JP2006015886A - ヘッドレスト装置 - Google Patents

Abstract

【課題】 細くて剛性の低い伝達部材を用いながら、車両の追突時にヘッドレストを応答性良く上昇させる。
【解決手段】 車両が追突を受けてシートバック１２に設けた受圧プレート２２が車体後方に移動すると、ボーデンワイヤ２７が受圧プレート２２の移動を引張荷重としてヘッドレスト上昇機構２６に伝達するので、ヘッドレスト１３を速やかに上昇させて乗員の頭部を確実に拘束することができる。またボーデンワイヤ２７は引張荷重のみを伝達するので座屈することがなく、圧縮荷重を伝達するロッドを用いる場合に比べて軽量化が可能になる。またボーデンワイヤ２７は軽量であるため、重量軽減のために受圧プレート２２を無理にヘッドレスト上昇機構２６に近い位置に配置する必要がなくなり、追突時に充分な駆動力が得られる最適の位置に受圧プレート２２を配置することができる。
【選択図】 図１

Description

本発明は、シートバックの上端にヘッドレストを上昇可能に支持するヘッドレスト上昇機構と、乗員の背部に対向するようにシートバックに設けられ、追突を受けたときの慣性力で車体後方に移動する受圧プレートと、受圧プレートをヘッドレスト上昇機構に連結し、受圧プレートが車体後方に移動したときにヘッドレスト上昇機構を作動させてヘッドレストを上昇させる伝達手段とを備えたヘッドレスト装置に関する。

車両が追突を受けるとシートに着座した乗員の頭部が後方に倒れるだけでなく、衝撃で乗員がシートから跳ね上がるために頭部の位置が通常の着座時よりも高くなる傾向がある。そこで追突時に乗員の背部に押されて後方に移動する受圧プレートの動きを伝達手段を介してヘッドレストに伝達し、ヘッドレストを乗員の頭部に近づくように前方に移動させると同時に上昇させるヘッドレスト装置が、下記特許文献１により公知である。
特開平１１−２６８５６６号公報

ところで上記従来のヘッドレスト装置は、受圧プレートの後方への移動をロッド状の伝達手段の上方への移動に変換してヘッドレストを上昇させるため、ヘッドレストの上昇時に伝達手段に圧縮荷重が加わることになる。従って、太くて剛性の高い伝達手段を採用しないと、ヘッドレストの上昇時に伝達手段が撓んだり座屈したりする可能性があり、ヘッドレストを応答性良く上昇させることが難しくなるだけでなく、シートバックの内部に伝達手段を配置するスペースを確保するのが難しくなる問題があった。

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、細くて剛性の低い伝達部材を用いながら、車両の追突時にヘッドレストを応答性良く上昇させることを目的とする。

上記目的を達成するために、請求項１に記載された発明によれば、シートバックの上端にヘッドレストを上昇可能に支持するヘッドレスト上昇機構と、乗員の背部に対向するようにシートバックに設けられ、追突を受けたときの慣性力で車体後方に移動する受圧プレートと、受圧プレートをヘッドレスト上昇機構に連結し、受圧プレートが車体後方に移動したときにヘッドレスト上昇機構を作動させてヘッドレストを上昇させる伝達手段とを備えたヘッドレスト装置において、前記伝達手段は長尺部材であって、受圧プレートの車体後方への移動を引張荷重としてヘッドレスト上昇機構に伝達することを特徴とするヘッドレスト装置が提案される。

また請求項２に記載された発明によれば、請求項１の構成に加えて、前記伝達手段はボーデンワイヤであることを特徴とするヘッドレスト装置が提案される。

また請求項３に記載された発明によれば、請求項２の構成に加えて、前記ボーデンワイヤは、受圧プレートからシートバック内を上向きに延びた後に、下向きに屈曲してヘッドレスト上昇機構に連結されることを特徴とするヘッドレスト装置が提案される。

請求項１の構成によれば、車両が追突を受けてシートバックに設けた受圧プレートが車体後方に移動すると、長尺部材で構成された伝達手段が受圧プレートの移動を引張荷重としてヘッドレスト上昇機構に伝達するので、ヘッドレストを速やかに上昇させて乗員の頭部を確実に拘束することができる。また伝達手段は引張荷重のみを伝達するので、それを細くて剛性の低い長尺部材で構成しても座屈することがなく、そのために伝達手段の軽量化が可能になるだけでなく、レイアウトの自由度が増加する。また伝達手段が軽量であるため、重量軽減のために受圧プレートを無理にヘッドレスト上昇機構に近い位置に配置する必要がなくなり、追突時に充分な駆動力が得られる最適の位置に受圧プレートを配置することができる。

請求項２の構成によれば、可撓性を有するボーデンワイヤで伝達手段を構成したので、伝達手段の小型軽量化を図ることができるだけでなく、伝達手段がシートバック内の他の部材と干渉しないようにレイアウトするのが容易になる。

