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JP2005500268A - ペプチドカップリングのためのウロニウム及びインモニウム - Google Patents

ペプチドカップリングのためのウロニウム及びインモニウム Download PDF

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JP2005500268A
JP2005500268A JP2002591495A JP2002591495A JP2005500268A JP 2005500268 A JP2005500268 A JP 2005500268A JP 2002591495 A JP2002591495 A JP 2002591495A JP 2002591495 A JP2002591495 A JP 2002591495A JP 2005500268 A JP2005500268 A JP 2005500268A
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ring
nitrogen
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lower alkyl
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Application number
JP2002591495A
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Inventor
ルイス エイ. カーピノ、
英子 今住
アイマン エル−ファーム、
Original Assignee
ルイス エイ. カーピノ、
英子 今住
アイマン エル−ファーム、
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Publication date
Application filed by ルイス エイ. カーピノ、, 英子 今住, アイマン エル−ファーム、 filed Critical ルイス エイ. カーピノ、
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Abstract

本発明は、式(I)の塩、またはそのN−オキシド、ならびにアミドの調製時におけるその使用に向けられている。

Description

【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ウロニウム(uronium)及びインモニウム(immonium)塩、ならびに特にペプチド合成時のアミド形成におけるアシル化段階を実施する際のそれらの使用に関する。
【0002】
2.先行技術の記述
ポリペプチドは薬剤として有用である。近年、ペプチドが、ガン、糖尿病、植物毒素などの様々な疾病の治療に有用であることが分かってきている。さらに、ペプチドは、成長促進剤、抑制剤、抗体、殺虫剤、避妊薬、降圧剤、睡眠誘導剤、抗うつ剤、鎮痛薬等としての特異的活性も示している。これらを列挙すると長く多岐に渡るものとなる。
【0003】
ポリペプチドが医学的に重要になればなるほど、それらの合成方法を改良したいという動機が高まってくる。現在のところ、ペプチドの合成は、伝統的または種々の反復方法によって溶液中で行われている。あるいは、ペプチドは固体支持体上で調製される場合もある(メリフィールド法)。これらは、2つ以上のアミノ酸のカップリングによってペプチドを合成する際、アミノ酸を小さいペプチドにカップリングしてより大きなペプチドを合成する際、あるいは小さいペプチドのカップリングの際には人気のある方法である。溶液法は、容易に監視できて、どの段階であっても必要に応じて中間体の精製が可能であるという利点を有している。しかしながら、各段階が手動で行われるために合成が比較的遅いペースで行われるという大きな欠点を有している。
【0004】
メリフィールド法の主たる利点は、容易に自動化することができるので、無人のコンピュータ制御された機械による合成が可能になることである。残念ながら、この方法は合成が進行する支持体が不溶性であることによる特有の欠陥に苛まれる。各アシル化工程が約100%の効率で起こらない限り、混合物がポリマー上に必然的に堆積することになる。鎖が長くなればなるほど、好ましくない副反応による汚染が大きくなる。このような反応によって生成された副産物が残ってしまい、サイクル終了時に所望の生成物を高分子マトリックスから除去する際に、該生成物を汚染することになる。これらの現行の技術は、30〜40残基を超えるペプチドを調製する際には有用でない。というのも、合成するペプチドが大きくなると、所望の生成物から副産物を分離することがより難しくなるからである。
【0005】
したがって、非常に長いセグメント(アミノ酸60個以上)に対して、現行の技術は満足のいくものではない。所望のペプチドの単離が困難または不可能であるような驚くほど複雑な混合物が得られることもしばしばである。
【0006】
上記列挙した問題は、基礎となるアミノ酸の適切な誘導体、及び/またはカップリング反応に対する適切な条件が見つかれば、解決することができるであろう。副反応を最小限に抑えるために、t−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)またはN−α−(9−フルオレニルメチル)オキシカルボニル(Fmoc)などの保護基が用いられてきた。しかしながら、これに加えて、カップリング反応においてペプチドカップリング添加剤などを用いるような、カップリング反応の他の態様も考慮すべきである。
【0007】
添加剤は、一般に副反応を阻止し、ラセミ化を低減する。これまで、ペプチドカップリング時に最も一般的に用いられているペプチドカップリング添加剤は、溶液及び固相合成のいずれに対しても1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)である。この試薬は、カルボジイミドまたは他のカップリング剤と組み合わせて用いられるか、あるいは独立した試薬、例えば1−ベンゾトリアゾリオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)または類似ウロニウム塩として構築されていた。HOBtは、段階的縮合及びセグメント縮合のいずれにも適用することができる。しかしながら、おそらくはステアリン酸の影響か、アミノ成分の低い塩基性度によって、HOBtが有効でない多くのケースに直面している。ラセミ化の問題が特に深刻であることから、グリシンまたはプロリン以外のアミノ酸単位におけるセグメントカップリングが特に問題である。関連するN−ヒドロキシベンゾトリアジノン(HOOBt)は、ラセミ化に対するより良好な保護を与えるかもしれないが、この物質は開環を伴う競争的副反応を起こすために滅多に使用されることはない。
【0008】
ペプチドカップリングを容易にするための他の試薬についての記載もある。例えば、Tetrahedron Letters,1994,35,2279〜2282頁、Carpinoらは、HAPyUやAOPで表される1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールとその対応するウロニウム塩が、ペプチドのカップリングを促進し、モデル固相ペプチドセグメントカップリングプロセスにおけるラセミ化を回避するのに有効であったことを開示している。さらに、Carpinoらは、J.Org.Chem.,1994,59,695〜698頁において、例えば、HBTU,HATU,HBPyU,HAPyU,HBMDU及びHAMDUで表されるアザベンゾトリアゾリルウロニウム塩が、ペプチド合成において有用であることを開示している。Ehrlichらなどの他の出版物は、HAPyUやTAPipUなどで表されるウロニウム塩が、最小限のラセミ化でペプチドの環化を促進するのに有用であったことを開示している。
【0009】
なかでもCarpinoに付与された米国特許第5,644,029号は、ペプチドのカップリングの促進に下記式で表される化合物と、そのN−オキシド及びその塩を使用することを開示している。
【化1】
Figure 2005500268
【0010】
(式中、
及びRは、それらが結合している炭素原子と協働して、ヘテロアリール環を形成し、前記ヘテロアリール環は、3から合計13個までの環炭素原子を含む、酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香環であり、前記ヘテロアリールは、低級アルキルまたは電子供与基で置換されていても、置換されていなくてもよく;
YはO、NR、CRであり;
は独立して水素または低級アルキルであり;
XはCRまたはNRであり;
及びRは独立して水素または低級アルキルであるか、あるいはR及びRは協働してオキソ基を形成するか、あるいはn=0のときには、RとRとが協働して、Yの窒素または炭素原子とXの窒素または炭素原子との間の結合を形成し;
Qは(CR)または(NR)であり;
nが1のときは、R及びRとが協働して、Qの環炭素または窒素原子と、Rの環炭素または窒素原子との間の結合を形成してもよく、
nは0,1または2であり;
は水素、低級アルキルカルボニル、アリールカルボニル、低級アリールアルキルカルボニル、
【化2】
Figure 2005500268
【0011】
正に荷電した電子吸引基、SO14、または
【化3】
Figure 2005500268
【0012】
であり、
14は、低級アルキル、アリールまたは低級アリールアルキルであり;qは0〜3であり、
及びRは独立して水素または低級アルキルであるか、あるいはR及びRはそれらが結合している炭素と協働して、アリール環を形成し、AAはアミノ酸であり、BLKはアミノ保護基であり、mは0または1である。
【0013】
上記化合物は、下記式:
【化4】
Figure 2005500268
【0014】
で表される化合物を、塩基の共存下、置換反応条件下でRLと反応させることによって調製されると教示されている。なお式中、R,R,Y,Q,n,X及びRは、上記定義のとおりであり、Lはハロゲン化物などの脱離基である。
【0015】
上述の論文が出版された時点ならびに上述の特許が出願された時点において、それらの中に記載されているすべての化合物が上記の式(式中、Rは酸素原子に結合されている(O−異性体))を有すると確信されていた。この確信は、酸素原子がカチオン性ホスホニウム基に結合されている、対応するホスホニウム誘導体、例えばベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファイト(BOP)や、
【化5】
Figure 2005500268
【0016】
ベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシ−トリス−(ピロリジノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
【化6】
Figure 2005500268
【0017】
などの構造に基づいたものであった。
【0018】
これらの構造に基づいて、ヒドロキシベンゾトリアゾールのウロニウム塩誘導体が最初に記載されたときには、科学界では類推によって、下記の構造を有すると想定されていた。
【化7】
Figure 2005500268
【0019】
(式中、正に荷電したウロニウムイオンは酸素原子に結合していた。)
さらに、HATUなどの他のカップリング試薬が記載された際には、ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体に割り当てられた構造への類推によって、HATUやその誘導体も下記の構造を有すると想定されていた。
【化8】
Figure 2005500268
【0020】
実際に、同様の想定に基づいて、例えば上述の出版物中で上記したウロニウム塩は一般に、正に荷電したカチオンに酸素原子が結合した類似の構造を有すると信じられていた。このような構造は、O−異性体であると信じられていたので、これらの新しいO−異性体のX線結晶構造解析は実施されていなかった。
【0021】
しかしながら、HBTU及びHATUの構造について、最終的にX線結晶構造解析が行われると、驚くべきことにウロニウム塩誘導体に関しては、上記の想定が間違っていたことが判明した。より詳細には、HATU及びHBTUに割り当てられた構造は、上で示した構造ではなかったことが後にX線結晶構造解析によって判明したのである。より詳細には、正に荷電した部分は酸素原子に結合しているのではなく、下記式で表される構造を有するトリアゾールの窒素原子上で置換されているのである。
【化9】
Figure 2005500268
【0022】
(式中、X=NまたはCH)
上記トリアゾール誘導体において、正に荷電した基が窒素原子上にあったというこの現象は、上記構造中のRが、正に荷電した窒素原子を含んだ電子吸引基であった場合にのみ起こるようであった。
【0023】
しかしながら、状況はさらに複雑である。本発明者らは、1−ヒドロキシ−4−メチル−7−アザベンゾトリアゾールを弱酸の存在下、2−クロロ−1,1,3,3−ビステトラメチレンウロニウムヘキサフルオロホスフェートと反応させると、興味深い現象が起こることに気づいた。
【化10】
Figure 2005500268
【0024】
のような生成物が得られることもあれば、
【化11】
Figure 2005500268
【0025】
