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JP2006050901A - カロチノイド含有水畜産飼料 - Google Patents

カロチノイド含有水畜産飼料 Download PDF

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JP2006050901A
JP2006050901A JP2002207970A JP2002207970A JP2006050901A JP 2006050901 A JP2006050901 A JP 2006050901A JP 2002207970 A JP2002207970 A JP 2002207970A JP 2002207970 A JP2002207970 A JP 2002207970A JP 2006050901 A JP2006050901 A JP 2006050901A
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JP
Japan
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carotenoid
astaxanthin
feed
acid
oryzanol
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Application number
JP2002207970A
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English (en)
Inventor
Takashi Maoka
孝至 眞岡
Fumio Tanimoto
文男 谷本
Mitsuhiko Sano
光彦 佐野
Mikifumi Kakukawa
幹史 霍川
Takuo Chikuno
卓夫 築野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DAINICHI CORP
TSUNO RICE FINE CHEMICALS CO L
TSUNO RICE FINE CHEMICALS CO Ltd
Research Institute for Production Development
Original Assignee
DAINICHI CORP
TSUNO RICE FINE CHEMICALS CO L
TSUNO RICE FINE CHEMICALS CO Ltd
Research Institute for Production Development
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Filing date
Publication date
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Priority to AU2003246218A priority patent/AU2003246218A1/en
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Abstract

【課題】水畜産飼料中に色揚げなどの目的のために必要不可欠的に配合されるカロチノイドの抗酸化安定化を目的として、天然植物由来のフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及び/又はフィチン酸を安定剤として配合した抗酸化性かつ生体安全性に優れるカロチノイド含有水畜産飼料を提供する。
【解決手段】カロチノイド(carotenoid)含有水畜産飼料が、前記カロチノイドの抗酸化安定剤として、フェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、を含有することを特徴とするカロチノイド含有水畜産飼料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水産及び畜産飼料(以下、水畜産飼料ということがある。)、特に魚介類などの体表の色や筋肉の色の改善(以下、色揚げということがある。)などのためにカロチノイド(carotenoid)が配合された水畜産飼料に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、前記カロチノイド含有水畜産飼料において、カロチノイドの抗酸化安定性を生体安全性の高い安定剤により高度に高めたカロチノイド含有水畜産飼料に関する。
【0003】
【従来の技術】
魚介類の養殖やニワトリ、ウシ、ブタなどの畜産が盛んになるにつれて、鮮度や肉質だけでなく、体表の色は養殖魚や畜産動物の品質を評価する上で重要な要素になって来ている。
【0004】
