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JP2006089614A - 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド - Google Patents

熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド Download PDF

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JP2006089614A
JP2006089614A JP2004277175A JP2004277175A JP2006089614A JP 2006089614 A JP2006089614 A JP 2006089614A JP 2004277175 A JP2004277175 A JP 2004277175A JP 2004277175 A JP2004277175 A JP 2004277175A JP 2006089614 A JP2006089614 A JP 2006089614A
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carbon fiber
propylene
polypropylene
thermoplastic resin
fiber strand
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Application number
JP2004277175A
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Koji Shiraki
浩司 白木
Hisamitsu Murayama
尚光 村山
Shoji Makino
昭二 牧野
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Teijin Ltd
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Teijin Techno Products Ltd
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Abstract

【課題】 熱可塑性樹脂との接着性に優れ、開繊性、擦過性に優れた熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランドを提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体であって、数平均分子量が300〜2000の重合体、又はこれらの混合物が付与されてなる熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。ポリプロピレン等の好ましい付着量は、炭素繊維に対し、合計で0.05〜5.0質量%である。本発明の炭素繊維ストランドは熱可塑性樹脂、中でもポリプロピレンとの親和性、接着性に優れる。本発明の炭素繊維ストランドを熱可塑性樹脂に5〜70質量%配合してなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂は、層間剪断強度等の機械的特性に優れる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との接着性に優れ、開繊性、擦過性に優れた熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド、及び当該炭素繊維ストランドによって強化された炭素繊維強化熱可塑性樹脂に関する。
炭素繊維複合材料は、(1)引張強度・引張弾性率が高い、(2)耐熱性、耐薬品性、疲労特性、耐摩耗性に優れる、(3)線膨張係数が小さく、寸法安定性に優れる、(4)電磁波シールド性に優れ、X線透過性に富むなどの優れた特長を有している。そのため、スポーツ・レジャー、航空・宇宙、一般産業用途に幅広く用いられている。従来は、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することが多かったが、最近、リサイクル性や高速成型性の観点からマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が注目されている。
熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維複合材料は、コンパウンドペレットの射出成型、長繊維ペレットの長繊維射出成型、射出圧縮成型、押出成型、ランダムマットを使用したスタンピング成型などにより成型される。これらの成型で使用される炭素繊維は、比較的短い繊維形態が多い。このため、炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維ストランドとマトリックス樹脂として使用される熱可塑性樹脂との親和性・接着性により大きな影響を受ける。
