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JP2005113116A - テトラフルオロエチレンポリマーアロイおよびその製造方法 - Google Patents

テトラフルオロエチレンポリマーアロイおよびその製造方法 Download PDF

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JP2005113116A
JP2005113116A JP2004133004A JP2004133004A JP2005113116A JP 2005113116 A JP2005113116 A JP 2005113116A JP 2004133004 A JP2004133004 A JP 2004133004A JP 2004133004 A JP2004133004 A JP 2004133004A JP 2005113116 A JP2005113116 A JP 2005113116A
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copolymer
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JP2004133004A
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Inventor
Akihiro Oshima
明博 大島
Shigetoshi Ikeda
重利 池田
Takaharu Miura
喬晴 三浦
Yoneo Tabata
米穂 田畑
Masaichi Washio
方一 鷲尾
Yasusuke Katsumura
庸介 勝村
Morito Asano
護人 朝野
Shogo Ichizuri
彰吾 一釣
Fumihiro Muto
史浩 武藤
Minoru Iida
稔 飯田
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REITEKKU KK
Raytech Corp
Original Assignee
REITEKKU KK
Raytech Corp
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Abstract

【課題】低い靱性、摺動環境下での摩耗やクリープ変形、低い耐放射線性、架橋処理の際の材料の歪み等の欠点が克服されたテトラフルオロエチレン系重合体を提供する。
【解決手段】テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物に放射線照射処理を施すことによって、前記重合体および/または共重合体が架橋していて、かつ前記重合体および/または共重合体の中の分子どうしが化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とするテトラフルオロエチレンポリマーアロイ。またこのテトラフルオロエチレンポリマーアロイからなる薄膜を製造する方法も提供される。ポリマーアロイのグラフト鎖にイオン交換基を付与したものは、変形しにくく優れたイオン交換能を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、靱性、摺動特性、強度,弾性率、耐放射線性、耐熱性、透明性などの特性が向上したテトラフルオロエチレンポリマーアロイならびにこのポリマーアロイからなる薄膜を製造する方法に関する。また本発明はこのポリマーアロイをイオン交換体として適用するための処理方法に関する。
テトラフルオロエチレン系重合体(フッ素樹脂)は耐熱性、耐薬品性、非接着性、撥水性、防汚性、潤滑性、耐摩擦性を有する優れたプラスチックであり、これらの特長を利用してパッキン、ガスケット、チューブ、絶縁テープ、軸受け、エアドームの屋根膜など従来から産業用、民生用として利用が拡大されつつある樹脂材料であり、また、耐原子状酸素性に優れることから人工衛星の熱制御材料としても有望な材料である。
しかしながら、テトラフルオロエチレン重合体およびその同類の樹脂材料は放射線に対する感受性が高く、特にテトラフルオロエチレン重合体に至っては放射線の吸収線量が1kGyを超えると力学特性が低下するため、宇宙空間や原子力施設など放射線環境下での利用はできない樹脂である。また、摺動環境下では摩耗やクリープ変形が生じるため、使用できない場合がある。さらには、テトラフルオロエチレン重合体は靱性が低く、テトラフルオロエチレン重合体に極くわずかな傷などの欠陥がある状態で応力が加わると、すぐに破壊してしまう。加えて結晶性高分子であるため可視光領域での光透過性が悪く、エアドームの屋根膜とした場合も採光性が悪いという欠点がある。
