JP2005336252A - 難燃性樹脂組成物とそれを用いた成形部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a1)エチレン・α−オレフィン、(a2)エチレン−酢酸ビニル、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体20〜96.5質量%、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0〜36.5質量%、(c)ポリプロピレン樹脂3〜50質量%、(d)不飽和カルボン酸で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0.5〜25質量%、を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(e)有機パーオキサイド0.001〜1質量部、(f)架橋助剤0.03〜2.5質量部、並びに金属水和物(B)50〜300質量部含有し、前記(A)の溶融温度以上で加熱・混練し、部分架橋されてなる難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
より詳しくは、本発明は、電気・電子機器の内部ないしは外部配線に使用される絶縁電線、電気ケーブル、電気コードや光ファイバ心線、光ファイバコードなどの被覆材として、または電源コード等のモールド材料、チューブ、シートとして好適な難燃性樹脂組成物およびそれを用いた配線材その他の成形部品に関し、加工後に架橋設備等の特殊な設備を必要とせずに耐熱性、柔軟性、耐外傷性、圧接加工性に優れた難燃性樹脂組成物であり、長時間高温下に保持されても揮発物質の発生がなく、特に、適切に処理されない状態での埋立、不適切な条件における燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害ガスの発生がなく、かつ、使用後のリサイクル処理に適し、環境問題に対応した難燃性樹脂組成物およびそれを用いた配線材その他の成形部品に関するものである。
このため、これらの配線材に使用される被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄し、埋立た場合には、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出したり、また不適切な条件において燃焼した場合には、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から有害ガスが発生したりすることがあり、近年、この問題が議論されている。
このため、環境に影響をおよぼすことが懸念されている有害な可塑剤や重金属の溶出や、排気ガス処理施設のない設備で燃焼した場合ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で被覆した配線材の検討が行われている。
これまでこれらの被覆材料の強度や耐外傷性を保持するために、一般的に不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂が使用されてきた。
しかしながら不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂を添加すると柔軟性が乏しくなったり、耐候性が低下したりする問題があった。
特許文献2では、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物が多量に含まれるため、硬く、引張伸びが低い、及び流動性が悪いという欠点があった。
(1)(a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)から選ばれる少なくとも一つの重合体20〜96.5質量%、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0〜36.5質量%、(c)ポリプロピレン樹脂3〜50質量%、並びに(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0.5〜25質量%(ただし成分(b)+成分(d)が37質量%以下であること)を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(e)有機パーオキサイド0.001〜1質量部、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.03〜2.5質量部、並びに金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が25質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも1/4が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練し、有機パーオキサイドの存在下で部分架橋されてなることを特徴とする難燃性樹脂組成物、
(2)前記架橋助剤(f)が、一般式
で表される(メタ)アクリレート系架橋助剤であることを特徴とする(1)項記載の難燃性樹脂組成物、
(3)前記金属水和物(B)が水酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)または(2)項記載の難燃性樹脂組成物、
(4)シランカップリング剤が、末端にビニル基、(メタ)アクロイル基、アミノ基、およびエポキシ基からなる群から選ばれた1種を有するシラン化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体、または光ファイバ素線または/および光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品、
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形部品、
(7)(a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(c)ポリプロピレン樹脂、(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(e)有機パーオキサイド、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤、並びに金属水和物(B)を同時に、前記樹脂成分(a)〜(f)の溶融温度以上で加熱・混練し、部分架橋処理することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、および、
(8)第一工程として(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(c)ポリプロピレン樹脂、(a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体、並びに(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(e)有機パーオキサイド、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤、並びに金属水和物(B)を、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練し、部分架橋処理することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法、
を提供するものである。
まず、本発明の難燃性樹脂組成物の各成分について説明する。
(A)熱可塑性樹脂成分
熱可塑性樹脂成分(A)とは、(a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(c)ポリプロピレン樹脂、並びに(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物からなる。ただし、上記(b)成分は、必要に応じて、含まないことができる。
