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JP2005126732A - 金属酸化物含有物質の溶融還元方法および溶融還元装置 - Google Patents

金属酸化物含有物質の溶融還元方法および溶融還元装置 Download PDF

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JP2005126732A JP2003360105A JP2003360105A JP2005126732A JP 2005126732 A JP2005126732 A JP 2005126732A JP 2003360105 A JP2003360105 A JP 2003360105A JP 2003360105 A JP2003360105 A JP 2003360105A JP 2005126732 A JP2005126732 A JP 2005126732A
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Michitake Fujiwara
道丈 藤原
Shigeru Morishita
茂 森下
Koji Sano
幸治 佐野
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

【課題】ロータリーキルン内におけるダムリングの生成を防止しつつ、金属酸化物含有物質から高還元率で有用金属を還元回収できる溶融還元方法およびその装置を提供する。
【解決手段】炉長と炉内径の比が5以下のロータリーキルンの上流開口端から金属酸化物含有物質を装入するとともに、上流開口端から加熱用バーナーにより燃焼火炎を放射し、金属酸化物含有物質を下流開口端に向けて移動させつつ溶融還元する方法であって、原料のスラグ塩基度を0.8〜1.4に調整し、平均粒子径が0.02〜5mmで、かつ金属酸化物含有物質の還元当量の1.5〜4倍の還元剤を装入し、キルン炉内処理物温度を1250〜1450℃に調整することにより、溶融スラグおよびメタルを得る金属酸化物含有物質の溶融還元方法および溶融還元装置である。キルン下流開口端に水平から10〜45度下向きに加熱バーナーにより炉内を加熱することが好ましい。
【選択図】 図2

Description

本発明は、製鉄ダストなどの酸化鉄含有物質の溶融還元方法およびそれに用いるロータリーキルンに関する。特に、ロータリーキルン内でのダムリングの成長を防止しつつ、金属酸化物含有物質から高い還元率で有用金属を還元回収することができる溶融還元方法およびそれに用いる二層以上の炉内耐火物ライニングを有するロータリーキルンに関する。
製鉄ダストおよびスラッジなどの酸化鉄含有物質は、埋立て処分地の逼迫とともに、その再資源化の推進が望まれてきた。製鉄ダストおよびスラッジなどの酸化鉄含有物質を直接に高炉に装入したり、または焼結処理を行った後に高炉に装入すると、それらに含有される亜鉛などの低沸点物質が下記のように高炉内で循環・蓄積され、高炉での装入物の降下不順や耐火物の損傷を惹起する。
すなわち、高炉内に装入された低沸点物質は、装入物とともに炉下部に降下し、炉下部高温域で揮発して高炉上部に再度上昇し、高炉上部の低温域で凝縮する。高炉炉頂部から装入される装入物に凝縮・付着した低沸点物質は、装入物とともに再度炉下部に降下し、このような過程を繰り返して低沸点物質は炉内に蓄積される。上述のように炉内に蓄積された低沸点物質は、高炉内における荷下がり異常や炉体耐火物の脆弱化を引き起こし、高炉の安定操業を阻害することから、低沸点物質の高炉への装入量は一定量以下に管理されている。
また、これらに対処するため、低沸点物質を含有する製鉄所内発生ダストなどについて、様々な処理技術が開発されている。図1は、従来の廃棄物処理用ロータリーキルンの縦断側面を示す概略図である。ロータリーキルン1は、長さL、直径Dの中空円筒形をしており、その内側表面は内張り耐火物2によって被覆され、高温に耐えられるように構成されている。ロータリーキルンは、その下流開口端3が上流開口端4よりもわずかに低くなるように、通常は水平面に対して0.1〜5度程度傾斜させて、ほぼ水平に配置されている。上流開口端4のフロント側の壁を貫通して、加熱用バーナー5がロータリーキルン1の中に挿入され、バーナーの先端からは燃焼ガス(火炎)6がロータリーキルンの下流開口端に向けて放射される。
