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JP2005215028A - ポリイミド製無端ベルト及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド製無端ベルト及びその製造方法 Download PDF

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JP2005215028A
JP2005215028A JP2004018252A JP2004018252A JP2005215028A JP 2005215028 A JP2005215028 A JP 2005215028A JP 2004018252 A JP2004018252 A JP 2004018252A JP 2004018252 A JP2004018252 A JP 2004018252A JP 2005215028 A JP2005215028 A JP 2005215028A
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Takeshi Miyamoto
宮本  剛
Shoichi Morita
章一 森田
Yuichi Yashiki
雄一 矢敷
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

【課題】 イミド化を行うための焼成温度の低減、焼成時間の短縮を達成することで、イミド化反応による膜品質のばらつきを防ぎ、均一な特性を備えるポリイミド製無端ベルトを提供する。さらに、均一な特性を備えるポリイミド製無端ベルトを容易に得ることができるポリイミド製無端ベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】 可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布した後、イミド化を行って得られるポリイミド管状成形体を主体とし、電子写真装置の中間転写用及び/又は定着用に用いられることを特徴とするポリイミド製無端ベルト。ポリイミド−ポリアミック酸共重合体中に存在するイミド基とアミック酸基との総量に占めるイミド基のモル分率(イミド化率)が50〜99%であることが好ましい。このような無端ベルトは、可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布する工程と、乾燥・焼成によりイミド化を行ってポリイミド管状成形体を形成する工程とを含む製造方法により得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に好適に用いるポリイミド製無端ベルト及びその製造方法に関する。
電子写真方式を用いた画像形成装置は、無機又は有機材料からなる光導電性感光体からなる像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像とする機構を有する。そして、上記トナー像を、中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写することにより所望の再生画像を得るものである。特に、上記像担持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、更に中間転写体上のトナー像を記録紙に二次転写する方式を採用した画像形成装置として、特開昭62−206567号公報等に開示されたものが知られている。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトの材料としては種々の提案がなされ、例えば、ポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献1参照。)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)(例えば、特許文献2,3参照。)、ポリアルキレンフタレート(例えば、特許文献4参照。)、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料(例えば、特許文献5参照。)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)/PC,ETFE/PAT,PC/PATのブレンド材料(例えば、特許文献6参照。)等の熱可塑性樹脂にカーボンブラックを添加した半導電性の無端ベルトを用いる提案がなされている。
近年、中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写−定着方式が開示されている例えば、特許文献7参照。)。このような中間転写−定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写した後、この中間転写体を直接若しくは間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を紙などの受像媒体上に定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
この方式に用いられる無端ベルトには、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃以上の耐熱性が要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性とをともに備えるポリイミド樹脂が用いられている。
ポリイミド樹脂は、耐熱性が高いために一般に加熱溶融し難く、各種溶剤に対しても不溶であるために、成形にあたっては、その前駆体であるポリアミック酸の溶液を基材に塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行ってポリイミド成型体を得ている。このときの加熱によるイミド化反応においては、一般に200℃〜350℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点より問題があった。
また、ポリアミック酸の脱水反応に伴い、塗膜中にボイドが発生したり、脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力に起因して膜厚方向ならびに面内での品質のばらつきが生じやすくなるなどの問題を有しており、特に高い均一性と表面平滑性とを要求される転写ベルトとして用いた場合に、その抵抗値のばらつきが品質上大きな問題とされている。
特開平6−095521号公報 特開平5−200904号公報 特開平6−228335号公報 特開平6−149081号公報 特開平6−149083号公報 特開平6−149079号公報 特開平6−258960号等
上記問題を考慮した本発明の目的は、イミド化を行うための焼成温度の低減や焼成時間の短縮することができ、イミド化反応による膜品質のばらつきを防ぎ、均一な特性を備えるポリイミド製無端ベルトが提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、均一な特性を備えるポリイミド製無端ベルトを、イミド化を行うための高エネルギー付加を必要とせず、容易に得ることができるポリイミド製無端ベルトの製造方法を提供することにある。
