JP2005337497A - 能動型制振器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小さな供給エネルギによって、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して有効な能動的制振効果を発揮し得る、新規な構造の能動型制振器を提供すること。
【解決手段】 制振対象10に取り付けられる取付部材12に対して、第一のマス部材14を弾性連結すると共に、該第一のマス部材14に追加マス部材16を弾性支持せしめることにより、少なくとも2自由度の振動系を構成する一方、取付部材12と第一のマス部材14の間に加振力を及ぼす加振手段22を設けて、第一のマス部材14に対して直接的に加振力を及ぼすと共に、追加マス部材16には、第一のマス部材14を介して間接的に加振力を及ぼすようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】 制振対象10に取り付けられる取付部材12に対して、第一のマス部材14を弾性連結すると共に、該第一のマス部材14に追加マス部材16を弾性支持せしめることにより、少なくとも2自由度の振動系を構成する一方、取付部材12と第一のマス部材14の間に加振力を及ぼす加振手段22を設けて、第一のマス部材14に対して直接的に加振力を及ぼすと共に、追加マス部材16には、第一のマス部材14を介して間接的に加振力を及ぼすようにした。
【選択図】 図1
Description
本発明は、制振対象に装着されて制振対象における振動を低減する制振器に係り、特に、加振手段を備え、積極的乃至は相殺的に振動を低減することの出来る能動型制振器に関するものである。
従来から、自動車の排気管やボデー等のように振動が問題となる部材において、その振動を低減する手段の一つとして、動的吸振器(ダイナミックダンパ)が知られている。また、近年では、より高度な制振効果を得るために、特開昭61−220925号公報や特開平3−292219号公報等に記載されているように、加振手段による加振力を利用することにより、制振対象における振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめる能動型の制振器が提案されている。ところが、能動型制振器によって有効な制振効果を得るためには、防振すべき振動に見合うだけの加振力を制振対象に及ぼす必要があることから、特に自動車ボデーのように大型で振動エネルギが大きい場合には、加振手段が大型化したり、加振のための消費エネルギが大きくなることが避けられないこととなり、十分な加振力が得られ難いために満足できる制振効果を得ることが出来ない場合もあった。
そこで、このような問題に対処するために、特開平6−235438号公報や特開平7−190139号公報等には、制振対象に取り付けられる取付部材に対してマス部材を弾性支持せしめて一つの振動系を構成すると共に、このマス部材に加振力を及ぼすことにより、振動系における共振作用を利用して、消費エネルギを抑えつつ、制振対象に大きな加振力を及ぼすようにしたものが提案されている。
しかしながら、このような共振作用を利用した従来の能動型制振装置では、制振対象に対して有効な加振力を及ぼすことの出来るのが、単一の振動系における固有振動周波数域に限られてしまい、それ以外の周波数域では、必ずしも有効な加振力を及ぼすことが出来ないという問題があったのであり、特に、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して防振効果が要求される自動車のボデー等においては、未だ、要求される防振性能を満足することが難しかったのである。
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、消費エネルギを抑えつつ、大きな加振力を生ぜしめて有効な能動的制振効果を得ることが可能であり、しかも、複数のまたは広い周波数域の振動に対して有効な制振効果を発揮せしめ得る、新規な構造の能動型制振器を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することのできる発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明は、制振対象に取り付けられる取付部材に対して、第一のマス部材を振動入力方向で相対変位可能に配設せしめて、それら取付部材と第一のマス部材を弾性的に連結すると共に、該第一のマス部材に対して、少なくとも一つの追加マス部材を振動入力方向で相対変位可能に配設せしめて、該追加マス部材を該第一のマス部材に対して弾性的に支持せしめることにより、複数の固有振動数を持つ振動系を構成する一方、前記取付部材と前記第一のマス部材の間に振動入力方向での相対的な加振力を及ぼす加振手段を設けた能動型制振器を、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた能動型制振器においては、制振対象に対して第一のマス部材と追加マス部材が連成的に弾性連結されて支持せしめられることによって、少なくとも2自由度の多自由度振動系が構成される。