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JP2005306041A - 積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法 - Google Patents

積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法 Download PDF

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JP2005306041A JP2005131482A JP2005131482A JP2005306041A JP 2005306041 A JP2005306041 A JP 2005306041A JP 2005131482 A JP2005131482 A JP 2005131482A JP 2005131482 A JP2005131482 A JP 2005131482A JP 2005306041 A JP2005306041 A JP 2005306041A
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Abstract

【課題】自己循環回収可能で巻取り性、ハンドリング性に優れ、優れた電磁変換特性を有する高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとなり得る積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法の提供。
【解決手段】粗面層と平坦層を有する積層フィルムであって該粗面層の厚みを平坦層より厚くし、かつ該粗面層の厚みと粗面層に含まれる滑剤の平均粒径との比を特定の範囲にし、かつ層厚み構成比が製品の積層二軸配向ポリエステルフィルムの層厚み構成比と同じ積層フィルムから回収した回収ポリマーとバージンポリマーとをポリエステル層Bの原料として用いる積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、自己循環回収可能な積層フィルムであり、高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして電磁変換特性に優れ、かつベースフィルムとしての巻取り性、ハンドリング性にも優れた積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表される二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた物理的、化学的特性の故に広い用途、特に磁気記録媒体のベースフィルムとして用いられている。
近年、磁気記録媒体においては、高密度化、高容量化が進められており、それに伴ってベースフィルムの平坦性、および厚みの薄膜化が要望されている。しかしながら、優れた電磁変換特性を維持するためベースフィルムの表面を平坦化すると、滑り性が不足し、例えばロール状に巻き上げる場合にシワが入ったり、ブロッキングを起こし、フィルムロールの表面が凹凸になって製品の歩留りを下げたり、巻き上げるときの張力、接圧、速度の適正範囲が狭くなり、巻き上げることが非常に難しくなる。また、フィルム加工工程においても滑り性が悪いと、接触する金属ロールとの摩擦が増加し、削れ粉が発生して磁気記録信号の欠落、すなわちドロップアウトの原因になる。
一般にポリエステルフィルムの滑り性の改良には、(i)原料ポリマー中にその製造過程で触媒残渣から不活性粒子を析出せしめる方法や、(ii)不活性粒子を添加せしめる方法等によってフィルム表面に凹凸を付与せしめる方法が採用されている。これらフィルム中の粒子は、その大きさが大きい程、また、その含有量が多い程、滑り性の改良が大きいのが一般的である。
一方、前述のように、電磁変換特性向上の点よりベースフィルムの表面はできるだけ平坦であることが求められる。ベース面の表面粗さが粗いと、磁気記録媒体に加工する場合に、ベースフィルムの表面凹凸が磁性層塗布後にも磁性層面に突出し、電磁変換特性を悪化させる。この場合、ベースフィルム中の粒子の大きさが大きい程、また、その含有量が多い程、表面の粗さが粗くなり電磁変換特性は悪化する。
このように、巻取り性の改良と電磁変換特性の向上という相反する特性を両立させる手段としては、積層フィルムにすることによって、磁性層を塗布する面は平坦にして電磁変換特性を改善し、反対面は粗面化して滑り性を向上させる手段が広く知られている。
そして、この場合磁性層を塗布する面の平坦層は粒子の小さい滑剤を用いたり、また添加量を減らすなどして平坦化し、一方、磁性層を塗布しない反対面側(走行面側)の粗面層は粒径の大きい滑剤を用いたり、また添加量を増やすなどをして粗面化している。
すなわち、塗布面側の平坦層と走行面側の粗面層とは、使用する滑剤の特性、例えば、滑剤種、粒径、添加量等が大きく異なる。
単層フィルムの場合、フィルム製造工程で発生したフィルム屑は回収して再チップ化し、同フィルムの製造特に再投入できるが、上記積層フィルムの場合、積層フィルム自身の回収チップは、その滑剤組成が粗面層および平坦層の滑剤組成とも異なるため、積層フィルムの製造に再投入すると、再投入した層の滑剤組成が変わり、フィルム特性に支障をきたす。
一方、最近こうした積層フィルムの回収チップを三層の積層フィルムの中間層部(芯層部)に投入し、再利用することが提案されている。
