上記特許文献1に開示されている潜熱回収型熱源装置は、燃焼ガスの持つ顕熱に加えて潜熱まで回収することができ、熱効率が高いという利点を有する。一方、上記特許文献2に開示されている一缶二水路型の加熱系統を備えた熱源装置は、全体形状がコンパクトであり、製造コストが安いという利点を有する。
本発明者らは、潜熱回収型熱源装置および一缶二水路型の熱源装置の利点を兼ね備えた熱源装置を提供すべく、一缶二水路型の熱源装置の給湯用および風呂追い焚き用の一次熱交換器よりも燃焼ガスの流れ方向下流側に二次熱交換器を配置した熱源装置を試作した。このような構成とした熱源装置は、装置構成がコンパクトであり製造コストが安価であると共に、熱効率が高いものであった。
しかし、上記した熱源装置について本発明者らがさらに作動実験を繰り返したところ、一次熱交換器において給湯用の熱交換器と風呂追焚き用の熱交換器とが重なり合った部分を通過する燃焼ガスは、熱交換器同士が重なり合っていない部分を通過した燃焼ガスよりも高温であることが判明した。この結果に基づき、本発明者らは、熱源装置を上記したような構成とした場合、二次熱交換器に導入される燃焼ガスが部位によって温度ムラを発生してしまい、二次熱交換器における熱エネルギーの回収効率が低下してしまうおそれがあることを見いだした。
そこで、本発明では、上記した新たな問題を解決すべく、二次熱交換手段に流入する燃焼ガスの温度ムラを抑制でき、二次熱交換器における熱エネルギーの回収効率が高い熱源装置の提供を目的とする。
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、燃焼バーナと、外気を導入するための送風手段と、燃焼バーナにおいて発生した燃焼ガスあるいは空気が流れるガス流路とを有し、前記ガス流路の中途には、ガス流路を流れる燃焼ガスあるいは空気と熱交換を行う一次熱交換手段と、当該一次熱交換手段よりも燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に配された二次熱交換手段とが設けられており、前記一次熱交換手段が、ガス流路の下流側に排出される燃焼ガスあるいは空気の排出温度が低温である第1領域と、燃焼ガスあるいは空気の排出温度が当該第1領域から排出される燃焼ガスあるいは空気よりも高温である第2領域とを有するものであり、前記二次熱交換手段が、ガス流路に連通し、燃焼ガスあるいは空気が流通するガス流通空間を有し、当該ガス流通空間が、前記一次熱交換手段の第1領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する低温ガス流通空間と、前記第2領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する高温ガス流通空間とを有し、高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスあるいは空気を低温ガス流通空間側に誘導する誘導手段が配されていることを特徴とする熱源装置である。
上記したように、一次熱交換手段において熱交換を行った後に排出される燃焼ガスや空気が温度ムラを維持したまま二次熱交換手段に流入して熱交換が行われると、二次熱交換手段において十分な熱交換効率が得られない可能性がある。
かかる知見に基づき、本発明の熱源装置では、二次熱交換手段のガス流通空間のうち高温の燃焼ガスや空気が到達すると想定される高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスや空気を、低温の燃焼ガスや空気が到達すると想定される低温ガス流通空間側に誘導する誘導手段を設けている。そのため、本発明の熱源装置では、二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラの発生を最小限に抑制できる。
本発明の熱源装置は、二次熱交換手段のガス流通空間における燃焼ガスや空気の温度ムラが少ないため、二次熱交換手段の伝熱面積を有効利用できる。従って、本発明の熱源装置は、二次熱交換手段における熱エネルギーの回収効率が高い。
請求項2に記載の発明は、燃焼バーナと、外気を導入するための送風手段と、燃焼バーナにおいて発生した燃焼ガスあるいは空気が流れるガス流路とを有し、前記ガス流路の中途には、ガス流路を流れる燃焼ガスあるいは空気と熱交換を行う一次熱交換手段と、当該一次熱交換手段よりも燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に配された二次熱交換手段とが設けられており、前記一次熱交換手段が、湯水または熱媒体が流通する受熱管と、当該受熱管に装着されるフィンとを備えて構成される熱交換回路を複数具備しており、複数の熱交換回路間でフィンを共用しており、前記複数の熱交換回路を構成する熱交換回路の一つが占有するガス流路の断面領域と、他の熱交換回路が占有するガス流路の断面領域とが重複する第2領域と、熱交換回路が占有するガス流路の断面領域同士が重複しない第1領域とを有し、前記二次熱交換手段が、ガス流路に連通し、燃焼ガスあるいは空気が流通するガス流通空間を有し、当該ガス流通空間が、前記一次熱交換手段の第1領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する低温ガス流通空間と、前記第2領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する高温ガス流通空間とを有し、高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスあるいは空気を低温ガス流通空間側に誘導する誘導手段が配されていることを特徴とする熱源装置である。
