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JP2005334781A - 液滴吐出装置、液滴吐出方法、カラーフィルタ基板の製造方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器 - Google Patents

液滴吐出装置、液滴吐出方法、カラーフィルタ基板の製造方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器 Download PDF

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JP2005334781A JP2004157834A JP2004157834A JP2005334781A JP 2005334781 A JP2005334781 A JP 2005334781A JP 2004157834 A JP2004157834 A JP 2004157834A JP 2004157834 A JP2004157834 A JP 2004157834A JP 2005334781 A JP2005334781 A JP 2005334781A
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Abstract

【課題】 液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置についてヘッド間の吐出むらの発生を防止ないし抑制し、膜厚むらや塗布むらの少ない膜パターンを得ることが可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】 本発明の液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドH1a,H1b,H1cを備え、各ヘッドはそれぞれ同一方向に走査され、且つその走査方向と交わる方向に列状に配置されており、各ヘッドには複数のノズルが当該ヘッドの走査方向と交わる方向に列状に備えられ、隣合う第1ヘッドH1a及び第2ヘッドH1b同士が重なる領域において、各ヘッドのノズルが吐出状態にある第1ノズル群と非吐出状態にある第2ノズル群とに分割され、その分割位置は走査と共に当該重なり領域内で刻々と変化するものであり、且つ第1ヘッドH1aの分割位置の変化に伴って、第2ヘッドの分割位置H1bが変化することを特徴とする。
【選択図】 図11

Description

本発明は、液滴吐出装置、液滴吐出方法、カラーフィルタ基板の製造方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、電子機器に関するものである。
近年、有機蛍光材料等の発光材料をインク化し、このインクをインクジェット法により基体上にパターニングした後、これを乾燥させることで、例えば陽極及び陰極の間に発光材料からなる発光層が挟持された構造のカラー有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)を製造する技術が普及されている。ところで、このようなインクジェット法を用いて有機EL装置を製造する場合には、インクジェット装置のノズル毎、或いはヘッド毎で吐出特性が異なることが多く、そのバラツキに伴って有機EL装置の画素毎に膜厚むらが生じてしまう場合がある。そこで、例えば特許文献1には、複数回のヘッドの走査により1つの画素の発光層を形成する技術が開示されている。
特開2003−249355号公報
特許文献1のように、複数のノズルを備えたヘッドを、1つの画素に対して複数回に亘って走査することで、ノズルのバラツキを抑えることが可能となる。しかしながら、このような方法によりノズル間のバラツキは補正できたとしても、ヘッド間のバラツキを補正することは困難な場合が多い。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置についてヘッド間の吐出むらの発生を防止ないし抑制し、膜厚むらや塗布むらの少ない膜パターンを得ることが可能な液滴吐出装置、及び液滴吐出方法を提供することにある。また、異なる目的は、着色層パターンに膜厚むらや塗布むらが生じ難いカラーフィルタ基板の製造方法、或いは電気光学層パターンに膜厚むらや塗布むらが生じ難い電気光学装置の製造方法、さらには発光むらが生じ難い電気光学装置、表示むらが生じ難い電子機器を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドはそれぞれ同一方向に走査され、且つその走査方向と交わる方向に各液滴吐出ヘッドが列状に配置されており、前記列状に配置された各ヘッドのうち隣合う第1ヘッド及び第2ヘッドの境界部分において、各ヘッドの一部が走査方向に重なるように設けられる一方、各ヘッドには複数のノズルが当該ヘッドの走査方向と交わる方向に列状に備えられており、前記第1ヘッドと第2ヘッドとが重なる領域において、各ヘッドのノズルが有効吐出状態にある第1ノズル群と非有効吐出状態にある第2ノズル群とに分割され、その分割位置は走査と共に当該重なり領域内で刻々と変化するものであり、且つ前記第1ヘッドの分割位置の変化に伴って、前記第2ヘッドの分割位置が変化することを特徴とする。
このような液滴吐出装置を用いたとき、ヘッド間の吐出境界が非直線状となる吐出パターンが形成されるため、一直線状に吐出境界が形成される場合に比して、ヘッド間の吐出むらによって生じ得る影響を緩和することが可能となる。つまり、当該液滴吐出装置によって形成される膜において、スジ状の吐出むらが生じに難く、仮に生じたとしてもジグザグ状或いはランダム状のぼやけた状態の吐出むらとなるため、形成される膜の性質に対する影響を緩和することが可能となる。したがって、膜形成等に際し、生産性が高く、不良発生も少ない、非常に信頼性の高い液滴吐出装置を提供することが可能となる。
本発明の液滴吐出装置において、前記第1ヘッドは、その両端において有効吐出状態にある第1ノズル群と非有効吐出状態にある第2ノズル群との分割位置が走査と共に刻々と変化するものとされており、当該第1ヘッド内において有効吐出状態にある第1ノズル群の数を不変とすべく、一方の端部の分割位置の変化に伴って、他方の端部の分割位置が変化するものとされていても良い。この場合、走査期間中の液滴の吐出量が一定となるため、安定した吐出が可能となり、形成される膜パターンにおいても膜厚むらや塗布むらが生じ難いものとなる。