請求項３の構成によれば、ボーデンワイヤが受圧プレートから上向きに延びた後に下向きに屈曲してヘッドレスト上昇機構に連結されるので、ボーデンワイヤの上向きの引張荷重でヘッドレストを直接上昇させることができ、ヘッドレスト上昇機構の構造を簡素化することができる。

以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。

図１〜図４は本発明の一実施例を示すもので、図１は自動車用シートの斜視図、図２は図１の２−２線矢視図、図３は図２の３−３線矢視図、図４は図２に対応する作用の説明図である。

図１に示すように、自動車用のシートＳは乗員の臀部を支持するシートクッション１１と、シートクッション１１の後端にリクライニング可能に枢支されて乗員の背部を支持するシートバック１２と、シートバック１２の上端に昇降可能に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレスト１３とを備える。

シートバック１２の骨格を構成するシートバックフレーム１４は、金属板製の左右の側部フレーム１５，１５と、左右の側部フレーム１５，１５の下端間を連結する金属板製の下部フレーム１６と、左右の側部フレーム１５，１５の上端間を連結する金属パイプ製の上部フレーム１７と、シートバック１２をシートクッション１１に枢支するためのリクライニング軸１８とを備える。

図１〜図３から明らかなように、左右の側部フレーム１５，１５の上下方向中間部の内面に固定されたブラケット１９，１９にベルクランク２０，２０が支点ピン２１，２１で枢支される。シートＳに着座した乗員の背中の中央部に対向する位置に配置された受圧プレート２２の左右両端から前方に突出する腕部２２ａ，２２ａが、左右のベルクランク２０，２０の下向きに延びる端部にそれぞれ支点ピン２３，２３で枢支される。ベルククランク２０，２０は捩じりばね２４，２４で図２の時計方向に付勢されており、前方に延びる端部がストッパピン２５，２５に当接する位置に停止している。このとき、受圧プレート２２は最も車体前方側に前進している。

シートバックフレーム１４の上部フレーム１７の内側にヘッドレスト上昇機構２６が配置されており、アウターチューブ２７ｏ，２７ｏの内部にインナーケーブル２７ｉ，２７ｉを摺動自在に収納した２本のボーデンワイヤ２７，２７により、左右のベルクランク２０，２０がヘッドレスト上昇機構２６に接続される。

ヘッドレスト上昇機構２６は、上部フレーム１７に固定された固定ベース２８と、この固定ベース２８に上下動自在に支持された可動ベース２９とを備える。固定ベース２８は底壁２８ａおよび左右の側壁２８ｂ，２８ｂを有して断面Ｕ字状に形成された部材であって、その上部が上部フレーム１７に直接固定されるとともに、その下部が上部フレーム１７にステー３０を介して固定される。固定ベース２８の前面に配置される可動ベース２９は、底壁２９ａと、左右の側壁２９ｂ，２９ｂと、上壁２９ｃと、ヘッドレスト支持壁２９ｄとを備えており、ヘッドレスト支持壁２９ｄの前面に固定した一対のパイプ状のヘッドレスト取付部材３１，３１に逆Ｕ字状のヘッドレストフレーム３２の両下端が嵌合して固定される。

固定ベース２８の左右の側壁２８ｂ，２８ｂの下部に円弧状のガイド孔２８ｃ，２８ｃが形成されており、可動ベース２９の左右の側壁２９ｂ，２９ｂの下部に植設したガイドピン３３，３３が前記ガイド孔２８ｃ，２８ｃに摺動自在に係合する。固定ベース２８の左右の側壁２８ｂ，２８ｂの上部に一端を支点ピン３４，３４で枢支されたリンク３５，３５の他端が、可動ベース２９の左右の側壁２９ｂ，２９ｂの上部に支点ピン３６，３６で枢支される。

固定ベース２８の底壁２８ａに固定した一対のステー３７，３７が、可動ベース２９の底壁２９ａに形成した一対の開口２９ｅ，２９ｅを前方に貫通する。一対のボーデンワイヤ２７，２７のアウターチューブ２７ｏ，２７ｏの下端が左右のブラケット１９，１９に固定され、上端が可動ベース２９の上壁２９ｃの開口２９ｆ，２９ｆを貫通して固定ベース２８のステー３７，３７に固定される。また一対のボーデンワイヤ２７，２７のインナーケーブル２７ｉ，２７ｉの下端が左右のベルクランク２０，２０の前向きに延びる端部に固定され、上端が可動ベース２９の底壁２９ａに固定される。このとき、一対のボーデンワイヤ２７，２７は逆Ｊ字状に屈曲し、かつ屈曲部において相互に交差している。

