[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2005302933A - 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器 - Google Patents

圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器 Download PDF

Info

Publication number
JP2005302933A
JP2005302933A JP2004115373A JP2004115373A JP2005302933A JP 2005302933 A JP2005302933 A JP 2005302933A JP 2004115373 A JP2004115373 A JP 2004115373A JP 2004115373 A JP2004115373 A JP 2004115373A JP 2005302933 A JP2005302933 A JP 2005302933A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piezoelectric
film
ink jet
piezoelectric element
electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004115373A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Miyazawa
弘 宮澤
Motohisa Noguchi
元久 野口
Amamitsu Higuchi
天光 樋口
Setsuya Iwashita
節也 岩下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2004115373A priority Critical patent/JP2005302933A/ja
Publication of JP2005302933A publication Critical patent/JP2005302933A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • General Electrical Machinery Utilizing Piezoelectricity, Electrostriction Or Magnetostriction (AREA)

Abstract


【課題】 高い圧電定数を有する圧電体膜を備えた圧電素子と、これを用いた圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器を提供する。
【解決手段】 基体上に形成されたシード層5と、シード層5上に形成された圧電体膜6とを備えてなる圧電素子1である。シード層5は、ビスマス層状化合物からなり、かつc軸(001)に優先配向してなるものである。圧電体膜6は、ペロブスカイト型で擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなるものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電体膜を有する圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器に関する。
高画質、高速印刷を可能にするプリンターとして、インクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターは、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドを備え、このヘッドを走査させつつそのノズルからインク滴を吐出することにより、印刷を行うものである。このようなインクジェットプリンター用のインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッドアクチュエーターとしては、従来、PZT(Pb(Zr,Ti)O)に代表される圧電体膜を用いた圧電素子が用いられている(たとえば、特許文献1)。
また、表面弾性波素子や周波数フィルタ、発振器、電子回路などにおいても、その特性向上が望まれていることから、新たな圧電材料による良好な製品の提供が望まれている。
特開2001−223404号公報
ところで、インクジェットプリンターにあっては、さらなる高画質化や高速化が要求されるようになってきている。このような要求に応えるためには、インクジェット式記録ヘッドにおけるノズルの高密度化が欠かせない技術となってきている。そのためには、キャビティー上に積層される圧電素子(ヘッドアクチュエーター)についても、特に圧電体膜の特性、すなわちその圧電定数を向上する必要がある。
高い圧電特性(圧電定数)を有する材料としては、近年、リラクサー材料が注目されている。しかし、このリラクサー材料は、塊状のバルクとしては高い圧電特性を示すものの、薄膜として形成しようとするときれいな膜とならず、したがってこれを圧電体膜として機能させるのが困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高い圧電定数を有する圧電体膜を備えた圧電素子と、これを用いた圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器を提供することにある。
本発明者等は、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
リラクサー材料からきれいな薄膜を形成し、これを圧電体膜として機能させる方法としては、例えばSrRuOからなる電極上にリラクサー材料を成膜することが考えられる。
一方、リラクサー材料がより高い圧電特性を示す条件としては、これがロンボヘドラル構造でかつ擬立方晶(100)に優先配向していることが必要である。
したがって、圧電素子の圧電体膜に前記リラクサー材料を用いる場合、下部電極層としても擬立方晶で(100)配向していることが、その上に擬立方晶(100)配向のリラクサー材料を形成するうえで好ましい。しかしながら、SrRuOを(100)配向させるためには、イオンビームアシスト法を用いる必要があるが、その場合には製造コストが高くなるといった新たな課題が生じてしまう。
これに対し、イオンビームアシスト法を不要にするべく、下部電極上にシード層としてPZTの(100)配向膜を形成し、その上にリラクサー材料を(100)配向させることが考えられる。
しかし、下部電極として成膜し易いPtやIrの上には、PZTの配向特性として、(100)配向だけでなく(111)や(110)に配向したものが混入してしまう。その結果、その上に形成するリラクサー材料にも、(100)だけでなく(111)や(110)の配向が混入し易くなってしまい、結果として得られた圧電体膜は、その圧電特性(圧電定数)が十分に高いものとはならなくなるおそれがある。
このような知見に基づき、本発明者はさらに研究を重ねた結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明の圧電素子は、基体上に形成されたシード層と、該シード層上に形成された圧電体膜とを備えてなり、
前記シード層は、一般式Bim−13m+3(但し、m=2,3,4、AはBa,Ca,Sr,La,Biから選ばれる金属元素、BはFe,Ga,Ti,Ta,Nb,V,Mo,W,Zr,Hfから選ばれる金属元素)で示されるビスマス層状化合物からなり、かつc軸(001)に優先配向してなるものであり、
前記圧電体膜は、ペロブスカイト型で擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなることを特徴としている。
この圧電素子によれば、シード層としてビスマス層状化合物を用いているので、このビスマス層状化合物は例えばPtやIrからなる電極上であっても容易にc軸配向となり、すなわち(001)配向となる。そして、このように(001)配向となったビスマス層状化合物の上には擬立方晶(100)に配向したリラクサー材料が形成され易くなることから、リラクサー材料からなる圧電体膜は、ペロブスカイト型で擬立方晶(100)に優先配向したものとなる。したがって、この圧電体膜が強誘電性を有し、すなわち高い圧電特性を有するものとなることから、圧電定数が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすものとなる。
なお、前記の「優先配向した」とは、本発明においては、所望の配向である(100)にほとんど(例えば90%以上)が配向し、残りが他の配向(例えば(111)配向)となっている場合を含むもので、もちろん、100%が所望の配向である(100)になっている場合も含んでいる。
また、圧電素子においては、前記リラクサー材料が、ペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向しているのが好ましい。
このようになっていれば、リラクサー材料がより高い圧電特性を示すことから、圧電体膜がより良好に機能するようになる。
また、圧電素子においては、前記シード層が、以下の式で示される材料のうちの少なくとも一種からなっているのが好ましい。
・SrBi(Ta1−xNb(但し、0≦x≦1.0)
・(Bi1−xLaTi12(但し、0≦x≦0.4)
・SrBiMe15(但し、MeはTi,Zr,Hfの少なくとも一種)
このようにすれば、ビスマス層状化合物が例えばPtやIrからなる電極上にてより容易にc軸配向となり、(001)配向となるので、このビスマス層状化合物の上にリラクサー材料が擬立方晶(100)により良好に配向するようになる。
また、前記リラクサー材料は、以下の式で示される材料のうちの少なくとも一種からなるのが好ましい。
・(1−x)Pb(Sc1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.42)
・(1−x)Pb(In1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.37)
・(1−x)Pb(Ga1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.50)
・(1−x)Pb(Sc1/2Ta1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.45)
・(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.35)
・(1−x)Pb(Fe1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.01<x<0.10)
・(1−x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.01<x<0.11)
・(1−x)Pb(Ni1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.08<x<0.38)
・(1−x)Pb(Co1/21/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.42)
このようにすれば、圧電定数が十分に高いものとなり、したがってこの圧電体膜はより良好な変形をなすものとなる。
また、前記の圧電素子は、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧電体膜の変形によって前記キャビティーの内容積を変化させるものであってもよい。
このようにインクジェット式記録ヘッド用の圧電素子(ヘッドアクチュエーター)とすれば、良好な圧電特性によってインクの吐出を良好になさせるものとなる。
本発明の圧電アクチュエーターは、前記の圧電素子を備えたことを特徴としている。
この圧電アクチュエーターによれば、前述したような圧電特性によって良好に機能するものとなる。
本発明のインクジェット式記録ヘッドは、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、圧電体膜の変形によって前記キャビティーの内容積を変化させる圧電素子として、前記の圧電素子を備えたことを特徴としている。