たとえば、マダイのヒレや表皮の赤色、サケやマス類の筋肉の赤紅色は主としてカロチノイドの一種であるアスタキサンチン(astaxanthin)に由来することが知られており、従ってアスタキサンチンは魚介類などの色揚げに多用されている。
また、前記アスタキサンチは、卵質向上効果、孵化率向上、仔稚魚の正常な生育、などに効果があることも知られている(松野隆男、幹渉、日本農芸化学会編、学会出版センター刊「化学と生物」、28、219−227、1990)。
【0005】
前記したことからわかるように、アスタキサンチンなどのカロチノイドは、マダイ、サケ、マスなどの魚介類の養殖やニワトリ、ウシ、ブタなどの畜産において色揚げ、卵質向上効果、孵化率向上などの観点から不可欠の飼料用配合成分である。
【0006】
しかしながら、カロチノイド、例えばアスタキサンチンは光、熱、酸化に対して極めて不安定であり、酸化分解して退色してしまうという問題点がある。
【0007】
例えば、アスタキサンチンを添加した飼料を押出し成形機によりエクストルーダーベレット(EP)を製造しようとするとき、120℃前後の加熱による熱変性とそれに伴う酸化分解を受けてしまい、アスタキサンチンの配合効果を消失してしまう。
このほか、アスタキサンチンは、飼料保存中における脂質の過酸化反応によって分解したり、さらには養殖魚にアスタキサンチンを投与してもその魚体内で起こる種々の過酸化反応によりアスタキサンチンが分解してしまい、配合効果を消失してしまうという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解消するべく創案されたものである。本発明者らは、水産分野や畜産分野の飼料として必要不可欠のアスタキサンチンなどのカロチノイド配合成分の安定化に鋭意検討を加えた。
本発明者らは、カロチノイド含有水畜産飼料用の高度に生体安全性に優れる安定剤を開発するという観点から、数多くの植物由来の抗酸化性物質について系統的に研究した。その結果、米ぬかに含まれるフェルラ酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸が有効な安定剤となり得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明により、米ぬかをはじめ多くの食物に含まれヒトが摂取して安全性が確立されているフェルラ酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸を抗酸化安定剤として高度に安全性に優れたカロチノイド含有水畜産飼料が提供される。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、カロチノイド(carotenoid)含有水畜産飼料が、前記カロチノイドの抗酸化安定剤として、フェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、を含有することを特徴とするカロチノイド含有水畜産飼料に関するものである。
【0011】
以下、本発明の技術的構成及び実施態様について詳しく説明する。
【0012】
本発明は、前記したようにカロチノイド含有水畜産飼料のアスタキサンチンなどのカロチノイドの酸化劣化による不安定性を高度に改善しようとするものである。
本発明者らは、安定化の対象が水畜産飼料ということから、これら飼料を食べる魚介類や畜産動物にとっての安全性はもとよりこれら魚介類や畜産動物を食べるヒトにとっても安全性の高い安定剤系を開発するという観点から研究を進めた。
【0013】
本発明者らは、アスタキサンチンの分解を防ぐ方法について種々の化学的、物理的な方法について検討した結果、飼料中に抗酸化剤を添加する方法が有効であるという知見を見い出した。
【0014】
しかしながら、合成系の抗酸化剤、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エトキシキンなどは、近年、安全性の観点から使用が控えられる傾向にあり、本発明の目的に沿わないものである。
また、天然物系としてコージ酸(特開平3−30637号公報)がアスタキサンチンの安定剤として提案されているが、このコージ酸は、最近、内分泌撹乱作用を持つ恐れがあることがわかり、飼料への使用が問題視されている。更にまた、グルタチオン(特開平7−231755号公報)やプロトアントシアニジン(特開平10−225266号公報、特開2001−299232号公報)を用いる方法も提案されているが、目的とする効果の点で難点がある。
【0015】
本発明者らは、前記した従来の安定剤系の欠点に鑑み、水畜産飼料用として不可欠のアスタキサンチンなどのカロチノイドを高度に安定化させるための安定剤の候補として、植物由来の抗酸化性物質に焦点を絞って鋭意検討を加えた。
その結果、米ぬかに含まれるフェルラ酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及び/又はフィチン酸がアスタキサンチンなどのカロチノイドの酸化分解を効果的に防止することを見い出した。
