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JP2005343065A - シールリング成形金型及びシールリング - Google Patents

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JP2005343065A
JP2005343065A JP2004166942A JP2004166942A JP2005343065A JP 2005343065 A JP2005343065 A JP 2005343065A JP 2004166942 A JP2004166942 A JP 2004166942A JP 2004166942 A JP2004166942 A JP 2004166942A JP 2005343065 A JP2005343065 A JP 2005343065A
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seal ring
seal
ring
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JP2004166942A
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Hiromitsu Asai
拡光 浅井
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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Abstract

【課題】 金型表面の離型性が向上するとともに、金型汚染を防止することが可能なシールリング成形金型を提供する。
【解決手段】 シールリング成形金型を、ブロック12a及びブロック12bから構成された可動金型10と、ブロック22a及びブロック22bから構成された固定金型20とから構成し、可動金型10及び固定金型20の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cを形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばハブシールに用いられるシールリングのように、複雑な形状のシールリングを成形するシールリング成形金型に関する。
従来から、車輪支持用軸受ユニット等において、外部からの異物の侵入を防止するために用いられているハブシールとしては、例えば図15及び図16に示すようなものがある。このハブシール1は、外輪30の内径面と内輪40の外径面との間に介装されており、金属材から形成される第一の環状部材(以下、補強環2と示す)及び第二の環状部材(以下、金属環26と示す)と、シールリング6と、から構成されている。
補強環2は略L字型をなし、外輪30の内径面に装着されている。金属環26は、補強環2と同様に略L字型をなし、内輪40の外径面に装着されている。シールリング6は、後述するように補強環2と一体化しており、三枚のシールリップLa,Lb,Lcを有している。各シールリップLa,Lb,Lcは、その基部から軸方向に同じ厚さを保って延びる形状となっている。
そして、各シールリップLa,Lb,Lcの先端部分を金属環26に接触させることにより、外輪30と内輪40との間を密封し、外輪30と内輪40との間に形成された内部空間を外部から遮断している。また、金属環26と各シールリップLa,Lb,Lcとによって囲まれた空洞部には、グリース28が封入されている。
このようなハブシール1を構成するシールリング6の成形方法としては、射出成形、射出圧縮成形等の方法がある。
以下に、射出成形によるシールリング6の成形方法について、図17及び図18を参照して説明する。
図17に示すように、射出成形には、第一の金型(以下、可動金型10と示す)及び第二の金型(以下、固定金型20と示す)を用いる。可動金型10は、固定金型20と対向する面に凹部14が形成されており、型閉じ方向(図の上方向)及び型開き方向(図の下方向)に移動可能となっている。また、図の上下方向に移動可能なエジェクタピン16が設けられている。固定金型20の可動金型10と対向する面には、コア24a及びコア24bが形成されている。
シールリング6を成形する際は、まず、可動金型10の凹部14内に補強環2を挿入した後、可動金型10を型閉じ方向に移動させ、可動金型10と固定金型20とを接触させる。そして、可動金型10と固定金型20とによって形成される空間に、ランナー4を通じて溶融ゴムを充填し、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、このシールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。
次に、図18に示すように、可動金型10を型開き方向へ移動させてシールリング6を固定金型20から離型させ、エジェクタピン16を図の上方向に移動させて補強環2を凹部14外へ押し出した後、ランナー4内で硬化した余剰部分をシールリップLbから切り離す。