本発明は、同時に、ポリイミド成型加工時に使用された熱エネルギーの排出に伴う環境負荷低減効果をも達成しようとするものである。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造をもつポリイミドまたはポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を使用することで、イミド化を行うための焼成温度の低減や焼成時間の短縮を可能とすること、及び、イミド化反応による膜品質のばらつきを防ぎ均一な特性を備えるベルトが得られること、を見いだし本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のポリイミド製無端ベルトは、可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布した後、イミド化を行って得られるポリイミド管状成形体を主体とすることを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様として、前記ポリイミド−ポリアミック酸共重合体中に存在するイミド基とアミック酸基との総量に占めるイミド基のモル分率(イミド化率)が50〜99%であることが挙げられる。
さらに前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体におけるテトラカルボン酸二無水物由来の構造は特定構造を有するものが選ばれることが好ましい。すなわち、テトラカルボン酸二無水物由来の特定構造として、下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物由来の構造を、全テトラカルボン酸二無水物由来の構造中、50モル%以上含むことを特徴とする。
(A)4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
(B)5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
(C)2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
(D)1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
(E)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
(F)3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
(G)3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、
(H)3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物。
ここで、前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合反応により得られるポリアミック酸を、加熱するか、または、脱水剤、あるいは、脱水剤とともに触媒を作用させて合成されたものであることが好ましい。ここで用いられる好ましい脱水剤としては、1価カルボン酸酸無水物でが挙げられ、脱水剤とともに用いられる触媒としては、3級アミンが好適なものとして挙げられる。
前記可溶性ポリイミド溶液、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液に用いられる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、からなる群より選ばれる1種類または2種類以上を全溶媒中に50質量%以上含む溶媒であることが好ましい。
また、本発明のポリイミド製無端ベルトの主体となるポリイミド管状成形体は、ポリイミド100質量部に対し、無機粉体または有機粉体からなるフィラー成分を5〜60質量部含有するものであってもよい。
さらに、本発明のポリイミド製無端ベルトの主体となるポリイミド管状成形体は、ポリイミドに、さらに、カーボンナノチューブを含有するものであることが好ましい。
このような本発明のポリイミド製無端ベルトは、電子写真装置の中間転写用及び/又は定着用に好適に用いることができる。
本発明の請求項11に係るポリイミド製無端ベルトの製造方法は、可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布する工程と、乾燥・焼成によりイミド化を行ってポリイミド管状成形体を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この製造方法において用いられる可溶性ポリイミドまたはポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、前駆体であるポリアミック酸に脱水剤を溶液中で作用させた後、脱水剤を除去して得られるものであることが好ましく、ここで、脱水剤を除去するにあたっては、加熱・減圧による留去、又は、貧溶剤を用いた再沈殿法を適用することが好ましい態様である。
また、さらに、前記ポリイミド−ポリアミック酸共重合体中に存在するイミド基とアミック酸基との総量に占めるイミド基のモル分率(イミド化率)が50〜99%であること、前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体における全テトラカルボン酸二無水物由来の構造中、前記(A)〜(H)からなる群より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物由来の構造を50モル%以上含むこと、前記ポリイミド管状成形体が、ポリイミド100質量部に対し、無機粉体または有機粉体からなるフィラー成分を5〜60質量部含有すること、さらには、ポリイミドにカーボンナノチューブを含有すること、が好ましい態様である。
本発明のポリイミド製無端ベルトは、特定の可溶性ポリイミド類を原料として用いることで、イミド化を行うための焼成温度の低減や焼成時間の短縮することができ、イミド化反応による膜品質のばらつきを防ぎ、均一な特性を備える。
また、本発明のポリイミド製無端ベルトの製造方法によれば、高エネルギーの付加などを必要とせず、均一な特性を備えるポリイミド製無端ベルトを容易に製造することができる。
本発明のポリイミド製無端ベルトは、製造時に高エネルギーの付加を必要としないため、ポリイミド成型加工時に使用された熱エネルギーの排出に伴う環境負荷を低減するという効果をも奏するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリイミド製無端ベルトは、特定構造を有する可溶性ポリイミド又はその前駆体を用いて得られ、ボイドの発生や膜厚の偏りが抑制された均一な特性を有すること特徴とする。
本発明で使用される可溶性ポリイミドまたはポリイミド−ポリアミック酸共重合体(以下、これらを可溶性ポリイミド等と総称することがある)の前駆体であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、実質的に等モル量、有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。以下、これらの化合物並びに可溶性ポリイミド等の前駆体を得るまでのプロセスについて説明する。
(テトラカルボン酸二無水物)
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物は、下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物であり、これらの特定構造を有するテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物のうち、50モル%以上用いることが好ましい。
(A)4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
(B)5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
(C)2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
(D)1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
(E)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