本発明の(a1)成分としては、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いる。エチレン・α−オレフィン共重合体(a1)は、好ましくは、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EBR(エチレン・1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a1)としては、メルトフローレート(以下、MFRと記す)(ASTM D−1238)が0.5〜30dg/分のものが好ましい。
メタロセン触媒は、発明者の名前からカミンスキー触媒、またその重合活性点が単一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれており、高い重合活性を有しているものが商業化されている。シングルサイトのメタロセン触媒を用いて合成したエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子量分布と組成分布が狭いという特徴がある。
反面、メタロセン触媒を用いて合成したエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合、通常のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合と比べて、溶融粘度の上昇や溶融張力の低下がおこり、成形加工性に問題が生ずる。この点については、メタロセン触媒として非対称な触媒を用いて長鎖分岐を導入し(Constrained Geometory CatalysticTechnology)、または合成の際に2つの重合槽を連結することで分子量分布に2つのピークをつくる(Adavnced PerformanceTerpolymer)ことで、その成形加工性を改良したものもある。
本発明の(a2)成分としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)の少なくとも1種が用いられる。このうちさらに難燃性を向上させるためにはエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用するのが好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物中のベース樹脂に使用されるエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)はエチレンとプロピレンのゴム状共重合体である。ここでエチレン・プロピレン共重合体ゴムとはエチレン成分含量が通常40〜75質量%程度のものをいう。エチレン、プロピレン以外の第三成分として不飽和基を有する繰返し単位を重合体にもたせたエチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)もあるが本発明においては二重結合をもたないEPMを用いる必要がある。EPDMを用いた場合は、本発明の目的である優れた柔軟性と伸びが損なわれるためである。EPMは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
エチレン−プロピレン共重合体ゴムのムーニー粘度、ML1+4(100℃)は好ましくは10〜120、より好ましくは40〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は、得られるエラストマー組成物のゴム弾性が劣ることがある。また120を越えたものを用いると成形加工性が悪くなることがあり、特に成形品の外観が悪化する。
エチレン−プロピレン共重合体ゴム((a3)成分)の配合量は熱可塑性樹脂成分(A)中、0〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜35質量%である。また上限を超えると力学的強度の低下を招く。
ただし(a1)〜(a3)成分の合計が熱可塑性樹脂成分(A)中、20〜96.5質量%、好ましくは、30〜90質量%、さらに好ましくは40〜85質量%である。
本発明の成分(b)としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体の水素添加物であって、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、中でもスチレンが好ましい。
また、共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
芳香族ビニル化合物含有量は、(b)成分中60質量%以下が好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。この量が多すぎると柔軟性が著しく低下する。
本発明中、(b)成分の配合量は、熱可塑性樹脂成分(A)中、0〜36.5質量%、好ましくは0.5〜36質量部、より好ましくは1〜36質量部であり、(b)成分が上限を超えると硬くなったり、流動性の低いものになったりする。
本発明に用いることのできるポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体が挙げられる。
このうち、ランダム共重合体はプロピレン、エチレンなどのモノマーがランダムに共重合されたものであり、質量%表示で0.5〜10質量%の製品が一般的である。また、ブロック共重合体は結晶性ポリプロピレン成分とポリオレフィン系共重合ゴムとの混和物であり、質量%表示で0.5〜50質量%の製品が一般的である。なかでもゴムが多いものは、リアクターTPOとも呼ばれるものである。
加熱混練前に(A)に配合したポリプロピレン樹脂は、その後の加熱混練で、(e)成分の存在により熱分解して適度に低分子量化する。
ポリプロピレン樹脂のMFRが0.1dg/分未満では、熱処理後でもポリプロピレン樹脂の分子量が充分に低下せず、得られる樹脂組成物の成形性が悪くなることがあり、一方、MFRが10dg/分を越えると、低分子量となりすぎて、得られる樹脂組成物のゴム弾性が悪化することがある。
加熱混練後に配合する場合、ポリプロピレン樹脂のMFRが5dg/分未満では、得られる樹脂組成物の成形性が悪くなることがあり、MFRが200dg/分を越えると、得られる樹脂組成物のゴム弾性が悪化することがある。
不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物としては、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物及びランダム共重合体の水素添加物の不飽和カルボン酸またはその誘導体(以下、これらを併せて不飽和カルボン酸等という)による変性物が挙げられる。また、ここで、上記共重合体中、芳香族ビニル化合物成分と共役ジエン化合物成分は全体の60質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
(d)成分の配合量は(A)中、0.5〜25質量%、好ましくは1質量%以上かつ15質量%未満、より好ましくは1質量%以上かつ12質量%以下である。この(d)成分の配合量が上限を超えると引張伸びや柔軟性の低下、更には電線の押し出し特性が大幅に低下することがある。
本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
有機パーオキサイド(e)の配合量は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、0.001〜1.0質量部の範囲であり、好ましくは0.01〜0.5質量部である。有機パーオキサイドをこの範囲内に選定することにより、架橋が進みすぎることがないので、ブツも発生することなく押し出し性に優れた部分架橋組成物が得られる。
