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JP2005341862A - 抗癌剤感受性予測方法、腫瘍性病変の有無の判定方法、腫瘍性病変進行度評価方法、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法、及び抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法 - Google Patents

抗癌剤感受性予測方法、腫瘍性病変の有無の判定方法、腫瘍性病変進行度評価方法、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法、及び抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法 Download PDF

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JP2005341862A JP2004165040A JP2004165040A JP2005341862A JP 2005341862 A JP2005341862 A JP 2005341862A JP 2004165040 A JP2004165040 A JP 2004165040A JP 2004165040 A JP2004165040 A JP 2004165040A JP 2005341862 A JP2005341862 A JP 2005341862A
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Abstract

【課題】本発明は、hRFIの抗癌剤感受性を規定するスクリーニングマーカーとしての可能性を検証し、抗癌剤感受性予測方法や、腫瘍性病変の有無の判定方法、腫瘍性病変進行度評価方法、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法、及び抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法等を含む、医学上有効な臨床応用手段を提供する。
【解決手段】抗癌剤感受性予測方法、腫瘍性病変の有無の判定方法、及び腫瘍性病変進行度評価方法は、hRFIの発現を検討する工程を含む。また、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、被験化合物を作用させた場合にhRFI等の発現または活性が低下していることを、有効性を判断する指標の一つとする。抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法は、hRFIの発現が上昇または低下している細胞において発現量が変化している遺伝子と、抗癌剤感受性の相関を検討する工程を含む。
【選択図】図10

Description

本発明は、hRFIの発現または活性を指標とした抗癌剤感受性予測方法、腫瘍性病変の有無の判定方法、腫瘍性病変進行度評価方法、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法、及び抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法等に関する。
現在、ヒトの死因の第一位は癌であり、この癌を治療するために内視鏡的治療、外科治療、放射線治療、化学療法等さまざまな治療法が研究されている。
化学療法は、抗癌剤を用いて、癌病変の縮小、症状の緩和、延命等を目指す治療法である。
近年、癌の早期発見、早期手術あるいは術後管理の発展に伴う拡大手術の成績向上により、癌の治療成績は以前と比較して非常に向上したが、手術のみの治療では根治に至らないことも多く、抗癌剤や放射線等による治療が必要である。また、従来であれば手術は無理であると諦められていた進行癌についても、抗癌剤を用いて癌を縮小させることにより手術が可能になるケースも出てきている。これらの事実から、癌治療において抗癌剤の果たす役割は非常に大きいと考えられる。
抗癌剤は同じ腫瘍に対して多種類存在し、多くの場合、複数種類を組み合わせて使用される。例えばフッ化ピリミジン系抗癌剤は、胃癌、食道癌、大腸癌等の消化器癌の化学療法に利用されている代表的抗癌剤の一つであり、DNA合成を抑制する作用を有することが知られている。また、その抗腫瘍効果を高めるために、しばしばロイコボリンと併用される。
抗癌剤はすべての人に一律の効果を示すものではなく、癌の進行状態や患者個々人の差によってその感受性が異なることが知られている。また、腫瘍細胞(癌細胞)の抑制に有効な反面、正常細胞にも同時に傷害を与えてしまう恐れがある。そのため、骨髄抑制、消化管の障害、脱毛、心臓・腎臓・膀胱・肝臓・神経の障害、不妊症、アレルギー反応等の副作用を伴うことが多く、これは患者の体力低下をまねき、患者は病気と同時に、抗癌剤の副作用とも闘うことを余儀なくされる。また、患者にとって効果が低い抗癌剤を投与した場合に、次に有効な抗癌剤を投与しても十分な腫瘍抑制効果を発揮できない可能性があることも知られている。従って、効果が低い抗癌剤の使用を避けるとともに、投与前に適切な抗癌剤を選択することは大変重要である。
上述の目的で、切除した癌細胞を用いて種々の抗癌剤に対する感受性を調べる抗癌剤感受性検査が行われている。しかしこれまでの検査方法は、効果に対する客観的、科学的根拠が乏しく、また検査結果と臨床効果が必ずしも一致しない場合がある。このため、より客観的かつ正確な抗癌剤感受性検査の確立が求められている。
また、現在、手術等によって採取した試料について腫瘍性病変の有無やその進行度の判定には、目視やHE染色等による方法を用いるのが一般的である。このため、腫瘍性病変の有無やその進行度をより正確に、かつ客観的に判定することができるマーカーが同定できれば、従来よりも客観的な判定が可能になると考えられる。
これらの現状から、信頼性の高い抗癌剤感受性検査方法の確立や、前記検査方法に用いることができる抗癌剤感受性を規定するスクリーニングマーカーの同定、また腫瘍性病変の有無やその進行度を判定することができるマーカーの同定等が望まれている。しかし、これらマーカーの確立された同定方法はなく、これまでに同定された中で臨床応用上非常に有効なマーカーは希少である。
hRFI遺伝子(uman ing inger homologous to nhibitor of apotosis protein(IAP))は、本発明者によって、アポトーシスを促進する機能を有するhTID−1Lをベイトとした酵母2−ハイブリッドスクリーニング(yeast two hybrid screening)により同定された新規遺伝子である。これまでの研究によって、hRFIは373アミノ酸からなる分子量約46kDaのタンパク質であり、TNF−αによって誘導されるアポトーシスを阻害する機能があることが明らかにされている。
ササキ(Sasaki S.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、2002年、第21巻、p.5024−5030 ササキ(Sasaki S.)ら、「大腸腺腫から大腸癌に至るステップにおける、腺腫形成及び癌進行に係るhRFIの発現効果(Effects of expression of hRFI on adenoma formation and tumor progression in colorectal adenoma−carcinoma sequence)」、ジャーナル オブ エクスペリメンタル アンド クリニカル キャンサー リサーチ(Journal of Experimental & Clinical Cancer Research)、印刷中
本発明は、hRFIの抗癌剤感受性を規定するスクリーニングマーカーとしての可能性を検証し、hRFIの発現や活性を指標とした抗癌剤感受性予測方法や、腫瘍性病変の有無の判定方法、腫瘍性病変進行度評価方法、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法、及び抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法等を含む、医学上有効な臨床応用手段を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び発明の効果
(1)抗癌剤感受性予測方法
本発明の抗癌剤感受性予測方法は、
抗癌剤感受性予測の対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程と、
検討して得られたhRFIの発現から抗癌剤感受性を予測する工程と
を含む。
本発明において、「hRFIの発現」とは、特に記載を加えない限り、hRFIの「mRNAレベル」及び/または「タンパク質または部分ペプチドレベル」の発現を指すものとする。また、「hRFIの発現を検討する」とは、特に記載を加えない限り、hRFIの発現自体を同定することだけでなく、「発現量」及び/または「発現領域」を同定することも含むものとする。
本発明によれば、hRFIの発現を、抗癌剤感受性を規定するスクリーニングマーカーとして用いることによって、試料の抗癌剤感受性を予測することができる。従って、特に、前記試料が癌患者の有する癌組織である場合は、本発明によって、患者にとって効果が低い抗癌剤の使用を予防することができると同時に、それによる医療費の削減等の効果が期待できる。また、癌患者ごとに適切な抗癌剤の選択を可能にする。
本発明において、前記試料は消化器癌細胞を含む試料であることができる。hRFIは消化器癌細胞に発現することが明らかになっている。従って、消化器癌細胞を含む試料の抗癌剤感受性を予測することができる。また、同じ器官の消化器癌、例えば大腸癌に分類される腫瘍であっても、異型の進行度や発生形式の違いによってhRFIの発現が異なるため、実際にhRFIの発現を検討することによって、前記抗癌剤が奏功するか否かの判断をより高い精度で予測することが可能になる。
本発明において、前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含むことができる。これによれば、hRFIの発現を、hRFIタンパク質や核酸の発現量または発現領域をもって評価することができる。すなわち、hRFIの発現を定量的にまたは発現パターンの状態に基づいて評価することができる。
本発明においては、hRFIの発現量と抗癌剤感受性は逆相関関係にあることを、抗癌剤感受性を予測する指標の一つとすることができる。ここで、「hRFIの発現量と抗癌剤感受性は逆相関関係にある」とは、hRFIの発現量が高いほど抗癌剤感受性が低く、hRFIの発現量が低いほど抗癌剤感受性が高いことをいう。これにより、患者にとって効果が低いと予測される抗癌剤の使用を予防することができるとともに、投与前に、患者にとって適切な抗癌剤を選択することにつながると考えられる。
本発明において、前記抗癌剤は、代謝拮抗剤やプラチナ系抗癌剤であることができる。この場合、前記代謝拮抗剤としては、例えばフッ化ピリミジン系抗癌剤であることができる。代謝拮抗剤やプラチナ系抗癌剤の感受性は、hRFIの発現量と逆相関関係にある。これにより、抗癌剤感受性予測の対象となる試料のそれぞれの抗癌剤に対する感受性を予測することができる。
(2)腫瘍性病変の有無の判定方法
本発明に係る腫瘍性病変の有無の判定方法は、腫瘍性病変の有無の判定対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む。
ここで、腫瘍性病変とは、腺腫(adenoma)及び癌(carcinoma)指す。
本発明に係る腫瘍性病変の有無の判定方法は、hRFIの発現を検討する工程を含む、新しい腫瘍性病変の有無の診断方法として単独で用いることができる。また、例えば従来から行われている目視やHE染色等による病理診断方法の補助的手法としても用いることができる。「補助的手法」とは例えば、前記従来の手法に適宜組み合わせて用いることができる手法を指す。これにより、目視やHE染色のみによる診断と比較してより高い精度を有し、より多くの情報が得られる腫瘍性病変の診断が可能になる。
本発明において、前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含むことができる。これによれば、hRFIの発現を、hRFIタンパク質や核酸の発現量または発現領域をもって評価することができる。すなわち、hRFIの発現を定量的にまたは発現パターンの状態に基づいて評価することができる。
