本発明の実施形態について図1から図40に基づいて説明すると以下の通りである。
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る映像表示装置について、図1から図14を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る映像表示装置の、画素の発光波形を説明する図である。なお、図1では、表示する映像信号の垂直周期Tの1周期分の発光波形を示している。
また、図1の(a)部分、および図1の(b)部分は、同一の波形を示しているが、発光波形の分割方法が異なる。つまり、図1の(a)部分は、瞬時発光強度が大きい部分と、それ以外の部分で波形を分割している。
そして、図1の(a)部分において、網点で示す部分が第1の発光成分である。この第1の発光成分は、垂直周期Tに対する発光時間のデューティー比がD%、瞬時発光強度がA[nit]、画素の発光強度に対する発光強度比がS%、垂直周期が開始してから発光波形の中心までの時間の、垂直周期に対する割合がP%である。
ここで、ある時間における画素発光を、ピーク発光値、発光のピーク値、瞬時発光輝度、瞬時発光強度、瞬時発光ピーク、もしくは単に輝度と呼ぶ。厳密には、一般的に輝度といわれるものは瞬時発光輝度であり、単位は[nit](ニット)、あるいは、[cd/m2](カンデラパースクエアメーター)である。
人間の目が感じるのは、瞬時発光輝度を目が積分化、平滑化したものであり、これを平均輝度、発光強度、平均画面輝度、画面輝度、平均強度、平均輝度レベルと呼ぶ。厳密には、瞬間発光輝度を積分化した値の単位はnitではないが、等価的にnitの単位が使用される場合が多い。例えば液晶テレビでは、白を表示した際の平均輝度をカタログスペックに使用している。図1に示すSやS1のように、瞬時発光輝度と時間比(または時間)をかけたものを、発光強度比(または発光強度)、発光成分、発光量と呼ぶ。図1において、発光波形の縦軸および横軸で囲まれる面積が発光強度に相当する。
また、図1の(b)部分において、斜線で示す部分が第2の発光成分である。この第2の発光成分は、発光時間のデューティー比がDA+DB=(100−D)%、瞬時発光強度がB[nit]、画素の発光強度に対する発光強度比が(100−S)%である。
なお、第1の発光成分および第2の発光成分の瞬時発光強度に関しては、A>Bの関係がある。また、DAは、垂直周期が開始してから(すなわち、垂直同期信号に基づく画素の選択パルス(ゲートパルス、スキャンパルス)から)第1の発光成分の点灯が開始するまでの時間の、垂直周期に対する割合である。また、DBは、第1の発光成分の点灯が終了してから垂直周期が終了するまでの時間の、垂直周期に対する割合である。
図1の(b)部分は、間欠発光成分と、それ以外の全体的に発光して輝度を底上げする持続発光成分で波形を分割している。図1の(b)部分において、縦線で示すエリアが間欠発光成分である。この間欠発光成分に関しては、周期Tに対する発光時間のデューティー比がD%、瞬時発光強度がC[nit]、垂直周期内で表示される画素の発光強度に対する発光強度比がS1%、垂直周期が開始してから発光の中心までの時間の周期に対する割合がP%である。なお、瞬時発光強度Cは、C=A−Bの関係となる。
また、図1の(b)部分においてクロスハッチで示すエリアが持続発光成分である。持続発光成分に関しては、発光時間のデューティー比が100%、瞬時発光強度がB[nit]、垂直周期内で表示される画素の発光強度に対する発光強度比が(100−S1)%である。
ここで、S1=C*D=(A−B)*Dである。また、A=S/D、B=(100−S)/(100−D)である。よって、S1=S−(100−S)/(100−D)*Dとなり、SをS1で換算することができる。つまり、第1の発光成分および第2の発光成分により形成される発光波形は、間欠発光成分および持続発光成分からなる発光波形と実質的に等しいと考えてよい。よって、以下の説明においては、図1の(b)部分を基に本発明の効果を説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係る映像表示装置100の構成を示すブロック図である。同図に示すように、映像表示装置100は、表示パネル101、映像コントローラ102、データドライバ103、スキャンドライバ104、列電極105、行電極106、ランプ駆動回路107、ランプ駆動回路108、ランプ109、ランプ110から構成されている。
また、表示パネル101上には、列(カラム)状に並ぶ列電極105と、行(ロウ)状に並ぶ行電極106が配置されている。さらに、表示パネル101は、光源からの照明光を透過して変調する透過型である。また、列電極105と行電極106の交点には、複数の画素(図示せず)がマトリクス状に形成されている。
たとえば表示パネル101は、高速に応答する液晶から構成される。ここで、液晶の応答を指数関数に近似し、
y=A0*(1−exp(−t/τ)) (ただしyは透過率、A0は任意の定数)
と見なした場合の、その時定数τ(応答開始から最終値の約63%に応答するまでの時間)は、およそ1ミリ秒程度、大きくても2ミリ秒であると仮定する。
データドライバ103は、データ信号112をもとに画素を駆動して、画素の透過率をデータ信号112によって定まる状態に設定する。スキャン信号113は、映像信号111の水平同期信号と垂直同期信号の情報を持つ。水平同期信号は、表示画面の列方向(水平方向)の表示単位である。垂直同期信号は、画面の行方向(垂直方向)の表示単位である。垂直同期信号の周波数は、たとえばNTSCビデオ信号では60Hzである。
スキャンドライバ104は、スキャン信号113の水平同期信号のタイミングをもとに、行電極106を画面の上から下に順次選択して走査する。また、スキャン信号113の垂直同期信号のタイミングをもとに、選択する行電極106を画面上部にリセットする。
表示パネル101上の、ある画素に注目した場合、その画素が選択される周期は、16.7ミリ秒である。映像コントローラ102は、映像信号111の垂直同期信号をもとに、ランプ制御信号114を生成して、ランプ駆動回路107に出力する。ランプ駆動回路107は、ランプ109を制御する。ランプ109の発光出力は、ランプ制御信号114によって制御された間欠発光光(間欠発光成分)115である。つまり、ランプ109は、図1の(b)部分で説明した間欠発光成分に相当する発光を行う。ランプ109は、たとえば単一または複数のLED(発光ダイオード)で実現することができる。間欠発光光115は、表示パネル101を照明する。
ランプ駆動回路108は、ランプ110を制御する。ランプ110の発光出力は持続発光光(持続発光成分)116であり、映像信号111とは無関係に発光する。つまり、ランプ110は、図1の(b)部分に示す持続発光成分に相当する発光を行う。なお、ランプ110は、たとえば単一または複数のCCFL(冷陰極管)のような蛍光ランプで実現することができる。または、ランプ109と同様、LEDで実現することも可能である。持続発光光116も間欠発光光115と同様に、表示パネル101を照明する。
図3は、図2の映像表示装置100の断面図である。なお、図3において、図2と同一の機能を有するものには、同一符号を付している。また、図3に示すように、導光空間201は、たとえば映像表示装置100の背面シャーシと表示パネル101と間の間隙である。さらに、導光空間201の下部に、ランプ109、ランプ110が配置されている。導光空間201の上部には、表示パネル101が配置されている。
ランプ109の出力である間欠発光光115と、ランプ110の出力である持続発光光116は、導光空間201の内部を表示パネル101に向けて伝播してゆくが、その過程で両照明光は混合され、混合照明光202となる。そして、混合照明光202は、表示パネル101を照明する。その照明光は、表示パネル101の画素によって変調されて、表示映像光203として表示パネル101から出力される。さらに、映像表示装置100を観察する観察者は、表示映像光203を表示映像として認識する。
図4は、図2および図3に示した映像表示装置100の動作を説明するためのタイミングチャートであり、各経路を伝わる信号や光の発光波形の時間変化を表している。横軸は時間であり、時間軸は映像信号111のフレーム単位で記述している。フレームとは、映像信号111の表示画面の単位であり、垂直同期によって定まる。
図4の(a)部分は、映像信号111の垂直同期信号の信号波形を示すものである。図4の(b)部分は、ランプ制御信号114の信号波形を示すものであり、ランプ制御信号114が垂直同期信号に同期してonとoffを繰り返していることがわかる。図4の(c)部分は間欠発光光115の発光波形を示すものであり、垂直同期信号と同期して間欠発光している。縦軸は瞬時発光輝度の強さを示す。
また、図4の(d)部分は、持続発光光116の発光波形を示すものであり、垂直同期信号とは無関係に常に一定である。縦軸は瞬時発光輝度である。図4の(e)部分は、混合照明光202の発光波形を示すものである。縦軸は瞬時発光輝度である。なお、混合照明光202は、図4の(c)部分の間欠発光光115と、図4の(d)部分の持続発光光116とが、導光空間201において混合されたものである。
また、図4の(f)部分は、表示パネル101におけるある画素に注目した場合の、その画素の透過率を示すものである。なお、図4の(f)部分では、2番目と4番目のフレームに白い映像が入力されており、1番目と3番目のフレームに黒の映像が入力されている状態が示されている。図4の(e)部分に示す混合照明光202と、図4の(f)部分に示す画素の透過率との積が、図4の(g)部分に示す表示映像光203、すなわち表示画像の瞬時発光輝度の時間応答波形となる。
そして、本実施形態の映像表示装置100の特徴は、ランプ109およびランプ110という複数の光源を持ち、各光源から間欠発光光115と持続発光光116を各々出力し、それらの発光光の混合光で表示パネル101を照明する点にある。なお、間欠発光光115と持続発光光116とは導光空間202にて混合される。間欠発光光115は、映像信号111の垂直同期信号に同期して、発光の繰り返し周期と位相が制御されている。
そして、本実施形態の映像表示装置100は、図4の(g)部分に示す混合照明光202で表示パネルを照明することで、動画尾引き改善とフリッカ妨害低減とを同時に実現することができる。
図5は、本実施形態の映像表示装置100の、尾引き改善とフリッカ低減の動作を定性的に説明するための図である。図5においては、物体が、1フレームあたり1画素の等速度で移動し、その移動方向が、画面の上から下の方向であると仮定している。なお、物体のサイズは、縦の長さが3画素分、横の長さが任意である。
図5の(a)部分は混合照明光202の発光波形を示すものであり、縦軸は瞬時発光輝度、横軸はフレーム単位の時間である。なお、図5の(a)部分において縦縞で示す部分が、間欠発光光115の成分である。また、図5の(a)部分においてクロスハッチで示す部分が、持続発光光116の成分である。
図5の(b)部分は、表示パネル101に表示される動物体の、ある一瞬の輪郭を示すものであり、横軸は画素単位の空間、縦軸は透過率である。
図5の(c)部分は、表示パネル101の表示画面にて、動物体が移動する様子(横軸は時間、縦軸は空間)を示すものである。本来、表示パネル101の表示画面は2次元の平面であるが、図5の(c)部分では、2つの空間座標軸のうち、片方の水平軸座標は省略している。
また、時間の経過とともに表示される動物体が移動するのだが、その移動と図5の(a)部分の発光波形による照明の関係から、表示映像光203は2種類の輝度となる。つまり、間欠発光成分が発光している期間は、表示映像光203の輝度も大きい。なお、図5の(c)部分において縦縞で示す部分が、輝度が大きくなる部分に該当する。
一方、持続発光成分のみが照明している期間では、混合照明光202の発光強度は弱いものの、画素を充分照明するだけの強度を有している。なお、図5の(c)部分においてクロスハッチで示す部分が、持続発光成分のみが照明している期間に該当する。