(F)3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
(G)3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、
(H)3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物。
これらの特定構造をもつテトラカルボン酸二無水物を使用することで、後に示すイミド化処理により、ポリアミック酸を、ポリイミド/またはポリイミド−ポリアミック酸共重合体に転化した後でも、溶剤に対する溶解性を維持させることができる。
一般的な、上述の特定構造以外のテトラカルボン酸二無水物を主成分として使用する場合には、該ポリアミック酸をイミド化処理により閉環させことによって、分子の剛直性が向上して、溶剤に対する溶解度が著しく低下し、析出を生じるために、塗工による成形、特に、塗布法によって均一な膜厚を有する成形体を得ることができない。
これらの上記(A)〜(H)から選ばれるテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。上記(A)〜(H)から選ばれるテトラカルボン酸二無水物の全カルボン酸二無水物中の含有率は、50モル%以上であり、さらに好ましくは70〜100モル%の範囲である。特定構造のテトラカルボン酸二無水物の含有率が少なすぎる場合には、イミド化した際に溶媒可溶性が低下し、ワニス安定性が著しく低下するおそれがある。
また、本発明の無端ベルトを作製するにあたって、上記(A)〜(H)に示すテトラカルボン酸二無水物に加えて、他の構造を有するテトラカルボン酸二無水物を50モル%未満の範囲で併用することができる。
かかる他の構造のテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、公知の芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
(ジアミン化合物)
また、前記テトラカルボン酸二無水物との反応に用いられるジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、
2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5‘−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;
ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン;
等を挙げることができる。
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンが好ましい。
これらのジアミン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
(重合溶媒)
本発明において可溶性ポリイミド等の前駆体であるこのポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、さらには、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
反応に使用される有機溶媒は、生成したポリアミック酸を溶解しうるものであれば特に限定されない。
〔ポリアミック酸の重合〕
かかるポリアミック酸は、上記テトラカルボン酸二無水物と、上記ジアミン化合物とを、上記有機極性溶剤に溶解させた後、酸無水物基とアミノ基との縮重合反応により生成する。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル比は、当量であることが好ましい。すなわち、理論上、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル比が当量のときに重合度は増大し、溶液粘度は最大となる。ただし、原料モノマーの純度、塗工上の必要性から重合濃度を必要に応じて0.95〜1.05の範囲として、重合粘度を調整することができる。
1.ポリアミック酸重合時の固形分濃度
かかるポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5〜50質量%が好ましく。さらに、特に10〜30質量%が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない。
2.ポリアミック酸重合時の反応温度
ポリアミック酸重合時の反応は、0℃〜80℃の温度範囲において行われる。反応温度が0℃以下になると、溶液の粘度が高くなって反応系の十分な攪拌が困難となり、反応効率上、好ましくない。また、反応系の温度が高すぎる場合には、ポリアミック酸の重合に平行して、一部に所望されないイミド化反応(加熱に起因する閉環脱水反応)が起こる懸念があり、反応制御の観点から問題が指摘される。
〔イミド化反応〕
本発明に使用される可溶性ポリイミ又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、前記の反応により得られたポリアミック酸を加熱するか、又は、ポリアミック酸に脱水剤を作用させ、ポリアミック酸中のアミック酸基の一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換することによって得られる。ここで、脱水剤を作用させる方法をとる場合、所望により脱水剤とともに触媒を作用させてもよい。
加熱によりイミド化反応を行う場合、加熱温度は、通常60〜250℃の範囲であり、好ましくは100〜200℃の範囲である。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行しないことが懸念される。また、加熱温度が高すぎる場合には、得られる重合体の分子量が小さくなる傾向があり、ポリイミドの所望の分子量などを考慮して、加熱温度を選択すればよい。
ポリアミック酸溶液中に脱水剤および所望により環化触媒を添加することによりイミド化反応を行う場合、脱水剤としては、1価カルボン酸無水物が好ましく、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。具体的には、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。
脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜3当量とするのが好ましい。
前記脱水剤とともに環化触媒を用いることができる。ここで用いうる触媒としては、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜5当量とするのが好ましい。
この脱水剤を用いて行われる脱水閉環は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加し、必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃の範囲とされる。
本発明におけるポリイミド製無端ベルトに使用されるポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、分子構造中アミック酸基とイミド基中に占めるイミド基のモル分率で定義されるイミド化率が50〜99%であることが好ましい。イミド化率が50%未満であると、ベルト製造時の焼成工程でイミド化反応が十分に進行せず、ベルトとした場合に十分な強度が得難いためである。
前記触媒/脱水剤によりイミド化されたポリイミド/またはポリイミド−ポリアミック酸共重合溶液より、作用させた脱水剤、触媒を除去する方法としては、減圧加熱による留去または再沈殿法が挙げられる。
減圧加熱による方法は、真空下(20mmHg程度の減圧下)で、80〜120℃の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸が留去される。