前記液滴吐出ヘッドは、それぞれ長手状に形成され、且つその長手方向が走査方向に対して所定の傾斜角をなすように配置されているものとすることができる。この場合、隣合うノズルから吐出される吐出パターンの間隔を狭くすることが可能となり、また、より省スペースでヘッド間ピッチと吐出対象のパターンのピッチ(例えば画素間ピッチ)を合わせることが可能となり、且つそのスペースの中で第1ヘッドと第2ヘッドとの間における分割位置の連動変化を容易に構成することが可能となる。
前記液滴吐出ヘッドは、複数回の走査を往復して行うものであって、走査方向の所定位置における前記第1ヘッドの前記分割位置が、各回の走査毎に異なるものとすることができる。この場合、一層ヘッド間の吐出むらが生じ難くなり、ひいては膜厚むらや塗布むらが一層生じ難いものとなる。
また、上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出方法は、複数の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法であって、前記液滴吐出ヘッドはそれぞれ同一方向に走査され、且つその走査方向と交わる方向に各液滴吐出ヘッドが一列に配置されており、前記一列に配置された各ヘッドのうち隣合う第1ヘッド及び第2ヘッドからの吐出液滴に基づき形成される第1パターン及び第2パターンについて、これら第1パターン及び第2パターンの境界線が前記液滴吐出ヘッドの走査方向に沿ってジグザグとなるように、前記液滴吐出ヘッドを駆動することを特徴とする。このような方法によると、隣合うヘッド間の吐出むらの発生を防止ないし抑制することが可能となり、仮に吐出むらが生じたとしても、ジグザグ状或いはランダム状のぼやけた状態の吐出むらとなるため、形成される膜の性質に対する影響を緩和することが可能となる。
次に、上記課題を解決するために、本発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、複数色の着色層を所定パターンで複数備えるカラーフィルタ基板の製造方法であって、前記各着色層のパターンを上記液滴吐出装置を用いて形成することを特徴とする。このような製造方法によると、色むらの少ない信頼性に優れたカラーフィルタ基板を提供できるようになる。
また、上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の製造方法は、複数種の電気光学層を所定パターンで複数備える電気光学装置の製造方法であって、前記各電気光学層のパターンを上記液滴吐出装置を用いて形成することを特徴とする。このような製造方法によると、電気光学特性に優れた信頼性の高い電気光学装置を提供できるようになる。なお、電気光学層として有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を上記方法によりパターニングし、これを有機EL装置として用いた場合には、発光むらの少ない信頼性の高い有機EL装置を提供することができる。
次に、本発明の電気光学装置は、上記製造方法により得られたことを特徴とし、また本発明の電子機器は、該電気光学装置を例えば表示部として備えることを特徴とする。このような電気光学装置及び電子機器は信頼性の高い、例えば表示特性に優れた電子機器となる。
以下、本発明の電気光学装置の一実施形態としての有機EL装置について、及びその有機EL装置の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す説明図であって、図2は、本実施形態の有機EL装置の平面模式図、図3は、本実施形態の有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
(有機EL装置)
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、画素領域Pが設けられている。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
本実施形態の有機EL装置は、図3に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10が構成される。
基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、図2に示すように、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。なお、表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であり。
また、非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。表示領域2aの両側には、前述の走査側駆動回路105、105が配置されている。更に、走査側駆動回路105、105の両側には、走査側駆動回路105、105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
図3の断面構成図には、3つの画素領域Aが図示されている。本実施形態の有機EL装置では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
尚、上記陰極12として、透明な材料を用いるならば、陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを挙げることができる。
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiOやSiO等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図3に示すように、下部開口部112cより間口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図3に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が行われる。
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、図2に示したように、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。