このインクジェット式記録ヘッドによれば、前述したように良好な圧電特性によってインクの吐出を良好になさせるものとなる。また、特に圧電体膜の圧電定数が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすことから、所定量のインクを吐出するのに必要なキャビティーの面積(容積)が従来のものより小さくてすみ、したがってノズルの高密度化が可能になる。
本発明のインクジェットプリンターは、前記のインクジェット式記録ヘッドを備えたことを特徴としている。
このインクジェットプリンターによれば、高性能でノズルの高密度化が可能なインクジェット式記録ヘッドを備えているので、高速印刷が可能になる。
本発明の表面弾性波素子は、基板上に請求項1又は2記載の圧電素子が形成されてなることを特徴としている。
この表面弾性波素子によれば、圧電素子の圧電体膜が良好な圧電特性を有していることにより、この表面弾性波素子自体も高性能なものとなる。
本発明の周波数フィルタは、前記の表面弾性波素子が備える前記圧電体膜の上に形成された第1の電極と、前記圧電体膜の上に形成され、前記第1の電極に印加される電気信号によって前記圧電体膜に生ずる表面弾性波の特定の周波数又は特定の帯域の周波数に共振して電気信号に変換する第2の電極と、を備えることを特徴としている。
この周波数フィルタによれば、圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがってこの圧電体膜の電気機械結合係数が高いため、比帯域幅が広い良好なものとなる。
本発明の発振器は、前記の表面弾性波素子が備える前記圧電体膜の上に形成され、印加される電気信号によって前記圧電体膜に表面弾性波を発生させる電気信号印加用電極と、前記圧電体膜の上に形成され、前記電気信号印加用電極によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分又は特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極とトランジスタとを含む発振回路と、を備えることを特徴としている。
この発振器によれば、圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがってこの圧電体膜の電気機械結合係数が高いため、伸長コイルを省略することができ、回路構成が簡単なものとなる。また、トランジスタ等から構成される発振回路を備えているので、トランジスタとの集積化によって小型化されたものとなる。
本発明の電子回路は、前記の発振器と、前記発振器に設けられている前記電気信号印加用電極に対して前記電気信号を印加する電気信号供給素子とを備えてなり、前記電気信号の周波数成分から特定の周波数成分を選択し、若しくは特定の周波数成分に変換し、又は、前記電気信号に対して所定の変調を与え、所定の復調を行い、若しくは所定の検波を行う機能を有することを特徴としている。
この電子回路によれば、発振器に備えられた表面弾性波素子を構成する圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがってこの圧電体膜の電気機械結合係数が高く、発振回路との集積化が可能なため、小型で高性能なものとなる。
本発明の薄膜圧電共振器は、基体上に前記の圧電素子からなる共振子が形成されてなることを特徴としている。
この薄膜圧電共振器によれば、共振子の圧電体膜が高い電気機械結合係数を有することから、例えばGHz帯などの高周波数領域で使用可能なものとなる。
なお、このような薄膜圧電共振器において、前記基体の前記共振子が形成された側と反対の側にビアホールを形成すれば、ダイアフラム型の薄膜圧電共振器となる。
また、前記基体と共振子との間にエアギャップを形成すれば、エアギャップ型の薄膜圧電共振器となる。
本発明の電子機器は、前記の周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器のうち少なくとも1つを有することを特徴としている。
この電子機器によれば、圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがってこの圧電体膜の電気機械結合係数が高いため、小型で、高性能なものとなる。
以下、本発明を詳しく説明する。
(圧電素子)
まず、本発明の圧電素子について説明する。
図1は本発明の圧電素子を、特にインクジェット式記録ヘッド用のヘッドアクチュエーターとなる圧電素子に適用した場合の一実施形態を示す図であり、図1において符号1は圧電素子である。
この圧電素子1は、シリコン(Si)からなる基板2上に形成されたもので、この基板2上に形成された弾性膜3と、弾性膜3の上に形成された下部電極4と、下部電極4の上に形成されたシード層5と、シード層5の上に形成された圧電体膜6と、圧電体膜6の上に形成された上部電極7とを備えて構成されたものである。ここで、本発明においては基板2から下部電極4までを基体と称している。
なお、基板2としては、(100)配向の単結晶シリコン基板や(111)配向の単結晶シリコン基板、さらには、(110)配向のSi基板等も使用可能である。また、もちろんその表面に熱酸化膜や自然酸化膜などのアモルファスの酸化シリコン膜を形成したものも使用可能である。
基板2上に形成される弾性膜3は、インクジェット式記録ヘッド用のヘッドアクチュエーターとなる圧電素子において弾性板として機能する膜であって、SiOやZrO等からなり、厚さが例えば1μm程度に厚く形成されたものである。この弾性膜3については、後述するように基板2をエッチング処理してここにキャビティーを形成する際、弾性膜3がエッチングストッパ層として機能するべく、前記SiOやZrO等のSiとの間で十分な選択比がとれる材料で形成するのが好ましい。なお、この弾性膜3については、後述するインクジェット式記録ヘッドにおけるインク室基板となる基板2上に、複数の圧電素子が形成される場合、これらに共通な弾性板として形成してもよい。
下部電極4は、圧電体膜6に電圧を印加するための一方の電極となるもので、例えば図1に示したように圧電体膜6と同じ大きさ、すなわち上部電極7と同じ形状に形成されたものである。なお、この下部電極4については、後述するインクジェット式記録ヘッドにおけるインク室基板となる基板2上に、複数の圧電素子が形成される場合、これらに共通な電極として機能するよう、共通な弾性板としての弾性膜3と同じ大きさに形成してもよい。また、この下部電極4は、Pt(白金)やIr(イリジウム)、IrO(酸化イリジウム)、Ti(チタン)等からなり、厚さが100nm〜200nm程度に形成されている。
シード層5は、一般式Bim−13m+3(但し、m=2,3,4、AはBa,Ca,Sr,La,Biから選ばれる金属元素、BはFe,Ga,Ti,Ta,Nb,V,Mo,W,Zr,Hfから選ばれる金属元素)で示されるビスマス層状化合物(以下、Bi層状化合物と記す)からなり、かつc軸(001)に優先配向してなるものである。具体的には、以下の式で示される材料のうちの少なくとも一種からなっているのが好ましい。
・SrBi(Ta1−xNb
(但し、0≦x≦1.0)(m=2)
・(Bi1−xLaTi12
(但し、0≦x≦0.4)(m=3)
・SrBiMe15
(但し、MeはTi,Zr,Hfの少なくとも一種)(m=4)
このようなBi層状化合物は、前記の下部電極4上に液相法や気相法によって成膜される。このようにして成膜されると、Bi層状化合物が例えばPtやIrからなる下部電極4上で容易にc軸配向に優先配向し、これによって(001)配向となる。特に、前記式で示した3種類のBi層状化合物は、下部電極4上でより容易にc軸配向となり(c軸配向に優先配向し)、(001)配向となる。ここで、「優先配向する」とは、前述したように所望配向であるc軸配向にほとんどが配向しているものの、残りが他の配向となっている場合をも含んでいる。このようにほとんどが所望配向であるc軸配向に配向していれば、後述するようにこれの上に圧電体膜6を形成した際、この圧電体膜6が擬立方晶(100)により良好に配向し、すなわち(100)に優先配向するようになる。
なお、このシード層5は圧電体材料であることから、下部電極4としては機能することなく、むしろ後述する圧電体膜6としてわずかながらその機能を発揮し、圧電体膜6の圧電特性に影響する(圧電特性を助ける)ようになる。したがって、このシード層5の膜厚が厚くなりすぎると、圧電体膜6の圧電特性への影響が大きくなってしまうことから、この影響が必要以上に大きくならないよう、このシード層5の厚さとしては、100nm以下とするのが好ましく、50nm以下とするのがより好ましい。
圧電体膜6は、ペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなるもので、厚さが300nm〜3000nm程度、好ましくは500nm〜1000nm程度、望ましくは500nm程度に形成されたものである。ただし、この圧電体膜6の膜厚の上限値については、薄膜としての緻密さ、結晶配向性を維持できる範囲でもっと厚くすることが可能であり、具体的には10μm程度まで許容することができる。
リラクサー材料としては、例えば以下の式で示される材料が挙げられる。これらのうちから選択された一種あるいは複数種が後述するように液相法または気相法で成膜されることにより、圧電体膜6が得られる。
・(1−x)Pb(Sc1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.42、好ましくは0.20<x<0.42)
・(1−x)Pb(In1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.37、好ましくは0.20<x<0.37)
・(1−x)Pb(Ga1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.50、好ましくは0.30<x<0.50)
・(1−x)Pb(Sc1/2Ta1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.45、好ましくは0.20<x<0.45)
・(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.35、好ましくは0.20<x<0.35)
・(1−x)Pb(Fe1/2Nb1/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.01<x<0.10、好ましくは0.03<x<0.10)
・(1−x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.01<x<0.11、好ましくは0.03<x<0.11)
・(1−x)Pb(Ni1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(ただし、xは0.08<x<0.38、好ましくは0.09<x<0.38)
・(1−x)Pb(Co1/21/2)O−xPbTiO
(ただし、xは0.10<x<0.42、好ましくは0.20<x<0.42)
ここで、リラクサー材料とは、図2(a)に示すように誘電率の温度依存がブロードな(幅が広い)ピークを示す材料を示し、誘電率が極大となる温度が周波数測定によりシフトする材料をいう。また同時に圧電定数の温度依存がブロードな(幅が広い)ピークを示す。これに対し、PZT等の非リラクサー材料である圧電体材料は、図2(b)に示すように誘電率、および圧電定数の温度依存が非常に鋭いピークを示すものとなっている。したがって、圧電体膜6としてリラクサー材料を用いることにより、得られた圧電素子1は広い温度範囲で良好な圧電特性を発揮し、これにより信頼性が高く特性が安定したものとなる。
また、この圧電体膜6は、ペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向したもので、エンジニアードドメイン配置のものであり、したがって高い圧電定数(d31)を有するものとなっている。ここで、「優先配向した」とは、前述したように所望配向の擬立方晶(100)にほとんどが配向しているものの、残りが他の配向となっている場合をも含んでいる。すなわち、同様に優先配向したシード層5上に形成され、このシード層5がc軸配向に優先配向し、これによって(001)配向となっていることから、リラクサー材料からなる圧電体膜6も、ペロブスカイト型で擬立方晶(100)に優先配向したものとなっている。ここで、シード層5がc軸配向に優先配向し、(001)配向となっていることから、得られたBi層状化合物には(111)や(110)に配向したものの混入がほとんどなく、したがってその上に形成するリラクサー材料にも、(111)や(110)の配向がほとんど混入しなくなっている。