これらの欠点を克服するために、放射線架橋によるテトラフルオロエチレン系重合体の改質あるいは充填剤や添加剤を加えるなどの方策が採られている。しかしながら、放射線架橋による改質によって摺動環境下での摩耗やクリープ変形ならびに光透過性などの問題は改善できるものの、靱性が改善されるには至っていない。また、この靱性を改善するために充填剤や添加剤を加えるなどの努力が成されているものの、フッ素樹脂の優れた耐熱性や耐薬品性のために充填剤や添加剤がフッ素樹脂と化学反応することはなく、しかも、フッ素樹脂本来の優れた特長、すなわち耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性、力学特性などの特性を低下せしめるのが現状である。
一方、テトラフルオロエチレンを共重合化することで、靱性や光透過性などの問題は改善されるものの、テトラフルオロエチレン重合体の耐熱性、耐薬品性、非接着性、撥水性、防汚性、潤滑性が犠牲になるという問題を抱えている。
さらには、特開平11-49867号公報に示されているように、共重合体系材料をその融点以上で放射線架橋させることによって機械特性などを改善する試みが成されているが、共重合体系材料は溶融粘度が非常に低く、架橋処理の際に流れてしまうなどして、その形状保持が非常に困難であった。
また、従来のフッ素樹脂製のイオン交換膜としては、ナフィオンやフレミオンなどのパーフルオロスルホン酸のタイプのものがあるが、これら従来のものは分子鎖内に架橋構造を有していないため、ガスバリヤー性や耐熱性などの点で劣る。また基材にPTFEを用いた部分フッ素化イオン交換膜も開発されているが、合成後のイオン交換膜の強度に劣り、また膨潤性(含水率)が大きいために変形しやすいという問題があった。
特開平11-49867号公報
上記の問題点に鑑み、本発明の課題は、テトラフルオロエチレン系重合体の優れた特長、すなわち耐熱性、耐薬品性、撥水性、防汚性、潤滑性、力学特性などの特性を低下せしめることなく、従来の欠点であった低い靱性、摺動環境下での摩耗やクリープ変形、低い耐放射線性、架橋処理の際の試料の歪み等の諸問題を一挙に解決し、この樹脂材料の利用に制限があった工業分野においてこれを利用できるようにすることである。
本発明の課題はまた、高いイオン交換能を有するテトラフルオロエチレン系重合体を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明によれば、テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物に放射線照射処理を施すことによって、前記重合体および/または共重合体が架橋していて、かつ前記重合体および/または共重合体の中の分子どうしが化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とするテトラフルオロエチレンポリマーアロイが提供される。
また、本発明によれば、前記のテトラフルオロエチレンポリマーアロイの製造方法であって、テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物を加圧成形し、得られた成形体に放射線を照射することによって前記重合体および/または共重合体を架橋させる工程を含む、テトラフルオロエチレンポリマーアロイの成形体を製造する方法が提供される。
また、本発明によれば、前記のテトラフルオロエチレンポリマーアロイの製造方法であって、表面を平滑にした基材をテトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物で被覆し、この混合物からなる被覆に放射線を照射することによって前記重合体および/または共重合体を架橋させ、次いで前記基材から被覆を剥離または分離させるかあるいは前記基材を溶解させることによって、薄膜状のテトラフルオロエチレンポリマーアロイを製造する方法が提供される。基材としては、金属、樹脂、ガラスなど任意の材料からなる固体物質を用いることができ、金属の場合は例えば鏡面処理によって表面を平滑にする。
本発明においてテトラフルオロエチレン重合体とは、ポリテトラフルオロエチレンまたは放射線架橋したポリテトラフルオロエチレンを指し、テトラフルオロエチレン系共重合体とは、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE及びPVdF)、もしくはそれら共重合体の単独架橋体を指す。
前記混合物におけるテトラフルオロエチレン系共重合体の含有量は、テトラフルオロエチレン重合体の含有量に対して1〜75重量%、好ましくはこの添加量は、テトラフルオロエチレン重合体の特性が維持されるように50重量%以下とする。
放射線照射処理は、酸素濃度200ppm以下の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲かつ放射線の吸収線量を0.1kGy〜20MGyとして実施される。好ましくは、酸素濃度は100ppm以下、温度は65℃〜350℃の範囲とし、放射線の吸収線量は30kGy〜2MGyとする。
基材から被覆を剥離または分離する処理は、−20℃〜150℃の溶液中で行われるか、または被覆された基材を65℃以上の温度から30℃以下の温度に急冷することによって行われるのが好ましい。また、基材を溶解させる処理は、基材の材料を溶かす有機溶媒または酸またはアルカリ性溶液を用いて行われるのが望ましい。