無機物バンク層の第1積層部112e上に不均一な厚さの周縁部110a2が形成されているため、周縁部110a2が第1積層部112eによって画素電極111から絶縁された状態となり、周縁部110a2から発光層110bに正孔が注入されることがない。これにより、画素電極111からの電流が平坦部112a1のみに流れ、正孔を平坦部112a1から発光層110bに均一に輸送させることができ、発光層110bの中央部分のみを発光させることができるとともに、発光層110bにおける発光量を一定にすることができる。
また、無機物バンク層112aが有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に延出されているので、この無機物バンク層112aによって画素電極111と平坦部110a1との接合部分の形状をトリミングすることができ、各発光層110b間の発光強度のばらつきを抑えることができる。
更に、画素電極111の電極面111a及び無機物バンク層の第1積層部112eが親液性を示すので、有機EL層110が画素電極111及び無機物バンク層112aに均一に密着し、無機物バンク層112a上で有機EL層110が極端に薄くならず、画素電極111と陰極12との短絡を防止できる。
また、有機物バンク層112bの上面112f及び上部開口部112dの壁面が撥液性を示すので、有機EL層110と有機物バンク層112bとの密着性が低くなり、有機EL層110が開口部112gから溢れて形成されることがない。
尚、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
また、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もある。なお、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム上にSiO、SiO、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
図3に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。なお、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)により行われる。
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。なお、基板2には、薄膜トランジスタ123や第1層間絶縁層144を備えた回路素子部14、さらには画素電極111等が予め形成されている。
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図4に示すように、基板上の所定の位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO、TiO等の無機材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後、無機材料膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部を有する形にて形成される。この開口部は、画素電極111の電極面111aの形成位置に対応するもので、図4に示すように下部開口部112cとして設けられる。なお、このとき、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより発光層110の平面的な発光領域が制御される。
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図4に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。上部開口部112dは、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に設けられる。
上部開口部112dは、図4に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。
これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
また、有機物バンク層112bの厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。このような範囲とする理由は以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層110bが上部開口部112dから溢れてしまうおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、上部開口部112dにおける陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
さらに、形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましく、具体的にはバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。
まず、画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたOプラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このOプラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。
次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCFプラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、4フッ化メタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、ここで、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともあり、つまり画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
インクジェットによる製造方法は以下の通りである。
すなわち、図5に示すように、インクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を吐出する。ここではインクジェットヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、インクジェットヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降のインクジェットヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