本発明においては、hRFIが発現していることを、腫瘍性病変が存在していると判断する指標の一つとすることができる。これによれば、hRFIの発現を確認することによって腫瘍性病変が存在していると診断することが可能となり、新しい腫瘍性病変の有無の診断方法として単独で用いることができる。また、例えば従来から行われている目視やHE染色等による病理診断方法の補助的手法としても用いることができる。
本発明において、前記腫瘍性病変は、消化器における腫瘍性病変であることができる。これによれば、消化器における腫瘍性病変の有無を判定することができる。従って、消化器においてhRFIの発現を検討することによって、腫瘍性病変が存在するか否かを診断することができる。
(3)腫瘍性病変進行度評価方法
本発明の腫瘍性病変進行度評価方法は、腫瘍性病変進行度の評価対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む。
本発明において、「腫瘍性病変進行度評価」とは、前癌病変(腺腫(adenoma))から癌(carcinoma)への異型度の進行を判断することを指す。
本発明に係る腫瘍性病変進行度評価方法は、hRFIの発現を検討する工程を含む、新しい腫瘍性病変進行度の診断方法として単独で用いることができる。また、例えば従来の目視やHE染色等による病理診断方法の補助的手法として用いることができる。これにより、目視やHE染色のみによる診断と比較してより高い精度を有し、より多くの情報が得られる腫瘍性病変の進行度評価が可能になる。
本発明において、前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含むことができる。これによれば、hRFIの発現を、hRFIタンパク質や核酸の発現量または発現領域をもって評価することができる。すなわち、hRFIの発現を定量的にまたは発現パターンの状態に基づいて評価することができる。
本発明において、前記腫瘍性病変は、消化器における腫瘍性病変であることができる。これによれば、消化器における腫瘍性病変進行度を判定することができる。例えば大腸において、後述の実験例2、3より、大腸腫瘍性病変におけるhRFIの発現は、腺腫の異型性の進行に伴い、フォーカル(focal)な発現からディフューズ(diffuse)な発現に移行していくことが明らかになった。ここで、「フォーカル(focal)」に染色されるとは限局性染色像、具体的には後述する図2B−Dに示すように染色される細胞と染色されない細胞が混在する染色像を示すことを指し、また、「ディフューズ(diffuse)」に染色されるとは瀰漫性染色像、具体的には後述する図2Eに示すようにほぼ全ての細胞が染色される染色像を示すことを指す。従って、本発明によれば、例えばhRFIの発現領域を検討することによって、大腸腫瘍性病変の進行度を診断することができる。
(4)医療用キット
本発明の医療用キットは、hRFIの発現を検討するための、hRFIタンパク質または核酸との親和性のある物質を含み、本発明に係る抗癌剤感受性予測方法、本発明に係る腫瘍性病変の有無の判定方法、及び本発明に係る腫瘍性病変進行度評価方法の少なくともいずれか1つの方法に用いることができる。
hRFIの発現と、抗癌剤感受性、腫瘍性病変の有無、及び腫瘍性病変進行度との間には、一定の関連が認められる。従って、前記医療用キットに含まれる物質を用いて、hRFIの発現を検討することによって、抗癌剤感受性を予測したり、腫瘍性病変の有無を判定したり、腫瘍性病変進行度を評価したりすることができる。また、キットの態様とすることによって、操作過程を単純化、簡便化したり、操作に要する時間を短縮したりすることが可能となる。
本発明において、前記物質は、抗hRFI抗体、hRFIのmRNAに対するプライマーセットを含むプライマー、及びhRFIのmRNAに対するDNAまたはRNAプローブのうちの少なくともいずれか1つであることができる。これらを用いることによって、hRFIの発現を簡便かつ容易に検出することができる。
(5)hRFI形質転換体を含む組成物
本発明の組成物は、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターで形質転換された形質転換体を含む抗癌剤感受性検査用組成物である。
本発明に係る「抗癌剤感受性検査」とは、ある抗癌剤がどの程度奏功するかを検討する検査を指す。さらに前記抗癌剤は、他の化合物と組み合わせた態様で検査することも可能である。
これによれば、例えば前記組成物に、抗癌剤及び/または化合物を作用させることによって、前記抗癌剤及び/または化合物の効果を検討することや、癌治療に有効な化合物のスクリーニングを行うことができる。また、前記化合物の効果や有効性を検討するには、hRFIの発現を低下させる作用を有することを指標とすることができる。
(6)モデル動物
本発明のモデル動物は、hRFIを発現している細胞を担持した、抗癌剤感受性試験用モデル動物である。
本発明に係る「抗癌剤感受性試験」とは、ある抗癌剤がどの程度奏功するかを検討する試験を指す。さらに前記抗癌剤は、他の化合物と組み合わせた態様でモデル動物に投与することによって試験することも可能である。
これによれば、例えば前記モデル動物に、抗癌剤及び/または化合物を作用させることによって、動物体内の環境において前記抗癌剤及び/または化合物の効果を検討することや、癌治療に有効な化合物のスクリーニングを行うことができる。また、前記化合物の効果や有効性を検討するには、hRFIの発現を低下させる作用を有することを指標とすることができる。
本発明において、前記抗癌剤感受性試験用モデル動物は、担癌免疫不全モデル動物であることができる。
これによれば、例えば前記担癌免疫不全モデル動物に、抗癌剤及び/または化合物を作用させることによって、前記抗癌剤及び/または化合物が、前記担癌免疫不全モデル動物が担持する癌に及ぼす効果について検討することができる。また、免疫不全動物は異種動物由来の細胞を拒絶することができないため、例えばヒト由来の癌、具体的には手術や生検によってヒトから得られた癌等を担持させることによって、前記抗癌剤及び/または化合物が、実際にヒトの癌に及ぼす効果を検討することができる。
また、本発明に記載の抗癌剤感受性試験用モデル動物や担癌免疫不全モデル動物を、癌治療法の開発・改良や、癌メカニズムの解析に利用することも可能である。
(7)癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法
(7−1)hRFIタンパク質または部分ペプチドを用いたスクリーニング方法
本発明の癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、
hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする。
本発明によれば、hRFIタンパク質または部分ペプチドに作用してhRFIの発現または活性を低下させることによって、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
また、本発明の癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、
hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記hRFIタンパク質または部分ペプチドと、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする。
本発明によれば、hRFIタンパク質または部分ペプチドと直接的または間接的に結合し、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
(7−2)核酸を用いたスクリーニング方法
本発明の癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする。
本発明によれば、hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に作用してhRFIの発現または活性を低下させることによって、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
また、本発明の癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記核酸と、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする。
これによれば、前記核酸と直接的または間接的に結合し、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
また、本発明の癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする。
本発明によれば、本発明における核酸がhRFI遺伝子のプロモーター領域を含むことによって、hRFI遺伝子のプロモーター領域を含む核酸に作用して、癌治療に有効に作用する化合物を探索することができる。
ここで、hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が「機能的に結合」しているとは、hRFI遺伝子のプロモーター領域に前記被験化合物が作用することにより、レポーター遺伝子の発現が誘導されるように、hRFI遺伝子のプロモーター領域とレポーター遺伝子とが結合していることをいう。また、前記レポーター遺伝子は、他の遺伝子と結合した融合タンパク質を発現する核酸の態様であってもよい。
本発明における核酸がレポーター遺伝子を含む場合、レポーター遺伝子の発現または活性を指標として、hRFI遺伝子のプロモーター領域に作用してhRFIの発現または活性を低下させる化合物を探索することができる。レポーター遺伝子を用いたスクリーニング方法は、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸を用いたスクリーニング方法よりも、発現や活性を評価しやすい場合や、発現や活性の変化を検討すると同時にセレクションを行うことが可能である場合がある。従って、このような場合は、本発明に係るスクリーニングの操作を簡便かつ容易に行うことができる。
(8)抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法
本発明の抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法は、
hRFIの発現が上昇または低下している細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
hRFIの発現に操作を加えていない対照細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
両者細胞間における前記遺伝子の発現量を比較する工程と、
両者細胞間で発現量が変化している遺伝子を認定する工程と、
前記発現量が変化している遺伝子の発現と、抗癌剤感受性の相関を検討する工程と
を含む。
これによれば、hRFIの発現によってその発現レベルが変化し、抗癌剤感受性の規定に関わる因子としてhRFIの下流で機能する遺伝子を探索することができる。また、本発明によって、hRFIの発現により抗癌剤感受性が変化するまでのシグナル伝達経路を解明することや、その制御を可能にすることにつながる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。
1、抗癌剤感受性予測方法
本実施の形態に係る抗癌剤感受性予測方法は、抗癌剤感受性予測の対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程と、検討して得られたhRFIの発現から抗癌剤感受性を予測する工程とを含む。
本実施の形態において、抗癌剤感受性予測の対象となる試料は、その試料が前癌病変を含むか否かや癌病変を含むか否かによって特に限定されるものではないが、例えば、手術や生検によって得られた、抗癌剤を作用または投与する可能性のある各種組織や、1または2以上の遺伝子に変異を有することが知られている各種癌細胞であることができる。本実施の形態において前記試料は、好ましくは消化器癌細胞を含む試料である。前記消化器癌細胞を含む試料としては、例えば、大腸癌細胞、食道癌細胞、胃癌細胞、肝臓癌細胞、膵臓癌細胞、または胆嚢癌細胞を含む試料等を挙げることができるが、本実施の形態において特に好ましくは、大腸癌細胞を含む試料である。
本実施の形態において、hRFIの発現は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討することができる。前記核酸とは、例えばmRNAであることができる。hRFIタンパク質または核酸を検討する方法は、その具体的な方法等について特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法をはじめとした種々の方法を用いることができる。