本発明の熱源装置において、一次熱交換手段は、複数の熱交換回路を備えており、フィンを共用している。そのため、熱交換回路が占有するガス流路の断面領域が重複する領域である第2領域に配された受熱管に装着されているフィンの高さは、熱交換回路が占有するガス流路の断面領域同士が重複しない第1領域に配されたフィンの高さよりも短くなる。さらに、上記したような構成とした場合は、第2領域と第1領域とでフィンの高さを同一としても、第2領域に存在する熱交換回路の一部において湯水や熱媒体が流れていないと、この熱交換回路における熱交換が行われない。従って、本発明の熱源装置では、一次熱交換手段の第2領域から排出される燃焼ガスや空気は、第1領域から排出される燃焼ガスあるいは空気よりも高温になる傾向にある。
上記したように、一次熱交換手段に複数の熱交換回路を配した構成とすると、一次熱交換手段から流出する燃焼ガスの温度ムラが発生する可能性がある。このように燃焼ガスや空気が温度ムラを維持したままの状態で二次熱交換手段において熱交換を行うと、二次熱交換手段における熱交換にもムラが発生し、十分な熱交換効率が得られないおそれがある。しかし、本発明の熱源装置は、二次熱交換手段のガス流通空間に誘導手段を配し、高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスや空気を低温ガス流通空間側に誘導する構成とされている。そのため、本発明の熱源装置では、二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラの発生を最小限に抑制し、二次熱交換手段の伝熱面積を有効利用できる。
請求項3に記載の発明は、燃焼バーナと、外気を導入するための送風手段と、燃焼バーナにおいて発生した燃焼ガスあるいは空気が流れるガス流路とを有し、前記ガス流路の中途には、ガス流路を流れる燃焼ガスあるいは空気と熱交換を行う一次熱交換手段と、当該一次熱交換手段よりも燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に配された二次熱交換手段とが設けられており、前記一次熱交換手段が、湯水または熱媒体が流通する受熱管と、当該受熱管に装着されるフィンとを備えて構成される熱交換回路を具備しており、前記受熱管の配置密度が高い第2領域と、当該第2領域よりも受熱管の配置密度が低い第1領域とを有し、前記二次熱交換手段が、ガス流路に連通し、燃焼ガスあるいは空気が流通するガス流通空間を有し、当該ガス流通空間が、前記一次熱交換手段の第1領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する低温ガス流通空間と、前記第2領域に対して燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に相当する高温ガス流通空間とを有し、高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスあるいは空気を低温ガス流通空間側に誘導する誘導手段が配されていることを特徴とする熱源装置である。
本発明の熱源装置では、一次熱交換手段に受熱管の配置密度が低い第1領域と、受熱管の配置密度が高い第2領域とがある。一次熱交換手段の第2領域は、受熱管の配置密度が高いため、受熱管に装着されるフィンが第1領域の受熱管に装着されたフィン短くなり、第2領域の各受熱管当たりの熱交換効率が第1領域における熱交換効率よりも低くなる傾向にある。そのため、本発明の熱源装置では、一次熱交換手段における熱交換に伴って下流側に排出される燃焼ガスや空気の温度は、受熱管の配置密度の低い第1領域よりも受熱管の配置密度の高い第2領域の方が高くなる傾向にある。上記したように、一次熱交換手段から排出された燃焼ガスや空気が温度ムラを有する状態で二次熱交換手段に流入して熱交換を行うと、二次熱交換手段において十分な熱交換効率が得られない可能性が高い。
本発明の熱源装置は、かかる知見に基づき、二次熱交換手段のガス流通空間に誘導手段を配することによって高温ガス流通空間に流入する燃焼ガスや空気を低温ガス流通空間側に誘導し、燃焼ガスや空気の温度ムラの解消を図っている。そのため、本発明の熱源装置は、一次熱交換手段から排出される燃焼ガスや空気の温度ムラの影響を受けることなく二次熱交換手段において十分な熱交換効率が得られる。
請求項2又は3に記載の熱源装置において、一次熱交換手段は、第1領域に配された受熱管に装着されたフィンの高さが第2領域に配された受熱管に装着されたフィンの高さよりも高くてもよい。(請求項4)
かかる構成とした場合であっても、二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラの発生を最小限に抑制し、燃焼ガスや空気の持つ熱エネルギーを効率よく回収できる。
上記請求項1乃至4のいずれかに記載の熱源装置において、誘導手段は、高温ガス流通空間における燃焼ガスあるいは空気の通風抵抗を、低温ガス流通空間における燃焼ガスあるいは空気の通風抵抗よりも増大させることを特徴とするものであることが望ましい。(請求項5)
本発明の熱源装置は、例えば誘導手段を高温ガス流通空間にのみ配置するなどして低温ガス流通空間よりも高温ガス流通空間の方が燃焼ガスや空気の流通抵抗が大きくなるようにしたものである。そのため、本発明の熱源装置では、高温ガス流通空間を流れようとする高温の燃焼ガスが低温ガス流通空間側に向けてスムーズに誘導され、ガス流通空間内に存在する燃焼ガスや空気の温度ムラが解消される。従って、本発明の熱源装置は、二次熱交換手段における熱交換効率が高い。
請求項1乃至5のいずれかに記載の熱源装置において、誘導手段は、板状であり、高温ガス流通空間に配される部分の表面積が低温ガス流通空間に配される部分の表面積よりも大きいものであってもよい。(請求項6)
かかる構成によれば、高温ガス流通空間に流入すると想定される高温の燃焼ガスや空気を低温ガス流通空間側にスムーズに誘導することができ、二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラや、湯水あるいは熱媒体の加熱ムラの発生を抑制できる。
ここで、一般的に、高温の気体は、低温の気体に比べて上方に存在する傾向にある。そのため、上記したように一次熱交換手段から排出される燃焼ガスや空気が温度差を有する場合は、高温の燃焼ガスや空気ほど上方に集まり、温度ムラを助長してしまいかねない。