観察者が矢印2にそって動物体を目線で追った場合、この2種類の発光状態の積算により、観察者の網膜には、図5の(d)部分のような状態となって映る。また、図5の(e)部分は、図5の(d)部分における輝度の輪郭を示すものである。図5の(e)部分において、横軸は画素(空間)、縦軸は輝度を示している。
図5の(e)部分に示すように、観察者の認識する動物体の輝度輪郭は、3種類の傾斜、すなわち傾斜1、2、3を持つ。ここで重要なことは、図5の(e)部分に示す傾斜1と傾斜3は、なだらかであるが、傾斜2は切り立ち、急峻な勾配であるということである。
緩やかな傾斜1と3は、人の目では認識されにくい。なぜなら、一般的に動物体に対する観察者のコントラスト識別能力は、通常の静止物体のそれに対して劣るからである。よって、観察者が認識する動物体の輪郭は傾斜2であり、図41の(a)部分で示した、時間に対して一定に発光する光源で表示パネル101を照明したときの動画尾引きに対して、本実施形態の映像表示装置100により充分尾引き改善が達成できることがわかる。
図6(a)〜図6(i)は、本実施形態の効果を定量的に説明するための図であり、3種類の発光パターンの特性を示している。
ここで、図6(a)〜図6(c)は、デューティー比が25%の従来型インパルス型の発光パターンを用いた場合における、発光輝度の波形、尾引き量、およびフリッカ量の特性を示すものである。また、図6(d)〜図6(f)は、デューティー比が40%のインパルス型の発光パターンを用いた場合における、発光輝度の波形、尾引き量、およびフリッカ量の特性を示すものである。また、図6(g)〜図6(i)は、本実施形態の映像表示装置100を用いて表示パネル101を照明した場合における、発光輝度の波形、尾引き量、およびフリッカ量の特性を示すものである。なお、本実施形態の映像表示装置100による発光では、間欠発光成分のデューティー比Dを20%、間欠発光成分の発光強度比S1を80%に設定した。
また、尾引き量に関しては、その単位が空間上の長さであり、縦軸の輝度の10%から90%の変化を尾引き量として定義する。この定義は、上述の動物体のコントラストに対する人間の目の感度が低いという根拠から定めている。なお、図6(b),図6(e)、および図6(h)における矢印の範囲が、この尾引き量に該当する。
また、図6(c)、図6(f)、および図6(i)は、フリッカ量を示すものである。このフリッカ量は、図6(a)、図6(d)、および図6(g)に示す発光波形を各々フーリエ変換で周波数変換して、0次直流成分(平均値)に対する1次高調波成分の比を算出したものである。たとえば、垂直同期信号が60HzのNTSCビデオ信号の場合、1次高調波は60Hzである。0次直流成分に対する1次高調波の成分が大きいほどフリッカ妨害が大きくなる。
ここで、図6(a)〜図6(i)において、各発光パターンの発光強度は同一になるよう配慮している。つまり、図6(a)、図6(d)、および図6(g)において、輝度を時間で積分した値は同一となる。このように発光強度を同一にしているため、図6(c)、図6(f)、および図6(i)における各平均値成分(0次直流成分)のエネルギー量が各発光パターンにおいて同一となるので、そのため発光パターン毎の1次高調波成分量の比較が可能となる。
図7は、図6(a)〜図6(i)に示す各発光パターンの特性をまとめたものである。図7において、第1列の間欠発光成分のデューティー比Dは、画素の更新繰り返し時間(垂直周期)に対する間欠発光成分の発光時間比である。また、第2列の持続成分は、全体の発光強度に対する間欠発光成分の発光強度比S1である。従来の技術による発光では、間欠発光成分の発光強度比S1は100%である。また、第3列の尾引き量は、図6(b)、図6(e)、および図6(h)に示す矢印線の長さである。第4列のフリッカ量とは、平均値(第0次直流成分)に対する60Hz成分(第1次高調波)の比である。さらに、図7の第1行〜第3行は、各々図6の発光パターン1〜3に対応している。
図41の(a)部分に示したように、尾引き対策のない発光の場合、輝度の10%から90%の変化に対する尾引き量は0.8である。これに対し、図7の第1行の従来例は、デューティー比が25%であり、尾引き量が0.2まで改善される。したがって第1行の従来例では尾引き量の改善率が75%である。しかしフリッカの主原因である60Hz成分が90%の割合で発生し、著しい妨害となる。
ここで、図7の第2行の従来例に示すように、フリッカを減らすためにデューティー比を40%に増加したとする。デューティー比の増加によりフリッカ量は75%まで抑えることができるが、尾引き量が0.32まで増加し、尾引き量の改善率が60%まで低下する。
第3行の本実施形態では、本発明の特徴である間欠発光成分のデューティー比は20%であり、発光強度比が80%の状態を示している。図7から明らかなように、第1行の従来例と比較して、フリッカを90%から75%まで減衰させることが可能となり、かつ、尾引き量が0.20となっており、第1行の従来例の改善を保持している。
以上のように、本実施形態では尾引き改善度を確保しながらフリッカ妨害を大幅に低減でき、視聴者に最適な品位の映像を提供することができる。
図8は、図6の各発光パターンの特性を示す図である。図8における横軸は尾引き量を示しており、数値が小さいほうが高画質である。また、図8における縦軸はフリッカ量であり、数値が小さいほうが、フリッカが少なく高画質である。
従来の技術による発光では、デューティー比Dの変更により、尾引き量およびフリッカ量の値は図8中に示す軌跡上を移動し、白抜き矢印で示す理想の改善方向には移動しない。よって、この場合、フリッカ量と尾引き量はトレードオフの関係であり、双方を同時に改善することはできない。
これに対して、図中の丸印は本実施形態による発光の特性を示すものであり、尾引き量およびフリッカ量が、同時に改善されていることが分かる。
図9(a)〜図9(f)は、間欠発光成分デューティー比Dと間欠発光位相Pの関係について説明するための図である。なお、間欠発光位相とは、垂直周期が開始してから間欠発光成分の中心までの時間の垂直周期に対する割合である(図1の(b)部分参照)。
また、図9(a)〜図9(f)において、発光の条件は、デューティー比D=30%、発光強度比S1=90%である。また、前述のように表示パネルとして、時定数τ=1ミリ秒程度の高速応答の液晶を用いたものを想定している。さらに、尾引き量は図5と同様に、尾引きの輝度変化の10%から90%の変化を尾引き量と定義する。
さらに、図9(a)、図9(c)、および図9(e)は、各々P=30%、50%、70%の発光波形である。また、図9(b)、図9(d)、および図9(f)は、Pの値が30%、50%、および70%のそれぞれの場合における尾引きの状態である。なお、尾引きの状態は、図5で示した尾引きモデルから算出されたものである。
図9から明らかなように、P=50%の場合が、図5の(e)部分で説明した傾き1、3のバランスがよい。また、P=30、70%の場合、傾き1、3に偏りが生じるものの、尾引き量はP=50%の場合と同じであり、尾引き改善効果は同等である。
図10(a)〜図10(f)は、間欠発光成分デューティー比Dと間欠発光位相Pの関係について説明する図であり、発光の条件は図9(a)〜図9(f)と同一である。ただし、図10(a)〜図10(f)では、間欠発光位相Pが10%、50%、90%の場合を示している。
図10(b)および図10(f)に示すように、P=10%、90%の場合、尾引き改善効果が極端に劣化する。これは、図10(a)および図10(e)に示すように、発光波形が2つに分割されてしまうためである。
図11(a)〜図11(f)は、間欠発光成分デューティー比Dと間欠発光位相Pの関係について説明する図であり、発光の条件は図9(a)〜図9(f)、図10(a)〜図10(f)と同一である。ただし、図11(a)〜図11(f)は、間欠発光位相Pが15%、50%、85%の場合を示している。図11(a)〜図11(f)に示すように、この場合尾引き改善は良好である。
図9(a)〜図9(f)、図10(a)〜図10(f)、図11(a)〜図11(f)から、次のことが分かる。デューティー比Dと発光位相Pの関係は、発光パルスがフレーム内で分割されなければ良いため、PがD/2%以上であるか、もしくはPが(100−D/2)%以下であることが必要である。それ以外の場合、図10(a)および図10(e)に示したように、間欠発光成分がフレーム内で分割されてしまう。このようにフレーム内で分割されると、図5の(c)部分で示したような、物体の移動のエッジ部分を人間の目が追うことを仮定した積分において、傾きが急峻に変化してしまい、本発明の効果、すなわち尾引き量とフリッカ量との同時低減効果がなくなる。
よって、
D/2≦P≦(100―D/2) (但し、0<D<100)
の条件を満たすように、デューティー比Dと間欠発光位相Pを管理すればよい。
ここで、D=0%という場合は、間欠発光成分が0であることを意味するので、ここでは除外する。また、D=100%という場合は、従来の技術の間欠発光波形の場合であるため、ここでは除外する。
図12は、デューティー比Dと間欠発光位相Pの関係を示す図である。横軸がD、縦軸がPである。同図中の網点で示すエリア内のD、Pが、上記条件を満たす。
なお、図12において、上記エリアの下側にある境界線は、P=D/2の関係を満たす線分である。また、上記エリアの上側にある境界線は、P=(100−D/2)の関係を満たす線分である。表示パネルの応答速度や、光源の種類、実装方法などから、図12の網点で示すエリアのなかで、D、Pの値を決めればよい。
図13(a)〜図13(e)は、本実施形態の発光波形の発光位相について説明するための図である。図13(a)は、本実施形態の混合照明光202の1フレーム分の発光波形を示すものであり、横軸にフレーム単位で時間を示している。つまり、時間軸の時刻0にて画素が選択され、次の時刻1にて次回の選択がなされる。
なお、発光波形の条件は、図7の第3行における条件と同一である。つまり、間欠発光成分のデューティー比Dは20%、間欠発光成分の発光強度比S1は80%である。また、表示パネル101は、前述の通り時定数が1ミリ秒程度の高速応答液晶を用いたものとしている。さらに、間欠発光光115の発光位相は、フレーム期間の中心にあり、間欠発光位相Pが、0.5である。
図13(b)は、図13(a)の混合照明光202にて表示パネル101を照明した場合に発生する尾引き量を、図5において示した模擬的な尾引き量計算法で算出した結果を示すものである。なお、図13(b)の横軸は画素単位の空間であり、ここでは1画素分を表示している。さらに、尾引き量の定義は、図6で使用したものと同一であり、尾引きの輝度変化(傾き)の、10%から90%に変化する空間的長さを尾引き量としている。ここでは、尾引き量は0.2である。
図13(c)は、図13(a)と同様に、本実施形態にかかる発光波形であるが、間欠発光光115の発光位相が、フレームの後半にシフトしている。なお、図13(c)に示す発光波形の間欠発光位相Pは75%である。
図13(d)は、図13(c)の混合照明光202によって、表示パネル101を照明した場合の尾引き波形を示すものである。図13(d)に示す尾引き波形では、尾引き量は0.33である。このように、間欠発光位相Pの変化によって尾引き量が増大しているが、これは図13(d)に示すように、傾き1と傾き3のバランスがくずれ、傾き1の緩やかな傾斜部分がしきい値として設定した10%を越えてしまうためである。
図13(e)は、図13(a)および図13(c)の発光条件(デューティー比D=20%、発光強度比S1=20%)の場合の、間欠発光位相Pと尾引き量の関係を示す図である。
図13(e)から明らかなように、デューティー比D=20%、発光強度比S1=80%の発光条件の場合、間欠発光位相が50%であるとき、すなわち間欠発光光115の波形がフレーム繰り返しの中心であるときに、もっとも尾引きを改善することが可能となる。
たとえば、映像表示装置の画面輝度(絶対的な明るさ)の状態や視聴環境などから、図5の(e)部分で示した傾き1、3が尾引きとして観察されないしきい値の定義が、15%から85%の尾引きの輝度変化であると決定された場合を仮定する。この定義の場合、図13(d)の尾引き量と、図13(b)の尾引き量は同等になる。