ホッパー内の処理物(以下、「原料」ともいう)7は、装入フィーダー81により切り出されて原料装入シュート8からロータリーキルン1内に装入され、バーナーの燃焼ガス6と処理物自身の含有する還元剤または添加装入された還元剤の燃焼熱によって高温に加熱され、乾燥→燃焼→還元→溶融と処理され、溶融物9は、下流開口端から排出される。このロータリーキルンは、処理物を高温に加熱して溶融するために、通常は長さを10〜20m(L/D<5)と短くし、加熱用バーナー5により発生する高温ガス流の方向(同図中の矢印Gで示す方向)と処理物の流れる方向(同図中の矢印Sで示す方向)を同じとした「並行流方式」のものがよく用いられている。この炉寸法および形状の場合、燃焼ガスによる熱がロータリーキルンのほぼ全長に行き渡り、処理物の燃焼、溶融の制御を比較的容易に行うことができる。
しかし、実際には、完全に溶融していないスラグ、あるいは浸炭が不十分で高融点のメタルがロータリーキルンの内壁に部分的に付着し堆積する「ダムリング」10が発生することがある。また、下流開口端3付近では、一旦溶融した処理物が冷却され、流動性が低下するため付着し、この付着物が成長して堆積し、いわゆる「ダムリング」10が生じることがある。この場合には、溶融物の排出が妨げられるだけではなく、ダムリングが崩れたときには、それまで排出が妨げられて滞留していた溶銑などが、一気に出側開口端から流出するため、出側開口端下方に設置された溶銑およびスラグ冷却用水槽中に大量に落下し、水蒸気爆発を引き起こす可能性が高く、極めて危険である。そのため、ダムリングが形成された場合に、これを放置したままロータリーキルンの操業を続行することはできない。
したがって、ダムリングが形成された場合には、これを除去する作業が必要となる。すなわち、一旦、ロータリーキルンの操業を停止して放冷し、作業可能な温度まで冷却した後に、溶断手段や、ドリル、ハンマー、ユンボなどの機械的手段によりダムリングを除去している。
上述の問題を解決するための方法として、下記の種々の方法が開示されている。特許文献1には、長さLと内径Dの比が5以下のロータリーキルン内の上流側にて、被処理物を還元雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元するとともに溶融する工程と、キルン内の下流側にて、溶融物から有価金属を回収する工程を有する製鉄所発生廃棄物などの再資源化方法が開示されている。
しかしながら、処理物であるダストの塩基度(CaO/SiO2)は、特に製鋼工程で発生したダストの場合には1.8以上であり、石炭などの還元剤を混合しても1.5を超えるため、メタルは溶融するものの、還元スラグの融点は1500℃程度と高い。そのため、1200℃前後の操業温度では、スラグは固体のままであり、バーナーからの高い輻射熱を受ける部分だけが、半溶融状態となって、ロータリーキルンの内壁に付着し、ダムリングを形成するという問題があった。また、キルンの下流開口端においても、温度が低下するため、メタルによるダムリングが生成し、安定操業を行うことは困難であった。
特許文献2には、棒状の水冷スクレーパーをロータリーキルンの下流開口端面に近設して、ロータリーキルンの下流開口端面に付着する付着物をスクレーパーによってそぎ落とす付着物の除去方法が開示されている。しかし、ロータリーキルンの下流開口端背面の付着物を除去する効果は大きいものの、炉内のバーナーからの輻射熱によりスラグの半溶融物によるダムリングが形成される部分においては、ダムリングの抑制効果がない。また、ロータリーキルン下流開口端におけるキルン内面のダムリングについても、除去効果が見られないことから、ダムリングの根本的な解決策とはなっていない。
また、特許文献3には、火炎を放射するバーナーの先端位置をロータリーキルンの回転軸方向へロータリーキルンの全長の20%の距離まで移動可能としたロータリーキルンが開示されている。しかしながら、バーナーの輻射熱が作用する位置が移動するだけであることから、ダムリングの位置が移動するだけとなり、ダムリングの根本的な解決策とはなっていない。
そして、特許文献4には、溶融スラグと溶融メタルの分離を促進させることを目的として、スラグの粘度調整のためにスラグの塩基度を0.35〜1.35に調整する方法が開示されている。しかし、特許文献4に開示された方法は、本発明の目的とする「炉内付着物の抑制」とは課題が異なる上、塩基度が0.35〜0.8の範囲内では、実際には、還元反応がほとんど進行せず、メタルの回収率が極度に低いという問題がある。また、順調な溶融還元操業を行うためには、スラグの粘度の調整だけでは不十分である。