hRFIの発現を検討する場合、hRFIタンパク質または核酸の、発現量や発現領域について検討することができる。発現量を検討するとは、例えば濃度、総量、比率等の基準によって量的に発現を調べることをいい、発現領域を検討するとは、例えば発現の局在や発現場所、発現組織、発現パターン等について調べることをいう。
hRFIタンパク質の発現量を検討するには、例えば、抗hRFI抗体を用いたウェスタンブロッティング法、ELISA法、EIA法、RIA法、FACS法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。また、前記抗体を用いた免疫染色法等を用いても、タンパク質の発現量を検討することが可能である。
hRFIタンパク質の発現領域について検討するには、例えば、抗hRFI抗体を用いた免疫染色法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
本実施の形態において、抗hRFI抗体としては、hRFIタンパク質または部分ペプチドを特異的に認識しうる抗体であれば特に限定されない。また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、使用態様に合わせて好ましい方を選択することもできる。抗hRFI抗体の抗原としては、例えば、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質のアミノ酸配列やその部分的な配列を用いることができるが、具体的には例えば、発明者が以前に作製した、配列表の配列番号1に示すhRFIの全長cDNAがコードするタンパク質を抗原としたウサギ抗hRFIポリクローナル抗体(「オンコジーン(Oncogene)」、2002年、第21巻、p.5024−5030)を用いることができる。
hRFIの核酸が例えばmRNAである場合、mRNAの発現量を検討するには、例えば、mRNAに対するRT−PCR法、ノーザンブロッティング法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。また、mRNAに対するin situハイブリダイゼーション法等を用いても、mRNAの発現量を検討することが可能である。
また、hRFIの核酸が例えばmRNAである場合、mRNAの発現領域を検討するには、例えば、mRNAに対するin situハイブリダイゼーション法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
また、本実施の形態に係る抗癌剤感受性予測方法は、hRFIの発現量と抗癌剤感受性は逆相関関係にあることを、抗癌剤感受性を予測する指標の一つとすることができる。すなわち、hRFIの発現量が高いほど前記抗癌剤に対する感受性が低いと予測することができ、逆に、hRFIの発現量が低いほど前記抗癌剤に対する感受性が高いと予測することができる。
本実施の形態において、前記抗癌剤は、代謝拮抗剤であることができる。前記代謝拮抗剤は、好ましくはフッ化ピリミジン系抗癌剤である。フッ化ピリミジン系抗癌剤とは、5−フルオロウラシルを基本骨格とする化合物であって、抗腫瘍効果を有する薬剤として用いうる化合物をいう。具体的には、例えば、5’−DFUR(フルツロン;ロッシュ(株)製、商品名)、Capecitabine(Cape)(ゼローダ;中外製薬(株)製、商品名)、テガフール(フトラフール;大鵬薬品工業(株)製、商品名)、テガフール・ウラシル(UFT、TS−1;大鵬薬品工業(株)製、商品名)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本実施の形態におけるフッ化ピリミジン系抗癌剤は、特に好ましくは5’−DFUR、Cape、またはUFTである。
また、本実施の形態において、前記抗癌剤は、プラチナ系抗癌剤であることもできる。プラチナ系抗癌剤とは、分子構造中に白金原子を含む化合物で、抗腫瘍効果を有する薬剤として用いうる化合物をいう。具体的には、例えば、CDDP(シスプラチン)、CBDCA(カルボプラチン)、NDP(CDGP、ネダプラチン)、オキサリプラチン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本実施の形態におけるプラチナ系抗癌剤は、特に好ましくはCDDP(シスプラチン)である。
2、腫瘍性病変の有無の判定方法
本実施の形態に係る腫瘍性病変の有無の判定方法は、腫瘍性病変の有無の判定対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む。
本実施の形態において、前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含むことができる。hRFIタンパク質または核酸を検討する方法は、その具体的な方法等について特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法をはじめとした種々の方法を用いることができ、例えば、本項目1に例示した方法を用いることができる。
また、本実施の形態に係る腫瘍性病変の有無の判定方法は、hRFIが発現していることを、腫瘍性病変が存在していると判断する指標の一つとすることができる。例えば、後述の実験例2、3に示す大腸試料を用いたhRFIタンパク質の発現に関する実験結果より、hRFIは、大腸正常組織で染色が認められず、大腸腫瘍性病変で染色が認められることが明らかになった。なお、大腸腫瘍性病変とは、大腸腺腫(adenoma)及び大腸癌(carcinoma)を指す。従って、hRFIの発現が確認されれば、腫瘍性病変が存在する可能性が考えられる。
本実施の形態において、腫瘍性病変の有無の判定対象となる試料は、特に限定されるものではなくさまざまな試料を用いることができるが、例えば、腫瘍性病変が存在する疑いがある組織、器官の一部であることができる。本実施の形態において、前記腫瘍性病変は、好ましくは消化器における腫瘍性病変である。前記消化器としては、例えば、大腸、食道、胃、肝臓、膵臓、または胆嚢であることができるが、本実施の形態において特に好ましくは、大腸である。
本実施の形態に係る腫瘍性病変の有無の判定方法は、hRFIの発現を指標とした明確かつ簡便な判定方法である。従って、本実施の形態に係る判定方法を、例えば腫瘍性病変の有無の診断方法として単独で用いることができる。また、例えば従来から行われている目視やHE染色等による診断方法の補助的方法としても用いることができる。これらによって、腫瘍性病変の有無を正確かつ客観的に判定・診断することが可能になる。
3、腫瘍性病変進行度評価方法
本実施の形態に係る腫瘍性病変進行度評価方法は、腫瘍性病変進行度の評価対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む。
本実施の形態において、前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含むことができる。hRFIタンパク質または核酸を検討する方法は、その具体的な方法等について特に限定されるものではなく、当業者に公知の方法をはじめとした種々の方法を用いることができ、例えば、本項目1に例示した方法を用いることができる。本実施の形態において好ましいhRFIタンパク質または核酸を検討する方法は、hRFIタンパク質またはmRNAの発現領域を検討する方法である。
本実施の形態において、腫瘍性病変進行度の評価対象となる試料は、腫瘍性病変を有する疑いがある試料であれば特に限定されるものではなく、さまざまな試料を用いることができる。本実施の形態において、前記腫瘍性病変は、好ましくは消化器における腫瘍性病変である。前記消化器としては、例えば、大腸、食道、胃、肝臓、膵臓、または胆嚢であることができるが、本実施の形態において特に好ましくは、大腸である。
例えば、後述の実験例2、3に示す大腸試料を用いたhRFIタンパク質の発現に関する実験結果より、大腸腫瘍性病変におけるhRFIの発現は、腺腫の異型度の進行に伴い、フォーカル(focal)な染色像からディフューズ(diffuse)な染色像に移行していくことが明らかになった。この結果から、例えば大腸腫瘍性病変進行度の評価対象となる試料において、hRFIの発現領域を検討し、フォーカル(focal)からディフューズ(diffuse)への移行度を検討することによって、大腸腫瘍性病変の進行度を評価することができると考えられる。
本実施の形態に係る腫瘍性病変進行度評価方法は、hRFIの発現を指標とした、斬新な評価方法である。従って、本実施の形態に係る評価方法を、例えば腫瘍性病変の進行度の診断方法として単独で用いることができる。また、例えば従来から行われている目視やHE染色等による診断方法の補助的方法としても用いることができる。これらによって、腫瘍性病変の進行度を正確かつ客観的に評価・診断することが可能になる。
4、医療用キット
本実施の形態に係る医療用キットは、hRFIの発現を検討するための、hRFIタンパク質または核酸との親和性のある物質を含み、本実施の形態に係る抗癌剤感受性予測方法(本項目1)、本実施の形態に係る腫瘍性病変の有無の判定方法(本項目2)、及び本実施の形態に係る腫瘍性病変進行度評価方法(本項目3)のうちの、少なくともいずれか1つの方法に用いることができる。
hRFIタンパク質または核酸との親和性のある物質としては、hRFIの発現を検出する目的に用いることができる物質であれば特に限定されない。また、検出対象として、hRFIタンパク質または部分ペプチド、あるいはhRFIの核酸、例えばmRNAについての、発現量や発現領域等を挙げることができる。本実施の形態において好ましい前記物質としては、抗hRFI抗体、hRFIのmRNAに対するプライマーセットを含むプライマー、及びhRFIのmRNAに対するDNAまたはRNAプローブのうちの少なくともいずれか1つを挙げることができる。
本実施の形態に係る医療用キットを用いた、前記物質を用いたhRFIの発現の具体的検討方法を以下に例示する。なお、医療用キットに含まれる物質及びhRFIの発現の検討方法等は、無論以下の例に限定されるものではない。
本実施の形態に係る医療用キットに、例えば抗hRFI抗体が含まれる場合は、ウェスタンブロッティング法、ELISA法、EIA法、RIA法、FACS法等によりhRFIタンパク質または部分ペプチドの発現量を検討したり、免疫染色法等によりhRFIタンパク質または部分ペプチドの発現領域を検討したりすることができる。前記抗hRFI抗体としては、hRFIタンパク質または部分ペプチドを特異的に認識しうる抗体であれば特に限定されない。また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、使用態様に合わせて好ましい方を選択することもできる。抗hRFI抗体の抗原としては、例えば、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質のアミノ酸配列やその部分的な配列を用いることができるが、具体的には例えば、発明者が以前に作製した、配列表の配列番号1に示すhRFIの全長cDNAがコードするタンパク質を抗原としたウサギ抗hRFIポリクローナル抗体(「オンコジーン(Oncogene)」、2002年、第21巻、p.5024−5030)を用いることができる。
本実施の形態に係る医療用キットに、例えばhRFIのmRNAに対するプライマーセットを含むプライマーが含まれる場合は、hRFIのmRNAに対するRT−PCR法等によりhRFIのmRNAの発現量を検討することができる。前記hRFIのmRNAに対するプライマーセットとしては、hRFIのmRNAの発現を特異的に検出及び/または定量することができ、PCR産物がアガロースゲル電気泳動等によって検出可能な長さのものであれば、特に限定されない。前記プライマーセットとしての正向きと逆向きの2本のオリゴヌクレオチド配列は、例えば、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質をコードする塩基配列や配列表の配列番号1に示した塩基配列等、及びこれらの相補配列より選択することができ、好ましくは、15塩基以上の長さを有する配列である。具体的には、配列表の配列番号2と配列番号3に示したオリゴヌクレオチドを用いることができる。