なお、本実施形態において、図5に示した尾引きモデルと、図6(a)〜図6(i)で説明したフリッカ量の定義をもとに、尾引き量やフリッカ量の改善効果を定量的に述べているが、映像表示装置の画質は多分に主観的な部分を含み、また視聴環境などに左右されるものである。
よって、尾引きのしきい値や、デューティー比D、間欠発光成分の発光強度比S1、間欠発光位相Pなどのパラメータの最適値は、映像表示装置のシステムの諸条件を考慮して、前述したD/2≦P≦(100―D/2)を満たすように決定すればよい。
図14は、本実施形態の効果を主観評価によって説明するための図面である。映像表示装置の画面輝度は、白色輝度(画面に白を表示した際の画面輝度)が450nitであり、テレビジョン(TV)受像機として充分明るいレベルである。なお、nit(ニット、ニト)は輝度の単位である。評価画像は、APL(アベレージピクチャーレベル、平均画像レベル)の異なる3種類の静止画像を使用した。
画像Aは、たとえば夜景などの、全体的に暗い画像である。なお、画像AのAPLは20%であり、画面輝度100nitに相当する。また、画像BはAPLが50%の画像であり、画面輝度250nitに相当する。また、画像Cは、たとえば青空などの明るい画像であり、APLは80%(画面輝度350nit相当)である。
これら評価画像を映像表示装置に表示し、図6(a)に示す従来技術の発光波形と、図6(c)に示す本実施形態の発光波形とを切り替えて駆動し、画像フリッカを知覚できるかどうか実験した。さらに、フリッカを知覚できる場合は、邪魔に感じられるかどうか実験した。なお、主観評価の尺度は、5段階とし、尺度が大きいほど高画質になるものとした。
図14から、従来技術であるインパルス型発光に対する本実施形態のフリッカ低減効果は、観察者が許容できる水準に達していることがわかる。さらにこの効果が、3種類のAPL、つまり3種類の明るさの画像に関して同様に見られる。
先に述べたように、本発明の尾引き改善においては、動物体のコントラストに対する人間の目の感度の低さを利用している。よって、持続発光光116の照明による画面輝度の、ある瞬間の値(瞬間ピーク輝度)が人間の目に見えたとしても、それが尾引き改善性能に影響を及ぼすものではない。
むしろ瞬間ピーク輝度による画面輝度は、容易に視認できるレベルが好ましい。図6(g)において、持続発光成分は20%である。したがって、表示パネルの画面輝度が450nitであると仮定すると、そのうちの20%である90nitは持続発光光116の照明によるものといえる。この90nitという画面輝度は、人間の目には充分知覚できるレベルである。図14の主観評価結果から、この20%の持続発光成分が尾引き改善とフリッカ妨害低減に充分機能していることがわかる。
なお、本実施形態では、表示パネルの映像の操作方法がプログレッシブ走査でもインターレース走査でも適用可能である。
また、本実施形態の映像表示装置100では、光源はLEDもしくはCCFLに限定されるものではない。間欠発光、持続発光に適した光源を採用すればよい。
さらに、本実施形態では、図2の表示パネル101を透過型であると述べたが、光源からの照射光を反射することで変調する反射型にも適応できる。
さらに、本実施形態では、図2において、ランプ109とランプ110が、表示パネル101の直下に配置されると述べたが、この配置に限定されるものではない。また、図3において導光空間201にて光が混合されると述べたが、たとえば導光板を使用して、導光板にて間欠発光光115と持続発光光116が表示パネル101に導光されるその過程で両照明光が混合される構成でもよい。また、間欠発光光115と持続発光光116の成分に相当する電気信号を、電気的に加算したのちに光源を制御して発光させ、光を混合するための構成を省略してもよい。
さらに、本実施形態では、図2において、垂直同期信号が60HzのNTSCビデオ信号を例に挙げたが、本実施形態では、たとえばパソコンのRGBビデオ信号の75Hzのような映像信号に対しても適用可能である。この場合、フリッカ量は発光波形のフーリエ変換にて、直流成分に対する75Hzの高調波で規定して評価すればよい。
さらに、本実施形態では、図7の第3行において、本実施形態の映像表示装置100にて設定されるパラメータD、S1の数値例を記載したが、本発明はこの数値により限定されるものではない。
さらに、本実施形態では、持続発光光116の発光は映像信号111とは無関係に一定であると述べたが、たとえば150Hz以上の周波数で変動してもよい。観察者の目は、およそ150Hzでの繰り返し点滅に対する感度は非常に低く、およそ300Hzを超える周波数での繰り返し点滅に対する感度はほとんどない。この場合、持続発光光116は、厳密には変動する光であっても、人間の目は追従せず、あたかも一定の強度で発光する光として観察される。
さらに、本実施形態では、間欠発光光115と持続発光光116の発光強度比は、あたかも固定値であるように述べたが、たとえば、映像信号111が激しい動きなのか、わずかな動きなのか、あるいは全く動きのない静止画なのかを判断して、その情報をもとに間欠発光光115と持続発光光116の発光強度比を連動させて可変にしてもよい。
たとえば激しい動きの画像の場合は、間欠発光光115の発光強度比を増大させる、またはデューティー比を小さくするように制御する。以上述べた制御を行い、表示画像に最適な発光条件を定めてもよい。また、その発光強度比の制御はフレーム毎に行われてもよい。
以上述べたように、本実施形態では、持続発光光と間欠発光光という、特性の異なる発光を混合して、表示パネルを照明することにより、動物体の尾引きを抑えてくっきりした輪郭を表示しながら、合わせてフリッカ妨害の抑制が可能となる。なお、動画の尾引き改善には、動画像のコントラストに対する人間の目の感度の低さの応答特性を利用しており、瞬時の発光での、持続発光光116の発光強度による画面輝度は、観察者が容易に認識可能なレベルである。
また、本実施形態では、ランプ109とランプ110を用いて、各々から特性の異なる発光を得ているが、ランプ110の特性を持つ光源を用いて、表示パネルと光源との間に形成される光路間に光制御手段を配置する構成でもよい。光制御手段は、例えば強誘電液晶などの液晶からなる光学シャッタであり、印加される電圧のon/off制御によって、透過率が全透過と半透過に切り替わるものである。映像の垂直同期信号に同期しながら、例えば電圧onのときには透過率100%となって光源の照明光を透過させることで間欠発光光を生成し、電圧offのときには透過率を50%に絞ることで持続発光光を生成することで、尾引き量とフリッカ量との理想的な改善が可能となる。
また、画面輝度が上がれば、フリッカは知覚されやすくなる(Ferry−Porterの法則)。よって、映像表示装置の高輝度化により、フリッカ妨害が発生しやすくなる。また、人間の目は視細胞の錐体より杆体の方が、つまり視野の中心より周辺の方が明滅に敏感であるため、映像表示装置の大画面化もフリッカ妨害が認識されやすくなる。本実施形態による映像表示装置の表示品位改善方法は、映像表示装置の高輝度化、大画面化に特に有効である。
さらに、本実施形態においては、間欠発光成分の発光のデューティー比Dと、間欠発光位相Pとは、D/2≦P≦(100―D/2)の関係を満たす。映像表示装置のパラメータである、尾引きのしきい値や、デューティー比D、間欠発光成分の発光強度比S1、間欠発光位相Pなどの最適値は、映像表示装置の主観評価による尾引き量、フリッカ量の見え方や、システムの諸条件を考慮して、D/2≦P≦(100―D/2)を満たすように決定すればよい。
〔実施形態2〕
本発明のさらに他の実施形態に係る映像表示装置について図15及び図16を用いて説明する。図15は、本実施形態を適用した映像表示装置400の構成を説明するための図面である。図15に示すように、映像表示装置400は、液晶パネル(映像表示手段)401、液晶コントローラ402、ソースドライバ403、ゲートドライバ404、ソース電極405、ゲート電極406、間欠発光駆動回路407、持続発光駆動回路408、ランプユニット(発光手段)409、ランプ410、ランプ411、導光ユニット412、導光ユニット413、導光ユニット414を備えて構成されている。
液晶パネル401上には、ソースドライバ403で駆動されるソース電極405と、ゲートドライバ404で駆動されるゲート電極406が配置されてマトリクスを形成している。これらソース電極405とゲート電極406との交点には、画素(図示せず)が配置されている。なお、図15では、ゲート電極406を、参照符号G1からG6で記載している。
また、液晶コントローラ402は、映像信号451をもとに、液晶パネル401の表示動作に必要な処理を行い、ソースドライバ403とゲートドライバ404を制御する。
また、ゲートドライバ404は、ゲート電極406を順次選択して、ゲート信号を印加する。液晶パネル401は透過型であり、あるゲート電極が選択されたときに、そのゲート電極に属する画素の透過率が更新される。
画素の透過率は、ソース電極からの映像情報によって決まる。また、透過率の更新動作の周波数は、映像信号451の垂直同期の周波数により基づき決定される。たとえばNTSCビデオ信号では60Hzである。ここでは、各画素に存在する液晶の時間応答特性、つまり透過率が所望の状態に変化するまでの時間特性(時定数)が1ミリ秒程度の高速応答の液晶を仮定する。
また、液晶コントローラ402は、垂直同期信号452を間欠発光駆動回路407に出力する。ランプユニット409は、間欠発光光を出力するランプ410と、持続発光光を出力するランプ411からなる。ランプ410、ランプ411は、ともにたとえば単一または複数のLEDで実現が可能である。なお、図15において、ランプユニット409を3つ図示しているが、映像表示装置400に設けられるランプユニットの数がこれに限定されるものではない。
間欠発光光と持続発光光は、ランプユニット409内部で混合され、それぞれ混合照明光457、混合照明光458、および混合照明光459を出力する。これらの混合照明光のそれぞれは、導光ユニット412、導光ユニット413、および導光ユニット414に各々入力される。
導光ユニット412〜414は、光を拡散させるためのパターン(図示せず)が印刷されていて、端面から入力した混合照明光を導光・拡散して、液晶パネルに混合照明光を出力する。導光ユニット412〜414とランプユニット409は1対1に対応しており、互いの照明光が混合しないように、たとえば光学的な間仕切りにより分離されている。
導光ユニット412〜414とランプユニット409の3つのセットの各々(ブロック状に分割された各部)は、液晶パネル401を部分的に照明するエリアを構成する。導光ユニット412は画面上部のエリアを照明する。導光ユニット413は画面中央、導光ユニット414は画面下部である。
間欠発光駆動回路407は、垂直同期信号452から、間欠パルス信号453・454・455を作成して、各ランプユニット409のランプ410に供給する。持続発光駆動回路408は、各ランプユニット409のランプ411に共通で、かつ、映像信号111とは無関係な連続持続信号456を供給する。
図16は、図15の映像表示装置400の動作を説明するためのタイミングチャートである。図16の(a)部分は、垂直同期信号452の波形を示すものである。図16の(b)部分は、導光ユニット412が照明するエリアに属する画素を制御するゲート電極(G1あるいはG2)に印加されるゲート信号の波形を示すものである。図16の(c)部分は、混合照明光457の発光波形を示すものである。図16の(d)部分は、導光ユニット413が照明するエリアに属する画素を制御するゲート電極(G3あるいはG4)に印加されるゲート信号の信号波形を示すものである。図16の(e)部分は、混合照明光458の発光波形を示すものである。図16の(f)部分は、導光ユニット414が照明するエリアに属する画素を制御するゲート電極(G5あるいはG6)に印加されるゲート信号の波形を示すものである。図16の(g)部分は、混合照明光459の発光波形を示すものである。図16の(c)部分、(e)部分、および(g)部分の縦軸は瞬時発光輝度である。