また、この圧電体膜6の形成材料(リラクサー材料)において、前述したように材料間におけるPbTiO(PT)側の組成比を表すxの範囲については、特にその上限値としては、相境界(MPB)、すなわちロンボヘドラル構造とテトラゴナル構造とが相転移するときのPbTiO(PT)側の組成比を示す値とされる。そして、このxの範囲としては、相転移するときの組成比より小さく、これによりロンボヘドラル構造となる範囲とされる。ここで、圧電定数であるd定数(d31)は、相境界(MPB)付近で極大値をとる。したがって、前記のxについて、その下限値としては、このMPBのときのxの値に近い値が選択されるのである。よって、前述したようにxの範囲としては、本発明を構成するうえでは比較的小さい値まで許容できるものの、より高い圧電定数であるd定数(d31)を得るためには、好ましい範囲としたときの値、すなわち前記MPBのときのxの値により近い値が選択される。
このようにペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなる圧電体膜6については、前述したように従来ではこれを形成するのに複雑な手法が必要となっていた。例えば、レーザーアブレーション法を用い、かつイオンビームアシスト法などの複雑な手法を併用することでバッファ層を形成し、さらにこれの上にペロブスカイト型の下部電極を形成することで下地を形成し、この下地の上に圧電体膜を形成するようにしていた。このような手法をとる理由は、PtやIrなどの従来の電極材料上にリラクサー材料の緻密な薄膜を形成するための製造マージンが小さく、一方SrRuOなどペロブスカイト型電極上では比較的容易に緻密な薄膜が得られるからであり、このSrRuO電極の配向性をコントロールするためにレーザーアブレーション法やイオンビームアシスト法が必要とされるためである。
しかしながら、このような方法では工程が複雑であり、したがってコストが高く、また得られる圧電体膜の圧電特性も十分に安定しないといった課題があった。一方、Bi層状化合物は、前述したようにPtやIr等の下部電極4上にc軸(001)に優先配向し、緻密な薄膜となる。そして、このBi層状化合物上には、PMN−PTなどのリラクサー材料が緻密な薄膜として容易に積層することが可能になる。そこで、本発明では、前述したようにBi層状化合物からなるシード層5を予め形成しておき、この上にリラクサー材料からなる圧電体膜6を形成することで、後述するように気相法でもまた液相法でも容易に、しかも圧電特性が良好な圧電体膜6を得ることができるようにしたのである。
上部電極7は、圧電体膜6に電圧を印加するための他方の電極となるもので、下部電極4と同様、例えばPt(白金)やIr(イリジウム)、IrO(酸化イリジウム)、Ti(チタン)、SrRuO等からなり、厚さが100nm程度に形成されたものである。
なお、下部電極4に関しては、SrRuOのようなペロブスカイト電極を用いても本発明の趣旨を逸脱するものではない。SrRuOからなる下部電極4と、リラクサー材料からなる圧電体膜6の間に、Bi層状化合物からなるシード層5を挟むのであれば、製造工程上、圧電体膜6の擬立方晶(100)配向性がより容易に制御可能となる。
次に、このような構成からなる圧電素子1の製造方法を説明する。
まず、基板2として、(110)又は(100)配向の単結晶Si基板、(111)配向の単結晶Si基板、あるいは自然酸化膜であるアモルファスの酸化シリコン膜を形成した(100)又は(110)配向のSi基板を用意する。
次に、図3(a)に示すように基板2上に弾性膜3を形成する。この弾性膜3については、CVD法やスパッタ法、蒸着法などの気相法が、形成する材質に応じて適宜決定され、採用される。
次いで、図3(b)に示すように弾性板3上に例えばPtからなる下部電極4を形成する。このPtは、比較的容易に(111)優先配向となるものであるから、例えばスパッタ法等の比較的簡易な方法を採用することで、弾性膜3上に容易に配向成長させることができる。
次いで、図3(c)に示すようにこの下部電極4上にシード層5を形成する。シード層5の形成方法(成膜方法)としては、例えば前記のBi層状化合物の前駆体溶液を用いるゾルゲル法等の液相法が採用される。この液相法では、スピンコート法、液滴吐出法等の公知の塗布法で前記の前駆体溶液を下部電極4上に配し、その後、焼成等の熱処理を行うことにより、シード層5を得る。すなわち、前駆体溶液の塗布工程、乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程の一連の工程を所望する膜厚に応じて適宜回数繰り返し、その後、結晶化アニールを行うことでシード層5を形成する。以下に、具体的な条件を示す。
シード層5を構成するBi層状化合物の前駆体溶液(前駆体材料)としては、この化合物(酸化物)の各構成金属(例えば[SrBi(Ta1−xNb]の場合、Sr、Bi、Ta、Nb)を含有する金属アルコキシドあるいは炭酸塩等の金属塩が、それぞれの金属元素ごとに用意され、用いられる。
具体的には、前記有機酸塩として、2エチルヘキサン酸ストロンチウム(Sr)、2エチルヘキサン酸ビスマス(Bi)、2エチルヘキサン酸タンタル(Ta)、2エチルヘキサン酸ニオブ(Nb)等を用い、いずれもオクタン、ブトキシエタノール、あるいはキシレン等の溶媒に溶解して用いる。
そして、これら金属化合物を、Bi層状化合物を構成する各元素のモル比(例えば[SrBi(Ta1−xNb]の場合、Sr:Bi:(Ta,Nb)=1:2:2)となるように混合する。なお、このようにして混合した前駆体化合物については、採用する塗布法(例えばスピンコート法、あるいは液滴吐出法)に適した物性を付与するべく、例えばアルコール類等の適宜な溶媒あるいは分散媒等を添加することにより、ゾル状の液状体に調製するのが好ましい。
続いて、このようにして調製したゾル状の液状体(前駆体溶液)を、下部電極4上に塗布する。この塗布工程については、例えばスピンコート法を採用した場合で説明すると、まず、下部電極4上に前駆体溶液を滴下する。そして、滴下された溶液を基板全面に行き渡らせる目的でスピンを行う。スピンの回転数は、例えば初期では500rpm程度とし、続いて塗布ムラが起こらないように回転数を2000rpm程度に上げて、塗布を完了させる。
乾燥熱処理工程については、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、前駆体溶液に用いた溶媒の沸点より例えば10℃程度高い温度で熱処理(乾燥)することで行う。
脱脂熱処理工程については、前駆体溶液に用いた有機金属の配位子を分解/除去するべく、大気雰囲気下でホットプレートを用い、350℃程度に加熱することで行う。結晶化アニール、すなわち結晶化のための焼成工程については、酸素雰囲気中でラピッドサーマルアニーリング(RTA)等を用いて例えば600℃程度に加熱することで行う。
このようにして(111)配向のPtからなる下部電極4上に、Bi層状化合物を、c軸(001)に優先配向した状態に形成し、シード層5とすることができる。
なお、Bi層状化合物からなるシード層5の形成については、塗布法としてスピンコート法に代えて液滴吐出法を用いることもでき、また、成膜法としても液相法に代えてレーザーアブレーション法やスパッタ法等の気相法を採用することができる。スパッタ法でシード層5を成膜した場合、成膜後、例えば700℃で一旦ラピッドサーマルアニーリング(RTA)を行う。スパッタリング時電力については、例えば200Wとする。
次いで、図3(d)に示すようにこのシード層5上に圧電体膜6を形成する。圧電体膜6の形成方法(成膜方法)としては、例えば前記のリラクサー材料の前駆体溶液を用いるゾルゲル法等の液相法が採用される。この液相法では、スピンコート法、液滴吐出法等の公知の塗布法で前記の前駆体溶液をシード層5上に配し、その後、焼成等の熱処理を行うことにより、圧電体膜6を得る。具体的には、前記シード層5の形成と同様にして、前駆体溶液の塗布工程、溶媒除去工程〜乾燥熱処理工程〜脱脂熱処理工程の一連の工程を所望する膜厚に応じて適宜回数繰り返し、その後、結晶化アニールを行うことで圧電体膜6を形成する。各工程における条件は、シード層5の形成とほぼ同様とされる。
このようにして形成された圧電体膜6は、c軸配向となり、(001)に優先配向したシード層5上に形成されることで、擬立方晶(100)に配向し易くなり、結果的にペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向したものとなる。
ここで、シード層5や圧電体膜6の形成材料である前駆体溶液については、これらシード層5や圧電体膜6となる圧電体材料あるいはリラクサー材料の構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属、すなわち金属アルコキシドや有機酸塩といった有機金属を、各金属が所望のモル比となるように混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いてこれらを溶解しあるいは分散させることにより、作製する。なお、この前駆体溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加してもよく、さらに、溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、適当な量の水とともに、触媒として酸あるいは塩基を添加してもよい。
なお、この圧電体膜6についても液相法で形成したが、シード層5と同様、レーザーアブレーション法やスパッタ法等の気相法を用いて形成するようにしてもよい。
その後、図3(e)に示すように圧電体膜6上にPtからなる上部電極7を形成し、圧電素子1を得る。この上部電極7の形成については、前記下部電極4と同様に、スパッタ法等によって行うことができる。
このようにして得られた圧電素子1にあっては、リラクサー材料からなる圧電体膜6が、c軸配向となり、(001)に優先配向したシード層5上に形成されているため、この圧電体膜も擬立方晶(100)に良好に優先配向したものとなり、したがって圧電定数が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすものとなる。
なお、本発明の圧電素子は、前述したインクジェット式記録ヘッド用のヘッドアクチュエーターとしてだけでなく、他の圧電アクチェーターとしてももちろん用いることができる。
(実施例)
図3(a)〜(e)に示した製造方法に基づき、圧電素子1を以下のようにして作製した。
まず、基板2上に弾性膜3を介して(111)配向のPtからなる下部電極4を、スパッタ法で厚さ100nmに形成した。スパッタリング時の電力は200Wとした。
次に、以下の式に示す3種類の化合物の前駆体溶液を以下のようにして調製した。
・SrBi(Ta1−xNb (但し、x=0.1)(m=2)
・(Bi1−xLaTi12 (但し、x=0.1)(m=3)
・SrBiTi15 (m=4)
各化合物中の構成金属の2エチルヘキサン酸塩を用い、いずれもオクタン、ブトキシエタノール、あるいはキシレン等の溶媒に溶解し、前駆体溶液とした。
そして、これら前駆体溶液をスピンコート法によって前記下部電極4上にそれぞれ塗布し(前駆体溶液の塗布工程)、続いて溶媒より約10℃高い温度で熱処理(乾燥)して溶媒を除去し(乾燥熱処理工程)、さらに350℃程度に加熱することで有機金属の配位子を分解/除去し(脱脂熱処理工程)、その後、酸素雰囲気中でラピッドサーマルアニーリング(RTA)を用いて600℃程度に加熱し、結晶化を行うことで3種類のシード層5を形成した。各シード層5の膜厚はいずれも20nmであった。
次いで、以下の式に示す3種類のリラクサー材料の前駆体溶液を以下のようにして調製した。
・(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.3)
・(1−x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.1)
・(1−x)Pb(Ni1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.1)
酢酸鉛、チタンイソプロポキシド、酢酸マグネシウム、ニオブエトキシド、さらには亜鉛、ニッケルの酢酸塩またはアルコキシドの各金属試薬をそれぞれ用意し、これらを形成する化合物(リラクサー材料)に対応したモル比となるようにそれぞれ混合するとともに、これらをブチルセロソルブに溶解(分散)させ、さらにこれに溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加し、前駆体溶液とした。