しかし、この方法では、三層積層フィルム自身の回収チップの他に、上記積層フィルムの回収チップを回収し得るだけの、中間層部の厚みが厚くないといけないため、この三層積層フィルムの厚みとしてはかなり厚いフィルムとする必要がある。また、粒径の大きい滑剤を含むものや、滑剤の添加量が多いものは、中間部に使用したとしても表層部の突起形成に影響を及ぼすので、その使用に制限がある。
また、上記のとおり、最近の磁気記録媒体は高密度化、高容量化が求められ、ベースフィルムは厚みをますます薄くすることが要求され、このため上記三層積層フィルムの厚みも薄くなり、上記積層フィルムの回収ポリマー(チップ)を前記三層積層フィルムの中間層に再投入することは実質的に困難になっている。
そこで、こうした積層フィルムの回収ポリマーはやむなく廃棄しているのが現状であり、これがフィルムのコストアップの原因につながっている。こうした廃棄フィルムは産業廃棄物として処理しているが、今後それも難しくなってきている。
そこで本発明は、自己循環回収可能で巻取り性、ハンドリング性に優れ、優れた電磁変換特性を有する高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとなり得る積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、かかる目的を達成すべく鋭意研究した結果、粗面層と平坦層を有する積層フィルムであって該粗面層の厚みを平坦層より厚くし、かつ該粗面層の厚みと粗面層に含まれる滑剤の平均粒径との比を特定の範囲にすることにより、積層フィルム製造時に副性する要回収フィルムの一部に用いる、換言すると回収ポリマーを自身のフィルムの製造に自己循環させても、製品積層フィルムの表面特性が殆んど変わらず、しかも高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして優れた電磁変換特性とベースフィルムとしての巻取性とに優れた積層フィルムが製造できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、ポリエステルA層の上にポリエステルB層を積層し、ポリエステルA層とポリエステルB層が下記式(1)〜(3)
WRa(B)>WRa(A) ……(1)
(t/t)×100=50〜90(%) ……(2)
10<t/d≦60 ……(3)
(ここで、WRa(A):ポリエステルA層の表面粗さ(nm)、WRa(B):ポリエステルB層の表面粗さ(nm)、t:ポリエステルA層の厚み(μm)、t:ポリエステルB層の厚み(μm)、t:フィルムの全厚み(μm)、d:ポリエステルB層に含有された滑剤全粒子の平均粒径(μm)である。)
の関係を満足する積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法において、
ポリエステルB層の原料として、層厚み構成比が製品の積層二軸配向ポリエステルフィルムの層厚み構成比と同じである積層ポリエステルフィルムから回収した回収ポリマーとバージンポリマーとを、B層中の滑剤iの最終組成CBi(wt%)が下記式
Bi=(CAi×t×R+100×Cvi×(t−(t+t)×R/100))/(t×(100−R))
(ここで、t:ポリエステルA層の厚み(μm)、t:ポリエステルB層の厚み(μm)、CAi:ポリエステルA層中の滑剤iの組成(wt%)、CBi:ポリエステルB層中の滑剤iの最終組成(wt%)、CVi:ポリエステルB層中の、バージンポリマー中の滑剤iの組成(wt%)、R:ポリエステルB層中の回収ポリマーの比率(%)である。)
を満足するように用いることを特徴とする積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法である。
さらに好ましくは、ポリエステルB層のポリマーが積層ポリエステルフィルムを自己回収したポリマーを含んでいる上記記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法である。
本発明によれば、高密度磁気記録媒体として優れた電磁変換特性を有し、巻取性にも優れ、またコストメリット的にも優れた特性を兼ね備えた積層二軸配向ポリエステルフィルムを製造することができる。このフィルムは高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして、特にデジタル記録方式のビデオテープあるいはデータストレージ用テープとして有用である。
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールなどの如き炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
このようなポリエステルとしては、アルキレンテレフタレートまたはアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレートはもちろんのこと、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸または2,6―ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が特に好ましい。その際、全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸または2,6―ナフタレンジカルボン酸以外の上記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジピン酸、セバチン酸等の如き脂環族ジカルボン酸;シクロヘキサン―1,4―ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。また全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族ジオール;1,4―ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