ここで、本実施形態の映像表示装置400の特徴の1つは、図15に示すように、液晶パネルを複数のエリアに分割し、各エリアを照明する点にある。その照明光は、間欠発光光と持続発光光とを混合した混合照明光である。各エリアを照明する混合照明光間の間欠発光成分の発光位相は、各々異なる。液晶パネル401は、ゲート電極の選択(アドレッシング)により、画面の場所によって画素の透過率の更新タイミングが異なる。その更新タイミングの位相差の影響を、複数のランプユニットの間欠発光光の発光位相をシフトさせることで吸収し、最良の発光位相を得る。
また、図16の(a)部分の垂直同期信号452は、液晶パネル401に映像を表示する動作の基準タイミングである。T0は繰り返し時間(フレーム期間)である。さらに、図16の(b)部分に示すゲート信号で駆動されるゲート電極は、表示パネル101の画面の上部に位置し、その位相は垂直同期信号452に対して、同一あるいはほぼ同じである。
図16の(c)部分に示す混合照明光457の間欠発光光の発光位相は、ゲート信号のLowパルスの繰り返し時間の中心に位置し、T1とT2は等しい関係にある。ここで、T1は、図16の(b)部分に示すゲート信号の立ち上がりを基準とした、間欠発光成分が発光を開始するまでの時間である。ゲート信号の立ち上がりに対して間欠発光成分の開始の位相が遅れている場合をプラスの時間、間欠発光成分の開始の位相が進んでいる場合をマイナスの時間と仮定する。また、T2は、間欠発光成分が発光を終了する時間を基準とした、周期T0が終了するまでの時間である。なお、間欠発光成分の発光位相は、間欠発光駆動回路407からの間欠パルス信号453によって制御される。このようなゲート信号と混合照明光の間欠発光光の発光位相の制御により、実施形態1で述べた尾引き低減とフリッカ低減の効果が得られる。
図16の(d)部分に示すゲート信号は、画面の中央部分のゲート電極(G3あるいはG4)を動作させるための信号であり、垂直同期信号452に対して、T3の時間分シフトしている。T3とフレーム期間T0との関係は、T3のおよその3倍がT0となる。図16の(e)部分は、ゲート電極G3・G4に属する画素を照明する混合照明光458の発光波形であり、T4とT5は等しい関係にある。
図16の(f)部分に示すゲート電極の位相は、垂直同期信号に対してT6の時間分シフトしている。なお、T6のおよそ3/2倍がT0となる。図16の(g)部分の混合照明光459の間欠発光光の発光位相は、T7とT8が等しい関係となる。このように、画素が駆動、更新されるタイミングと、その画素を照明する混合照明光の間欠発光光の位相を、画素の更新タイミングの中心に合わせることで、実施形態1で述べた尾引き低減とフリッカ低減が、表示画面全体に対して実現可能となる。
本実施形態では、導光ユニットを3つに分割したが、4分割以上でも同様の効果が得られる。また、本実施形態では、光源をLEDであると述べたが、LEDに限定されるものではない。さらに、本実施形態では、液晶パネルを透過型であると述べたが、反射型でも本実施形態は適用可能である。
また、本実施形態では、導光ユニットをアクリル樹脂などからなる導光板とし、ランプユニットを導光板の側面に配置し、導光板の端面から混合照明光を入力してもよい。また、間欠発光光と持続発光光を、ランプユニットにおいて混合せずに、導光板において混合してもよい。また、ランプユニットを液晶パネルの背面に配置し、ランプユニットと液晶パネルの間に空隙を設けて、その空隙にて間欠発光光と持続発光光を混合してもよい。
本実施形態では、ランプユニットの互いの照明光が混合しないように間仕切りを持つと述べたが、間仕切りを設けずに光源の指向性によって互いの照明光が混合しないように制御してもよい。
以上説明したように、本実施形態の映像表示装置の特徴は、ランプユニットと導光ユニットの組み合わせにより、液晶パネルを照明するエリアを分割する。その照明光は、間欠発光光と持続発光光を混合した混合照明光である。各エリアを照明する混合照明光間の間欠発光成分の発光位相は、各エリア間で各々異なる。ゲート電極の選択(アドレッシング)により、表示画面の場所によって画素の透過率の更新タイミングが異なるため、その更新タイミング位相の差の影響を、複数のランプユニットの間欠発光光の発光位相をシフトさせることで解決する。
混合照明光で液晶パネルを照明することによる効果は、実施形態1で述べたものと同一であり、鮮明な動画表示でフリッカ妨害のない、最適な表示映像を提供可能とする効果である。
なお、図16においてT1=T2、T4=T5、T7=T8であると説明したが、これらゲート電極パルスに対する間欠発光光の位相は、実施形態1で説明した、D/2≦P≦(100―D/2)の条件を満足するように設計すればよい。図1にて説明した、間欠発光位相Pを図16に当てはめれば、P=(T0+T1−T2)/2である。また、間欠発光時間比Dは、D=(T0−T1−T2)である。
よって、図16からは、本発明の効果を得られる条件として0≦T1という条件が導かれる。つまり、T1が0以上であれば、繰り返し周期T0の単位において間欠発光成分が2つに分割されることがなく、良好な尾引き効果が得られる。T1が0以上であるということは、間欠発光成分の発光開始の位相が、ゲート信号の立ち上がりより遅れていることを意味している。また、同様に0≦T2の条件も導かれる。T2が0以上であるということは、間欠発光成分の発光終了の位相が、周期T0が終了するまでの時間、言い換えると次のゲート信号の立ち上がりの時間より進んでいることを意味している。発光波形は、周期T0の繰り返し信号であり、T1が負の値を持つ場合、T2も負の値となる。たとえば、T0=17ミリ秒、間欠発光成分の発光時間を7ミリ秒である場合、T1=1ミリ秒、T2=9ミリ秒で発光してもよい。また、T1=5ミリ秒、T2=5ミリ秒で発光しても良い。T1=10ミリ秒、T2=0ミリ秒としてもよい。T1=13ミリ秒の設定では、T2が負となってしまうので、そのような発光位相は選択しなければよい。T2=12ミリ秒の場合も、T1が負の数値となるため、本実施形態の効果は得られない。そのため、そのような発光位相は選択しなければ良い。なお、映像表示装置は、主観的な判断で画質を調整する場合が多いが、0≦T1、もしくは0≦T2の条件において、間欠発光成分の発光時間や発光強度などのパラメータを決定すればよい。
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態に係る映像表示装置を、図17から図19を用いて説明する。本実施形態の映像表示装置の構成は、図15に示したものと同一である。光源からの照明光を変調する手段は、透過型の液晶である。
本実施形態では、実施形態1や実施形態2と異なり、一般的な応答特性を持つ液晶を仮定する。一般的な応答特性とは、時定数が2ミリ秒から5ミリ秒程度のものを指す。なお、時定数は、所望の目標とする透過率状態の、およそ63%まで変化する時間で定義している。なお、目標とする透過率状態の90%に到達する時間は、時定数のおよそ2.3倍の時間となる。時定数が10ミリ秒や、それ以上の応答の遅い液晶も世の中には存在するが、ここでは除外する。
ここで、本発明は、尾引き量の改善を目的としている。尾引きの改善の前提として、ホールド型の特性の改善と、液晶応答時間の改善の双方を合わせることが必要であることが公知である。応答が遅い液晶に対してホールド型発光の改善を行うと、画像のエッジが割れるなどの妨害が発生する。よって、ここでは液晶の時定数の仮定の上限を5ミリ秒とする。
図17は、本実施形態の映像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図17の(a)部分は、ある画素に注目した場合の、その画素が属するゲート電極に供給されるゲート信号である。図17の(a)部分に示すT0は、映像信号111の垂直同期信号の周期であり、NTSCビデオ信号では16.7ミリ秒である。図17の(b)部分は、液晶の時定数が3.5ミリ秒である場合の注目している画素の透過率の変化を示している。なお、この液晶が、目標する透過率の90%まで変化する時間は約8ミリ秒である。画素は、あるフレームで白に対応する透過率に変化し、次のフレームで黒に対応する透過率、つまり0%に変化している。図17の(c)部分および(e)部分の縦軸は瞬時発光輝度である。
図17の(c)部分は、画素を照明する混合照明光の発光波形である。発光波形の条件は、図7の第3行で述べた条件と同一である。つまり、間欠発光成分のデューティー比Dは20%、間欠発光成分の全体の発光強度に対する割合S1は20%である。図17の(c)部分に示すT11は、ゲート信号のLow期間から、間欠発光光の立ち上がりの時間である。T1は、図17の(b)部分の液晶を照明する最良のタイミングを示しており、T11はT0の75%である。
また、図17の(d)部分は、図17の(b)部分とは異なる液晶、すなわち時定数が2.2ミリ秒の液晶の透過率の変化を示すものである。なお、この液晶が目標とする透過率の90%まで変化する時間は約5ミリ秒である。図17の(e)部分は、図17の(d)部分の液晶を照明するための、最良の混合照明光の状態を示しており、その間欠発光成分の位相であるT12は、T0の65%である。
図18(a)〜図18(d)は、液晶の応答時定数が3.5ミリ秒である場合の、間欠発光成分の最良の発光位相を説明するための図である。光源の発光条件は、図17の(c)部分と同様であり、間欠発光成分のデューティー比Dが20%、間欠発光成分の発光強度比S1が20%である。
図18(a)は、液晶の応答波形を示すものである。3フレーム分の白を書き込んだときの透過率の応答である。液晶の過渡応答は、指数関数で近似しており、その時定数は前述の3.5ミリ秒である。図18(b)は、光源の発光波形を示すものである。間欠発光位相Pは最良の75%である。図18(c)は、図5に示した尾引きモデルにおいて、液晶の応答に図18(a)の特性を、光源の発光波形に図18(b)の特性を設定した場合の、尾引き量を示すものである。尾引き量のしきい値を10%から90%であると仮定している。尾引き量はおよそ0.2画素である。
図13で説明した場合は、尾引きの応答は直線であったが、液晶の過渡応答を含む尾引きモデルでは、図18(c)に示すように、曲線となる。しかし、図5の(e)部分で示した傾き1,3部分の傾斜は、傾き2に対して緩やかであり、人間の目が応答しないため、実施形態1で説明した効果が得られる。
図18(d)は、図18(c)で行った尾引き量算出において、間欠発光位相Pを変更したときの特性を示すものである。図から明らかなように、Pは75%から80%の場合に尾引き量が最小となり、高画質が得られる。このPの範囲以外の部分では、尾引き量は増大する。これは、図5の(e)部分で示した傾き1、3の部分が、設定した尾引き量のしきい値を超えるためである。
図19(a)〜図19(d)は、液晶時定数が2.2ミリ秒である場合の、間欠発光成分の最良の発光位相を説明するための図である。光源の発光条件は、図17の(c)部分および(e)部分と同様である。
図19(a)は、液晶の応答波形を示すものである。液晶の過渡応答は、指数関数で近似している。図19(b)は、光源の発光波形を示すものである。間欠発光位相Pは最良の65%である。図19(c)は、図5に示した尾引きモデルにおいて、液晶の応答に図19(a)の特性を、光源の発光波形に図19(b)の特性を設定した場合の、尾引き量を示している。尾引き量はおよそ0.19画素である。図19(d)は、図19(c)で行った尾引き量算出において、間欠発光位相Pを変更したときの特性を示す。図から明らかなように、Pは60%から70%の場合に尾引き量が最小となり、高画質が得られる。このPの範囲以外の部分では、尾引き量は増大する。これは、図5の(e)部分で示した傾き1、3の部分が、設定した尾引き量のしきい値を超えるためである。
以上のように、上述した実施形態の映像表示装置は、第1の発光成分および第2の発光成分、または、間欠発光成分および持続発光成分からなる照明光で液晶を照明する。これにより、従来のインパルス発光では得られなかった、尾引き量とフリッカ量との同時の改善が可能となる。ここでは、比較的遅い応答の液晶を採用している。
この場合、尾引き量の最適値は、間欠発光位相Pによって定まり、その位相は液晶の時定数τによって変化する。よって、最良の間欠発光位相PをPAとすると、PA=F[τ]となる。ここで、F[]は関数を意味する。