上述のとおり、ロータリーキルン内におけるダムリング生成の問題を抜本的に解消し、金属酸化物含有物質の順調な溶融還元を進行させるためには、なお幾多の改善すべき問題が残されている。
特開平9−222217号公報(特許請求の範囲および段落〔0019〕〜〔0022〕)
特開2001−280850号公報(特許請求の範囲および段落〔0005〕〜〔0006〕) 特開2001−255072号公報(特許請求の範囲および段落〔0009〕) 特開2001−99573号公報(特許請求の範囲および段落〔0004〕)
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ロータリーキルン内におけるダムリングの生成および成長を防止しつつ、金属酸化物含有物質から高い還元率で有用金属を還元回収することができる溶融還元方法を提供することを目的とする。また、他の目的は、前記溶融還元方法の実施に適した溶融還元装置、すなわち炉体熱損失が少なく且つ内張り耐火物の酸化溶損も少ない金属酸化物含有物質の溶融還元装置を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するために、前記した従来の問題点を踏まえて、ロータリーキルン内におけるダムリングの生成原因およびその生成防止方法、ならびに溶融還元の実施に適した溶融還元装置について種々の試験および検討を行い、下記の(a)〜(g)の知見を得て本発明を完成させた。
(a)原料のスラグ塩基度(CaO/SiO2)を0.8〜1.5に、望ましくは1.0〜1.5に調整し、ロータリーキルンの長手方向中央部から下流開口端までの範囲の炉内処理物温度を1250〜1450℃に制御することにより、生成したスラグおよびメタルを完全に溶融させることができる。スラグおよびメタルをともに完全に溶融させることができれば、ダムリング(炉内付着物)の生成を防止できる。
(b)前記(a)の原料のスラグ塩基度の調整は下記の方法により行うことができる。すなわち、塩基度を低下させる場合には、珪砂、鋳物砂などのSiO2含有物質を添加し、塩基度を上昇させる場合には、石灰石、生石灰、高塩基度製鋼スラグなどのCaO含有物質を添加する。
(c)溶融還元により高い還元率を得るためには、平均粒子径が0.02〜5mmの還元剤を金属酸化物含有物質の還元当量の1.5〜4倍(以下、「1.5〜4当量」ともいう)の量だけ装入するのが適切である。また、還元剤の装入方法としては、還元剤を原料中に均一に分散添加して塊成化処理する(以下、「還元剤内装」とも記す)か、または塊成化処理した原料粒子または粒状物の表面を還元剤により被覆する(以下、「還元剤外装」とも記す)ことにより、炉内に装入することが好ましい。
(d)上記(a)を達成するための炉体の断熱性の向上対策として、ロータリーキルンの内張り耐火物を、鉄皮側のパーマネント耐火物層および炉内側のウェア耐火物層を含む少なくとも2層以上からなる構成とし、前記パーマネント耐火物層は、熱伝導率が1.5W/m/℃以下で厚さが50mm以上の定型耐火物または不定形耐火物とすることが有効である。
これに対して、耐火物の熱伝導率が高い場合には、耐火物表面温度が低下して、耐火物内面に溶融物によるほぼ均一なコーティング層が生成する。このコーティング層は、一定厚さ以上の厚みを保持している間は問題がないが、厚みが薄くなると、炉内の熱により軟化し、一挙に剥離するのでロータリーキルンの操業の継続が困難となる。
(e)上記(d)のようにロータリーキルンの断熱性を高めて耐火物の炉内表面温度を上昇させると、スラグなどによるコーティング層は形成されなくなるが、耐火物が溶損しやすくなる。従来のロータリーキルンの操業では、炉内表面に付着物が成長しないように、炭素や珪素またはこれらの化合物を含有する耐火物が用いられているが、本発明のような溶融還元方法では、酸化物を含有する溶融スラグやバーナー火炎と接触して高温に晒される部分の耐火物の酸化溶損が著しく、したがって、ウェア耐火物として炭素や珪素またはこれらの化合物を含有する耐火物を使用することはできない。
(f)溶融還元により生成したメタルの再酸化を防止しながらダムリングの生成を防止または抑制するためには、ロータリーキルンの下流開口端に水平に対して10〜45度下向きの方向にバーナーを設置し、燃料に対する空気比を0.9〜1.5に調整して燃焼させることが好ましい。