そして、加振手段によって第一のマス部材に及ぼされる加振力が、かかる多自由度振動系に伝達されて加振されることにより、多自由度の振動系を介して、取付部材ひいては制振対象に及ぼされることとなる。
それ故、多自由度振動系における複数の固有振動数を適当にチューニングすることにより、それら各固有振動数の周波数域において、振動系の共振作用に基づき、加振手段による加振力が増幅されて取付部材に及ぼされることとなる。それ故、各固有振動数を制振すべき振動に応じて適当にチューニングすることにより、加振手段への供給エネルギに対して、大きな加振力を制振対象に及ぼすことが出来るのであり、小型で消費エネルギの小さい加振手段によって有効な制振効果を得ることが可能となるのである。なお、本発明において、好適には、取付部材に対して第一のマス部材を介して追加マス部材が弾性的に連結されることにより全体として複数の固有振動数を持つ振動系が構成されるのであり、そこにおいて、加振手段により第一のマス部材に対して直接的に加振力が及ぼされると共に、追加マス部材に対して該第一のマス部材を介して間接的に加振力が及ぼされるようにされる。
なお、本発明において、複数の固有振動数のチューニングに際しては、例えば、各固有振動数を、それぞれ防振すべき異なる振動の各周波数にチューニングすることが有効であり、それによって、特に、防振すべき各振動の周波数が略一定で且つ比較的狭い場合には、効率的な制振効果が実現され得る。また、例えば、かかる複数の振動系における固有振動数の二つを、防振すべき一つの振動に対して低周波側と高周波側にずらせてチューニングすることも可能であり、それによって、特に、防振すべき一つの振動の周波数範囲が広い場合や、防振すべき振動の周波数が変動する場合に、効率的な制振効果を安定して得ることが可能となる。なお、防振すべき振動に対して低周波側と高周波側にずらせる固有振動数の範囲は、防振すべき振動特性等に応じて適宜に設定されるものであって特に限定されるものでないが、広い範囲で特に有効な制振効果を得るためには、二つの固有振動数を、低減目的の振動周波数中央値に対して、±20%以内で両側にそれぞれ振って設定することが望ましい。
また、本発明における加振手段としては、第一のマス部材に対して及ぼす加振力の周波数を調節することのできる、公知の各種のものが採用可能であるが、好適には、例えば、かかる加振手段として、取付部材と第一のマス部材の対向面間において、それら取付部材と第一のマス部材を弾性連結する弾性部材によって壁部の一部が構成された作用空気室と、該作用空気室に圧力変化を及ぼす圧力制御手段を含んで構成された空気圧式の加振手段が採用される。このような空気圧式の加振手段においては、作用空気室に及ぼす空気圧変化の周波数を調節することによって発生加振力の周波数を調節することが出来るのであり、制振器本体に特別な加振装置を組み込む必要がない等という利点がある。なお、作用空気室への空気圧変動の伝達は、例えば、電磁切換弁等を用いて、作用空気室を負圧源と大気中とに交互に切換接続すること等によって、有利に実現され得る。ここにおいて、好適には、圧力制御手段による圧力変化が、取付部材に設けられた通路を通じて作用空気室に及ぼされるようにされる。これにより、空気圧変動を及ぼす管路等が、加振による第一のマス部材や追加マス部材の変位に際して変形や変位することを回避できる。
或いはまた、本発明における加振手段としては、例えば、取付部材側に固設されたコイル部材と、第一のマス部材側に固設された磁石部材を含む電磁駆動手段によって構成されたものも、有利に採用され得る。このような電磁式の加振手段においては、コイル部材への通電を電気回路で制御することにより、発生加振力を高精度に制御することが出来るという利点がある。特に、コイル部材を取付部材側に固設したことにより、マス部材の変位に際しても給電用のリード線等が屈曲することがなく、優れた耐久性も確保され得るのである。