このような可動金型10及び固定金型20には、表面からのシールリング6の離型性を向上させるために、特許文献1に示す表面処理が行われている。この表面処理は、可動金型10及び固定金型20の表面に、厚さ1μmの硬質炭素皮膜を形成するものである。
また、シールリングの一例として、特許文献2に示されているように、シールリップの基部近傍に、シールリップの先端から基部に向けて肉厚が薄くなるくびれ部を形成したものがある。このような形状のシールリップを有するシールリングでは、くびれ部が弾性変形することによって、シールリップ先端に加わる接触圧力を吸収することが可能であるため、シールリップ先端と金属環との接触圧力が変化しても、シールリップ先端と金属環との最適な摺動圧力を常時得ることが可能である。
特開平5−169459号公報 実開平5−73364号公報
しかしながら、特許文献1に示す表面処理では、硬質炭素皮膜の厚さが1μmと薄いために十分な離型性が得られない。
また、シールリング6の材料となるゴムは、シールリング6の成形時に化学反応による溶融ゴムの架橋及び加硫を行なうため、加硫剤や加硫促進剤等の数多くの配合剤を必要としている。このため、化学反応による金型汚染が発生することがあり、この金型汚染によって、金型からのシールリング6の離型性、成形したシールリング6の外観や寸法、表面の光沢等に不良が生じる場合がある。さらに、固定金型20のうち、各シールリップLa,Lb,Lcの先端近傍を成形する部分には、加硫時に発生するガスが溜まりやすく、このガスによって金型汚染が発生する場合がある。
金型汚染の発生を防止する方法としては、金型表面の処理、ゴムへの配合剤の配合比率変更、ゴムへの内部離型剤の配合、金型表面への離型剤の塗布等がある。
金型表面の処理方法としては、化学的気相蒸着法、物理的気相蒸着法、ポリマーコーティング処理、化学処理、めっき処理等(「ゴム用金型の汚染防止と金型汚染の実際」、ISS産業化学システムズ、1998)があるが、これらの処理は樹脂を成形する金型の表面処理一般であり、ゴムを成形する金型に使用されているものはごく一部である。これらの処理方法を、ゴムを成形する金型に使用した例としては、物理的気相蒸着法による金型表面への窒化チタン膜及び複合多層チタン膜の被覆や、クロムめっき処理が知られている(「豊田合成技報」27,57)。しかし、窒化チタン膜及び複合多層チタン膜による金型表面の被覆や、クロムめっき処理では、金型表面の汚染を防止するには不十分である。また、クロムめっき処理皮膜は皮膜厚さが厚く、皮膜厚さが不均一なために形状及び寸法の変化が大きく、シールリング成形金型には適していない。
ゴムへの配合剤の配合比率変更は、ゴムの有する接着性等の機能を保持するためには限界がある。また、ゴムに内部離型剤を配合すると、内部離型剤の離型性によって溶融ゴムと補強環2との接着力が低下してしまうため、溶融ゴムが硬化してシールリング6が成形される際に、このシールリング6が補強環2と一体化する妨げとなる。
また、金型表面へ離型剤を塗布すると、この離型剤が熱劣化及び熱酸化劣化を受けて焼きついてしまい、金型表面からのシールリング6の離型性が悪化して、金型表面の汚染が生じてしまう場合がある。さらに、焼きついた離型剤がアルカリあるいは酸系洗浄剤によって軽易に洗浄できないため、作業効率が低下してしまう。
また、特許文献2に示すようなシールリングは実用化されておらず、このような形状のシールリングを成形する金型の構造に関しても、提案及び開示はされていない。さらに、上述したシールリング成形方法を用いて、特許文献2に示すようなシールリングを成形した場合、成形したシールリングを固定金型から離型させるためには、シールリップ全体を圧縮変形させることとなる。このため、くびれ部に塑性変形が生じ、シールリップが切断されてしまう場合がある。
くびれ部に生じる塑性変形及びシールリップの切断を防止する方法としては、固定金型を、円周方向にそれぞれ移動可能に分割したブロックから構成し、可動金型の型開きよりも先に、分割したブロックを移動させる方法がある。しかし、この方法では、シールリップに各ブロックの割り跡が形成されてしまうため、この割り跡によってシールリップによる密封性が低下してしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、金型表面に適切な処理を施すことにより、金型表面の耐汚染性及びシールリングの離型性を向上させることが可能であり、また、シールリップに形成されたくびれ部に塑性変形を生じることがないシールリング成形金型を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装され且つシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とするものである。
本発明によると、金型汚染が防止されるとともに、金型からのシールリングの離型性が向上する。なお、金型の表面のうち、溶融ゴムと接する部分のみに硬質炭素皮膜を形成してもよい。