(g)ロータリーキルン下流開口端におけるガス組成は、CO濃度およびO2濃度ともに可能な限り低いほうが好ましい。CO濃度が高い場合は、還元剤の炉内における熱エネルギーおよび還元剤としての利用効率が低過ぎてロスが大きく、また、O2濃度が高い場合は、還元により生成したメタルが再酸化されるおそれがあるからである。
本発明は、上記の知見に基いて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(3)に示す金属酸化物含有物質の溶融還元方法、および(4)〜(6)に示す溶融還元装置にある。
(1)炉の長さと内径の比が5以下の中空円筒状であり、水平からわずかに傾斜して配置されたロータリーキルンの上流開口端から原料として金属酸化物含有物質を装入するとともに、前記上流開口端から加熱用バーナーにより下流開口端に向けて燃焼火炎を放射し、前記金属酸化物含有物質を前記ロータリーキルンの回転によって下流開口端に向けて移動させつつ溶融還元する方法であって、原料のスラグ塩基度(CaO/SiO2)を0.8〜1.5に調整し、平均粒子径が0.02〜5mmで、かつ前記金属酸化物含有物質の還元当量の1.5〜4倍の還元剤を装入し、前記ロータリーキルンの長手方向中央部から下流開口端までの範囲の炉内処理物温度を1250〜1450℃に調整することにより溶融スラグおよびメタルを得ることを特徴とする金属酸化物含有物質の溶融還元方法。
(2)前記(1)に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元方法において、還元剤は、金属酸化物含有物質を塊成化処理した原料粒子の内部に含有させるか、または前記原料粒子の表面を被覆することにより、前記ロータリーキルン内に装入することが好ましい。
(3)前記(1)または(2)に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元方法において、
前記ロータリーキルンの下流開口端に、水平に対して10〜45度下向きの方向にバーナーを設置し、燃料に対する空気比を0.9〜1.5に調整して前記ロータリーキルン内を加熱することが好ましい。
(4)炉の長さと内径の比が5以下の中空円筒状であり、水平からわずかに傾斜して配置され、その上流開口端から装入された原料を前記円筒の軸の周りの回転によって下流開口端側に移動させつつ高温で処理するロータリーキルンと、前記ロータリーキルンの上流開口端に備えられ下流開口端側に向けて燃焼火炎を放射する加熱用バーナーを有し、前記ロータリーキルンの内張り耐火物は鉄皮側のパーマネント耐火物層および炉内側のウェア耐火物層の少なくとも2層からなり、前記パーマネント耐火物層は熱伝導率が1.5W/m/℃以下で厚さが50mm以上の定型耐火物または不定形耐火物により施工されたことを特徴とする金属酸化物含有物質の溶融還元装置。
(5)前記(4)に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元装置において、ロータリーキルンのウェア耐火物層は炭素、珪素およびそれらの化合物のいずれをも実質的に含有しない耐火物により施工されたものであることが好ましい。
(6)前記(4)または(5)に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元装置において、
ロータリーキルンの下流開口端に、水平に対して10〜45度下向きの方向に燃料を放射する下流開口端バーナーを備えることが好ましい。
本発明において、「金属酸化物含有物質」とは、鉄、クロム、亜鉛などの金属酸化物を含有する物質を意味し、製鉄所内で発生するダストなどが含まれる。
「燃料」とは、重油などの液体燃料、コークス炉ガスなどの気体燃料、微粉炭などの固体燃料またはこれらの混合燃料をいう。
「原料のスラグ塩基度」とは、ダストなどの酸化物含有物質、還元剤、廃プラスチックなどの炉内装入物の全ての脈石成分から求められるCaOとSiO2の質量含有率(%)の比をいう。
「還元当量」とは、金属酸化物含有物質を還元率100%にまで還元するために化学量論的に必要な還元剤の量をいう。
「溶融還元」とは、金属酸化物を還元剤により還元した後に溶融するいわゆる直接還元による還元形態、および、金属酸化物を溶融状態で、または溶融後に還元する還元形態の双方の還元形態を含む。
また、「ロータリーキルンの長手方向中央部から下流開口端までの範囲」とは、ロータリーキルンの上流開口端から下流開口端に向かって炉全長の30%の位置から下流開口端までの範囲をいう。