そして、これら前駆体溶液をスピンコート法によって前記の3種のシード層5上にそれぞれ塗布し(前駆体溶液の塗布工程)、続いて溶媒より約10℃高い温度で熱処理(乾燥)して溶媒を除去し(乾燥熱処理工程)、さらに350℃程度に加熱することで有機金属の配位子を分解/除去し(脱脂熱処理工程)、その後、酸素雰囲気中でラピッドサーマルアニーリング(RTA)を用いて600℃程度に加熱し、結晶化を行うことで、各シード層5上にそれぞれ3種類の圧電体膜6を形成した。
その後、スパッタ法によって各圧電体膜6上にPtからなる上部電極7を形成し、9種類の圧電素子1を得た。
このようにして得られた各圧電素子1における、前記圧電体膜6をX線回折法(XRD)で調べたところ、(100)に優先配向していることが確認され、さらにロンボヘドラル構造であることも確認された。
また、この圧電体膜6の圧電定数(d31)を測定したところ、以下の表に示すようにいずれも400pC/N以上と高く、リーク電流は、100kV/cmのとき、10−5A/cm未満であった。
さらに、圧電素子1の300kV/cm印加時における繰り返し耐久性を調べたところ、10回を保証できる高い耐久性を備えていた。
「表」
試料No. シード層 圧電体膜 圧電定数d31(pC/N)
(1) A D 450
(2) A E 410
(3) A F 430
(4) B D 420
(5) B E 460
(6) B F 470
(7) C D 440
(8) C E 480
(9) C F 410
ただし、「シード層」の欄のA、B、Cはそれぞれ以下の式に示すBi層状化合物であり、「圧電体膜」の欄のD、E、Fはそれぞれ以下の式に示すリラクサー材料である。
A;SrBi(Ta1−xNb
(但し、x=0.1)(m=2)
B;(Bi1−xLaTi12
(但し、x=0.1)(m=3)
C;SrBiTi15 (m=4)
D;(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.3)
E;(1−x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.1)
F;(1−x)Pb(Ni1/3Nb2/3)O−xPbTiO
(但し、x=0.1)
(インクジェット式記録ヘッド)
次に、図1に示した圧電素子を用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図4は、図1に示した圧電素子を用いたインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図5は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。なお、図4は、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。これらの図において符号50はインクジェット式記録ヘッド(以下、ヘッドと記す)である。このヘッド50は、図4に示すようにヘッド本体57とこれの上に設けられた圧電素子54とを備えて構成されたものである。なお、図4に示した圧電素子54は、図1に示した圧電素子1における下部電極4とシード層5と圧電体膜6と上部電極7とからなるものであり(図5参照)、これらを形成した弾性膜3は、図4において弾性板55となっている。また、基板2は後述するようにヘッド本体57の要部を構成するものとなっている。
すなわち、このヘッド50は、図5に示すようにノズル板51と、インク室基板52と、弾性板55と、弾性板55に接合された圧電素子(振動源)54とを備え、これらが基体56に収納されて構成されている。なお、このヘッド50は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成するものとなっている。
ノズル板51は、例えばステンレス製の圧延プレート等で構成されたもので、インク滴を吐出するための多数のノズル511を一列に形成したものである。これらノズル511間のピッチは、印刷精度に応じて適宜に設定されている。
このノズル板51には、インク室基板52が固着(固定)されている。このインク室基板52は、前記のSi製の基板2によって形成されたもので、ノズル板51、側壁(隔壁)522および後述する弾性板55により、複数のキャビティー(インクキャビティー)521と、インクカートリッジ631から供給されるインクを一時的に貯留するリザーバ523と、リザーバ523から各キャビティー521に、それぞれインクを供給する供給口524とを区画形成したものである。
これらキャビティー521は、図4に示したように各ノズル511に対応して配設されたもので、後述する弾性板55の振動によってそれぞれ容積可変になっており、この容積変化によってインクを吐出するよう構成されたものである。
このインク室基板52を得るための母材、すなわち前記の基板2としては、例えば(110)配向のシリコン単結晶基板(Si基板)が用いられている。この(110)配向のシリコン単結晶基板は、異方性エッチングに適しているのでインク室基板52を、容易にかつ確実に形成することができる。なお、このようなシリコン単結晶基板は、図1に示した弾性膜3の形成面、すなわち弾性板55の形成面が(110)面となるようにして用いられている。
このインク室基板52の平均厚さ、すなわちキャビティー521を含む厚さとしては、特に限定されないものの、10〜1000μm程度とするのが好ましく、100〜500μm程度とするのがより好ましい。また、キャビティー521の容積としては、特に限定されないものの、0.1〜100nL程度とするのが好ましく、0.1〜10nL程度とするのがより好ましい。
一方、インク室基板52のノズル板51と反対の側には弾性板55が配設されており、さらに弾性板55のインク室基板52と反対の側には複数の圧電素子54が設けられている。弾性板55は、前述したように図1に示した圧電素子1における弾性膜3によって形成されたものである。この弾性板55の所定位置には、図5に示したように弾性板55の厚さ方向に貫通して連通孔531が形成されている。そして、このような連通孔531により、後述するインクカートリッジ631からリザーバ523へのインクの供給がなされるようになっている。
各圧電素子54は、前述したように下部電極4と上部電極7との間に圧電体膜6が介挿されて構成されたもので、各々が各キャビティー521のほぼ中央部に対応して配設されたものである。これら各圧電素子54は、後述する圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電素子54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエーター)として機能するものとなっており、弾性板55は、圧電素子54の振動(撓み)によって振動し(撓み)、キャビティー521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能するものとなっている。
基体56は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で形成されたもので、図4に示したようにこの基体56にインク室基板52が固定、支持されている。
このような構成からなるヘッド50は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子54の下部電極4と上部電極6との間に電圧が印加されていない状態では、図6(a)に示すように圧電体膜6に変形が生じない。このため、弾性板55にも変形が生じず、キャビティー521には容積変化が生じない。したがって、ノズル511からインク滴は吐出されない。
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子54の下部電極4と上部電極6との間に一定電圧(例えば30V程度)が印加された状態では、図6(b)に示すように圧電体膜6においてその短軸方向に撓み変形が生じる。これにより、弾性板55が例えば500nm程度撓み、キャビティー521の容積変化が生じる。このとき、キャビティー521内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル511からインク滴が吐出される。
すなわち、電圧を印加すると、圧電体膜6の結晶格子は面に対して垂直な方向に引き伸ばされるが、同時に面に平行な方向には圧縮される。この状態では、圧電体膜6にとっては面内に引っ張り応力が働いていることになる。したがって、この応力によって弾性板55をそらせ、撓ませることになる。キャビティー521の短軸方向での圧電体膜6の変位量(絶対値)が大きければ大きいほど、弾性板55の撓み量が大きくなり、より効率的にインク滴を吐出することが可能になる。本発明では、前述したように圧電素子54(1)の圧電体膜6の圧電定数(d31)が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすものとなっていることから、弾性板55の撓み量が大きくなり、インク滴をより効率的に吐出できるようになっている。
ここで、効率的とは、より少ない電圧で同じ量のインク滴を飛ばすことができることを意味する。すなわち、駆動回路を簡略化することができ、同時に消費電力を低減することができるため、ノズル511のピッチをより高密度に形成することができる。または、キャビティー521の長軸の長さを短くすることができるため、ヘッド全体を小型化することができる。
このようにして1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極4と上部電極7との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子54は元の形状に戻り、キャビティー521の容積が増大する。なお、このとき、インクには、後述するインクカートリッジ631からノズル511へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル511からインク室521へと入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ631からリザーバ523を経てキャビティー521へ供給される。
このように、インク滴の吐出を行わせたい位置の圧電素子54に対して、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
このような構成のヘッド50を製造するには、まず、インク室基板52となる母材、すなわち前述した(110)配向のシリコン単結晶基板(Si基板)からなる基板2を用意する。そして、図3に示したようにこの基板2上に弾性膜3を形成し、さらにその上に下部電極4、シード層5、圧電体膜6、上部電極7を順次形成する。なお、ここで形成した弾性膜3が、弾性板55となるのは前述した通りである。
次いで、上部電極7、圧電体膜6、シード層5、下部電極4を、形成する個々のキャビティー521に対応させてパターニングし、図4に示したようにキャビティー521の数に対応した数の圧電素子54を形成する。
次いで、インク室基板52となる母材(基板2)を加工(パターニング)し、前記圧電素子54に対応する位置にそれぞれキャビティー521となる凹部を、また、所定位置にリザーバ523および供給口524となる凹部を形成する。
具体的には、キャビティー521、リザーバ523および供給口524を形成すべき位置に合せてマスク層を形成し、その後、例えば平行平板型反応性イオンエッチング、誘導結合型方式、エレクトロンサイクロトロン共鳴方式、ヘリコン波励起方式、マグネトロン方式、プラズマエッチング方式、イオンビームエッチング方式等のドライエッチング、または5重量%〜40重量%程度の水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の高濃度アルカリ水溶液によるウエットエッチングを行う。
ここで、母材(基板2)として特に(110)配向のシリコン基板を用いた場合には、前述の高濃度アルカリ水溶液を用いたウエットエッチング(異方性エッチング)が好適に採用される。その場合に、この高濃度アルカリ水溶液によるウエットエッチングの際に、弾性膜3をエッチングストッパとして機能させることができ、したがってインク室基板52の形成をより容易に行うことができる。
