JP2005331440A - 光位相分布測定方法及び測定システム - Google Patents
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Abstract
特別な測定装置を用いることなく、簡便に測定可能な光強度分布の情報から光位相分布を同定することによって光位相分布を測定できるようにした光位相分布測定方法及び測定システムを提供する。
【解決手段】
異なる複数の光学特性が既知の光学系と光波検出センサーとを備える光位相分布測定システムを用いて、被測定光の強度分布を測定する強度分布測定ステップと、強度分布測定ステップで得られた前記強度分布と前記各光学系の光学特性とに基づいて、前記光位相分布測定システムの観測方程式を設定する観測方程式設定ステップと、前記観測方程式から被測定光の位相分布を同定する位相分布同定逆問題を設定する位相分布同定逆問題設定ステップと、設定された前記位相分布同定逆問題を非線形の最適化問題として定式化する最適化問題定式化ステップと、前記最適化問題を解くことで、前記被測定光の位相分布を同定する位相分布同定ステップとを有する。
【選択図】 図2
Description
ケイ.エイ.ヌージェント(K.A.Nugent),デイ.パガニーニ(D.paganin),ティー.イー.グリエーフ(T.E.Gureyev)共著,「フェイズ オデッセイ(A Phase Odyssey)」、フィジクス トゥデイ(Physics Today),第54巻,第8号,2001年,p27−32 エル.エイ.トンプスン(L.A.Thompson)著,「アダプティブ オプティクス イン アストロノミー(Adaptive Optics in Astronomy)」,フィジクス トゥデイ(Physics Today),第47巻,第12号,1994年,p24−31 三好隆志 著,「光応用ナノインプロセス計測技術の最新動向」,機械の研究,第54巻,第9号、2002年,p928−933 「光測定器ガイド」,オプトロニクス社,1998年 高田元弘 著,「干渉計によるレーザ光の波面収差測定」,光アライアンス,第2版、2001年,p19−22 ダブリュー.エイチ.サウスウェル(W.H.Southwell)著,「ウェイブ フロント エスティメイション フロム ウェイブフロント スロープ メジャーメント(Wave front estimation from wavefront slope measurements)」,ジェイ. オーピーティー. エスオーシー. エイエム.(J.Opt.Soc.Am.),第70巻,第8号,1980年,p998−1005 アール.アーウォン(R.Irwan),アール.ジー.レイン(R.G.Lane)共著,「アナリシス オブ オプティマル セントロイド エスティメイション アプライド トゥー シャック ハートマン センシング(Analysis of optimal centroid estimation applied to Shack-Hartmann sensing)」,アプライド オプティクス(Applied Optics),第38巻,第32号,1999年,p6737−6743 イリット ラス(ILIT RAS),「シャック−ハートマン ウェイブフロント センサー フォア レーザ ビーム アナリシス(Shack-Hartmann Wavefront Sensor for Laser Beam Analysis)」、インターネット<http://www.laser.ru/adopt/Science/sens/sensor.htm> 谷田貝豊彦 著,「光とフーリエ変換」,朝倉書店,1992年 吉村武晃 著,「光情報工学の基礎」,コロナ社,2000年 矢部・八卷 共著,「非線形計画法」,朝倉書店,1999年
<1>数理モデル
まず、本発明において使用される、光波や光位相分布測定系の数理モデルについて説明する。
<1−1>光波の数理モデル
本発明において、位相分布測定の対象とする光(つまり、被測定光)が、例えばレーザ光などに代表されるような、単一の波長成分を持つ単色光で、且つ、異なる時刻における位相が常に一定の相関関係を持つ時間的にコヒーレントな光であることを前提とする。
<1−1−1>光波の複素数表示
光は電磁波の一種であり、電場、磁場が振動しながら伝搬する波である。電場E、磁場H、誘電率ε、透磁率μを関係づけるマックスウェルの方程式は,下記数1、数2、数3及び数4といった4つの式から構成される。
<1−1−2>光波の離散表示
後述するように、本発明では、光位相分布測定系において、被測定光を検出するための光波検出センサーとして、CCD撮像素子(以下、単にCCDとも呼ばれる)を用いることが好ましい。光波検出センサー(本実施形態では、CCD)により、検出されて画像として測定されるのは、被測定光の強度、すなわち、上述した複素振幅の絶対値である。測定された強度の空間分布は、二次元の離散配列で与えられるが、本発明では、光波を表す複素振幅の分布を取扱う場合に、図1に示されるような複素数の二次元配列を離散的に一次元に並べ換え、下記数14で表される複素数ベクトルvで表現する。