のような生成物がえられることもあり、あるいは、上記2つの混合物が得られることもあった。本発明者らは同じ試薬を用いて反応を行ったが、得られた生成物は常に同じではなかった。最近まで、本発明者らは4−メチル誘導体でのこれらの異なる結果を説明することができず、4−メチル誘導体のO−異性体またはN−異性体をどのように作るかを何らかの一貫性をもって理解または認識していなかった。
【0026】
したがって、トリアゾール誘導体またはトリアゾール様誘導体に関しては、Rが、イミノカチオンまたはウロニウム基などの正に荷電した窒素原子を含む正に荷電した電子吸引基である場合には、上述の方法に従って調製される生成物はO−異性体(すなわち、R基が酸素原子に結合している生成物)ではなく、むしろN−異性体(すなわち、R基が窒素原子に結合している生成物)であると一般的に結論づけた。したがって、今日まで、Rがウロニウムカチオンまたはインモニウムカチオンである場合に、N−異性体は調製されたが、対応するO−異性体は調製されていなかった。
【0027】
この意外な新事実に基づいて、科学界では、HOAT及びHOBTインモニウム及びウロニウム型カップリング剤に対する捕らえどころのないO−異性体を作成するために一致団結した努力が行われた。例えば、LiとXuは、インサイチューで調製されペプチドカップリングにおいて有用であった様々なHOBT及びHOATインモニウム型カップリング試薬のO−異性体を作成する手段を発見したと主張している。例えば、SbClの存在下でのヒドロキシトリアゾールの反応によって、下記式で示されるようなHOBtまたはHOATに基づくインモニウム型試薬のO−異性体が生産されるであろうということは、LiとXuによって、Tetrahedron 56,4437〜4445頁(2000)及びTetrahedron Letters,41,721〜724頁(2000)において主張されているが、確認はされていない。
【化12】
Figure 2005500268
【0028】
しかしながら、X線回折によって、これらは以下に示すようなO−異性体誘導体を形成しないことが確かめられた。
【化13】
Figure 2005500268
【0029】
さらに、彼らが、上に示したように当初はO−異性体であると信じていた化合物のもう一方、すなわちBDMPのX線解析を行った際に、これらもまた上に示したようなO−異性体を形成するのではなく、むしろ対応するN−異性体を形成することを見いだした。LiとXu、J.Chem.Soc.Perkin Trans.,2,113〜120頁(2001)を参照のこと。彼らが提示していた他のO−異性体生成物の構造についても、今のところまだ確認されていない。
【0030】
したがって、現在のところ、HOAtまたはHOBt化合物のウロニウム塩及びインモニウム塩のO−異性体を実際に調製した者はまだない。
【0031】
しかしながら、本発明者らは、O−異性体を合成する手段を見いだし、O−異性体がペプチドカップリングにも有用であることを示した。
【0032】
発明の概要
したがって、本発明は下記式の化合物を対象とする。
【化14】
Figure 2005500268
【0033】
(式中、
は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり;
【化15】
Figure 2005500268
【0034】
(式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子に結合した炭素原子と協働して、3または4個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、またはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、5個までの環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14及びR15が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14がそれが結合している窒素原子と協働して、またR16がそれに結合している炭素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成している)
EはNまたはCRであり;
Rは水素または低級アルキルであり;
はアニオンであり;
及びRは独立して、水素、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基であるか、あるいはR及びRはそれらが結合している炭素原子と協働して、シクロアルキル基、複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を形成し、該シクロアルキル、複素環、アリール及びシクロアルキル基は、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基によって置換されていないか、あるいは置換されている)
ある好ましい実施形態において、式Iの塩のカチオン部分は、下記の式を有するか、そのN−オキシドまたはその塩である。
【化16】
Figure 2005500268
【0035】
(式中、
Aは6〜14個の環炭素原子と合計が20個までの炭素原子を含むアリール基、またはヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環は、5個から合計14個までの環原子と3個から合計13個までの環炭素原子と合計20個までの炭素原子を有する酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香族であり、前記ヘテロアリール及びアリール基は、電子供与基または電子吸引基または低級アルキルによって置換されていなくても置換されていてもよく;
は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり;
【化17】
Figure 2005500268
【0036】
(式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子に結合した炭素原子と協働して、3または4個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、またはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、5個までの環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14及びR15が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14がそれが結合している窒素原子と協働して、またR16がそれに結合している炭素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成している)
EはNまたはCRであり;
Rは水素または低級アルキルである)
本発明の他の実施形態は、式IまたはIIの単離生成物を対象とする。
【0037】
式IまたはIIの化合物の好ましい実施形態は、実質的に純粋なものである。
【0038】
本発明は、ペプチドを含むアミドの調製方法であって、アミド形成に有効な量の式IまたはIIの化合物の存在下、随意で脱水剤の存在下にて、アミンをカルボン酸と反応させることを含む方法も対象とする。
【0039】
本発明の詳細な説明
上述のように、本発明のある実施形態は、式I及びIIの化合物と、ペプチドなどのアミドの調製時におけるそれらの使用に関する。ペプチドの形成に関して、式I及びIIの化合物は、それぞれ遊離のアミノ基を有する第1のアミノ酸または第1のペプチドが、それぞれ遊離のカルボキシ基を有する第2のアミノ酸または第2のペプチドと、アミド形成条件下においてカップリングされてペプチドを形成するような、ペプチド形成時に用いることができる。反応体の一方がペプチドである場合、得られる生成物はより大きなペプチドである。
【0040】
本明細書中で用いる「シクロアルキル」基という用語は、8〜13個の環炭素原子を含み、炭素原子数の合計が20までの環状部分のことをいう。シクロアルキル基は、完全に飽和されていてもよいし、あるいは炭素−炭素二重結合、より好ましくは約3以下の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいし、それぞれが0〜3の炭素−炭素二重結合を含み、三重結合を含まないことがより好ましい。シクロアルキル基は、1、2または3個の環を含んでいてもよい。シクロアルキル基は、1つ以上の電子供与基または電子吸引基で置換されていなくても、置換されていてもよい。
【0041】
本明細書中で用いる「アリール」という用語は、4n+2個の環炭素原子を含む(nは好ましくは1、2または3)芳香族基のことをいう。アリール基は置換、非置換のいずれであってもよく、存在する炭素原子の合計は20炭素原子まで、より好ましくは15炭素原子までである。アリール基は非置換であってもよいし、あるいは電子供与基、電子吸引基または低級アルキルによって置換されていてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル、2−ナフチル、β−ナフチルなどが挙げられる。最も好ましいアリール基はフェニルである。
【0042】
本明細書で用いる「アリールアルキル」という用語は、アルキレン架橋を介して主鎖に結合されたアリール基のことをいい、前記アルキレン架橋は1〜6個の炭素原子を含んでいる。このような基としては、例えば、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。さらに、アリールアルキルは、電子供与基または電子吸引基によって、特に本明細書中で定義するアリール部分上において置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
【0043】
本明細書で用いて「複素環式」という用語は、少なくとも1つの環炭素原子がS,NまたはO原子に置換されている、本明細書中に定義したシクロアルキル基のことをいう。好ましくは、複素環基の環原子は5〜14個であり、環炭素原子の合計は13個までであり、炭素原子の合計は18個までである。好ましくは、複素環基は、単環式、二環式または三環式である。複素環基は、4個以下の環ヘテロ原子、より好ましくは2個以下の環ヘテロ原子、最も好ましくは1個の環ヘテロ原子を含むことが好ましい。一例として、ピペリジン、テトラヒドロフラン、モルフォリン、テトラヒドロピロールなどが挙げられる。
【0044】
本明細書で用いる「ヘテロアリール」という用語は、窒素、硫黄及び酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子環原子を含むヘテロ芳香族のことをいう。好ましくは、ヘテロアリール基は5〜14個の環原子と、合計13個の環炭素原子と、合計18個までの炭素原子を含む。ヘテロアリールという用語には、ベンゾ複素環式も含まれる。好ましくは、ヘテロアリール環は、1,2,3または4個の環ヘテロ原子を含む。より好ましくは、ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式のいずれであってもよい。ヘテロアリール基は好ましくは2個以下の環ヘテロ原子を含み、最も好ましくは1個の環ヘテロ原子を含む。最も好ましい環ヘテロ原子は酸素及び窒素であり、なかでも窒素が最も好ましい。ヘテロアリールの例としては、チエニル、ベンゾチエニル、1−ナフトチエニル、チアンスレニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、p−テリジニル、カルボリニル、イソチアゾリル、ベンゾフリルなどが挙げられる。
【0045】
窒素が環原子である場合、N−オキシドも形成可能である。本発明は、窒素含有ヘテロアリールのN−オキシドも見込んでいる。
【0046】
本明細書で用いる「低級アルキル」は、単独または他の基との組み合わせて用いられる場合、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。低級アルキルは、直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、アミル、ヘキシルなどの基が含まれる。好ましいアルキル基は1〜3個の炭素原子を含み、メチルが最も好ましい。
【0047】
本明細書で用いる「電子供与基」は、分子内の同じ位置を占めた場合に水素よりも多くの電子を放出または供与するであろう基のことをいう。J.March,Advanced Organic Chemistry,第3版,John Wiley&Sons,238頁(1985)を参照のこと。これらのタイプの基は、当該技術分野において周知である。例としては、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アミノ、アリール、低級アルコキシ、低級アラルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、低級アルキルチオなどが挙げられる。好ましい電子供与基は、アミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ及びジ低級アルキルアミノである。
【0048】
