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JP2005255750A - ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール修飾β−1,3−グルカン系遺伝子キャリアー - Google Patents

ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール修飾β−1,3−グルカン系遺伝子キャリアー Download PDF

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JP2005255750A JP2004066606A JP2004066606A JP2005255750A JP 2005255750 A JP2005255750 A JP 2005255750A JP 2004066606 A JP2004066606 A JP 2004066606A JP 2004066606 A JP2004066606 A JP 2004066606A JP 2005255750 A JP2005255750 A JP 2005255750A
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spg
glucan
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Seiji Shinkai
征治 新海
Masami Mizu
雅美 水
Kazuro Sakurai
和朗 櫻井
Kazuya Komoto
一也 甲元
Takahisa Anada
貴久 穴田
Ryoji Karinaga
亮二 狩長
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Abstract

【課題】 標的細胞へのトランスフェクション能が高く、細胞毒性が低くて生体に安全な、アンチセンスDNAなどに用いられる遺伝子キャリアーを提供する。
【解決手段】 β−1,3−グルカン(好ましくは、シゾフィラン、レンチナンまたはスクレログルカンなどの天然多糖)の側鎖をポリエチレングリコール鎖またはポリプロピレングリコール鎖で修飾することにより得られる多糖系遺伝子キャリアーによる。該キャリアーを目的のアンチセンスDNAなどの被導入遺伝子と複合体化した後、標的細胞に投与する。例えば、ヒト由来黒色腫瘍細胞A375の増殖抑制効果に優れている。
【選択図】 図8

Description

本発明は、トランスフェクション能が高く、かつ生体に安全な、多糖系の新規な遺伝子キャリアーに関する。
近年、遺伝子工学の進歩に対応して、アンチセンス療法が盛んに研究されており、アンチセンス医薬に関する文献・特許が多数報告されつつある。既に開発段階に入っている医薬品の候補として、各種の癌や白血病、エイズや肝炎などのウイルス性疾患、乾癬、クローン病、喘息、リウマチなど多岐に及んでいる。
アンチセンス療法で使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、mRNAまたはmRNA前駆体等の標的核酸に見いだされる特異的な配列に対し相補的な配列を有するように設計されている。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドを医薬として使用する場合、配列特異性の他にヌクレアーゼに耐性があること;無毒性で、製造コストが安価であること、標的組織や細胞へ送達できるような適当な薬物動態を有すること;細胞膜、小胞オルガネラ膜、核膜を通過できること;高い特異性と親和性をもって高次構造を有するRNA分子の標的領域へ侵入すること;そして、標的蛋白質の翻訳過程を最大限、阻止できるようにすることなど多くの課題がある。
それらの課題の中で、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内への導入効率を上げることは重要な問題であり、一般に、その解決のために遺伝子キャリアーが併用されている。当初、レトロウイルスまたはアデノウイルスが、遺伝子キャリアーとしてin vitroでは極めて見込みのある結果を与えたが、これら天然由来のウイルスの炎症性、免疫原的性質、ならびに突然変異誘発および細胞ゲノム中への組み込みの危険性が原因として、これらのin vivoにおける使用は制限されている。
Mulligan, Science, 260,926-932(1993) Miller, Nature, 357,455-460(1992) Crystal, Science, 270,404-410(1995)
近年、非ウイルス性の人工キャリアーとしてポリエチレンイミン(PEI)、PEIと同様に窒素の置換基で修飾された、種々のカチオン性ポリマー、カチオン性脂質などが遺伝子キャリー、トランスフェクション剤、薬物担体などという名称で、多数の特許が出願されている。