また、本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω―ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分およびオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成分に対し、2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合したものも包含される。
さらに本発明におけるポリエステルには、スルホン酸4級ホスホニウム塩化合物を0.02〜45mmol%(ポリエステルの酸成分に対し)含有させることが好ましい。この含有量が0.02mmol%未満の時にはキャスティング速度の高速化効果が小さく、また含有量が45mmol%を超えるときには、フィルムを静電密着する際の放電電極の放電機能が経時的に低下する問題があって、好ましくない。この含有量によって溶融フィルムの交流体積抵抗率を、1×10Ω・cm〜9×10Ω・cmとすることができる。この交流体積抵抗率が9×10Ω・cmを超えるときには、キャスティング速度の高速化効果が小さく、一方、1×10Ω・cm未満のときにはキャスティング工程で静電密着の際にフィルムが絶縁破壊することがあって好ましくない。
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩は、下記式で表わされる化合物である。
Figure 2005306041
ここで、Aは芳香族基又は脂肪族基、X及びXはそれぞれ同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、R、R、R及びRはそれぞれアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数である。
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の好ましい具体例としては、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、4―ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ビスフェノールA―3,3′―ジ(スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩)、2,6―ジカルボキシナフタレン―4―スルホン酸テトラブチルホスホニウム等をあげることができる。一種のみを単独で用いても二種以上併用してもよい。また上記スルホン酸4級ホスホニウム塩はベースポリマーのポリエステル鎖に結合しているか遊離しているかは限定されない。従ってポリエステルを重合する際スルホン酸4級ホスホニウム塩化合物を共存させて、ポリエステルの重合体鎖中に含有せしめたり、ポリエステルを押出機に投入して溶融押出しする際に、スルホン酸4級ホスホニウム塩化合物も同時に投入して溶融混練して製造するなど上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の含有方法は特に限定されない。
上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
上記ポリエステルとしては、o―クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が0.4〜0.9のものが好ましく、0.5〜0.7のものがさらに好ましく、0.51〜0.65のものが特に好ましい。
本発明の製造方法によって得られる積層二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aとポリエステル層Bの2層より構成される。2層のポリエステルは同じものでも違ったものでもよいが、同じものが好ましい。
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、自身のフィルムで自己回収できる自己循環回収可能な、両面の表面粗さに差のある積層ポリエステルフィルムであって、回収ポリマーをB層を構成するポリマーの一部に使用することができる。
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステルA層の上にポリエステルB層を積層になる積層二軸配向ポリエステルフィルムであって、次式(1)〜(3)の関係を満足している必要がある。
WRa(B)>WRa(A) ……(1)
(t/t)×100=50〜90(%) ……(2)
10<t/d≦60 ……(3)
ここで、WRa(A):ポリエステルA層の表面粗さ(nm)
WRa(B):ポリエステルB層の表面粗さ(nm)
:ポリエステルA層の厚み(μm)
:ポリエステルB層の厚み(μm)
t :フィルムの全厚み (μm)
:ポリエステルB層に含有された滑剤全粒子の平均粒径(μm)
である。
そして、ポリエステルB層のポリマーが積層ポリエステルフィルムの製造時に副生した要回収フィルムのポリマー(自己回収したポリマー)を含んでいる積層二軸配向ポリエステルフィルムである。
積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造において、自己回収したポリマーをポリエステルA層、すなわち平坦層に使用すると、巻取性付与のため粗面層(ポリエステルB層)に含有させた大きな滑剤がポリエステルA層に入ることになり、このため平坦層(ポリエステルA層)に高突起が形成され、電磁変換特性が悪化し、高密度磁気記録媒体のベースフィルムとしては適さなくなる。