そして、「塊成化処理」とは、例えば、ダストなどの金属酸化物含有物質または金属酸化物含有物質と還元剤とを湿式混合した混合物をフィルタープレスにより圧縮脱水して塊状物とする処理、または金属酸化物含有物質または金属酸化物含有物質と還元剤との混合物にバインダーを添加して造粒し、ペレット化する処理などにより、金属酸化物含有物質を塊状物または粒状物にする処理をいう。
本発明の金属酸化物含有物質の溶融還元方法によれば、原料のスラグ塩基度、還元剤の粒度および添加量ならびに炉内の原料温度を適正化することにより、ロータリーキルン内におけるダムリングの生成を防止しつつ、例えば製鉄所で発生するダストやスラッジなどの金属酸化物含有物質から高い還元率で有用金属を還元回収することができるとともに、砂状の水砕スラグを回収できる。また、本発明の溶融還元装置は、炉体熱損失および内張り耐火物の酸化溶損がともに少なく、前記の金属酸化物含有物質の溶融還元方法を実施するための溶融還元装置として好適である。
本発明者らは、金属酸化物を含有する物質を原料として、これをロータリーキルンに装入し、種々の条件で溶融還元試験を行って、前記(1)〜(3)に記載の本発明の溶融還元方法および前記(4)〜(6)に記載の本発明の溶融還元装置を完成させた。以下に、本発明を上記の範囲に規定した理由および好ましい範囲などについて図面を参照して詳細に述べる。
1)原料のスラグ塩基度
図2は、原料のスラグ塩基度と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。ここで、還元剤の平均粒子径は0.02〜5mm、還元剤の装入量は2〜3当量、ロータリーキルン炉内処理物温度は1350〜1450℃とした。また、還元率は下記式(1)により算出される値を用いた。
還元率={1−(T.Fe+T.Cr)/(T.Fe0+T.Cr0)}×100(%)
・・・(1)
ここで、T.FeおよびT.Crは、それぞれ溶融還元後の生成スラグ中の全Fe含有率(質量%)および全Cr含有率(質量%)を、また、T.Fe0およびT.Cr0は、それぞれ原料の金属酸化物含有物質中の全Fe含有率(質量%)および全Cr含有率(質量%)を表す。
原料のスラグ塩基度の低下とともに溶融還元後の還元率は低下し、原料のスラグ塩基度が0.8未満では、還元率は70%未満にとどまっている。また、わずかに還元されたメタル中への浸炭も不十分でメタルの炭素含有率が低いことから、メタルの融点が高く、ロータリーキルン内面の耐火物にメタルが付着しやすい。
一方、原料のスラグ塩基度が高くなると、還元率は高くなるものの、スラグの融点が上昇し、スラグがロータリーキルン内面の耐火物に付着しやすくなる。図3は、原料のスラグ塩基度と原料の炉内滞留率との関係を示す図である。ここで、原料の炉内滞留率は、下記式(2)により求めた。
原料の炉内滞留率={1−(Wa/Wc)}×100(%) ・・・(2)
ただし、Wcはメタルおよびスラグの計算排出量を、また、Waはメタルおよびスラの
実績排出量をそれぞれ表す。
原料のスラグ塩基度が1.5を超えて大きくなると、スラグがロータリーキルン内面の耐火物に付着するため原料の炉内滞留率が急激に上昇している。
そこで、原料のスラグ塩基度の適正範囲を0.8〜1.5とした。なお、好ましくは、1.0〜1.5の範囲である。
2)ロータリーキルン炉内処理物温度
図4は、ロータリーキルン炉内処理物温度と原料の炉内滞留率との関係を示す図である。ここで、原料のスラグ塩基度は1.0〜1.2とし、還元剤の平均粒子径および還元剤の装入量は前記1)における試験条件と同様とした。
炉内処理物温度が1250℃未満では、原料および還元生成物の溶融が不十分となって炉内の内張耐火物に付着しやすくなるため、炉内付着物量が増加し、原料の炉内滞留率が急増する。一方、炉内処理物温度が1450℃を超えると、炉内耐火物への熱的負荷が大きくなるとともに、ロータリーキルンにおける燃料使用量が多くなり、燃料コストが増加する。
そこで、適正な炉内処理物温度は1250℃〜1450℃とした。なお、好ましくは、1300〜1400℃の範囲である。
3)耐火物ライニング
ロータリーキルンの内張耐火物の稼動面(内面)温度は、原料の溶融還元反応により生成するスラグおよびメタルの融点以上に維持する必要がある。耐火物の内面温度が低下すると耐火物の内面にスラグやメタルが付着しやすくなるからである。