しかしながら、PEIのようにアミノ基を多数有する物質は生理活性が高く、体内毒性等の危険性も考えられる。事実、今まで検討されたカチオン性ポリマーは未だ実用に供されておらず、医薬品添加物辞典等に記載されていない。
医薬品添加物辞典 日本医薬品添加剤協会縄集、薬事日報社
他方、筋肉内注射製剤の臨床薬として実際に使用されている多糖類に、β−1,3−グルカンが存在する。この多糖は天然では3重螺旋構造をとっていることが古くから知られている。
Theresa M. McIntire andDavid A. Brant, J. Am. Chem. Soc., 120,6909(1998)
さらに、この多糖は、既に生体内での安全性が確認されており、筋肉内注射薬として約20年の使用実績がある。
清水、陳、荷見、増淵、Biotherapy, 4, 1390(1990) 長谷川、Oncology and Chemotherapy, 8, 225(1992)
このようなβ−1,3−グルカンを化学修飾して、DNA等の生体材料とのコンジュゲイトを作成し、これを遺伝子キャリアーに使用できることが知られている。この先行技術には、天然のβ−1,3−グルカン、すなわち、3重螺旋構造を有するβ−1,3−グルカンをそのまま使用し、これと生化学活性のある材料を、共有結合を介して、β−1,3−グルカン/生体材料のコンジュゲイトを製造する方法が述ベられている。
PCT/US95/14800
また、最近、本発明者らにより、β−1,3−グルカンまたはβ−1,3−キシラン系の多糖類が、人工的に処理されることで、各種の核酸と新しいタイブの複合体を形成することが見出された。
PCT/ JP00/07875 櫻井、新海、J. Am. Chem. Soc., 122, 4520(2000) 木村、甲元、櫻井、新海、Chem. Lett., 1242(2000)
もともと天然もしくは水中で3重螺旋として存在するこの多糖を、非プロトン性極性溶媒に溶解して1本鎖にした後、1本鎖の核酸を加え、溶媒を水に戻すこと(再生過程)によって、核酸1本・多糖2本からなる、3重螺旋型の複合体が形成されるのである。このような多糖と遺伝子の複合体は、主に、水素結合を介して形成されると考えられる。
櫻井和朗、井口律子、木村太郎、甲元一也、水雅美、新海征治、Polym.Preprints Jpn.,49, 4054(2000)
天然の多糖類を使用した場合の核酸との複合体における結合エネルギーは、場合によってはさほど強くなく、比較的容易に複合体が解離する。また、予め多糖類にアミノ基のようなカチオン性官能基を導入して核酸との複合体の安定性をより強くする方法も研究されている。そして、これらの多糖類と核酸の3重螺旋型複合体は、細胞膜の透過性およびヌクレアーゼ耐性があり、遺伝子キャリアーとして使える可能性が高いことが本発明者らによって明らかにされている。
PCT/ JP02/02228
さらに、細胞内へのトランスフェクション効率を高める手段として、最近は、標的細胞への特異的な親和性を活用する方法の研究が盛んである。例えば、細胞の表面に存在する接着蛋白であるインテグリンとの結合に有効なRGD配列を含むペプチドを、既知のキャリアーに導入することによって、遺伝子のトランスフェクション効果を上げる試みが、特許に例示されている。
特表2002-502243 特願2003-52508
同様に、標的化の対象として細胞の表面に存在する糖レセプターを活用するトランスフェクションの方法も研究されている。例えば、肝細胞に代表されるガラクトース受容体をもつ細胞に対して、特異的に親和性を有するガラクトースまたはガラクトースを構成成分として含むラクトースで修飾された脂質、ペプチド、ポリエチレングリコール等の高分子物質が、肝臓癌のアンチセンスDNA治療薬のキャリアーとして特許出願されている。
特開平9-235292 特開平11-290073 特表2002-515418 特表2002-538174
しかるに、上記で例示された、高分子系キャリアーのベースとなっているβ−1,3−グルカン系多糖とポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとを共有結合によってリンクさせた物質を、アンチセンスDNAの遺伝子キャリアーとして用いる技術は知られていない。
本発明の目的は、細胞を認識する糖レセプターを活用し、標的細胞へのトランスフェクション能が高く、かつ生体に安全な、新規の遺伝子キャリアーを提供することにある。
本発明は、β−1,3−グルカン系多糖の側鎖に、ポリエチレングリコール鎖またはポリプロピレングリコール鎖を導入し、これを遺伝子キャリアーとして使用するものである。
本発明のポリエチレングリコール鎖またはポリプロピレングリコール鎖を側鎖に有するβ−1,3−グルカン系遺伝子キャリアーは、目的の遺伝子をコードするDNAと複合体化して投与されることにより、当該遺伝子を細胞に効率的に導入することができるので、例えば、アンチセンス療法において治療効果を向上させるのに寄与する。