本発明において、(t/t)×100の値は50〜90(%)である必要がある。この値が50%未満であると、積層ポリエステルフィルムを自己回収したポリマーを粗面層(ポリエステルB層)に回収使用できる比率が少なくなり(本回収ポリマーの滑剤組成はポリエステルB層の滑剤組成より、平坦層の分、うすまっているため、滑剤含有濃度の濃いバージンポリマー(新しいポリマー)を補い、組成補正する必要があり、結果として回収比率は50%未満よりさらに少なくなる)、積層二軸配向ポリエステルフィルムとしての製造コストが高くなり、市場投入への適用範囲が狭くなく、好ましくない。
一方、(t/t)×100の値が90%を超えると、平坦層(ポリエステルA層)が薄くなるため粗面層(ポリエステルB層)に含有される滑剤の影響が平坦層(ポリエステルA層)に及ぼし、平坦面が粗くなってしまい、このため電磁変換特性が悪化し、高密度磁気記録媒体のベースフィルムとしては好ましくない。
本発明において、t/dの比は10〜60である必要がある。この比(t/d)が10未満、すなわち粗面層の厚みを薄くしすぎた場合、あるいは粗面層に含有される滑剤粒子の平均粒径を大きくしすぎた場合、前者については粗面層に回収できる回収ポリマー量が少なくなり、フィルムの製造コストアップとなり、市場投入への適用範囲が狭くなり、好ましくない。また、後者の場合、粗面層に含まれる大きな滑剤粒子が平坦層に影響し、平坦面が粗面化となり、電磁変換特性が悪化し、高密度磁気記録媒体のベースフィルムとしては好ましくない。
一方、t/dの比が60を超えると、すなわち粗面層の厚みに対し、粗面層に含まれる滑剤粒子の平均粒径が小さすぎると、粗面層に形成される突起が低くなりすぎ、充分な巻取性が得られなくなる。
本発明における粗面層(ポリエステルB層)に含まれる滑剤は単成分系でも多成分系でも良いが、好ましくは少なくとも平均粒径の異なる2種の滑剤を含有している多成分系が好ましい。さらに好ましくは電磁変換特性を悪化させない範囲で、中粒子を少量添加し、すべり性を付与するため小粒子を中粒子より多く添加させた多成分系である。単成分系では小粒子を用いた場合、十分なエアースクイズ性が得られず、巻取性、ハンドリング性が不足し、また中〜大粒子を用いた場合は添加量を多くした場合、電磁変換特性が低下し、また少ないとフィルムの滑り性が不足し、単成分系では両者の特性を両立させることが難しくなる。
上記積層二軸配向ポリエステルフィルムに含有される滑剤は耐熱性高分子粒子および/または球状シリカ粒子が好ましい。中粒子が耐熱性高分子粒子、小粒子が球状シリカ粒子からなることがさらに好ましい。この耐熱性高分子粒子としては、例えば架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン―アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。この中でも架橋ポリスチレン樹脂粒子や架橋シリコーン樹脂粒子を含有させると、本発明の効果が一層顕著となるので好ましい。
上記した耐熱性高分子粒子や球状シリカ粒子を用いることにより、ポリエステルとの親和性の良い、また比較的そろった大きさの突起が形成され、フィルムの滑り性、耐削れ性が良くなり、また電磁変換特性も良くなる。
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも粗面層(ポリエステルB層)に滑剤を含有するが、該粗面層には該積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造時に副生する要回収フィルムのポリマー(回収したポリマー)を一部含有する。この回収ポリマーの使用、すなわち自己循環回収ポリマーの使用は、例えば図1に示すとおりである。図1で、ポリエステルB層は、積層フィルムを自己回収したポリマー(回収ポリマー:回収チップ)とバージンポリマー(バージンチップ)からなり、ポリエステルA(平坦面層)はバージンポリマー(バージンチップ)からなる。本発明における回収ポリマーとは、層厚み構成比が製品の積層二軸配向ポリエステルフィルムの層厚み構成比と同じである積層ポリエステルフィルムから回収した回収ポリマーである。
このとき、ポリエステルB層の滑剤iの最終組成は、ポリエステルA層の厚みt、ポリエステルB層の厚みt、ポリエステルA層に用いるバージンチップ中の滑剤iの組成CAi、ポリエステルB層に用いるバージンチップ中の滑剤iの組成CVi、および回収ポリマーの比率Rに関係し、次式より計算される組成であることが好ましい。すなわち、ポリエステルB層の滑剤iの最終組成がこの式から計算される組成であれば、自己循環回収は可能であり、異なる場合には自己循環回収はできなくなる。
Bi=(CAi×t×R+100×Cvi×(t−(t+t)×R/100))/(t×(100−R))
ここで、t :ポリエステルA層の厚み(μm)
:ポリエステルB層の厚み(μm)
Ai:ポリエステルA層に用いる滑剤iのバージンチップ中の滑剤iの組成(wt%)
Bi:ポリエステルB層中の滑剤iの最終組成(wt%)
Vi:ポリエステルB層に用いるバージンチップ中の、滑剤iの組成(wt%)
R :回収ポリマーの比率(%)
である。
図1における回収ポリマー(回収チップ)には、また、滑剤iの組成、ポリエステルA層とポリエステルB層の厚み構成比が同じで、全体厚みが製品ポリエステルフィルムと異なる回収積層ポリエステルフィルムを用いることもできる。また、図1における粗面層(ポリエステルB層)のポリマー固有粘度は、平坦面層(ポリエステルA層)のポリマー固有粘度より小さいことが製造コストの点から好ましいが、場合によってはポリエステルB層に用いるバージンポリマーの固有粘度をポリエステルA層の固有粘度より高目にし、回収ポリマーの比率、固有粘度等と調整して同じ値にもっていくこともできる。
