JP2005205526A

JP2005205526A - 深穴用穴明け工具

Info

Publication number: JP2005205526A
Application number: JP2004013852A
Authority: JP
Inventors: Seiji Ohashi; 誠司大橋
Original assignee: Nachi Fujikoshi Corp
Current assignee: Nachi Fujikoshi Corp
Priority date: 2004-01-22
Filing date: 2004-01-22
Publication date: 2005-08-04

Abstract

【課題】クロスシンニングにより形成された内側切れ刃のすくい角βはドリル中心軸に対し通常０°付近であるため、大きな正のすくい角γを有している外周側切れ刃４に対し、やはり切れ味は良いとはいえない。切削抵抗軽減のためには内側切れ刃の改良を提供。
【解決手段】クロスシンニング３の施されたツイストドリル１において、工具軸心７方向で切れ刃正面からみて、外周側の切れ刃４前縁又は外周側の切れ刃４１、４２両端９、１０を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心７を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２５°である穴明け工具。
【選択図】図１

Description

本発明は、深穴用ドリルの寿命向上による穴加工コスト低減に資する穴明け工具に関する。

従来、ツイスト溝を有する穴明け工具による鋼材の深穴加工において、切りくず排出円滑化のため溝面積を浅穴加工用に比し、拡大する事が必要であり設計的には溝幅比を大きくする。ただしこれは工具剛性の低下を招くので、通常は同時に心厚Ｗを増大して剛性を向上させる。しかし、心厚Ｗの増大は中心部にあり切れ味のごく悪いチゼル２の長さが大きくなるので、軸方向の荷重であるスラストが大きくなり、切れ刃の負担増大による摩耗増大および座屈によるドリル曲がりを招いた。

切れ味のごく悪いチゼルを小さくするため、各種のシンニング法が提案されている。なかでもクロスシンニング又はＸ形シンニングは広く使用されており、それに関する特許文献も多い。例えば特許文献１ではチゼルの幅を０．１〜０．２５ｍｍに規制し、特許文献２ではチゼル長さをドリル直径の０．０２〜０．０５倍に規制しており、特許文献３ではドリル先端部に形成された２次切れ刃のドリル中心側すくい角βを−５０〜−２度にするものであり、特許文献４では中心部を巴形にえぐる形状であり、特許文献５ではシンニング刃と切刃との交叉部に曲線を設け、その曲率半径をドリル直径の０．０５〜０．１５倍としたものである。
特開２００３−３９２２０号特開平５−２５３７１９号公報特開平１０−３１５０２１号公報特許第３１６２３０９号特許第２６７４１２３号

本発明の課題は、ツイストドリルにおいて、これらとは別の部位を変更してクロスシンニングを改良しようとするものである。クロスシンニングを施すことによりシンニングなしの場合に比し切削スラストは大幅に減少するが、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃のすくい角βはドリル中心軸に対し通常０°付近であるため、大きな正のすくい角γを有している外周側切れ刃４に対し、やはり切れ味は良いとはいえない。切削抵抗軽減のためには内側切れ刃の改良が必要である。

このため本発明は、クロスシンニングの施されたツイストドリルにおいて、工具軸心方向で切れ刃正面からみて外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２５°であることを特徴とする穴明け工具によって上記した課題を解決した。

本発明は剛性向上のため心厚Ｗを大きく取らざるを得ない深穴用ツイストドリルにおいて、クロスシンニングによりドリル中心側に形成される内側切れ刃が外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線とのなす角度αは、ドリル先端正面からみて、従来品がほぼ１３０〜１４０°であったのを、本発明品では１１５〜１２５°の範囲に刃先を形成するものである。これにより、ドリル中心軸に対しすくい角βが通常０°付近であるため切れ味が悪い内側切れ刃の長さが短縮され、切削抵抗が減少した穴明け工具を提供するものとなった。