本発明で、まず基体となるβ−1,3−グルカンについては、特に限定する必要はないが、側鎖のグルコースを利用することにより、側鎖に選択的にポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)鎖またはポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)鎖を導入するためには、側鎖がグルコースで適当に置換されたβ−1,3−グルカンを用いると好都合である。すなわち、そのような目的にかなうものとして、シゾフィラン、レンチナンおよびスクレログルカンなどの天然の多糖を挙げることができる。
一方、側鎖に導入されるPEG鎖またはPPG鎖の反応原料としては、通常の医薬向け原料として使用され、適当な大きさの分子量分布をもつPEGまたはPPGの残基で、かつ末端がアミノ基などで官能基化したものが適宜選択される。機能と価格面からはPEGの方がより好適であり、以下、主としてPEG鎖に沿って記述する。PEG残基の分子量としては、特に限定されるものではないが、細胞膜の融合能を持つ分子量が400以上、好ましくは600以上、さらに好ましくは1000以上であって1万以下のものを使用することができる。
Nakajima、Ikeda、Polymer J., 27, 211-219(1995)
β−1,3−グルカンの側鎖に、PEG鎖を導入する方法としては、種々の反応が考えられるが、主鎖のグルコシド結合に影響を与えることなしに、側鎖に選択的に導入する方法として、基体の多糖が本来的に有している側鎖のグルコースを利用し、過ヨウ素酸酸化/還元アミノ化を経由する方法が適当である。例えば、まず、側鎖のグルコースを過ヨウ素酸ナトリウムなどを用いて酸化し、開環してアルデヒドをつくる。それに導入するPEGの末端がアミ化された誘導体を反応させ、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いて還元アミノ化することにより、PEG含有側鎖を導入できる(実施例2、図1参照)。また、過ヨウ素酸酸化後に、アンモニア水とシアノ水素化ホウ素ナトリウムを先に反応させ、末端がラクトン化されたPEG誘導体を後で反応させることにより、同様にPEGを含む修飾基を導入することができる。さらに、過ヨウ素酸酸化後、亜塩素酸ナトリウムでアルデヒドをカルボン酸に酸化し、アジ化ジフェニルホスホリルを用いてPEGのアミン誘導体とカルボン酸の縮合反応を行う方法でも、同様に目的物を得ることができる。
β−1,3−グルカンの側鎖へのPEG鎖の導入率に関しては、特に限定されるものではないが、側鎖のグルコース残基/主鎖のグルコース残基の比が約0.3のβ−1,3−グルカンであるシゾフィランを原料として用いる場合、側鎖のグルコース残基の60%程度までをPEG鎖で置換したものを製造することが可能である。この置換率の制御は、過ヨウ素酸酸化を行う際の過ヨウ素酸塩の使用量を規制することによって、要求する値に制御することが可能である(実施例2および図2参照)。アンチセンス核酸のキャリアーとしてPEG修飾多糖を用いる場合、PEG置換率を約10%まで上げたときに黒色腫瘍細胞や肺癌細胞の増殖が顕著に抑制される傾向があるが、約30%を超えるとかえって抑制率が下がる傾向も見られ(図6〜図8)、適用する系によってPEG置換率の最適な範囲があるものと考えられる。
側鎖に細胞を認識する糖鎖を導入した多糖から成る本発明の遺伝子キャリアーを使用する際は、既述の本発明者らにより見出された方法に従い(特許文献2および3)、該多糖を非プロトン性極性溶媒(例えばジメチルスルホキシド)に溶解して1本鎖にした後、水性溶媒中で1本鎖の核酸を加えることによって核酸1本鎖・多糖2本鎖から成る3重螺旋状の複合体を形成させ、投与することにより、優れたトラクション効率で目的の遺伝子の細胞への導入を図ることができる。かくして、本発明は、如上の多糖系遺伝子キャリアーを使用する方法の発明として、該多糖系遺伝子キャリアーを用いて細胞に遺伝子を導入する方法であって、夫々1本鎖の状態にある多糖系キャリアーと目的の遺伝子を含む核酸とを水の存在下で混合し、多糖系キャリアー2本鎖および核酸1本鎖から成る3重螺旋状の複合体を形成させて投与することを特徴とする方法を提供する。このような本発明の方法によりアンチセンスDNAが導入されるのに好適な細胞として、黒色腫細胞または肺癌細胞が挙げられる(以下の実施例参照)。
β−1,3−グルカン(シゾフィラン)の調製 3重螺旋構造のシゾフィランを文献記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American
Type Culture Collection)から入手したSchizophyllum commune. Fries(ATCC 44200)を、最小培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万の3重螺旋シゾフィランを得た。