炉内耐火物の内面温度をスラグおよびメタルの融点以上の温度に維持するためには、前記(d)にて説明したとおり、炉体の断熱性を向上させる必要があり、ロータリーキルンの内張り耐火物を、鉄皮側のパーマネント耐火物層および炉内側のウェア耐火物層の少なくとも2層以上からなる構成とし、前記パーマネント耐火物層は、熱伝導率が1.5W/m/℃以下で厚さが50mm以上の定型耐火物または不定形耐火物とすることが有効である。
また、前記(e)にて述べたとおり、ウェア耐火物としては、その酸化溶損を防止する観点から、炭素、珪素およびこれらの化合物のいずれをも含有しない耐火物を使用することが好ましい。
4)還元剤の装入量
図5は、還元剤の装入量と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。ここで、原料のスラグ塩基度は1.0〜1.2とし、還元剤の平均粒子径、還元剤の装入量および炉内処理物温度は前記1)における試験条件と同様とした。
還元剤の装入量が1.5当量未満の場合には、還元剤が炉内雰囲気中の酸素により燃焼消費されて還元剤量が不足し、還元不良となる。一方、還元剤量が4当量を超えると、スラグ中に還元剤粒子が懸濁して固相率が上昇するため、スラグの流動性が低下するとともに、スラグ中に炭素が残留し、熱灼減量が高くなることから、土木資材用途などへのスラグのリサイクル使用が制限される。
上記の結果から、還元剤の適正装入量を1.5〜4当量とした。なお、好ましくは、2
〜3当量の範囲である。
5)還元剤の粒度
図6は、還元剤の平均粒子径と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。ここで、原料のスラグ塩基度は1.0〜1.2、還元剤の装入量は2.0〜2.5当量とし、炉内温度は前記1)における試験条件と同様とした。
還元剤の平均粒子径が小さすぎると、炉内雰囲気中の酸素により還元剤が燃焼消費され、原料の金属酸化物含有物質を還元しなくなるため、還元率の低下を招く。一方、還元剤の粒子径が大きすぎると、還元剤粒子が未反応のままスラグ中に残留し、酸化物含有物質の還元に寄与しなくなるため、還元率が低下する。
そこで、還元剤の平均粒子径の適正範囲は0.02〜5mmとした。なお、好ましくは、 0.05〜2mmの範囲である。
6)ロータリーキルン下流開口端バーナーの設置方向
図7は、ロータリーキルンの下流開口端バーナーの設置方向と水砕スラグの最大粒子径との関係を示す図である。設置方向は、キルン下流開口端から上流開口端のフロント部に向き、水平方向から下向きの角度により表示した。
設置方向を下向きに10〜45度の範囲に設置すると、スラグ溜りを良好に加熱し、スラグの再凝固を防止でき、均一粒子径を有する砂状の水砕スラグを得ることができるので好ましい。これに対して、水平または上向きに設置した場合には、スラグの固相率が上昇し、均一な砂状の水砕スラグを得ることが難しくなる。
7)ロータリーキルン下流開口端バーナーの空気比
図8は、ロータリーキルンの下流開口端バーナーの空気比とスラグの酸化度との関係を示す図である。バーナーの空気比が1.5を超えると、スラグ中のT.FeおよびT.Cr含有率が上昇しているが、これは、溶融還元により一旦還元された鉄およびクロムのメタルが再酸化されたためである。一方、同空気比が0.9未満では、燃料が不完全燃焼となり、燃料コストの増加を招く。
以上の結果から、ロータリーキルンの下流開口端バーナーの空気比は、0.9〜1.5の範囲とすることが好ましい。
(試験方法)
本発明の溶融還元方法および溶融還元装置の効果を確認するため、以下に示す本発明例および比較例についての試験を行い、その結果を評価した。なお、原料の金属酸化物含有物質としては表1に示す化学組成を有する製鋼ダストAおよび製鋼ダストBを使用し、これらを本発明の溶融還元装置に装入して試験操業を行った。ここで、製鋼ダストAは、普通鋼の精錬で発生したダストであり、製鋼ダストBは、ステンレスの精錬で発生したダストである。
Figure 2005126732
図9は、本発明の溶融還元装置の縦断側面を示す概略図である。前記の表1に示す製鋼ダストに、C含有率が0〜30質量%となるように粉石炭または粉コークスを添加し、脱水して水分含有率が20質量%程度以下となるよう調整した。このようにして得られた脱水ケーキを原料装入シュート8から炉長Lが14m、直径Dが4.2m、傾斜角度2度のロータリーキルン1内に、装入速度5t/hで連続装入した。また、還元剤として平均粒子径が0.01〜6mmの石炭を装入速度0.5t/hで連続装入するとともに、平均粒子径が5mm以下の珪砂を連続装入して所定のスラグ塩基度となるよう調整した。
