JP2005343065A - シールリング成形金型及びシールリング - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 シールリング成形金型を、ブロック12a及びブロック12bから構成された可動金型10と、ブロック22a及びブロック22bから構成された固定金型20とから構成し、可動金型10及び固定金型20の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cを形成する。
【選択図】 図1
Description
このようなハブシール1を構成するシールリング6の成形方法としては、射出成形、射出圧縮成形等の方法がある。
図17に示すように、射出成形には、第一の金型(以下、可動金型10と示す)及び第二の金型(以下、固定金型20と示す)を用いる。可動金型10は、固定金型20と対向する面に凹部14が形成されており、型閉じ方向(図の上方向)及び型開き方向(図の下方向)に移動可能となっている。また、図の上下方向に移動可能なエジェクタピン16が設けられている。固定金型20の可動金型10と対向する面には、コア24a及びコア24bが形成されている。
このような可動金型10及び固定金型20には、表面からのシールリング6の離型性を向上させるために、特許文献1に示す表面処理が行われている。この表面処理は、可動金型10及び固定金型20の表面に、厚さ1μmの硬質炭素皮膜を形成するものである。
また、シールリング6の材料となるゴムは、シールリング6の成形時に化学反応による溶融ゴムの架橋及び加硫を行なうため、加硫剤や加硫促進剤等の数多くの配合剤を必要としている。このため、化学反応による金型汚染が発生することがあり、この金型汚染によって、金型からのシールリング6の離型性、成形したシールリング6の外観や寸法、表面の光沢等に不良が生じる場合がある。さらに、固定金型20のうち、各シールリップLa,Lb,Lcの先端近傍を成形する部分には、加硫時に発生するガスが溜まりやすく、このガスによって金型汚染が発生する場合がある。
金型表面の処理方法としては、化学的気相蒸着法、物理的気相蒸着法、ポリマーコーティング処理、化学処理、めっき処理等(「ゴム用金型の汚染防止と金型汚染の実際」、ISS産業化学システムズ、1998)があるが、これらの処理は樹脂を成形する金型の表面処理一般であり、ゴムを成形する金型に使用されているものはごく一部である。これらの処理方法を、ゴムを成形する金型に使用した例としては、物理的気相蒸着法による金型表面への窒化チタン膜及び複合多層チタン膜の被覆や、クロムめっき処理が知られている(「豊田合成技報」27,57)。しかし、窒化チタン膜及び複合多層チタン膜による金型表面の被覆や、クロムめっき処理では、金型表面の汚染を防止するには不十分である。また、クロムめっき処理皮膜は皮膜厚さが厚く、皮膜厚さが不均一なために形状及び寸法の変化が大きく、シールリング成形金型には適していない。
また、金型表面へ離型剤を塗布すると、この離型剤が熱劣化及び熱酸化劣化を受けて焼きついてしまい、金型表面からのシールリング6の離型性が悪化して、金型表面の汚染が生じてしまう場合がある。さらに、焼きついた離型剤がアルカリあるいは酸系洗浄剤によって軽易に洗浄できないため、作業効率が低下してしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、金型表面に適切な処理を施すことにより、金型表面の耐汚染性及びシールリングの離型性を向上させることが可能であり、また、シールリップに形成されたくびれ部に塑性変形を生じることがないシールリング成形金型を提供することを課題とする。
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とするものである。
ここで、硬質炭素皮膜の厚さは、以下に示す理由によって1〜5μmとしている。
硬質炭素皮膜の厚さが1μm未満の場合は、金型からのシールリングの離型性がほとんど得られず、金型汚染の防止も十分ではない。硬質炭素皮膜の厚さが5μmを超えている場合は、硬質炭素皮膜を形成するための処理時間が長くかかるためにコストが増加し、また、硬質炭素皮膜の厚さ精度が低下してしまうため、硬質炭素皮膜の厚さが不均一となる。
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成するとともに、前記第一の金型又は第二の金型を前記くびれ部の成形位置と前記シールリップ先端部又はシールリップ先端部近傍の成形位置との間で、かつ型開き方向に沿った面で分割し、これらの分割したブロックのうち少なくとも一つを前記第一の金型又は第二の金型の型閉じ及び型開き方向へ移動可能に構成したことを特徴とするものである。
本発明によると、金型汚染が防止され、金型からのシールリングの離型性が向上するとともに、金型の型開き時にシールリップのくびれ部に塑性変形が生じることが防止される。
本発明によると、分割したブロック同士の接触面に金型汚染が生じることが防止されるとともに、分割したブロックが円滑に移動することが可能となる。
本発明によると、離型剤が第一の金型及び第二の金型の表面に焼きつくことがなく、金型汚染の発生及び離型性の低下が防止される。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した発明であって、シールリング成形金型によって成形されたことを特徴とするハブシールである。