Gregory G. Martin, Michael F.Richardson, Gordon C. Cannon and Charles L. McCormick, Am. Chem. Soc. PolymerPrepr. 38(1), 253-254(1997) Kengo Tabata, Wataru Ito, TakemasaKojima, Shozo Kawabata and AkiraMisaki, Carbohydrate Research, 89, 121-135(1981)
PEG修飾シゾフィランの合成 PEG修飾シゾフィランの合成は図1のスキームに従って合成した。シゾフィラン側鎖を過ヨウ素酸酸化し、生成したアルデヒドとアミン末端を持つPEGとの還元アミノ化反応によるPEGの導入法を示しているが、側鎖へ選択的にPEGを導入できれば合成法は特に制限されない。実施例1にて調製されたシゾフィラン100mgを蒸留水100mlに溶解させた。過ヨウ素酸ナトリウム3.3mg(側鎖グルコース残基に対して0.1当量)を少量の蒸留水に溶解させ、4℃で冷却攪拌しながら、先に調製したシゾフィラン溶液へゆっくりと加えた。2日後、反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析した。得られた溶液にアミノ末端を持つPEG(Mw:5,000)100mgを加え、溶解させ、室温で一晩攪拌した。反応溶液にシアノ水素化ホウ素ナトリウム100mgを加え、室温で1週間攪拌を続けた。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析し、凍結乾燥した。得られた白色固体を0.1N水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム100mgを加え、一晩室温で攪拌した。反応溶液を透析膜(排除限界12000)で透析し、凍結乾燥することでPEG修飾シゾフィランを得た。なお、PEGのシゾフィランへの導入率は添加する過ヨウ素酸ナトリウムの当量数で制御することが可能であり(図2参照)、側鎖グルコース残基に対して1.0当量、5.0当量のものについても同様に合成を行った。
PEG修飾シゾフィランのキャラクタリゼーション 実施例2にて得られたPEG修飾シゾフィランのPEGの導入率は元素分析における窒素含有率から算出され、表1に示す結果を得た。なお、PEG(10)、PEG(100)およびPEG(500)とは、過ヨウ素酸酸化に際して、上記のように、側鎖グルコース残基に対して、それぞれ、0.1当量(10%当量)、1.0当量(100%当量)および5.0当量(500%当量)の過ヨウ素酸ナトリウムを用いてPEG修飾したものであることを示す。
Figure 2005255750
PEG(10)-SPG、PEG(100)-SPG、PEG(500)-SPGとアンチセンスオリゴヌクレオチド(DNA)との複合体化遺伝子治療剤の調製 実施例2で合成され、実施例3にてキャラクタリゼーションされたPEG(10)-SPG、PEG(100)-SPGおよびPEG(500)-SPGの DMSO溶液を1μl、純水3μl、10mMのトリス緩衝液(pH7.8)1μlと、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(1mg/ml)5μlを混合した。得られた溶液はすべて透明で、均一であった。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、癌原遺伝子として報告されているc-myb遺伝子のセンス配列に相補的なホスホジエステル結合、または、ホスホロチオエート結合を持つアンチセンス配列”5’-GTG CCG GGG TCT TCG GGC-3’“(配列番号1)を適用した。実際に使用したアンチセンスオリゴヌクレオチド(固相合成品)は、3‘末端に40のdAをつけたシークエンスのc-mybホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド(以下AS-c-mybと表記)およびc-mybホスホジエステルアンチセンスオリゴヌクレオチド(以下PO-c-mybと表記)とした。
Barbara Majello et al., Proc. Natl.Acad. Sci., 83, 9636(1986) Alan M. Gewirtz and Bruno Calabretta,Science, 242, 1303(1988)]
PEG-SPGとアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとの複合体形成の円偏向二色性分散計による確認 PEG-SPGとアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとの複合体の形成を確認するために、既存の手法を用いて円偏向二色性スペクトル測定により複合体の融解温度を測定した。測定サンプルは、純水632.5μl、10mMのTris緩衝溶液(pH7.8)1μlと、アンチセンスオリゴヌクレオチド溶液(1mg/ml)2.5μlを調整し、DMSO 50μlおよび2mg/mlの濃度に調整したPEG(10)-SPGのDMSO溶液50μlを混合した。溶液は透明で、均一であった。4℃で3日間熟成した溶液の円偏向二色性スペクトルを測定した。ここでは、一例として、PEG(10)-SPGとヒトc-mybホスホロチオエート型アンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(AS-c-myb)との熱融解曲線を図3に例示した。図3より融解温度は50℃であり、生体温度においては安定な複合体を形成していることが示された。また、PEG(100)-SPG、PEG(500)-SPGとAS-c-myb、S-c-myb、PO-c-mybについても同様の結果を与えた。