内側切れ刃と、外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線とがなす角度αが１１５°未満であるときは、被削材が合金鋼や炭素鋼の場合切り屑流出方向がドリル外周側に偏寄し却って排出性が悪化し、角度αが１２５°を越えると、切れ味が悪い内側切れ刃の長さの短縮が不十分となり、本発明の効果が不十分となるので、角度αを１１５〜１２５°に限定した。

好ましくは、前記切れ刃正面からみて外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２０°であることがより本発明の効果を発揮する。さらに好ましくは、深穴用ツイストドリルにおいては溝部心厚が極めて重要であり、前記穴明け工具の直径をＤとしたとき、溝部心厚が０．３５〜０．４５Ｄを有することが好ましい。溝部心厚が０．３５Ｄ未満では剛性が不足し、０．４５Ｄを越えると溝が浅くなり、切り屑の排出性が悪化するからである。
また、前記穴明け工具の軸心に対し、ツイスト溝のねじれ角が３３〜４２°を有することが好ましい。ねじれ角が３３°未満では切り屑の排出性が悪化し、４２°を越えると剛性が不足するからである。

本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。図１は本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリルを工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図を示し、本発明の穴明け工具は、クロスシンニング３の施されたツイストドリル１において、工具軸心７方向で切れ刃正面からみて、外周側の切れ刃４前縁に平行し、かつ工具軸心７を通る直線に対し、クロスシンニング３により形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２５°であることを特徴とする穴明け工具である。２はチゼル、６は外周側の切れ刃４の逃げ面、８は溝、９は外周側の切れ刃４の外方端面、１０は外周側の切れ刃４の内方端面である。

図２は、図１のドリル１を溝側面からみた側面図である。ドリル軸心７に対しすくい角βは図２に示すように、通常０°付近であるため、内側切れ刃５の切れ味が悪い。本発明では、外周側の切れ刃４前縁に平行し、かつ工具軸心７を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αを１１５〜１２５°とすることにより、内側切れ刃５長さが短縮され、切削抵抗が減少した穴明け工具を提供するものとなった。図３は図１のドリル１の外周側の切れ刃前縁にそう方向でドリル側面からみた外周側の切れ刃５前縁拡大側面図を示す。図３に示すように、図１のドリル１の外周側の切れ刃４前縁は、工具軸心７に対し大きいすくい角γを有する。

図４は図１とは異なる本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリル１１を工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図を示す。図４に示すように、工具軸心方向で切れ刃正面からみて外周側の切れ刃４１両端９、１０を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心７を通る直線に対し、クロスシンニング３により形成された内周側の切れ刃５前縁とのなす角度αが１１５〜１２５°にされている。図５は図１、図４とはさらに異なる本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリル１２を工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図を示す。図５に示すように、工具軸心方向で切れ刃正面からみて外周側の切れ刃４２両端９、１０を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心７を通る直線に対し、クロスシンニング３により形成された内周側の切れ刃５前縁とのなす角度αが１１５〜１２５°にされている。図４の外周側の切れ刃４１は中央が後退する曲線状をなし、図５の外周側の切れ刃４２は中央が突出する曲線状をなすが、いずれも図１の直線状の外周側の切れ刃４前縁と同じ本発明の効果を奏する。

図１に示す本発明のＴｉＡｌＮ系コーティングを施したハイスロングドリルで深穴加工実験を行った。ドリル寸法は直径６．０ｍｍ、全長２１３ｍｍ、溝長１２０ｍｍ、ねじれ角４０°、心厚Ｗは直径の４５％である。このドリルを用いてクロスシンニングの内側切れ刃５と外周側切れ刃４の成す角度αを本発明品は１２０°に、比較の従来品の角度αは１３５°に、それぞれ先研ぎして実験した。加工条件は次のようである。
ドリル直径：６．０ｍｍ
被削材：Ｓ５０Ｃ
穴深さ：１００ｍｍ
切削速度：１５ｍ／ｍｉｎ
送り速度：１２０ｍｍ／ｍｉｎ
切削油剤：水溶性