本発明の難燃性樹脂組成物またはそれに用いる熱可塑性樹脂成分(A)の製造においては、有機パーオキサイドの存在下で架橋助剤を介して成分(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b)、(d)との間で部分架橋構造を形成する。その際使用される架橋助剤としては、一般式
で表される(メタ)アクリレート系架橋助剤が挙げられる。ここで(メタ)アクリレート系架橋助剤とはアクリレート系およびメタアクリレート系架橋助剤をさす。具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートが挙げられる。
その他にもジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレートのような末端にアリル基を有するものを使用することができる。
本発明において用いられる金属水和物としては、特に限定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水和物は少なくとも一部がシランカップリング剤で処理されていることが必要であるが、表面処理されていない無処理の金属水和物や脂肪酸等他の表面処理剤で処理した金属水和物を適宜併用することができる。
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで表面の一部が前処理された水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに、さらにビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
さらに熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、50〜300質量部であるが、より好ましくは(i)金属水和物が50質量部以上100質量部未満の場合は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してその25質量部以上を、また(ii)金属水和物が100質量部以上300質量部以下の場合はその少なくともその1/2量をシランカップリング剤で前処理した金属水和物とすることにより、加えて耐外傷性に優れ、高強度で端末加工性に優れた材料、電線を得ることができる。
本発明において架橋度は、ゲル分率で好ましくは30〜45質量%、更に好ましくは40〜45質量%、である。
本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートが挙げられる。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2O3・3.5H2O)、FRC−600(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。またスズ酸亜鉛(ZnSnO3)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6)として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。
本発明においてホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛またはヒドロキシスズ酸亜鉛の配合量は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは2〜15質量部である。その量が少なすぎると難燃性向上の効果が発現せず、多すぎると力学的強度、特に伸びが低下し、電線としたときの外観が悪くなる。
添加する場合、シリコーン化合物は、熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部配合される。0.5質量部より少ないと難燃性や滑性に対して実質的に効果がなく、5質量部を越えると電線・コード・ケーブルの外観が低下したり、押出成形速度が低下し量産性が悪くなる場合がある。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。
成分(a)〜(d)、金属水和物(B)、並びに成分(e)及び成分(f)を加え、加熱混練する。混練温度は、好ましくは160〜240℃であり、混練温度や混練時間等の混練条件は、樹脂成分(a)〜(d)が溶融し、有機パーオキサイドが作用して必要な部分架橋が実現できるに十分な程度に、適宜設定できる。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散された難燃性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物を配線材の被覆材として使用する場合には、好ましくは押出被覆により、導体の外周に形成した少なくとも1層の前記本発明の難燃性樹脂組成物からなる被覆層を有すること以外、特に制限はない。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚線などの公知の任意のものを用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。
本発明の配線材においては、導体の周りに形成される絶縁層(本発明の難燃性樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが通常0.15mm〜5mm程度である。
架橋を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
化学架橋法の場合は、難燃性樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
またシートやチューブ等についても電線被覆と同様な方法で押し出し可能である。また電線と同様、化学架橋法や電子線架橋法により架橋を行ってもよい。
また、本発明の成形部品として、例えば電線部品等の射出成形品を得る場合は、シリンダー温度220℃程度、ヘッド温度230℃程度で射出成形可能である。射出成形装置としては通常のPVC樹脂等の成形に用いられている射出成形機を用いることにより、成形可能である。
本発明の光ファイバ心線は、用途によってはさらに周囲に被覆層を設けないでそのまま使用される。
図1は、光ファイバ素線1の外周に直接、難燃性樹脂組成物からなる被覆層2を設けた本発明の光ファイバ心線の一例の断面図である。
図2は、複数の抗張力繊維4を縦添えした1本の光ファイバ心線3の外周に被覆層5を形成した本発明の光ファイバコードの一例の断面図である。
図3は、2本の光ファイバ心線3および3の外周にそれぞれ複数の抗張力繊維4を縦添えし、さらにその外周に被覆層6を形成した本発明の光ファイバコード(光ファイバ2心コード)の一例の断面図である。
なお、数字は特に記載がない場合、質量部を示す。
また実施例2については有機パーオキサイド以外をドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて170℃で溶融混練りした後に、ペレット化を行った後に、有機パーオキサイドと共に2軸押し出し機により220℃にて混練りをして樹脂組成物を準備した。
得られた樹脂組成物を用い、1mm、3mm厚のシートを作成し、JIS K 6723に基づき、伸び(EL)、抗張力(T.S.)、硬度、比重を測定した。
また表2および3においては電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径:0.95mmφ錫メッキ軟銅撚線 構成:7本/0. 16mmφ)上に、あらかじめ溶融した絶縁被覆用の樹脂組成物を押出被覆して、各実施例、比較例に対応する外径0.98mmの絶縁電線を製造した。