そこでかかる知見に基づいて提供される請求項7に記載の発明は、誘導手段がガス流通空間の天面側から垂下していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱源装置である。
かかる構成によれば、上方に偏在しがちである高温の燃焼ガスや空気をスムーズに低温ガス流通空間に誘導することができ、二次熱交換手段において熱交換を行う燃焼ガスや空気の温度ムラをより一層確実に解消することができる。
また、請求項8に記載の発明は、誘導手段がガス流通空間の天面側から垂下しており、誘導手段の下端部が上端部よりもガス流通空間における燃焼ガスあるいは空気の流れ方向下流側に位置していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置では、誘導手段がガス流通空間内に傾斜した状態で取り付けられていたり、誘導手段が湾曲した形状であるなどして、ガス流通空間において誘導手段の下端部が上端部よりも燃焼ガスや空気の流れ方向下流側に位置している。そのため、本発明の熱源装置では、高温の燃焼ガスや空気を高温ガス流通空間側から低温ガス流通空間側に誘導し、ガス流通空間内における燃焼ガスや空気の温度バランスを最適化すると共に、燃焼ガスや空気の通風抵抗を最小限に抑制することができる。
上記したように、本発明の熱源装置は、ガス流通空間における通風抵抗が小さい。そのため、本発明の熱源装置は、燃焼バーナでの燃焼時に動作する送風手段の負荷を低減でき、送風手段の動作音を最小限に抑制することができる。
請求項9に記載の発明は、誘導手段とガス流通空間の底面との間に、二次熱交換手段において発生したドレンが流通可能な隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置において、二次熱交換手段は、一次熱交換手段において熱エネルギーが回収された燃焼ガスや空気からさらに熱エネルギーを回収すべく設けられたものである。そのため、二次熱交換手段は、一次熱交換手段において回収しきれずに残存している顕熱を回収すると共に、燃焼ガスや空気の持つ潜熱をも回収することができる。二次熱交換手段において燃焼ガスや空気の持つ潜熱が回収されると、ドレンが発生する。二次熱交換手段において発生したドレンは、燃焼ガスにさらされるため腐食性が高く、できる限りスムーズに外部へ排出する必要がある。
上記したように、本発明の熱源装置は、二次熱交換手段に設けられた誘導手段とガス流通空間の底面との間にドレンが流通可能な隙間が設けられている。従って、本発明の熱源装置では、二次熱交換手段において発生したドレンが誘導手段に遮られることなくスムーズに排出される。
請求項10に記載の発明は、誘導手段が、ガス流通空間を通過する燃焼ガスあるいは空気に対して大きな流れ抵抗を付与する大抵抗部と、当該大抵抗部よりも燃焼ガスあるいは空気に対して付与する流れ抵抗の小さな小抵抗部とを有し、前記大抵抗部が高温ガス流通空間に配され、前記小抵抗部が低温ガス流通空間に配されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の熱源装置である。
かかる構成によれば、高温ガス流通空間に流入する高温の燃焼ガスや空気をスムーズに低温ガス流通空間に誘導することができる。従って、本発明によれば、二次熱交換手段に導入される燃焼ガスや空気の温度ムラを解消し、二次熱交換手段における熱交換効率をより一層向上させることができる。
上記したように、誘導手段を配すれば二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラの発生を抑制できる反面、配置位置によっては誘導手段が燃焼ガスや空気の流れ抵抗となってしまい、送風手段に大きな負荷がかかったり、送風手段の動作に伴う騒音が大きくなってしまうという問題がある。
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項11に記載の発明は、二次熱交換手段が、ガス流通空間に燃焼ガスあるいは空気を導入するための導入口と、ガス流通空間内を流れる燃焼ガスあるいは空気を排出するための排出口とを有し、誘導手段が、前記導入口および排出口の中間位置に配されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の熱源装置である。
かかる構成とすれば、二次熱交換手段における燃焼ガスや空気の温度ムラの発生を抑制すると共に、燃焼バーナに燃焼用の空気を供給するための送風手段にかかる負荷を低減することができる。また、本発明の熱源装置は、送風手段にかかる負荷が小さいため、燃焼動作時における送風手段の動作音を最小限に抑制できる。
請求項12に記載の発明は、二次熱交換手段が、ガス流通空間内に多数の受熱管を配した多管型熱交換器によって構成されていることを特徴とする請求項11に記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置は、二次熱交換手段に多管型熱交換器を採用したものであるため、装置構成がシンプルであり、製造コストが安価である。
請求項13に記載の発明は、二次熱交換手段が、ガス流通空間に燃焼ガスあるいは空気を導入するための導入口と、ガス流通空間内を流れる燃焼ガスあるいは空気を排出するための排出口とを有し、ガス流通空間内に多数の受熱管を配した多管型熱交換器によって構成されており、前記受熱管が、導入口と排出口とを結ぶ仮想線を遮る方向に延伸しており、誘導手段が、ガス流通空間内に配された受熱管の延伸方向に沿って配されていることを特徴とする請求項12に記載の熱源装置である。
本発明の熱源装置では、誘導手段が受熱管に沿って配されているため、ガス流通空間内に流入した燃焼ガスや空気は、ガス流通空間の全域に拡がる。そのため、本発明によれば、ガス流通空間内における燃焼ガスの温度ムラを解消すると共に、各受熱管の伝熱面積を有効利用することができる。
本発明によれば、二次熱交換手段のガス流通空間内に流入する燃焼ガスや空気の温度分布を略均一化し、燃焼ガスや空気の持つ熱エネルギーを最大限回収可能な熱源装置を提供できる。