また、炭素繊維ストランドは、例えばポリアクリロニトリル(PAN)系の場合、直径7μm程度のフィラメントが集束して1000〜50000本程度の束状となっている。このため、炭素繊維複合材料の機械的特性は、炭素繊維ストランドへのマトリックス樹脂の含浸状態によっても大きく影響を受ける。一般には、炭素繊維が開繊し易いほど樹脂の含浸性に優れるので、炭素繊維複合材料の機械的特性は高くなる。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料に使用するマトリックス樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリプロピレンは安価で、成型性、耐水性、耐薬品性(耐油性、耐溶剤性)、電気絶縁性などに優れた性質を有している。このため、ポリプロピレンは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料のマトリックスとして、今後飛躍的な成長が期待されている。
しかしながら、ポリプロピレン樹脂は結晶性を有し、且つ、極性基を持たないため、炭素繊維との親和性が低い。このため、ポリプロピレンを炭素繊維で強化して複合材料の機械的特性を向上させることは難しい。
前述の如く、炭素繊維は極細フィラメントで、伸度が小さく機械的摩擦などによって毛羽が発生し易い。このため、炭素繊維の集束性を向上させて取扱性を改善するため一般的にサイジング剤が用いられるが、サイジング剤はマトリックス樹脂との親和性を高めるためにも付与される。
炭素繊維用のサイジング剤としては、これまでに多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、ポリウレタンで被覆処理された炭素繊維ストランドが開示されている。特許文献1によれば、ポリウレタンで被覆処理した炭素繊維ストランドは取扱性が向上し、更には当該炭素繊維ストランドとポリカーボネート、ポリアミド等の極性の高い熱可塑性樹脂とからなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂の機械的特性が向上することが記載されている。
また、特許文献2には、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、常温で固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ステアリン酸を必須成分とするサイジング剤が開示されている。特許文献2によれば、上記サイジング剤が炭素繊維ストランドに良好な耐擦過性、開繊性を与えることが記載されているが、このサイジング剤はエポキシ樹脂との親和性を向上させるものである。
このように、これらのサイジング剤は、炭素繊維ストランドとエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、又は極性の高い熱可塑性樹脂との接着性向上を図ったものである。これらのサイジング剤を付与した炭素繊維ストランドをポリプロピレンに適用しても、炭素繊維−ポリプロピレン複合材料の強度はほとんど向上しない。
一方で、ガラス繊維用のサイジング剤については、ガラス繊維とポリプロピレンとの接着性を向上させるものが幾つか提案されている。例えば、特許文献3には、酸変性のオレフィン樹脂及びアミノ基を有するシランカップリング剤を含むガラス繊維用サイジング剤が提案されている。
しかしながら、このサイジング剤を炭素繊維に適用しても、炭素繊維とシランカップリング剤との反応性は乏しく、接着向上効果は期待できない。更に、酸変性のオレフィン樹脂は常温で固体であり、上記サイジング剤を炭素繊維ストランドに付与した場合は、開繊性が損なわれる。そのため、成形方法にもよるが、サイジング剤(酸変性のオレフィン樹脂)とマトリックス樹脂(ポリプロピレン樹脂)との親和性、接着性は良好であるにも関わらず、炭素繊維ストランド(1000〜50000本)内部まで溶融したマトリックス樹脂が均一に含浸せず、成形物中にボイドができるケースがある。このような場合は、炭素繊維−ポリプロピレン複合材料の機械的特性においてその高い性能を十分に反映できていない。
以上のことから、炭素繊維と熱可塑性樹脂、特にポリプロピレン樹脂との親和性に優れ、且つ、開繊性・擦過性に優れる炭素繊維用サイジング剤の開発が要望されている。
特開昭58−126375号公報(特許請求の範囲) 特開平7−197381号公報(特許請求の範囲) 特開2003−253563号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、熱可塑性樹脂との接着性に優れ、且つ、開繊性、擦過性に優れた、サイジング剤を付与してなる熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランドを提供することにある。更に、本発明の目的は、当該炭素繊維ストランドを強化材として使用した高強度の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、常温で液状である所定の分子量を有するポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体等をサイジング剤として付与してなる炭素繊維ストランドは、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との親和性が高く、開繊性、擦過性に優れ、熱可塑性樹脂の強化材に好適に使用できることを見出し本発明を完成するに到った。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕 ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体であって、数平均分子量が300〜2000の重合体、又はこれらの混合物が付与されてなる熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