上記積層二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステルA層には1種以上の滑剤を、またポリエステルB層には2種以上の滑剤を添加した系が好ましいが、本発明はこれに限定されず、ポリエステルA層に滑剤を添加しない系、またポリエステルB層が1種の滑剤系からなり、上記式を満たす積層二軸配向ポリエステルフィルムであるなら、特に限定されない。
本発明におけるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン―2,6―ナフタレートが好ましい。特に、厚みが6μm以下で高いヤング率が求められる二軸配向フィルムを得るには、ポリエチレン―2,6―ナフタレートがより好ましい。
本発明において積層二軸配向ポリエステルフィルムの粗面層および平坦層の表面粗さは特に限定されないが、高密度磁気記録媒体、特に高密度デジタル記録媒体用のベースフィルムとして用いる場合、ポリエステルA層面の表面粗さ(WRa(A))は3〜8nmが好ましく、さらに好ましくは4〜8nm、特に好ましくは5〜7nmである。WRa(A)が8nmを超えると、十分な電磁変換特性が得られなくなる。一方、WRa(A)が3nm未満では、フィルムの滑り性が悪くなり、十分なスリット歩留りが得られなくなる。また、フィルムあるいはテープ製造工程での平坦面とパスロール系での滑り性が悪くなり、搬送性不良により工程シワが発生し、製品の歩留りを大きく低下させるようになる。
また、粗面層のWRa(B)は6〜18nmが好ましく、さらに好ましくは7〜17nm、特に好ましくは9〜15nmである。WRa(B)が6nm未満ではフィルムの滑り性が悪く、十分なスリット歩留りが得られない。一方、WRa(B)が18nmを超えると、平坦面側への突起の突出しの影響が大きくなり、平坦面が粗面化し、十分な電磁変換特性が得られなくなる。
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、縦方向および横方向のヤング率がそれぞれ450〜2000kg/mmで、両者の比(縦/横)が0.3〜2.5であることが好ましい。さらに好ましくは、縦方向および横方向のヤング率はそれぞれ500〜1200kg/mmであり、さらに好ましくはそれぞれ600〜900kg/mmである。また、両者の比(横/縦)は好ましくは0.4〜2.0であり、特に好ましくは0.6〜1.6である。
フィルムの縦方向のヤング率が450kg/mm2 未満であると、磁気テープの縦方向の強度が弱くなり、磁気記録装置にかけられたとき縦方向に強い力がかかると容易に破断してしまう。また横方向のヤング率が450kg/mm未満であると、磁気テープの横方向の強度が弱くなり、テープと磁気ヘッドとの当たりが弱くなり、満足し得る電磁変換特性が得られない。一方、縦方向あるいは横方向のヤング率が2000kg/mmを超えると、フィルム製膜時、延伸倍率が高くなり、フィルム破断が多発し、製品歩留りが著しく悪くなる。
また、縦ヤング率と横ヤング率の比が0.3未満であると、十分な磁気テープの縦方向の強度が得られなくなり、磁気記録装置にかけたとき、縦方向に強い力がかかるとテープ切断が多発する。一方、縦ヤング率と横ヤング率の比が2.5を超えると、十分な磁気テープの横方向の強度が得られず、テープを走行させた場合、テープエッジに損傷が発生し、満足し得る耐久性が得られない。
なお、上記縦ヤング率と横ヤング率の比は、リニアー方式の磁気記録媒体用ベースとして用いる場合は0.9〜2.5、またヘリカル方式の磁気記録媒体用ベースとして用いる場合は0.3〜1.0であることがより好ましい。
また、本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムの全体の厚みは特に限定されないが、高密度磁気記録媒体ベースフィルムとして用いる場合、全体の厚みは3〜10μmが好ましい。さらに好ましくは4〜9μm、特に好ましくは4〜7μmである。この厚みが10μmを超えると、カセットにいれられる磁気テープの長さが短くなり、十分な記録容量が得られない。一方、3μm未満ではフィルム製膜時にフィルム破断が多発し、またフィルムの巻取性が悪くなり、歩留りが大きく低下する。
本発明の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は、前述の通り、B層に自己回収ポリマーを使用することが特徴で、そのほかについては従来から知られている、あるいは当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。例えば、先ず未配向積層フィルムを製造し、次いで該フィルムを二軸配向させることで得ることができる。この未配向積層フィルムは、従来から蓄積された積層フィルムの製造法で製造することができる。例えば、粗面を形成するポリエステル層と、反対面(平坦面)を形成するポリエステル層とを、ポリエステルの溶融状態または冷却固化された状態で積層する方法を用いることができる。さらに具体的には、例えば共押し出し、エクストルージョンラミネート等の方法で製造できる。