この関数は、単純な線形関数ではないが、τが大きくなるに従いPは増大する方向である。また、時定数τが決まれば、PAはある定数となる。さらに、高速応答でτ=0と見なせる場合、PA=50%となることは、図13を用いて説明したとおりである。よって、ある時定数τの場合に、関数F[]から定まる定数をKとした場合、
PA=50+K(但し0≦K≦(50−D/2))の関係となる。
定数Kは、映像表示装置の液晶の応答を測定して定めても良いし、主観評価などの実験から最適値を定めても良い。インパルス型発光に関する従来の技術では、点滅のパルス点灯位相は、液晶が充分応答する映像の垂直同期の後半、または、ある画素に注目した場合のその画素が属するゲート信号の後半が最良であるとしている。しかし、本実施形態においては、図5の(e)部分に示す傾斜1、2、3のうち、観察者の目の動的コントラスト応答が低いことを利用して傾斜1、3が認識されないようにする必要がある。また、傾斜1、3のバランスは、液晶の時定数で決まる。よって、図5の(e)部分の傾斜1、3をバランスよく発生させて観察者に認識させないために、間欠発光成分の、映像信号の書き換え繰り返し動作に対する位相を制御するのである。
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態に係る映像表示装置を、図20から図23を用いて説明する。本実施形態の映像表示装置における、表示パネルはアクティブマトリクス型駆動で自発光のEL(エレクトロルミネッセンス)パネルである。ELパネルは、実施形態1で示した、透過型の表示パネルを光源の照明光で照明する場合と異なり、画素ごとに配置されたEL素子に画像情報に応じた電流を流すことで、発光の明暗を制御し、画像を生成するものである。
図20は、本実施形態のELパネルの画素の構成を示す図である。EL画素601は、スキャン電極602、信号電極603、TFT604、コンデンサ605、TFT606、TFT607、TFT608、EL素子609、電源610、スキャン電極611から構成される。
スキャン電極602は、たとえばNTSCビデオ信号の場合、表示パネルに525本存在する。さらに、NTSCビデオ信号は垂直周波数が60Hzであるため、スキャン電極602は約31.75マイクロ秒(=1/60/525)おきに選択される。スキャン電極は、表示パネルの水平方向に並ぶ、他の画素と共通である。
信号電極603からは、表示する画像情報が供給される。たとえばNTSCビデオ信号であれば、信号電極603は、表示パネルに640本、もしくは720本存在する。信号電極603は、表示パネルの垂直方向に並ぶ複数の画素の間で共通して用いられる。注目画素のスキャン電極602が選択されてパルスが供給されると、TFT604がオンする。このタイミングにあわせて信号電極603に画像情報が供給されるので、この情報を電圧(もしくは電荷)の形でコンデンサ605に保持する。
注目画素が非選択期間になると、TFT604はオフとなり、コンデンサ605の電圧は保持される。EL素子609は、このコンデンサ605に保持された電圧によって定まる電流を電源610から流すことで、所望の輝度で発光する。ここで、本実施形態のEL画素601は、EL素子609に電流を供給する系統が2系統存在する。2系統とは、TFT606を介する系と、TFT607を介する系である。また、TFT607は、スキャン電極611によって制御されるTFT608によってオン/オフが制御される。
図21は、EL画素601の動作を説明するための図である。図21の(a)部分は、スキャン電極602に供給されるパルス信号の波形を示すものである。繰り返し周期Tは、NTSCビデオ信号では16.7ミリ秒(=1/60)である。図21の(b)部分は、スキャン電極611のパルス信号の波形を示すものである。図21の(c)部分は、TFT606のドレインに流れる電流の波形を示すものである。この電流は、電源610から供給されて、TFT606のソース−ドレインを通り、EL素子に流れる。さらに、この電流は、スキャン電極602がHighの期間にTFT604をオンして、コンデンサ605の端子間電圧を更新することで変化する。
EL素子の応答はたとえば一般的な液晶の応答と比較すると高速であり、スキャン電極602がHighの期間に所望の電流に変化するものと仮定している。また、図21の(c)部分に示すように、ある周期に比較的大きい電流I1が設定されて、画素は明るく発光する。次の周期で小さい電流I2が流れて、EL素子609は暗く発光する。
図21の(d)部分は、TFT607を介して電源610から供給される電流の波形を示すものである。この電流の振幅は、TFT606の系と同様、コンデンサ605の電圧によって定まる。よって、図21の(c)部分および(d)部分において、I1=I3、I2=I4である。
ただし、TFT607はスキャン電極611によって制御される点がTFT606と異なる。つまり、スキャン電極611のパルスがHighの期間は、TFT608がオンとなる。この場合、TFT607のゲート、ソース間電圧が0となるため、TFT607はオフである。スキャン電極611がLowの期間はTFT608がオフとなり、この場合、TFT607はコンデンサ605の端子間電圧によって制御され、図21の(d)部分に示すように電流が流れる。
そして、EL素子609に流れる電流の波形は、図21の(e)部分に示すようになり、これは、図21の(c)部分の波形と(d)部分の波形との和である。つまり、I5=I1、I6=I1+I3、I7=I2、I8=I2+I4である。
図21の(e)部分の電流波形に応じてEL素子609が発光する。発光波形は、EL素子の電流−発光特性によるが、ここで特性が比例関係にあるとすれば、発光波形は図4の(e)部分と同等となる。この波形で発光することで、実施形態1の図8で説明した、尾引き量とフリッカ量を同時に改善する効果が得られる。
以上説明したとおり、本実施形態の映像表示装置は、たとえばアクティブマトリクス駆動の自発光ELパネルを用いるものである。そして、映像情報を記憶したコンデンサ605で制御するTFTを2つ持ち、各々のTFTに異なるタイミングで電流を流すことで、間欠発光と持続発光に対応する発光波形を生成する。つまり、画素の発光が、図1で説明した、第1の発光成分と第2の発光成分とから構成される。または、間欠発光成分と持続発光成分とから構成されるのである。
また、間欠発光位相Pは、スキャン電極611のパルスの位相管理で制御を行う。一般的にEL素子の応答は液晶に比べて高速であるため、図13で説明した通り、最良の位相PAは50%でよいが、他の要因で最良の位相が変化した場合でも、スキャン電極611の位相によって制御すればよい。
また、デューティー比Dもスキャン電極611のLow期間によって制御が可能である。間欠発光成分もしくは第1の発光成分の発光エネルギー(つまり発光強度)を大きくしたい場合は、デューティー比Dを増大させればよい。
さらに、スキャン電極602の選択動作は、従来のホールド型発光のEL装置と同様1/60秒でよいため、スキャン電極ドライバ(図示せず)や信号電極ドライバ(図示せず)を高速化する必要がなく、外部に映像信号を記憶するフレームメモリなどを使用してクロックレート変換等を行う必要がない。コンデンサも、従来のホールド型発光のEL装置と同様、1つでよい。
図22は、EL画素の他の実施形態を説明するための図である。図22において、図20と同一の機能を有するものには同一符号を付している。図22におけるEL画素701は、コンデンサ702、コンデンサ703、TFT704、TFT705、TFT706、スキャン電極707、およびスキャン電極708で構成されている。
画素選択時にTFT604がオンして、映像情報に対応した電圧がコンデンサに書き込まれるのであるが、この電圧は直列接続されたコンデンサ702とコンデンサ703とに対して書き込まれる。また、TFT705とTFT706は交互にオン/オフを繰り返し、TFT704のソース−ゲート電圧を切り替える。
つまり、TFT705がオンの期間は、コンデンサ703の電圧が、TFT706がオンの期間は、コンデンサ703とコンデンサ702との端子間電圧の和が、TFT704のソース−ゲート電圧となる。
この2つのゲート電圧によって、EL素子609の電流が切り替えられる。また、TFT706はスキャン電極707によって制御される。TFT705はスキャン電極708によって制御される。なお、画素内にインバータを配置することにより、たとえばスキャン電極707の論理を反転した信号をTFT705のゲートに入力してもよい。
図23は、EL画素701の動作を説明するための図である。図23の(a)部分は、スキャン電極602に供給されるパルス信号の波形を示すものである。図23の(b)部分は、スキャン電極708のパルス信号の波形を示すものであり、図23の(c)部分は、スキャン電極707のパルス信号の波形を示すものである。図23の(d)部分は、TFT705で制御されるEL素子609の電流波形を示すものである。
スキャン電極708がHighの期間、TFT705がオンし、TFT704のゲート−ソース間電圧がコンデンサ703の両端電圧で規定される。この電圧は、画素選択時に書き込まれた電圧を、コンデンサ703とコンデンサ702で分圧したものである。選択時の書き込み電圧をV、コンデンサ702およびコンデンサ703の静電容量を各々C1、C2とすれば、コンデンサ703の両端電圧V2は、
V2=V*(C1*C2/C1+C2)
となる。
図23の(e)部分は、TFT706で制御されるEL素子609の電流の波形を示すものである。スキャン電極707がHighの期間にTFT706がオンになり、TFT704のゲート−ソース間電圧は、画素選択時に書き込んだ電圧Vとなる。
ここで、VとV2は、V2<Vの関係にあり、TFT704のゲート−ソース間電圧と、TFT704のドレイン電流が比例すると仮定すれば、図23の(d)部分に示す電流I11、I12と、図23の(e)部分に示す電流I13、I14は、
I11=I13*(C1*C2/C1+C2)
I12=I14*(C1*C2/C1+C2)
の関係となる。
図23の(f)部分は、実際にEL素子609に流れる電流の波形を示すものであり、図23の(d)部分の波形と(e)部分の波形との和となる。EL素子609の電流−発光輝度特性が線形であれば、EL素子609の発光輝度波形は図23の(f)部分に示す波形となる。
つまり、画素の発光が、図1で説明した、第1の発光成分と第2の発光成分とから構成される。または、間欠発光成分と持続発光成分とから構成されるのである。この波形により、実施形態1で説明した、尾引き量とフリッカ量との双方の改善が可能となる。間欠発光位相Pや間欠発光成分のデューティー比Dは、スキャン電極707、708のパルスの位相管理で制御を行う。間欠発光成分または第1の発光成分の発光エネルギー(つまり輝度)を大きくしたい場合は、コンデンサ702、703の容量比で制御可能である。または、スキャン電極707のLow期間を増大させて、スキャン電極708のHigh期間を減少させればよい。
以上のように、図22および図23を用いて説明したとおり、本実施形態の映像表示装置は、コンデンサに記憶した映像情報を分圧して使用する。スキャン電極602の選択動作は、従来のホールド型発光のEL装置と同様1/60秒でよいため、スキャン電極ドライバ(図示せず)や信号電極ドライバ(図示せず)を高速化する必要がなく、外部に映像信号を記憶するフレームメモリなどを使用してクロックレート変換等を行う必要がない。
また、上記の説明では、表示パネルが有機ELパネルである場合を説明したが、たとえば非発光透過型の液晶パネルにおいて、画素に書き込むデータを制御して、光源からの照明光を変調することにより、上述した画素の発光波形を実現してもよい。液晶パネルの場合、画素が画素選択TFTとコンデンサとから構成されるが、上記と同様に輝度切替TFTを挿入することによりコンデンサの電荷を制御して、液晶の透過率を変更し、画素の輝度を設定するようにしてもよい。さらに、輝度切替TFTを追加せずに、画素選択TFTのアクセスを1フレーム(フレームは画面を構成する単位)期間に2回以上行うことで、異なる輝度に相当するデータを書き込むようにしてもよい。