〔2〕 エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が、プロピレンモノマー単位を50モル%以上含有する〔1〕に記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
〔3〕 ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体、又はこれらの混合物が、炭素繊維に対し、0.05〜5.0質量%付与されてなる〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
〔4〕 〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維を熱可塑性樹脂に5〜70質量%配合してなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
〔5〕 熱可塑性樹脂がポリプロピレンである〔4〕に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
本発明の炭素繊維ストランドは、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との接着性、親和性が高く、機械的摩擦による毛羽立ちが少なく、開繊性に優れるため、熱可塑性樹脂の強化材として好適に使用できる。当該炭素繊維ストランドを熱可塑性樹脂に配合して得られる炭素繊維強化熱可塑性樹脂は、炭素繊維に付着した重合体と熱可塑性樹脂との親和性が高く、当該炭素繊維ストランドが開繊性に優れており樹脂の含浸性が良好なため、機械的強度に優れる。
本発明の炭素繊維ストランドは、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体であって、数平均分子量が300〜2000である重合体、又はこれらの混合物を付着してなる。本発明で使用する重合体は、いずれも数平均分子量が300〜2000の範囲内では室温(23℃)下で流動性を有する流動体であり、流動性のない固体を含まない。
本発明の炭素繊維ストランドに付与するポリプロピレン等の重合体は、数平均分子量が300未満では耐熱性が低く、成形時にポリプロピレン等の重合体が蒸発して作業環境を悪化させる。一方、数平均分子量が2000を超えると重合体の粘度が高くなるので炭素繊維ストランドの開繊性が悪くなり、ドレープ性も低下するため取扱い性が悪くなる。また、炭素繊維ストランドの摩擦係数が高くなり擦過性も悪くなる。ポリプロピレン等の重合体の好ましい数平均分子量は600〜2000であり、より好ましくは800〜1800である。
炭素繊維ストランドには、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体又はこれらの末端変性重合体を単独で付与してもよいし、これらの混合物を付与してもよい。混合物とする場合には、混合物におけるポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体及びこれらの末端変性重合体の混合割合は任意である。
炭素繊維ストランドに付与するポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体は、エチレン、プロピレン、及びブテンから適宜選択したモノマーをルイス酸を触媒としてカチオン重合する等の方法で得られるオリゴマーである。
エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体におけるプロピレンモノマー単位の含有量は、50モル%以上とすることが好ましく、70モル%以上とすることがより好ましく、90モル%以上とすることが更に好ましい。
ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、又はエチレン−プロピレン−ブテン共重合体の末端変性重合体は、重合体の末端に−OH又は−COOHを導入して変性した重合体である。これらの末端変性重合体は、公知の方法により製造することが可能である。
ポリプロピレン等の重合体を付与した炭素繊維ストランドは、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との親和性に優れるので、高強度の複合材料を得ることができる。また、上記範囲の分子量を有するポリプロピレン等の重合体は適度な粘度を有しているため、炭素繊維ストランドの集束性を有し、且つ、ガイドアクションを加えることによって炭素繊維ストランドを任意の幅に開繊することもできる。また、潤滑油としての機能も有するため、炭素繊維ストランドの擦過性も向上する。