【0016】
本発明は、色揚げなどの目的のためにカロチノイドを含有させた水畜産飼料において、カロチノイドの酸化劣化を高度に安定化させたカロチノイド含有水畜産飼料を提供するものである。
【0017】
本発明の水畜産飼料は、
(1).水産分野においては、マダイ、ブリ、ヒラメ、スズキ、サケなどの海産魚;マス、アマゴ、ヤマメ、アユなどの淡水魚;エビ、カニなどの甲殻 類;キンギョ、ニシキゴイなどの鑑賞魚、などに対するカロチノイドを配合した魚介類用飼料、
(2).畜産分野においては、ニワトリ、ウシ、ブタなどに対するカロチノイドを配合した畜産用飼料、
などを例示することができる。
【0018】
前記した水産分野及び畜産分野における配合飼料について、以下、具体的に説明する。
(1).海産魚マダイ、ブリ用の配合飼料:
一般的な組成は、動物性飼料(魚粉)50〜65%、穀類(小麦粉など)〜15%、植物性油かす類(大豆脂粕)〜10%、そうこう類(米ぬか、ふすま)〜5%、その他(動物油脂、ビール酵母、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)〜10%である。また、これの成分組成は、粗蛋白質45〜55%、粗脂肪10〜16%以上、粗糖質15〜20%、粗灰分〜11%、である。
【0019】
例えば、キリンフィード株式会社製のマダイ育成用配合飼料(マダイEP4.5)の一般的な組成は、動物性飼料60%、穀類15%、植物性油かす類10%、そうこう類(米ぬか、ふすま)5%、その他(動物油脂、ビール酵母、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)10%である。また、このものの成分組成は、粗蛋白質48%、粗脂肪12%、粗繊維1.8%、粗灰分15%、カルシウム1.8%、リン1.4%である。
なお、マダイ、ブリなどの海産魚用飼料としては、株式会社ヒガシマル、日清飼料株式会社、オリエンタル酵母株式会社、日本配合飼料株式会社、日本農産工業株式会社、丸紅飼料株式会社などのメーカーがほぼ同じ組成の配合飼料を提供している。
【0020】
(2).淡水魚アユ育成用飼料:
アユ育成用の配合飼料として、日本農産(株)は、一般的な組成が、動物性飼料(魚粉)55%、穀類(小麦粉)21%、そうこう類(米ぬか、ふすま)10%、植物性油粕類(大豆油粕)7%、その他(飼料用酵母、アルファルファミール、小麦胚芽、食塩)6%のものを提供している。このものの成分組成は、粗蛋白質45.0%、粗脂肪3.0%以上、粗繊維4.0%以下、粗灰分15.0%である。
なお、オリエンタル酵母株式会社、日本配合飼料株式会社、日本農産工業株式会社、丸紅飼料株式会社などのメーカーがほぼ同じ組成の配合飼料を提供している。
【0021】
(3).畜産用ニワトリ用の配合飼料:
成鶏用の配合飼料として、例えば日本農産工業(株)は、一般的な組成が、穀類(とうもろこし、マイロ)60%、植物性油粕類(大豆油粕、なたね油粕、コーングルテンミール)15%、動物性飼料(魚粉)10%、そうこう類(コーングルテンミール、米ぬか)5%、その他(炭酸カルシウム、動物性油脂、食塩、リン酸カルシウム)10%、のものを提供している。この中の成分組成は、粗蛋白質17.0%、粗脂肪3.0%以上、粗繊維5.0%以下、粗灰分13.0%、カルシウム2.8%、リン0.5%である。
なお、オリエンタル酵母株式会社、日本配合飼料株式会社、丸紅飼料株式会社などのメーカーがほぼ同じ組成の配合飼料を出している。
【0022】
(4).肉豚用配合飼料:
肉豚用配合飼料として、例えば中部飼料株式会社のナチュラルUPCは、一般的な組成が、穀類(とうもろこし、マイロ)66%、そうこう類(コーングルテンミール、米ぬか)30%、植物性油粕類(大豆油粕、なたね油粕)2%、その他(炭酸カルシウム、動物性油脂、食塩、リン酸カルシウム)2%、のものを提供している。このものの成分組成は、粗蛋白質17.0%、粗脂肪3.0%以上、粗繊維5.0%以下、粗灰分13.0%、カルシウム2.8%、リン0.5%である。
なお、オリエンタル酵母株式会社、日本配合飼料株式会社、日本農産工業株式会社、丸紅飼料株式会社などのメーカーがほぼ同じ組成の配合飼料を出している。
【0023】
本発明において色揚げなどの目的で前記水畜産飼料に配合されるカロチノイド(carotenoid)は、動植物界に広く分布している黄色ないし赤色の脂溶性色素で、多数の共役二重結合を含む脂肪族または脂環式のポリエン類である。
なお、天然には600種あまりの化合物が存在するといわれている。
【0024】
前記カロチノイド(carotenoid)のうち典型的に使用されるものは、下記の化1で示されるアスタキサンチン(astaxanthin)〔分子式C4052〕である。
【0025】
【化1】
Figure 2006050901
【0026】