本実施の形態に係る医療用キットに、例えばhRFIのmRNAに対するDNAまたはRNAプローブが含まれる場合は、hRFIのmRNAに対するin situ ハイブリダイゼーション法やノーザンブロッティング法等を用いて、hRFIのmRNAの発現量や発現領域を検討することができる。前記hRFIのmRNAに対するDNAまたはRNAプローブとしては、hRFIのmRNAの発現を特異的に検出及び/または定量することができるプローブであれば、特に限定されない。前記プローブが有する塩基配列としては、例えば、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質をコードする塩基配列や配列表の配列番号1に示した塩基配列等の相補配列より選択することができる。具体的には例えば、配列表の配列番号1に記載した塩基配列を有する核酸を鋳型とし、配列番号2と配列番号3に示す塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行うことにより、DNAまたはRNAプローブを得ることができる。
5、hRFI形質転換体を含む組成物
本発明の組成物は、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターで形質転換された形質転換体を含む抗癌剤感受性検査用組成物である。
本実施の形態に係るhRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸は、例えば、配列表の配列番号1に示された塩基配列の全部または一部や、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む塩基配列の全部または一部を含むことができる。また、前記核酸の塩基配列の全部または一部には、そのコードするアミノ酸配列を変更しない塩基配列に変更した塩基配列を用いることや、1または2以上のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/または挿入されたアミノ酸配列を有するhRFIタンパク質または部分ペプチドをコードするように変更した塩基配列を用いることもできる。
本実施の形態に用いうるベクターとしては、形質転換した細胞の中で前記ベクターに組み込んだ塩基配列がコードするタンパク質や部分ペプチド、またはその核酸、例えばmRNA等を発現することができれば特に限定されず、例えば、プラスミドベクターやウィルスベクター等を用いることができる。
本実施の形態における組換えベクターからのhRFIタンパク質や部分ペプチド、またはその核酸、例えばmRNA等の発現は、一時的な発現であっても恒常的な発現であってもよい。また、その発現は、用いたベクターが有する特性を利用して制御することが可能である。例えば、本実施の形態に係る形質転換体は、トランスフェクション数時間後からhRFIタンパク質を徐々に発現しはじめる形質転換体や、テトラサイクリン等を用いた遺伝子発現調節システムによってhRFIタンパク質の発現のオン/オフを転写レベルで制御できる形質転換体であることができる。また、本実施の形態に係る組換えベクターは、形質転換する細胞のゲノムに組み込まれるものであっても、ゲノムに組み込まれないものであってもよい。前者のゲノムに組み込まれたクローンを選抜する場合には、例えば、用いた組換えベクターが有する薬剤耐性遺伝子の発現を、選択マーカーとして利用することができる。具体的には、例えばpcDNA3.1/V5−Hisベクター(インビトロジェン社製)を用いた場合、前記ベクターはネオマイシン耐性遺伝子を有するため、培地にG418を適当濃度になるように添加することよって、生き残ったクローン、すなわち前記ベクターがゲノムに組み込まれたクローンを選別することができる。
形質転換する細胞としては、核酸を導入しうる細胞であれば特に限定されるものではなく、原核細胞でも真核細胞でもよい。具体的には、例えば、大腸菌、酵母、枯草菌、昆虫細胞、動物細胞等を用いることができる。また、例えば株化細胞でも初代培養細胞でもよく、例えば上皮細胞でも線維芽細胞でもよい。動物細胞としては、例えば、癌細胞を用いることができる。癌細胞としては、種々の癌細胞を用いることができるが、本実施の形態における癌細胞は、消化器癌細胞であることが好ましい。消化器癌細胞としては、大腸癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌等の細胞を用いることができるが、本実施の形態において特に好ましくは、大腸癌細胞である。例えば、株化された大腸癌細胞としては、具体的には、C10、C32、C70、C80、C84、C99、C106、C125、CAC02、COLO201、COLO205、COLO320、COLO678、COLO741、CX1、DLD1、GP2D、HCA46、HCA7、HCT8、HCT15、HCT116、HRA19、HT29、HT55、JW、LIM1863、LOVO、LS174T、LS180、LS411、LS1034、PC、SKC01、SW48、SW403、SW480、SW620、SW837、SW948、SW1116、SW1222、SW1417、VACO4A、VACO4S、VACO5、VACO10、WiDr等を用いることができるが、無論これらに限定されるものではない。本実施の形態における好ましい大腸癌細胞として例えば、TNF−α等の刺激によるアポトーシス感受性が高い細胞株として知られるHCT116を挙げることができる。前記大腸癌細胞としてHCT116を用いた場合は、本実施の形態に係る形質転換体は、例えば、hRFIタンパク質をステイブルに発現するHCT116であることができる。これによれば、hRFIタンパク質をコードする核酸がゲノムに組み込まれているため、hRFIを安定して発現することができる。
組換えベクターを用いて形質転換する方法としては、細胞に核酸を導入しうる方法であれば特に限定されず、例えば、当業者に公知の手法を利用することができる。具体的には、例えば、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、アデノウィルスベクター法、レトロウィルスベクター法、アデノ随伴ウィルス(AVV)ベクター法等を用いることができる。
本実施の形態に係る抗癌剤感受性検査用組成物に含まれる形質転換体においてhRFIの発現が高い場合は、前記形質転換体は、hRFIの発現と逆相関関係を有する抗癌剤に対して抵抗性を示すことができる。前記抗癌剤としては、例えば、本項目1に例示した抗癌剤であることができる。そこで、例えば、前記組成物に、前記抗癌剤と化合物を組み合わせて作用させることによって、癌治療に有効な化合物のスクリーニングを行うことができる。前記化合物は、例えば、hRFIの発現を低下させることによって抗癌剤感受性を高める作用を有する化合物であることができる。
以下に、本実施の形態に係る抗癌剤感受性検査用組成物の使用態様の具体例を示す。本具体例では、抗癌剤感受性検査用組成物に含まれる形質転換体として、hRFIタンパク質をステイブルに発現するHCT116を用いる。なお、本実施の形態に係る抗癌剤感受性検査用組成物の用途や使用態様は、無論本具体例に限定されるものではない。
まず、種々の化合物データベースやソフトウェアを用いた立体構造のモデリング等によって、hRFIタンパク質との結合が予想される化合物を予想、選択する。
次に、抗癌剤感受性検査用組成物に、前記化合物及び本項目1に具体的に例示したいずれかの抗癌剤を作用させる。
この結果、前記抗癌剤感受性検査用組成物中のhRFIタンパク質をステイブルに発現するHCT116が示す抗癌剤抵抗性が、親株が示す抗癌剤抵抗性と比較して低下した場合は、前記化合物は、前記抗癌剤感受性を高める効果を有すると判断できる。なお、前記化合物は、例えばさらに化学的に修飾されることによって、より効果が高く安全性等に優れた化合物に改善されることもできる。
6、モデル動物
本実施の形態に係るモデル動物は、hRFIを発現している細胞を担持した、抗癌剤感受性試験用モデル動物であることができる。
本実施の形態に係るモデル動物としては、例えば、マウス、ゼブラフィッシュ、キイロショウジョウバエ、センチュウ等を挙げることができるが、本実施の形態における好ましいモデル動物は、マウスである。マウスを用いた場合は、旺盛な繁殖力を持ち、遺伝子レベルでヒトと非常に近い関係にある等の研究上の利点を利用することができる。
本実施の形態に係るhRFIを発現している細胞としては、hRFIを一時的、または恒常的に発現することができる細胞であればその細胞の種類について特に限定されるものではなく、さまざまな細胞を用いることができる。例えば、正常細胞や癌細胞であることができ、また、ヒト由来の細胞やマウス由来の細胞、またはそれ以外の生物由来の細胞であることができる。
本実施の形態に係るhRFIを発現している細胞は、遺伝子組換え等の人工的な手法を用いてhRFIを発現させた細胞でも、人工的な手法を用いることなくhRFIを発現している細胞でもよい。前者の例としては、本項目5、hRFI形質転換体を含む組成物に含まれるhRFI形質転換体、hRFI遺伝子をノックインすることによってhRFIを発現するようになった細胞、hRFI遺伝子以外の遺伝子をノックインまたはノックアウトすることによってhRFIを発現するようになった細胞等を挙げることができる。また、後者の例としては、hRFIを発現していることを特徴とする株化細胞、初代培養細胞、手術や生検によって得られた組織から採取した細胞等を挙げることができる。本実施の形態に係るhRFIを発現している細胞は、無論これらの例に限定されるものではない。
本実施の形態に係る抗癌剤感受性試験用モデル動物について、hRFIの発現または活性について検討する場合は、その具体的な方法等について特に限定されるものではなく種々の方法を用いることができる。hRFIの発現について検討する場合は、例えば、本項目1に例示したhRFIタンパク質または核酸を検討する方法を用いることができる。hRFIの活性について検討する場合は、例えば、hRFIの有する機能として知られている、TNF−αによって誘導されるアポトーシスの阻害能の変化を検討する方法を用いることができる。
本実施の形態に係る抗癌剤としては、例えば、本項目1に例示した抗癌剤であることができる。後述の実験例7より、本項目1に例示した抗癌剤感受性とhRFIの発現量との間には、逆相関関係があることが明らかになった。従って、本実施の形態に係るhRFIを発現している細胞を担持した抗癌剤感受性試験用モデル動物は、少なくともhRFIを発現している細胞を有する部位において、前記抗癌剤に対する感受性が低いと考えられる。そこで、本実施の形態に係る抗癌剤試験用モデル動物に、化合物を例えば前記抗癌剤と組み合わせた態様で投与することによって、前記化合物が抗癌剤感受性に及ぼす効果を検討することができる。
また、本実施の形態に係る抗癌剤感受性試験用モデル動物の作製方法は、結果としてモデル動物にhRFIを発現している細胞を担持させることができれば特に限定されない。また、前記細胞を担持する部位は、モデル動物の体の一部分でも体全体でもよく、試験態様に合わせて好ましい方を選択することができる。体の一部分に担持させる手法としては、例えば、移植等の手法を用いることができる。移植の具体的方法は、移植片を移植針にて移植する方法、細胞懸濁液を注射針で移植する方法等、当業者に公知の手法を用いることができる。移植する部位としては特に限定されないが、例えば背部皮下であることができる。一方、体全体に担持させる手法としては、例えば、ノックアウト動物やトランスジェニック動物等の遺伝子改変動物の作製方法等を用いることができる。
また、前記抗癌剤感受性試験用モデル動物は、好ましくは担癌免疫不全モデル動物であることができる。免疫不全動物は、異種生物由来の細胞を移植されても拒絶できず安定して保持することができる。また、担癌免疫不全モデル動物は、例えば、ヒト癌担癌免疫不全モデル動物であることができる。前記ヒト癌担癌免疫不全モデル動物は、ヒト癌細胞を担持した免疫不全動物である。これによれば、前記ヒト癌に対する抗癌剤感受性や、前記抗癌剤と組み合わせて投与した化合物が前記抗癌剤感受性に及ぼす効果を検討することができる。
前記免疫不全モデル動物としては、ヌードマウスやスキッドマウス等のマウスを用いることが好ましい。これによれば、前述のように、旺盛な繁殖力を有することや、遺伝子レベルでヒトと非常に近い関係にあること等の研究上のマウスの利点を利用することができる。
また、前記担癌免疫不全モデル動物が担持する癌としては特に限定されるものではないが、例えば、本項目1に例示した消化器癌であることができる。本実施の形態において、好ましくは大腸癌である。