以下、本発明に係るテトラフルオロエチレンポリマーアロイおよびこのポリマーアロイからなる薄膜の製造方法について具体的な様態を説明する。この説明においては、テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物を、テトラフルオロエチレンポリマーブレンドあるいは単にポリマーブレンドと称する。
テトラフルオロエチレン重合体とテトラフルオロエチレン系共重合体を混合する工程は、テトラフルオロエチレン重合体の粉体が均一に分散した液体とテトラフルオロエチレン系共重合体の粉体が均一に分散した液体どうしを混合することによって行われる。粉体を効率よく分散するための液体すなわち分散媒は、水と乳化剤、水とアルコール、水とアセトン、または水とアルコールとアセトンの混合溶媒などであり、いずれも分散媒を熟知した当業者により容易に選択調製し得る。さらに、テトラフルオロエチレン重合体およびテトラフルオロエチレン系共重合体の粉末をそれぞれオイルと混合してゲル状にして混合しても良い。あるいは、分散媒を用いずにテトラフルオロエチレン重合体の微粉末およびテトラフルオロエチレン系共重合体の微粉末どうしを混合しても良い。いずれか一方が分散液あるいはゲル状のものであり、他方が微粉末でも差し支えない。ポリマーブレンドにおけるテトラフルオロエチレン系共重合体の含有量は、テトラフルオロエチレン重合体の含有量に対して1〜75重量%であるのが好ましいが、さらに好ましくは、テトラフルオロエチレン重合体の特性が十分に維持されるように50重量%以下とする。テトラフルオロエチレン系共重合体の含有量が1重量%未満であると、ポリマーアロイ化した際の特性が架橋したPTFEとほとんどかわらない。一方75重量%を超えると、テトラフルオロエチレン系共重合体の性質から、架橋処理の際に溶融粘度が低くなって材料の形態を保持できない。
次いで、混合分散溶液を風乾あるいは熱風乾燥することにより分散媒を除去したもの、ゲル状物質を150μm以下の厚さに圧延してからオイルを除去したもの、または微粉末どうしを混合したもの、あるいは繊維と一体化したもののいずれかを任意の形状に室温で10kg/cm2以上の圧力、好ましくは100kg/cm2以上の圧力で加圧予備成形したもの、あるいは金属などの基材表面に被覆したものを、250℃〜400℃、好ましくはテトラフルオロエチレン重合体の結晶融点以上の327〜360℃の温度範囲で0〜500kg/cm2の圧力範囲で熱処理することによって焼結した成形体を得る。しかる後に、酸素濃度200ppm以下の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲、好ましくはテトラフルオロエチレンポリマーブレンドのα分散温度以上の65℃〜結晶融点直上(350℃)の温度範囲に保ちながらポリマーブレンドに電離放射線を0.1kGy〜20MGyの吸収線量範囲で照射する。このとき、熱処理と放射線処理を同時に行ってもよい。これによって、ポリマーブレンドを構成するテトラフルオロエチレン重合体およびテトラフルオロエチレン系共重合体が共に架橋するとともに、重合体と共重合体を構成する分子どうしが化学反応して橋かけし、分子複合化する。すなわち、放射線によってポリマーブレンドの構成分子内に誘起されたラジカルどうしが反応して共有結合によって結びつけられる。したがって、分子複合化的に橋かけした網目構造を有するポリマーアロイ、あるいはその繊維強化複合材料、または複合部材が得られる。照射温度が400℃を超えるとポリマーブレンド自身の熱分解が始まるので好ましくない。また、室温よりも低い照射温度では、分子の運動性が不十分となるので、橋かけの効率が落ちる。
酸素濃度200ppm以下の雰囲気とは、大気中の酸素をヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスで置き換えることによって200ppm以下の酸素濃度に制御した雰囲気をいい、あるいはこれは真空であってもよい。このような雰囲気を用いる目的は、照射中にポリマーブレンド内での架橋反応が抑制されて逆に酸化分解が起こることを防ぐことである。酸素濃度が200ppmを超えると、放射線によって誘起されたラジカルが酸素と優先的に結合し、架橋反応が著しく抑制されてしまう。吸収線量が0.1kGy未満であると、反応に寄与するラジカル濃度が希薄となり、得られるポリマーアロイの特性が十分に改善されない。一方、20MGyを超えると、架橋密度が大きくなり、ポリマーアロイが硬くなると共に脆くなり、機械強度特性が失われる。
電離放射線としては、電子線、X線、中性子線、放射光、高エネルギーイオンの単独あるいはこれらの混合放射線を用いる。また、電離放射線を照射する際の温度制御は、通常の気体循環式の恒温槽、赤外線ヒーターあるいはパネルヒーターなどの間接的あるいは直接的な熱源を利用して加熱することによって行うか、あるいは電子加速器またはイオン加速器から発生させる放射線のエネルギーを制御することによって発生する熱をそのまま熱源として利用して行う。
得られるテトラフルオロエチレンポリマーアロイの架橋密度は、テトラフルオロエチレン重合体およびテトラフルオロエチレン系共重合体の混合比ならびに放射線照射処理の吸収線量を操作することによって任意に調製できる。