引張特性は、各絶縁電線の絶縁体(被覆層)の強度(抗張力)(MPa)と破断伸び(%)を、標線間隔25mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。伸び(EL)は100%以上、強度(T.S.)は10MPa以上必要である。
耐候性はサンシャインウエザーメータにおいて2000時間暴露した後の伸び残率(EL残率)と引張強さ残率(T.S.残率)を示した。ブラックパネル温度63℃、降雨なしで評価した。
柔軟性試験は導体を抜いた後に電線を120mmに切断し、先端に20gのおもりをつけ電線部分100mmたわみ量を測定した。
(EVA(VA=33))
製造会社:三井デュポンポリケミカル
商品名:EV−170
種類:エチレン・酢酸ビニル共重合体;(a−2)成分
VA成分含有量:33質量%
MFR:1dg/分
(ME−PE(0.880))
製造会社:日本ポリエチレン
商品名:カーネルKF360
種類:メタロセンポリエチレン
MFR:3.5dg/分、密度:898kg/m3、コモノマー:ヘキセン−1
(B−PP)
製造会社:出光石油化学
商品名:150GK
種類:ブロックポリプロピレン
融点:160℃
MFR:0.6dg/分
(MAH−SEBS)
製造会社:クレイトンポリマージャパン社製
商品名:1901FX
種類:マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体
マレイン酸変性量:1.7質量%
スチレン含有量:28質量%
MFR 22dg/分(200℃/5kg)
(MAH−PE)
製造会社:三井化学
商品名:XE070
種類:マレイン酸変性ポリエチレン
融点:87℃、MFR:1.0dg/分、密度:910kg/m3
(SEPS)
製造会社:クラレ
商品名:SEPS4077
種類:SEEPS
スチレン含有量:30質量%
数平均分子量:260,000
重量平均分子量:320,000
(OIL)
製造会社:出光興産
商品名:ダイアナプロセスオイルPW−90
種類:パラフィンオイル
重量平均分子量: 540
芳香族成分の含有量: 0.1%以下
動的粘度(37.8℃):95cSt
流動点:−15℃
引火点(COC):270℃
(PE−WAX)
製造会社:堺化学株式会社
商品名:LBT−77
種類:ポリエチレン系ワックス
(B)成分
(キスマ5P)
製造会社:協和化学
商品名:キマス5P
種類:シランカップリング剤によりすでに表面処理された水酸化マグネシウム;
(T−111)
製造会社:チバスペシャルティケミカルズ
商品名:チヌビン111
種類:ヒンダードアミン光安定化剤
(P−25B)
製造会社:日本油脂
商品名:パーヘキサ25B
種類:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン; (e)成分
(NKエステル3G)
製造会社:新中村化学
商品名:NKエステル3G
種類:トリエチレングリコールジメタクリレート;(f)成分
(EP07P)
製造会社:JSR
商品名:EP07P
種類:エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPM)
エチレン成分含有量:73質量%
ムーニー粘度、ML1+4(100℃):70
(EL−45LX)
製造会社:三井デュポンポリケミカル
商品名:EV45LX
種類:エチレン酢酸ビニル共重合体(VA含有量45%)
MFR:2.5dg/分
2 被覆層
3 光ファイバ心線
4 抗張力繊維
5 被覆層
6 被覆層
Claims (8)
- (a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体20〜96.5質量%、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0〜36.5質量%、(c)ポリプロピレン樹脂3〜50質量%、並びに(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物0.5〜25質量%、(ただし成分(b)+成分(d)が37質量%以下であること)を含有する熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対して、(e)有機パーオキサイド0.001〜1質量部、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.03〜2.5質量部、並びに金属水和物(B)50〜300質量部の割合で含有し、前記金属水和物(B)は、
(i)前記金属水和物(B)が50質量部以上100質量部未満の場合は、前記熱可塑性樹脂成分(A)100質量部に対してシランカップリング剤で前処理された金属水和物が25質量部以上;
(ii)前記金属水和物(B)が100質量部以上300質量部以下の場合は、金属水和物(B)の少なくとも1/4が、シランカップリング剤で前処理された金属水和物である組成の混合物であって、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練し、有機パーオキサイドの存在下で部分架橋されてなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - 前記金属水和物(B)が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
- シランカップリング剤が、末端にビニル基、(メタ)アクロイル基、アミノ基、およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種を有するシラン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体、または光ファイバ素線または/および光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形部品。
- (a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体、(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(c)ポリプロピレン樹脂、(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(e)有機パーオキサイド、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤、並びに金属水和物(B)を同時に、前記樹脂成分(a)〜(f)の溶融温度以上で加熱・混練し、部分架橋処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
- 第一工程として(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物、(c)ポリプロピレン樹脂、(a1)エチレン・α−オレフィン共重合体、(a2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a3)エチレン・プロピレン共重合体ゴムの(a1)〜(a3)からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体、並びに(d)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物を加熱・混練して熱可塑性樹脂成分(A)を得た後に、第二工程でこの樹脂成分(A)と(e)有機パーオキサイド、(f)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤、並びに金属水和物(B)を、前記熱可塑性樹脂成分(A)の溶融温度以上で加熱・混練し、部分架橋処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
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