アスタキサンチン(astaxanthin)は、赤色を呈するカロチノイドの一種であり、微生物、植物、動物に分布する。マダイ、キンギョの体表の色、サケの筋肉の赤色、エビやカニの甲羅の色などはアスタキサンチンによるものである。
アスタキサンチンの生理作用としては、魚類では保護色、婚姻色、紫外線防御作用、卵質向上作用、抗酸化作用が知られている。また、近年、強力な活性酵素消去作用を持つことが判り、哺乳動物で発ガン予防効果、ガン細胞増殖抑制効果、免疫増強効果なども判り注目されている。
【0027】
本発明において、水畜産飼料に添加配合するアスタキサンチン源としては、酵母(Phaffia rhodozima)、緑藻(Haematococcus pluvialis)、オキアミやアミエビなどの甲殻類、の抽出物がある。その他、合成品(ロッシュ社製、商品名カロフィールピンク)もある。なお、後者はマダイ、サケ、マス用飼料として限定して使用されている。
【0028】
本発明のカロチノイド含有水畜産飼料において、カロチノイドとしては、前記したアスタキサンチンのほかに、β−カロチン(C4056)、ルテイン(C4056 )、ゼアキサンチン(C4056 )、カプサンチン(C4056 )などを例示することができる。
【0029】
本発明において、カロチノイドの抗酸化安定剤は、前記したようにフェルラ酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸から成る群から選ばれる少なくとも1種のもので構成される。
これら抗酸化安定剤は、米ぬかをはじめ多くの食物に含まれ、かつ、ヒトが摂取しているものであり安定性は確認されている。
【0030】
本発明のアスタキサンチンなどのカロチノイドの酸化分解を防止する抗酸化安定剤であるフェノールプロパノイド化合物は、下記の化2で示される化合物である。
【0031】
【化2】
Figure 2006050901
【0032】
本発明の前記化2で示されるフェノールプロパノイド化合物として、次の化合物を例示することができる。
(1).フェルラ酸:前記化2において、R =CH 、R =H 、R =Hの化合物である。
(2).γ−オリザノール:前記化2において、R =CH 、R =H 、R=ステロール、トロテルペンアルコール、高級アルコールから選ばれた残基の化合物である。
(3).コーヒー酸:前記化2において、R =H、R =H、R=Hの化合物である。
(4).シナピン酸:前記化2において、R =CH 、R =OCH 、R=Hの化合物である。
前記したようにフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸はフェノールプロパノイド化合物に属するカルボン酸である。また、γ−オリザノールはフェノールプロパノイド化合物に属するフェルラ酸とβ−シトステロールやトリテルペンアルコールなどとのエステル化合物である。
【0033】
本発明のアスタキサンチンなどのカロチノイドの酸化分解を防止する安定剤であるフィチン酸は、下記の化3で示される化合物である。
【0034】
【化3】
Figure 2006050901
【0035】
フィチン酸は、前記化3において、R=−PO(OH)で示される化合物である。
【0036】
本発明者らは、飼料中もしくは魚体内などで発生する脂質ラジカルによるアスタキサンチンの退色に対するフェノールプロパノイド化合物であるフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸、γ−オリザノール及びフィチン酸などの防止効果を検討するために、脂質ラジカルによる過酸化反応モデル(脂質過酸化モデル)を設定した(福沢健治、寺尾純二著、「脂質過酸化実験法」、廣川書店、1990)。
即ち、リノール酸を基質にしてアゾラジカル発生剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMVN)で脂質ラジカルを発生させて過酸化反応を誘発させるというモデルを設定して、前記酸化防止剤の酸化防止メカニズムを検討した。
前記過酸化反応を誘発させた系にアスタキサンチンを添加すると、すみやかに分解、退色がおこり、これがフェルラ酸などの酸化防止剤の添加により濃度依存的に防止ないし抑制されることを確かめた。
【0037】
前記した脂質過酸化モデルにより、以下のことが判明した。
1).アスタキサンチンは、ポリエン構造を持つ抗酸化剤であり、一重項酸素や脂質ラジカルに対する優れた消去特性を持っている。しかしながら、脂質ラジカルと反応するとポリエン構造の部位の酸化分解が起り退色する。
2).一方、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸やγ−オリザノールはフェノールプロパノイドに属するフェノール系抗酸化剤であり、脂質ラジカルに速やかに水素を供与し過酸化反応を停止させることができる。