K. Sakurai, S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc., 122,4520 (2000)
PEG-SPGと核酸の複合体の化学量論比の測定 PEG-SPGとアンチセンス鎖核酸がいかなる構造を形成しているか確認するためにモル比プロットの測定を行った。シゾフィランと核酸が多糖鎖2本と核酸鎖1本からなる三重螺旋構造を形成した場合には、シゾフィランの繰り返し単位である4グルコース残基を1モル、核酸のモノマー残基を1モルと定義した場合にシゾフィラン2モルと核酸3モルに対応したモル比に屈曲点が現れることが報告されている。この時の屈曲点における三重螺旋形成は、水溶液中における複合体の小角X線散乱測定ならびに複合体固体繊維の伸長後の広角X線散乱測定の結果から明らかとされている。ここでは、ポリシチジル酸とSPG、PEG(10)-SPGのモル比を増加させた結果を図4に例示した。図中においてMpoly(C)はポリシチジル酸のモノマー残基のモル数を、MSPGはシゾフィランの繰り返し単位である4グルコース残基のモル数を、MPEG(10)-SPGはPEG鎖が3.5%導入された場合の4グルコース残基の分子量を見積もり算出したモル数を示す(MPEG(100)-SPGおよびMPEG(500)-SPGについても同様)。図4に示したように、ポリエチレングリコール鎖の導入後も未修飾のシゾフィランと同じモル比に屈曲点が現れた。非特異的な結合からなる複合体では明瞭な屈曲点を与えないことから、本発明に従うポリエチレングリコール修飾シゾフィランも未修飾シゾフィランと同様の三重螺旋構造を形成していることが明らかとなった。
K.Sakurai, M.Mizu,S.Shinkai, Biomacromolecules, 2, 641-650 (2001) K.Sakurai, S.Shinkai,J.Inclusion Phnomena Macrocyclic Chem., 41, 173-178 (2001))。
PEG-SPGのヒト由来黒色腫瘍細胞A375に対する細胞毒性 PEG-SPGの細胞毒性評価には、Cytotoxic Fluore-text Wako(登録商標)を用いたFACLS法(Fluorometric Assay based on Cell Lysis & Staining method)により評価した。本手法では、ネクローシス由来の死細胞数を数えることができるため、細胞毒性を精度良く確認することができる。96穴プレートに100μlの10%仔牛胎児血清および1mM非必須アミノ酸を含むDMEM培地(日水製薬)に懸濁した2×103個のA375(ATCCより入手)を播種した。一晩、CO2インキュベーター内で37℃、5%CO下で培養を行った後に、PEG-SPGを限外ろ過膜(排除限界3000:ミリポア)でろ過してDMSOを除去し濃度を再調整したものを添加し、37℃、5%CO下で48時間培養後、Cytotoxic Fluore-text Wako(和光純薬)を利用し、付属のプロトコールに従って、死細胞数および全細胞数を測定した。得られた結果を細胞生存率に換算し、図5に示した。図5のように、200μg/ml以下の投与量では全く細胞毒性は見られず、400μg/ml以上の高濃度範囲でPEG(100)-SPG、PEG(500)-SPGで20%以下の細胞毒性が観察されたが、実際の実験で使用する範囲内では特に細胞毒性は観察されなかった。
FACLS法: Kato, F., Tanaka, M.,Nakamura, K., Toxicol. In Vitro, 13, 923 (1999)
PEG-SPGと複合体を形成させた、ヒトc-mybホスホロチオエートのアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(AS-c-myb)によるヒト由来黒色腫瘍細胞A375の増殖抑制 96穴プレートに100μlの10%仔牛胎児血清および1mM非必須アミノ酸を含むDMEM培地(日水製薬)に懸濁した2×103個のA375(ATCCより入手)を播種した。一晩、CO2インキュベーター内で37℃、5%CO下で培養を行った後に、AS-c-mybおよび実施例5で調製したAS-c-mybとPEG-SPGとの複合体を限外ろ過膜(排除限界3000:ミリポア)でろ過してDMSOを除去し濃度を再調整したものを添加し、37℃、5%CO下で96時間培養後、細胞数をCell Counting Kit-8(同仁化学研究所)を利用し、付属のプロトコールに従って測定した。AS-c-myb無添加の穴の細胞数を生存率100%として細胞増殖を評価した。その結果を図6に示した。図6のように、AS-c-myb単独投与よりもAS-c-mybとPEG-SPGの複合体である本発明に従う遺伝子治療剤の方が、25μg/mlの投与に対して12から54%細胞の生存率が低下している。さらに50μg/mlの投与に対しては70から81%の細胞の生存率が低下するに至っている。また、この効果はPEG(100)-SPGの投与区で特に顕著に現れた。このアンチセンス効果はヒト由来黒色腫瘍細胞C32でも確認された。