予め鏡面処理を施した金属などの基材をテトラフルオロエチレンポリマーアロイで被覆した複合部材から薄膜状のポリマーアロイを分離させる処理は、放射線処理の後、−20℃〜150℃の溶液中で行われるか、あるいは複合部材を65℃以上の温度から30℃以下の温度に急冷することによって行われるのが好ましい。また、基材を溶解させる処理は、基材の材料を溶かす有機溶媒あるいは酸またはアルカリ性溶液を用いて行うのが望ましい。このようにして、平滑な表面と均一な膜厚を有する所望の形状を有する薄膜状のテトラフルオロエチレンポリマーアロイが得られる。ポリマーアロイの膜厚は150μm以下であるのが好ましく、厚さの変化率は±10%以内で調製する。膜厚は、分散液の粉体濃度を制御するか、もしくは塗布回数を調製することによって任意に調製できる。本発明においてポリマーアロイを基材から剥離または分離するために用いる溶液は、pH2〜13の範囲にある水溶液のほか、基材を浸食する全ての溶液を含む。また、基材を溶かすための溶液は、基材材料を溶かすことが可能な有機溶媒の他、酸またはアルカリ性溶液などからなる溶剤である。
発明者は、以上のようにして得られたテトラフルオロエチレンポリマーアロイに高いイオン交換能を付与するための処理方法を見いだした。この方法は、放射線を照射することによって架橋させたポリマーアロイの成形体にさらに放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖にラジカルを生成させ、ポリマーアロイをスチレンモノマーまたはその変性モノマー(例えばフッ素化されたスチレンモノマー)と反応させてラジカルの部位にスチレンのグラフト鎖を付与し、次いでポリマーアロイを酸化剤と反応させることによってグラフト鎖にイオン交換基を付与させる工程を含む。
この方法には、ポリマーアロイの主鎖にラジカルを生成させる処理方法が異なる次の三つのやり方がある。
1.気相トラップラジカル法
架橋させたポリマーアロイの成形体に真空中でγ線などの放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に捕捉ラジカルを生成させる。このポリマーアロイをスチレンモノマーと反応させてラジカルの部位にスチレンからなるグラフト鎖を付与する。次いで、ポリマーアロイを酸化剤と反応させることによってグラフト鎖にイオン交換基を付与させる。この方法は、次に述べる液相過酸化ラジカル法と比較して、用いるスチレンのモノマー量が少なくてすむため、工業生産上有利である。
2.液相過酸化ラジカル法:空気中での照射
架橋させたポリマーアロイの成形体に酸素を含む雰囲気中で電子線などの放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に過酸化ラジカルを生成させる。このポリマーアロイをスチレンモノマーと反応させてラジカルの部位にスチレンからなるグラフト鎖を付与する。次いで、ポリマーアロイを酸化剤と反応させることによってグラフト鎖にイオン交換基を付与させる。この方法において捕捉ラジカルを経ることなく過酸化ラジカルを直接生成させる利点は、反応温度を均一に設定することができ、大面積の試料を得るのに有利なことである。
3.液相過酸化ラジカル法:不活性ガス中での照射
架橋させたポリマーアロイの成形体に窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中で電子線などの放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に捕捉ラジカルを生成させる。このポリマーアロイを酸素と反応させることによって捕捉ラジカルを過酸化ラジカルに転換させる。次いで、ポリマーアロイをスチレンモノマーと反応させてラジカルの部位にスチレンからなるグラフト鎖を付与する。次いで、ポリマーアロイを酸化剤と反応させることによってグラフト鎖にイオン交換基を付与させる。気相トラップラジカル法と異なって過酸化ラジカルを生成させる利点は、主鎖上でグラフト反応させることによって、(分子鎖末端からのグラフト反応ではないので)機械強度が高くなることである。
これらの方法において、グラフト鎖としてスチレンを用いる理由は、反応制御が容易なためである。イオン交換基はスルホン酸基であるのが好ましく、それは、ポリマーアロイを燃料電池用電解質として利用することを考えた場合、電極界面での耐酸化性に優れる材料が得られるためである。スルホン酸基を付与させるための酸化剤としてはクロロスルホン酸、濃硫酸、硝酸、過酸化水素を用いることができる。なお、この場合、スルホン酸基の他にカルボキシル基も副生している可能性がある。
本発明によれば、テトラフルオロエチレン重合体とテトラフルオロエチレン系共重合体を分子複合化してポリマーアロイとした新しい材料を得ることができ、加えて、金属などの基材に塗布、ライニングあるいはコーティングなどの手法で被覆されたテトラフルオロエチレン系ポリマーブレンドは、基材に支えられたままその結晶融点下で放射線架橋反応が進行するため、従来のフッ素樹脂では解決できなかったしわ、ゆがみなどの著しい変形が起こらず、平滑な表面と150μm以下の均一な膜厚を有する薄膜状改質フッ素樹脂を容易に製造することができる。