ここで、硬質炭素皮膜の厚さは、以下に示す理由によって1〜5μmとしている。
硬質炭素皮膜の厚さが1μm未満の場合は、金型からのシールリングの離型性がほとんど得られず、金型汚染の防止も十分ではない。硬質炭素皮膜の厚さが5μmを超えている場合は、硬質炭素皮膜を形成するための処理時間が長くかかるためにコストが増加し、また、硬質炭素皮膜の厚さ精度が低下してしまうため、硬質炭素皮膜の厚さが不均一となる。
次に、請求項2に記載した発明は、内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装されるとともに、先端と基部との間に基部へ向けて肉厚が薄くなるくびれ部が形成されるシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成するとともに、前記第一の金型又は第二の金型を前記くびれ部の成形位置と前記シールリップ先端部又はシールリップ先端部近傍の成形位置との間で、かつ型開き方向に沿った面で分割し、これらの分割したブロックのうち少なくとも一つを前記第一の金型又は第二の金型の型閉じ及び型開き方向へ移動可能に構成したことを特徴とするものである。
本発明によると、金型汚染が防止され、金型からのシールリングの離型性が向上するとともに、金型の型開き時にシールリップのくびれ部に塑性変形が生じることが防止される。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明であって、前記分割した各ブロック同士の分割面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とするものである。
本発明によると、分割したブロック同士の接触面に金型汚染が生じることが防止されるとともに、分割したブロックが円滑に移動することが可能となる。
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記第一の金型及び第二の金型の表面に離型剤を塗布しないことを特徴とするものである。
本発明によると、離型剤が第一の金型及び第二の金型の表面に焼きつくことがなく、金型汚染の発生及び離型性の低下が防止される。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した発明であって、シールリング成形金型によって成形されたことを特徴とするハブシールである。
本発明によれば、金型の対汚染性が向上するため金型の長寿命化が可能となり、金型の離型性が向上するため、成形したハブシールの外観及び寸法、表面の光沢等に不良が生じることを防止することが可能となる。また、シールリップ先端と金属環との最適な摺動圧力を常時得ることが可能なシールリングを成形することが可能となる。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、従来のものと同様の構成については同一符号を付して説明する。
まず、図1ないし図3を用いて、本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態では、図16に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態のシールリング成形金型は、可動金型10と固定金型20とから構成されている。可動金型10及び固定金型20の表面には、厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜C(DLC:Diamond Like Carbon)が形成されている。
可動金型10は、分割されたブロック12aとブロック12bとを一体化して構成されており、型閉じ及び型開き方向に移動可能となっている。また、固定金型20と対向する面に凹部14が設けられており、ブロック12aには、図の上下方向に移動可能なエジェクタピン16が設けられている。なお、エジェクタピン16の先端にも、可動金型10及び固定金型20の表面と同様に、厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
固定金型20は、分割されたブロック22aとブロック22bとを一体化して構成されている。ブロック22aにはコア24aが形成されており、ブロック22bにはコア24bが形成されている。コア24a及びコア24bは、可動金型10の凹部14内と対応する位置に形成されている。
なお、可動金型10及び固定金型20の材質は、硬さがHRC30以上のプリハードン鋼とすることが好適である。その理由は、シールリング成形金型のように複雑な形状の金型は、焼入れ後の変形を後加工で調整することが困難であり、プリハードン鋼は、加工後の焼き入れ及び焼き戻しを行わなくても、使用時の硬度が一定値(HRC30)以上となるため好適である。
なお、可動金型10及び固定金型20の材質は、上記したプリハードン鋼に限定されるものではない。
以下に、図2及び図3を参照して、シールリング6の成形方法について説明する。