また、本発明において、第一のマス部材と追加マス部材の相対的な配設構造は、制振器の設置スペースや要求される制振特性等に応じて適宜に設計されるものであるが、例えば、取付部材と第一のマス部材を、振動入力方向で離間して対向配置せしめると共に、追加マス部材の一つを環状として、該環状の追加マス部材を、第一のマス部材に対して振動入力方向に直交する方向で外周側に離間して配設した構造が、有利に採用される。このようなマス部材の配設構造においては、第一のマス部材と環状の追加マス部材を、質量を有利に確保しつつ、優れたスペース効率で配設することが可能となる。また、このような環状の追加マス部材を採用すれば、例えば、第一のマス部材と追加マス部材の径方向対向面間にゴム弾性体を介在せしめることにより、それら第一のマス部材と追加マス部材を連結する弾性部材を、振動入力時における主たる変形が剪断で生ぜしめられるゴム弾性体で構成することも可能となるのであり、それによって、固有振動数の低周波側へのチューニング自由度も有利に確保される。
なお、本発明において、追加マス部材は、少なくとも一つあれば良く、例えば、複数ある場合には、本体マスに対して、各マス部材をそれぞれ独立して本体マス部材に弾性支持せしめることにより、それら複数のマス部材を本体マス部材に対して並列的に弾性支持せしめることも可能であり、或いは、本体マス部材に対して弾性支持せしめたマス部材に対して、更に他のマス部材を弾性連結することにより、複数のマス部材を本体マス部材に対して直列的に弾性支持せしめることも可能である。
また、本発明において、複数の固有振動数は、従来から公知の2自由度や多自由度の振動系における運動方程式を解くことによって求めることが出来ることから、かかる式に基づいてチューニングすることが可能である。
本発明に従う構造とされた能動型制振器においては、少なくとも2自由度の振動系が構成されることから、かかる振動系の共振作用に基づいて、複数のまたは広い周波数域の振動に対しても、能動的な制振効果を有効に且つ効率的に得ることが出来る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての能動型制振器8の全体概略構成が示されている。かかる制振器8は、自動車のボデー等の制振対象10に取り付けられる取付部材としての取付金具12に対して、第一のマス部材としての第一のマス金具14と、追加マス部材としての第二のマス金具16が、第一のゴム部材18と第二のゴム部材20によって弾性連結されており、全体として2自由度の振動系が構成されている。そして、取付金具12と第一のマス金具14の間に組み込まれた加振手段としての電磁式アクチュエータ22により、取付金具12と第一のマス金具14が相互に接近/離隔方向に相対変位せしめられて、制振対象10に加振力が伝達されることにより、制振対象10における振動を相殺的乃至は干渉的に抑制するようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、取付金具12は、それぞれ円板形状を有する第一の板金具24と第二の板金具26が重ね合わされて、固定ボルト27で相互に固定されることによって形成されている。また、第二の板金具26の中央部分には、第一の板金具24との重ね合わせ面に開口する収容凹所30が形成されており、この収容凹所30に頭部が収容されて軸方向下方に向かって脚部が突出せしめられた支持ボルト32によって、ガイドロッド34が固定されている。このガイドロッド34は、金属等の硬質材で形成されて、略一定断面形状で直線的に延びており、取付金具12の中心軸上で軸方向下方に向かって突設されていると共に、その突出先端部には、軸直角方向に広がるストッパ部36が一体形成されている。
また、第二の板金具26の下面中央には、軸方向外方に向かってスカート状に広がるボビン38が重ね合わされており、支持ボルト32で固定されたガイドロッド34によって、第二の板金具26に固定されている。そして、このボビン38は、合成樹脂等の電気絶縁材で形成されており、軸方向の突出先端部に設けられた円筒状部には、コイル40が巻回固着されている。
さらに、取付金具12を構成する第一の板金具24には、中央部分を軸方向に延びるボルト孔42が形成されており、このボルト孔42に螺着される取付ボルト28によって、取付金具12が制振対象10に対して固定的に取り付けられるようになっている。