インクジェットヘッドによる吐出は以下の通りである。
すなわち、インクジェットヘッドH1に形成された吐出ノズルH2を電極面111aに対向させて配置し、ノズルH2から液状組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aにインクジェットヘッドH1を対向させ、このインクジェットヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された液状組成物の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
上記の液状組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
吐出された組成物の液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
電極面111a上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。
インクジェットヘッドの構造については、図14に示すようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板とインクジェットヘッドの配置に関しては図15のように配置することが好ましい。
図14中、符号H7は前記のインクジェットヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数のインクジェットヘッドH1が備えられている。
インクジェットヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、このインクジェットヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図14では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
また図15に示すインクジェット装置において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動可能で、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転可能となっており、インクジェットヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、インクジェットヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。また、傾き角度調整することにより、どのような画素ピッチに対しても対応させることができる。
図15に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。なお、図14に示すヘッドH及び図15に示すインクジェット装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるものである。
以下、上記インクジェットヘッドの走査態様及び吐出態様について説明する。
図11は、基板2上に形成された吐出領域132を平面的に示す説明図であって、該吐出領域132上をインクジェットヘッドH1(ここでは、3つのヘッドH1a,H1b,H1cを示す)が走査するときの吐出態様を示した説明図である。また、図16は、走査に伴って各ヘッドH1a,H1b,H1cの吐出ノズル位置が変化していく態様((a)〜(c))を示した説明図である。なお、図17は、従来の吐出態様を示した説明図である。
図11に示したように、各ヘッドH1a,H1b,H1cの並列方向と交差する方向に、該ヘッドH1a,H1b,H1cが走査する。このような走査を行う場合、例えば図17に示すように単に複数のヘッドH1a,H1b,H1cを並列させ、各ヘッドH1a,H1b,H1cのノズルから一律に吐出を行うのみでは、各ヘッドH1a,H1b,H1c間において、一直線状の吐出むらMが生じ、これが原因で形成される正孔注入/輸送層に一直線状の膜厚むらや塗布むらが生じる場合がある。このような一直線状の膜厚むらや塗布むらを有する有機EL装置においては、これに起因する発光むらが生じ、その結果、スジ状の表示むらが視認される不具合が生じる場合がある。
しかしながら、本実施の形態では走査と共に吐出されるノズルの位置をずらしていくものとしているため、図11に示すように吐出むらMがジグザグ状(好ましくはランダム状ないし非直線状)に生じ、その結果、上記のようなスジ状の表示むらが視認される不具合発生を防止ないし抑制することができるようになる。つまり、図16に示すように、ヘッドH1a,H1b,H1cが(a)〜(c)に順を追って走査する際に、各ヘッドH1a,H1b,H1cにおいて有効に吐出が行われる有効ノズル群H21の位置が、段階式或いは無段階式にシフトしていくものとされているため、吐出むらが直線状となることはないのである。
具体的には、各ヘッドH1a,H1b,H1cの両端において、隣接するヘッド同士が重なっており、その重なり領域において、各ヘッドH1a,H1b,H1cのノズルが吐出状態にある有効ノズル群H21と、非吐出状態にある非有効ノズル群H22とに分割されている。そして、その分割位置が、走査と共に重なり領域内で刻々と変化し、例えば第1ヘッドH1aの分割位置の変化に伴って、第2ヘッドH1bの分割位置が変化するものとされている。なお、現に吐出が行われる有効ノズル群H21における総ノズル数と、現に吐出が行われない非有効ノズル群H22における総ノズル数とは、走査する過程において不変なものとなっている。
本実施形態では、各ヘッドH1a,H1b,H1cとして長手状のものを用い、その長軸方向を走査方向に対して所定の角度だけ傾斜させているが、例えば図12に示すように、走査方向に対して略直交するように各ヘッドH1a,H1b,H1cを配設するものとしても良い。また、吐出領域132内を複数回往復して走査を行う場合に、図13に示すように、先の走査時の吐出態様(a)に対し、後の走査時の吐出態様(b)を異ならせることもできる。具体的には、(a)及び(b)の通り、走査方向の所定位置における第1ヘッドH1aの有効ノズルと非有効ノズルとの分割位置が、各回の走査毎に異なっている。