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態に係る映像表示装置を、図24を用いて説明する。本実施形態の映像表示装置において、表示パネルはアクティブマトリクス型駆動で自発光のEL(エレクトロルミネッセンス)パネルであるか、またはアクティブマトリクス型駆動で非発光の液晶パネルである。そして、本実施形態では、画素ごとに配置されたEL素子もしくは液晶素子に画像情報に応じた電圧を供給することで、発光の明暗を制御し、画像を生成する。
図24は、本実施形態の映像表示装置の動作のタイミングを説明する図である。なお、説明を簡単にするために、表示パネルは走査線が5本であると仮定している。図24の(a)部分は、垂直同期信号の波形を示すものであり、画面の繰り返しの基準である。NTSCビデオ信号であれば、垂直同期信号の周波数は60Hzである。図24の(b)部分は水平同期信号の波形を示すものである。走査線を5ラインと仮定しており、1垂直周期にH11からH15の5回のパルスが発生する。図24の(c)部分はデータ信号の波形を示すものであり、表示パネルの水平方向に並ぶ複数のデータ電極の1本に供給される信号である。
ここで、本実施形態の映像表示装置は、別途映像信号をフレーム単位で記憶するフレームメモリを有しており、このフレームメモリに記憶した画像データにアクセスすることで、データの時間軸方向への並び替えを行う。ここで、画面の最上部に位置する画素を画素1、その下にある画素を画素2というように、同一データ電極上に位置する画素に対して、垂直方向の並び順に1から5の番号を振る。そして、画素1に表示する映像データをD1、画素2に表示する映像データをD2とする。D11、D12、D13は、D1を3つに分割して、時間方向に並び替えた映像データを意味する。
図24の(c)部分に示すように、たとえば画素1用のデータであれば、H11期間の先頭にD11、H13の2番目にD12、H14の3番目にD13が発生するよう、時間軸に対するデータの並び替えを行う。あるフレームでのD1には白の100%レベル(8bitで255レベル)が、1/60秒後の次のフレームにはグレーの60%レベル(8bitで150レベル)が入力されると仮定する。画像データの分割は、デューティー比D、発光強度比Sによって定まる。例えばデューティー比D=50%、発光強度比S=80%であると仮定する。
また、映像表示装置の画素が発光可能な瞬時ピーク輝度が1000nitであるとする。D1=100%の白信号であれば、図1で説明した第1の発光の瞬時発光輝度(第1の発光の縦軸の高さ)は100%であり、1000nitである。第2の発光は発光強度比Sが20%であり、図1の瞬時発光輝度(第2の発光の縦軸の高さ)は25%である250nitとなる。計算は、250nit=1000nit*50%/80%*20%で算出される。50%、80%、20%の数値は、各々図1のD、S、(100−S)に相当する。このように、D11、D12、D13はデューティー比Dと発光強度比Sで定まる計算でD1から定まる。100%の白信号は、D11=25%、D12=100%、D13=25%の瞬時発光輝度で発光するように、映像データを分割設定する。映像データと発光輝度が比例すると仮定すると、8bit幅の映像データで言い換えると、255レベルの白信号の分割は、D11=64レベル、D12=255レベル、D13=64レベルである。これら瞬時発光輝度とデューティー比50%から、平均画面輝度は、1000*0.5+250*0.5=625nitとなる。
D1=60%のグレー階調の場合は、白信号で説明したものの60%の値となる。つまりD1=60%であれば、D11=15%、D12=60%、D13=15%である。D11、D12、D13の各々対応する輝度をL11、L12、L13とすると、100%の瞬時発光輝度が1000nitであれば、L11=150nit、L12=600nit、L13=150nitである。
図24の(d)部分は、画素1をスキャンするスキャン電極に印加するパルス信号の波形を示すものである。画素1は、画面上部に位置するものと仮定している。なお、走査線を5本と仮定しており、同一のデータ電極上に5つの画素が存在すると仮定する。上記の映像信号D1は、この画素1に表示される映像データであると仮定する。
また、スキャン信号は、1垂直周期に3回パルスを発生する。このパルスは、水平周期のおよそ1/3の時間である。また、1垂直周期に3回発生されるパルスは、水平同期信号に対して各々位相がシフトしている。時間方向に分割して並び替えた映像データD11、D12、D13の位相と、画素1のスキャン信号のHigh期間の位相が対応している。つまり、時間方向に並び替えた画素1の映像データを、スキャン信号で画素1に取り込むことで、画素1の発光を規定する。
図24の(d)部分の波形において、左から1番目のパルスは水平同期信号の前半に位置しており、2番目のパルスは真ん中に位置しており、3番目のパルスは後半に位置している。図24の(e)部分は、画素1の発光波形である。縦軸は輝度である。D1=100%(255レベル)の白信号であると仮定する。スキャン信号の1番目のHighの期間に画素1がD11で定まる発光状態(発光輝度)であるL11に設定される。このときの瞬時発光輝度は、上述の例では250nitである。スキャン信号がLowに落ちた時点で、このD11のデータを保持するので、画素1は250nitで発光を続ける。次に2番目のHigh期間にて、画素1の画素データはD12が書き込まれる。上述の例ではL12=1000nitである。そして、スキャン信号は再度Lowに落ちるため、D12が保持され、画素1は1000nitで発光を続ける。同様に、3番目のスキャンパルスでD13に相当するL13=250nitが書き込まれて保持される。つまり、本実施形態では、図24の(d)部分のスキャン信号がHighのタイミングに合わせて、図24の(c)部分のデータ信号の映像データに相当する発光輝度を設定する。
たとえばEL素子であれば、映像データをコンデンサの電圧として保持して、その電圧に相当する電流をEL素子に流してEL素子を発光する。また、液晶素子であれば、映像データを電荷として保持して、その電荷に見合う透過率になるよう液晶を変調する。
図24の(c)部分のL11、L12、L13は、たとえばL11=L13で、かつL12>L11である。この波形で発光することで、実施形態1の図8で説明した、尾引き量とフリッカ量を同時に改善する効果が得られる。図1で説明した第1の発光成分のデューティー比Dは、データ信号の並び替えと、対応するスキャン信号のパルス位相によって定まる。発光強度比Sは、D11、D12、D13の映像データ分割の分割方法(比率)によって定まる。図24の(f)部分および(g)部分は、他の画素である画素3に注目した場合を示す。画素3に書き込んで表示する映像データD3を分割した映像データをD31、D32、D33と表記する。そして各々のデータに対応する発光輝度を、L31、L32、L33とする。
なお、画素3は画面中央に存在する。この画素における動作タイミングは、基本的に画素1のタイミングと同じであり、位相が2ライン分シフトしている。よって、各画素のスキャン信号が同時にHighになることはない。
このように、本実施形態の映像表示装置は、あらかじめデータ電極に印加するデータを並び替え、1水平周期当りに3つのデータが配置されるよう加工されている。また、垂直方向の選択を行うスキャン信号は、1垂直同期信号あたり3回、High信号を出力する。さらに、複数のスキャン信号が同時にHighになることはない。
このようなタイミングでデータを書き込むことで、本実施形態の映像表示装置からは、図24の(e)部分に示すような発光波形が得られる。この波形は、図1で示したような、第1の発光成分と第2の発光成分とからなっている。または、間欠発光成分と持続発光成分とからなっている。この波形で画素が発光することで、尾引き量とフリッカ量との理想的な改善が行われる。
本実施形態では、外部にメモリを設けてデータを並び替えることで発光波形を制御するため、表示パネルの画素構造を、例えばスキャン電極を追加する等の、1垂直同期信号あたり1回データを更新するような一般的な構成のものから変更する必要がなく、既存の表示パネルの流用が可能である。
また、間欠発光成分のデューティー比Dは、データ信号の並び替えの管理で制御が可能である。間欠発光成分の発光位相Pも、同様にデータ信号の並び替えの管理で制御が可能である。
〔実施形態6〕
本発明のさらに他の実施形態について、図25から図40を用いて説明する。本実施形態は、実施形態1の図1の(a)部分で説明した、第1の発光成分と第2の発光成分との、デューティー比Dと、第1の発光成分の発光強度比Sの最適条件について説明するものである。なお、以下に述べる尾引き量は、図5で説明したモデルをもとに算出している。
また、尾引き量を算出するための輝度変化のしきい値は、尾引きの輝度変化の15%、85%としている。このしきい値は、絶対的な数値があるわけではなく、映像表示装置の画面輝度や画面サイズなどで変化するものである。ここでは、図5の(e)部分で説明した、傾き1および傾斜3により規定される輝度変化が、全体の輝度変化の15%程度まで大きくなっても人間の目には目立ちにくいと仮定している。また、フリッカ量は、図6で説明したように、発光波形のフーリエ変換から算出している。
図25(a)〜図25(c)は、発光強度比Sを70%または90%で固定した場合の、デューティー比Dと尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。なお、デューティー比Dが発光強度比Sに等しい場合、発光波形が直流となってしまうため、図25から除外している。また、デューティー比Dが発光強度比Sより大きい場合、第1の発光成分の瞬時発光強度が、第2の発光成分の瞬時発光強度より小さくなってしまい、この場合も本実施形態の効果を説明するところではないため除外している。
図25(a)に示すように、デューティー比D<発光強度比S、かつ発光強度比を70%または90%で固定して、取り得るデューティー比Dを用いて、図5で示したモデルで示した尾引き量と図6で示したフリッカ量を算出すると、その特性はすべてのデューティー比Dに対して、従来技術の特性から左下方向に移動しており、本実施形態の映像表示装置により尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られていることが分かる。
図26(a)〜図26(c)は、デューティー比Dを10%または70%で固定した場合の、第1の発光成分の発光強度比Sと尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。図26(a)に示すように、デューティー比D<発光強度比S、かつデューティー比Dを10%または70%で固定した場合、ある発光強度比(ここでは70%)から100%未満までの発光強度比Sに対して、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られていることが分かる。
図27(a)および図27(b)は、発光強度比Sを40%で固定した場合の、デューティー比Dと尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。この条件では、本実施形態の映像表示装置の効果は得られない。図26(a)の説明にて、発光強度比Sを70%までとしたのは、発光強度比Sとデューティー比Dの組み合わせにて、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果がなくなる場合があるからである。
これは、図5の(e)部分で説明した傾斜1,2,3のうち、SとDの組み合わせによっては、傾斜1,3の傾きにより規定される輝度変化が、しきい値15%、85%を越えてしまうために尾引き量が大きくなるためである。よって、本実施形態において、発光強度比S=40%という場合は除外する。
図28(a)および図28(b)は、発光強度比Sを60%で固定した場合の、デューティー比Dと尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。この条件では、デューティー比Dによって、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果がある場合と、ない場合がある。