このようにして母材(基板2)を、その厚さ方向に弾性板55(バッファ層3)が露出するまでエッチング除去することにより、インク室基板52を形成する。なお、このときエッチングされずに残った部分が側壁522となり、また、露出した弾性膜3は、弾性板55としての機能を発揮し得る状態となる。
次いで、複数のノズル511が形成されたノズル板51を、各ノズル511が各キャビティー521となる凹部に対応するように位置合わせし、その状態で接合する。これにより、複数のキャビティー521、リザーバ523および複数の供給口524が形成される。なお、ノズル板51の接合については、例えば接着剤による接着法や、融着法等を用いることができる。
その後、インク室基板52を基体56に取り付け、これによりインクジェット式記録ヘッド50を得る。
このようにして得られたインクジェット式記録ヘッド50にあっては、圧電素子54が良好な圧電特性を有することで効率的な吐出が可能となっていることから、ノズル511の高密度化などが可能となり、したがって高密度印刷や高速印刷を可能にし、さらにはヘッド全体の小型化を図ることができる。
(インクジェットプリンター)
次に、前記インクジェット式記録ヘッド50を備えたインクジェットプリンターについて説明する。なお、本発明においてインクジェットプリンターとは、紙等に印刷するものはもちろん、工業的に用いられる液滴吐出装置も含めたものとする。
図7は、本発明のインクジェットプリンターを、紙等に印刷する一般的なプリンターに適用した場合の一実施形態を示す概略構成図であり、図7中符号600はインクジェットプリンターである。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
インクジェットプリンター600は、装置本体620を備えたもので、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル670を有したものである。
操作パネル670は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成されたもので、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えたものである。
装置本体620の内部には、主に、往復動するヘッドユニット630を備えた印刷装置640と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御部660とが設けられている。
制御部660の制御により、給紙装置650は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙Pは、ヘッドユニット630の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット630が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙Pへの印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット630の往復動と、記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれるようになっている。
印刷装置640は、ヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット63を往復動させる往復動機構642とを備えたものである。
ヘッドユニット630は、その下部に、多数のノズル511を備える前記インクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有したものである。
なお、インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット630には、各色にそれぞれ対応したインクジェット式記録ヘッド50が設けられることになる。
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有したものである。
キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されたものである。
キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット63が往復動する。そして、この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われるようになっている。
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有したものである。
給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されたものであり、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されたものである。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置640に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成としてもよい。
制御部660は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置640や給紙装置650等を制御することにより印刷を行うものである。
この制御部660には、いずれも図示しないものの、主に各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)54を駆動してインクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置640(キャリッジモータ641)を駆動する駆動回路、給紙装置650(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、およびホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとが備えられている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット63の位置、温度、湿度等の印刷環境等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
制御部660は、通信回路を介して印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理し、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づき、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子54、印刷装置640および給紙装置650は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに所望の印刷がなされる。
このようなインクジェットプリンター600にあっては、前述したように高性能でノズルの高密度化が可能なインクジェット式記録ヘッド50を備えているので、高密度印刷や高速印刷が可能なものとなる。
なお、本発明のインクジェットプリンター600は、前述したように工業的に用いられる液滴吐出装置とすることもできる。その場合に吐出するインク(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整し、使用する。
また、本発明の圧電素子は、前述したインクジェット式記録ヘッド50やインクジェットプリンター600に適用されるだけでなく、種々のデバイスにも適用可能である。
以下、このようなデバイスとして、本発明に係る表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、並びに電子機器の実施形態を、図面を参照して説明する。
(表面弾性波素子)
図8に、本発明の圧電素子、すなわち図1に示したシード層5と圧電体膜6とを有する圧電素子を備えた表面弾性波素子の一実施形態を示す。
この表面弾性波素子は、単結晶シリコン基板11と、酸化物薄膜層12と、シード層13と、圧電体膜14と、保護膜としての酸化物又は窒化物からなる保護層15と、電極16とから構成されている。電極16はインターディジタル型電極(Inter−Digital Transducer:以下、「IDT電極」と表記する)であり、上部から観察すると、例えば後述する図9及び図10に示すインターディジタル型電極141、142、151、152、153のような形状を有するものである。
このような構成からなる表面弾性波素子を製造するには、まず、単結晶シリコン基板11として(100)単結晶シリコン基板を用意する。
次に、この単結晶シリコン基板11上に、レーザーアブレーション法等を用いて例えばIrOやTiOの薄膜を形成し、酸化物薄膜層12とする。
次いで、酸化物薄膜層12上に、前記圧電素子1の形成の場合と同様にして液相法でシード層13を形成し、さらにこの上に液相法で圧電体膜14を形成する。
次いで、この圧電体膜14上に、保護膜15としてSiO膜を例えばレーザーアブレーション法によって形成する。この保護膜15は、圧電体膜14を雰囲気から保護して例えば雰囲気中の水分や不純物による影響を防ぐと同時に、圧電体膜14の温度特性をコントロールする役割も果たす。なお、このような目的を満たす限り、保護膜の材質としてはSiOに限定されるものではない。
その後、保護層15上に例えばアルミニウム薄膜を成膜し、続いてこれをパターニングすることにより、IDTと呼ばれる所望の形状の電極16を形成し、図8に示した表面弾性波素子を得る。
このようにして得られた表面弾性波素子にあっては、圧電体膜14が良好な圧電特性を有していることにより、この表面弾性波素子自体も高性能なものとなる。
(周波数フィルタ)
図9に、本発明の周波数フィルタの一実施形態を示す。
図9に示すように、周波数フィルタは基板140を有するものである。この基板140としては、例えば図8に示した表面弾性波素子を形成した基板が用いられている。すなわち、(100)単結晶シリコン基板11上に酸化物薄膜層12と、シード層13と、圧電体膜14と、保護膜としての酸化物又は窒化物からなる保護層15とをこの順に積層した基板である。
基板140の上面には、IDT電極141及び142が形成されている。IDT電極141、142は、例えばAl又はAl合金によって形成されたもので、その厚みはIDT電極141、142のピッチの100分の1程度に設定されている。また、IDT電極141、142を挟むように、基板140の上面には吸音部143、144が形成されている。吸音部143、144は、基板140の表面を伝播する表面弾性波を吸収するものである。基板140上に形成されたIDT電極141には高周波信号源145が接続されており、IDT電極142には信号線が接続されている。
前記構成において、高周波信号源145から高周波信号が出力されると、この高周波信号はIDT電極141に印加され、これによって基板140の上面に表面弾性波が発生する。この表面弾性波は、約5000m/s程度の速度で基板140上面を伝播する。IDT電極141から吸音部143側へ伝播した表面弾性波は、吸音部143で吸収されるが、IDT電極142側へ伝播した表面弾性波のうち、IDT電極142のピッチ等に応じて定まる特定の周波数又は特定の帯域の周波数の表面弾性波は電気信号に変換されて、信号線を介して端子146a、146bに取り出される。なお、前記特定の周波数又は特定の帯域の周波数以外の周波数成分は、大部分がIDT電極142を通過して吸音部144に吸収される。このようにして、本実施形態の周波数フィルタが備えるIDT電極141に供給した電気信号の内、特定の周波数又は特定の帯域の周波数の表面弾性波のみを得る(フィルタリングする)ことができる。
(発振器)
図10に、本発明の発振器の一実施形態を示す。
図10に示すように、発振器は基板150を有するものである。この基板150としては、先の周波数フィルタと同様に、例えば図8に示した表面弾性波素子を形成した基板が用いられている。すなわち、(100)単結晶シリコン基板11上に酸化物薄膜層12と、シード層13と、圧電体膜14と、保護膜としての酸化物又は窒化物からなる保護層15とをこの順に積層した基板である。