次に、上記構成を備えた実施例の作用を説明する。

車両が追突を受けて車体が前方に押し出されたとき、シートＳに着座した乗員は慣性で元の位置に止まろうとするため、乗員の背部はシートバックフレーム１４の受圧プレート２２を車体後方に押圧する。その結果、ベルクランク２０，２０の下向きに延びる端部が後方に移動して前向きに延びる端部が下方に移動するため、そこに接続されたボーデンワイヤ２７，２７のインナーケーブル２７ｉ，２７ｉの一端部が下向きに牽引されることで、インナーケーブル２７ｉ，２７ｉの他端部が上向きに牽引されて可動ベース２９が上向きに引き上げられる。

可動ベース２９が固定ベース２８に対して上向きに移動すると、可動ベース２９に下部植設したガイドピン３３，３３が固定ベース２８の下部に形成したガイド孔２８ｃ，２８ｃに沿って上方に案内され、かつ可動ベース２９の上部がリンク３５，３５を介して固定ベース２８の上部に対して上方に案内されることで、図４に示すように、ヘッドレスト１３は上昇しながら前方に移動し、追突の衝撃で後方に移動し、かつ上方に跳ね上がろうとする乗員の頭部を確実に拘束することができる。

以上のように、追突を受けたときに受圧プレート２２が後方に移動しようとする駆動力を、伝達手段としてのボーデンワイヤ２７，２７の引張荷重のみを介してヘッドレスト上昇機構２６に伝達するので、その伝達経路において伝達手段に座屈が発生する虞がない。従って、ヘッドレスト上昇機構２６に近い位置に無理に受圧プレート２２を配置することなく、追突時に充分な駆動力が得られる最適の位置に受圧プレート２２を配置することができる。しかも座屈を避けるために剛性が高く重い伝達部材を用いる必要が無くなり、小型軽量であり、かつ他部材との干渉を避けて取り回すことが容易なボーデンワイヤ２７，２７を用いて、応答性良くヘッドレスト１３を上昇させることができる。

またボーデンワイヤ２７，２７が受圧プレート２２により作動するベルクランク２０，２０から上向きに延びた後に下向きに屈曲してヘッドレスト上昇機構２６の可動ベース２９に連結されるので、ボーデンワイヤ２７，２７の上向きの引張荷重でヘッドレスト１３を直接上昇させることができ、ヘッドレスト上昇機構２６の構造を簡素化することができる。更に、左右のボーデンワイヤ２７，２７を、その上端の屈曲部で相互に交差させたので、前記屈曲部におけるボーデンワイヤ２７，２７の曲率半径を大きくしてスムーズな作動を可能にすることができる。

以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。

例えば、本発明の伝達手段は実施例のボーデンワイヤ２７，２７に限定されず、受圧プレート２２の移動を引張荷重としてヘッドレスト上昇機構２６に伝達可能な任意の長尺部材（具体的にはケーブルやロッド）を採用することができる。

伝達手段としてケーブルを採用した場合には、その中間部をプーリに巻き掛けることにより下向きの引張荷重を上向きの引張荷重に変換することができ、また伝達手段としてロッドを採用した場合には、２本のロッドを中間リンク等で連結することにより下向きの引張荷重を上向きの引張荷重に変換することができる。

また伝達手段の下向きの引張荷重をそのままヘッドレスト上昇機構２６に伝達し、ヘッドレスト上昇機構２６の内部で前記下向きの引張荷重をヘッドレスト１３を押し上げる上向きの荷重に変換することも可能である。

自動車用シートの斜視図 図１の２−２線矢視図 図２の３−３線矢視図 図２に対応する作用の説明図

符号の説明

１２ シートバック
１３ ヘッドレスト
２２ 受圧プレート
２６ ヘッドレスト上昇機構
２７ ボーデンワイヤ（伝達手段）

Claims (3)

1. シートバック（１２）の上端にヘッドレスト（１３）を上昇可能に支持するヘッドレスト上昇機構（２６）と、
   乗員の背部に対向するようにシートバック（１２）に設けられ、追突を受けたときの慣性力で車体後方に移動する受圧プレート（２２）と、
   受圧プレート（２２）をヘッドレスト上昇機構（２６）に連結し、受圧プレート（２２）が車体後方に移動したときにヘッドレスト上昇機構（２６）を作動させてヘッドレスト（１３）を上昇させる伝達手段（２７）と、
   を備えたヘッドレスト装置において、
   前記伝達手段（２７）は長尺部材であって、受圧プレート（２２）の車体後方への移動を引張荷重としてヘッドレスト上昇機構（２６）に伝達することを特徴とするヘッドレスト装置。
2. 前記伝達手段はボーデンワイヤ（２７）であることを特徴とする、請求項１に記載のヘッドレスト装置。
3. 前記ボーデンワイヤ（２７）は、受圧プレート（２２）からシートバック（１２）内を上向きに延びた後に、下向きに屈曲してヘッドレスト上昇機構（２６）に連結されることを特徴とする、請求項２に記載のヘッドレスト装置。
   

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