<1−2−1>光位相分布測定系
光位相分布測定系は、光学特性が既知である複数(少なくとも2つ以上)の異なる光学系と光波検出センサーとから構成される。光位相分布測定系の光波検出センサーとしては、CCD撮像素子を用いるのが好ましいが、それに限定されることなく、他のセンサーを用いても良い。なお、本実施形態において、光波検出センサーとしては、CCDを用いる。
<1−2−2>光学系による光波の変換の数理モデル
本発明の光位相分布測定系に適用できる光学系は、光学特性が既知であれば、どのようなものでも構わない。簡単に利用できるものとして、例えば、レンズ、レンズの焦点はずれ、瞳関数の異なるレンズ、回折格子、空気中の回折(即ち、光学系を介さず直接入射させること)などの光学系が挙げられる。
<A>回折系による光波の変換の数理モデル
図3に示すように、xy面内に光波の複素振幅分布g(x,y)が局在しており、z軸方向に距離Rだけ伝搬した後のXY面内の複素振幅分布f(X,Y)とする。このとき、距離Rが波長に比べ十分大きく、回折波がz軸近傍に存在する場合を考えると、下記数17のような光波の伝搬前後の関係を表すフレネル回折の式を得る。
<B>結像レンズ系による光波の変換の数理モデル
図4に示すように、xy面内に光波の複素振幅分布g(x,y)が局在しており、距離lだけ伝搬後、レンズを透過し、再び距離rだけ伝搬した後のXY面内の複素振幅分布をf(X,Y)とする。
<C>回折格子による光波の変換の数理モデル
図6に示すように、xy面内に光波の複素振幅分布g(x,y)が局在しており、距離lだけ伝搬後、回折格子を透過し、再び距離rだけ伝搬した後のXY面内の複素振幅分布をf(X,Y)とする。
<2>光位相分布測定方法(以下、位相分布同定手法とも呼ばれる)
以下では、位相分布同定逆問題を設定し、具体的な位相分布同定手法について説明する。
<2−1>位相分布同定逆問題の設定
<2−1−1>光位相分布測定系の観測方程式
入力光(つまり、被測定光)gをn個に離散化し、g∈Cn、異なるk個の光学系を通過後の光をそれぞれm個に離散化しf1,f2,…,fk∈Cm、これらの光学系による変換マトリックスをそれぞれ[H1],[H2],…,[Hk]∈Cm×nとする。また、光波検出センサーであるCCDにより測定された強度分布を
とすると、光位相分布測定系の観測方程式は、下記数43、数44のように書くことができる。
として与えられる、つまり、測定量であることを表す。ここで、既知量は、光学系の光学特性を表す複素数マトリックス[H]、および測定強度を表す絶対値ベクトル
であり、未知量は、被測定光を表す複素数ベクトルgと検出光を表す複素数ベクトルfである。
を観測量とし、光位相分布測定系の観測方程式を満足する被測定光の複素数ベクトルgを同定する位相分布同定逆問題を解くこととなる。
<2−1−2>最適化問題
上記数43と数44で表す、光位相分布測定系の観測方程式を満たす入力光(つまり、被測定光)gを求めるのが、本発明の光位相分布測定方法の目的となるが、これらの方程式系は、非線形方程式のため、直接解を求めるのは困難である。
<2−2>最適化の手法
この最適化問題の数値解法および、具体的な先験情報の利用法については、以下のように説明する。
<2−2−1>準ニュートン法
本実施形態では、光位相分布測定方法において、上記数46で表す目的関数の最小化をするにあたり、最適化問題に対する数値解法の中で、非特許文献11に開示されている『準ニュートン法』を用いる。
ステップ1 初期設定
近似解の初期点x0、正定値対称な初期行列B0を与え、k=0とおく。
ステップ2 探索方向dkの決定
下記数49で表す連立一次方程式を解き、探索方向dkを求める。
収束条件が満たされていれば、xk+1を解とみなし、終了する。さもなくば、ステップ6へ行く。
ステップ6 Bkの更新
更新公式によりBk+1を計算する。
ステップ7 k+1をkに代入して(つまり、k:=k+1とし)、ステップ2へ
また、直線探索法には様々な手法が存在するが、実用上には次のようなArmijoの基準を用いた簡単な探索法で十分である。
ステップA 初期設定
現在の近似解xk、パラメータ0<ξ<1、0<τ<1を与える。
ステップB 探索
探索方向dkで、Armijoの基準を満たすステップ幅αkを求める。
ステップC ステップ幅決定
αk=βk,iとおく。
また、Bkの更新には種々の公式が考えられているが、代表的なものは、下記数53で表すB公式のBFGS(Broyden Fletcher Goldfarb Shanno)更新公式である。
<2−2−2>被測定光に関する先験情報の利用
被測定光の光波の強度および位相の空間分布は、滑らかに分布していることが予測された場合に、つまり、「複素振幅(つまり、位相)は滑らかに分布しているであろう」ということが先験情報として利用できる。この先験情報を具体的に表現すると、『ある点における複素振幅とその隣り合う点における複素振幅との差は、小さいはずである』という情報である。これは最適化問題の目的関数に隣り合う点の差を最小化するという目的を加えることで実現できる。また、被測定光の複素ベクトルの分布が滑らかであるという先験情報は、最適化問題の目的関数に被測定光の複素ベクトルgのノルムを最小化する目的を加えても実現できる。