基板150の上面には、IDT電極151が形成されており、さらに、IDT電極151を挟むように、IDT電極152、153が形成されている。IDT電極151〜153は、例えばAl又はAl合金によって形成されたもので、それぞれの厚みはIDT電極151〜153各々のピッチの100分の1程度に設定されている。IDT電極151を構成する一方の櫛歯状電極151aには、高周波信号源154が接続されており、他方の櫛歯状電極151bには、信号線が接続されている。なお、IDT電極151は、電気信号印加用電極に相当し、IDT電極152、153は、IDT電極151によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分又は特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極に相当する。
前記構成において、高周波信号源154から高周波信号が出力されると、この高周波信号は、IDT電極151の一方の櫛歯状電極151aに印加され、これによって基板150の上面にIDT電極152側に伝播する表面弾性波及びIDT電極153側に伝播する表面弾性波が発生する。なお、この表面弾性波の速度は5000m/s程度である。これらの表面弾性波の内の特定の周波数成分の表面弾性波は、IDT電極152及びIDT電極153で反射され、IDT電極152とIDT電極153との間には定在波が発生する。この特定の周波数成分の表面弾性波がIDT電極152、153で反射を繰り返すことにより、特定の周波数成分又は特定の帯域の周波数成分が共振して、振幅が増大する。この特定の周波数成分又は特定の帯域の周波数成分の表面弾性波の一部は、IDT電極151の他方の櫛歯状電極151bから取り出され、IDT電極152とIDT電極153との共振周波数に応じた周波数(又はある程度の帯域を有する周波数)の電気信号が端子155aと端子155bに取り出すことができる。
図11は、本発明の発振器(表面弾性波素子)をVCSO(Voltage Controlled SAW Oscillator:電圧制御SAW発振器)に応用した場合の一例を示す図であり、(a)は側面透視図であり、(b)は上面透視図である。
VCSOは、金属製(Al又はステンレススチール製)の筐体60内部に実装されて構成されている。基板61上には、IC(Integrated Circuit)62及び発振器63が実装されている。この場合、IC62は、外部の回路(不図示)から入力される電圧値に応じて、発振器63に印加する周波数を制御する発振回路である。
発振器63は、基板64上に、IDT電極65a〜65cが形成されており、その構成は、図10に示した発振器とほぼ同様である。なお、基板64には、先の例と同様で図8に示したように、(100)単結晶シリコン基板11上に酸化物薄膜層12と、シード層13と、圧電体膜14と、保護膜としての酸化物又は窒化物からなる保護層15とをこの順に積層した基板である。
基板61上には、IC62と発振器63とを電気的に接続するための配線66がパターニングされている。IC62及び配線66が例えば金線等のワイヤー線67によって接続され、発振器63及び配線66が金線等のワイヤー線68によって接続されることにより、IC62と発振器63とが配線66を介して電気的に接続されている。
また、前記のVCSOは、IC62と発振器(表面弾性波素子)63を同一基板上に集積させて形成することも可能である。
図12に、IC62と発振器63とを集積させたVCSOの概略図を示す。なお、図10中において発振器63は、図8に示した表面弾性波素子において第2の酸化物薄膜層13の形成を省略した構造を有するものとしている。
図12に示すように、VCSOは、IC62と発振器63とにおいて、単結晶シリコン基板61(11)を共有させて形成されている。IC62と、発振器63に備えられた電極65a(15)とは、図示しないものの電気的に接続されている。本実施形態では、IC62を構成するトランジスタとして、特に、TFT(薄膜トランジスタ)を採用している。
IC62を構成するトランジスタとしてTFTを採用することにより、本実施形態では、まず、単結晶シリコン基板61上に発振器(表面弾性波素子)63を形成し、その後、単結晶シリコン基板61とは別の第2の基板上で形成したTFTを、単結晶シリコン基板61上に転写させて、TFTと発振器63を集積させることができる。したがって、基板上にTFTを直接形成させることが困難か、形成させることが適さない材料であっても、転写により好適に形成させることが可能となる。転写方法については、種々の方法が採用可能であるが、特に、特開平11−26733号公報に記載の転写方法が好適に採用できる。
図11及び図12に示したVCSOは、例えば、図13に示すPLL回路のVCO(Voltage Controlled Oscillator)として用いられる。ここで、PLL回路について簡単に説明する。
図13はPLL回路の基本構成を示すブロック図であり、この図13に示すようにPLL回路は、位相比較器71、低域フィルタ72、増幅器73、及びVCO74から構成されている。位相比較器71は、入力端子70から入力される信号の位相(又は周波数)とVCO74から出力される信号の位相(又は周波数)とを比較し、その差に応じて値が設定される誤差電圧信号を出力するものである。低域フィルタ72は、位相比較器71から出力される誤差電圧信号の位置の低周波成分のみを通過させるものであり、増幅器73は、低域フィルタ72から出力される信号を増幅するものである。VCO74は、入力された電圧値に応じて発振する周波数がある範囲で連続的に変化する発振回路である。
このような構成のもとにPLL回路は、入力端子70から入力される位相(又は周波数)とVCO74から出力される信号の位相(又は周波数)との差が減少するように動作し、VCO74から出力される信号の周波数を入力端子70から入力される信号の周波数に同期させる。VCO74から出力される信号の周波数が入力端子70から入力される信号の周波数に同期すると、その後は一定の位相差を除いて入力端子70から入力される信号に一致し、また、入力信号の変化に追従するような信号を出力するようになる。
(電子回路及び電子機器)
図14に、本発明の電子回路の一実施形態として、その電気的構成をブロック図で示す。なお、図14に示す電子回路は、例えば、図15に示す携帯電話機100の内部に設けられる回路である。ここで、図15に示した携帯電話機100は、本発明の電子機器の一例としてのもので、アンテナ101、受話器102、送話器103、液晶表示部104、及び操作釦部105等を備えて構成されたものである。
図14に示した電子回路は、前記携帯電話機100内に設けられる電子回路の基本構成を有したもので、送話器80、送信信号処理回路81、送信ミキサ82、送信フィルタ83、送信電力増幅器84、送受分波器85、アンテナ86a,86b、低雑音増幅器87、受信フィルタ88、受信ミキサ89、受信信号処理回路90、受話器91、周波数シンセサイザ92、制御回路93、及び入力/表示回路94を備えて構成されたものである。なお、現在実用化されている携帯電話機は、周波数変換処理を複数回行っているため、その回路構成はより複雑となっている。
送話器80は、例えば音波信号を電気信号に変換するマイクロフォン等で実現されるもので、図15に示す携帯電話機100中の送話器103に相当するものである。送信信号処理回路81は、送話器80から出力される電気信号に対して、例えばD/A変換処理、変調処理等の処理を施す回路である。送信ミキサ82は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。なお、送信ミキサ82に供給される信号の周波数は、例えば380MHz程度である。送信フィルタ83は、中間周波数(以下、「IF」と表記する)の必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。なお、送信フィルタ83から出力される信号は、図示しない変換回路によってRF信号に変換されるようになっている。このRF信号の周波数は、例えば1.9GHz程度である。送信電力増幅器84は、送信フィルタ83から出力されるRF信号の電力を増幅し、送受分波器85へ出力するものである。
送受分波器85は、送信電力増幅器84から出力されるRF信号をアンテナ86a,86bへ出力し、アンテナ86a,86bから電波の形で送信するものである。また、送受分波器85は、アンテナ86a,86bで受信した受信信号を分波して、低雑音増幅器87へ出力するものである。なお、送受信分波器85から出力される受信信号の周波数は、例えば2.1GHz程度である。低雑音増幅器87は、送受分波器85からの受信信号を増幅するものである。なお、低雑音増幅器87から出力される信号は、図示しない変換回路によってIFに変換されるようになっている。
受信フィルタ88は、図示しない変換回路によって変換されたIFの必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。受信ミキサ89は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて、送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。なお、受信ミキサ89に供給される中間周波数は、例えば190MHz程度である。受信信号処理回路90は、受信ミキサ89から出力される信号に対して、例えばA/D変換処理、復調処理等の処理を施す回路である。受話器91は、例えば電気信号を音波に変換する小型スピーカ等で実現されるもので、図17に示した携帯電話機100中の受話器102に相当するものである。
周波数シンセサイザ92は、送信ミキサ82へ供給する信号(例えば、周波数380MHz程度)及び受信ミキサ89へ供給する信号(例えば、周波数190MHz)を生成する回路である。なお、周波数シンセサイザ92は、例えば760MHzの発振周波数で発信するPLL回路を備え、このPLL回路から出力される信号を分周して周波数が380MHzの信号を生成し、さらに分周して周波数が190MHzの信号を生成するようになっている。制御回路93は、送信信号処理回路81、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、及び入力/表示回路94を制御することにより、携帯電話機の全体動作を制御するものである。入力/表示回路94は、図15に示した携帯電話機100の使用者に対して機器の状態を表示したり、操作者の指示を入力するためのものであり、例えばこの携帯電話機100の液晶表示部104及び操作釦部105に相当するものである。
以上の構成の電子回路において、送信フィルタ83及び受信フィルタ88として、図9に示した周波数フィルタが用いられている。フィルタリングする周波数(通過させる周波数)は、送信ミキサ82から出力される信号の内の必要となる周波数、及び、受信ミキサ89で必要となる周波数に応じて送信フィルタ83及び受信フィルタ88で個別に設定されている。また、周波数シンセサイザ92内に設けられるPLL回路は、図11に示したPLL回路のVCO74として、図11に示した発振器又は図12に示した発振器(VCSO)を設けたものである。
(薄膜圧電共振器)
図16に、本発明の薄膜圧電共振器の一実施形態を示す。図16中符号30は特に通信用素子や通信用フィルタとして用いられるダイアフラム型の薄膜圧電共振器であり、この薄膜圧電共振器30は、単結晶シリコン基板からなる基体31上に、弾性板32を介して共振子33を形成したものである。
基体31は、(110)配向した厚さ200μm程度の単結晶シリコン基板からなるもので、その底面側(共振子32と反対の側)には、該基体31の底面側から上面側にまで貫通するビアホール34が形成されている。
弾性板32は、本実施形態では図1に示した圧電素子1における弾性膜3によって形成されたもので、前記基体31の(110)面上に形成されたものである。また、共振子33は、図1に示した圧電素子1における下部電極4、シード層5、圧電体膜6、上部電極7によって形成されている。このような構成のもとに薄膜圧電共振器30は、基体31上に図1に示した圧電素子1の主部(基体2を除く部分)をそのまま形成した構成のものとなっている。
なお、この弾性板32については、例えば基体31上に窒化シリコン(SiN)を厚さ200nm程度に形成し、さらにその上に二酸化シリコン(SiO)を厚さ400nm〜3μm程度に形成しておき、これらの上に前記弾性膜3を形成して、これら窒化シリコンと二酸化シリコンと弾性膜3との積層膜を弾性板32としてもよい。また、このように基体2上に窒化シリコンと二酸化シリコンとを形成する場合、弾性膜3を形成せず、これら積層膜のみから弾性板32を形成するようにしてもよい。