本明細書で定義する「電子吸引基」という用語は、該基が分子内の同じ位置を占めた場合に、水素よりも該基自身に電子をよく引きつけるであろう基のことをいう。J.March,Advanced Organic Chemistry,第3版,John Wiley&Sons,238頁(1985)を参照のこと。これらの基には、ニトロ、カルボキシ、低級カルボアルコキシ、カルボキシアミド、モノハロアルキルアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル(例えばCF)、ハロ、ホルミル、低級アルカノイル、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルフォニルなどが含まれる。
【0049】
上記のように、本発明は下記の式Iの塩を対象とする。
【化18】
Figure 2005500268
【0050】
(式中、R,R,E,S及びORは上記定義の通りである)
本発明の1つの実施形態において、R及びRは独立して水素、または上記定義の環上の上記で特定した置換基である。
【0051】
他の実施形態において、R及びRは、それらが結合している炭素原子と協働して、本明細書中に定義されるようなシクロアルキル基、アリール基、複素環基、またはヘテロアリール基を形成する。これらの環状基は、1つ以上の電子吸引基または1つ以上の電子供与基で置換されていなくても、置換されていてもよい。
【0052】
本発明の好ましい化合物は、式IIで表されるものである。
【0053】
本明細書中に定義するように、Aはアリールまたはヘテロアリール環である。Aは単環式、二環式または三環式のいずれであってもよい。Aはジアゾール(EがCRの場合)またはトリアゾール(EがNの場合)に縮合されている。Aは、本明細書で定義するような、低級アルキル、または1つ以上の電子供与基または電子吸引基で置換されていなくてもよいし、置換されていてもよい。好ましいA基は、ピリジルとジアゾールまたはトリアゾール環とによって共有される炭素原子に窒素原子が隣接している、フェニル及びピリジル、特に1−または4−ピリジルである。
【0054】
Eの好ましい値は、CH及びNであり、Nが最も好ましい。
【0055】
は本明細書中では、正に荷電したウロニウムカチオンまたはイミノカチオンとして定義される。Rは、非環式であってもよいし、環式であってもよい。Rが非環式であれば、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は独立して水素またはアルキルである。アルキルで有る場合には、Rは直鎖である。さらに、Rがアルキルである場合には、該アルキルは1〜5個の炭素原子を含む、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルまたはn−ペンチルであることが好ましい。Rがアルキルで有る場合には、該アルキルは1〜3個の炭素原子を含むことが特により好ましい。また、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16中のアルキル基が置換されている場合には、電子供与置換基、特に低級アルコキシで置換されていることが好ましい。例えば、アルキルが置換されている場合には、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16の好ましい値は、CHCH−O−CHCHである。R10,R11,R12及びR13が同一で、R14,R15及びR16が同一であることがさらに好ましい。
【0056】
しかしながら、Rは環状基であってもよい。例えば、好ましい環状ウロニウム及びイミノ基は下記の式を有する。
【化19】
Figure 2005500268
【0057】
(式中、nは2または3であり、mは3または4である)
あるいは、ウロニウム置換基に関して、R10及びR11は、それらが結合している窒素原子と協働して、あるいはR12及びR13は、それらが結合している窒素原子と協働して、5または6員環を形成する。このような場合、それらは下記の式の環を形成する。
【化20】
Figure 2005500268
【0058】
(式中、UはCH,OまたはN−Alkであり、Alkは低級アルキル、特にメチルである)
このような場合Rは、
【化21】
Figure 2005500268
【0059】
となる。
【0060】
(式中、R10,R11,R12及びR13、ならびにUは上記定義したとおりである)
ウロニウムカチオンに関して、R基は、例えば下記の式で示されるような同一または異なっていてもよい2つの環を含んでいてもよい。
【化22】
Figure 2005500268
【0061】
しかしながら、R10、R11及びそれらが結合している窒素原子と、R12、R13及びそれらが結合している窒素原子との両方が環を形成する場合、これらの2つの基によって形成される環は同じであることが好ましい。
【0062】
イミノカチオンに関して、R置換基は、上述のように置換されていてもよい。あるいは、Rは、下記の式であってもよい。
【化23】
Figure 2005500268
【0063】
(式中、nは2または3であり、nは1または2である)
例えば、R14、R15及びそれらが結合している窒素原子は、例えば次のような環を形成してもよい。
【化24】
Figure 2005500268
【0064】
(式中、Uは上記定義したとおりである)
したがって、例えば、Rは、下記の式であってもよい。
【化25】
Figure 2005500268
【0065】
(式中、U及びR16は上記定義したとおりである)。
【0066】
あるいは、R16は炭素原子と協働して、及びR14は自らが結合している窒素原子と協働して、下記式で表される環を形成してもよい。
【化26】
Figure 2005500268
【0067】
(式中、R15及びUは上記定義のとおりである)
は下記の式であることが好ましい。
【化27】
Figure 2005500268
【0068】
(式中、R10,R11,R12及びR13は上記定義のとおりであり、R14,R15及びR16は独立して水素または、上記定義したような非置換または置換のいずれであってもよい低級アルキルである。Rがウロニウム原子、すなわちRが下記の式であることがさらに好ましい。
【化28】
Figure 2005500268
【0069】
(式中、R10,R11,R12及びR13は上記定義のとおりである)
本発明の化合物は好ましくは下記の式を有する。
【化29】
Figure 2005500268
【0070】
(式中、R及びRは上記定義おとおりである)
本明細書中に定義したように、Aはジアゾールまたはトリアゾール環に縮合されている。Aは1つの環で構成されてもよいし、あるいは2つ以上の縮合環からなるものであってもよい。Aは、低級アルキル、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されていてもよい、シクロアルキル、複素環式、アリールまたはヘテロアリール環のいずれかであってもよい。Aはアリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。A環がジアゾールまたはトリアゾールに縮合した6員環式の環を含む場合には、Aは4位においてアルキルまたはハロで置換されていないことが好ましい。この場合、4位はどの置換基でも置換されていないことがさらにより好ましい。しかしながら、A環がジアゾールまたはトリアゾールに縮合した5員環式の環を含む場合には、4位は置換されていなくても置換されていてもよいが、4位はアルキルまたはハロによって置換されていないことが好ましく、4位は非置換であることがさらにより好ましい。A環は置換されていないことが最も好ましい。本明細書で用いる「4位で置換された」という用語は、4位の置換基を意味するが、ジアゾールまたはトリアゾールに縮合した第1の環式環及び4,5位において前記第1の環式環に縮合した第2の環式環を有するA基の一部である環式環のことは意味しない。
【0071】
好ましい実施形態において、式Iの塩のカチオン部分は下記の式を有する。
【化30】
Figure 2005500268
【0072】
(式中、GはCHまたはNであり、A,E及びRは上記定義のとおりである)
1つの実施形態において、Gは環、特に6員環の4位に位置しており、好ましくは置換されていない。
【0073】
Aはフェニル環または5または6員のヘテロアリール基であることが好ましい。Aが5員のヘテロアリールである場合には、GはCHであることが好ましく、Aが6員のヘテロアリールである場合には、GはNまたはCHであることが好ましい。GはCHであることが好ましい。Aはフェニルまたはピリジル、例えば、それぞれ下記の式で表される1,2,3または4−ピリジルであることが好ましい。
【化31】
Figure 2005500268
【0074】
好ましいピリジルは、
【化32】
Figure 2005500268
【0075】
である。
【0076】
ピリジルは4位において置換されていないことが好ましく、例えば、ピリジルはアルキルまたはハロ置換基を有していない。より好ましい実施形態において、ピリジルはアルキルによって置換されておらず、最も好ましい実施形態において、ピリジルは置換されていない。
【0077】
式IIの好ましい塩は下記の式を有する。
【化33】
Figure 2005500268
【0078】
(式中、E及びRは上記定義のとおりであり、
GはNまたはCRであり、
JはNまたはCRであり、
LはNまたはCRであり、
MはNまたはCRであり、
QはNまたはCRであり、
TはNまたはCRであり、
VはO,SまたはNであり、
,R,R,R及びRは、独立して水素または低級アルキルまたは電子吸引基または電子供与基であり、
は水素である。)
,R,R,R及びRは、独立して水素または低級アルキルであることが好ましい。しかしながら、R,R,R及びRは上に示した通りであり、Rは水素であることがさらにより好ましい。R,R,R,R,R及びRは水素であることが最も好ましい。
【0079】
本発明の塩の他の好ましいカチオン形態は下記の式を有する。
【化34】
Figure 2005500268
【0080】
(式中、
G,M,J,L,M,E,V及びRは上記定義したとおりであり、R20は水素または、電子供与基または電子吸引基で置換されていなくても置換されていてもよい低級アルキルであり、oは1、2,3または4であり、Bはアリール、シクロアルキルまたはヘテロアリール環または上記定義したような複素環基である。Bは、それぞれシクロアルキルまたはアリールの1または2または3個の環炭素原子が、N,OまたはSからなる群より選ばれるヘテロ原子に置換されていてもよい、複素環またはヘテロアリールであってもよい。Bはアリールまたはヘテロアリールであることが好ましい。
【0081】
oが0である場合には、アリール、ヘテロアリール複素環またはシクロアルキル環は置換されておらず、oが1である場合には、環は一置換されており、oが2である場合には、環は二置換されているものとする。
【0082】
好ましいカチオンとしては、
【化35】
Figure 2005500268
【0083】
などが挙げられ、
式中、J,G,L,Mのうちの1つはNであり、残りがCHであり、R20、E及びoが上記定義したとおりである。
【0084】
特に好ましい実施形態としては、
【化36】
Figure 2005500268
【0085】
(式中Sはアニオン(対立アニオン))
が挙げられる。
【0086】
勿論、本明細書中に記載した式の様々な組み合わせや並べ替えも本発明によって見込まれる。さらに、マーカッシュの分類では、上述の要素の全部より少ない要素を含み、それらの様々な変形もまた本発明によって見込まれている。
【0087】
上述のように、上記化合物は、ペプチドカップリング、すなわち、第1のアミノ酸または第1のペプチドの遊離アミノ基と、第2のアミノ酸またはペプチドの遊離のカルボキシ基との間の反応を促進するのに有用である。本発明のプロセスは一般的であり、2つのアミノ酸、ジペプチドとアミノ酸、トリペプチドとアミノ酸、テトラペプチドとアミノ酸のカップリング、ならびにペプチドと別のペプチドとのカップリング、ジペプチド、より高次のペプチドのカップリング、ポリペプチドのカップリングなどを行う際に用いることができる。
【0088】
式Iの化合物をアミノ保護アミノ酸または式BLK−AAのペプチドなどのアミノ化合物と反応させると、次式で表される対応するアミノ酸エステルが形成される。
【化37】
Figure 2005500268
【0089】
(式中、AAは本明細書で定義したアミノ酸またはペプチドであり、BLKは本明細書で定義したアミノ保護基であり、R,R及びEは上記定義のとおりである。このアミノ酸エステルは、R2223NH表されるアリールアミノ、アルキルアミノ、低級アリールアミノなどの、遊離アミノを有した化合物と反応することができる。上記式中、R22及びR23は、独立して、水素、低級アルキル、アリールまたは低級アリールアルキルであり、下記式の化合物を形成する。)
【化38】
Figure 2005500268
【0090】
当該技術分野において周知の技術によって保護基を除去することにより、下記式の生成物が得られる。
【0091】
AANR2223
この技術は、第2のアミノ化合物が、AAで表される遊離のアミノ基を有したアミノ酸またはペプチドで有る場合に特に有用である。この場合、ペプチドは、例えば次のようにしてAAとAAとの間で形成される。
【化39】
Figure 2005500268
【0092】
(式中、AA,AA,BLK,E、ならびにR及びRは本明細書に定義したとおりである)
保護基は、本明細書に記載する任意の保護基であってよいが、好ましい保護基はFMOC,BOC、ベンジルオキシカルボニルBSMOC及びBspocである。