また、癌を免疫不全モデル動物に担持させる手段としては、結果として免疫不全モデル動物に癌を担持させることができれば特に限定されず、例えば、手術や生検によって得られた癌組織を移植する方法を用いることができる。癌組織の移植の具体的方法は、移植片を移植針にて移植する方法、癌細胞懸濁液を注射針で移植する方法等、当業者に公知の手法を用いることができる。移植する部位としては特に限定されないが、例えば背部皮下であることができる。また、癌組織ではなく、株化された癌細胞や遺伝子導入等によって癌化した細胞を免疫不全モデル動物に移植して癌を発生させる方法を用いることもできる。ここで、癌化した細胞とは、異常な分裂能、増殖能、浸潤能、または転移能等の性質を獲得した細胞を指す。これらの細胞の移植の具体的方法としては、癌細胞懸濁液を注射針で移植する方法等、当業者に公知の手法を用いることができる。
これらの癌や癌細胞等を担持させる部位は、免疫不全モデル動物の体の一箇所でも複数箇所でもよく、試験態様に合わせて好ましい部位を選択することができる。
また、本実施の形態に係る抗癌剤感受性試験用モデル動物が担持するhRFIを発現している細胞は、例えば、担癌免疫不全モデル動物が担持する癌に含まれる細胞であることができる。これによれば、hRFIの発現または活性の変化を指標として、本実施の形態に係る抗癌剤感受性試験用モデル動物が担持する癌に対する抗癌剤感受性や、前記抗癌剤と組み合わせて投与した化合物が前記抗癌剤感受性に及ぼす効果を検討することができる。
7、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法
後述の実験例7より、本発明者は、本項目1に例示した抗癌剤感受性とhRFIの発現量との間には、逆相関関係があることを明らかにした。すなわち、hRFIの発現量が高いほど抗癌剤感受性が低く、hRFIの発現量が低いほど抗癌剤感受性が高いことが明らかになった。
これらの事実から、hRFIの発現または活性を低下させる作用がある化合物は、抗癌剤感受性を高めることができ、癌治療に有効であると考えられる。従って、hRFIの発現または活性を低下させる作用がある化合物をスクリーニングにより同定することにより、前記抗癌剤感受性を高め、癌治療に有効な化合物を同定することができる。また、このような癌治療に有効な化合物を同定することは、従来より効果的な抗癌剤治療の開発につながると考えられる。
ここで、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法におけるスクリーニングの指標として、以下の2つが挙げられる。すなわち、(1)hRFIの発現または活性が低下していることを指標の一つとするスクリーニング方法と、(2)hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流に機能的に結合したレポーター遺伝子の発現または活性が低下していることを指標の一つとするスクリーニング方法である。以下に、これらの指標を用いたスクリーニング方法を詳細に説明する。
7−(1)、hRFIの発現または活性が低下していることを指標の一つとするスクリーニング方法
本実施の形態に係るスクリーニング方法において、被験化合物を作用させる物質は、hRFIタンパク質または部分ペプチドであることができる。
すなわち、本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法である。
また、本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記hRFIタンパク質または部分ペプチドと、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法である。
本実施の形態に係る、上記のhRFIタンパク質または部分ペプチドを用いたスクリーニング方法によれば、hRFIタンパク質または部分ペプチドに作用させた後のhRFIの発現または活性の低下を指標の一つとして、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
本実施の形態に係るhRFIタンパク質または部分ペプチドは、細胞内で強制発現させたhRFIでも、細胞内に人工的操作を加えずに存在しているhRFIでもよい。細胞内で強制発現させたhRFIである場合、そのhRFIタンパク質または部分ペプチドが有するアミノ酸配列は、NCBI等のデータベースで公開されているhRFIタンパク質のアミノ酸配列や配列表の配列番号4に示したアミノ酸配列の全部または一部を含むことができる。また、これらのアミノ酸配列から、1または2以上のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/または挿入されたアミノ酸配列を有するhRFIタンパク質または部分ペプチドを用いることもできる。
また、本実施の形態に係るスクリーニング方法において、被験化合物を作用させる物質は、hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸であることができる。
すなわち、本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法である。
また、本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記核酸と、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法である。
本実施の形態に係る、上記核酸を用いたスクリーニング方法によれば、hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に作用させた後のhRFIの発現または活性の低下を指標の一つとして、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
本実施の形態に係る核酸は、外来性の核酸でも内在性の核酸でもよい。また、前記核酸は、ゲノムに組み込まれた態様で存在しても組み込まれない態様で存在してもよい。また、その塩基配列は、NCBI等のデータベースで公開されているhRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む塩基配列や配列表の配列番号1に示した塩基配列の全部または一部を含むことができる。また、これらのhRFI遺伝子のプロモーター領域を含む塩基配列の全部または一部は、1または2以上の塩基が置換、欠失、付加、及び/または挿入された塩基配列や、プロモーター領域を含む塩基配列の一部分を複数回繰り返した塩基配列を用いることもできる。また、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む塩基配列の全部または一部は、そのコードするアミノ酸配列を変更しない塩基配列に変更した塩基配列を用いることや、1または2以上のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/または挿入されたアミノ酸配列を有するhRFIタンパク質または部分ペプチドをコードするように変更した塩基配列を用いることもできる。
7−(2)、hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流に機能的に結合したレポーター遺伝子の発現または活性が低下していることを指標の一つとするスクリーニング方法
本実施の形態に係るスクリーニング方法において、被験化合物を作用させる物質は、hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸であることができる。
すなわち、本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性の変化を検討する工程と
を含み、
前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法である。
レポーター遺伝子に機能的に結合しているhRFI遺伝子のプロモーター領域は、本来、hRFI遺伝子の発現を制御しているものである。従って、本実施の形態に係る、上記核酸を用いたスクリーニング方法によれば、hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸に作用させた後のレポーター遺伝子の発現または活性の低下を指標の一つとして、癌治療に有効に作用する化合物を検索することができる。
本実施の形態に係るレポーター遺伝子は特に限定されるものではないが、例えば当業者に公知のレポーターアッセイに用いることができるルシフェラーゼ遺伝子や、顕微鏡観察によって発現の有無の判定が可能であるGFP遺伝子、また、酵母において発現または活性の検討と同時にセレクションを行うことができるヒスチジン栄養性機能遺伝子等であることができる。
7−(3)、7−(1)及び7−(2)に係るスクリーニング方法における実施の態様
本実施の形態に係る被験化合物は特に限定されるものではなく、どのような化合物でも用いることができ、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、低分子化合物、脂質等であることができる。
また、前記被験化合物は、ライブラリーの態様であることもできる。これによれば、癌の治療に有効に作用すると考えられる化合物を網羅的にスクリーニングすることができる。
前記被験化合物を得る手段としては特に限定されず、あらかじめ用意された化合物を用いることや、新たに作製した化合物を用いることができる。あらかじめ用意された化合物を用いる場合は、例えば、ウェブ上で公開されているさまざまな化合物情報データベースを利用することができる。前記データベースとしては、例えば、NCI(米国国立がん研究所)等で公開されている化合物データベースを用いることができる。新たに作製した化合物を用いる場合は、例えば、特定の新薬開発目的で合成した独自の化合物群等を用いることができる。特定の新薬は、例えば、本項目1に例示した抗癌剤の補助剤であることができる。ここで、抗癌剤の補助剤とは、抗癌剤と組み合わせて用いることによってその抗癌剤感受性効果を高める作用がある化合物を指す。また、前記化合物群を合成するには、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー等の技術を用いることができる。
本実施の形態に係る被験化合物としては前述のようにあらゆる化合物を用いることができるが、活性等を予測されることによってあらかじめ選別されることも可能である。前記予測には、さまざまなデータベースに加えて、種々のソフトウェア等を利用することができる。ソフトウェアとしては、例えば、その化合物の薬理活性や、薬物動態、毒性等を事前に検証することができるソフトウェアや、化合物の体内での挙動をあらかじめ検証することができるソフトウェア等を挙げることができる。このような手段を利用することによって、コンピュータ上で大量の化合物を高速で検証することが可能になり、化合物のスクリーニング自体やその後の最適化ステップにかかる時間や労力、コスト等を削減できることが期待できる。
本実施の形態において、前記hRFIタンパク質または部分ペプチド、または、前記核酸は、例えば、細胞中または細胞抽出液中、あるいは、動物体内中に存在する態様であることができる。
前記細胞または細胞抽出液は、例えば、消化器癌由来の細胞または細胞抽出液であることができる。これによれば、細胞中または細胞抽出液中の環境で癌治療に有効な化合物を探索することができる。前記消化器癌は、例えば、本項目1に例示した消化器癌であることができる。本実施の形態においては、好ましくは大腸癌である。
前記動物は、例えば、本実施の形態に係る抗癌剤感受性試験用モデル動物であることができ、これによれば、動物の体内環境において癌治療に有効な化合物を探索することができる。また、前記化合物が生体に引き起こす副作用等についても検討することができる。
本実施の形態において、前記被験化合物を作用させる方法は特に限定されない。前記被験化合物をin vitroで作用させる場合は、例えば適切なバッファー中で、前記タンパク質または部分ペプチド自体、または、前記核酸自体と、前記被験化合物の一定量を、一定時間混合する方法を用いることができる。また、前記被験化合物をin vivoで作用させる場合は、例えば、hRFIタンパク質または部分ペプチド等を発現している細胞を培養している培地に前記被験化合物を一定濃度で一定時間添加する方法や、hRFIタンパク質または部分ペプチド等を発現している細胞を有する動物に前記被験化合物を注射等により投与する方法を用いることができる。
hRFIまたはレポーター遺伝子の発現または活性を検討する工程は、その具体的な方法等について特に限定されるものではなく種々の方法を用いることができる。hRFIの発現について検討する場合は、例えば、本項目1に例示したhRFIタンパク質または核酸を検討する方法を用いることができる。また、hRFIの活性について検討する場合は、例えば、hRFIの有する機能として知られている、TNF−αによって誘導されるアポトーシスの阻害能の変化を検討する方法を用いることができる。レポーター遺伝子の発現について検討する場合は、例えば、GFP遺伝子等を用いて顕微鏡観察する方法を用いることができる。レポーター遺伝子の活性について検討する場合は、例えば、当業者に公知のルシフェラーゼ遺伝子等を用いたレポーターアッセイを用いることができる。