再沈殿法は、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、且つ、部分イミド化されたポリアミック酸を溶解させない貧溶媒を大過剰に準備し、該貧溶媒中に反応液を加えることによって行われる。
ここで用いられる貧溶剤には、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤、ヘキサンなどのような炭化水素系溶剤、などが使用される。この溶媒中に反応液を加えると、除去されるべき3級アミンなどは溶解するため、ここで析出するポリイミド/ポリイミド−ポリアミック酸共重合体をろ別することで、これらの不要な成分が除去される。ろ別した析出物は乾燥後、再度、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に溶解させて、使用される。
前記のようにして、本発明のポリイミド製無端ベルトの原料である可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を得ることができる。本発明のポリイミド製無端ベルトは、この可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布し、乾燥・焼成によりイミド化を行ってポリイミド管状成形体を形成することにより製造される。
以下、この製造方法について、工程に従って説明する。
〔塗工溶剤〕
塗工工程は、可溶性ポリイミド等の溶液を管状基材に塗布する工程である。
前記可溶性ポリイミド又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液の溶媒は、前述のように、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、から選ばれる1種類または2種類以上を全溶媒中50質量%以上含むことを特徴とする。この溶媒は、先のポリアミック酸合成時に使用したものを、溶液のまま本工程において使用したものでもよく、ポリアミック酸合成後、もしくはイミド化反応後に一旦、それまで用いていた溶媒を除去した後、所定の溶媒に置換して用いてもよい。溶媒の置換は、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を留去した後に所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれにより行ってもよい。
(フィラー成分)
本発明におけるポリイミド製無端ベルトのポリイミド樹脂層には、その抵抗値や熱伝導性、機械的強度を制御するために、さらに無機粉体や有機粉体からなるフィラー成分を導入することができる。
樹脂中に導入されるフィラーの種類は特に限定されない。例えば、抵抗値の制御の観点から、カーボンブラック、カーボンナノチューブをはじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方法が最も効果的である。カーボンブラック、カーボンナノチューブ以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリンなどの導電性高分子材料からなる粉体の添加も可能である。
熱伝導性を制御する観点から、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。なかでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好ましい。
また、機械的強度の制御の観点から、例えばカーボンナノチューブが挙げられる。
(カーボンナノチューブ)
ここでフィラーとして用いられるカーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブの添加により、可溶性ポリイミド材料における抵抗値の制御のみならず、同時に、機械的強度の向上をも実現することができる。
カーボンナノチューブは、炭素からなる筒状の中空繊維であり、直径に対して長さが数十倍以上のものが挙げられる。具体的には好ましくは直径が0.005〜1μmで、長さが1〜100μm、より好ましくは直径が0.01〜0.5μmで、長さが1〜10μmのものがポリイミド前駆体溶液を塗布する工程や、塗膜の厚さを考慮すると好ましい。カーボンナノチューブは、触媒を用いて熱分解する方法や、アーク放電法、レーザー蒸発法などの公知の方法により製造することができる。また、市販品としても入手可能であり、このような市販品も本発明に好ましく用いられる。
ここで、添加される無機粉体などのフィラー成分が樹脂中で分散不良を起こした場合には、材料の絶縁破壊現象が生じたり、この無端ベルトにより形成された中間転写体を用いた場合、物性の不均一に起因する画像不良を起こすなどの懸念が生じる。他方、フィラー成分が樹脂中で極めて均一に単粒子分散された場合には、粉体同士の接点が減少して、結果として電気導電性が発現しないといった事態も生じうる。この相反する問題点を解決するために、無機粉体が樹脂中で十分に分散し、且つ、単位体積あたりの無機粉体同士の接触点が十分に確保できることが要求される。そのためには、添加フィラーの種類、量が適宜選択され、またフィラーをポリイミド溶液中に分散させるための分散工程での分散方法、分散条件の最適化を行う必要がある。
この分散条件の最適化は、公知の方法で行いうるが、代表的なものとして、フィラー成分の添加量を以下に記載する最適な量とする方法、分散に際してジェットミル分散、ビーズミル分散、などの手段を用いる方法が採用されうるが、本発明の目的を達成し得る限り、これらの方法に限定されるものではない。
ベルトのマトリックスとなる樹脂成分中に含まれるフィラー成分の添加量には特に制限はないが、例えば、無機粉体の場合、ポリイミド100質量部に対して、5〜60質量部の範囲であることが望ましく、有機粉体の場合には、1〜50質量部の範囲であることが望ましい。添加量が少なすぎると、フィラー成分添加の目的である抵抗値や熱伝導性を制御する目的を十分に達成できない。一方、添加量が多すぎると樹脂の靭性を低下せしめるためいずれも好ましくない。
所望によりフィラー成分を含有させる場合、本発明にかかる可溶性ポリイミドまたはポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液中に、フィラー成分、例えば、無機粉体を可溶性ポリイミド等の樹脂の乾燥時(固形分として)100質量部に対して合計5〜60質量部含有せしめる。含有させる方法としては、有機溶媒中に無機粉体を混合し、その後、この有機溶媒中でポリアミック酸の前駆体であるモノマーを重合反応させる方法、重合反応の途中段階もしくは反応終了後に、その溶液中に無機粉体をそのまま、あるいは、予め調製した無機粉体分散液を混合させる方法が挙げられる。
無機粉体を溶液中に分散させ、均一分散を目的として分散媒中に形成された凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
次に、所望によりフィラー成分を含んでいてもよい可溶性ポリイミド等の溶液を、管状基材、具体的には、例えば、円筒形金型の内面もしくは外面に塗布する。管状基材としては、特に金型には限定されず、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型を好適に用いることができる。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
さらに、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にすることもできる。なお、円筒金型などの管状基材上への前記溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