まず、図2に示すように、可動金型10の凹部14内においてエジェクタピン16の上方に補強環2を挿入する。次に、図3に示すように、可動金型10を型閉じ方向に移動させ、可動金型10と固定金型20とを接触させるとともに、コア24a,24bを凹部14内へ挿入する。なお、可動金型10及び固定金型20の表面には、離型剤を塗布していない。
そして、図外のノズルからスプルー及びランナー4を通じて、可動金型10と固定金型20とによって形成される空間に溶融ゴムを充填し、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、シールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。このとき、可動金型10及び固定金型20の表面には硬質炭素皮膜Cが形成されているため、可動金型10及び固定金型20の表面に溶融ゴムが付着することはない。また、溶融ゴムが硬化して形成されるシールリング6に関しても同様である。なお、溶融ゴムの材料としては、コスト及び性能の面からニトリルゴムが好適である。
次に、可動金型10を型開き方向に移動させて、シールリング6を固定金型20から離型させる。このとき、固定金型20の表面に形成された硬質炭素皮膜Cによって、固定金型20の表面に溶融ゴムが付着することが防止されているため、シールリング6は固定金型20から容易に離型する。シールリング6を固定金型20から離型させた後、エジェクタピン16を凹部14内に移動させて補強環2を凹部14外へ押し出す。このとき、可動金型10の表面に形成された硬質炭素皮膜Cによって、可動金型10の表面に溶融ゴムが付着することが防止されているため、シールリング6は凹部14内から容易に離型する。そして、ランナー4内で硬化した余剰部分をシールリップLbから切り離して、シールリング6の成形を終了する。
したがって、本実施形態のシールリング成形金型によれば、可動金型10及び固定金型20の表面に形成された厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cによって、可動金型10及び固定金型20からのシールリング6の離型性が向上する。このため、成形されたシールリング6の外観及び寸法、表面の光沢等に不良が生じることが防止される。また、金型に離型剤を塗布する必要がないため、離型剤が金型に焼きつくこともない。
次に、図4ないし図7を用いて、本発明の第二実施形態を説明する。なお、上述の第一実施形態で説明したものと同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態では、図4に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。このシールリング6は、シールリップLaの基部近傍にくびれ部8aが形成されているため、シールリップLa先端と金属環26との接触圧力が変化しても、シールリップLa先端と金属環26との最適な摺動圧力を常時得ることが可能である。
以下に、図5を参照して本実施形態の構成について説明する。
本実施形態で用いるシールリング成形金型は、第一実施形態と同様に、可動金型10と固定金型20とから構成されており、可動金型10及び固定金型20の表面には、図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
固定金型20は、コア24aが形成されたブロック22aと、コア24bが形成されたブロック22bとから構成されている。ブロック22a及びブロック22bは、シールリップLa先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されている。コア24a及びコア24bは、シールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。ブロック22bは、可動金型10の型閉じ及び型開き方向(図の上下方向)に移動可能となっており、ブロック22bが移動する際はブロック22aに対して摺動する。また、ブロック22a及びブロック22bの各摺動面には、それぞれ図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
その他の構成は、第一実施形態と同様である。
次に、図5ないし図7を参照して、本実施形態のシールリング6の成形方法について説明する。
まず、図5に示すように、第一実施形態と同様の手順によって、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、シールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。
次に、図6に示すように、ブロック22bを図の上方向に移動させ、シールリング6からブロック22bを離型させる。このとき、ブロック22aとブロック22bとの摺動面には硬質炭素皮膜Cが形成されているため、各摺動面の磨耗が最小限に抑えられる。なお、ブロック22bの移動量は、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上とする。