上記の方法で得られる未配向積層フィルムは、さらに従来から蓄積された二軸配向フィルムの製造法に準じて、積層二軸配向フィルムとすることができる。例えば、融点(Tm:℃)乃至(Tm+70)℃の温度でポリエステルを溶融・共押出しして未延伸積層フィルムを得、該未延伸積層フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg〜(Tg+70)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸するのが好ましい。さらに必要に応じて縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。このようにして、全延伸倍率は、面積延伸倍率として9倍以上が好ましく、12〜35倍がさらに好ましく、15〜30倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは(Tg+70)℃〜(Tm−10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180〜250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、スルホン酸4級ホスホニウム塩を0.02〜45mmol%含有し、かつフィルムの交流体積抵抗率が1×10Ω・cm〜9×10Ω・cmであることが、より好ましい。すなわち、スルホン酸4級ホスホニウム塩を上記範囲内で含有させることにより、製膜時、ピニング性が良くなり、高速化製膜が可能となる。
本発明の製造方法によって得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムは、高密度磁気記録媒体または高密度デジタル記録媒体(データカートリッジ、デジタル方式のビデオテープ等)用のベースフィルムとして好ましく用いられる。
なお、本発明における種々の物性値および特性は、以下の如く測定されたものであり、かつ定義される。
(1)粒子の平均粒径(DP)
フィルム表面からポリエステルをプラズマ低温灰化処理法(例えばヤマト科学製P3−3型)で除去し、粒子を露出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSRM(走査型電子顕微鏡)で観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザーに結び付け、観察箇所を変えて粒子数5000個以上で次の数値処理を行いそれに式(4)によって求めた数平均粒径dを平均粒径とする。
d=Σdi/n ……(4)
ここで、diは粒子の円相当径(μm)、nは個数である。
サンプルをポリエステルは溶解するが粒子は溶解しない溶媒を用いて溶解し、溶液から粒子を遠心分離し、粒子の全体量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とする。
(2)層厚み
2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ3000nmまでの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M/C)を粒子濃度とし、表面から深さ3000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。そして一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを表層厚さとする。
条件は次の通りである。
1)測定装置
2次イオン質量分析装置(SIMS)
2)測定条件
1次イオン種 :O
1次イオン加速電圧:12KV
1次イオン電流:200nA
ラスター領域 :400μm□
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :6.0×10−3Torr
E―GUN :0.5KV―3.0A
なお、表層から深さ3000nm迄の範囲に最も多く含有する粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデブスプロファイルを測定し表層厚さを求めてもよい。
(3)フィルム全体の厚み
ゴミの入らないようにしてフィルムを10枚重ね、打点式電子マイクロメータにて厚みを測定し、1枚当たりのフィルム厚みを計算する。
(4)ヤング率
フィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、チャック間100mmにして、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件でインストロンタイプの万能引張試験装置にて引っ張る。得られる荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
(5)電磁変換特性
下記市販の機器を用いて、周波数7.4MHZの信号を記録し、その再生信号の6.4MHZと7.4MHZの値の比をそのテープのC/Nとし、実施例1のC/NをOdBとし、相対値で表し、次のように判定した。
◎:+3dB以上
○:+1〜+3dB
×:+1dB未満
使用した機器
8mmビデオレコーダー:ソニー(株)製EDV―6000
C/N測定:シバソク(株)製ノイズメータ
(6)スリット歩留り
フィルムをスリットし、幅700mm、長さ7000mでロールに20本以上巻いた時のスリット歩留りを求め、下記により判定する。
スリット歩留り
◎:90%以上
○:70〜90%未満
×:70%未満
(7)表面粗さ(WRa)
WYCO社製、非接触式三次元粗さ計(NT−2000)を用いて、測定倍率25倍、測定面積247μm×188μm(0.046mm)の条件にて、測定数(n)10以上で測定を行い、該粗さ計に内蔵され表面解析ソフトにより、中心面平均粗さ(WRa)を求める。
(A)中心面平均粗さ(WRa)
下記式により計算され、アウトプットされた値である。
Figure 2005306041