本発明のポリイミド製無端ベルトの厚さは、ベルトの用途を考慮すると、熱伝導度や抵抗値等が好適な範囲を維持し、且つ、十分な強度や靭性を確保するといった観点からは、10〜1000μmが好ましく、30〜150μmであることがさらに望ましい。従って、前記塗布工程においては、この厚みを考慮して塗布量を決定すればよい。
〔ベルト成形工程〕
本発明の製造方法においては、前記可溶性ポリイミド溶液等を管状基材に塗布した後、真空乾燥、加熱乾燥のいずれかあるいはこれらの複数を組み合わせて乾燥を行い、その後、焼成することにより可溶性ポリイミド等溶液に含まれるアミック酸基の閉環反応、イミド化反応を完了させてポリイミド管状成形体を形成する工程を実施する。
具体的には、本発明にかかる可溶性ポリイミド等の溶液を塗布した円筒金型(管状基材)を、加熱もしくは真空環境に置くことで乾燥し、その後、焼成することでイミド化反応を進行させる。その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド製無端ベルトを得ることができる。
真空乾燥は0.1〜100mmHg程度の減圧条件下、50〜200℃にて、10分から3時間程度行われることが好ましく、加熱乾燥の場合には、温度条件100℃から250℃の範囲で、10分から3時間程度行われることが好ましい。加熱手段としては、公知の手段を用いればよく、例えば、ホットプレート上での加熱、加熱オーブンでの乾燥などを用いることができる。
乾燥工程を実施した後、イミド化を一層進行させ、反応を完了させる目的で、焼成工程が実施される。焼成工程は、150℃以上の温度条件で、10分間〜3時間程度行われることが好ましい。
イミド化反応後に得られる管状のポリイミド成形体は、そのまま、あるいは、使用態様に応じて所望の幅に切断してポリイミド製無端ベルトとすることができる。
なお、ポリイミド製無端ベルトにおいては、最大厚みと最小厚みの差が大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド製無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド製無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。本発明の製造方法によれば、このような厚みの均一な無端ベルトを容易に得ることができる。なお、ここで「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm2以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
本発明のポリイミド製無端ベルトは、一般に行われている高温加熱による脱水イミド化反応を行うことなく得られるため、製造時に高エネルギー付与を必要とせず、また、200℃〜350℃といった高温加熱に起因するボイドの発生が効果的に抑制されるため、ベルト表面に平滑性や厚みの均一性に優れ、電子写真装置の中間転写用や定着用無端ベルトとして好適に使用しうる。
なお、このような特性は、原料である前記特定テトラカルボン酸二無水物に負うところが大きいが、このような一般的なテトラカルボン酸二無水物に代えて、このような原料を用いていることは、例えば、ベルト中の樹脂成分を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、樹脂成分中の原料モノマーの分子構造、含有量を確認することで容易に検知できるものである。
以上、本発明にかかるポリイミド製無端ベルト及びその製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
〔合成例1:ポリイミド(1−1)の合成〕
1−1.ポリアミック酸(1−0)の合成
攪拌翼がついた5000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を1600g入れ、60℃に加熱した。ジアミン化合物として4、4’−ジアミノジフェニルエーテル160.03gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、特定テトラカルボン酸二無水物として、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物239.97gを徐々に加えて溶解させた。テトラカルボン酸二無水物溶解した後、ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が10Pa・sとなったところでNMP2000gを加えて10%まで希釈した後室温まで冷却し、ポリアミック酸(1−0)溶液を得た。
1−2.ポリイミド(1−1)の合成
前記のようにして得られたポリアミック酸(1−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量し、ピリジン31.60gと無水酢酸40.35gとを添加した。120℃にて3時間脱水閉環反応を行った。触媒ならびに脱水剤を留去した後、溶液濃度を10%に調整してポリイミド(1−1)溶液を得た。
ポリイミド(1−1)の一部をメチルアルコールに注いで生成ポリマーを沈澱させた。メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、d6−DMSO(N,N−ジメチルスルホキシド)に溶解させてNMRにてアミック酸に起因するカルボン酸プロトンの定量し、イミド化率を算出したところ、100%であった。
〔合成例2:ポリイミド−ポリアミック酸(1−2)の合成〕
前記合成例1におけるのと同様にして得られたポリアミック酸(1−0)500gを用い、添加する化合物をピリジン23.70gと無水酢酸30.25gとに変更した以外は、合成例1と同様にして、ポリイミド−ポリアミック酸(1−2)を得た。合成例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、77%であった。
〔合成例3:ポリイミド−ポリアミック酸(1−3)の合成〕
前記ポリアミック酸(1−0)500gを用いて、ピリジン18.96gと無水酢酸24.21gとを添加した以外は、合成例1と同様にして、ポリイミド−ポリアミック酸(1−3)を得た。合成例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、51%であった。
〔合成例4:ポリイミド(1−4)の合成〕
合成例1で用いたポリアミック酸(1−0)溶液500gに、ピリジン31.60と無水酢酸40.35gを添加して、120℃にて3時間脱水閉環反応を行った。反応液を大過剰のメタノールに添加し再沈殿を行って、触媒ならびに脱水剤を除去した。析出した白色ポリマーをろ別して乾燥後、NMPに再溶解させて溶液濃度を10%に調整してポリイミド(1−4)溶液を得た。合成例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、100%であった。
〔合成例5:ポリイミド(1−5)の合成〕
前記合成例1におけるのと同様にして得られたポリアミック酸(1−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量した後、200℃にて還流し、3時間脱水閉環反応を行った。室温まで冷却してポリイミド(1−5)溶液を得た。記合成例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、100%であった。
〔合成例6:ポリイミド(2−1)の合成〕
6−1.ポリアミック酸(2−0)の合成