本発明の炭素繊維ストランドには上記重合体の他、本発明の効果である炭素繊維ストランドの開繊性、低い摩擦特性等を損なわない範囲内で任意により、オレイン酸メチルやジオクチルセバケートなどの合成潤滑油、植物油、マッコーアルコールなどの高級アルコール、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤や低度硫酸化油などの乳化剤、上述したポリプロピレン等を除く液状ポリオレフィン共重合体等の成分が付着していてもよい。
ポリプロピレン等の重合体を炭素繊維ストランドに付与する際には、重合体を溶剤に溶解させたものや、水に分散させたものとすることができる。
ポリプロピレン等の重合体の付着量は、目的とする複合材料の成型法や用途によっても異なるが、未サイジングの炭素繊維に対し、合計で0.05〜5質量%とすることが好ましく、0.1〜5質量%とすることが特に好ましい。付着量が0.05質量%未満では、複合材料の成型加工時に炭素繊維の取扱性が劣るものとなる。一方、5質量%を超えると、マトリックス樹脂に対して相溶するポリプロピレン等の量が多くなり、マトリックス樹脂の弾性率が低下する傾向がある。
以下、本発明の炭素繊維ストランドの製造方法の一例について説明する。
[原料炭素繊維]
本発明に使用する原料炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
PAN系炭素繊維ストランドは、直径6〜8μmのフィラメント1000〜50000本程度を一束にしたものであり、概略以下の四工程を経て製造される。
[耐炎化工程]
まず最初の耐炎化工程では、アクリル繊維を200〜300℃の空気雰囲気中で加熱し、ニトリル基を閉環させ、アクリルポリマー中に酸素を導入して、高温下でも安定な構造にする。
[炭素化工程]
炭素化工程では、不活性ガス雰囲気中1000℃以上の高温で焼成し、炭素含有率を90質量%以上まで高めた炭素繊維ストランドとする。
[表面処理工程]
表面処理工程では、ストランドを構成する炭素繊維表面にマトリックス樹脂との接着性を高めるための含酸素官能基を導入する。
炭素繊維の表面処理としては、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などが挙げられる。これら表面処理のうちでも、生産性、処理の均一性の観点から、液相における電解酸化処理が好ましい。電解酸化処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などが挙げられる。
炭素繊維の表面処理を行う際の指標としては、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定できる炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)により管理するのが良く、O/Cが、0.05〜0.4となるように電解酸化処理するのが好ましい。
[サイジング工程]
サイジング工程では、炭素繊維ストランドの取扱性を改善するとともに、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性を良くするため、炭素繊維ストランドにポリプロピレン等を含むサイジング剤を付与する。
サイジング剤は、ポリプロピレン等の重合体をそのまま、又は溶剤に溶解し、あるいは水に分散したエマルジョン形態のサイジング液として使用することができる。ポリプロピレン等の乳化は、公知の方法で実施できる。
炭素繊維ストランドへのサイジング法は、スプレー法、ローラー浸漬法、ローラー転写法などがある。これらサイジング法のうちでも、生産性、均一性に優れるローラー浸漬法が好ましい。炭素繊維ストランドをサイジング液に浸漬する際には、サイジング浴中に設けられた浸漬ローラーを介して、開繊と絞りを繰り返し、ストランドの中までサイジング液を含浸させることが肝要である。
ポリプロピレン等のエマルジョンを使用する場合は、サイジング液を炭素繊維間に含浸させた後、続く乾燥処理によって水分を除去して、目的とする炭素繊維ストランドを得る。炭素繊維ストランドに対するポリプロピレン等の付着量の調整は、サイジング液の濃度調整や、絞りローラーの調整などによって行う。炭素繊維ストランドの乾燥は、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーターなどを使用することができる。
本発明の炭素繊維ストランドは熱可塑性樹脂の強化繊維として好適である。熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられるが、特にポリプロピレンが好ましい。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂における炭素繊維ストランドの含有量は、炭素繊維の形態や、複合材料の成型方法、用途等によって異なるが、コストパフォーマンスの観点から5〜70質量%の範囲が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