【0093】
本明細書中で用いる「アミノ酸」またはAA,AAまたはAAという用語は、塩基性アミノ基(NH)及び酸性カルボキシル基(COOH)の両方を含む有機酸のことをいう。したがって、前記分子は両性であり、水溶液中では両極性イオンとして存在する(“The Condensed Chemical Dictionary”、第10版、Gessner G.Hawley編、Van Nostrand Reinhold Company(在英国ロンドン)、48頁(1981年)を参照のこと)。好ましいアミノ酸はα−アミノ酸である。それらは、特に限定されないが、タンパク質の構成要素として確立されている25個のアミノ酸を含んでいる。それらは、アミノ酸分子中に少なくとも1つのカルボキシル基と、1つの一級または二級アミノ基とを含んでいなければならない。この用語には、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アミノイソブチル酸、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、シスチン、グルタミン酸、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、アルギニン、ヒスチジン、ペニシラミン、ナフチルアミン、α−フェニルグリシンなどのタンパク質構成アミノ酸が含まれる。
【0094】
本明細書で用いる「ペプチド」という用語は、アミド結合によって互いに化学的に結合したアミノ酸単位で構成される化合物の群のことをいう。ペプチドは、わずか2個のアミノ酸残基しか含まないものであってもよいし、アミノ酸残基の重合体を含むものであってもよい(ポリペプチド)。
【0095】
本明細書で用いる「アミノ酸」及び「ペプチド」という用語は、それぞれ保護基を含むアミノ酸及びペプチドも包含する。これらの保護「基」は、望ましくない副反応を防止するために、カップリングに関与若しくは参加しないアミノ酸またはペプチドのアミノ基またはカルボキシル基を保護する。これらの保護基は側鎖の反応性基も保護する。
【0096】
アミノ基に対する数多くの保護試薬が、当該技術分野において知られ、ペプチドの合成に用いられてきた。これらの保護基は、米国特許第3,835,175号,第4,508,657号,第3,839,396号,第4,581,167号,第4,394,519号,第4,460,501及び第4,108,846号のなかで検討されており、これらのすべての内容をそれら全体を本明細書中で列挙した如く、引用により本願に組み込む。他のアミノ保護基は、米国特許出願シリアル番号364,662の中で検討されており、この内容もまた引用により本願に組み込む。他のアミノ保護基は、E.GrossとJ.Meienhoffer編、THE PEPTIDES、第2号(Academic Press,N.Y.,在ニューヨーク)(1980)の中で、G.BaranyとR.B.Merrifieldによる“Solid Phase Peptide Synthesis”という題の論文のなか、ならびに、T.W.Green,John Wiley&Sons,New Yorkによる“PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS”という題の成書のなかに記載されており、これらのすべての内容を引用により本願に組み込む。
【0097】
本明細書中で用いるアミノ酸保護基、(BLK,BLK)という用語は、当該技術分野において周知であり、アミノ酸のアミノ(NH)基を保護するために用いられてきた保護基のことをいう。9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、2−クロロ−1−インダニルメトキシカルボニル(CLIMOC)及びベンズ[f]インデン−3−メチルオキシカルボニル(BIMOC)及びdbd−TMOCなどの保護基が、上記引用した、米国特許第3,835,175号、第4,508,657号、第3,839,396号、第4,581,167号、第4,394,519号、第4,460,501号、及び第4,108,846号に記載されている。さらに、2−(t−ブチルスルフォニル)−2−プロぺニルオキシカルボニル(Bspoc)及びベンゾチオフェンスルフォン−2−メトキシカルボニル(Bsmoc)などの他のアミノ保護基を用いてもよい。その他のN−アミノ保護基としては、例えば、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、t−アミルオキシカルボニル(Aoc)、β−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル(TEOC)、アダマンチルオキシカルボニル(Adoc)、1−メチル−シクロブチルオキシカルボニル(Mcb)、2−(p−ビフェニリル)プロピル−2−オキシカルボニル(Bpoc)、2−(p−フェニルアゾフェニル)プロピル−2−オキシカルボニル(Azoc)、2,2−ジメチル−3,5−ジメチルオキシベンジルオキシカルボニル(Ddz)、2−フェニルプロピル−2−オキシカルボニル(Poc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、p−トルエンスルフォニルアミノカルボニル(Tac)、o−ニトロフェニルスルフェニル(Nps)、ジチアスクシノイル(Dts)、フタロイル、ピペリジノキシカルボニル、ホルミル、トリフルオロアセチルなどの基が挙げられる。
【0098】
これらの保護基は、4つのカテゴリーに分類することができる。
【0099】
1)塩基性の不安定なNα−アミノ酸保護基、例えばFMOCなど。
【0100】
2)酸によって除去される保護基、例えばBoc,TEOC,Aoc,Adoc,Mcb,Bpoc,Azoc,Ddz,Poc,Cbz,2−フランメチルオキシカルボニル(Foc),p−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz),Nps等。
【0101】
3)水素化によって除去される保護基、例えばCbz等。
【0102】
4)求核試薬によって除去される保護基、例えばBspoc,Bsmoc,Nps,及びDts等。
【0103】
5)カルボン酸から誘導され、酸、塩基または求核試薬によって除去される保護基、例えばホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル等。
【0104】
当該技術分野において知られている大多数のカルボキシ保護基を用いることができる。これらの可能な多くの例が、T.W.Green,John Wiley&Sonsによる“PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS”(1981年)のなかに記載されており、これらのすべての内容を引用により本願に組み込む。これらの例には、メチルエステル、t−ブチルエステル、β−トリメチルシリルエチルエステル、ベンジルエステル等が含まれる。
【0105】
さらに、タンパク質合成の過程において、望ましくない副反応を防止するために、アミノ酸の特定の側鎖を保護する必要があるかもしれない。様々な保護基が、米国特許第5,360,928号に記載されており、その内容は引用により本願に組み込む。
【0106】
「アミノ酸またはペプチドのアシル化基」という用語は、アシル化反応を容易にするアミノ酸またはペプチドの遊離のカルボキシル末端上にある基、すなわち、アシル炭素における求核置換基のことをいう。その例としては、遊離の酸、酸ハロゲン化物、エステル、例えば本明細書中で定義する1〜5個の電子吸引基によって置換されていなくても置換されていてもよい低級アルキルエステル、フェノキシエステルなど、あるいは無水物などが挙げられる。好ましいアシル化誘導体は、酸、酸ハロゲン化物、特に酸塩化物またはフッ化物、及びフェノキシエステルである。
【0107】
好ましいアシル化アミノ酸は、下記の式で表されるアミノ酸基である。
【0108】
BLK−AA−M
(式中、BLKはアミノ保護基であり、
AAはアミノ酸であり、
Mはハロまたは下記式であり、
【化40】
Figure 2005500268
【0109】
(式中、R21は独立してハロ、低級アルキル、ニトロ、シアノまたは他の電子吸引基であり、pは0〜5である))。pが0のとき、フェノキシエステルは置換されていない。
【0110】
最も好ましいアミノ酸のアシル化基は、アミノ酸塩化物またはフッ化物である。アミノ酸塩化物の調製及びアシル化誘導体としての使用については、J.Org.Chem.(1986年)、3734〜3736頁のCarpinoらによる論文のなかで検討されており、その内容は引用により本願に組み込む。簡単にいえば、アミノ酸塩化物は、アミノ酸を塩化チオニルと反応させ、生成物をCHCl−ヘキサンなどの再結晶試薬から再結晶させることによって調製することができる。
【0111】
ペプチド合成におけるアミノ酸フッ化物の調製及び使用については、米国特許第5,360,928号のなかで検討されており、その内容は引用により本願に組み込む。そこに記載されているように、アミノ酸フッ化物は、N−保護化アミノ酸をフッ化シアヌルと反応させることによって調製することができる。この反応は、0℃から溶媒の還流温度までの温度で行うことができるが、反応は室温で行うことが好ましい。この反応は、ピリジン/CHClなどの不活性溶媒中で行うこともできる。フッ化シアヌルは、下記の式に従って、フッ化カリウムの存在下、150℃〜250℃の高い温度で対応する塩化物から調製することができる。
【化41】
Figure 2005500268
【0112】
当該技術分野において周知の他のフッ素化剤、例えばフッ化チオニル、2,4,6−トリニトロフルオロベンゼン、N−メチル−2−フルオロピリジニウム塩などを、フッ化シアヌルの代わりに用いて、フッ化物を与えてもよい。
【0113】
本発明に従う典型的なペプチドの調製には以下の工程が含まれる。
【0114】
1)第1のアミノ酸または第1のペプチドが固体支持体に繋留されていない限り、該アミノ酸またはペプチドの遊離のカルボキシ基を保護。
【0115】
2)第2のアミノ酸またはペプチドの遊離のアミノ基を保護。
【0116】
3)必要であれば、側鎖を保護。
【0117】
4)式Iの化合物の存在下において、第1のアミノ酸またはペプチドを第2のアミノ酸またはペプチドとカップリング。
【0118】
5)保護基の除去。
【0119】
工程1〜3の手順はどの順序で実施してもよい。
【0120】
カップリング工程において、式Iの化合物は、有効量存在していなければならない。通常は、第1のアミノ酸またはペプチドは、第2のアミノ酸またはペプチドと略等モル量存在するが、後者に対する前者のモル比が約1:3〜約3:1の範囲で上記の反応は起こりうる。さらに、式Iを有する化合物の使用量は、最低限の量で存在する(すなわち、限界試薬)ペプチドまたはアミノ酸の量に依存するので、アミノ酸またはペプチドに対する式Iの化合物のモル比は、最低モル量で存在するアミノ酸またはペプチドに対して、約1:3〜約3:1の範囲をとる。ただし、略等モル量の式Iの化合物、第1のアミノ酸またはペプチド、及び第2のアミノ酸またはペプチドを用いることが好ましい。
【0121】
カップリング反応は通常は、ジメチルホルムアミド(DMF)などの不活性有機溶媒、またはエチルエーテル、THFまたはジオキサンなどのエーテル中で行われる。実際のところ、固相合成においては、望ましい溶媒和特性を示すDMFが好ましい溶媒である。反応は、通常は約0℃〜約30℃の範囲の穏和な条件下で行われる。ペプチドが形成された後、保護基を当業者周知の技術によって除去する。
【0122】
以下の順序はカップリング反応を説明するものであり、アミノ酸及び/またはペプチドに対する手順として一般的なものであるが、以下の例においてはアミノ酸(AA)を用いている。
【化42】
Figure 2005500268
【0123】
上記の機構において、BLKはアミノ酸保護基であり、AA、AA及びAAは、それぞれ第1、第2及び第3のアミノ酸であり、Pはカルボキシ保護基である。
【0124】
上記の機構によって示されるように、N−αアミノ保護化アミノ酸が、カルボキシ基が保護されている第2のアミノ酸と反応される。
【0125】
第1のアミノ酸と第2のアミノ酸との間でペプチドが形成される。αアミノ保護基を当業者周知の技術によって除去し、式Iの化合物の存在下において、対応するジペプチドを別のN−αアミノ保護化アミノ酸と反応させて対応するトリペプチドを形成することにより、ペプチド鎖を増大させることができる。トリペプチドのN−αアミノ保護基を除去し、所望のペプチドが得られるまで上記のサイクルを繰り返す。
【0126】
本発明は、固相ペプチド合成において容易に用いることができる。固相ペプチド合成は、ペプチドの一方端を固体支持体または固相ペプチド樹脂に固着させた状態で、ペプチド鎖を段階的に組立てていくことに基づいている。当該技術分野においては2つの方法が一般的に知られている。
【0127】
1つめの方法であるメリフィールド法は、アミノ酸またはペプチドの固着のために固体支持体を利用する。この方法は、分子のアシル(酸)末端において固体支持体に固着されたアミノ酸またはペプチド残基に付加されていく構築ブロックとしてN−保護化アミノ酸を利用する。ペプチド結合が形成された後に、保護された基を除去して、このサイクルを繰り返す。所望の配列を有したペプチドが合成されたところで、該ペプチドは支持体から取り外される。
【0128】