攪拌翼がついた5000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を1600g入れ、60℃に加熱した。ジアミン化合物として4、4’−ジアミノジフェニルエーテル160.52gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、特定テトラカルボン酸二無水物として、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物180.52gならびに併用される一般的なテトラカルボン酸二無水物である3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.96gを徐々に加えて溶解させた。テトラカルボン酸二無水物溶解した後、ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が10Pa・sとなったところでNMP2000gを加えて10%まで希釈した後室温まで冷却し、ポリアミック酸(2−0)溶液を得た。
6−2.ポリイミド(2−1)の合成
前記のようにして得たポリアミック酸(2−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量、ピリジン31.70gと無水酢酸40.50gとを添加した。120℃にて3時間脱水閉環反応を行った。触媒ならびに脱水剤を留去して溶液濃度を10%に調整してポリイミド(2−1)溶液を得た。実施例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、100%であった。
〔合成例7:ポリイミド(3−1)の合成〕
7−1.ポリアミック酸(3−0)の合成
攪拌翼がついた5000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を1600g入れ、60℃に加熱した。ジアミン化合物として4、4’−ジアミノジフェニルエーテル143.41gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、特定テトラカルボン酸二無水物として、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物256.59gを徐々に加えて溶解させた。テトラカルボン酸二無水物溶解した後ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が10Pa・sとなったところでNMP2000gを加えて10%まで希釈した後室温まで冷却し、ポリアミック酸(3−0)溶液を得た。
7−2.ポリイミド(3−1)の合成
前記のようにして得たポリアミック酸(3−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量、ピリジン28.48gと無水酢酸36.36gを添加した。120℃にて3時間脱水閉環反応を行った。触媒ならびに脱水剤を留去して溶液濃度を10%に調整してポリイミド(3−1)溶液を得た。実施例1と同様にしてイミド化率を算出したところ、100%であった。
これらの合成例を下記表1にまとめて記載する。なお、下記表1中の化合物の略称は以下に示すとおりである。
Figure 2005215028
(ポリイミド並びにその前駆体)
PAA:ポリアミック酸
PI:ポリイミド
PI−PAA:ポリイミドポリアミック酸共重合体
(テトラカルボン酸二無水物類)
TDA:4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物
DSDA:3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
(溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
〔実施例1〕
(ベルトの製造)
NMP200gにカーボンブラック3030B(三菱化学株式会社製)を4g添加してよく攪拌し、超音波分散機により処理して、1μm以下の粒子径を有するカーボンブラック分散液を調製した。この分散液に先の合成例1で得たポリイミド(1−1)溶液20.00gを溶解させた。
このようにして得られたカーボンブラックを分散させたポリイミド溶液を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥させた。次に、金型をオーブンに入れ、250℃、約30分焼成を行った。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド製無端ベルト(1−1)を得た。
得られた実施例1のポリイミド製無端ベルトの各種特性について以下の測定を行った。評価結果を下記表2、表3に示す。
〔無端ベルトの評価1〕
(1.イミド化率)
得られたポリイミド製無端ベルトから試験片を切り出しFT−IR(パーキンエルマーフーリエ変換赤外線吸収スペクトル分光器)により測定を行った。400℃焼成品をイミド化率100%として、1776cm-1のカルボニル基の伸縮ピークと1012cm-1の芳香環の振動ピークとの比により求めた。
(2.ベルト厚み測定)
得られたポリイミド製無端ベルトから試験片をランダムに10箇所切りだし、フィルム厚み計を用いて行った。
(3.体積抵抗値)
得られたポリイミド製無端ベルトから10cm×10cmの試験片を切りだし、アドバンテック社製の超高抵抗測定装置でその体積抵抗値を測定した。
その結果、このポリイミド製無端ベルトのイミド化率はおよそ100%で、厚みは70±2μmであり、体積抵抗値は、1×108Ω・cmであった。
(4.引張り強度、伸び、弾性率)
得られたポリイミド製無端ベルトから打ち抜き機を使用して幅5mmのダンベル型試験片を作製した。アイコーエンジニアリング社製引っ張り試験機1605Nを用いて、引張り強度(速度100mm/分)、弾性率および破断時の伸びを測定した。
(5.電子写真機搭載試験)
得られたポリイミド製無端ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置DocuCentreColor400CPに組み込み、初期複写画質の評価を行った。複写画質の評価項目として、印字ズレの有無、印字濃度ムラの有無、ゴーストの有無等を評価した。また、50000枚通紙テスト後の画質を同様に評価した。通紙試験の前後でのベルト長を測定し、実機使用でのベルト耐久性を評価比較した。
〔実施例2〜実施例7〕
実施例1で用いたポリイミド(1−1)に代えて、合成例2で得られたポリイミド−ポリアミック酸(1−2)、合成例3で得られたポリイミド−ポリアミック酸(1−3)、合成例4で得られたポリイミド(1−4)、合成例5で得られたポリイミド(1−5)、合成例6で得られたポリイミド(2−1)、合成例7で得られたポリイミド−ポリアミック酸(3−1)溶液を用いた他は、実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを製造し、それぞれ実施例2、3、4、5、6及び7とした。得られた各ポリイミド無端ベルトの特性を実施例1と同様に評価した結果を表2、表3に示す。
Figure 2005215028
Figure 2005215028
前記表2及び表3の結果より、本発明に係る実施例1〜7のポリイミド製無端ベルトはいずれもイミド化反応が十分に進行しており、高い膜強度を得ていることがわかる。また、イミド化反応進行に見られるフィルムの膜厚ムラも抑えられ均一な膜厚のベルトであった。さらに、体積固有抵抗も1×106〜1×1012Ωcmの範囲で安定化し、中間転写ベルトとして好適な特性を備えていることが確認された。
また、電子写真装置に搭載しての実機評価においても、ベルトに伸びが起こらず、印字品質にも問題がなかった。
〔比較合成例1:ポリイミド(4−1)の合成〕
1.ポリアミック酸(4−0)の合成