まず、図1ないし図3を用いて、本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態では、図16に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。
可動金型10は、分割されたブロック12aとブロック12bとを一体化して構成されており、型閉じ及び型開き方向に移動可能となっている。また、固定金型20と対向する面に凹部14が設けられており、ブロック12aには、図の上下方向に移動可能なエジェクタピン16が設けられている。なお、エジェクタピン16の先端にも、可動金型10及び固定金型20の表面と同様に、厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
なお、可動金型10及び固定金型20の材質は、硬さがHRC30以上のプリハードン鋼とすることが好適である。その理由は、シールリング成形金型のように複雑な形状の金型は、焼入れ後の変形を後加工で調整することが困難であり、プリハードン鋼は、加工後の焼き入れ及び焼き戻しを行わなくても、使用時の硬度が一定値(HRC30)以上となるため好適である。
なお、可動金型10及び固定金型20の材質は、上記したプリハードン鋼に限定されるものではない。
まず、図2に示すように、可動金型10の凹部14内においてエジェクタピン16の上方に補強環2を挿入する。次に、図3に示すように、可動金型10を型閉じ方向に移動させ、可動金型10と固定金型20とを接触させるとともに、コア24a,24bを凹部14内へ挿入する。なお、可動金型10及び固定金型20の表面には、離型剤を塗布していない。
本実施形態では、図4に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。このシールリング6は、シールリップLaの基部近傍にくびれ部8aが形成されているため、シールリップLa先端と金属環26との接触圧力が変化しても、シールリップLa先端と金属環26との最適な摺動圧力を常時得ることが可能である。
本実施形態で用いるシールリング成形金型は、第一実施形態と同様に、可動金型10と固定金型20とから構成されており、可動金型10及び固定金型20の表面には、図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
固定金型20は、コア24aが形成されたブロック22aと、コア24bが形成されたブロック22bとから構成されている。ブロック22a及びブロック22bは、シールリップLa先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されている。コア24a及びコア24bは、シールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。ブロック22bは、可動金型10の型閉じ及び型開き方向(図の上下方向)に移動可能となっており、ブロック22bが移動する際はブロック22aに対して摺動する。また、ブロック22a及びブロック22bの各摺動面には、それぞれ図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
その他の構成は、第一実施形態と同様である。
まず、図5に示すように、第一実施形態と同様の手順によって、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、シールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。
次に、図6に示すように、ブロック22bを図の上方向に移動させ、シールリング6からブロック22bを離型させる。このとき、ブロック22aとブロック22bとの摺動面には硬質炭素皮膜Cが形成されているため、各摺動面の磨耗が最小限に抑えられる。なお、ブロック22bの移動量は、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上とする。
なお、ブロック22bを移動させる際にシールリップLbの一部に圧縮変形が生じるが、シールリップLbの外径面及び内径面が同時に離型せず、内径面のみが離型するため、シールリップLbに塑性変形が生じることはない。
その他の作用・効果は、第一実施形態と同様である。
本実施形態では、図8に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。このシールリング6は、四枚のシールリップLa,Lb,Lc,Ldを有している。シールリップLaの基部近傍にはくびれ部8aが形成されており,シールリップLdの基部近傍にはくびれ部8dが形成されている。
本実施形態で用いるシールリング成形金型は、第一実施形態と同様に、可動金型10と固定金型20とから構成されており、可動金型10及び固定金型20の表面には、図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