下部電極4は、(111)配向したPtからなっており、その厚さが200nm程度に厚く形成されている。
シード層5は、Bi層状化合物からなり、かつc軸(001)に優先配向してなるもので、具体的には以下の式に示すBi層状化合物等からなっており、厚さが0.1μm以下に形成されている。
・SrBi(Ta1−xNb
(但し、0≦x≦1.0)(m=2)
・(Bi1−xLaTi12
(但し、0≦x≦0.4)(m=3)
・SrBiMe15
(但し、MeはTi,Zr,Hfの少なくとも一種)(m=4)
圧電体膜6は、ペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなっており、厚さが0.9μm程度に形成されている。
上部電極7は、前記下部電極4と同様、Ptからなっている。ただし、この上部電極6、本実施形態では厚さ700nm程度に厚く形成されている。
なお、この上部電極6には、弾性板32上に形成された電極35に電気的に接続するための、金等からなる配線37がパッド36を介して設けられている。
このような構成の薄膜圧電共振器30を製造するには、まず、基体31となる母材、すなわち前述した(110)配向の単結晶シリコン基板(Si基板)を用意する。そして、このSi基板上に弾性膜3を形成し、さらにその上に下部電極4、シード層5、圧電体膜6、上部電極7を順次形成する。なお、弾性板32として窒化シリコンと二酸化シリコンとバッファ層3との積層膜を採用する場合には、弾性膜3の形成に先立ってSi基板上に窒化シリコンと二酸化シリコンとをこの順に形成しておく。
次いで、上部電極7、圧電体膜6、シード層5、下部電極4を、形成するビアホール34に対応させてそれぞれパターニングし、共振子33を形成する。なお、特に下部電極4のパターニングに際しては、図16に示したように下部電極4とは別に電極35も同時に形成しておく。
次いで、単結晶シリコン基板をその底面側からエッチング等によって加工(パターニング)し、これを貫通するビアホール34を形成する。
その後、上部電極7と電極35との間を接続するパッド36及び配線37を形成し、薄膜圧電共振器30を得る。
このようにして得られた薄膜圧電共振器30にあっては、共振子の圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがって高い電気機械結合係数を有することから、例えばGHz帯などの高周波数領域で使用可能なものとなり、また、小型(薄型)であるにもかかわらず良好に機能するものとなる。
図17は、本発明の薄膜圧電共振器の他の実施形態を示す図であり、図17中符号40は薄膜圧電共振器である。この薄膜圧電共振器40が図16に示した薄膜圧電共振器30と主に異なるところは、ビアホールを形成せず、基体41と共振子42との間にエアギャップ43を形成した点にある。
すなわち、この薄膜圧電共振器40は、(110)配向した単結晶シリコン基板からなる基体41上に、共振子42を形成したものである。この共振子42は、前述した下部電極4、シード層5、圧電体膜6、上部電極7と同じ材質からなる下部電極44、シード層及び圧電体膜からなる圧電材料層45、上部電極46によって形成されたもので、特にエアギャップ43上にてこれら下部電極44、圧電材料層45、上部電極46が積層されたことにより、形成されたものである。
ここで、本実施形態では、下部電極44の下側に前記エアギャップ43を覆った状態で弾性膜3が形成されており、この弾性膜3が先の例と同様に弾性板47となっている。なお、この弾性板47についても、先の例と同様に基体41上に窒化シリコンと二酸化シリコンとを形成しておき、あるいは二酸化シリコンのみを形成しておき、これの上に弾性膜層3を形成してこれらの積層膜を弾性板47としてもよい。また、弾性膜層3を形成せず、窒化シリコンと二酸化シリコンとの積層膜、あるいは二酸化シリコンのみから弾性板47を形成してもよい。
このような構成の薄膜圧電共振器40を形成するには、まず、基体41上に例えばゲルマニウム(Ge)を蒸着等によって成膜し、さらにこれを形成するエアギャップの形状と同じ形状にパターニングすることにより、犠牲層を形成する。
次に、この犠牲層を覆って弾性膜3を形成する。なお、これに先だって窒化シリコンと二酸化シリコンとを形成しておき、あるいは二酸化シリコンのみを形成しておいてもよい。続いて、これらバッファ層を所望形状にパターニングする。
次いで、弾性膜3を覆って下部電極44となる層を形成し、さらにこれをドライエッチング等でパターニングすることにより、下部電極44を形成する。
次いで、下部電極44を覆ってシード層及び圧電体膜をこの順に形成し、これら積層膜から圧電材料層45となる層を形成し、さらにこれをドライエッチング等でパターニングすることにより、圧電材料層45を形成する。
次いで、圧電材料層45を覆って上部電極46となる層を形成し、さらにこれをドライエッチング等でパターニングすることにより、上部電極46を形成する。なお、このようにして犠牲層の上に、弾性膜3、下部電極44、圧電材料層45、上部電極46をそれぞれパターニングして形成することにより、犠牲層はその一部が外側露出したものとなる。
その後、前記犠牲層を例えば過酸化水素水(H)でエッチングするで基体41上から除去し、これによってエアギャップ43を形成することにより、薄膜圧電共振器40を得る。
このようにして得られた薄膜圧電共振器40にあっても、共振子の圧電体膜の圧電特性が良好であり、したがって高い電気機械結合係数を有することから、例えばGHz帯などの高周波数領域で使用可能なものとなり、また、小型(薄型)であるにもかかわらず良好に機能するものとなる。
また、前述した薄膜圧電共振器30、40にあっては、インダクタンスやコンデンサ等の回路構成要素と適宜に組み合わされることにより、良好な誘導フィルタを構成するものとなる。
以上、本発明の実施形態による表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器及び電子機器(携帯電話機100)について説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては電子機器として携帯電話機を、電子回路として携帯電話機内に設けられる電子回路をその一例として挙げ、説明したが、本発明は携帯電話機に限定されることなく、種々の移動体通信機器及びその内部に設けられる電子回路に適用することができる。
さらに、移動体通信機器のみならずBS及びCS放送を受信するチューナ等の据置状態で使用される通信機器及びその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。さらには、通信キャリアとして空中を伝播する電波を使用する通信機器のみならず、同軸ケーブル中を伝播する高周波信号又は光ケーブル中を伝播する光信号を用いるHUB等の電子機器及びその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。
本発明の圧電素子の一実施形態を示す断面図である。 (a)、(b)はリラクサー材料を説明するためのグラフである。 (a)〜(e)は圧電素子の製造工程図である。 インクジェット式記録ヘッドの概略構成図である。 インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。 (a)、(b)はヘッドの動作を説明するための図である。 本発明のインクジェットプリンターの概略構成図である。 本発明に係る表面弾性波素子を示す側断面図である。 本発明に係る周波数フィルタを示す斜視図である。 本発明に係る発振器を示す斜視図である。 前記発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図である。 前記発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図である。 PLL回路の基本構成を示すブロック図である。 本発明に係る電子回路の構成を示すブロック図である。 電子機器の実施形態としての携帯電話機を示す斜視図である。 本発明に係る薄膜圧電共振器を示す側断面図である。 本発明に係る薄膜圧電共振器を示す側断面図である。
符号の説明
1…圧電素子、2…基板、3…弾性膜、4…下部電極、5…シード層、6…圧電体膜、
7…上部電極、11…単結晶シリコン基板(単結晶基板)、14…圧電体膜、
50…インクジェット式記録ヘッド(ヘッド)、54…圧電素子、
60…インクジェットプリンター、521…キャビティー

Claims (14)

  1. 基体上に形成されたシード層と、該シード層上に形成された圧電体膜とを備えてなり、
    前記シード層は、一般式Bim−13m+3(但し、m=2,3,4、AはBa,Ca,Sr,La,Biから選ばれる金属元素、BはFe,Ga,Ti,Ta,Nb,V,Mo,W,Zr,Hfから選ばれる金属元素)で示されるビスマス層状化合物からなり、かつc軸(001)に優先配向してなるものであり、
    前記圧電体膜は、ペロブスカイト型で擬立方晶(100)に優先配向したリラクサー材料からなることを特徴とする圧電素子。
  2. 前記リラクサー材料は、ペロブスカイト型でロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向していることを特徴とする請求項1記載の圧電素子。
  3. 前記シード層は、以下の式で示される材料のうちの少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電素子。
    ・SrBi(Ta1−xNb(但し、0≦x≦1.0)
    ・(Bi1−xLaTi12(但し、0≦x≦0.4)
    ・SrBiMe15(但し、MeはTi,Zr,Hfの少なくとも一種)
  4. 前記リラクサー材料は、以下の式で示される材料のうちの少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電素子。
    ・(1−x)Pb(Sc1/2Nb1/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.42)
    ・(1−x)Pb(In1/2Nb1/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.37)
    ・(1−x)Pb(Ga1/2Nb1/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.50)
    ・(1−x)Pb(Sc1/2Ta1/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.45)
    ・(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.35)
    ・(1−x)Pb(Fe1/2Nb1/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.01<x<0.10)
    ・(1−x)Pb(Zn1/3Nb2/3)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.01<x<0.11)
    ・(1−x)Pb(Ni1/3Nb2/3)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.08<x<0.38)
    ・(1−x)Pb(Co1/21/2)O−xPbTiO
    (ただし、xは0.10<x<0.42)
  5. 前記圧電素子は、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧電体膜の変形によって前記キャビティーの内容積を変化させるものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電素子を備えた圧電アクチュエーター。
  7. 内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドにおいて、
    圧電体膜の変形によって前記キャビティーの内容積を変化させる圧電素子として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電素子を備えたことを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  8. 請求項7記載のインクジェット式記録ヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンター。