攪拌翼がついた5000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を1600g入れ、60℃に加熱した。ジアミン化合物として4、4’−ジアミノジフェニルエーテル161.99gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、一般的なテトラカルボン酸二無水物である、3,3‘,4,4’−ビフェニルカルボン酸二無水物238.01gを徐々に加えて溶解させた。テトラカルボン酸二無水物溶解した後ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が10Pa・sとなったところでNMP2000gを加えて10%まで希釈した後室温まで冷却し、ポリアミック酸(4−0)溶液を得た。
2.ポリイミド(4−1)の合成
前記のようにして得られたポリアミック酸(4−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量し、ピリジン32.04gと無水酢酸40.91gを添加した。120℃にて脱水閉環反応を行った。イミド化反応の進行に伴い淡黄色のポリイミドが析出してしまい、可溶性ポリイミドを得ることはできなかった。
〔比較合成例2:ポリイミド(1−6)の合成〕
合成例1と同様にして得たポリアミック酸(1−0)溶液500gをフラスコ容器に秤量、2級アミン化合物としてピロリジン28.80gと、カルボン酸化合物として酢酸24.06gを添加した。120℃にて加熱還流を行った。得られたポリマーについてイミド化率の測定行ったところ、イミド化率は5%でほとんど反応が進行しなかった。
〔比較合成例3:ポリイミド(5−1)の合成〕
1.ポリアミック酸(5−0)の合成
溶媒をTHFとした以外は、合成例1と同様にして反応を行い、ポリアミック酸(5−0)溶液を得た。
2.ポリイミド(5−1)の合成
前記のようにして得たポリアミック酸(5−0)を使用した以外は、合成例1と同様に反応を行った。イミド化反応の進行に伴い淡黄色のポリイミドが析出してしまい、可溶性ポリイミドを得ることはできなかった。
なお、これらの比較合成例を前記表1に併記する。なお、前記表1中、「比較合成例1」〜「比較合成例3」をそれぞれ「比較 1」〜「比較 3」の如く略記した。
〔比較例1〜3〕
比較合成例1、2、3で得られたポリアミック酸(1−0)、ポリアミック酸(2−0)、ポリアミック酸(3−0)を用いて、実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを製造し、それぞれ比較例1〜3とした。
比較例1〜3の無端ベルトを実施例1と同様に評価した。評価結果を前記表2及び表3に併記した。
表2〜表3に明らかなように、比較例においては、通常の合成プロセスを用いたポリイミドを使用しているが、いずれの条件で得られたポリイミド製無端ベルトも、イミド化反応時のボイドの発生などに起因して、その厚みには大きなばらつきが見られた。また、本検討条件下ではイミド化を完遂させることができず、フィルム強度が十分ではなくベルトとしての使用する上で問題があった。また、体積固有抵抗もイミド化反応進行が不十分であると低いため、イミド化反応が進行しにくいと、焼成工程により最終的にベルト品質にばらつきがある問題点もあった。
さらに電子写真装置に組み込んで通紙試験を行ったベルトは伸びが生じており、ベルトテンション不良による装置トラブルが発生した。印字位置にずれが生じており、印字品質が低下する傾向を見せた。
(比較例4〜6)
合成例1で得られたポリアミック酸(1−0)を原料として用いて、焼成温度を300℃、焼成時間を30分(比較例4)、1時間(比較例5)、2時間(比較例6)とした以外は実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを製造した。
比較例4〜6のいずれの条件で得られたポリイミド製無端ベルトも、高温度加熱によるボイド発生などの影響をうけ、その厚みには大きなばらつきが見られた。
また、比較例4、5の検討条件下では焼成温度が高いにも関わらず、また、比較例5においてはさらに焼成時間も長いのに関わらずイミド化を完遂させることができず、実施例1〜5に比較してフィルム強度が十分ではなくベルトとしての使用する上で問題があった。一方、比較例6においては、実施例1〜5で得られたものと同等なイミド化が達成されているものの、ボイド発生による膜厚のばらつきが大きく、さらに実施例1〜5に比較して、焼成温度が高く、焼成時間も長いため、製造時のエネルギー消費の点で問題があった。
〔実施例8〕
NMP200gに昭和電工製カーボンナノチューブ(直径約20nm、長さ約2μm)を4g入れよく攪拌した。さらに、超音波分散機により処理して、1μm以下の粒子径とした。この分散液に先の合成例1で得たポリイミド(1−1)溶液200.00gを溶解させた。
このようにして得られたカーボンナノチューブを分散させたポリイミド溶液を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥させた。次に、金型をオーブンに入れ、250℃、約30分焼成を行った。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド製無端ベルト(1−1)を得た。
得られたポリイミド製無端ベルトについて、以下の評価を行った。実施例8について特に実施した下記耐摩耗性試験以外の評価結果を前記表2及び表3に併記する。
〔無端ベルト評価2〕
(1.ベルト状態)
得られたポリイミド製無端ベルトの表面を、ボイドの有無、膜収縮の有無について目視にて観察した。
その結果、ポリイミド製無端ベルト表面は、ボイドもなく均一であった。
(2.耐磨耗性試験)
耐磨耗性試験は、下記の方法によって求めた。
作製したベルトを100mm角程度に切り、その小片を瞬間接着剤で硝子版に固定した。この試料をスクラッチテスタCSR−101(株式会社レスカ製)回転式試料台上にセットした。10φプローブにナイロン布を設置し、試料表面を2kg荷重、200rpmで回転しながらこすった。2000回転後の磨耗量を、触針式膜厚計アルファステップ500KLAテンコールにて未試験部分との膜厚さにより評価した。
その結果、試験後の膜厚は5μm減じていたものの使用には問題ないレベルであり、耐摩耗性に優れることがわかる。
(3.ベルト厚み測定)
実施例1と同様な測定をおこなった。
その結果、厚みは70±2μmであった。
(4.体積抵抗値)
実施例1と同様な測定を行った。
その結果、このポリイミド製無端ベルトの体積抵抗値は、1×108Ω・cmであった。
(5.引張り強度、伸び、弾性率)
実施例1と同様な測定を行った。
その結果、引張り強度24kg/mm2、弾性率300kg/mm2および破断時の伸び20%であった。
(5.電子写真機搭載試験)
実施例1と同様な評価を行った。
その結果、通紙前後とも良好であった。
これら実施例と比較例との対比において、本発明にかかる特定構造を有するポリイミドは、イミド化分率が高くとも、NMP等の溶剤に対して良好な溶解性・安定性をもつことが確認された。本発明にかかる可溶性ポリイミド溶液を使用することにより、従来のポリアミックワニスのように高温でイミド化反応を行う必要がなく、低い温度で溶剤を乾燥させるだけで、ポリイミドフィルムを製造することができる。その結果、本発明に係るポリイミド製無端ベルトは、従来の製法で得られるポリイミド製無端ベルトと比較して焼成時に低エネルギーで製造することが可能であり、熱イミド化時に見られるボイドの発生等の欠陥が少なく、イミド化反応の面内ばらつきに起因するフィルムの不均一性を防止することができる。さらに、従来の製造方法が、加熱によりベルト個々に対して製造時にイミド化処理を行うのに対して、本発明の製造方法によれば、ポリイミドワニス状態でイミド化反応を一括して行うため、製造工程全体での消費エネルギー低減に大きく貢献できる。
また、実施例8の結果より、フィラーとしてカーボンナノチューブを用いた場合、均一で、ボイドの発生が抑制され、良好な導電性を示すとともに、さらに、機械的強度、特に、破断強度、耐摩耗性にも優れた無端ベルトが得られることがわかった。
本発明にかかるポリイミド製無端ベルトは低エネルギーで処理されていても、高いイミド分率となるため、高エネルギーの付与を必要とせず、十分なベルト強度、高耐久性を得ることが可能である。