一方、第一のマス金具14は、連結金具44とマスブロック46および永久磁石48を含んで構成されている。連結金具44は、円環ブロック形状を有しており、取付金具12に対して、径方向外方に離間して同軸上で且つ軸方向下方に所定量だけ偏倚して配設されている。そして、取付金具12を構成する第二の板金具26と連結金具44が、第一のゴム部材18で相互に連結されている。かかる第一のゴム部材18は、全体として略円環板形状乃至はテーパ付円筒形状を有しており、その小径側端部の内周面に対して取付金具12(第二の板金具26)の外周面が加硫接着されていると共に、その大径側端部の外周面に対して連結金具44の内周面が加硫接着されている。なお、第一のゴム部材18によって連結された第二の板金具26と連結金具44の対向面は、互いに斜め軸方向(第一のゴム部材18による連結方向)で対向する傾斜面とされている。
また、マスブロック46は、鉄等の強磁性材で且つ高比重材からなる材質により、大径の円形ブロック形状をもって形成されており、中心軸上には、軸方向に貫通するガイド孔50が形成されていると共に、このガイド孔50には、摺動ブッシュ52が組み込まれている。更にまた、マスブロック46には、径方向の中間部分を周方向に連続して延びて軸方向一方の側(図1中の上側)に開口する環状凹溝54が形成されており、この環状凹溝54に永久磁石48が挿入配置されて、環状凹溝54の外周側壁部の内面に固着されている。なお、永久磁石48は、周方向に全周に亘って連続していても、また、不連続であっても良い。そして、この永久磁石48には、内周面側と外周面側とに両磁極が設定されており、それによって、マスブロック46において、全体としてドーナツ形状の磁路が形成されていると共に、この磁路上に環状凹溝54が位置せしめられて全体として円筒形状の磁気ギャップが形成されている。
そして、かかるマスブロック46は、取付金具12に対して同一中心軸上で軸方向下方に離間して対向配置されており、該マスブロック46の対向面が、連結金具44に重ね合わされて連結ボルト58で固定されることにより、第一のゴム部材18を介して、マスブロック46が取付金具12に弾性連結されている。
なお、マスブロック46には、ガイド孔50の上端開口部の周りにおいて、取付金具12側に突出する円環形状の緩衝ゴム60が固設されており、この緩衝ゴム60を介して、マスブロック46が取付金具12側(ボビン38の底壁部)に当接することにより、取付金具12と第一のマス金具14の軸方向での接近方向の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。また、マスブロック46におけるガイド孔50の下端開口端部には、大径凹所62が形成されており、この大径凹所62内に、ガイドロッド34のストッパ部36が収容配置されている。そして、取付金具12に対して第一のマス金具14が離隔方向に大きく相対変位せしめられた際、ガイドロッド34のストッパ部36がマスブロック46の大径凹所62の底面に当接することによって、それら両金具12,14の相対変位量が制限されるようになっている。なお、大径凹所62の底面には、緩衝ゴム64が配されており、ガイドロッド34のストッパ部36が緩衝的に当接されるようになっている。
さらに、マスブロック46の外周側には、第二のマス金具16が配設されている。この第二のマス金具16は、全体として略厚肉の円筒形状を有しており、マスブロック46の径方向外方に離間して、マスブロック46と同一中心軸上に配設されている。なお、特に本実施形態では、第一のマス金具14と第二のマス金具16の質量が、互いに略同じになるように設定されている。また、マスブロック46の外周面と第二のマス金具16の内周面との径方向対向面間には、第二のゴム部材20が介装されている。この第二のゴム部材20は、厚肉の円筒形状を有しており、その内周面にマスブロック46の外周面が加硫接着されていると共に、その外周面に第二のマス金具16の内周面が加硫接着されている。これにより、第二のマス金具16が、マスブロック46に対して、第二のゴム部材20を介して、弾性的に連結支持せしめられている。なお、本実施形態では、第二のゴム部材20が、マスブロック46と第二のマス金具16を備えた一体加硫成形品として形成されている。
要するに、本実施形態では、取付金具12に対して、第一のマス金具14と第二のマス金具16が、第一のゴム部材18と第二のゴム部材20を介して、順次、直列的に弾性連結されているのであり、それによって、2自由度の振動系が構成されているのである。