PEG-SPGと複合体を形成させた、ヒトc-mybホスホロチオエートのアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(AS-c-myb)によるヒト由来肺癌細胞A549の増殖抑制 実施例8で見られたヒト由来黒色腫瘍細胞の増殖抑制効果を、ヒト由来肺癌細胞A549でも同様に測定した。この結果を図7に示した。この図7から、AS-c-myb単独投与区よりもPEG-SPGとの複合体投与区で細胞生存率の低下が確認された。
PEG-SPGと複合体を形成させた、ヒトc-mybホスホジエステルのアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(PO-c-myb)によるヒト由来黒色腫瘍細胞A375の増殖抑制 実施例8で見られたAS-c-mybの効果を、ホスホロチオエート結合をホスホジエステル結合に変えたPO-c-mybでも確認した。評価は実施例8の方法と同様に行った。この結果を図8に示した。図8のように、ホスホロチオエート型アンチセンス鎖オリゴヌクレオチドと比較して毒性はないが、ヌクレアーゼによる分解を顕著に受けることが知られるホスホジエステル型アンチセンス鎖オリゴヌクレオチドを用いても実施例8と同様の投与量で効果は幾分低下するものの十分な細胞の増殖抑制効果を示した。すなわち、本発明に従う遺伝子治療剤はホスホロチオエート、および、ホスホジエステル型アンチセンス鎖オリゴヌクレオチドの双方のキャリアーとして有効に機能することが示された。
本発明のPEG修飾多糖系の遺伝子キャリアーは、黒色腫瘍細胞に対する標的指向性が高く、病原性細胞の増殖抑制効果に優れた、かつ生体に安全な遺伝子キャリアーとして遺伝子治療の分野で利用され得るものである。
PEG修飾シゾフィランの合成スキームを示す(実施例2)。 側鎖グルコース残基に対して添加した過ヨウ素酸ナトリウムの当量数とPEGの導入率の関係を示す(実施例2)。 PEG(10)-SPGとAS-c-mybとの複合体の円二色性偏向スペクトル測定から得られた熱融解曲線を示す(実施例5)。 ポリシチジル酸に対するSPGまたはPEG(10)-SPGのモル比を変化させた場合に見られる275nmにおけるCD強度の変化を示す(実施例6)。 PEG(10)-SPG、PEG(100)-SPGおよびPEG(500)-SPGのヒト由来黒色腫瘍細胞A375に対する細胞毒性の結果を示す(実施例7)。 PEG(10)-SPG、PEG(100)-SPGおよびPEG(500)-SPGとヒトc-mybホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS-c-myb)との複合体使用によるヒト由来黒色腫瘍細胞A375の増殖抑制試験の結果を示す(実施例8)。 PEG-SPGと複合体を形成させた、ヒトc-mybホスホロチオエートのアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(AS-c-myb)によるヒト由来肺癌細胞A549の増殖抑制の結果を示す(実施例10)。 PEG(10)-SPG、PEG(100)-SPGおよびPEG(500)-SPGとヒトc-mybホスホロジエステルアンチセンスオリゴヌクレオチド(PO-c-myb)との複合体使用によるヒト由来黒色腫瘍細胞A375の増殖抑制試験の結果を示す(実施例10)。

Claims (4)

  1. β−1,3−グルカンの側鎖にポリエチレングリコール鎖またはポリプロピレングリコール鎖を結合させた多糖系遺伝子キャリアー。
  2. β−1,3−グルカンが、シゾフィラン、レンチナンまたはスクレログルカンから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の多糖系遺伝子キャリアーの製造法。
  3. 請求項1に記載のキャリアーを用いて細胞に遺伝子を導入する方法であって、夫々非プロトン性極性溶剤に溶かした前記キャリアーと目的の遺伝子を含む核酸とを水の存在下で混合し、該キャリアーおよび核酸から成る複合体を形成させて投与することを特徴とする請求項1に記載の多糖系遺伝子キャリアーの使用方法。
  4. 導入する遺伝子がアンチセンスDNAであり、導入対象となる細胞が黒色腫瘍細胞または肺癌細胞であることを特徴とする請求項3に記載の多糖系遺伝子キャリアーの使用方法。
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