本実施の形態に係るスクリーニング方法によって得られる癌治療に有効な化合物が、hRFIまたはレポーター遺伝子の発現または活性を低下させる作用機序については特に限定されるものではない。
本実施の形態に係るスクリーニング方法は、前記hRFIタンパク質やペプチド、または、前記核酸と、被験化合物との結合を検出する工程を含むことができる。これによれば、前記タンパク質またはペプチド、または前記核酸に、前記被験化合物が直接的または間接的に結合するか否かを確認することができる。
前記結合を検出する手法は特に限定されるものではなく、さまざまな手法を用いることができる。
被験化合物を作用させる物質が、hRFIタンパク質または部分ペプチドである場合は、適切なバッファー、例えば0.1% NP−40/PBS中で、一定温度で一定時間混合するin vitro binding assay法を用いて、例えば直接的に結合するか否かを検討することができる。また、抗hRFI抗体を用いた免疫沈降法を用いることによって、in vivoにおいて直接的または間接的に結合するか否かを検討することができる。また、前記被験化合物が例えばcDNAライブラリーの態様である場合は、当業者に公知の酵母2−ハイブリッドスクリーニング(yeast two-hybrid screening)等の手法を用いることによって、hRFIタンパク質または部分ペプチドに相互作用を示す遺伝子を標的としてスクリーニングを行うことができる。
被験化合物を作用させる物質が、hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸である場合は、例えば、当業者に公知のゲルシフトアッセイ等を用いて、前記核酸に直接的または間接的に結合するか否かを検討することができる。また、前記被験化合物が例えばcDNAライブラリー等の態様である場合は、当業者に公知の酵母1−ハイブリッドスクリーニング(yeast one-hybrid screening)等の手法を用いることによって、前記核酸に相互作用を示す遺伝子を標的としてスクリーニングを行うことができる。また、前記被験化合物が、hRFI遺伝子のプロモーター領域に結合する化合物であることが確認された場合は、前記化合物は、例えば、hRFIの上流で機能しhRFIの発現を制御する転写因子である可能性や、hRFIの転写因子がhRFI遺伝子のプロモーター領域に結合するのを阻害する作用を有する化合物である可能性等が考えられる。また、前記被験化合物がhRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸、例えばmRNAに結合する化合物であることが確認された場合は、前記化合物は、例えばhRFIタンパク質の発現を阻止する作用を有する化合物、例えばアンチセンスRNAやsiRNAである可能性等が考えられる。
被験化合物を作用させる物質が、hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸である場合は、前記被験化合物が、前記hRFI遺伝子のプロモーター領域に直接的または間接的に結合するか否かを検討する。具体的な方法としては、例えば、当業者に公知のゲルシフトアッセイ等を用いることができる。また、前記被験化合物が、hRFI遺伝子のプロモーター領域に結合する化合物であることが確認された場合は、前記化合物は、例えば、hRFIの上流で機能しhRFIの発現を制御する転写因子である可能性や、hRFIの転写因子がhRFI遺伝子のプロモーター領域に結合するのを阻害する作用を有する化合物である可能性等が考えられる。
本実施の形態において、癌治療における癌の種類は特に限定されるものではなく、種々の癌治療に有効な化合物を探索するために本実施の形態に係るスクリーニング方法を用いることができるが、前記癌は、例えば、消化器癌であることができる。前記消化器癌としては、例えば、本項目1に例示した消化器癌であることができ、本実施の形態において好ましくは大腸癌である。
また、本実施の形態に係るスクリーニングによって得られた化合物は、抗癌剤の補助剤であることができる。前記化合物が抗癌剤の補助剤である場合、これまで前記抗癌剤の効果が低かった癌に対して抗癌剤感受性を高めるために用いることができる。また、前記化合物を用いて研究を進めることによって、hRFIの詳しい機能や前記抗癌剤の作用機序の解明につながる可能性がある。なお、前記抗癌剤としては、例えば、本項目1に記載の抗癌剤であることができる。
8、抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法
本実施の形態に係るスクリーニング方法は、
hRFIの発現が上昇または低下している細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
hRFIの発現に操作を加えていない対照細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
両者細胞間における前記遺伝子の発現量を比較する工程と、
両者細胞間で発現量が変化している遺伝子を認定する工程と、
前記発現量が変化している遺伝子の発現と、抗癌剤感受性の相関を検討する工程と
を含む、抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法である。
これによれば、hRFIの発現によってその発現レベルが変化し、抗癌剤感受性の規定に関わる遺伝子を探索することができる。本実施の形態に係るスクリーニング方法によって得られた遺伝子が、抗癌剤感受性を高めるまたは低める作用を有していれば、前記遺伝子は、hRFI遺伝子の下流に位置し、hRFIの発現から抗癌剤感受性の規定までのシグナル伝達経路に関わる遺伝子であると考えられる。従って、本実施の形態に係るスクリーニング方法によって、hRFIの発現により抗癌剤感受性が変化するまでのシグナル伝達経路を解明することや、その制御を目的とした化合物のターゲットを選択することが可能になる。前記化合物は、例えば、抗癌剤としての候補化合物や、抗癌剤感受性を高める癌治療に有効な化合物であることができる。
hRFIの発現レベルが異なる細胞における1または2以上の遺伝子の発現量を比較検討、認定する具体的手法は特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができるが、例えば、当業者に公知のマイクロアレイやサブトラクション法等を用いることができる。
hRFIの発現レベルの変化によって発現量が変化すると認定された遺伝子の発現と、抗癌剤感受性の相関を検討する具体的手法としては特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができるが、例えば、Fluidic Card System(アプライドバイオシステムズ社製)、Affymetrix Gene Chip System(アフィメトリックス社製)、Tissue Microarray法等によることができる。
本実施の形態において、前記抗癌剤は、例えば、本項目1に例示の抗癌剤を用いることができる。これによれば、これらの抗癌剤に対する感受性の規定に関わる遺伝子をスクリーニングすることができる。
以下、本発明を実験例に基づき、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
(実験例1)大腸癌細胞株におけるhRFIの発現と抗hRFI抗体の特異性の確認
(1)3種類の大腸癌細胞株、HCT116、WiDr、Colo320におけるhRFIの発現を確認した。それぞれの細胞からRIPAバッファー(1% NP−40、11.5mM デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、1mM PMSF、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン)によりライセートを抽出し、その20μgを用い、当業者に公知のウェスタンブロット法によって、hRFIの発現を確認した。一次抗体は、発明者が以前に作製したウサギ抗hRFIポリクローナル抗体を用い(「オンコジーン(Oncogene)」、2002年、第21巻、p.5024−5030)、二次抗体は、ビオチン標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(ニチレイ(株)製)を用いた。
(2)結果を図1に示す。図1より、用いた大腸癌細胞株3種類すべてにおいて、hRFIのバンドが、分子量約43kDaの位置に特異的に検出されることがわかった。
(実験例2)大腸ポリープにおけるhRFIの免疫組織学的染色
(1)hRFIの発現を、大腸ポリープ、癌病変を用いて、免疫組織学的手法により検討した。大腸癌は、東京大学にて1998年から2000年の間に外科手術をうけたものを、大腸ポリープは、1993年から1996年の間に内視鏡的切除されたものを用いた。サンプルは、ホルマリン固定してパラフィン包埋し、厚さ3μmにスライスしてポリリジンコートしたスライドグラスにマウントした。切片の一枚は、当業者に公知のHE染色法によって、組織化学的に検討した。
(2)それぞれの切片を、実験例1で用いた抗hRFI抗体によって染色し、hRFIの発現を検討した。染色は、次に記載するSAB法により、ヒストファインSAB−PO(R)キット(ニチレイ(株)製)を用いて、付属のプロトコールに従い行った。まず、スライドを、キシレンによって15分間脱パラフィン処理した後、一連の濃度勾配を有するアルコール槽に浸していき、その後PBS(phosphate−buffered saline)で3回洗浄した。続いて、スライドを21分間超音波処理し、再びPBSで洗浄した。次に、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックするために、1.5%H含有メタノールでスライドを25分間インキュベートし、続いてPBSを用いて洗浄した。次に、ブロッキングバッファー(ヒストファインSAB−PO(R)キット:ニチレイ(株)製))を用いて非特異的結合領域をブロックし、PBSで5分間ずつ3回洗浄した。続いて、切片を抗hRFI抗体液0.5μg/mlを用いて4℃、24時間インキュベートし、PBSで数回洗浄した。その後、二次抗体としてビオチン標識抗ウサギIgG抗体を用いて常温で20分間反応し、PBSで洗浄した。次に、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンによる酵素標識反応を常温で10分間行い、PBSで洗浄後、DAB錠にて発色反応を行った。また、Mayerのヘマトキシリン液を用いて、室温で対比染色した。次いで、スライドを洗浄、脱水し、キシロールによる透徹、封入を行った。
(3)hRFIの免疫組織学的染色結果を図2に示す。Aは過形成性ポリープ、Bは軽度異型を有する腺腫性ポリープ、Cは高度異型を有する腺腫性ポリープ、Dは、腺腫合併大腸粘膜内癌、Eは漿膜下層への浸潤を伴う大腸癌における染色像を示す。図2より、AはhRFIの染色が認められず、B、C、Dはフォーカル(focal)な染色像が認められ、Eはディフューズ(diffuse)な染色像が認められた。また、本染色で用いたサンプルにおいて、正常組織ではいずれもhRFIの染色が認められなかった。これらの結果から、hRFIは大腸腫瘍性病変特異的に発現を示すことがわかった。