従って、本発明によれば、ポリイミド成型加工時に使用された熱エネルギーの排出に伴う環境負荷低減効果をも得ることもできる。

Claims (17)

  1. 可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布した後、イミド化を行って得られるポリイミド管状成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド製無端ベルト。
  2. 前記ポリイミド−ポリアミック酸共重合体中に存在するイミド基とアミック酸基との総量に占めるイミド基のモル分率(イミド化率)が50〜99%であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド製無端ベルト。
  3. 前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体における全テトラカルボン酸二無水物由来の構造中、下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物由来の構造を50モル%以上含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のポリイミド製無端ベルト。
    (A)4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
    (B)5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
    (C)2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
    (D)1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
    (E)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
    (F)3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
    (G)3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、
    (H)3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物。
  4. 前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体が、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合反応により得られるポリアミック酸を、加熱するか、または、脱水剤を作用させて合成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  5. 前記脱水剤が1価カルボン酸酸無水物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  6. 前記脱水剤とともに3級アミン触媒を作用させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  7. 前記可溶性ポリイミド溶液、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液の溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、からなる群より選ばれる1種類または2種類以上を全溶媒中に50質量%以上含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  8. 前記ポリイミド管状成形体が、ポリイミド100質量部に対し、無機粉体または有機粉体からなるフィラー成分を5〜60質量部含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  9. 前記ポリイミド管状成形体が、カーボンナノチューブを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  10. 電子写真装置の中間転写用及び/又は定着用に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルト。
  11. 可溶性ポリイミド溶液又はポリイミド−ポリアミック酸共重合体溶液を管状基材に塗布する工程と、乾燥・焼成によりイミド化を行ってポリイミド管状成形体を形成する工程とを含むことを特徴とするポリイミド製無端ベルトの製造方法。
  12. 前記可溶性ポリイミドまたはポリイミド−ポリアミック酸共重合体が、前駆体であるポリアミック酸に脱水剤を溶液中で作用させた後、脱水剤を除去して得られることを特徴とする、請求項11に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
  13. 前記脱水剤の除去が、加熱・減圧による留去、又は、貧溶剤を用いた再沈殿法により行われることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
  14. 前記ポリイミド−ポリアミック酸共重合体中に存在するイミド基とアミック酸基との総量に占めるイミド基のモル分率(イミド化率)が50〜99%であることを特徴とする、請求項11に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
  15. 前記可溶性ポリイミド、又は、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体における全テトラカルボン酸二無水物由来の構造中、下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物由来の構造を50モル%以上含むことを特徴とする、請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
    (A)4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
    (B)5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、
    (C)2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、
    (D)1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
    (E)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
    (F)3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
    (G)3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、
    (H)3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物。
  16. 前記ポリイミド管状成形体が、ポリイミド100質量部に対し、無機粉体または有機粉体からなるフィラー成分を5〜60質量部含有することを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
  17. 前記ポリイミド管状成形体が、カーボンナノチューブを含有することを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載のポリイミド製無端ベルトの製造方法。
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