2つめの方法である逆メリフィールド法は、連続するカラム中の固体支持体に固着された試薬を利用する。アミノ酸またはペプチド残基を連続するこれらのカラムに通過させて、所望のアミノ酸配列を形成する。
【0129】
これらの方法は当該技術分野において周知であり、米国特許第4,108,846号、第3,839,396号、第3,835,175号、第4,508,657号、第4,623,484号、第4,575,541号、第4,581,167号、第4,394,519号、ならびに、Advances in Enzymology、第32号、221頁(1969年)及び「PEPTIDES」第2巻(Erhard GrossとJohannes Meienhoffer,Academic Press,New York、3〜255頁(1980)のなかで検討されており、これらのすべての内容は本明細書中にくまなく列挙されているかのごとく、引用により本願に組み込まれる。
【0130】
上に示したように、本発明者らはO−異性体を調製する手段を発見した。
【0131】
本発明の化合物は、塩、
【化43】
Figure 2005500268
【0132】
(式中、V はカチオンである)を、置換条件下においてRY(式中、Yはハロゲン化物、ブロシレート、トシレートなどの脱離基であり、Rは、上記定義したような、
【化44】
Figure 2005500268
【0133】
Yは、
【化45】
Figure 2005500268
【0134】
を有する。)と反応させることによって調製される。
【0135】
好ましいYはハロゲン化物である。反応は不活性極性有機溶媒中で行うことが好ましく、反応体は室温にて該溶媒に可溶であり、生成物は不溶であることが好ましい。合成のために有用な溶媒の例としては、クロロホルム、四塩化炭素、エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどが挙げあれる。反応は、溶媒の融点から還流温度までの範囲の有効な温度において行われるが、反応はほぼ室温か、室温よりわずかに高い温度、例えば60℃までの温度で行われることが好ましい。
【0136】
本発明者らは、化合物Iの塩に加えて何らかの有機塩基が存在すると、たとえそれがトリエチルアミンなどの弱塩基であったとしても、O−異性体ではなくN−異性体が生成されることを見いだした。
【0137】
さらに研究を進めたところ、本発明者らは、本発明の化合物の調製プロセスにおいて、形成される生成物、すなわちN異性体またはO異性体は、2つの対立する因子である熱力学的安定性と反応速度論との相互作用に依存していることを見いだした。より詳細には、発明者らはN−異性体はO−異性体よりも安定性が高いが、速度論的にはO−異性体の方が迅速に形成されることを見いだした。したがって、上述の式Iの化合物の形成に対する上記反応が長時間にわたって行われた場合、O型は単離されず、その代わりにN−異性体が単離されることになると考えられる。言い換えれば、時間が経つと、O−異性体生成物はN−異性体型に変換されるのである。この反応の理解に矛盾することなく、発明者らはN異性体がO−異性体に変換されるという例をまだ見つけていない。したがって、O−異性体の形成を最大限にするために、発明者らは、生成物の形成または塩またはRYの消失のいずれかを介して反応をモニターし、O−異性体を迅速に除去した。本明細書中に記載の反応手順に従って行った場合、本発明者らは、塩とRLの化学量論的モル比、好ましくは約1:1モル比を用いると、すべての塩が消費されてしまう直前またはすべての塩が完全に反応する直後に、O−異性体が最大に形成されることを見いだした。しかしながら、試薬の1つ、すなわちRYの塩をモル過剰で用いた場合には、反応における限界試薬の損失をモニターし(すなわち、モル比におけるどの試薬がより少量しか存在しないか)、該限界試薬が完全に消費される前または直後に反応を停止することにより、最大限のO−異性体が生産される。あるいは、(O−異性体である)最初の生成物をモニターするようにしてもよい。本発明者らは、N及びO異性体が、IR及びH及び13C NMR分析に基づいて容易に構造識別が可能であるとともに、生成物のモニター時にはN−異性体とO−異性体を容易に区別できる、異なるスペクトル特性を有していることを注記しておく。その例が下記の表に示されている。例えば、1709〜1711及び1664〜1675cm−1に出現しているテトラメチル尿素から誘導された塩に対する特徴的IR吸収は、それぞれO−誘導体及びN−誘導体に対応する。そのH−NMRスペクトルにおいて、O−誘導体はδ3.24付近に12個のジメチルアミノプロトンに対するシグナルを示したのに対し、N−化合物はそれぞれδ3.0及び3.4付近に6個のプロトンに対する2つのシグナルを示した。これらのプロトンNMRスペクトルの相違は、関係する系における束縛回転の影響に基づいた説明と合致する。
【表1】
Figure 2005500268
【0138】
したがって、形成された生成物のスペクトルを得ることにより、反応をモニターすることができる。さらに、O−生成物がもうそれ以上形成されなくなり、N−異性体生成物がより選択的に形成されるようになり始めたところで、反応を停止する。したがって、O−生成物がもうそれ以上形成されなくなり、濃度が一定に維持されているか、まさに低下し始めたときに、O−異性体が最大限に形成される。反応は、濾過、クロマトグラフィー、結晶化などの当該技術分野において周知の技術によって、生成物を反応体、特に塩から分離することによって停止される。
【0139】
O−異性体を形成する初期時間は、N−異性体を形成する時間よりもはるかに迅速であり、秒単位である。一般に、反応時間は、使用する塩の正体(identity)、RYの正体、形成される生成物、反応体の量、溶媒系などに依存しうる。例えば、反応時間は1分または10分と短いものであってもよい。反応は、約1.5時間以下、好ましくは約45分以下、最も好ましくは約30分以下で10分以下と短い時間で行うことが好ましい。
【0140】
この知見をもとに、ただし束縛されることなく、米国特許第5,644,029号に記載される反応における塩基の存在は、より安定な生成物、すなわちN−異性体を形成するように反応を進めていると確信される。上記特許文献は参照によりその内容を本願に組み入れる。
【0141】
式Iの生成物は反応混合物から単離され、単離された生成物はペプチドカップリングまたはアミドを形成するために用いられることが好ましい。
【0142】
カップリング剤として使用する前に、式Iの化合物は実質的に純粋であることが好ましい。式Iの生成物は、例えば、再結晶、クロマトグラフィー、抽出などの当業者によって周知の技術によって精製することができる。式Iの化合物は、少なくとも80%の純度であり、より好ましくは少なくとも90%の純度であり、最も好ましくは少なくとも99%の純度である。
【0143】
N−オキシドは、ヘテロアリールまたは複素環基中の窒素環ヘテロ原子を有する式Iの化合物から調製することができる。これらのN−オキシドは、例えば過酢酸やn−クロロ安息香酸などの過酸を用いたそれ自体の酸化によって、当該分野で認識されている技術によって調製される。
【0144】
以下の非限定的例は、本発明をさらに説明するものである。
【0145】
実施例1
(O−ヒドロキシベンゾトリアゾールウロニウム)
1.O−HBTU
(a)KOBt
9.5mLの水性メタノール溶液(MeOH8mL、HO1.5mL)中に1.66g(12mmol)のKCOを攪拌した懸濁液に、室温にて2.03g(15mmol)のHOBtを添加した。二酸化炭素ガスを迅速に放出し、混合物を室温で一晩攪拌した。過剰なKCOを濾去し、真空中で溶媒を除去して白色の固体を得た。この白色固体をMeOH中の溶液によって2回再結晶し、EtOで沈殿させたところ、2.31g(89%)のカリウム塩が白色固体として得られた。この粗固体を以下のように使用した。
【0146】
(b)O−HBTU
15mLのアセトニトリル中に0.26g(1.3mmol)のKOBtを懸濁した懸濁液に、室温にて0.42g(1.3mmol)のテトラメチル−クロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(「TCFH」)を添加した。この懸濁液を室温にて1分間攪拌し、不溶の白色固体を迅速に濾去した。ろ液に、100mLの無水エーテルを迅速に加えて、白色の沈殿を得た。白色固体を一気に濾過して、N−(IR(CHCN):1662cm−1)とO−型(IR(CHCN):1709cm−1)のHBTUの混合物を0.40g(79%)得た。この混合物に、50mLのCHClを加え、濾過したところ、0.11g(22%)のN−型が得られた。このN−型の特性は、市販のHBTUの特性と一致していた。ろ液にエーテルを加えたところ、0.25g(51%)のほぼ純粋なO−型(IRでは、N−型に特徴的な1662cm−1における吸収が全く見られず)が得られた。CHCl中の溶液において再結晶を行った後、EtOによって沈殿させたところ、0.14g(28%)のO−HBTUが得られた。融点:118〜120℃、
【化46】
Figure 2005500268
【0147】
生成物はX線結晶学によって確認した。
【0148】
実施例2
O−HATU(O−ヒドロキシアザベンゾトリアゾールウロニウム)
1.KOAt
2.04g(15mmol)のHOAtと1.66g(12mmol)のKCOから、上述のKOBtに対して記載した方法に従ってKOAtを得た。MeOH中の溶液によって2回再結晶し、EtOによって沈殿させたところ、2.31g(89%)のカリウム塩を白色固体として得た。この粗固体を以下のようにしようした。
【0149】
2.O−HATU
0.26g(1.3mmol)のKOAt(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールのカリウム塩)を15mLのアセトニトリルに懸濁した懸濁液に、室温にて0.42g(1.3mmol)のTCFHを加えた。この懸濁液を室温にて2分間攪拌し、不溶の白色固体(0.09g)を濾過した。ろ液に、100mLの無水エーテルを加えたところ、即座に白色の沈殿が得られた。この白色固体を一気に濾過したところ、0.425g(86%)のHATUのN−(IR(CHCN):1668.9cm−1)とO型(IR(CH3CN):1711.5cm−1)の混合物が得られた。この混合物に、50mLのCHClを加え、ろ液からIR分析による同一の2つの型の混合物を0.20g(22%)得た。ろ液にエーテルを加えたところ、0.25g(51%)のほぼ純粋なO型(IRでは、N−型に特徴的な1668.9cm−1における吸収が全く見られず)が得られた。CHCl中の溶液において再結晶を行った後、EtOによって沈殿させたところ、0.11g(22%)のO−HATUが得られた。融点:143〜147℃、
【化47】
Figure 2005500268
【0150】
生成物はX線結晶学によって確認した。
【0151】
実施例3
1.O−HBTUの合成
上記化合物は以下のようにして大量に調製した。
【0152】
100mLの水に溶解したKOBt(0.5mol)に、1.5Lの二塩化メチレンに溶解したTCFH(0.5mol)の溶液を室温で激しく攪拌しながら添加した。反応混合液を室温で1分間攪拌し、有機層を回収した。あるいは、混合物は水流吸引器を用いて無水硫酸マグネシウムを通して濾過することもできる。有機層を150mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を真空除去し、固体をエーテルから再結晶させたところ、113.3g(59.8%)の純粋なO−HBTUが得られた。
【0153】
純粋なN−HBTUは、硫酸マグネシウムの残渣を200mLのアセトニトリルで2回洗浄して、溶媒を真空除去して、アセトニトリル/エーテルからの再結晶により、59.8g(31.6%)の純粋なN−HBTUとして得た。全収率は91.4%であった。
【0154】
NMR分析によって、O−HBTUが初発TCFH(場合によっては約5%のTCFHが見られる)によって汚染されていることが示されるようであれば、二塩化メチレンに溶解し、水(150mL×3回)で洗浄することにより、あるいは150〜200mLの水を加えて、室温で3〜4分間攪拌し、濾過し、エーテルで洗浄し、二塩化メチレン/エーテルから再結晶することによって、上記不純物を除去し、純粋なO−HBTUを得ることができる。
【0155】
実施例4
O−HATUの合成
反応混合物を1分間ではなく5〜10分間攪拌し、KOBtの代わりにKOAtを使用したことを除いては、実施例3の手順を用いてO−HATUを調製した。この場合、N−異性体による汚染はなかった。純粋なO−HATUの収率は、78.9%であった。
【0156】
実施例5
O−HAPyU
10mM KOAt、200mL CHCl、50mL CHCN及び10ミリモルのビス(テトラメチレン)クロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(BP)を室温にて2分間攪拌した。形成された沈殿と固体を迅速に濾過して回収した。O−生成物が回収された。ろ液に、100mLの無水エーテルを加えたところ、白色の沈殿が形成された。この沈殿を最小量のCHClに溶解し、過剰のエーテルを添加することによって再結晶した。HAPyUのO−異性体の収率は73.2%であった。
【0157】
最初の沈殿は、N型とO型の両方の1.3gの混合物であり、2番目の沈殿は1.2グラムのO型を含んでいた。IRにおいてO型は1685cm−1における吸収を示した。N−異性体は1655cm−1においてIR吸収を示した。
【化48】
Figure 2005500268