3).フェノールプロパノイドはアスタキサンチンより脂質ラジカルとの反応が早いためアスタキサンチンが酸化分解される前に脂質ラジカルを消去することができ、従ってアスタキサンチンの劣化、減耗を抑えることができる。
【0038】
4).一方、フィチン酸は水溶性ラジカル消去剤であり、アスタキサンチンが消去できない水溶性ラジカルを消去できる効果がある。
フィチン酸の酸化防止能は、2価の鉄である硫酸鉄と過酸化水素によって発生するヒドロキシラジカルによる脂質過酸化反応モデル(福沢健治、寺尾純二著、「脂質過酸化実験法」、廣川書店、1990)を利用した。
アスタキサンチンの退色防止実験において、フィチン酸がアスタキサンチンの退色を濃度依存的に抑制することから確かめられた。フィチン酸は金属をキレート化する作用があることから、金属が誘発するラジカル反応を効果的に抑制することができる。
【0039】
本発明の前記カロチノイドの抗酸化安定剤であるフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸、γ−オリザノールなどのフェニールプロパノイド化合物及びフィチン酸は、前記したことからも判るように、それぞれを単独で用いることができるが、これらを組合わせて用いることもできる。
本発明においてこれら抗酸化安定剤は、100%純品(化合物そのもの)のほかに、これら化合物を含有する植物の抽出物を用いてもよいものである。
【0040】
本発明において、アスタキサンチンなどのカロチノイドは、水畜産飼料に対して所望に配合されるものであり、例えばカロチノイドの飼料への混合比(重量%)は0.0001〜0.01%、好ましくは0.001〜0.05%である。
また、本発明において、アスタキサンチンなどのカロチノイドを安定化させるための抗酸化安定剤(フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸)の飼料への混合比率も所望に設定すればよく、例えばその飼料中への混合比は0.0001%〜10%、好ましくは0.01〜0.1%である。
【0041】
本発明のカロチノイド含有水畜産飼料は、カロチノイドの抗酸化安定剤として特定の安定剤を含有させているため、飼料を押出し成形機によりエクストルーダーペレット(EP)を製造するとき、飼料が加熱されても安定剤によりアスタキサンチンなどのカロチノイドの分解が効果的に防止ないし抑制される。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の技術的構成について実施例により更に詳しく説明する。
なお、本発明は実施例のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【0043】
【実施例1】
0.1Mリノール酸含有エタノール溶液1mlに0.003%アスタキサンチン含有エタノール溶液0.5mlを加えた。この溶液に0.1%フェルラ酸含有エタノール溶液を加え、全量4mlに対し最終フェルラ酸濃度0.35mg/ml〜0.000035mg/mlとなるよう調整した。またフェルラ酸の代わりにエタノール溶液を加えたものを対照区とした。
この溶液に0.1M AMVNのヘキサン溶液0.5mlを加え37℃で浸盪しながら脂質過酸化反応を行った。経時的に470nmの吸光度を測定しアスタキサンチンの減少率をモニターした。
結果を下記の表1に示す。表1から、フェルラ酸は濃度依存的にアスタキサンチンの脂質過酸化反応による分解を抑制したことが判る。
【0044】
【表1】
Figure 2006050901
【0045】
【実施例2】
0.1Mリノール酸含有エタノール溶液1mlに0.003%アスタキサンチン含有エタノール溶液0.5mlを加えた。この溶液に0.1%γ−オリザノール含有エタノール溶液を加え、全量4mlに対し最終γ−オリザノール濃度0.35mg/ml〜0.000035mg/mlとなるよう調整した。またγ−オリザノールの代わりにエタノール溶液を加えたものを対照区とした。
この溶液に0.1M AMVNのヘキサン溶液0.5mlを加え37℃で浸盪しながら脂質過酸化反応を行った。経時的に470nmの吸光度を測定しアスタキサンチンの減少率をモニターした。
結果を下記の表2に示す。表2から、γ−オリザノールは濃度依存的に脂質過酸化反応によるアスタキサンチンの分解を抑制したことが判る。
【0046】
【表2】
Figure 2006050901
【0047】
【実施例3】
0.1Mリノール酸含有エタノール溶液1mlに0.003%アスタキサンチン含有エタノール溶液0.5mlを加えた。この溶液に0.1%フェルラ酸、γ−オリザノール、シナピン酸及びコーヒー酸含有エタノール溶液をそれぞれ加え、全量4mlに対し最終濃度0.35mg/ml〜0.000035mg/mlとなるよう調整した。
この溶液に0.1M AMVNのヘキサン溶液0.5mlを加え37℃で浸盪しながら脂質過酸化反応を行った。経時的に470nmの吸光度を測定しアスタキサンチンの減少率をモニターした。