ZjkはX軸方向(247μm)、それと直行するY軸方向(188μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置に於けるX、Y平面における直行するZ軸方向の高さである。
(8)フィルムコスト
回収ポリマーの比率より、次のように判定した。
◎:回収比率(R)が50%以上
○:回収比率(R)が30%以上〜50%未満
△:回収比率(R)が10%以上〜30%未満
×:回収比率(R)が10%未満
(9)フィルムの摩擦係数
重ね合わせた2枚のフィルムの下側に固定したガラス板を置き、重ね合わせたフィルムの下側(ガラス板と接しているフィルム)のフィルムを低速ロールにて引取り(約10cm/分)、上側のフィルムの一端(下側フィルムの引取り方向と逆端)に検出器を固定してフィルム/フィルム間のスタート時の引張力を検出する。尚、そのときに用いるスレッドは重さ1kg、下側面積100cmのものを使用する。
なお摩擦係数(μs)は次式より求めた。
Figure 2005306041
(10)体積抵抗率の測定
溶融フィルムの体積抵抗率の測定は、図2に示す装置を用いて測定する。測定サンプル1は厚さ約150μmのフィルムを用いる。直径20cmの円柱状下部電極2の上面に、150μmの平行な隙間が保持できる直径5.6cm、厚さ0.2cmの上部電極3を配し、この間に測定サンプルが電極と密着するようにして挿入する。
下部電極2は加電装置4と温度検出端5を内蔵し、下部電極の表面温度の測定面におけるバラツキが1℃以内、検出端部分との温度差が昇温速度8℃/分において2℃以内となるように構成する。なお、検出温度は読取温度計7で測定する。電極の全体は保温箱11中に配置する。
電源18はその発生電圧を標準抵抗9を介して両電極間に印加するが、該電源はフィルムの直流体積抵抗率を測定する場合は100Vの直流を発生する電源であって、フィルムの交流体積抵抗率を測定する場合は100V、50Hzを発生する電源である。この回路に流れる電流は標準抵抗の両端に発生する電圧を、内部インピーダンスが100MΩ以上のエレトロンメーター10で読取る。
フィルム状ポリマーの交流体積抵抗率の測定は、上記装置により、下部電極の昇温測速度が8℃/分、該電極はポリマーのDSCによる融点+30℃の温度にて行ない、交流体積抵抗率Zは、印加電圧E、電流I、電極面積S、電極間隔dより次式で求められる。
Figure 2005306041
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
[実施例1]
ジメチル―2,6―ナフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜燐酸を、さらに滑剤として表1に示す添加粒子を添加して常法により重合し、固有粘度(o―クロロフェノール、35℃)0.61の平坦層(A層)用のバージンチップを得た。一方、粗面層(B層)用チップは表1に示す回収率で自身の積層フィルムの回収チップと表1に示すバージンチップで補い、粗面層(A層)用チップとした。またA層、B層用バージンチップにはスルホン酸4級ホスホニウム塩化合物を2mmol%含有させた。
これらA層用およびB層用のポリマーをそれぞれ、170℃で6時間乾燥させた。こうして、乾燥チップを表1に示した層厚み構成になるような比率にて、2台の押出機ホッパーに供給し、溶融温度280〜300℃で溶融し、マルチマニホールド型共押出ダイを用いてA層の片側にB層を積層させ、表面仕上げ0.3S程度、表面温度60℃の回転冷却ドラム上に押出し、厚み91μmの積層未延伸フィルムを得た。
この積層未延伸フィルムの交流体積抵抗率は4×10Ω・cmであった。
このようにして得られた積層未延伸フィルムを120℃に予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒーターにて加熱して5.2倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、145℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを210℃の熱風で4秒間熱固定し、厚み4.5μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これらのフィルムのヤング率は縦方向900kg/mm、横方向600kg/mmであった。
また、この積層二軸配向ポリエステルフィルムの片面(A層)に下記磁気塗料を塗布厚0.5μmとなるように塗布し、次いで2500ガウスの直流磁場中で配向処理を行い、100℃で加熱乾燥後、スーパーカレンダー処理(線圧300kg/cm、温度80℃)を行い、巻き取った。この巻き取ったロールを55℃のオーブン中に3日間保持した後、8mm幅に裁断して磁気テープを得た。
磁気塗料の調製:
下記に示す組成物をボールミルに入れ、16時間混練、分散させた後、イソシアネート化合物(バイエル社製のデスモジュール)5重量部を加え、1時間高速剪断分散して磁性塗料とした。
磁性塗料の組成:
針状Fe粒子 100重量部
塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体 15重量部
(積水化学製エスレック7A)
熱可塑性ポリウレタン樹脂 5重量部
酸化クロム 5重量部
カーボンブラック 5重量部
レシチン 2重量部
脂肪酸エステル 1重量部
トルエン 50重量部
メチルエチルケトン 50重量部
シクロヘキサノン 50重量部
得られた磁気テープについて、上記測定方法により電磁変換特性を測定した。
結果は表1に示す。
[比較例1〜3]