続いて、本発明の一実施形態である熱源装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である熱源装置を示す作動原理図である。図2は、図1に示す熱源装置において採用されている第1熱交換部を示す斜視図である。図3(a)は図2のA−A断面図であり、(b)は図2のB−B断面図である。図4は、図1に示す作動原理図の要部拡大図である。図5は、図1に示す熱源装置において採用されている二次熱交換器の分解斜視図である。図6(a)は、図1に示す熱源装置の要部を拡大した正面図であり、(b)は(a)の側面図である。図7(a)は、図5に示す二次熱交換器において採用されているガス誘導板を示す正面図であり、(b)は二次熱交換器におけるガス誘導板の位置関係を模式的に示した斜視図である。図8は、図5に示す二次熱交換器の断面図である。図9(a),(b)は、それぞれ図7に示すガス誘導板の変形例を示す正面図である。図10(a)は、図7に示すガス誘導板のさらに別の変形例を示す斜視図であり、(b)は(a)に示すガス誘導板を配した熱源装置の側面図である。図11、図12、図13は、それぞれ図1に示す熱源装置の変形例を示す正面図である。
図1において、1は本実施形態の熱源装置である。熱源装置1は、一缶二水路形式の潜熱回収型燃焼装置であり、燃料を燃焼する燃焼部2と、燃焼により発生した燃焼ガスが流れるガス流路3とを有する。ガス流路3の中途には、一次熱交換部4aが配されており、一次熱交換部4aよりもガス流路3の下流側には二次熱交換部4bが配されている。
燃焼部2は、複数の燃焼管8を並べて構成されるバーナ10と、点火装置9と、バーナ10に対して燃焼に要する空気を供給するための送風機11とを備えたものであり、燃焼領域A,Bに分類されている。バーナ10は、燃焼領域Aを構成する燃焼管8のみで燃料を燃焼させる燃焼運転と、燃焼領域A,Bを構成する全ての燃焼管8で燃料を燃焼させる燃焼運転とを切り替えることができる。
図2に示すように、一次熱交換部4aは、風呂追焚き用の一次熱交換器5と給湯用の一次熱交換器6とから構成されている。一次熱交換器5,6は、受熱管13,15内を流れる湯水とガス流路3内を通過する燃焼ガスとの熱交換により、主として燃焼ガスの持つ顕熱を回収するものである。一次熱交換器5,6は、フィンプレート12を共用することにより一体化されている。一次熱交換器5,6は、フィンプレート12の幅方向が燃焼管8の配列方向に向くように配されている。一次熱交換器5は、平行に配された多数のフィンプレート12に複数の受熱管13を貫通させ、隣接する受熱管13の端部同士を「U」字状のベンド管16によって接続したものである。同様に、一次熱交換器6は、多数のフィンプレート12に対して複数の受熱管15を貫通させると共に、隣接する受熱管15の端部同士を「U」字状のベンド管16によって接続したものである。一次熱交換器5,6は、それぞれ受熱管13,15およびベンド管16によって構成される屈曲した流路を備えている。
一次熱交換器5は、4本の受熱管13をフィンプレート12の幅方向一端側(図1では左側)に偏った位置に配したものである。一次熱交換器6は、図1や図2に示すように、8本の受熱管15をフィンプレート12の全幅に渡って略等間隔に配すると共に、フィンプレート12の高さ方向に2段に配したものである。
一次熱交換器5の受熱管13は、フィンプレート12の高さ方向に2段に配された一次熱交換器6の受熱管15,15間に配されている。そのため、一次熱交換部4aは、フィンプレート12の高さ方向、すなわち燃焼ガスの流れ方向に受熱管15が2段に配され、受熱管15同士の間に受熱管13が配された重複領域T(第2領域)と、フィンプレート12の高さ方向に受熱管13が配されておらず、受熱管15が2段に配された単独領域S(第1領域)とに分類される。換言すれば、一次熱交換部4aは、ガス流路3における一次熱交換器5,6の占有領域が重複した重複領域Tと、一次熱交換器6のみが占有する単独領域Sとから構成されている。重複領域Tは、フィンプレート12の単位面積当たりにおける受熱管13,15の配置密度が単独領域Sよりも高い。
重複領域Tは、図1に示すようにガス流路3のうち上記した燃焼部2の燃焼領域Aに相当する領域を占領している。一方、単独領域Sは、ガス流路3の略全体、すなわち燃料領域A,Bの双方に相当する領域を占領している。一次熱交換部4aは、重複領域Tと単独領域Sとでいわゆるフィン高さが異なる。さらに具体的には、図4に示すように一次熱交換部4aは、重複領域Tにおいて上下に並んで配されている受熱管13,15間のフィンプレート12の長さL1が、単独領域Sにおいて上下に並んだ配されている受熱管15,15間のフィンプレート12の長さL2よりも極端に短い。また、一次熱交換部4aの最下段に配されている受熱管15の頂部からフィンプレート12の下端部に至る長さは、重複領域T側(L3)よりも単独領域S側(L4)の方が長くなっている。そのため、一次熱交換部4aは、単独領域S側よりも重複領域T側の方が一次熱交換器6の熱交換効率が低い。
二次熱交手段4bは、二次熱交換器20と接続部材35とによって構成されている。二次熱交換器20は、図5に示すように、中空で箱状のケース部材21の両端部に平行に配置されたヘッダ22,23に多数の受熱管25をろう付けして接続した、いわゆる多管型の熱交換器である。ケース部材21は、図5に示すように金属板を折り曲げ加工して形成されるケース本体26と天板27とから構成されている。ケース部材21は、ケース本体26に対して天板27をろう付けすると共に、ケース本体26の両端に設けられたフランジに対して管板28をろう付けすることにより略箱状となる。これにより、ケース本体26の内部には、受熱管25が収納され、燃焼ガスが流れるガス流通空間24が形成されている。ケース部材21は、ケース本体26の正面に排気口30を設けると共に、背面に導入口31を設けた構成とされている。また、ケース本体26の底面には、排水口32が設けられている。