(4)また、大腸癌48例におけるそれぞれの染色パターングループの臨床病理学的特徴を、表1に示す。なお、表1において、“m”は「癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない」、“sm”は「癌が粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでいない」、“mp”は「癌が固有筋層にとどまり、これを超えていない」、“ss”は「漿膜を有する部位で、癌が固有筋層を超えているが、漿膜表面に出ていない」、“se”は「漿膜を有する部位で、癌が漿膜表面に露出している」、“si”は「漿膜を有する部位で、癌が直接他臓器に浸潤している」、“a1”は「漿膜を有しない部位で、癌が固有筋層を超えているが、さらに深くは浸潤していない」、“a2”は「漿膜を有しない部位で、癌が筋層を超えてさらに深く浸潤しているが、他臓器に浸潤していない」、“ai”は「漿膜を有しない部位で、癌が直接他臓器に浸潤している」を、それぞれ示す。なお、“m”、“sm”、“mp”、“ss/a1”、“se/a2”、“si/ai”の表記は、大腸癌取扱い規約(第6版)(Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum,editors:The General Rules for Clinical and Pathological Studies on Cancer of the Colon ,Rectum,and Anus.6th ed.Tokyo,Kanehana‐shuppan,1998)の組織学的壁深達度による。統計学的分析は、カイ二乗分析、フィッシャーの正確確率検定、マン・ホィットニー検定を用いた。P値は、P<0・05のときに、統計学的に有意であるとした。表1より、48例の大腸癌のうち、39例(81.3%)の癌領域がディフューズ(diffuse)に染まり、9例(18.7%)の癌領域がフォーカル(focal)に染まることがわかった。従って、この染色パターンと臨床病理学的特徴の間には、相関関係が認められないことが示された。
Figure 2005341862
(実験例3)大腸ポリープと大腸癌におけるhRFIの発現パターンの解析
(1)70例の大腸腺腫、6例の腺腫合併大腸粘膜内癌(本実験例において、単に「癌」ともいう。)、7例の過形成性ポリープを含む内視鏡的に切除された標本について、実験例2と同様の手法を用いてhRFIの免疫組織学的染色を行い、その染色パターンを表2にまとめた。また、ポリープと癌についてhRFI発現パターンの割合を検討し、図3にまとめた。さらに、過形成性ポリープ(hyperplast polyp)と腺腫(adenoma)/癌(carcinoma)を対比したhRFIの発現パターンの違い、及び、腺腫と癌を対比したhRFIの発現パターンの違いを表3に示した。なお、表2、図3における“m”、“sm”、“mp”、“ss/a1”、“se/a2”、“si/ai”の表記は、表1におけるそれぞれと同様の意を示し、また、“mild”(=mild dysplasia)は「軽度異型」、“mod”(=moderate dysplasia)は「中度異型」、“sev”(=severe dysplasia)は「高度異型」を示す。
Figure 2005341862
Figure 2005341862
(2)表2より、軽度異型を有する13例の腺腫のうち、10例がフォーカル(focal)なhRFIの染色像を示し、残りの3例は染色が検出されなかったことがわかった。また、中等度異型を有する52例の腺腫のうち、44例がフォーカル(focal)な染色像を示し、5例は染色が認められなかった。また、高度異型を有する5例の腺腫のうち、1例がディフューズ(diffuse)に染まり、残りの4例はフォーカル(focal)に染まった。6例の腺腫合併大腸粘膜内癌については、4例がディフューズ(diffuse)に染まり、2例がフォーカル(focal)に染まった。一方、7例の過形成性ポリープにおいては、2例がフォーカル(focal)に染まり、残りの5例は染色が認められなかった。これらの典型的な染色像は、図2のA〜Cに示すとおりである。
(3)図3より、この実験で検討したすべての大腸の正常組織、及び、過形成性ポリープの70%以上(71.4%)は、hRFIの染色が認められないことがわかった。また、正常領域よりも大腸癌領域において、hRFIの発現が高いことがわかった。
(4)さらに、表3より、腺腫と癌を含む大腸腫瘍の大部分では(93.2%)、フォーカル(focal)又はディフューズ(diffuse)であるhRFIの染色像が認められた(P<0.001)。また、癌においてhRFIがディフューズ(diffuse)に染色される割合(81.3%)は、腺腫におけるその割合(5.7%)と比較して、統計的有意に高いことがわかった(P<0.001)。
(5)本実験例3の結果から、大腸腺腫におけるhRFIの発現は、過形成性ポリープにおける発現よりも有意に高く、その発現パターンは、異型性の程度が大きくなるにつれて、フォーカル(focal)な染色像からディフューズ(diffuse)な染色像に移行していくことがわかった。この結果から、hRFIの発現は、大腸腺腫から大腸癌に至るステップ(adenoma−carcinoma sequence)において、大腸腫瘍形成の初期段階と腺腫の異型性の進行を、明確に示す指標となる可能性が考えられた。
また、癌ではない正常組織(normal)でhRFIの染色が認められず、腺腫合併大腸粘膜内癌の2/3でディフューズな染色像が認められた。また、大腸癌の臨床病理学的特徴とhRFIの染色パターンには、相関関係がないことが確認された。これらの結果から、hRFIの発現は、癌の進行ではなく、癌の形成に関与していると考えられた。また、hRFIはアポトーシスに影響を与える腫瘍分子として機能しうることが示唆された。
(実験例4)大腸癌細胞株におけるhRFIの発現の確認
(1) 8種類の大腸癌細胞株、Colo320、Colo205、Caco2、SW480、WiDr、HT29、DLD1、HCT116におけるhRFIの発現を確認した。それぞれの細胞からRIPAバッファーによってライセートを抽出し、その20μgを用いて、当業者に公知のウェスタンブロット法でhRFIの発現を確認した。一次抗体は、発明者が以前に作製したウサギ抗hRFIポリクローナル抗体を用い(「オンコジーン(Oncogene)」、2002年、第21巻、p.5024−5030)、二次抗体は、HRP標識抗ウサギIgG抗体(アマシャム社製)を用いた。また、タンパク質チャージ量のコントロールとして、β−actinを用いた。β−actinの検出には、一次抗体としてマウス抗β−actinモノクローナル抗体(シグマ社製)、二次抗体としてHRP標識抗マウスIgG抗体(アマシャム社製)を用いた。
(2)結果を図4に示す。図4より、用いた大腸癌細胞株8種類すべてにおいて、2本のhRFIのバンドが特異的に検出されることがわかった。下のバンドは期待される分子量を示すバンドであり、上のバンドはこれより大きい分子量を示すバンドである。
(実験例5)大腸癌細胞株におけるhRFI発現量の比較
(1)実験例4における2本のバンドの発現量を比較検討するために、Image Proソフトウェア(プラネトロン(株)製)を用いてデンシトメトリー解析を行い、各バンドの濃度を測定した。それぞれのhRFIのバンドの濃度を、β−actinの発現量で補正した。次に、HCT116における2本のhRFIのバンドの濃度をそれぞれ1とし、これらのhRFIのバンドの濃度を基準として他の大腸癌細胞株のhRFIの発現量を数値化した。同時に、2本のバンドで示される発現量の合計についても同様に数値化した。
(2)結果を図5に示す。この結果から、大腸癌細胞株におけるhRFIの発現量はさまざまであることがわかった。
(実験例6)hRFIの発現量とアポトーシス誘導量の相関
(1)実験例5で得られた各大腸癌細胞株におけるhRFI発現量と、以前にMariadason JMらによって報告されたこれらの大腸癌細胞株の抗癌剤5−FU(5−フルオロウラシル)によるアポトーシス誘導の感受性データ(「キャンサー リサーチ」(Cancer Research)、2003年、第63巻、p.8791−812)との相関を、JMPソフトウェア(サスインスティテュート社製)による多変量解析を用いて検討した。
(2)結果を図6、7、8に示す。図6は相関係数、図7はノンパラメトリックによるスピアマンの順位相関係数、図8は散布図行列を示す。図6、7、8、において、“Apotosis−C”は「コントロール細胞におけるアポトーシスの割合」、“Apo−5”は「5−FU(5−フルオロウラシル)5μMにより誘導されたアポトーシスの割合」、“Apo−50”は「5−FU(5−フルオロウラシル)50μMにより誘導されたアポトーシスの割合」、 “Spearman”は「スピアマン」をそれぞれ示す。これらの結果から、hRFIの発現量と、5−FU(5−フルオロウラシル)によるアポトーシス誘導能は、逆相関を示すことがわかった。
(実験例7)組織マイクロアレイを用いた、hRFI発現と抗癌剤感受性の関連解析
(1)ヒト各種臓器癌由来ゼノグラフト(ヌードマウス皮下担癌モデル)32株より作製した組織マイクロアレイを用いて、抗hRFI抗体、抗Ki−67抗体、抗Bcl−2抗体、抗survivin抗体、抗TP53抗体にて免疫染色を行った。染色方法は、実験例2(2)に記載のSAB法を用いた。
(2)ヒト各種臓器癌由来ゼノグラフトパネルにおける、抗hRFI抗体による免疫染色結果を図9に示す。図9において、1は胃癌株、2は大腸癌株、3は肺癌株、4は乳癌株、5は膵臓癌株を示す。左右のスポットは、2匹のマウスを用いて実験を行ったことを示す。この結果から、各種臓器癌由来ゼノグラフトにおける、hRFIの発現量が明らかになった。
(3)各種ゼノグラフトの各種抗癌剤感受性データとhRFI発現の相関を、2ウェイヒエラルキカルクラスター解析(GeneSpring;シリコンジェネティックス社製、商品名)により検討した結果を図10に示す。各種ゼノグラフトの各種抗癌剤感受性データは、大鵬薬品工業株式会社がん研究所にて、当業者に公知の方法を用いて実施されたヌードマウス皮下担癌モデルにおける抗腫瘍効果検討実験の結果を用いた。図10において、縦には既に各ゼノグラフトに対して感受性を検討した抗癌剤名、腫瘍の倍加時間(DT:ダブリングタイム)及び今回の実験で発現を調べたタンパク質hRFI(RFI−L、RFI−R、RFI−Mはそれぞれ、図9の左のパネル、右のパネル、RFI−LとRFI−Rの平均)を示し、横には32の各種ゼノグラフトのサンプル名を示す。ここで、5’−DFUR、Cape、UFT、TS−1は代謝拮抗剤、CDDP(シスプラチン)はプラチナ系抗癌剤、TAXOLはタキサン系抗癌剤、CPT−11はトポイシメラーゼI阻害剤に分類される。また、図10は、色が濃いほど、抗癌剤に対する感受性が高い、腫瘍の倍加時間が長い、hRFIの発現が高いことを示している。この結果から、各種ゼノグラフトにおいて、hRFIの発現量と、代謝拮抗剤である5’−DFUR、Cape、UFT感受性効果、及びプラチナ系抗癌剤であるCDDP(シスプラチン)感受性効果は逆相関を示すことがわかった。
(4)各種ゼノグラフトの各種抗癌剤感受性データと各遺伝子発現の相関を、ロジスティック回帰分析により検討した結果を図11に示す。図11において、縦には免疫染色を行った遺伝子を示し、横には各種抗癌剤を示す。また、図12のA、B、Cはそれぞれ、図11に示した、hRFIの発現量と、UFT、CDDP(シスプラチン)、5’−DFUR抗癌剤感受性データの相関を、拡大して示した図である。また、図13は、Ki−67の発現量と、CPT−11抗癌剤感受性データの相関を、ロジスティック回帰分析により示した図であり、図14はhRFIの発現量と、抗癌剤(AはUFT、BはCDDP(シスプラチン))感受性データの相関を、一元配置分散分析によって解析した結果を示す図である。なお、図12、13において、“Logistic Fit”は「ロジスティック適合度」、“Whole Model Test”は「ホールモデルテスト」、“Model”は「モデル」、“Difference”は「差」、“Full”は「全体」、“Reduced”は「減算済み」、“RSquare(U)”は「R二乗(U)」、“Observations(or Sum Wgts)”は「観測点(または重み合計)」、“Converged by Gradient”は「傾きによって収束された」、“−LogLikelihood”は「−対数尤度」、“DF”は「自由度(degree of freedom)」、“ChiSquare”は「カイ二乗値」、“Prob>ChiSq”は「Prob>ChiSq」、“Parameter Estimates”は「パラメータ推定値」、“Term”は「項目」、“Intercept”は「切片」、“For log odds of high/low”は「高/低の対数オッズに対する」、“Estimate”は「推定値」、“Std Error”は「標準誤差」を、それぞれ示す。また、図14において、“Oneway Analysis”は「一元分析」、“high”は「高」、“low”は「低」、“Oneway Anova”は「一元配置分散分析」、“Summary of Fit”は「当てはめの要約」、“Rsquare”は「R二乗」、“Adj Rsquare”は「R二乗」、“Root Mean Square Error”は「根平均平行誤差」、“Mean of Response”は「感受性の平均」、“Observations(or Sum Wgts)”は「観測点(または重み合計)」、“t−Test”は「t−テスト」、“Estimate”は「推定値」、“Std Error”は「標準誤差」、“Lower95%”は「下位95%」、“Upper95%”は「上位95%」、“Assuming equal variances”は「等分散と仮定する」、“Difference”は「差」、“DF”は「自由度」、“Prob>|t|”は「Prob>|t|」、“Analysis of Variance”は「分散の分析」、“Source”は「ソース」、“Sum of Squares”は「二乗の合計」、“Mean Square”は「平均二乗」、“F ratio”は「F比」、“Prob>F”は「Prob>F」、“Means for Oneway Anova”は「一元配置分散分析に対する平均」、“Level”は「レベル」、“high”は「高」、“low”は「低」、“Number”は「数」、“Mean”は「平均」、“Std Error”は「準誤差」、“Std Error uses a pooled estimate of error variance”は「標準誤差は誤差分散の併合推定を使用する」を、それぞれ示す。