【0158】
以下の例は、ウロニウムカチオンの4,5−ベンゾ誘導体、すなわち、N−(ジメチルアミノ)(3H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−c]イソキノリン−3−イルオキシ)−N−メチル−メタミニウムヘキサフルオロホスフェート[4,5−B(HATU)]に向けられている。
【化49】
Figure 2005500268
【0159】
実施例6
N−[ジメチルアミノ](3H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−c]イソキノリン−3−イル−オキシ)−N−メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェート
A. 1−H−1−ヒドロキシ−2−アザナフト[3,4−d]−トリアゾール
【化50】
Figure 2005500268
【0160】
A. 1−H−1−ヒドロキシ−2−アザナフト[3,4−d]−トリアゾール
1. イソキノリン−N−オキシド
イソキノリン(76.93g,595.6mmol)の酢酸(520mL)溶液に、33.6gの過ホウ酸ナトリウム、NaBO・4HOを10分ごとに分けて加えた。1時間かけて、全部で201.6g(1.31モル)の過ホウ酸ナトリウムを加えた。得られた混合物を60℃で24時間攪拌した後、大きく平らな容器に収容された液体の表面上に一晩のあいだ空気流を通過させることにより、酢酸を除去した。残った固体を1Lの水に溶解し、この溶液を固体の重炭酸ナトリウムで中和した。溶液をクロロホルム(3×300mL)で抽出し、有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。クロロホルムを蒸発させ、残った白色固体をクロロホルムに再溶解し、ヘキサンを加えて沈殿させたところ、138〜140℃の融点(文献値:141〜142℃)を有する65g(75%)のN−オキシドが得られた。
【0161】
2. 4−ヒドロキシイソキノリン
イソキノリン−N−オキシド(7.93g,54.63mmol)のクロロホルム(160mL)溶液に、塩化p−トルエンスルホニル(19.66g,103.1mmol)を一部ずつ加えた。混合物を1時間還流した後、ロータリ・エバポレータを用いて溶媒を除去し、濃厚な溶液をメタノール(100mL)に溶解した。数分後、白色の固体が沈殿した。一晩放置後、ろ液から4.8g(60.4%)のヒドロキシ化合物(融点223〜224℃)が得られた。
【0162】
3. 3−ニトロ−4−ヒドロキシイソキノリン
3g(20.6mmol)の4−ヒドロキシイソキノリンを14mLの濃HSOに溶解した溶液に、温度を50〜55℃に維持しながら30分間の間に2.4gのKNOを加えた。混合物をこの温度に3時間維持した後、反応混合物を粉砕した氷の上に注いだ。回収された黄色の沈殿を水で洗浄し、エタノールから再結晶したところ、1.43g(36.4%)のニトロキノリンが黄色針状で得られた。融点170〜171℃(文献値:173℃)。
【化51】
Figure 2005500268
【0163】
4. 3−ニトロ−4−クロロイソキノリン
13.25g(69.7mol)の4−ヒドロキシ−3−ニトロイソキノリンに、120mLの三塩化リンを加えた。混合物を3時間還流した後、80mLのPOClを留去した。残った溶液を約150gの粉砕した氷上に注いだ。得られた固体を濾過し、エタノールから再結晶したところ、6.2g(42.5%)のチオロキノリンが黄色針状で得られた。融点103〜104℃(文献値:108〜109℃)。
【化52】
Figure 2005500268
【0164】
5. 1H−1−ヒドロキシ−2−アザナフト[3,4−d]−トリアゾール
4−クロロ−3−ニトロイソキノリンのエタノール(120mL)溶液を40℃に予備加熱し、9.8mLの無水ヒドラジンを加えた。混合物を3時間還流し、溶媒をロータリー・エバポレータを用いて蒸発させ、残った黄色の固体を600mLの水に溶解した。混合物を濾過し、ろ液を濃HClを加えることにより酸性にした。得られた茶色固体を濾過し、脱色炭の存在下で熱湯から再結晶したところ、2g(37.3%)のヒドロキシトリアゾールが淡黄色の結晶として得られた。融点245℃(dec);
【化53】
Figure 2005500268
【0165】
B. N−[ジメチルアミノ)(3H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−c]イソキノリン−3−イル−オキシ)−N−メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェート
乾燥Nの雰囲気下において、60mLの乾燥CHCl中のA−5の生成物(1.22g,6.57mmol)の懸濁液に、1.0mLのトリエチルアミンを加えた。室温で5分間攪拌した後、得られた薄黄色の溶液を0℃まで冷却し、1.84g(6.57mmol)のTCHFを一回で加えた。混合物を0℃で30分間撹拌し、その後室温で3時間攪拌した。沈殿を回収し、塩化メチレンで洗浄した。白色固体をCHCN/エーテルから再結晶したところ、1.55(55%)の純粋なウロニウム塩が得られた。融点187〜191℃(dec)
【化54】
Figure 2005500268
【0166】
本発明者らは、ペプチド形成速度は、O異性体を用いた場合の方が、対応するN異性体を用いるよりも有意に速くなることを発見した。ペプチドカップリングの間、O異性体のいくつかがN異性体に異性化しうるため、反応をモニターすることが好ましい。しかしながら、O−異性体によるカップリング反応の方がN−異性体を用いる場合よりも速いので、カップリング反応中のN−異性体の形成は最小限に抑えられる。
【0167】
さらに、本発明者らは、形成される生成物の収率が、O異性体を用いた場合の方が、対応するN異性体を用いるよりも有意に高くなることを発見した。さらに、本発明者らは、式IIの化合物(特に式II中のAが、アリール、例えばフェニルの場合よりも、ヘテロアリール、特に1−ピリジルの場合の方が)を用いた場合の方が、高いペプチド収率が得られることを発見した。さらに、カップリング反応においてO−異性体を用いた場合の方が、対応するN−異性体を用いるよりも、エピマー化が起こりにくい。
【0168】
これらの知見について、以下の例において説明する。
【0169】
実施例7
塩基及びDMF中の表に列挙したカップリング試薬の存在下において、以下に示すようにZ−Phe−Vd−OHをHPro−NHとカップリングし、バリンにおける構造の損失の程度を判定した。結果を以下に示す。
【化55】
Figure 2005500268
【表2】
Figure 2005500268
【0170】
このように、カップリング反応においてO−異性体を用いたときの方が、エピマー化が有意に少なかった。
【0171】
*TMPは2,4,6−トリメチルピリジン
**DIEAはジイソプロピルエチルアミン
***Zはベンジルオキシカルボニル
実施例8
下記の式に従ってH−Pro−NHとのカップリングにZ−Gly−Phe−OHを用いたこと以外は、実施例7の手順を繰り返した。
【化56】
Figure 2005500268
【表3】
Figure 2005500268
【0172】
この場合も、O−異性体を用いた場合の方が、N−異性体を用いるよりもエピマー化が有意に少なかった。
【0173】
さらに、以下に示すように、N−異性体よりもO−異性体の存在下において、アミノ酸の活性化がより迅速に起こった。
【0174】
実施例9
本実施例においては、Z−Aib−OH(カルボベンジルオキシアミノイソブチル酸)を塩基の存在下でHATUまたはHBTUと反応させ、生成物の形成に対する半減期を測定した。
【表4】
Figure 2005500268
【0175】
明確に示されるように、O−異性体を用いたアミノ酸活性化は、対応するN−異性体についてよりも迅速に進行した。このように、Z−Aib−OHは、1当量のコリジンの存在下、O−HATUによって2分未満の半減期で、Z−Aib−OAtに変換されたが、同じ条件下でN−HATUを用いた場合には、t1/2は約7分であった。HBTUに対して、t1/2は、O−異性体(40%OBtエステル、1時間)及びN−異性体(29%OBtエステル、1時間)のいずれについても1時間未満であった。しかしながら、N−エステルよりもO−エステルの方が有意に多く形成された。さらに、2当量のTMPを用いた場合には、O−HBTUとN−HBTUの半減期は著しく異なり、前者の場合は4分であり、後者の場合は90分であった。
【0176】
実施例10
ACPデカペプチドの会合
H−Val−Gln−Ala−Ala−Ile−Asp−Tyr−Ile−Asn−Gly−NH(配列番号:1)
試験ペプチドを、DMF中、PAL−PEG−PS樹脂(0.18mmol/g)上にて固相法により手動で、DIEAまたはDIEA/TMP(1:1)を塩基として用いて会合させた。ACPに対しては、Cazpinoらによる“J.Chem.Soc.,Chem Com(1994)”に記載されている、いわゆる「1.5×1.5」法を用いた。上記文献の内容は引用により本願に組み込む。この方法では、DMF(濃度0.2〜0.3M)中の1.5当量の保護されたアミノ酸とカップリング試薬、ならびに3当量の塩基が関与する。酸及びカップリング試薬を、30秒間または7分間混合し、溶液に樹脂を加えた後、混合物を時々テフロンスパチュラで攪拌しながら1.5分放置した。樹脂をDMF(3×5mL)で洗浄し、DMF中の20%ピペリジンで7分間脱保護し、DMF、CHCl及びDMFで(各3×5mL)洗浄した。各アミノ酸を同様に加えた。最後の脱保護は、TFA/HO(9:1)を用いて、室温で2時間実施した。TFAを真空除去し、無水エーテルによってペプチドを沈殿させた。HPLC条件は、0.1%TFA中のアセトニトリル濃度を25分間かけて、5%から35%に上昇させる勾配を含むものとした。標準機器プロトコールには自動合成が含まれていた。
【0177】
結果は以下のとおりである。
【表5】
Figure 2005500268
【0178】
*:条件:2倍過剰のAA;10〜30秒の予備活性化、2倍過剰のTMP/DIEA(1:1),1.5分のカップリング。
【0179】
実施例11
過剰のAAを1.5当量としたこと以外は、実施例10と同じ手順である。結果は以下のとおりである。
【表6】
Figure 2005500268
【0180】
実施例12
ロイシンエンケフェリンのAib−Aibアナログ
H−Tyr−Aib−Aib−Phe−Leu−NH(配列番号:2)
Aib−Aib5量体について、1.5当量の保護されたアミノ酸と3.5分のカップリング時間を用いて、ABI機器により標準的な合成を行った。カップリング試薬としてHBTUを用いた場合、主たる生成物は、30秒の予備活性化によって観察されるように、ペンタペプチドであると予想される。しかしながら、第2にペプチドとしてdes−Aibテトラペプチドも形成された。例えば7分などのより長い予備活性化時間を用いると、得られる生成物の有意な量が両Aib単位を欠如していた。
【0181】
試験の結果は以下のとおりである。
【表7】
Figure 2005500268
【0182】
*:条件:4倍過剰のAA,8倍過剰のDIEA,30〜60秒の予備活性化,30分のカップリング
このように、N−HBTUよりもO−HBTUを用いる方がより望ましいペプチドが形成された。
【0183】
約束はできないが、形成されるO−アシル種の割合は、O−異性体をアミノ酸またはペプチドと反応させたときの方が、対応するN−異性体を反応させるよりも大きく、このことが例えばペプチド等のアミド類の形成の大きな反応性につながるに違いない。
【0184】
トリアゾール誘導体(E=Nの場合)に対する活性化プロセスの赤外線試験では、O−型が迅速に形成された後に、系及び/または溶媒の性質に応じて多少迅速にN−型への異性化が起こることが示された。O−アシル型はより反応性が高いので、そのような効果は、「低予備活性化」の条件下でペプチド会合を行う際の効率の向上を理論的に説明する1つの因子となるかもしれない。
【0185】
Fmoc−Val−OHなどの多くの単純なアミノ酸について、HPLC分析によって、下記式のようなO−アシル誘導体とN−アシル誘導体の分離が可能であるので、2つの変種のあいだの関係を確立することができる。
【化57】
Figure 2005500268
【0186】
このように、このアミノ酸を1当量のDIEAの存在下でO−HBTUによって処理すると、2分後に存在する主たる種はO−アシルエステル(O−/N−比は99.5/0.5)であることが分かる。15分後にその比率は88/12に変化している。N−HBTUに対しては、2分後におけるO−/N−比は87.9/12.1であることから、カップリング試薬の構造と最初に活性化される種の構造との間には明確な関係があることが示唆される。アシル化の大部分が反応時間の最初の数分内に起こるので、これにより、真のウロニウム塩(O−異性体)の高い効率及びいわゆる低い予備活性化手順の両方の説明がつくかもしれない。
【0187】
本明細書で用いるように、4位は、ジアゾールまたはトリアゾールに縮合した環上の位置であり、環の反対側にあるORによって置換された窒素原子に対する橋頭堡に対してα位である。ORで置換された窒素原子からは少なくとも3環原子のところにある。例えば、下記の構造において、4位が示されている。
【化58】
Figure 2005500268
【0188】
4位は、環原子を矢印の方向に数えた場合に、OR基を含む窒素原子から3環炭素原子の位置である。