また一方、マスブロック46の環状凹溝54には、取付金具12によって支持されたコイル40が挿入配置されており、環状凹溝54の内周側壁面と、永久磁石48で構成された環状凹溝54の外周側壁面との径方向対向面間で、軸方向に変位可能に配設されている。また、このコイル40には、図示しない給電用リード線を通じて、外部の制御装置から駆動電流が給電されるようになっており、コイル40に駆動電流が通電されることにより、コイル40とマスブロック46の間に電磁力が生ぜしめられ、以て、取付金具12と第一のマス金具14の間に対して、中心軸上での接近/離間方向の相対変位力が及ぼされるようになっている。特に、コイル40に通電する電流の方向を逆向きとすることによって、取付金具12と第一のマス金具14の間に及ぼされる相対変位力を逆向きとすることが出来るのであり、コイル40に交番電流を通電することによって、取付金具12と第一のマス金具14に対して軸方向の相対的な加振力が及ぼされるようになっている。要するに、本実施形態では、ボビン38に巻回されたコイル40と、マスブロック46に磁路を形成する永久磁石を含んで、第一のマス金具14に加振力を及ぼす電磁式アクチュエータ22が構成されているのである。
そして、このような構造とされた能動型制振器8は、前述の如く取付金具12を制振対象10に対して固定ボルト28で固定すること等によって、第一、第二のマス金具14,16の弾性変位方向(中心軸の方向)が、制振対象10における防振すべき振動方向(図1中の上下方向)に略一致する状態で装着される。
上述の如き構造とされた制振器10にあっては、コイル40に通電すると、コイル40と永久磁石48の磁界との間に生ぜしめられる電磁力に基づく軸方向の加振力が、第一のマス金具14に対して直接的に及ぼされると共に、第二のゴム部材20を介して第二のマス金具16に対して間接的に及ぼされることとなり、以て、第一及び第二のマス金具14,16と第一及び第二のゴム部材18,20からなる2自由度の振動系が強制加振されることとなる。ここにおいて、かかる振動系は、第一及び第二のマス金具14,16の各質量と、第一及び第二のゴム部材18,20における各ばね定数とから振動数方程式によって求められる2つの固有振動数を有していることから、それら各固有振動数に対応した周波数域で振動系を加振すると、振動系の共振作用によりマス金具14,16が大きく変位せしめられて大きな加振力が制振対象10に及ぼされるのであり、それ故、かかる振動系の固有振動数を制振対象10において制振すべき振動数域にチューニングすることにより、それらの固有振動数域では、小さな消費電力によって、制振対象10に対して有効な能動的制振効果を得ることが出来るのである。
特に、かかる制振器8においては、2自由度の振動系が構成されていることから、制振すべき振動に対するチューニングの自由度が大きく確保されて、有効な制振効果が容易に達成されることとなる。具体的には、例えば、二つの固有振動数を比較的近づけて設定すると、それら二つの固有振動数の間を含む広い周波数域において共振作用に基づく能動的制振効果の向上が実現され得るのであり、また、二つの固有振動数を比較的離して設定すると、離れた二つの周波数域においてそれぞれ共振作用に基づく能動的制振効果の向上が実現され得るのである。そこにおいて、前者の場合には、二つの固有振動数間での能動的制振効果の落ち込みを回避しつつ、出来るだけ広い周波数域で有効な制振効果を得るために、二つの固有振動数間を、低減目的の振動周波数中央値に対して、±20%以内で両側にそれぞれ振って設定することが望ましい。
なお、コイル40への通電を制御して電磁式アクチュエータ22を加振制御する制御装置としては、制振対象10の振動状態を検出する加速度センサ等の振動センサの検出信号に基づいて、その振動に対して有効な制振効果を発揮し得るように、検出信号に対応した駆動電流をコイル40に出力するものが採用される。例えば、予め設定されたデータに基づいて、検出信号の大きさに対応した大きさの駆動電流を、検出信号に対して所定の位相差で給電することによりフィードフォワード的に制御するものや、或いは、検出信号に含まれる制振対象10の振動値を可及的に零にするように駆動電流の大きさ等をフィードバック制御するもの等が好適に採用され得る。
因みに、本実施形態に従う構造とされた能動型制振器8について、正弦波外力による強制振動の加速度応答(変位応答乃至は共振倍率と同義)の周波数特性を測定した結果を、図2に示す。図中、実施例1は、二つの固有振動数を略35Hzと略105Hzに離してチューニングした場合であり、実施例2は、二つの固有振動数を相互に近づけて略30Hzと略40Hzにチューニングした場合である。また、比較例として、第一のマス金具14と第二のマス金具16を相互に剛結して相対変位不能とした単一マス構造の制振器について同様な試験を行なった結果を併せ示す。