添加する滑剤粒子、層厚み構成、および回収ポリマーの比率を表1に示すように変更するほかは実施例1と同様にして積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。次に得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムを用いて実施例1と同様にして磁気テープを得た。各特性の測定結果は表1に示すとおりであった。
[実施例2〜7]
添加する滑剤粒子、層厚み構成、回収ポリマー比率およびヤング率を表1に示すように変更するほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得た。なおヤング率を得るため実施例2、4〜6については、縦方向の延伸倍率を5.1倍、横方向の延伸倍率を4.9倍に、実施例3では縦方向の延伸倍率を4.8倍、横方向の延伸倍率を5.2倍に、また実施例7では縦方向の延伸倍率を4.0倍、横方向の延伸倍率を5.4倍にした。
次に、得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムを用いて実施例1と同様にして磁気テープを得た。各特性の測定結果は表1に示すとおりであった。
表1から明らかなように本発明によるものは優れた電磁変換特性、優れた巻取性を有し、かつコストメリットに優れた高密度磁気記録媒体として優れた特性を有する積層二軸配向ポリエステルフィルムであった。
Figure 2005306041
本発明によれば、高密度磁気記録媒体として優れた電磁変換特性を有し、巻取性にも優れ、またコストメリット的にも優れた特性を兼ね備えた積層二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。このフィルムは高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして、特にデジタル記録方式のビデオテープあるいはデータストレージ用テープとして有用である。
自己循環回収の方法を示す説明図である。 溶融ポリマーの体積抵抗率を測定する装置の模式図である。
符号の説明
1:ポリマー
2:下部電極
3:上部電極
4:加電装置
5:温度検出端
6:電流計
7:読取温度計
8:電源
9:標準抵抗
10:エレクトロンメーター
11:保温箱

Claims (7)

  1. ポリエステルA層の上にポリエステルB層を積層し、ポリエステルA層とポリエステルB層が下記式(1)〜(3)
    WRa(B)>WRa(A) ……(1)
    (t/t)×100=50〜90(%) ……(2)
    10<t/d≦60 ……(3)
    (ここで、WRa(A):ポリエステルA層の表面粗さ(nm)、WRa(B):ポリエステルB層の表面粗さ(nm)、t:ポリエステルA層の厚み(μm)、t:ポリエステルB層の厚み(μm)、t:フィルムの全厚み(μm)、d:ポリエステルB層に含有された滑剤全粒子の平均粒径(μm)である。)
    の関係を満足する積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法において、
    ポリエステルB層の原料として、層厚み構成比が製品の積層二軸配向ポリエステルフィルムの層厚み構成比と同じである積層ポリエステルフィルムから回収した回収ポリマーとバージンポリマーとを、B層中の滑剤iの最終組成CBi(wt%)が下記式を満足するように用いることを特徴とする積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
    Bi=(CAi×t×R+100×Cvi×(t−(t+t)×R/100))/(t×(100−R))
    (ここで、t:ポリエステルA層の厚み(μm)、t:ポリエステルB層の厚み(μm)、CAi:ポリエステルA層中の滑剤iの組成(wt%)、CBi:ポリエステルB層中の滑剤iの最終組成(wt%)、CVi:ポリエステルB層中の、バージンポリマー中の滑剤iの組成(wt%)、R:ポリエステルB層中の回収ポリマーの比率(%)である。)
  2. ポリエステルA層の表面粗さWRa(A)が3〜8nm、ポリエステルB層の表面粗さWRa(B)が6〜18nmである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  3. フィルムの全厚みが3〜10μmである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  4. ポリエステルB層は少なくとも平均粒径の異なる2種以上の滑剤を含有する請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  5. フィルムの縦方向および横方向のヤング率が、それぞれ450〜2000kg/mm、両者の比(縦/横)が0.3〜2.5である請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  6. ポリエステルA層およびB層のポリマーが、ポリエチレン―2,6―ナフタレートである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  7. ポリエステルA層および/又はB層のポリマーが、スルホン酸4級ホスホニウム塩化合物を0.02〜45mmol%含有し、かつフィルムの交流体積抵抗率が1×10Ω・cm〜9×10Ω・cmである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
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