また、このテトラフルオロエチレンポリマーアロイのグラフト鎖にイオン交換基を付与したものは、従来のフッ素樹脂製のイオン交換体よりも強度が高く優れたイオン交換能を有する。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1
水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.25μmのテトラフルオロエチレン重合体(PTFE)ファインパウダー60部を分散させた液体と水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.2μmのヘキサフルオロプロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)ファインパウダー60部を分散させた液体を重量比7:3の割合で混合してPTFEとFEPが均一に分散した混合分散液を調製した。この混合分散液を乾燥させてPTFE/FEPポリマーブレンド粉末を得た後、ブレンド粉末を室温で400kg/cm2の圧力でシート状に予備成形し、次いでPTFEの結晶融点以上の345℃で200kg/cm2の圧力をかけながら15分間窒素気流中で加熱処理を行い、厚さ0.5mmのシート材を得た。このPTFE/FEPポリマーブレンドシートを窒素ガス気流中で340℃に加熱し、2MeVの電子線を90kGyおよび300kGy照射して架橋させ、PTFE/FEPポリマーアロイを得た。比較例として0.5mm厚の純粋なPTFEシートならびにFEPシートについても同様にして電子線照射を行い架橋させた。
得られたPTFE/FEPポリマーアロイ材料の形状は、照射前の状態とほとんど変わらなかったが、架橋PTFEシートは一部に歪みを生じ、架橋FEPシートは溶けて初期の形状から著しく変形していた。熱特性について示差走査熱量分析計(DSC)を用いて比較した。得られた結果は、表1のごとく、架橋PTFE単独の場合と比較してポリマーアロイにおいては融解温度の低下と融解熱量の低下の促進が観測された。
Figure 2005113116
実施例2
実施例1で得たPTFEとFEPが均一に分散した混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによって、アルミニウム基板上に16μmの厚さのコート試料膜を得た。このコート膜を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGyおよび450kGy照射してPTFEとFEPを反応させて架橋させた。しかる後、成形体をpH4の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させてポリマーアロイ薄膜を得た。ポリマーアロイ薄膜の膜厚を試料の任意の5点でマイクロメーターにより測定したところ、150kGy照射した試料で14μm±1μmであり、450kGy照射した試料で12μm±1μmであった。この結果から、このポリマーアロイ薄膜は平滑な表面と均一な厚さを有する薄いフィルム状であることがわかる。
実施例3
実施例2で得たポリマーアロイ薄膜(照射線量450kGy)を1cm幅の短冊状に切出し、引張試験を実施したところ、その引張特性は表2のようになり、良好な値を示した。比較例として、厚さ14μmの架橋PTFE薄膜(照射線量450kGy)の引張特性も示す。
Figure 2005113116
実施例4
水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.3μmのテトラフルオロエチレン重合体(PTFE)ファインパウダー60部を分散させた液体と水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.2μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)ファインパウダー60部を分散させた液体を重量比8:2の割合で混合してPTFEとPFAが均一に分散した混合分散液を調製した。この混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによってアルミニウム基板上に15μmの厚さのコート試料膜を得た。このコート膜を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を90kGyおよび300kGy照射してPTFEとPFAを反応させて架橋させた。しかる後、成形体をpH4の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させてポリマーアロイ薄膜を得た。ポリマーアロイ薄膜の膜厚を試料の任意の5点でマイクロメーターにより測定したところ、90kGy照射した試料で15μm±1μmであり、300kGy照射した試料で13μm±1μmであった。この結果から、このポリマーアロイ薄膜は平滑な表面と均一な厚さを有する薄いフィルム状であることがわかる。