かかる図2に示された結果からも明らかなように、本実施形態に従う構造とされた能動型制振器8においては、2自由度の振動系による共振作用が顕著に発現されるのであり、それ故、各固有振動数域での共振作用を利用することによって、広い周波数域や異なる周波数域の振動に対しても、能動的制振効果を効果的に得ることの出来ることが容易に理解されるところである。
また、本実施形態の制振器8においては、電磁式アクチュエータ22を構成するコイル40が、取付取付12に対して固設されており、制振対象10に対して相対変位不能に取り付けられていることから、振動系の加振に際してのコイル40への給電用リード線の変形が回避されるのであり、給電用リード線の繰り返し変形に起因する断線トラブルが防止されて、耐久性の向上も図られ得る。
次に、図3には、本発明の第二の実施形態としての能動型制振器70の全体概略構成が示されている。
本実施形態の制振器70は、第一の実施形態と同様、制振対象10に取り付けられる取付金具72に対して、第一のマス部材としての第一のマス金具74と、追加マス部材としての第二のマス金具76が、第一のゴム部材78と第二のゴム部材80によって弾性連結されており、全体として2自由度系の振動系が構成されている。そして、加振手段としての空気圧式アクチュエータ68によって、取付金具72と第一のマス金具74の間に、それらを相互に接近/離隔せしめる方向の相対変位力(加振力)が及ぼされることにより、制振対象10における振動を相殺的乃至は干渉的に抑制するようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図3中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、取付金具72は、薄肉の平板形状を有しており、外周縁部には、周方向に離間して複数個の取付孔82が形成されている。そして、この取付金具72は、制振対象10に重ね合わされて、取付孔82に挿通される固定ボルト84により、制振対象10に対して固定的に取り付けられるようになっている。また、取付金具72の中央には、貫通孔86が形成されており、この貫通孔86に対して円筒形状の給排ポート88が流体密に溶着固定されている。
また、第一のマス金具74は、金属等の高比重な剛性材によって中実のブロック形状をもって形成されており、特に、本実施形態では、厚肉円板形のブロック形状とされている。そして、この第一のマス金具74は、取付金具72の上方に離間して対向配置されている。
更にまた、これら取付金具72と第一のマス金具74の対向面間に第一のゴム部材78が配設されている。この第一のゴム部材78は、円環形状乃至は円筒形状を有しており、軸方向下端面が取付金具72に加硫接着されていると共に、軸方向上端面には、かしめ固定金具90が加硫接着されている。かかるかしめ固定金具90は、第一のゴム部材78の上端面に加硫接着された円環板形状の接着部92を有しており、また、接着部92の外周縁部には、軸方向上方に向かって延び出す円筒状部94が一体形成されている。そして、円筒状部94が第一のマス金具74に外挿されて、軸方向上端を径方向内方にかしめ加工されることにより、かしめ固定金具90が第一のマス金具74の外周縁部にかしめ固定されているのであり、これにより、第一のマス金具74の外周縁部と取付金具72の対向面間が第一のゴム部材78で連結されて、第一のマス金具74が取付金具72によって弾性支持せしめられている。
また、かしめ固定金具90は、第一のマス金具74に対して流体密に組み付けられており、以て、取付金具72と第一のマス金具74の対向面間には、外周壁部が第一のゴム部材78で構成されて、外部空間に対して密閉された作用空気室96が画成されている。そして、この作用空気室96には、給排ポート88を通じて外部エア管路98が接続されるようになっており、外部エア管路98上に配設された電磁式の切換弁100の切換作動に基づいて、作用空気室96が、負圧源と大気中とに交互に切換接続されるようになっている。而して、切換弁100の切換作動により作用空気室96に負圧と大気圧が交互に及ぼされて空気圧変動が生ぜしめられることにより、作用空気室96の壁部の一部を構成する第一のマス金具74に対して、取付金具72への接近/離隔方向の加振力が及ぼされて、第一のゴム部材78の弾性変形に基づいて、かかる第一のマス金具74が軸方向(図3中の上下方向)に加振変位せしめられるようになっているのである。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、作用空気室96と、該作用空気室96に空気圧変化を及ぼすための切換弁100等を含んで、空気圧式アクチュエータ68が構成されている。