図25から図28の特性をまとめると本実施形態の効果があるデューティー比Dと発光強度比Sの条件は、図29のように示される。図29において、横軸はデューティー比D、縦軸は発光強度比Sである。
デューティー比Dと発光強度比Sは、62≦S<100かつ0<D<100かつD<Sである条件Aか、もしくは48<S<62かつD≦(S−48)/0.23である条件Bを満たす。なお、図29において、網点で示す領域が条件Aを満たす領域、斜線で示す領域が条件Bを満たす領域である。
なお、S=100という条件は、従来技術の間欠発光を行うことを意味するため、条件Aおよび条件Bに含まれない。また、S=Dという条件は、第1の発光成分の瞬時発光強度と、第2の発光成分の瞬時発光強度とが等しい場合を意味するため、条件Aおよび条件Bには含まれない。
さらに、S=0またはD=0という条件は、第1の発光成分が0であることを意味するため、条件Aおよび条件Bに含まれない。また、D=100という条件は、第2の発光成分が0であることを意味するため、条件Aおよび条件Bには含まれない。
条件Aは、図25を用いて説明したように、ある発光強度比Sに対して取り得るすべてのデューティー比Dに対し、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られる。また、条件Aおよび条件Bに含まれないD、Sの値は、図27で説明したように、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果を得ることはできない。また、図28(a)で説明したように、条件Bを満たす発光強度比Sの範囲は、あるデューティー比Dの場合のみ、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られる。
図30(a)および図30(b)は、発光強度比S=62%の場合における尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。この場合、とりえるデューティー比Dに対して、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果があることがわかる。図31(a)および図31(b)は、発光強度比S=48%の場合における尾引き量とフリッカ量との関係を示すものである。この場合、本実施形態の効果が得られるデューティー比Dは存在しない。図28、図30、および図31から、条件Bの発光強度比Sが、48<S<62であることが分かる。
図32(a)および図32(b)は、この48<S<62の範囲において、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られるデューティー比Dの上限を、尾引きモデルとフリッカ解析によって算出したものである。デューティー比Dに対する発光強度比Sの特性は、およそS=0.23D+48の直線に近似できる。このデューティー比Dより小さければ上記効果が得られるため、条件Bとしては、D≦(S−48)/0.23が設定される。
図33(a)〜図33(c)は、条件Aおよび条件Bを満たす領域から代表点を6点抽出した場合の、尾引きとフリッカの改善度合いを説明するための図である。つまり、図33(a)に示すように、P1からP6のポイントを抽出した。各ポイントのD、Sの値は、図33(b)に示す。
これらのポイントP1〜P6のそれぞれについて、図5で示したモデルを基に尾引き量とフリッカ量を求め、尾引き量−フリッカ量のグラフにプロットしたものが図33(c)である。図33(c)に示すように、各ポイントにおける尾引き量およびフリッカ量は、従来技術の間欠点灯(インパルス型表示)のラインから左下方向に移動している。よって、尾引きとフリッカとの両画質妨害が同時に改善されているといえる。
図34(a)および図34(b)は、画素の発光波形の一例を示す図である。横軸は時間、縦軸は瞬時発光強度であり、一周期分の瞬時発光強度を示している。図34(a)は、映像表示装置の調光機能(画面全体の明るさをユーザーが切り替える機能)や、映像表示装置の制御方式のため、約2.4KHz(16.7ミリ秒の間に40回)ののこぎり波が発光波形に重畳している場合を示している。
このような発光波形でも、人間の目が2.4KHzの繰り返し周波数に追従しないため、図34(b)に示す発光波形と等価となり、本実施形態の効果である、尾引きとフリッカを同時に改善する効果が得られる。
つまり、本実施形態における画素の発光の時間応答波形について、図1などでは説明を簡便にするために、第1の発光成分および第2の発光成分の波形を矩形波で記述している。しかし、本発明は、この矩形波に限定されるものではない。図5で説明したとおり、ホールド型の表示装置においては、人間の目が本来の積分方向とずれた方向で画素の発光を積分することに問題がある。この積分方向、積分路のずれは、動物体を目で追うために発生する。従来のインパルス型の表示装置は、発光を一部抑制することで、尾引き妨害を減らしているが、本実施形態は尾引き量を減らしながらフリッカ量も同時に改善するものである。本実施形態の発光波形は、デューティー比Dで規定する時間に、発光強度比Sの発光強度、いわゆる発光エネルギーを集中することで達成するものである。よって、純粋な矩形波でなくても効果が減じることがないのはいうまでもない。
図35(a)は、第2の発光成分が細かいパルスからなる場合の発光波形を示している。横軸は時間、縦軸は瞬時発光強度であり、一周期分の発光波形を示している。この場合も、図34と同様、人間の目が細かいパルスに追従しないため、第2の発光成分の発光強度は、破線で示す発光波形と等価となり、尾引きとフリッカを両立した改善が可能である。
なお、第2の発光成分の発光強度比(100−S)%を調整する場合、図35(a)のように、パルスの点灯時間T0を調整してもよいし、図35(b)に示すように、パルスの強度L0を変更しても良い。
なお、第2の発光成分の繰り返しの周波数は、人間の目が追従しない値を選定すればよい。例えば図17ののこぎり波の周波数のような数キロHzでもよいし、150Hz程度の、映像垂直周波数の数倍程度でもよい。また、映像表示装置の表示映像の特性や視聴環境によっては、80Hzの周波数でも良い場合があり、また100Hzでよい場合もある。たとえば画面輝度が250nit程度の映像表示装置では、120Hz程度、つまりNTSCビデオ信号の2倍の周波数でも、人間の目が連続光として認識する場合もある。たとえば画面輝度が500nitの映像表示装置では、120Hzではちらつきを感じる場合もあり、300Hz以上の周波数でなければ連続光として認識しない場合もある。映像表示装置が表示する映像が、静止画が多い場合、わずかな画面の輝度変化が妨害として見えてしまう場合もあり、動画表示が多い場合は、ある程度の画面変動が気にならない場合もある。要は、映像表示装置のシステム構成にあった周波数を適宜選定すればよい。
図36は、画素の点灯応答波形が三角波である場合を示すものである。横軸は時間、縦軸は瞬時発光強度であり、一周期分の発光波形を示している。このような波形の場合も、破線で示す発光応答と等価と見なせる。図36の発光波形を図5で説明したモデルに当てはめた場合、図5の(e)部分の傾斜1,3が直線ではなく曲線を描くものの、傾斜1,3に対する傾斜2は、第1の発光成分と第2の発光成分とのデューティー比Dと発光強度比Sで決まるため、尾引きとフリッカとの両画質妨害を同時に改善することが可能である。
また、図37は、発光の応答が指数関数となる場合を示すものであるが、この場合も図36と同様に、破線で示す発光特性と等価となり、本実施形態の効果が得られる。
このように、第1の発光成分と第2の発光成分との、デューティー比Dと発光強度比Sの関係が、上述の条件Aまたは条件Bのいずれかを満たしていれば、その発光波形はどのようなものであっても構わない。
また、第1の発光成分の瞬時発光強度は、第2の発光成分の瞬時発光強度より大きいが、たとえば全体の画素の輝度に対して無視できる範囲において、第1の発光成分の瞬時発光強度が第2の発光成分の瞬時発光強度より小さくなっても構わない。つまり、発光波形が振動する場合(たとえば図34(a)で示した三角波の場合)、振動のピークの一部において、第1の発光成分の瞬時発光強度が第2の発光成分の瞬時発光強度より小さくなる場合もありえる。なお、図34(a)を図34(b)と等価であると説明したが、図34(a)の発光波形を図34(b)の発光波形に置き換えたときに、第1の発光成分の瞬時発光強度が、第2の発光成分の瞬時発光強度より大きければよい。
なお、上記の説明では、尾引きについて、15%から85%の輝度変化の範囲として定義した。ここで、たとえば映像表示装置の画面輝度が600nitなど明るい場合や、視聴環境が暗い場合においては、図5の(e)部分で説明した傾斜1,3の傾きが比較的大きくなるデューティー比Dと発光強度比Sの条件では、観察者がこの傾斜1,3を視認してしまい、尾引き改善効果が減少してしまう場合がある。そのような場合は、図38に示すデューティー比D、発光強度比Sの条件を満たす範囲で発光応答波形を設定すればよい。
図38は、人間の目が応答する尾引きが、輝度変化が10%から90%の範囲であると仮定した場合の、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られるデューティー比Dと発光強度比Sとを示したものである。
この場合、DとSは、79≦S<100かつ0<D<100かつD<Sである条件A1か、または69<S<79かつD≦(S−69)/0.127である条件B1を満たす。なお、図38において、網点で示す領域が条件A1を満たす領域、斜線で示す領域が条件B1を満たす領域である。
図39(a)〜図39(c)は、図38で示す条件A1または条件B1において、Sを70または80に固定した場合の尾引き量とフリッカ量を示すものである。図39(a)に示すように、S=80の場合はデューティー比Dによらずに、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果がある。また、S=70の場合は、D=10の場合のみ上記効果がある。
図40(a)および図40(b)は、図38の条件B1に示す69<S<79の範囲において、尾引き量とフリッカ量との同時低減効果が得られるデューティー比Dの上限を、尾引きモデルとフリッカ解析によって算出したものである。
デューティー比Dに対する発光強度比Sの特性は、およそS=0.127D+69の直線に近似できる。このデューティー比Dより小さければ上記効果が得られるため、条件B1として、D≦(S−69)/0.127が設定される。
以上のように、第1の発光成分のデューティー比Dと発光強度比Sを、ある条件に設定することで、従来技術のインパルス発光技術に対して、尾引き量とフリッカ量との双方の同時改善効果が得られる。なお、映像表示装置における画面輝度が上がれば、フリッカは知覚されやすくなる(Ferry-Porterの法則)。よって、従来の間欠点灯方式で高輝度にて画像を表示すると、フリッカ妨害が発生しやすくなる。また、人間の目は視細胞の錐体より杆体の方が、つまり視野の中心より周辺の方が明滅に敏感であるため、映像表示装置における表示パネルを大型化すると、フリッカ妨害が認識されやすくなる。したがって、本発明の映像表示装置の表示品位改善方法は、高輝度化、あるいは大画面化された映像表示装置の表示品位を改善するために特に有効である。
また、図29で説明したデューティー比Dと発光強度比Sの条件は尾引き量とフリッカ量を簡易的なモデルに置き換えて計算したものである。映像表示装置の画質は観察者の主観によるところが大きく、また視聴環境にも左右されるため厳密な数値化は困難であるが、本発明者らは求めた条件を基にした主観評価実験において、モデルにより求めた条件と評価結果に大きな差がないことを確認している。