以上のような材料塗布工程を行った後、図6に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図6に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される態様であっても構わない。
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
上記の正孔注入/輸送層形成工程では、吐出された組成物の液滴110cが、下部、上部開口部112c、112d内に満たされる一方で、撥液処理された有機物バンク層112bで液状組成物がはじかれて下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。これにより、吐出した組成物の液滴110cを必ず下部、上部開口部112c、112d内に充填することができ、電極面111a上に正孔注入/輸送層110aを形成することができる。
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程とからなる。
前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
図7に、インクジェットにより発光層形成用材料を含む液状組成物の吐出工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液(液状組成物滴110e)が吐出ノズルから吐出され、この液状組成物滴110eを正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
本実施形態では、上記液状組成物滴110eの配置に続けて、他の発光層用の液状組成物の吐出を行う。つまり、図8に示すように、基板2上に滴下された液状組成物滴110eを乾燥させることなく、液状組成物滴110f及び110gの吐出配置を行うようになっている。このように各色の発光層110b1〜110b3を形成するための液状組成物滴110e〜110gの滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物滴110e〜110gの配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e〜110fの配置を行えるようにしてもよい。
図8に示すように、吐出された各液状組成物110e〜110gは、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物滴110e〜110gが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物滴110e〜110gで濡れることがなく、液状組成物滴110e〜110gが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度等により決定される。また、当該発光層形成工程においても、正孔注入/輸送層の形成工程と同様、図11及び図16に示したようなヘッド走査により吐出が行われる。
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いるものとしている。
次に、上記各色用の液状組成物110e〜110gを所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1〜110b3が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110e〜110gに含まれる溶媒が蒸発し、図9に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図9においては赤、緑、青に発光する発光層が1つずつ図示されているが、図1やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(各色に対応)が形成されている。
また、発光層の液状組成物の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体的例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
次いで、上記真空乾燥が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
なお、前記発光層形成材料吐出工程に先立ち、正孔注入/輸送層110aの表面を表面改質するために表面改質工程を行うものとしても良い。
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な溶媒を用いるものとするのが好ましい。しかし、その一方で正孔注入/輸送層110aは、溶媒に対する親和性が低いため、溶媒を含む液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出しても、正孔注入/輸送層110aと発光層110bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層110bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層110aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うことが好ましい。
表面改質工程は、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒である表面改質材を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法又はディップ法により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行うことができる。ここで用いる表面改質材としては、液状組成物の溶媒と同一なものとして例えば、シクロへキシルベンゼン、イソプロピルビフェニル、トリメチルベンゼン等を例示でき、液状組成物の溶媒に類するものとして例えば、テトラメチルベンゼントルエン、トルエン、キシレン等を例示できる。
(4)陰極形成工程
次に、図10に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層した構成の陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO、SiN等の保護層を設けても良い。