結果を下記の表3〜表4に示す。表3〜表4から、アスタキサンチンの退色抑制効果はフェルラ酸>γ−オリザノール>シナピン酸>コーヒー酸の順であることが判る。
【0048】
【表3】
Figure 2006050901
【0049】
【表4】
Figure 2006050901
【0050】
【実施例4】
0.1%卵黄レシチン懸濁液に0.003%アスタキサンチン含有エタノール溶液0.5mlを加えた。この溶液2.5mlへ15mM硫酸鉄水溶液0.5mlおよび50mM過酸化水素水50μlを加えた。これに0.25%フィチン酸溶液を加え、全量4mlに対し最終濃度0.0625〜0.5mlとなるよう調整し、30分室温で静置した。
その後、アセトンおよびジエチルエーテルにてアスタキサンチンを反応溶液から抽出して470nmの吸収を測定し、アスタキサンチン残存率を算出した。
結果を下記の表5に示す。表5からフィチン酸は濃度依存的にアスタキサンチンの脂質過酸化反応による分解を抑制したことが判る。
【0051】
【表5】
Figure 2006050901
【0052】
【実施例5】
0.1Mリノール酸含有エタノール溶液1mlに0.003%アスタキサンチン含有エタノール溶液0.5mlを加えた。この溶液にフェルラ酸、γ−オリザノール及びフィチン酸をそれぞれ0.1%含有するエタノール溶液を加え、全量4mlに対しそれぞれの最終抗酸化剤濃度が1.05mg/ml〜0.0000105mg/mlとなるよう調整した。また抗酸化剤の代わりにエタノール溶液を加えたものを対照区とした。
この溶液に0.1M AMVNのヘキサン溶液0.5mlを加え37℃で浸盪しながら脂質過酸化反応を行った。経時的に470nmの吸光度を測定しアスタキサンチンの減少率をモニターした。
結果を下記の表6に示す。表6から、フェルラ酸、γ−オリザノール及びフィチン酸混合物は濃度依存的にアスタキサンチンの脂質過酸化反応による分解を抑制したことが判る。
【0053】
【表6】
Figure 2006050901
【0054】
【実施例6】
市販配合飼料として、キリンフィード株式会社製のマダイ育成用配合飼料(マダイEP4.5)を使用し、これにアスタキサンチン(ホフマンラロッシュ社製、商品名カロフィールピンク)を60ppm配合し、押出し成形機によってエクストルーダーペレット(EP)を作成した。
飼料1は対照区としてフェルラ酸又はγ−オリザノールは添加していないものである。飼料2−8は下記の表7に示すように所定量のフェルラ酸又はγ−オリザノールを添加したものである。
EP作成前後の各飼料に含まれるアスタキサンチン含量を吸光度法で求め、EP作成後のアスタキサンチン残存率を求めた。結果を下記の表7に示す。
表7からフェルラ酸またはγ−オリザノールを添加した区は無添加区(残存率73.6%)に比べていずれも有意にアスタキサンチンの残存率が上昇した。特にフェルラ酸を0.1%添加した区はアスタキサンチン残存率が90.4%であり、無添加区にくらべ1.2倍もアスタキサンチンが残存していることが判る。
【0055】
【表7】
Figure 2006050901
【0056】
【発明の効果】
色揚げなどの目的のためにアスタキサンチンなどのカロチノイドを含有する水畜産飼料は酸化や熱に対する安定性が悪く、例えばアスタキサンチンは酸化されて退色し、その添加効果を消失してしまう。
本発明は、カロチノイドの酸化や熱に対する安定性を改善するために、植物由来で生体安全性に優れるフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸、γ−オリザノールなどのフェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸を安定剤として使用するものである。
本発明により、酸化や熱に対する安定性が高度に改善され、かつ生体安全性に優れたカロチノイド含有水畜産飼料が提供される。

Claims (3)

  1. カロチノイド(carotenoid)含有水畜産飼料が、前記カロチノイドの抗酸化安定剤として、フェノールプロパノイド化合物及びフィチン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、を含有することを特徴とするカロチノイド含有水畜産飼料。
  2. カロチノイド(carotenoid)が、アスタキサンチン(astaxanthin)である請求項1に記載のカロチノイド含有水畜産飼料。
  3. フェノールプロパノイド化合物が、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸及びγ−オリザノールからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のカロテノイド含有水畜産飼料。
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