【0189】
本明細書で用いる、単数形は、複数形のことも指し、その反対の場合もある。
【0190】
上記好ましい実施形態及び実施例は、本発明の範囲と精神とを説明するために与えられたものである。これらの実施形態及び実施例から、当業者には他の実施形態及び実施例も明らかであろう。他の実施形態及び実施例は、本発明の意図に含まれる。したがって、本発明は添付の請求項によってのみ限定される。

Claims (71)

  1. カチオン性部分が下記式を有する塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Rは下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり;
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子に結合した炭素原子と協働して、3または4個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、またはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、5個までの環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14及びR15が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14がそれが結合している窒素原子と協働して、またR16がそれに結合している炭素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成している)
    EはNまたはCRであり;
    Rは水素または低級アルキルであり;
    及びRは独立して、水素、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基であるか、あるいはR及びRは、それらが結合している炭素原子と協働して、3〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むシクロアルキル基;酸素、硫黄または窒素複素環基であって、該複素環基は、3個から合計14個までの環原子と、3個から合計13個までの環炭素原子と、合計20個までの炭素原子を含み、前記環は少なくとも1つのヘテロ原子環原子を含み、前記ヘテロ原子はN,O及びSからなる群から選ばれる環上に存在し;6〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むアリール基;窒素、酸素または硫黄ヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール環は、5〜14個の環原子と合計4〜13個の環炭素原子と20個の炭素原子とを含む酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香族環であり、前記ヘテロ原子はN,O及びSからなる群から選ばれ;を形成し、前記シクロアルキル、複素環、アリール及びヘテロアリール基は、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基によって置換されていなくても置換されていてもよい)
  2. EはCHまたはNであることを特徴とする請求項1に記載の塩。
  3. は下記式:
    Figure 2005500268
    であることを特徴とする請求項1に記載の塩。
  4. 10,R11,R12及びR13は、独立して、水素または、電子供与基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであることを特徴とする請求項3に記載の塩。
  5. 電子供与基は低級アルコキシであることを特徴とする請求項4に記載の塩。
  6. 10,R11,R12及びR13は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはCHCHOCHCHであることを特徴とする請求項5に記載の塩。
  7. 10,R11,R12及びR13は、同一であることを特徴とする請求項1に記載の塩。
  8. は、下記式で表されることを特徴とする請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、R11及びR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであり、nは2または3である)
  9. 11及びR13は、独立して、水素または非置換低級アルキルであることを特徴とする請求項8に記載の塩。
  10. 11及びR13は、独立して、水素またはメチルであることを特徴とする請求項9に記載の塩。
  11. は、下記式で表されることを特徴とする請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、R10とR11は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成し、R12とR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであるか、あるいは、R12とR13は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成する)
  12. は、下記式で表されることを特徴とする請求項11に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    UはN−ALK,CHまたはOであり;
    ALKは低級アルキルまたは水素であり;
    及びnは独立して1または2であり;
    12及びR13は独立して水素または低級アルキルである)
  13. は、下記式で表されることを特徴とする請求項12に記載の塩。
    Figure 2005500268
  14. とRは協働して、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリールであることを特徴とする請求項1に記載の塩。
  15. とRは協働して、非置換シクロアルキル、非置換複素環、置換アリールまたは非置換ヘテロアリールであることを特徴とする請求項14に記載の塩。
  16. カチオンが下記の式を有する塩またはそのN−オキシド。
    Figure 2005500268
    (式中、
    Aは6〜14個の環炭素原子と合計が20個までの炭素原子を含むアリール基、またはヘテロアリール環であり、前記ヘテロアリール環は、5個から合計14個までの環原子と3個から合計13個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を有する酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香族であり、前記ヘテロアリール及びアリール基は、電子供与基または電子吸引基または低級アルキルによって置換されていなくても置換されていてもよく;
    EはNまたはCRであり;
    RはHまたは低級アルキルであり;
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり;
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、あるいは、
    10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子にの両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成しているか、またはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成している))。
  17. EはCHまたはNであることを特徴とする請求項16に記載の塩。
  18. は下記式:
    Figure 2005500268
    であることを特徴とする請求項16に記載の塩。
  19. 10,R11,R12及びR13は、独立して、水素または、電子供与基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであることを特徴とする請求項18に記載の塩。
  20. 電子供与基は低級アルコキシであることを特徴とする請求項19に記載の塩。
  21. 10,R11,R12及びR13は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはCHCHOCHCHであることを特徴とする請求項20に記載の塩。
  22. 10,R11,R12及びR13は、同一であることを特徴とする請求項16に記載の塩。
  23. は、下記式で表されることを特徴とする請求項16に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、R11及びR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであり、nは2または3である)。
  24. 11及びR13は、独立して、水素または非置換低級アルキルであることを特徴とする請求項23に記載の塩。
  25. 11及びR13は、独立して、水素またはメチルであることを特徴とする請求項24に記載の塩。
  26. は、下記式で表されることを特徴とする請求項16に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    10とR11は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成し、
    12とR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであるか、あるいは、R12とR13は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成する)。
  27. は、下記式で表されることを特徴とする請求項26に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    UはN−ALK,CHまたはOであり;
    ALKは低級アルキルまたは水素であり;
    及びnは独立して1または2であり;
    12及びR13は独立して水素または低級アルキルである)・
  28. は、下記式で表されることを特徴とする請求項16に記載の塩。
    Figure 2005500268
  29. Aが置換されていないことを特徴とする請求項16に記載の塩。
  30. カチオンは、下記の式を有することを特徴とする請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    GはNまたはCRであり、
    JはNまたはCRであり、
    LはNまたはCRであり、
    MはNまたはCRであり、
    ,R及びRは、独立して、水素、または電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されていてもよい低級アルキルであり、
    は水素であり、
    EはNまたはCRであり、
    Rは水素または低級アルキルであり、
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))。
  31. J,L及びMがNまたはCHのいずれかであり、G,J,LまたはMのうちの多くても2つがNであることを特徴とする請求項30に記載の塩。
  32. カチオンは、下記式を有することを特徴とする請求項30に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Rは水素、低級アルキルまたは電子供与基または電子吸引基である)。
  33. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項32に記載の塩。
    Figure 2005500268
  34. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    VはO,SまたはNHであり、
    QはNまたはCRであり、
    TはNまたはCRであり、
    EはCRまたはNであり、
    Rは水素または低級アルキルであり、
    ,R及びRは独立して、水素または、電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであり、
    は、下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))。
  35. QはCRであり、TはCRであることを特徴とする請求項34に記載の塩。
  36. 及びRは水素であることを特徴とする請求項35に記載の塩。
  37. Q及びTの一方がNであることを特徴とする請求項34に記載の塩。
  38. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Bは、6〜10個の環炭素原子を有する芳香環または6〜10個の環原子と3個までの環ヘテロ原子と合計9個までの環炭素原子とを有するヘテロアリール環であり、B基は、低級アルキル、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されていてもよい。
    EはCRまたはNであり、