(5)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
以上のような製造方法によると、インクジェット装置を用いた液滴吐出の際に、隣合うヘッドH1aとヘッドH1bとの吐出境界が非直線状となる吐出パターンが形成されるため、一直線状に吐出境界が形成される場合に比して、ヘッド間の吐出むらによって生じ得る影響を緩和することが可能となる。
つまり、当該インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって形成される膜において、スジ状の吐出むらが生じに難く、仮に生じたとしてもジグザグ状或いはランダム状のぼやけた状態の吐出むらとなるため、形成される膜の性質に対する影響を緩和することが可能となる。その結果、光学特性に優れた有機EL装置を製造することが可能となる。
本実施の形態では、有機EL装置、及びその製造方法について説明したが、本発明は、複数色の色材層が配列形成されたカラーフィルタ基板の製造方法や、有機TFT等の半導体デバイスを含むデバイスの製造方法にも適用することができ、これらの本発明のカラーフィルタの製造方法やデバイスの製造方法においても、形成する色材層や機能層の平坦性を向上させる効果を得ることができるのは勿論である。
(電子機器)
図18は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。このように本実施形態に係る有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な発光特性を得ることができる。
本実施形態の有機EL装置の回路図。 同、平面構成図。 同、表示領域の断面構成図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 実施形態に係る製造方法を説明する工程図。 ヘッドの走査態様と液滴の吐出態様とを示す説明図。 図11と異なるヘッドを用いた場合の走査態様及び吐出態様を示す説明図。 走査態様及び吐出態様の一変形例を示す説明図。 実施形態に係るヘッドの平面構成図。 実施形態に係るインクジェット装置の平面構成図。 ヘッド内の吐出ノズルの位置を示す説明図。 従来の走査態様及び吐出態様を示す説明図。 電子機器の一例を示す斜視図。
符号の説明
2…基板、110…有機EL層(電気光学層)、110a…正孔注入/輸送層、110b…発光層、111…画素電極、112…バンク部(隔壁部)、112a…無機物バンク層(第1隔壁部)、112b…有機物バンク層(第2隔壁部)、112e…第1積層部(突出部)、H1…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)、H1a…インクジェットヘッド(第1ヘッド)、H1b…インクジェットヘッド(第2ヘッド)、H2…ノズル、H21…有効ノズル群(第1ノズル群)、H22…非有効ノズル群(第2ノズル群)

Claims (9)

  1. 複数の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置であって、
    前記液滴吐出ヘッドはそれぞれ同一方向に走査され、且つその走査方向と交わる方向に各液滴吐出ヘッドが列状に配置されており、
    前記列状に配置された各ヘッドのうち隣合う第1ヘッド及び第2ヘッドの境界部分において、各ヘッドの一部が走査方向に重なるように設けられる一方、
    各ヘッドには複数のノズルが当該ヘッドの走査方向と交わる方向に列状に備えられており、前記第1ヘッドと第2ヘッドとが重なる領域において、各ヘッドのノズルが有効吐出状態にある第1ノズル群と非有効吐出状態にある第2ノズル群とに分割され、その分割位置は走査と共に当該重なり領域内で刻々と変化するものであり、且つ前記第1ヘッドの分割位置の変化に伴って、前記第2ヘッドの分割位置が変化することを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 前記第1ヘッドは、その両端において有効吐出状態にある第1ノズル群と非有効吐出状態にある第2ノズル群との分割位置が走査と共に刻々と変化するものとされており、当該第1ヘッド内において有効吐出状態にある第1ノズル群の数を不変とすべく、一方の端部の分割位置の変化に伴って、他方の端部の分割位置が変化することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記液滴吐出ヘッドは、それぞれ長手状に形成され、且つその長手方向が走査方向に対して所定の傾斜角をなすように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記液滴吐出ヘッドは、複数回の走査を往復して行うものであって、走査方向の所定位置における前記第1ヘッドの前記分割位置が、各回の走査毎に異なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
  5. 複数の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法であって、
    前記液滴吐出ヘッドはそれぞれ同一方向に走査され、且つその走査方向と交わる方向に各液滴吐出ヘッドが一列に配置されており、前記一列に配置された各ヘッドのうち隣合う第1ヘッド及び第2ヘッドからの吐出液滴に基づき形成される第1パターン及び第2パターンについて、これら第1パターン及び第2パターンの境界線が前記液滴吐出ヘッドの走査方向に沿ってジグザグとなるように、前記液滴吐出ヘッドを駆動することを特徴とする液滴吐出方法。
  6. 複数色の着色層を所定パターンで複数備えるカラーフィルタ基板の製造方法であって、
    前記各着色層のパターンを請求項1ないし4の液滴吐出装置を用いて形成することを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
  7. 複数種の電気光学層を所定パターンで複数備える電気光学装置の製造方法であって、
    前記各電気光学層のパターンを請求項1ないし4の液滴吐出装置を用いて形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法により得られたことを特徴とする電気光学装置。
  9. 請求項8に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
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