排気口30は、二次熱交換器20から燃焼ガスを排出するための開口である。排気口30の前面側には、図6(a)に示すように4つの排気用の開口を有する排気部材33が装着されている。また、導入口31は、一次熱交換部4aにおいて顕熱の大部分が回収された燃焼ガスを二次熱交換器20内に導入するためのものである。
二次熱交換器20は、図6(b)に示すように接続部材35を介してガス流路3に接続されている。接続部材35は、ガス流路3の開口部分に接続される集合部36と、接続部37とが略「L」字型に配されており、内部に連通した流路を形成している。集合部36は、図6(c)のようにガス流路3の開口部分と連通する開口34を有しており、この開口34を介して一次熱交換部4aを通過した燃焼ガスが流入する部分である。また、集合部36は、図6(a),(b)のように二次熱交換器20が載置される部分でもあり、接続部37側から離反するに従って下方に傾斜した形状とされている。
接続部37は、二次熱交換器20のケース部材21の背面に対して面接触する部分であり、集合部36から流入した燃焼ガスを二次熱交換器20側に排出するための開口38が設けられた構成となっている。二次熱交換器20は、集合部36の上方に搭載され、背面側(導入口31側)を接続部37に密着させた状態とされる。このように二次熱交換器20を配置すると、二次熱交換器20の導入口31と接続部37の開口38とが連通し、二次熱交換器20が正面側(排水口32側)を下方に傾斜させた姿勢でガス流路3に接続される。これにより、二次熱交換器20は、排水口32側に向けて流れ勾配がついた状態とされており、二次熱交換器20において発生したドレンが排水口32側に向けてスムーズに流れる構成となっている。
受熱管25は、金属製の筒体であり、それぞれ燃焼ガスが通過可能な程度の隙間を空けて平行に配置されている。受熱管25は、図5に示すように本体ケース21の上下方向に4本の受熱管25が並び、本体ケース21の幅方向に12列の受熱管25が並んだ状態とされて管板28に対してろう付けされている。二次熱交換器20は、受熱管25が錯列(千鳥状)に並べられた構成となっている。
ケース部材21内に配されている受熱管25のうち、導入口31側から1列目〜6列目に配置されたものは、上流受熱管群40を構成し、これに隣接する7〜12列目のものは下流受熱管群41として分類される。
ヘッダ22は、図5に示すように、管板28に対して椀状のカップ部材43(端室部材)をろう付けした構成とされている。また、ヘッダ23は、管板28に対して椀状のカップ部材45,46(端室部材)を2つ並べてろう付けしたものである。カップ部材45,46には、それぞれ入水口48aおよび出水口48bが設けられている。入水口48aは、図1に示すように外部から湯水を供給する給水配管63に接続されている。また、出水口48bは、給湯用の湯水を加熱するための一次熱交換器5に接続されている。
管板28は、矩形状の金属板に対して受熱管25の配列に合わせて多数の管差込孔47を形成したものである。ヘッダ22側の管板28にろう付けされたカップ部材43は、管差込孔47の全てに被さるようにろう付けされ、水室49aを形成している。ヘッダ23側の管板28にろう付けされたカップ部材45,46は、それぞれ上流受熱管群40、下流受熱管群41の接続領域に被さるように装着され、水室49bおよび水室49cを形成している。
図1や図4に示すように、ケース部材21とヘッダ22,23によって囲まれたガス流通空間24は、上記した燃焼領域Aに対して略垂直上方に相当する高温ガス流通空間Hと、燃焼領域Bに対して略垂直上方に相当する低温ガス流通空間Lとに分類される。さらに具体的には、高温ガス流通空間Hは、バーナ10の燃焼領域Aや一次熱交換部4aの重複領域Tに対してガス流路3の下流側に形成された空間である。一方、低温ガス流通空間Lは、バーナ10の燃焼領域Bや一次熱交換部4aの単独領域Sに対してガス流路3の下流側に形成された空間である。換言すれば、高温ガス流通空間Hは、バーナ10の燃焼領域Aから一次熱交換部4aの重複領域Tおよび二次熱交換部4bの高温ガス流通空間Hに続く一連の高温ガス流路3aの末端に位置する領域である。また、低温ガス流通空間Lは、燃焼領域Bから単独領域Sおよび低温ガス流通空間Lに続く一連の低温ガス流路3bの末端に位置する領域である。
ガス流通空間24内には、受熱管25に沿って金属製のガス誘導板50が配されている。ガス誘導板50は、ケース部材21の天板27に対して略直交する姿勢でろう付け固定されている。ガス誘導板50は、天板27をケース本体26に装着した状態とすると、ケース本体26の奥行き方向の中間部分に配された受熱管25,25同士の間に差し込まれ、導入口31と排気口30とを繋ぐガス流路3の一部を遮るものである。ガス誘導板50は、図8に示すように上流受熱管群40を構成する受熱管25と下流受熱管群41を構成する受熱管25との間に天板27側から差し込まれた状態で固定されている。これにより、ガス流通空間24によって構成されるガス流路3が、図7(b)のようにガス流路の上流側の領域(上流側領域U)と下流側の領域(下流側領域D)とに分類される。
ガス誘導板50は、図7(a)に示すように矩形状の金属板の一部が欠落した歪な形状に成形された板体である。さらに具体的に説明すると、ガス誘導板50は、仮想の境界線Xを境として高さがh1である大抵抗部51と、高さがh2(h1>h2)である小抵抗部52とに分類される。ガス誘導板50は、排気口30から排出される燃料ガスや空気に対する流れ抵抗として作用するものであり、その流れ抵抗は大抵抗部51よりも小抵抗部52の方が大きい。そのため、ガス誘導板50は、導入口31から導入された燃焼ガスや空気を低温ガス流通空間L側に誘導する誘導手段として機能する。
大抵抗部51の高さh1は、ケース部材21の天板27側からケース部材21内に配された受熱管25のうち最も下方に配されたものの位置まで達する程度とされている。大抵抗部51の高さh1は、ケース部材21の内部空間(ガス流通空間24)の高さよりも低い。そのため、ガス誘導板50の下方には、図6(b)や図7(b)のように隙間が形成されている。