さらに、第一のマス金具74の上方には、所定距離を隔てて第二のマス金具76が配設されている。この第二のマス金具76は、第一のマス金具74と同様に、金属等の高比重な剛性材によって中実のブロック形状をもって形成されており、特に、本実施形態では、第一のマス金具74よりも一回り小さな厚肉円板形のブロック形状とされている。そして、この第二のマス金具76は、第一のマス金具74の中心軸上で上方に離間して、対向配置されている。
また、これら第一のマス金具74と第二のマス金具76の対向面間には、第二のゴム部材80が配設されている。この第二のゴム部材80は、ブロック形状を有しており、軸方向下端面が第一のマス金具74の上面中央に加硫接着されていると共に、軸方向上端面が、第二のマス金具76の下面中央に加硫接着されている。これにより、第一のマス金具74の上端面と第二のマス金具76の下端面との対向面間が、第二のゴム部材80で連結されて、第一のマス金具74と第二のマス金具76が弾性連結されている。
要するに、上述の如き構造とされた能動型制振器70においては、取付金具72に対して、第一のマス金具74と第二のマス金具76が、第一のゴム部材78と第二のゴム部材80を介して、順次、直列的に弾性連結されているのであり、それによって、2自由度の振動系が構成されているのである。
そして、このような構造とされた能動型制振器70は、前述の如く取付金具72を制振対象10に対して固定ボルト84で固定すること等によって、第一、第二のマス金具74,76の弾性変位方向(中心軸の方向)が、制振対象10における制振すべき振動方向(図3中の上下方向)に略一致する状態で装着される。
従って、上述の如き構造とされた能動型制振器70においては、電磁切換弁100を、制振対象10において制振すべき振動に対応した周波数や位相で切換制御することにより、2自由度の振動系を強制加振することが出来るのであり、それによって、前記第一の実施形態と同様な効果が発揮されて、制振対象10に対して有効な能動的防振効果を得ることが出来るのである。
特に、本実施形態の能動型制振器70においては、空気圧の作用で第一,第二のマス金具74,76を加振することが出来ることから、特別な駆動力発生部材を制振器内部に組み込む必要がないのであり、能動型制振器70の構造の簡略化と製作性の向上が達成されるという利点がある。
なお、実施形態において、電磁式切換弁100の切換制御に際しては、第一の実施形態と同様、制振対象10において制振すべき振動に相関性のある信号や、制振対象10における振動の検出信号に基づいて、制振対象10の振動が可及的に低減されるように、従来から公知の各種のフィードバックやフィードフォワードの手法を用い、作用空気室96に及ぼされる空気圧変動に対して、制振対象10における制振すべき振動に対応した周波数や位相、更に必要に応じて大きさも与えるように調節される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
例えば、前記実施形態では、何れも、第一のマス部材(14,74)に対して、一つの追加マス部材(16,76)が弾性連結されていたが、二つ以上の追加マス部材を第一のマス部材に弾性連結することも、勿論可能である。また、二つ以上の追加マス部材を採用する場合には、第一のマス部材に対して、それぞれ、別の弾性部材を介して独立的に弾性連結することにより、複数の追加マス部材によって並列的な複数の振動系を形成することも可能であり、或いは、第一のマス部材に対して弾性連結された追加マス部材に対して別の追加マス部材を弾性連結することにより、複数の追加マス部材によって直列的な複数の振動系を形成しても良い。
また、第一のマス部材に対する追加マス部材の弾性連結位置や弾性連結構造は、何等限定されるものでなく、例えば、前記第二の実施形態に示された制振器70において、大径の円環形状乃至は円筒形状の第二のマス金具を採用し、該第二のマス金具を、第一のマス金具74の外周側に離間して外挿配置すると共に、それら第一のマス金具と第二のマス金具を、両マス金具の径方向対向面間に配設されたゴム弾性体によって弾性連結することも可能である。
更にまた、複数個のマス部材におけるそれぞれの質量は、全てのマス部材の平均質量の50〜150%の範囲内に設定することが望ましく、それにより、各固有振動数域において共振作用に基づく加振力の増大効果をより有効に得ることが出来、各固有振動数域で、何れも一層有効な防振効果を得ることが可能となる。