ロータリーキルン上流開口端4から炉内に挿入された加熱用重油バーナー5により燃料をロータリーキルンの下流開口端3に向けて放射することにより燃焼火炎6を発生させてロータリーキルン1内を加熱するとともに、下流開口端3に設置した図示しない放射温度計により炉内温度を測定し、加熱用バーナー5の重油の焚き量を調整することにより、炉内温度の制御を行った。1回の試験操業は24時間以上の連続操業とし、下流開口端3から排出されるメタルおよびスラグの溶融物9を採取分析して前記(1)式により製品の還元率を求めた。
また、キルンの下流開口端3には、上流開口端の方向に向けて水平から下向き角度40度で下流開口端バーナー11を設置し、コークス炉ガスを燃料として空気比を制御しながら燃焼させた。キルンの下流開口端のガス組成は、CO:0.05〜1%、O2:0.1〜5%の範囲内となるように燃焼用空気量を調整した。表2に試験条件をまとめて示した。
Figure 2005126732
ロータリーキルン内の耐火物ライニングは、パーマネント耐火物層21およびウェア耐火物層22の2層ライニングとし、一部の試験では1層ライニングとした。2層ライニングとした場合は、パーマネント耐火物層は熱伝導率が1.0W/m/℃の不定形耐火物を100mmの厚さで施工し、その炉内側にウェア耐火物として定型煉瓦を250mmの厚さで施工した。
定型煉瓦は、Al23煉瓦(Al23含有率90%)、Al23−Cr23煉瓦(Cr23含有率4%)、MgO−Cr23煉瓦(Cr23含有率30%)、Al23−SiC煉瓦(SiC含有率20%)、MgO−C煉瓦およびAl23−SiC−C煉瓦をキルン下流開口端から3mの位置を中心として張り分け、溶損状況を比較調査した。
(試験結果)
試験結果を表2および表3に示した。
Figure 2005126732
試験番号1、2、10、13および14は、本発明で規定する条件を全て満足する本発明例であり、試験番号3〜9、11および12は、本発明で規定する条件の少なくと1つ以上を満たさない比較例である。
本発明例は、いずれも高い還元率が得られ、ダムリングは発生せず、また、耐火物の溶損も少なかった。特に、キルン下流開口端バーナーの空気比を好ましい範囲内に調整した本発明例の試験番号1および2では、メタルの再酸化がなく極めて高い還元率の製品が得
られた。また、試験番号10では、キルン下流開口端バーナーの空気比が好ましい範囲を外れたために、メタルが再酸化されたが、これらは、操業上および処理後の製品の品質上、問題とならない程度のものであった。
還元剤を内装した塊成化原料を用いた試験番号13および還元剤を外装した塊成化原料を装入した試験番号14においても、極めて高い還元率の製品が得られ、試験番号1および2とほぼ同等の結果が得られた。
これらに対して、原料のスラグ塩基度が低い比較例の試験番号3は、還元不良となり、スラグ塩基度が高い試験番号4では、ロータリーキルン内にダムリングが発生した。また、炉内温度が低い比較例の試験番号5では、ダムリングが発生し、炉内温度が高い試験番号6では、耐火物の溶損が大きかった。
還元剤の粒子径が大きい比較例の試験番号7および還元剤の装入量が少ない試験番号9は還元率が低く、また、メタルへの浸炭も不良となったためにメタルの融点が上昇し、ダムリングが形成された。比較例の試験番号8は、還元剤の平均粒子径が小さすぎ、還元反応を起こす前に還元剤がガス中の酸素により消費されたため、軽度のダムリングおよび再酸化が発生した。
ロータリーキルン内の耐火物ライニングの層数を1層とした比較例の試験番号11では、耐火物の炉内表面温度が低下して内表面全体にメタルコーティングが生成した。還元剤を装入しなかった試験番号12は、全く還元メタルが得られない劣った結果であった。
さらに、表3の結果によれば、炭素あるいは炭化珪素を含む耐火物は、酸化溶損が著しいため溶損速度が大きかった。よって、ロータリーキルンのウェア耐火物としては、炭素、珪素および炭化珪素のいずれをも実質的に含有しない耐火物、例えばAl23系、Cr23系、MgO系耐火物などを使用することが好ましい。