一方、小抵抗部52の高さh2は、高さh1の略1/3〜1/2程度であり、天板27に固定された状態でケース部材21内に配された受熱管25のうち上方から2段目に固定された受熱管25に配されたものの位置まで達する程度とされている。ガス誘導板50は、大抵抗部51と小抵抗部52との境界線Xがほぼ上記した高温ガス流通空間Hと低温ガス流通空間Lとの境界上に到来するように固定されている。
続いて、本実施形態の熱源装置1において形成されている流水系統60について説明する。本実施形態の流水系統60は、大別して風呂追焚き用の風呂流水系統61と、給湯用の給湯流水系統62の2系統に分類される。風呂流水系統61は、風呂65内の湯水を一次熱交換器5に供給して加熱し、風呂65側に戻す循環流路である。さらに具体的に説明すると、風呂流水系統61は、一次熱交換器5の入水口66および出水口67に風呂往き配管70および風呂戻り配管68を接続して構成されている。風呂戻り配管68の中途には、風呂流水系統61内に湯水を循環させるための循環ポンプ71が設けられている。
一方、給湯流水系統62は、外部の給水源から給水配管63を介して湯水を供給すると共に、一次熱交換器6および二次熱交換器20において加熱された湯水を給湯栓74に供給する流水系統である。さらに具体的に説明すると、図1に示すように、給湯流水系統62は、大別して給水配管63、給湯配管77およびバイパス配管78によって構成されている。給水配管63は、図示しない給水源から湯水を供給するための配管であり、二次熱交換器20の流入口72に接続されている。二次熱交換器20の出水口73は、接続配管79を介して一次熱交換器6の入水口75に接続されている。給湯配管77は、給湯栓74に対して湯水を供給するための配管であり、一次熱交換器6の出水口76に接続される。給湯配管77の中途には、給水配管63から分岐されたバイパス配管78が接続されている。バイパス配管78の中途には、流量制御弁80が配されている。流量制御弁80は、バイパス配管78を介して導入される低温の湯水と給湯配管77内を流れる高温の湯水の混合比を調整するためのものである。
続いて、熱源装置1の機能について説明する。熱源装置1は、従来の一缶二水型の熱源装置と同様に給湯単独モード、風呂単独モード、給湯・風呂併用モードの3つの動作モードを有する。
熱源装置1が給湯単独モードで動作する場合の動作について、湯水および燃焼ガスの流れを中心に説明する。給湯単独モードは、風呂65内に貯留されている湯水の加熱動作の停止中に、給湯用の湯水を加熱する運転モードである。熱源装置1の制御手段85は、給湯栓74の開栓に伴って外部の給水源から湯水が供給される。給水源から供給された湯水は、二次熱交換器20、一次熱交換器6の順で通過することによって加熱され、給湯栓74から排出される。
さらに具体的に説明すると、給水配管63によって供給された低温の湯水は、先ず図1および図8に示すように二次熱交換器20の入水口48aから水室49bを介して上流受熱管群40を構成する各受熱管25内に流入する。上流受熱管群40を流れる湯水は、ヘッダ22側に形成された水室49aに流れ込んだ後、流れ方向を転換して下流受熱管群41を構成する各受熱管25内に流入する。下流受熱管群41を流れる湯水は、ヘッダ23側に形成された水室49cに流れ込み、出水口48bから排出される。
二次熱交換器20の出水口48bから排出された湯水は、接続配管79を介して一次熱交換器6の入水口75に流れ込む。入水口75から流れ込んだ湯水は、多数のフィンプレート12を貫通している受熱管15およびベンド管16によって構成される屈曲した流路を流れる。二次熱交換器6に供給された湯水は、多数のフィンプレート12の隙間を通過する燃焼ガスとの熱交換によって加熱された後、出水口76から排出される。二次熱交換器20に流入した湯水は、このようにしてガス流通空間24内に配された各受熱管25内を往復動する間に燃焼ガスと熱交換し、加熱される。
給湯配管77を流れる高温の湯水は、給水配管63から分岐されたバイパス配管78を流れる低温の湯水と合流する。制御手段85は、図示しないリモコン等を介して設定された出湯温度に応じて流量制御弁80の開度を調整し、バイパス配管78を流れる湯水の量を調整する。これにより、一次熱交換器6および二次熱交換器20において加熱された高温の湯水と、外部の給水源から供給された低温の湯水とが所定比で混合され、給湯栓74における出湯温度が所定の温度に調整される。
一方、熱源装置1が給湯単独モードで動作する場合、制御装置85は、給湯流水系統62における通水が開始されたことを条件としてバーナ10の燃焼領域A,Bの双方を構成する全ての燃焼管8に燃料ガスを供給して点火動作を行う。また、制御手段85は、点火動作と平行して送風機11を起動し、バーナ10における燃焼動作に必要とされる空気の供給を開始する。
バーナ10の燃焼領域A,Bにおいて発生した高温の燃焼ガスは、それぞれガス流路3の下流側に流れ、一次熱交換部4aを構成する多数のフィンプレート12の隙間に流入する。燃焼領域A,Bにおいて発生した燃焼ガスは、それぞれ重複領域Tおよび単独領域Sに配された受熱管25内を流れる湯水と熱交換を行い、顕熱の大部分が回収される。
ここで、上記したように、フィンプレート12は、燃焼領域A側のフィン高さL1,L3が燃焼領域B側のフィン高さL2,L4よりも極端に短い。そのため、一次熱交換部4aは、重複領域Tにおける顕熱の回収効率が、単独領域Sよりも低い。従って、一次熱交換部4aから排出される燃焼ガスは、部位によって温度分布を有する。すなわち、熱源装置1が給湯単独モードで動作する場合、重複領域Tから下流側に排出される燃焼ガス(以下、必要に応じて高温燃焼ガスと称す)は、単独領域Sから排出される燃焼ガス(以下、必要に応じて低温燃焼ガスと称す)よりも回収されずに残留している顕熱の量が多く、高温である。
一次熱交換部4aを通過した燃焼ガスは、上記した温度分布をほぼ維持したままガス流路3内をさらに下流側(上側)に向かって流れ、二次熱交換部4bに到達する。二次熱交換部4bに至った燃焼ガスは、接続部材35を介して二次熱交換器20の導入口31からガス流通空間24内に流入する。