また、図29で説明したデューティー比Dと発光強度比Sの条件は、尾引き量とフリッカ量を簡易的なモデルに置き換えて計算したものであり、そのモデルは、白い物体が動いたときの場合の尾引き量と、白を表示した場合のフリッカ量とを仮定している。通常視聴する映像は100%の白信号はほとんど存在しない。よって、画面輝度500nitの映像表示装置に対して、実際に表示する映像の平均輝度レベルが50%程度であれば、たとえば映像表示装置の画面輝度を等価的に250nit(=500/2)と置き換えて、最適なデューティー比Dと発光強度比Sの値を求めるとよい。その場合、表示する映像のヒストグラム(映像データの分布)等の情報からD、Sの値を決定するようにしてもよい。もしくは、入力映像信号から自動的に輝度のヒストグラムや平均輝度レベルなどの映像特徴量を検出して、画素の発光特性を自動的に切替可能な構成にしてもよい。
さらに、フリッカ量は、第1次高調波である60Hzの成分にて判断している。実際には60Hzの整数倍の高調波成分が発生するが、本発明者らは実験によって、60Hzの成分のみに注目して、これを抑制すればよいことを確認している。たとえば大画面化や高輝度化などの理由で120Hzの高調波も妨害として認識される場合が発生するかもしれないが、その場合も上述したように、発光波形をフーリエ変換し、60Hzと120Hzの両成分の量に注目しながらデューティー比Dと発光強度比Sの条件を求めればよい。
また、本実施形態では映像信号をNTSCで説明したが、たとえばパソコンのビデオ信号を表示する場合にも好適である。たとえば映像表示装置の垂直周波数が75Hzなどである場合は、60Hzに比べれば人間の目の感度が低い分、観察者が感じるフリッカ量は小さくなるが、画面輝度などの条件によっては、やはりフリッカは妨害となって観察される。この場合も、75Hzの成分に注目して、本実施形態のようにデューティー比Dと発光強度比Sの条件を求めればよい。
本実施形態のデューティー比D、発光強度比Sの関係に関し、尾引きを輝度変化の15%、85%のしきい値で定義した場合について、図29を用いて説明した。また、10%、90%のしきい値で定義した場合について、図38を用いて説明した。しかしながら、絶対的なしきい値の値というものは、決して一意には決まらない。それは、映像表示装置の画質が観察者の主観に左右されるからである。または、周囲の照度や視聴距離などの視聴環境でも変化する。さらに、表示する画像が静止画か動画かという点でも変化する。要は、映像表示装置の多種のアプリケーションのなかで、その都度最適値を定めて、本実施形態にて説明した手法で定性的、定量的に評価を行い、最終的に主観評価で詰めを行えばよい。
また、表示画像の平均輝度レベルを検出して、デューティー比D、発光強度比S、第1の発光の発光位相などのパラメータを動的に、または適応的に制御してもよい。この制御は、画像のヒストグラムを基に行っても良い。フレーム間差分などの動き情報を使用してもよい。映像表示装置の周囲の照度を測定する照度センサーなどから照度情報を得て制御してもよい。さらに、それらの時間変動の情報を使用してもよい。表示する映像に含まれる輝度の最大値、最小値を使用してもよい。
画像の動きをベクトルとして検出して、その情報をもとに制御してもよい。視聴者が画面輝度を切り替える機能と連動して、その都度異なるパラメータで制御してもよい。映像表示装置全体の消費電力量を検出して、低消費電力化のためにパラメータを制御してもよい。電源投入からの連続運転時間を検出して、長時間点灯した場合は画面輝度を落とすようなパラメータの制御をしてもよい。
さらに、本実施形態における画素の発光波形は、第1・第2の発光成分という2種類の発光成分により説明したが、特に2種類に限定されるものではない。画素の変調手段によっては、別途第3の発光成分を定義して個別に制御することで、最適な特性が得られる場合もある。第4、第5の発光成分を定義することもあり得る。その場合は、図5で説明したモデルにおいて、図5の(a)部分に、複数分割した発光による波形を設定し、図5の(b)部分に、表示する映像情報を設定し、図5の(c)部分の鉛直方向の輝度変化の情報を算出し、矢印2の方向に積分演算を行えば、該当する尾引きの輝度変化波形が得られる。3種類以上の発光の場合でも、本実施形態のモデルを用いれば解析が可能であり、その解析結果から最適な動作条件を導出することが可能である。
また、画素の発光を行う素子が時間的に有限の応答時間を持つのであれば、その時間応答の情報を図5の(a)部分または(b)部分に投入すればよい。それらは、上述の本実施形態において説明した事項から解析が可能であり、最適な動作条件の導出が可能である。
そしてまた、本実施形態においては、フリッカ量を、フーリエ変換結果におけるDCと1次高調波の比で定義した。ここに、絶対値を導入して、その絶対値ごとに、高調波の比の重み付けを行っても良い。この絶対値とは、例えば映像表示装置の平均画面輝度が該当する。画面輝度が明るければ、許容されるフリッカ量は小さくなる(厳しい条件になる)など、平均画面輝度によって変化する。よって、DCと1次高調波の比を画面輝度の関数として扱えば、さらにフリッカ量の精度が向上する。また、2次高調波まで含めてフリッカ量を定義しても良い。
〔補足〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、本発明に係る映像表示装置は、複数の画素を有する映像表示手段と、上記映像表示手段を照明する発光手段とを備え、上記発光手段により上記映像表示手段を照明し、上記画素において映像信号にしたがって照明光を変調することにより映像信号に基づく画像を表示する映像表示装置において、上記発光手段は、間欠発光成分と持続発光成分とを有する光によって上記映像表示手段を照明する構成であってもよい。
上記の構成では、持続発光成分と間欠発光成分という、特性の異なる発光を混合して、表示パネルを照明することにより、動物体の尾引きを抑えてくっきりした輪郭を表示しながら、合わせてフリッカ妨害の抑制が可能となる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記間欠発光成分の発光位相は、上記画素の変調率を異なる値に更新する更新時間と、上記画素の変調率の変化の時間応答特性とによって定められていてもよい。
上記の構成では、画素の特性によって、間欠発光成分の位相を制御するものである。これにより、画素の特性にあわせてより効果的に動物体の尾引きの抑制と、フリッカ妨害の抑制とが可能となる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記複数の画素はマトリクス状に配置されており、上記映像表示手段は行状に配置した複数の行電極を有し、上記行電極には上記映像表示手段を垂直方向に走査するための走査信号が印加され、上記画素は上記走査信号のタイミングで変調率が異なる値に更新され、上記走査信号のタイミングから上記間欠発光成分の発光期間の中心までの時間をTa、上記走査信号のタイミングから次の走査信号のタイミングまでの周期時間をT0、上記画素の変調率の変化の時間応答特性から定まる定数をKとしたとき、
Ta=(1/2+K)×T0(但し0≦K≦0.5)
の関係を満足するようになっていてもよい。
上記の構成により、間欠発光成分の発光位相を、上記更新時間と、上記時間応答特性とによって定めることができる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記発光手段はブロック状に分割されており、上記ブロック状に分割された上記発光手段の各部は上記映像表示手段の一部のエリアにある画素を照明するようになっていてもよい。また、上記ブロック状に分割された上記発光手段の各部の間で、上記間欠発光成分の発光位相が互いに異なっていてもよい。
映像表示手段の画面の場所によって画素の透過率の更新タイミングが異なる場合、上記の構成では、その更新タイミングの位相差の影響を、間欠発光成分の発光位相をシフトさせることで吸収し、発光位相をより適切な状態に調節することができる。
本発明に係る映像表示装置は、発光手段がブロック状に分割された上記の映像表示装置において、上記複数の画素はマトリクス状に配置されており、上記映像表示手段は行状に配置した複数の行電極を有し、上記行電極には上記映像表示手段を垂直方向に走査するための走査信号が印加され、上記画素は上記走査信号のタイミングで変調率が異なる値に更新され、上記ブロック状に分割された上記発光手段の各部において、上記走査信号のタイミングから上記間欠発光成分の発光期間の中心までの時間をTa、上記走査信号のタイミングから次の走査信号のタイミングまでの周期時間をT0、上記画素の変調率の変化の時間応答特性から定まる定数をKとしたとき、
Ta=(1/2+K)×T0(但し0≦K≦0.5)
の関係を満足するようになっていてもよい。
上記の構成により、間欠発光成分の発光位相を、上記更新時間と、上記時間応答特性とによって定めることができるとともに、発光位相をより適切な状態に調節することができる。
本発明に係る映像表示装置では、上記発光手段は、上記間欠発光成分を成す光を発する第1光源と、上記持続発光成分を成す光を発する第2光源とを有していてもよい。また、上記第1光源と第2光源との少なくとも一方は、半導体発光素子であってもよい。上記半導体発光素子は、発光ダイオードであってもよい。上記第2光源は、放電を利用した蛍光ランプであってもよい。上記映像表示手段は、液晶材料を利用した液晶パネルであってもよい。
あるいは、本発明に係る映像表示装置は、複数の画素を有し、上記各画素において映像信号に基づく発光を行うことにより画像を表示する映像表示装置において、上記の課題を解決するために、上記各画素は、間欠発光成分と持続発光成分とを有する光によって画像を表示する構成であってもよい。
上記の構成では、持続発光成分と間欠発光成分という、特性の異なる発光を混合して、表示パネルを照明することにより、動物体の尾引きを抑えてくっきりした輪郭を表示しながら、合わせてフリッカ妨害の抑制が可能となる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記間欠発光成分の発光位相は、上記画素の発光輝度を異なる値に更新する更新時間と、上記画素の発光輝度の変化の時間応答特性とによって定められていてもよい。
上記の構成では、画素の特性によって、間欠発光成分の位相を制御するものである。これにより、画素の特性にあわせてより効果的に動物体の尾引きの抑制と、フリッカ妨害の抑制とが可能となる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記複数の画素はマトリクス状に配置されており、上記各行の画素には上記複数の画素を垂直方向に走査するための走査信号が印加され、上記画素は上記走査信号のタイミングで発光輝度が異なる値に更新され、上記走査信号のタイミングから上記間欠発光成分の発光期間の中心までの時間をTa、上記走査信号のタイミングから次の走査信号のタイミングまでの周期時間をT0、上記画素の発光輝度の変化の時間応答特性から定まる定数をKとしたとき、
Ta=(1/2+K)×T0(但し0≦K≦0.5)
の関係を満足するようになっていてもよい。
上記の構成により、間欠発光成分の発光位相を、上記更新時間と、上記時間応答特性とによって定めることができる。
本発明に係る映像表示装置は、上記の映像表示装置において、上記複数の画素は単一あるいは複数の行からなるブロックに分割されており、上記各ブロックの間で、上記間欠発光成分の発光位相が互いに異なっていてもよい。
映像表示手段の画面の場所によって画素の透過率の更新タイミングが異なる場合、上記の構成では、その更新タイミングの位相差の影響を、間欠発光成分の発光位相をシフトさせることで吸収し、発光位相をより適切な状態に調節することができる。
本発明に係る映像表示装置は、発光手段がブロック状に分割された上記の映像表示装置において、上記複数の画素はマトリクス状に配置されており、上記各行の画素には上記複数の画素を垂直方向に走査するための走査信号が印加され、上記画素は上記走査信号のタイミングで発光輝度が異なる値に更新され、上記各ブロックにおいて、上記走査信号のタイミングから上記間欠発光成分の発光期間の中心までの時間をTa、上記走査信号のタイミングから次の走査信号のタイミングまでの周期時間をT0、上記画素の発光輝度の変化の時間応答特性から定まる定数をKとしたとき、
Ta=(1/2+K)×T0(但し0≦K≦0.5)
の関係を満足するようになっていてもよい。
上記の構成により、間欠発光成分の発光位相を、上記更新時間と、上記時間応答特性とによって定めることができるとともに、発光位相をより適切な状態に調節することができる。