は、数59で表すマトリックスCを用い、下記数63で表される。
<2−2−3>最適化問題のサイズ変換方法
本発明では、観測量として光波検出センサー(CCD)により得られる光波の強度分布情報は、膨大なデータとなる。このため、非常に大規模な最適化問題を解くことになり、膨大な計算時間が必要となってしまう問題が生じる。この問題を克復するため、本発明の光位相分布測定方法では、設定した大規模な最適化問題に対応するために、次のような最適化問題のサイズ変換方法を用いる。
<3>本発明を適用した光位相分布測定結果
本発明に係る光位相分布測定系及び光位相分布測定方法の有効性を確認するために、数値実験を行った。本発明の光位相分布測定系及び光位相分布測定方法を用いて、光位相分布の幾つかの測定結果(同定例)を以下のように示す。
<3−1>被測定光が一次元分布の場合
被測定光が一次元分布する場合での測定結果(つまり、例1〜例8)を示し、本発明における先験情報の利用および最適化問題のサイズ変換方法の有効性を確認する。
<3−1−1>位相分布同定逆問題設定
まず、本発明の光位相分布測定系に用いる光学系は、二種類とし、つまり、回折系とレンズ焦点系を用いるものとする。ここで、レンズは直径無限大の理想的なレンズであるとする。
<3−1−2>本発明の光位相分布測定方法を用いた測定結果(同定結果)
まず、本発明において、先験情報の利用の有効性を確認する。
例6、例7及び例8からは、100点の最適化問題で解をおおまかに推定した後に、元の1000点の最適化問題で詳細に解を同定している様子がよく分かる。
<3−2>被測定光が二次元分布の場合
被測定光が二次元分布の場合でも、本発明に係る光位相分布測定方法が有効であることを測定結果(つまり、例9〜例12)により確認する。
<3−2−1>位相分布同定逆問題設定
まず、本発明の光位相分布測定系に用いる光学系は、二種類とし、つまり、回折系とレンズ焦点系を用いるものとする。ここで、レンズは直径無限大の理想的なレンズであるとする。
<3−2−2>本発明の光位相分布測定方法を用いた測定結果(同定結果)
入力面および観測面を40×40点に離散化した例9を図37〜図40、例10を図41〜図44、例11を図45〜図48、例12を図49〜図52にそれぞれ示す。例9、例10、例11及び例12は、二段階の同定手法を適用せず、『複素振幅が滑らかに分布する』という先験情報を利用して、本発明の光位相分布測定方法を用いた測定結果(同定結果)である。
<4>本発明のまとめ
上述したように、本発明に係る光位相分布測定方法は、異なる複数の光学系を通過した被測定光の強度画像から、被測定光の位相分布を同定することを最大の特徴としている。
Claims (8)
- 異なる複数の光学特性が既知の光学系と光波検出センサーとを備え、
被測定光を前記各光学系にそれぞれ入力し、強度と位相を変調し、出力された前記被測定光を前記光波検出センサーにより検出し、検出された前記被測定光の強度分布を画像として測定することを特徴とする光位相分布測定システム。 - 前記光波検出センサーはCCD撮像素子である請求項1に記載の光位相分布測定システム。
- 前記複数の光学系は回折系とレンズ焦点系とから構成される請求項1に記載の光位相分布測定システム。
- 被測定光の位相分布を測定するための光位相分布測定方法であって、
請求項1乃至請求項3の何れかの光位相分布測定システムを用いて、前記被測定光の強度分布を測定する強度分布測定ステップと、
強度分布測定ステップで得られた前記強度分布と前記各光学系の光学特性とに基づいて、前記光位相分布測定システムの観測方程式を設定する観測方程式設定ステップと、
前記観測方程式から被測定光の位相分布を同定する位相分布同定逆問題を設定する位相分布同定逆問題設定ステップと、
設定された前記位相分布同定逆問題を非線形の最適化問題として定式化する最適化問題定式化ステップと、
前記最適化問題を解くことで、前記被測定光の位相分布を同定する位相分布同定ステップと、
を有することを特徴とする光位相分布測定方法。 - 前記最適化問題において、設計変数を被測定光を表す複素数ベクトルとし、目的関数に前記被測定光の位相分布に関する先験情報に基づいて設定される適切化関数が含まれる請求項4に記載の光位相分布測定方法。
- 前記先験情報は、前記被測定光の位相は滑らかに分布しているであろうという情報である請求項5に記載の光位相分布測定方法。
- 前記最適化問題の目的関数の最小化は準ニュートン法を用いて行う請求項4に記載の光位相分布測定方法。
- 前記最適化問題の設計変数の隣り合う所定の点を代表するものを第2の設計変数とし、前記第2の設計変数で表現されたサイズの小さな第2の最適化問題の推定解を、前記最適化問題の前記設計変数の初期推定解として用い、前記最適化問題を解くようにする請求項4に記載の光位相分布測定方法。
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