ガス流通空間24内に流入した燃焼ガスのうち、重複領域Tから排出された高温燃焼ガスは、ガス流通空間24の高温ガス流通空間H側に優先的に流入し、単独領域Sから排出された低温燃焼ガスは、低温ガス流通空間L側に優先的に流入する。上記したように、高温燃焼ガスは、低温燃焼ガスよりも顕熱の残留量が多く高温である。さらに、高温燃焼ガスは、風呂単独モードの場合と同様に高温ガス流通空間Hの上方に滞留する傾向にある。
しかし、高温ガス流通空間Hの上流側領域Uに流入した燃焼ガスの一部は、ガス誘導板50に沿って低温ガス流通空間L側に回り込み、低温ガス流通空間Lに流入した低温燃焼ガスと共に低温ガス流通空間Lの下流側領域Dに流入する。そのため、ガス流通空間24の雰囲気温度が略均一となり、受熱管25の伝熱面全体で熱交換が行われる。
続いて、熱源装置1が風呂単独モードで動作する際の湯水および燃焼ガスの流れについて説明する。風呂単独モードは、給湯停止中に風呂65内に貯留されている湯水を第1熱交換部4aにおいて加熱する運転モードである。風呂単独モードで動作する場合、熱源装置1の制御手段85は、循環ポンプ71を起動し、風呂65内の湯水を風呂流水系統61内に循環させる。制御手段85は、風呂流水系統61における通水を確認するとバーナ10を構成する燃焼管8のうち、燃焼領域Aに配された燃焼管8のみに燃料ガスを供給し、点火装置9を作動させて点火動作を行う。制御装置85は、点火動作とほぼ同時に送風機11を起動し、バーナ10に対して燃焼に必要な空気の供給を開始する。これにより、熱源装置1が風呂単独モードで動作する場合は、バーナ10の燃焼領域Aのみにおいて高温の燃焼ガスが発生し、燃焼領域Bにおいて常温の空気流が発生する。
バーナ10の燃焼領域Aにおいて発生した高温の燃焼ガスは、ガス流路3の下流側に流れ、一次熱交換部4aの重複領域Tに多数設けられたフィンプレート12の隙間に流入する。重複領域Tに流入した高温の燃焼ガスは、フィンプレート12や受熱管13の表面において熱交換を行い、燃焼ガスが持つ顕熱の大部分が回収される。これにより、一次熱交換器5の受熱管13内を流れる湯水が加熱される。顕熱の大部分が回収された燃焼ガスは、ガス流路3をさらに下流側(図1では上側)に向かって流れ、二次熱交換部4bに至る。燃焼ガスは、接続部材35を通過し、二次熱交換器20の背面に設けられた導入口31から燃焼領域Aの下流に相当するガス流通空間24の高温ガス流通空間Hに流入する。
一方、燃焼領域Bを通過したほぼ常温の空気流は、一次熱交換部4bの単独領域Sに設けられた多数のフィンプレート12の隙間を通過し、二次熱交換部4bに至る。空気流は、二次熱交換器20の導入口31から燃焼領域Bの下流に相当する低温ガス流通空間Lに流入する。
上記したように、熱源装置1が風呂単独モードで動作する場合、二次熱交換器20に流入する燃焼ガスおよび空気は、所定の温度分布を有する。すなわち、二次熱交換器20の高温ガス流通空間Hに流入する燃焼ガスは、一次熱交換部4aにおいて顕熱の大部分が回収されたものではあるが、一次熱交換部4aにおいて回収しきれなかった顕熱や潜熱の分だけ熱エネルギーが残留している。一方、二次熱交換器20の低温ガス流通空間Lに流入する空気流は、ほぼ常温であり、高温ガス流通空間Hに流入する燃焼ガスよりも熱エネルギーが低い。そのため、二次熱交換器20に流入した燃焼ガスは、図7(b)にハッチングで示すように高温ガス流通空間Hの上方に偏在する傾向にある。
ここで、上記したように、二次熱交換器20のガス流通空間24内には、ガス誘導板50が配されている。ガス誘導板50は、低温ガス流通空間L側の小抵抗部52よりも高温ガス流通空間H側の大抵抗部51が大きく、ケース部材21に設けられた導入口31に対して対向するように配されている。また、ガス誘導板50は、ケース部材21の天板27側から垂下した状態で固定されている。そのため、高温ガス流通空間Hの上流側領域Uに流入した燃焼ガスの一部は、ガス誘導板50の下方に形成された隙間を通って高温ガス流通空間Hの下流側領域Dに流入する。また、燃焼ガスの残部は、ガス誘導板50に沿って低温ガス流通空間L側に回り込み、低温ガス流通空間Lに存在する空気と共に低温ガス流通空間Lの下流側領域Dに流入する。これにより、ガス流通空間24の雰囲気温度が略均一となり、受熱管25の伝熱面積を有効利用することができる。
続いて、熱源装置1が給湯・風呂併用モードで動作する場合の動作について説明する。給湯・風呂併用モードでは、給湯単独モードの場合の湯水の流れと、風呂単独モードの場合の湯水の流れとが組み合わさった状態で湯水が流れる。すなわち、給湯・風呂併用モードでは、風呂65内の湯水が風呂流水系統61および一次熱交換器5を循環すると共に、給水配管63を介して供給された湯水が二次熱交換器20、一次熱交換器6で加熱され、給湯配管77を介して外部に排出される。
一方、給湯・風呂併用モードにおける燃焼ガスの流れは、上記した給湯単独モードの場合と同様である。さらに具体的には、給湯・風呂併用モードでは、バーナ10を構成する全ての燃焼管8において火炎が形成され、燃焼ガスが発生する。バーナ10において発生した燃焼ガスは、ガス流路3内を下流側、すなわち上方に向かって流れ、一次熱交換部4aに至る。燃焼ガスは、一次熱交換部4aを構成する多数のフィンプレート12の隙間を通過し、風呂加熱用の一次熱交換器5および給湯用の一次熱交換器6の受熱管13,15内を流れる湯水と熱交換を行う。
一次熱交換部4aにおける熱交換によって顕熱の大部分が回収された燃焼ガスは、さらにガス流路3の下流側に流れる。ここで、一次熱交換器6の受熱管15は、フィンプレート12の幅方向全域にわたって略等間隔で配されているが、一次熱交換器5の受熱管13は、一次熱交換部4aの重複領域Tに偏在している。すなわち、一次熱交換部4aは、単独領域S側に配された受熱管15の配置密度に比べて、重複領域T側における受熱管13,15の配置密度が高い。そのため、重複領域Tのフィン高さL1,L3は、単独領域Sのフィン高さL2,L4よりも低く、熱回収効率が低い。従って、一次熱交換部4aの重複領域Tから排出された燃焼ガス(高温燃焼ガス)は、単独領域Sから排出された燃焼ガス(低温燃焼ガス)よりも比較的顕熱の残留量が多く、高温である。