加えて、本発明は、自動車のボデー用の制振器の他、自動車の各種部材用の制振器等、或いは自動車以外の各種装置における能動型制振器として、何れも適用可能であることは、言うまでもない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
8,70 制振器
10 制振対象
12,72 取付金具
14,74 第一のマス金具
16,76 第二のマス金具
18,78 第一のゴム部材
20,80 第二のゴム部材
22 電磁式アクチュエータ
68 空気圧式アクチュエータ
10 制振対象
12,72 取付金具
14,74 第一のマス金具
16,76 第二のマス金具
18,78 第一のゴム部材
20,80 第二のゴム部材
22 電磁式アクチュエータ
68 空気圧式アクチュエータ
Claims (8)
- 制振対象に取り付けられる取付部材に対して、第一のマス部材を振動入力方向で相対変位可能に配設せしめて、それら取付部材と第一のマス部材を弾性的に連結すると共に、該第一のマス部材に対して、少なくとも一つの追加マス部材を振動入力方向で相対変位可能に配設せしめて、該追加マス部材を該第一のマス部材に対して弾性的に支持せしめることにより、複数の固有振動数を持つ振動系を構成する一方、前記取付部材と前記第一のマス部材の間に振動入力方向での相対的な加振力を及ぼす加振手段を設けたことを特徴とする能動型制振器。
- 前記取付部材に対して前記第一のマス部材を介して追加マス部材を弾性的に連結せしめて全体として複数の固有振動数を持つ振動系を構成する一方、前記加振手段により該第一のマス部材に対して直接的に加振力が及ぼされると共に、該追加マス部材に対して該第一のマス部材を介して間接的に加振力が及ぼされるようにした請求項1に記載の能動型制振器。
- 前記加振手段が、前記取付部材と前記第一のマス部材の対向面間において、それら取付部材と第一のマス部材を弾性連結する弾性部材によって壁部の一部が構成された作用空気室と、該作用空気室に圧力変化を及ぼす圧力制御手段を含んで構成されている請求項1又は2に記載の能動型制振器。
- 前記圧力制御手段による圧力変化が、前記取付部材に設けられた通路を通じて前記作用空気室に及ぼされるようになっている請求項3に記載の能動型制振器。
- 前記加振手段が、前記取付部材側に固設されたコイル部材と、前記第一のマス部材側に固設された磁石部材を含む電磁駆動手段によって構成されている請求項1又は2に記載の能動型制振器。
- 前記取付部材と前記第一のマス部材を、振動入力方向で離間して対向配置せしめると共に、前記追加マス部材の一つを環状として、該環状の追加マス部材を、該第一のマス部材に対して振動入力方向に直交する方向で外周側に離間して配設した請求項1乃至5の何れかに記載の能動型制振器。
- 前記複数の固有振動数の二つを、防振すべき一つの振動に対して低周波側と高周波側にずらせてチューニングした請求項1乃至6の何れかに記載の能動型制振器。
- 前記複数の固有振動数を、それぞれ防振すべき異なる振動の各周波数にチューニングした請求項1乃至6の何れかに記載の能動型制振器。
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Family Applications (1)
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JP2005142933A Withdrawn JP2005337497A (ja) | 2005-05-16 | 2005-05-16 | 能動型制振器 |
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-
2005
- 2005-05-16 JP JP2005142933A patent/JP2005337497A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20051117 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
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A761 | Written withdrawal of application |
Effective date: 20061226 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 |