本発明の金属酸化物含有物質の溶融還元方法によれば、原料のスラグ塩基度、還元剤の粒子径および装入量、ならびにロータリキルン内の温度を適正化することにより、炉内でのダムリングの生成を防止しつつ、金属酸化物含有物質から高い還元率で有用金属を還元回収することができる。また、ロータリーキルン内の耐火物ライニングを2層以上とし、炉体熱損失および耐火物溶損量を低減した本発明の溶融還元装置は、上記の溶融還元方法を実施するための好適な還元装置である。上記のとおり、本発明の溶融還元方法および溶融還元装置は、製鉄ダストおよびスラッジなどの廃棄物の再資源化の分野において広範囲に適用できる。
従来の廃棄物処理用ロータリーキルンの縦断側面を示す概略図である。 原料のスラグ塩基度と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。 原料のスラグ塩基度と原料の炉内滞留率との関係を示す図である。 ロータリーキルンの炉内温度と原料の炉内滞留率との関係を示す図である。 還元剤の装入量と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。 還元剤の平均粒子径と溶融還元後の還元率との関係を示す図である。 ロータリーキルンの下流開口端バーナーの設置方向と水砕スラグの最大粒子径との関係を示す図である。 ロータリーキルンの下流開口端バーナーの空気比とスラグの酸化度との関係を示す図である。 本発明の溶融還元装置の縦断側面を示す概略図である。
符号の説明
1:ロータリーキルン、 2:内張り耐火物、 21:パーマネント耐火物、
22:ウェア耐火物、 3:下流開口端、 4:上流開口端、 5:加熱用バーナー、
6:燃焼火炎、 7:原料(処理物)、 8:原料装入シュート、
81:装入フィーダー、9:溶融物、10:ダムリング、11:下流開口端バーナー

Claims (6)

  1. 炉の長さと内径の比が5以下の中空円筒状であり、水平からわずかに傾斜して配置されたロータリーキルンの上流開口端から原料として金属酸化物含有物質を装入するとともに、前記上流開口端から加熱用バーナーにより下流開口端に向けて燃焼火炎を放射し、前記金属酸化物含有物質を前記ロータリーキルンの回転によって下流開口端に向けて移動させつつ溶融還元する方法であって、原料のスラグ塩基度(CaO/SiO2)を0.8〜1.5に調整し、平均粒子径が0.02〜5mmで、かつ前記金属酸化物含有物質の還元当量の1.5〜4倍の還元剤を装入し、前記ロータリーキルンの長手方向中央部から下流開口端までの範囲の炉内処理物温度を1250〜1450℃に調整することにより溶融スラグおよびメタルを得ることを特徴とする金属酸化物含有物質の溶融還元方法。
  2. 前記還元剤は、金属酸化物含有物質を塊成化処理した原料粒子の内部に含有させるか、または前記原料粒子の表面を被覆することにより、前記ロータリーキルン内に装入することを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元方法。
  3. 前記ロータリーキルンの下流開口端に、水平に対して10〜45度下向きの方向にバーナーを設置し、燃料に対する空気比を0.9〜1.5に調整して前記ロータリーキルン内を加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元方法。
  4. 炉の長さと内径の比が5以下の中空円筒状であり、水平からわずかに傾斜して配置され、その上流開口端から装入された原料を前記円筒の軸の周りの回転によって下流開口端側に移動させつつ高温で処理するロータリーキルンと、前記ロータリーキルンの上流開口端に備えられ下流開口端側に向けて燃料を放射する加熱用バーナーを有し、前記ロータリーキルンの内張り耐火物は鉄皮側のパーマネント耐火物層および炉内側のウェア耐火物層の少なくとも2層からなり、前記パーマネント耐火物層は熱伝導率が1.5W/m/℃以下で厚さが50mm以上の定型耐火物または不定形耐火物により施工されたことを特徴とする金属酸化物含有物質の溶融還元装置。
  5. 前記ロータリーキルンのウェア耐火物層が炭素、珪素およびそれらの化合物のいずれをも実質的に含有しない耐火物により施工されたことを特徴とする請求項4に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元装置。
  6. 前記ロータリーキルンの下流開口端に、水平に対して10〜45度下向きの方向に燃料を放射する下流開口端バーナーを備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の金属酸化物含有物質の溶融還元装置。
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