次に、図7に示すように、可動金型10を型開き方向に移動させて、シールリング6をブロック22aから離型させる。このとき、シールリップLaはゴムであり、シールリップLaとブロック22bとの間には、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上の空間が形成されているため、可動金型10の移動に伴い、シールリップLaは弾性変形を生じる。したがって、シールリップLaのくびれ部8aに塑性変形が生じることもなく、シールリップLaが切断されることもない。
シールリング6をブロック22aから離型させた後、エジェクタピン16を凹部14内に移動させて補強環2を凹部14から取り出し、ランナー4内で硬化した余剰部分をシールリップLbから切り離して、シールリング6の成形を終了する。
なお、ブロック22bを移動させる際にシールリップLbの一部に圧縮変形が生じるが、シールリップLbの外径面及び内径面が同時に離型せず、内径面のみが離型するため、シールリップLbに塑性変形が生じることはない。
また、本実施形態のシールリング成形金型は、固定金型20のブロック22bを、可動金型10の型閉じ及び型開き方向と同じ方向に移動させる構造であり、固定金型20を円周方向に分割する構造ではないため、固定金型20の製作も容易であり、各シールリップLに分割面の跡が形成されることもない。このため、シールリング6の密封性が低下することがなく、成形されたシールリング6の外観及び寸法、表面の光沢に不良が生じることが防止される。
その他の作用・効果は、第一実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、固定金型20を構成するブロック22a及びブロック22bを、シールリップLa先端部の成形位置で分割したが、図6中に示したように、くびれ部8aの成形位置とシールリップLa先端部又はシールリップLa先端部近傍の成形位置との間の範囲R内で分割すればよい。すなわち、例えば、図6中に一点鎖線Aで示した位置で分割してもよい。
次に、図8ないし図12を用いて、本発明の第三実施形態を説明する。なお、上述した第一及び第二実施形態で説明したものと同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態では、図8に示すようなシールリング6を成形する際に用いるシールリング成形金型と、このシールリング成形金型を用いたシールリング成形方法について説明する。このシールリング6は、四枚のシールリップLa,Lb,Lc,Ldを有している。シールリップLaの基部近傍にはくびれ部8aが形成されており,シールリップLdの基部近傍にはくびれ部8dが形成されている。
以下に、図9を参照して本実施形態の構成について説明する。
本実施形態で用いるシールリング成形金型は、第一実施形態と同様に、可動金型10と固定金型20とから構成されており、可動金型10及び固定金型20の表面には、図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
固定金型20は、コア24aが形成されたブロック22aと、コア24bが形成されたブロック22bと、コア24cが形成されたブロック22cとから構成されている。ブロック22aとブロック22bとは、シールリップLd先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されており、ブロック22bとブロック22cとは、シールリップLa先端部の成形位置で、可動金型10の型開き方向に沿った面で分割されている。コア24aは、シールリップLdのくびれ部8dと対応した形状となっており、コア24bは、シールリップLdのくびれ部8d及びシールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。また、コア24cは、シールリップLaのくびれ部8aと対応した形状となっている。
ブロック22b及びブロック22cは、可動金型10の型閉じ及び型開き方向と同じ方向(図の上下方向)に移動可能となっており、ブロック22cが移動する際はブロック22bに対して摺動し、ブロック22bが移動する際はブロック22a及びブロック22cに対して摺動する。また、各ブロック同士の摺動面には、それぞれ図示しない厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜Cが形成されている。
その他の構成は、第一実施形態と同様である。
次に、図9ないし図12を参照して、本実施形態のシールリング6の成形方法について説明する。
まず、図9に示すように、第一実施形態と同様の手順を用いて、溶融ゴムが硬化してシールリング6が形成されるとともに、シールリング6が補強環2と一体化するまで待機する。
次に、図10に示すように、ブロック22cを図の上方向に移動させ、シールリング6からブロック22cを離型させる。なお、ブロック22cの移動量は、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上とする。