    は、下記式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))。
  39. EはNまたはCHであることを特徴とする請求項38に記載の塩。
  40. EはNであることを特徴とする請求項39に記載の塩。
  41. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項16に記載の塩。
    Figure 2005500268
  42. は下記の式であることを特徴とする請求項41に記載の塩。
    Figure 2005500268
  43. 10,R11,R12及びR13は、独立して、水素または、電子供与基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであることを特徴とする請求項42に記載の塩。
  44. 電子供与基は低級アルコキシであることを特徴とする請求項43に記載の塩。
  45. 10,R11,R12及びR13は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはCHCHOCHCHであることを特徴とする請求項42に記載の塩。
  46. は、下記式で表されることを特徴とする請求項42に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、R11及びR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであり、nは2または3である)。
  47. 11及びR13は、独立して、水素または非置換低級アルキルであることを特徴とする請求項46に記載の塩。
  48. 11及びR13は、独立して、水素またはメチルであることを特徴とする請求項46に記載の塩。
  49. は、下記式で表されることを特徴とする請求項42に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    10とR11は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成し、
    12とR13は、独立して、水素または、電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されいてもよい低級アルキルであるか、あるいは、R12とR13は、それらが結合している窒素原子と協働して、5個までの炭素環原子を含む5または6員の窒素含有複素環を形成する)
  50. は、下記式で表されることを特徴とする請求項49に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    UはN−ALK,CHまたはOであり;
    ALKは低級アルキルまたは水素であり;
    及びnは独立して1または2であり;
    12及びR13は独立して水素または低級アルキルである)。
  51. は、下記式で表されることを特徴とする請求項49に記載の塩。
    Figure 2005500268
  52. Aは置換されていないことを特徴とする請求項41に記載の塩。
  53. カチオンは、
    Figure 2005500268
    であることを特徴とする請求項1に記載の塩。
    (式中、
    GはNまたはCRであり、
    JはNまたはCRであり、
    LはNまたはCRであり、
    MはNまたはCRであり、
    VはO,SまたはNHであり、
    QはNまたはCRであり、
    TはNまたはCRであり、
    ,R及びR,R及びRは独立して、水素、または電子供与基または電子吸引基によって置換されていなくても置換されていてもよい低級アルキルであり、
    は水素であり、
    EはNまたはCRであり、
    Rは水素または低級アルキルであり、
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))。
  54. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項53に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Rは水素、低級アルキルまたは電子供与基または電子吸引基である)。
  55. カチオンは下記の式を有することを特徴とする請求項53に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Rは水素、低級アルキルまたは電子供与基または電子吸引基であり、GはCHまたはNである)。
  56. 置換反応条件下において、RYと下記の式の塩との反応によって形成される塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    Yは脱離基であり、
    Aは、3〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むシクロアルキル基;酸素、硫黄または窒素複素環基であって、該複素環基は、3個から合計14個までの環原子と、3個から合計13個までの環炭素原子と、合計20個までの炭素原子を含み、前記環は少なくとも1つのヘテロ原子環原子を含み、前記ヘテロ原子はN及びSからなる群から選ばれる環上に存在し;6〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むアリール基;窒素、酸素または硫黄ヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール環は、5〜14個の環原子と合計4〜13個の環炭素原子と20個の炭素原子とを含む酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香族環であり、前記ヘテロ原子はN,O及びSからなる群から選ばれ;前記シクロアルキル、複素環、アリール及びヘテロアリール基は、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基によって置換されていなくても置換されていてもよく、
    EはCRまたはNであり、
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))。
  57. 下記式である請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Sはアニオンである)
  58. 下記式である請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Sはアニオンである)
  59. 下記式である請求項1に記載の塩。
    Figure 2005500268
    (式中、Sはアニオンである)
  60. カチオンが下記の式を有することを特徴とする塩。
    Figure 2005500268
    (式中、
    及びRは独立して、水素、電子吸引基または電子供与基であり、
    EはCRまたはNであり、
    Rは水素または低級アルキルであり、
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15及びR16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、
    あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子の両方に結合した炭素原子と協働して、4個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、合計5個までの炭素環原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成する))
  61. EはCHまたはNであることを特徴とする請求項60に記載の塩。
  62. EはNであることを特徴とする請求項61に記載の塩。
  63. 有効量の請求項1に記載の塩の存在下において、アミド形成条件下でアミノ化合物をカルボン酸と反応させることを含む、アミドの調製方法。
  64. 有効量の請求項1に記載の塩の存在下において、ペプチドカップリング条件下で、第1のアミノ酸または第1のペプチドを第2のアミノ酸または第2のペプチドと反応させることを含む、ペプチド結合の調製方法。
  65. ペプチドの合成において、第1のN−α−アミノ保護化アミノ酸を固相ペプチド合成樹脂に共有結合させ、N−α−アミノ保護基を解離し、得られた遊離のアミノ基をペプチド結合を介して第2のN−α−アミノ保護アミノ酸のカルボキシル基またはペプチドに結合させ、このサイクルを所望のペプチドが得られるまで繰り返し、ペプチドを樹脂から解離する改良であって、該改良は、カップリング反応に有効量の請求項1に記載の塩を添加することを含む。
  66. 下記式の塩を調製するための方法であって、
    Figure 2005500268
    下記式の塩とRYとを、
    Figure 2005500268
    置換反応条件下において反応させることを含む方法。
    (式中、
    Yは脱離基であり、
    は対立アニオンであり、
    は下記の式を有する正に荷電した電子吸引基であり、
    Figure 2005500268
    (式中、R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、独立して水素、あるいは電子吸引基または電子供与基で置換されていても置換されていなくてもよい低級アルキルであるか、あるいはR10及びR12は、それぞれ、それらが結合している窒素原子と、該窒素原子に結合した炭素原子と協働して、3または4個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、あるいはR10及びR11が、それらが結合している窒素原子と協働して、またはR12及びR13が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、5個までの環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14及びR15が、それらが結合している窒素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成するか、R14がそれが結合している窒素原子と協働して、およびR16がそれに結合している炭素原子と協働して、それぞれ、4または5個の環炭素原子を含む5または6員窒素含有複素環を形成している)
    EはNまたはCRであり;
    Rは水素または低級アルキルであり;
    及びRは独立して、水素、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基であるか、あるいはR及びRはそれらが結合している炭素原子と協働して、3〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むシクロアルキル基;酸素、硫黄または窒素複素環基であって、該複素環基は、3個から合計14個までの環原子と、3個から合計13個までの環炭素原子と、合計20個までの炭素原子を含み、前記環は少なくとも1つのヘテロ原子環原子を含み、前記ヘテロ原子はN及びSからなる群から選ばれる環上に存在し;6〜14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むアリール基;窒素、酸素または硫黄ヘテロアリール基であって、前記ヘテロアリール環は、5〜14個の環原子と合計4〜13個の環炭素原子と20個の炭素原子とを含む酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ芳香族環であり、前記ヘテロ原子はN,O及びSからなる群から選ばれ;を形成し、前記シクロアルキル、複素環、アリール及びヘテロアリール基は、低級アルキル、電子吸引基または電子供与基によって置換されていなくても置換されていてもよい))
  67. 生成物は、
    Figure 2005500268
    であり、
    Figure 2005500268
    (式中、
    Aは、3から14個の環炭素原子と合計20個までの炭素原子を含むシクロアルキル、3から14個の環原子と合計13個までの環原子と合計20個までの炭素原子を有する酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ環、6から14個の環原子と合計20個までの炭素原子を有するアリール基、または、5から14個の環原子と合計13個までの環炭素原子と、合計20個までの炭素環原子を有する酸素、硫黄または窒素含有ヘテロ環である)の塩と、RYとの反応から形成されることを特徴とする請求項66に記載の方法。
  68. Aはアリール基またはヘテロアリール基であることを特徴とする請求項67に記載の方法。
  69. EはNであることを特徴とする請求項66に記載の方法。
  70. EはNであることを特徴とする請求項67に記載の方法。
  71. カチオンがN−[ジメチルアミノ](3H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−c]イソキノリン−3−イル−オキシ)−N−メチルメタナミニウムであることを特徴とする塩。
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