本発明の炭素繊維ストランドを炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の成型に用いる際には、短繊維コンパウンド、長繊維ペレット、ランダムマット、バルクモールディングコンパウンド、一方向強化プリプレグなどに加工して使用できる。
以下の実施例及び比較例に記載した条件によりサイジング剤の付着した炭素繊維ストランドを作製した。各サイジング剤の付着した炭素繊維ストランドを用いて諸物性値を以下の方法により測定した。結果を表1及び2に示す。
[サイジング剤付着量の測定方法]
サイジング剤の付着した炭素繊維ストランドを約5g採取し質量(W1)を測定した。予め恒量にした坩堝の質量(W2)を量った後、前記炭素繊維ストランドを坩堝に入れ、窒素雰囲気下450℃±5℃に保たれた熱風循環式乾燥機内で30分熱処理を行った。坩堝ごとデシケーターに入れ室温まで冷却し、炭素繊維ストランドが入った坩堝の質量(W3)を測定した。サイジング剤付着量を次式(i)
サイジング剤付着量(%)=(W1+W2−W3)/(W3−W2)×100……(i)
により求めた。
[炭素繊維ストランドの擦過毛羽量の測定方法]
直径2mmのクロムめっきのステンレス丸棒3を、図1に示すようにシグザグに5本配置した。なお、ステンレス丸棒3の間隔は15mm間隔とし、サイズ処理された炭素繊維ストランド1の折り返し角度αが120゜となるように配置した。ステンレス丸棒間にサイズ処理された炭素繊維ストランド1をシグザグに掛け、ボビンから炭素繊維ストランド解舒テンションを1.96N(200gf)に設定して擦過させた。
擦過後の炭素繊維ストランドをウレタンスポンジ(寸法32mm×64mm×10mm、質量0.25g)2枚の間に挟み、125gの錘をウレタンスポンジ全面に荷重が掛かるように載せ、炭素繊維ストランドを15m/分の速度で2分間通過させたときのスポンジに付着した毛羽の質量を擦過毛羽量とした。
[炭素繊維ストランドの開繊性評価方法]
直径15mmのクロムめっきのステンレス丸棒23、幅測定器27、及び、炭素繊維ストランドを巻取ったパッケージ25を、図2に示すように配置し、炭素繊維ストランド21をステンレス丸棒23を縫うように通した。
炭素繊維ストランド21を、幅測定器27を通過した際のストランドテンションが200gfとなるように調整しながら、5m/分の速度で走行させた。このときの炭素繊維ストランド21の拡がり幅を幅測定器27で測定した。測定時間、測定間隔は、それぞれ30秒、2秒/回とし、平均値を炭素繊維ストランドの拡がり幅とした。
[炭素繊維強化ポリプロピレン成型物の層間剪断強度]
図3に示す装置を用いてサイジング剤を付与した炭素繊維ストランドにポリプロピレンを含浸させて炭素繊維強化ストランドプリプレグを製造した。
サイジング剤を付与した炭素繊維ストランド31を、260℃に保持された恒温槽38中にセットしたポリプロピレン樹脂浴39(幅10cm×長さ30cm)に30cm/分で連続的に浸漬し、浴出側で絞りローラー34により余剰の樹脂を絞り取った後、ワインダー37で巻き取った。得られた炭素繊維強化ストランドプリプレグにおける炭素繊維の質量含有率は30%であった。なお、図3中、32はガイドローラー、33は浸漬ローラー、35は炭素繊維ストランドのパッケージを示す。
得られた炭素繊維強化ストランドプリプレグを、炭素繊維ストランドの配向方向を一方向に揃えてシート状に形成し、炭素繊維ストランドの配向方向をシート間で同一にして金型内に20枚積層した。金型内に積層した炭素繊維強化ストランドプリプレグを、190℃中5kgf/cm2で加圧下10分間加熱した。加熱の際には余剰の樹脂を金型外に流すようにして、巾10mm×厚さ3mm×長さ22mmの炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)試験片を作製した。CFRTP試験片の炭素繊維の体積含有率は60%であった。試験片5本について、JIS K 7078に準拠して層間剪断試験(スパン/厚さ比=4、試験速度1.3mm/分)を実施した。
実施例1
数平均分子量が1100の液状ポリプロピレン(PP)をトルエンに溶解させ、濃度が30g/literとなるように調製した。ここに未サイジングの炭素繊維ストランド[東邦テナックス社製「ベスファイトSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、繊度1.6g/m、引張強度4000MPa(408kgf/mm2)、引張弾性率238GPa(24.3ton/mm2)]を連続的に浸漬させ、フィラメント間に前記サイジング剤を含浸させた。続いて、140℃の乾燥機に3分間通して溶媒(トルエン)を蒸発させ、炭素繊維ストランドを得た。炭素繊維ストランドに付着したサイジング剤の量は1.2質量%であった。
実施例2
数平均分子量が1100の液状ポリプロピレンのエマルジョン(液状ポリプロピレン70質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル30質量部)をポリプロピレンの濃度が120g/literとなるように調製した。実施例1と同様にして、炭素繊維ストランドにサイジング剤を含浸させた。炭素繊維ストランドに付着したサイジング剤の量は4.1質量%であった。
実施例3