一次熱交換部4aを通過した燃焼ガスは、上記したような温度分布をほぼ維持した状態で二次熱交換器20のガス流通空間24に流入する。すなわち、高温燃焼ガスは、ガス流通空間24の高温ガス流通空間Hに優先的に流入し、低温燃焼ガスは、低温ガス流通空間Lに優先的に流入する。
高温ガス流通空間Hに流入した高温ガスは、二次熱交換器20の導入口31に対して平行に配されたガス誘導板50によって低温ガス流通空間L側に誘導される。これにより、ガス流通空間24内に流入した燃焼ガスの温度分布が略均一になる。
上記したように、熱源装置1は、二次熱交換器20のガス流通空間24にガス誘導板50を設け、一次熱交換部4aの重複領域Tにおいて発生し、高温ガス流通空間Hに流入する高温の燃焼ガスを低温ガス流通空間L側に誘導する構成とされている。さらに、ガス誘導板50は、二次熱交換器20の天板27側から垂下するように固定されている。また、ガス誘導板50は、大抵抗部51が高温ガス流通空間H側に配され、小抵抗部52が低温ガス流通空間L側に配されると共に、各受熱管25に沿って配されている。そのため、ガス流通空間24の上方に偏在しがちである高温の燃焼ガスや空気をスムーズに低温ガス流通空間Lに誘導することができ、ガス流通空間24内における燃焼ガスや空気の温度ムラをより一層確実に解消することができる。そのため、熱源装置1では、一次熱交換部4aから排出される燃焼ガスや空気が温度ムラを有していてもガス流通空間24内における温度分布が略均一化され、二次熱交換器20を構成する各受熱管25の伝熱面積を有効利用できる。従って、熱源装置1は、二次熱交換器20における熱交換効率が高く、燃焼によって発生した燃焼ガスのもつ熱エネルギーを十分回収できる。
また、上記したように、ガス誘導板50は、二次熱交換器20を構成するケース本体26の底面との間に所定の隙間を形成した状態で固定されている。さらに、二次熱交換器20は、排水口32側が下方に向くように配されており、排水口32側に向けて流れ勾配が形成されている。そのため、熱源装置1では、二次熱交換器20において発生したドレンがスムーズに排水口32から排出される。
上記したように、二次熱交換器20は、多数の受熱管25を平行に配して構成される多管型の熱交換器り、装置構成が単純であるため、軽量であると共に製造コストが安価である。
熱源装置1は、一次熱交換部4aから排出された燃焼ガスや空気がガス流通空間24内全体に分散する。そのため、風呂単独モードで作動中のように、二次熱交換器20の各受熱管25に湯水が滞留したままの状態で燃焼ガスや空気がガス流通空間24内に流入しても、受熱管25の局所で湯水が高温となったり沸騰する等の不具合が起こらない。また、熱源装置1は、受熱管25内の湯水が局所的に高温にならないため、風呂単独モードの後の給湯動作の開始直後に予期せぬ高温の湯水が排出されるという不具合も殆ど起こらない。
上記したガス誘導板50は、図7に示すように境界線Xを境として表面積の異なる大抵抗部51および小抵抗部52を有するものであり、高温ガス流通空間Hの上流側領域Uに流入した燃焼ガスを効率よく低温ガス流通空間L側に誘導することができる。しかし、ガス誘導板50は板状であるため、ガス誘導板50の下流側に隣接する位置に配された受熱管25の伝熱面積を有効利用できないおそれがある。そのため、かかる事態が想定される場合は、例えば図9(a)のようにいくらかの開口91を備えたガス誘導板90や、図9(b)のように全体あるいは一部を網状にしたガス誘導板92等を採用することが望ましい。かかる構成によれば、ガス流通空間24内に配された受熱管25の伝熱面積を最大限有効利用できる。
上記したガス誘導板50は、平板状の形態を有するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図10(a),(b)に示すように、湾曲した形状のガス誘導板93を配した構成としてもよい。また、ガス誘導板50は、図11に示すように下端側が上端側(天板21側)よりもガス流通空間24を流れる燃焼ガスや空気の流れ方向下流側に傾斜した構成としてもよい。かかる構成とした場合であっても、高温ガス流通空間Hの上流側領域Uに流入した燃焼ガスを効率よく低温ガス流通空間L側に誘導し、ガス流通空間24内における燃焼ガスの温度ムラを解消できると共に、ガス流通空間24における燃焼ガスや空気の通風抵抗を抑制できる。従って、図10や図11に示すような構成とした場合は、二次熱交換器20における熱交換効率の向上に加えて、ガス流通空間24における通風抵抗の低下に伴う送風機11に作用する負荷および送風機11の動作音を最小限に抑制できる。
また、上記した熱源装置1は、二次熱交換器20のガス流通空間24内にガス誘導板50等を一枚だけ配した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図12に示すようにガス流通空間24の中央部分にガス誘導板50を配すると共に、ガス流通空間24の燃焼ガスのガス流れ方向下流側にガス誘導板50よりも小さなガス誘導板95を配した構成としてもよい。このようにガス流通空間24に多数のガス誘導板50等を配した構成とすれば、ガス流通空間24内の隅々に燃焼ガスや空気をより一層確実に行き渡らせることができ、二次熱交換器20における熱交換効率を向上させることができる。
また、上記したガス誘導板50等は、いずれも高温ガス流通空間Hおよび低温ガス流通空間Lの双方に配されるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図13に示すようガス誘導板96のように高温ガス流通空間H側にのみ配されるものであってもよい。かかる構成とした場合であっても、高温ガス流通空間H側の通風抵抗が低温ガス流通空間L側よりも高くなり、高温ガス流通空間Hに流入する燃焼ガスや空気をスムーズに低温ガス流通空間L側に誘導することができる。