シールリング6からブロック22cを離型させた後、図11に示すように、ブロック22bを図の上方向に移動させ、シールリング6からブロック22bを離型させる。なお、ブロック22bの移動量は、シールリップLdの最大肉厚部の厚さ以上とする。このとき、シールリップLaはゴムであり、シールリップLaとブロック22cとの間には、シールリップLaの最大肉厚部の厚さ以上の空間が形成されているため、可動金型10の移動に伴い、シールリップLaは弾性変形を生じる。したがって、シールリップLaのくびれ部8aに塑性変形が生じることはなく、シールリップLaが切断されることもない。
次に、図12に示すように、可動金型10を型開き方向に移動させて、シールリング6をブロック22aから離型させる。このとき、シールリップLdはゴムであり、シールリップLdとブロック22bとの間には、シールリップLdの最大肉厚部の厚さ以上の空間が形成されているため、可動金型10の移動に伴い、シールリップLdは弾性変形を生じる。したがって、シールリップLdのくびれ部8dに塑性変形が生じることはなく、シールリップLdが切断されることもない。
シールリング6をブロック22aから離型させた後、エジェクタピン16を凹部14内に移動させて補強環2を凹部14から取り出し、ランナー4内で硬化した余剰部分をシールリップLcから切り離して、シールリング6の成形を終了する。
その他の作用・効果は、第一及び第二実施形態と同様である。
したがって、上述した各実施形態によれば、可動金型10及び固定金型20の離型性が向上するため、成形したシールリング6の外観及び寸法、表面の光沢等に不良が生じることが防止される。また、シールリップLのくびれ部8に塑性変形が生じることが防止されるため、各シールリップL先端と金属環26との接触圧力が変化しても、各シールリップL先端と金属環26との最適な摺動圧力を、常時得ることが可能なシールリング6を成形することが可能となる。
なお、上述した各実施形態では、硬質炭素皮膜Cの厚さを1〜5μmとしたが、硬質炭素皮膜Cを形成する処理時間及び処理コスト等を考慮して、硬質炭素皮膜Cの厚さを1〜3μmとしてもよい。
また、硬質炭素皮膜Cを形成する処理は、充填材として溶融ゴムを用いる全ての金型に対応可能であるが、ニトリルゴム及び天然ゴム等のように、特に金型汚染が大きい硫黄加硫系のゴムを材料として用いる金型に適用すると高い効果が得られる。
さらに、射出成形によってシールリング6を成形する場合、ランナー4内には溶融ゴムが硬化した余剰部分が形成されるが、射出圧縮成形によってシールリング6を成形する場合は、ランナー4は材料ガス逃がしとして機能する。また、ランナー4の位置及び形状は上述した各実施形態に限定されるものではなく、射出成形によってシールリング6を成形する場合であっても、ランナー4を材料ガス逃がしとして機能させてもよい。さらに、余剰部分はランナー4内以外の複数箇所に形成されてもよい。
また、可動金型10及び固定金型20の構造も上述した各実施形態に限定されるものではなく、各ブロックの移動方向が可動金型10の型開き方向に沿った方向であればよい。すなわち、図13及び図14に示されるように、シールリング6全体の形状や、シールリップLの枚数及び形状は、上述した各実施形態に限られるものではない。このため、求められる性能に応じて、より複雑な形状のシールリップLや、より多くの枚数のシールリップLを有するシールリング6を成形することが可能である。このようなシールリング6を成形する場合、分割したブロック22を、各シールリップLに形成されるくびれ部8に塑性変形が生じない順番で移動させる。
また、上述した第二及び第三実施形態では、固定金型20を構成する各ブロック22を、可動金型10の型閉じ及び型開き方向と同じ方向に移動可能な構成としたが、可動金型10を構成する各ブロック12を、可動金型10の型閉じ及び型開き方向と同じ方向に移動可能な構成としてもよい。
図5に示す構造の金型を用いて以下の条件下におけるシールリング成形実験を行い、金型の耐汚染性、離型性、摺動面の耐磨耗性についての評価試験を行った。
金型の材料にはNAK55(大同特殊鋼:析出硬化系)を使用し、溶融ゴムの材料にはニトリルゴムを使用した。
金型には離型剤を塗布せずに、未処理、硬質クロムめっき(Cr:厚さ30μm)、ニッケル−リンめっき(Ni−P:厚さ20μm)、窒化チタン(TiN:厚さ2μm)、硬質炭素皮膜(DLC:厚さ2μm)の五種類の表面処理を行った。
なお、Crはめっき厚が不均一なため、金型精度が悪くシールリング成形金型には不適であったが、評価試験のために表面に対する後加工を行ってめっき厚を調整した。また、Ni−Pもめっき厚さが厚いため、表面に対する後加工を行ってめっき厚を調整した。
金型の耐汚染性及び離型性を、成形品を実体双眼鏡により観察して評価した結果は、次のようになった。
Ni−P<未処理<TiN≦Cr<DLC
Ni−Pは最初から離型性が悪く使用できなかった。これは、硫黄加硫系のゴムでは、ニッケル(Ni)と硫黄が反応するためであると考えられる。