数平均分子量が600の液状ポリプロピレンをトルエンに溶解させ、濃度が30g/literとなるように調製した。実施例1と同様にして、炭素繊維フィラメント間にサイジング剤を含浸させた。炭素繊維ストランドに付着したサイジング剤の量は1.3質量%であった。
実施例4
数平均分子量が2000のポリヒドロキシポリオレフィン「ポリテールHA」(三菱化学社製)をトルエンに溶解させ、ポリヒドロキシポリオレフィンの濃度を30g/literとなるように調製した。続いて実施例1と同様にしてサイジング剤を含浸させた炭素繊維ストランドを得た。炭素繊維ストランドに付着したサイジング剤の量は1.1質量%であった。
比較例1
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製)をエマルジョン化したサイジング剤を用いた以外は、実施例1と同様にサイジングし、炭素繊維ストランドを作製した。
比較例2
ポリエステル系ウレタン樹脂HYDRAN HW−301(大日本インキ化学工業社製)をエマルジョン化したサイジング剤を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維ストランドを作製した。
比較例3
ブタジエンマレイン酸共重合体 アクロバインダーBG−7(三洋化成工業社製)をエマルジョン化したサイジング剤を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維ストランドを作製した。
比較例4
数平均分子量が2700のポリヒドロキシポリオレフィン「ポリテールH」(三菱化学社製)をトルエンに溶解させ、ポリヒドロキシポリオレフィンの濃度が30g/literとなるように調製した。続いて実施例1と同様にしてサイジング剤を含浸させた炭素繊維ストランドを得た。炭素繊維ストランドに付着したサイジング剤の量は1.1質量%であった。
ポリテールHA、ポリテールHは、以下に示す2つのモノマー単位(a)及び(b)
Figure 2006089614
で構成されるポリオレフィン主鎖の両末端に水酸基が結合した構造を有している。主鎖に含まれる(a)と(b)の比率((a)/(b))は、ポリテールHAが1/9、ポリテールHが8/2である。
Figure 2006089614
Figure 2006089614
実施例1〜4の炭素繊維ストランドは、擦過毛羽量が低く、集束性も適度なレベルにあるため、テンション下で良く繊維が拡がった。また、サイジング剤とポリプロピレンとの親和性は良好なため、浸漬時間が短いにも関わらず樹脂含浸は良好であり、炭素繊維強化ポリプロピレン成型物は高い層間剪断強度を示した。
比較例1、2の炭素繊維ストランドは、その擦過性、拡がり性は良好であったが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂と、ポリプロピレン樹脂との親和性は良好でないので、炭素繊維強化ポリプロピレン成型物の層間剪断強度は低い値に留まった。
比較例3、4においては、ブタジエンマレイン酸共重合体、ポリヒドロキシポリオレフィンとポリプロピレンとの親和性は良好であるが、いずれの重合体も室温で固体状であり炭素繊維ストランドの拡がり幅が小さいため、樹脂含浸性がやや劣り、炭素繊維強化ポリプロピレン成型物の層間剪断強度はやや低い値に留まった。
実施例において使用した擦過毛羽量測定用装置を示す概略図である。 実施例において使用した開繊性測定用装置を示す概略図である。 実施例において炭素繊維強化ストランドプリプレグの製造に使用した装置を示す概略図である。
符号の説明
1、21、31 炭素繊維ストランド
3、23 ステンレス丸棒
25、35 パッケージ
27 幅測定器
32 ガイドローラー
33 浸漬ローラー
34 絞りローラー
37 ワインダー
38 恒温槽
39 樹脂浴

Claims (5)

  1. ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体であって、数平均分子量が300〜2000の重合体、又はこれらの混合物が付与されてなる熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
  2. エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体が、プロピレンモノマー単位を50モル%以上含有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
  3. ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、若しくはこれらの末端変性重合体、又はこれらの混合物が、炭素繊維に対し、0.05〜5.0質量%付与されてなる請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランドを熱可塑性樹脂に5〜70質量%配合してなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
  5. 熱可塑性樹脂がポリプロピレンである請求項4に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
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