切削試験により得られたスラスト切削抵抗測定値を表１に、切削試験のドリル摩耗幅測定値を表２に示す。角度αはクロスシンニングの内側切れ刃と外周側切れ刃の成すクロスシンニングにより成す角度である。切削試験の平均スラスト切削抵抗は従来品に対し、本発明品は約３０％の減少があった。なお平均トルクはほぼ同等であった。切削試験のドリル摩耗幅測定値は穴明け数７８穴で本発明品は約１／３以下に激減した。従来品は７８穴加工の時点で寿命と判定されたが、本発明品はさらに継続使用が可能であった。

切削試験のスラスト切削抵抗測定値

切削試験のドリル摩耗幅測定値

〔本発明の最良の実施形態の効果〕

上記の本発明の最良の実施形態の穴明け工具は、剛性向上のため心厚Ｗを大きく取らざるを得ない深穴用ツイストドリルにおいて、クロスシンニングによりドリル中心側に形成される内側切れ刃が外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線とのなす角度αは、ドリル先端正面からみて、従来品がほぼ１３０〜１４０°であったのを、本発明品では１１５〜１２５°の範囲に刃先を形成するものである。これにより、ドリル中心軸に対しすくい角βが通常０°付近であため切れ味が悪い内側切れ刃の長さが短縮され、切削スラストが低下し、切れ刃の負荷が軽減したことによりコーナ・逃げ面摩耗が減少した。またスラスト低下により座屈によるドリル曲がりが低減したことにより、穴内で穴壁との擦過が減少したことによりマージン摩耗は大幅に低下し、穴曲がり量も減少した。

好ましくは、前記切れ刃正面からみて外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２０°であることがより本発明の効果を発揮する。さらに好ましくは、深穴用ツイストドリルにおいては溝部心厚が極めて重要であり、前記穴明け工具の直径をＤとしたとき、溝部心厚が０．３５〜０．４５Ｄを有することが好ましい。溝部心厚が０．３５Ｄ未満では剛性が不足し、０．４５Ｄを越えると溝が浅くなり、切り屑の排出性が悪化するからである。
また、前記穴明け工具軸心に対し、ツイスト溝のねじれ角が３３〜４２°を有することが好ましい。ねじれ角が３３°未満では切り屑の排出性が悪化し、４２°を越えると剛性が不足するからである。

本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリルを工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図。図１のドリルを溝側面からみた側面図。図１のドリルの外周側の切れ刃前縁にそう方向でドリル側面からみた外周側の切れ刃前縁拡大側面図。図１とは異なる本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリルを工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図。図１、図４とはさらに異なる本発明の最良の実施形態のクロスシンニングの施されたツイストドリルを工具軸心方向で切れ刃正面からみた正面図。

符号の説明

１：ドリル溝
２：チゼル
３：クロスシンニング
４、４１、４２：外周側切れ刃
５：内側切れ刃
６：ドリル逃げ面
７：軸中心線
Ｗ：心厚
α：内側切れ刃と外周側切れ刃のなす角度
β：内側切れ刃のすくい角
γ：外周側切れ刃のすくい角

Claims

クロスシンニングの施されたツイストドリルにおいて、工具軸心方向で切れ刃正面からみて外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２５°であることを特徴とする穴明け工具。
前記切れ刃正面からみて外周側の切れ刃前縁又は外周側の切れ刃両端を結ぶ線に平行し、かつ工具軸心を通る直線に対し、クロスシンニングにより形成された内側切れ刃前縁のなす角度αが１１５〜１２０°であることを特徴とする請求項１記載の穴明け工具。
前記穴明け工具の直径をＤとしたとき、溝部心厚が０．３５〜０．４５Ｄを有することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の穴明け工具。
前記穴明け工具軸心に対し、ツイスト溝のねじれ角が３３〜４２°を有することを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか１に記載の穴明け工具。
前記穴明け工具の切れ刃が高速度工具鋼ないし超硬合金であることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれか１に記載の穴明け工具。
前記穴明け工具の切れ刃が、チタン化合物等の硬質被膜がコーテイングされたことを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれか１に記載の穴明け工具。