また、未処理品は数十回の成形で汚染が発生して、成形品の表面が悪くなった。TiN及びCrついてはほぼ同等であり、汚染が発生せずに300〜400回の成形が可能であった。DLCについては1000回以上まで汚染が発生せずに成形可能であった。
次に、金型汚染を無視して成形を1000回の行った後に金型を分解し、各ブロックの摺動面に対する実体双眼鏡による観察及び形状測定器による測定を行うことにより、摺動面の耐磨耗性を評価した。なお、Ni−Pは離型性が悪いため、耐磨耗性評価の対象外とした。
摺動面の耐磨耗性の評価結果は、次のようになった。
未処理<TiN≦Cr<DLC
TiN及びCrでは部分的に2〜3μmの磨耗が発生していたが、DLCには傷及び磨耗は発生していなかった。
したがって、本評価試験により、DLC処理を行った金型は、耐汚染性、離型性、摺動面の耐磨耗性が良好であることが確認された。
本発明の第一実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第一実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第一実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第二実施形態に係るシールリングの断面図である。 本発明の第二実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第二実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第二実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第三実施形態に係るシールリングの断面図である。 本発明の第三実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第三実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第三実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の第三実施形態に係るシールリング成形の説明図である。 本発明の変形例に係るシールリングの断面図である。 本発明の変形例に係るシールリングの断面図である。 従来例のシールリングの断面図である。 従来例のシールリングの断面図である。 従来例のシールリング成形の説明図である。 従来例のシールリング成形の説明図である。
符号の説明
1 ハブシール
2 補強環
4 ランナー
6 シールリング
8 くびれ部
10 可動金型
12 ブロック
14 凹部
16 エジェクタピン
20 固定金型
22 ブロック
24 コア
26 金属環
28 グリース
30 外輪
40 内輪
C 硬質炭素皮膜
L シールリップ

Claims (5)

  1. 内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装され且つシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
    前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とするシールリング成形金型。
  2. 内輪の外径面と外輪の内径面との間に介装されるとともに、先端と基部との間に基部へ向けて肉厚が薄くなるくびれ部が形成されるシールリップを有するシールリングを、第一の金型と第二の金型とによって形成される空間に溶融ゴムを充填することにより成形するシールリング成形金型において、
    前記第一の金型及び第二の金型の表面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成するとともに、前記第一の金型又は第二の金型を前記くびれ部の成形位置と前記シールリップ先端部又はシールリップ先端部近傍の成形位置との間で、かつ型開き方向に沿った面で分割し、これらの分割したブロックのうち少なくとも一つを前記第一の金型又は第二の金型の型閉じ及び型開き方向へ移動可能に構成したことを特徴とするシールリング成形金型。
  3. 前記分割した各ブロック同士の分割面に厚さ1〜5μmの硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とする請求項2に記載したシールリング成形金型。
  4. 前記第一の金型及び第二の金型の表面に離型剤を塗布しないことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載したシールリング成形金型。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載したシールリング成形金型によって成形されたことを特徴とするシールリング。
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