  9. 基板上に請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子が形成されてなることを特徴とする表面弾性波素子。
  10. 請求項9記載の表面弾性波素子が備える前記圧電体膜の上に形成された第1の電極と、
    前記圧電体膜の上に形成され、前記第1の電極に印加される電気信号によって前記圧電体膜に生ずる表面弾性波の特定の周波数又は特定の帯域の周波数に共振して電気信号に変換する第2の電極と、を備えることを特徴とする周波数フィルタ。
  11. 請求項9記載の表面弾性波素子が備える前記圧電体膜の上に形成され、印加される電気信号によって前記圧電体膜に表面弾性波を発生させる電気信号印加用電極と、
    前記圧電体膜の上に形成され、前記電気信号印加用電極によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分又は特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極とトランジスタとを含む発振回路と、を備えることを特徴とする発振器。
  12. 請求項11記載の発振器と、
    前記発振器に設けられている前記電気信号印加用電極に対して前記電気信号を印加する電気信号供給素子とを備えてなり、
    前記電気信号の周波数成分から特定の周波数成分を選択し、若しくは特定の周波数成分に変換し、又は、前記電気信号に対して所定の変調を与え、所定の復調を行い、若しくは所定の検波を行う機能を有することを特徴とする電子回路。
  13. 基体上に請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子からなる共振子が形成されてなることを特徴とする薄膜圧電共振器。
  14. 請求項10記載の周波数フィルタ、請求項11記載の発振器、請求項12記載の電子回路、請求項13記載の薄膜圧電共振器のうちの、少なくとも1つを有することを特徴とする電子機器。
JP2004115373A 2004-04-09 2004-04-09 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器 Withdrawn JP2005302933A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004115373A JP2005302933A (ja) 2004-04-09 2004-04-09 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004115373A JP2005302933A (ja) 2004-04-09 2004-04-09 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005302933A true JP2005302933A (ja) 2005-10-27

Family

ID=35334086

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004115373A Withdrawn JP2005302933A (ja) 2004-04-09 2004-04-09 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005302933A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7622850B2 (en) * 2004-12-28 2009-11-24 Seiko Epson Corporation Piezoelectric device, piezoelectric actuator, piezoelectric pump, inkjet recording head, inkjet printer, surface acoustic wave device, thin-film piezoelectric resonator, frequency filter, oscillator, electronic circuit, and electronic instrument
US20110050811A1 (en) * 2009-08-27 2011-03-03 Seiko Epson Corporation Liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus using the same
JP2012121316A (ja) * 2010-11-16 2012-06-28 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
JP5013269B2 (ja) * 2006-01-17 2012-08-29 株式会社村田製作所 共振アクチュエータ
JP2014146772A (ja) * 2013-01-30 2014-08-14 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びセンサー
JP2015195373A (ja) * 2014-03-24 2015-11-05 セイコーエプソン株式会社 圧電素子及び圧電素子応用デバイス
CN112838838A (zh) * 2020-12-30 2021-05-25 广东广纳芯科技有限公司 一种具有单晶pmnt的声表面波谐振器及制造方法
CN116315618A (zh) * 2023-05-08 2023-06-23 安徽大学 一种微型化多波束低频/5g/6g连续频率可调天线

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7622850B2 (en) * 2004-12-28 2009-11-24 Seiko Epson Corporation Piezoelectric device, piezoelectric actuator, piezoelectric pump, inkjet recording head, inkjet printer, surface acoustic wave device, thin-film piezoelectric resonator, frequency filter, oscillator, electronic circuit, and electronic instrument
JP5013269B2 (ja) * 2006-01-17 2012-08-29 株式会社村田製作所 共振アクチュエータ
US20110050811A1 (en) * 2009-08-27 2011-03-03 Seiko Epson Corporation Liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus using the same
US8919933B2 (en) * 2009-08-27 2014-12-30 Seiko Epson Corporation Liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus using the same
JP2012121316A (ja) * 2010-11-16 2012-06-28 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
JP2014146772A (ja) * 2013-01-30 2014-08-14 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びセンサー
JP2015195373A (ja) * 2014-03-24 2015-11-05 セイコーエプソン株式会社 圧電素子及び圧電素子応用デバイス
CN112838838A (zh) * 2020-12-30 2021-05-25 广东广纳芯科技有限公司 一种具有单晶pmnt的声表面波谐振器及制造方法
CN116315618A (zh) * 2023-05-08 2023-06-23 安徽大学 一种微型化多波束低频/5g/6g连续频率可调天线
CN116315618B (zh) * 2023-05-08 2023-10-31 安徽大学 一种微型化多波束低频/5g/6g连续频率可调天线

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4192794B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器
JP4165347B2 (ja) 圧電素子の製造方法
JP4224710B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
US7622850B2 (en) Piezoelectric device, piezoelectric actuator, piezoelectric pump, inkjet recording head, inkjet printer, surface acoustic wave device, thin-film piezoelectric resonator, frequency filter, oscillator, electronic circuit, and electronic instrument
US7291960B2 (en) Piezoelectric device, piezoelectric actuator, piezoelectric pump, inkjet recording head, inkjet printer, surface acoustic wave device, thin-film piezoelectric resonator, frequency filter, oscillator, electronic circuit, and electronic instrument
JP4224709B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
JP4224708B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
JP2005302933A (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、及び電子機器
JP4605349B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
JP2006114562A (ja) 圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、薄膜圧電共振子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、および電子機器
JP2006086368A (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振子、および電子機器
JP2006069837A (ja) 圧電体層、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振子、および電子機器
JP4605348B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
JP2005166912A (ja) 強誘電体薄膜の製造方法、強誘電体メモリ素子、圧電体素子、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、及び電子機器
JP2003289161A (ja) 圧電素子、インクジェット式ヘッドおよび吐出装置
JP5196106B2 (ja) 圧電素子の製造方法
JP2005353756A (ja) 圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器
JP2003282987A (ja) 電子デバイスおよびインクジェットプリンタ
JP2013077827A (ja) 圧電素子の製造方法
JP4678410B2 (ja) ヘッドの製造方法及びプリンタの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20070703