まず、図11、図13から、Ki−67の発現量と、CPT−11抗癌剤感受性効果は、P<0.05であり、統計学的に有意な正の相関を示していることがわかった。
また、図12A、BにおいてP<0.05であり、さらに、図11、図14から、hRFIの発現量と、UFT、CDDP(シスプラチン)抗癌剤感受性効果は、統計学的に有意な負の相関を示すことがわかった。また、図12Cに示す5’−DFURについては、同じくhRFIの発現量と負の相関傾向は示すものの、統計学的に有意な相関ではなかった(P=0.0671)。
この結果から、5’−DFUR、Cape、またはUFT等の代謝拮抗剤、及びCDDP(シスプラチン)等のプラチナ系抗癌剤感受性と、hRFIの発現量との間に逆相関関係があることが明らかになった。
(実験例8)hRFIをステイブルに発現する細胞株(HCT116)の確立
(1)pcDNA3.1/V5−Hisベクター(インビトロジェン社製)にhRFI遺伝子を挿入したプラスミド(「pcDNA3.1/V5−His/hRFI」と命名する。)を、GenePORTER 2(ジーンセラピーシステム社製)を用いて大腸癌細胞株HCT116にトランスフェクションし、培養した。培地は、10%FBSを加えたMcCoy5A(ギブコ/ビーアールエル社製)を用いた。
(2)トランスフェクション1日後から、G418(ギブコ/ビーアールエル社製)1000μg/mlによってセレクションを開始した。
(3)セレクション終了後シングルコロニーをピックアップし、継代した。
(4)各細胞株からRIPAバッファーに溶解したライセートを回収し、実験例4(1)と同様にしてhRFIの発現を確認した。タンパク質チャージ量のコントロールは、同じくβ−actinを用いた。
(5)結果を図15に示す。これより、クローン4が最もhRFIの発現が高く、続いてクローン3、クローン1、クローン2の順にhRFIの発現が低くなるステイブル細胞株(HCT116)が確立されたことを確認した。
HCT116、WiDr、Colo320におけるhRFIの発現を示す図である。 hRFIの免疫組織学的染色結果を示す図である。Aは過形成性ポリープの染色像(250倍)、Bは軽度異型を有する腺腫性ポリープの染色像(250倍)、Cは高度異型を有する腺腫性ポリープの染色像(250倍)、Dは、腺腫合併大腸粘膜内癌の染色像(200倍)、Eは漿膜下層への浸潤を伴う大腸癌の染色像(200倍)を示す。 一連の大腸腺腫から大腸癌に至るステップ(adenoma−carcinoma sequence)における、hRFIの各発現パターンの割合を示す図である。 8種類の大腸癌細胞株におけるhRFIの発現を示す図である。 大腸癌細胞株において2本のバンドに示されるhRFI発現量の比較を示す図である。 相関係数を示す。 ノンパラメトリックによるスピアマンの順位相関係数を示す。 散布図行列を示す。 各種臓器癌由来ゼノグラフトパネルを用いた、抗hRFI抗体免疫染色を示す図である。1レーンは胃癌株7株、2レーンは大腸癌株6株、3レーンは肺癌株7株、4レーンは乳癌株6株(うち1株は2スポット)、5レーンは膵臓癌株6株を示す。 各種ゼノグラフトの各種抗癌剤感受性データとhRFI発現の相関を、2ウェイヒエラルキカルクラスター解析により示した図である。 各種ゼノグラフトの抗癌剤感受性データと各遺伝子発現の相関をロジスティック回帰分析により示した図である。 hRFIの発現量と、抗癌剤(AはUFT、BはCDDP(シスプラチン)、Cは5’−DFUR)感受性データの相関を、ロジスティック回帰分析により示した図である。 Ki−67遺伝子の発現量と、CPT−11抗癌剤感受性データの相関を、ロジスティック回帰分析により示した図である。 hRFIの発現量と、抗癌剤(AはUFT、BはCDDP(シスプラチン))感受性データの相関を、一元配置分散分析によって解析した結果を示す図である。 hRFIをステイブルに発現する細胞株(HCT116)におけるhRFI発現の確認を示す図である。

Claims (25)

  1. 抗癌剤感受性予測の対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程と、
    検討して得られたhRFIの発現から抗癌剤感受性を予測する工程と
    を含む、抗癌剤感受性予測方法。
  2. 前記試料は、消化器癌細胞を含む試料である、請求項1に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  3. 前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含む、請求項1または2に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  4. hRFIの発現量と抗癌剤感受性は逆相関関係にあることを、抗癌剤感受性を予測する指標の一つとする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  5. 前記抗癌剤は代謝拮抗剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  6. 前記代謝拮抗剤はフッ化ピリミジン系抗癌剤である、請求項5に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  7. 前記抗癌剤はプラチナ系抗癌剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗癌剤感受性予測方法。
  8. 腫瘍性病変の有無の判定対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む、腫瘍性病変の有無の判定方法。
  9. 前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含む、請求項8に記載の腫瘍性病変の有無の判定方法。
  10. hRFIが発現していることを、腫瘍性病変が存在していると判断する指標の一つとする、請求項8または9に記載の腫瘍性病変の有無の判定方法。
  11. 前記腫瘍性病変は、消化器における腫瘍性病変である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の腫瘍性病変の有無の判定方法。
  12. 腫瘍性病変進行度の評価対象となる試料についてhRFIの発現を検討する工程を含む、腫瘍性病変進行度評価方法。
  13. 前記hRFIの発現を検討する工程は、hRFIタンパク質または核酸に基づいて検討する工程を含む、請求項12に記載の腫瘍性病変進行度評価方法。
  14. 前記腫瘍性病変は、消化器における腫瘍性病変である、請求項12または13に記載の腫瘍性病変進行度評価方法。
  15. hRFIの発現を検討するための、hRFIタンパク質または核酸との親和性のある物質を含み、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗癌剤感受性予測方法、請求項8〜11のいずれか一項に記載の腫瘍性病変の有無の判定方法、及び請求項12〜14のいずれか一項に記載の腫瘍性病変進行度評価方法のうちの、少なくともいずれか1つの方法に用いることができる、医療用キット。
  16. 前記物質は、抗hRFI抗体、hRFIのmRNAに対するプライマーセットを含むプライマー、及びhRFIのmRNAに対するDNAまたはRNAプローブのうちの少なくともいずれか1つである、請求項15に記載の医療用キット。
  17. hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターで形質転換された形質転換体を含む抗癌剤感受性検査用組成物。
  18. hRFIを発現している細胞を担持した、抗癌剤感受性試験用モデル動物。
  19. 前記抗癌剤感受性試験用モデル動物が、担癌免疫不全モデル動物である、請求項18に記載の抗癌剤感受性試験用モデル動物。
  20. hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
    を含み、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、
    癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
  21. hRFIタンパク質または部分ペプチドに、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
    前記hRFIタンパク質または部分ペプチドと、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
    を含み、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、
    癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
  22. hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
    を含み、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、
    癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
  23. hRFI遺伝子のプロモーター領域、及び/または、hRFIタンパク質または部分ペプチドをコードする領域を含む核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
    前記核酸と、前記被験化合物との結合を検出する工程と、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性の変化を検討する工程と
    を含み、
    前記被験化合物を作用させた場合のhRFIの発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、
    癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
  24. hRFI遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合した核酸に、1または2以上の被験化合物を作用させる工程と、
    前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性の変化を検討する工程と
    を含み、
    前記被験化合物を作用させた場合の前記レポーター遺伝子の発現または活性が、前記被験化合物を作用させない場合と比較して低下していることを、前記被験化合物の癌治療における有効性を判断する指標の一つとする、
    癌治療に有効な化合物のスクリーニング方法。
  25. hRFIの発現が上昇または低下している細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
    hRFIの発現に操作を加えていない対照細胞における、1または2以上の遺伝子の発現量を検討する工程と、
    両者細胞間における前記遺伝子の発現量を比較する工程と、
    両者細胞間で発現量が変化している遺伝子を認定する工程と、
    前記発現量が変化している遺伝子の発現と、抗癌剤感受性の相関を検討する工程と
    を含む、抗癌剤感受性に関連する遺伝子のスクリーニング方法。
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