固定金型20は、コア24aが形成されたブロック22aと、コア24bが形成されたブロック22bと、コア24cが形成されたブロック22cとから構成されている。ブロック22aとブロック22bとは、シールリップLd先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されており、ブロック22bとブロック22cとは、シールリップLa先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されている。コア24aは、シールリップLdのくびれ部8dと対応した形状となっており、コア24bは、シールリップLdのくびれ部8d及びシールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。また、コア24cは、シールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。
その他の構成は、第一実施形態と同様である。
まず、図9に示すように、第一実施形態と同様の手順を用いて、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、シールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。
次に、図10に示すように、ブロック22cを図の上方向に移動させ、シールリング6からブロック22cを離型させる。なお、ブロック22cの移動量は、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上とする。
その他の作用・効果は、第一及び第二実施形態と同様である。
したがって、上述した各実施形態によれば、可動金型10及び固定金型20の離型性が向上するため、成形したシールリング6の外観及び寸法、表面の光沢等に不良が生じることが防止される。また、シールリップLのくびれ部8に塑性変形が生じることが防止されるため、各シールリップL先端と金属環26との接触圧力が変化しても、各シールリップL先端と金属環26との最適な摺動圧力を、常時得ることが可能なシールリング6を成形することが可能となる。
また、硬質炭素皮膜Cを形成する処理は、充填材として溶融ゴムを用いる全ての金型に対応可能であるが、ニトリルゴム及び天然ゴム等のように、特に金型汚染が大きい硫黄加硫系のゴムを材料として用いる金型に適用すると高い効果が得られる。
金型の材料にはNAK55(大同特殊鋼:析出硬化系)を使用し、溶融ゴムの材料にはニトリルゴムを使用した。
金型には離型剤を塗布せずに、未処理、硬質クロムめっき(Cr:厚さ30μm)、ニッケル−リンめっき(Ni−P:厚さ20μm)、窒化チタン(TiN:厚さ2μm)、硬質炭素皮膜(DLC:厚さ2μm)の五種類の表面処理を行った。
金型の耐汚染性及び離型性を、成形品を実体双眼鏡により観察して評価した結果は、次のようになった。
Ni−P<未処理<TiN≦Cr<DLC
また、未処理品は数十回の成形で汚染が発生して、成形品の表面が悪くなった。TiN及びCrついてはほぼ同等であり、汚染が発生せずに300〜400回の成形が可能であった。DLCについては1000回以上まで汚染が発生せずに成形可能であった。
摺動面の耐磨耗性の評価結果は、次のようになった。
未処理<TiN≦Cr<DLC
TiN及びCrでは部分的に2〜3μmの磨耗が発生していたが、DLCには傷及び磨耗は発生していなかった。
したがって、本評価試験により、DLC処理を行った金型は、耐汚染性、離型性、摺動面の耐磨耗性が良好であることが確認された。
2 補強環
4 ランナー
6 シールリング
8 くびれ部
10 可動金型
12 ブロック
14 凹部
16 エジェクタピン
20 固定金型
22 ブロック
24 コア
26 金属環
28 グリース
30 外輪
40 内輪
C 硬質炭素皮膜
L シールリップ
Claims (5)
- 内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装され且つシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とするシールリング成形金型。 - 内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装されるとともに、先端と基部との間に基部へ向けて肉厚が薄くなるくびれ部が形成されるシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成するとともに、前記第一の金型又は第二の金型を前記くびれ部の成形位置と前記シールリップ先端部又はシールリップ先端部近傍の成形位置との間で、かつ型開き方向に沿った面で分割し、これらの分割したブロックのうち少なくとも一つを前記第一の金型又は第二の金型の型閉じ及び型開き方向へ移動可能に構成したことを特徴とするシールリング成形金型。 - 前記分割した各ブロック同士の分割面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とする請求項2に記載したシールリング成形金型。
- 前記第一の金型及び第二の金型の表面に離型剤を塗布しないことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載したシールリング成形金型。
- 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載したシールリング成形金型によって成形されたことを特徴とするシールリング。
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