機能回路を実現することができる。光の進行方向を逆にすると、3波長を合波する光機能回路を実現することができる。
図7に、光機能回路における波動伝達媒体の重複部分の断面図を示す。波動伝達媒体は、シリコン基板上の石英系ガラス光導波路により構成する。シリコン基板601上に、SiOを主体にした下部クラッド層602を積層し、そのうえに下部伝達媒体層603を形成する。下部伝達媒体層603は、SiOにGeOを添加したコアガラス層を堆積し、反応性イオンエッチングによってコアガラスのパターン化を行う。その後、中間クラッド層604を形成する。同様にして、上部伝達媒体層605を形成し、上部クラッド層606を形成する。下部クラッド層602は30μm厚、下部伝達媒体層603と上部伝達媒体層605とは、7μm厚である。
上述したように、光導波路は、極めて大きな屈折率差を有する光閉じ込め構造である。従って、波動伝達媒体502,503(下部伝達媒体層603と上部伝達媒体層605)を、光の伝搬方向と平行する平面(x−z平面)上で一部を重ね合わせて、中間クラッド層604を介して光学的に結合するためには、中間クラッド層604を十分に薄くする必要がある。そこで、中間クラッド層604は、3μm厚とする。
図8に、本発明の第2の実施形態にかかる光機能回路を示す。光機能回路は、石英基板701に、図4に示した波動伝達媒体を重ね合わせた構造を有する。波動伝達媒体702,703を重ね合わせる角度θが、0度の場合である。従って、1.49μmの光信号が出力されるポートと、1.31μmと1.55μmの光信号が出力されるポートとは、2階層に分かれて、石英基板701の同じ端面から出力される。
図9に、本発明の第3の実施形態にかかる光機能回路を示す。石英基板801に、波動伝達媒体702,703を重ね合わせた構造を有する。第3の実施形態では、第2の実施形態における3つの出力ポートの光軸が、石英基板801の端面において、同じ水平面内になるように導波路を形成している。
このようにして、ホログラフィック波動伝達媒体を多層に重ね合わせることにより、複数の機能を実行することのできる光機能回路を、1つの基板上で作製することができ、製造工程の短縮とともに回路の小型化を図ることができる。
波動伝達媒体の基本構造を説明するための図である。 波動伝達媒体の空間的な屈折率分布を決定するための計算手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる光合分波回路を示す図である。 複数の回路部品を組み合わせた光機能回路の一例を示す図である。 複数の回路部品を組み合わせた光機能回路の他の例を示す図である。 本発明の第1の実施形態にかかる光機能回路を示す図である。 光機能回路における波動伝達媒体の重複部分の断面図である。 本発明の第2の実施形態にかかる光機能回路を示す図である。 本発明の第3の実施形態にかかる光機能回路を示す図である。
符号の説明
1−1 光回路設計領域
1−2 基板
1−11 高屈折率部
1−12 低屈折率部
2−1 入射面
2−2,2−3 出射面
3−1 入力ポート
3−2 出力ポート

Claims (3)

  1. 仮想的なメッシュにより画定される仮想的なピクセルの各々が有する屈折率により、入力ポートから入射された光信号が多重散乱しながら分岐し、出力ポートから出射されるように決定された空間的な屈折率分布が形成された波動伝達媒体を複数備え、
    少なくとも1つの波動伝達媒体は、中間クラッド層を介して他の波動伝達媒体と、光の伝搬方向と平行する平面において重ね合わされ、前記中間クラッド層を介して光学的に結合されていることを特徴とする光機能回路。
  2. 前記中間クラッド層は、3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光機能回路。
  3. 前記波動伝達媒体は、シリコン基板上の石英系ガラス光導波路で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光機能回路。

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