実施例5
実施例4で得たポリマーアロイ薄膜(照射線量300kGy)を1cm幅の短冊状に切出し、引張試験を実施したところ、その引張特性は表3のようになり、良好な値を示した。比較例として、厚さ14μmの架橋PTFE薄膜(照射線量300kGy)の引張特性も示す。
Figure 2005113116
実施例6
実施例4で得たPTFEとPFAが均一に分散した混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによって、アルミニウム基板上に16μmの厚さのコート試料膜を得た。このコート膜を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGy、450kGyおよび1200kGy照射してPTFEとPFAを反応させて架橋させた。しかる後、成形体をpH3の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させてポリマーアロイ薄膜を得た。ポリマーアロイ薄膜の膜厚を試料の任意の5点でマイクロメーターにより測定したところ、150kGy照射した試料で14μm±1μmであり、450kGy照射した試料で12μm±1μm、1200kGy照射した試料で6μm±1μmであった。この結果から、このポリマーアロイ薄膜は平滑な表面と均一な厚さを有する
薄いフィルム状であることがわかる。
実施例7
実施例6で得たポリマーアロイ(照射線量150kGy、450kGy、1200kGy)について、その熱特性を示差走査熱量分析計(DSC)を用いて比較した。得られた結果は、表4のごとく、
架橋PTFE単独の場合と比較してポリマーアロイでは融解温度の低下と融解熱量の低下の促進が観測された。
Figure 2005113116
実施例8
水と乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.25μmのテトラフルオロエチレン重合体(PTFE)ファインパウダー60部を分散させた液体、水と乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.3μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)ファインパウダー60部を分散させた液体、および水と乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.3μmのヘキサフルオロプロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)ファインパウダー60部を分散させた液体を重量比6:2:2の割合で混合してPTFEとPFAおよびFEPが均一に分散した混合分散液を調製した。この混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによってアルミニウム基板上に15μmの厚さのコート試料膜を得た。このコート膜を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGy、600kGyおよび1200kGy照射してPTFEとPFAおよびFEPを反応させて架橋させた。しかる後、成形体をpH3の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させてポリマーアロイ薄膜を得た。ポリマーアロイ薄膜の膜厚を試料の任意の5点でマイクロメーターにより測定したところ、150kGy照射した試料で13μm±1μmであり、600kGy照射した試料で9μm±1μmであり、1200kGy照射した試料で5μm±1μmであった。この結果から、このポリマーアロイ薄膜は平滑な表面と均一な厚さを有する薄いフィルム状であることがわかる。
実施例9
実施例8で得たポリマーアロイ(照射線量150kGy、600kGy、1200kGy)について、その熱特性を示差走査熱量分析計(DSC)を用いて比較した。得られた結果は、表5のごとく、架橋PTFE単独の場合と比較してポリマーアロイでは融解温度の低下と融解熱量の低下の促進が観測された。
Figure 2005113116
実施例10
水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.3μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)ファインパウダー60部を分散させた液体と水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.2μmのヘキサフルオロプロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)ファインパウダー60部を分散させた液体を重量比8:2の割合で混合してPFAとFEPが均一に分散した混合分散液を調製した。この混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによってアルミニウム基板上に14μmの厚さのコート試料膜を得た。このコート膜を350℃で焼成した後、315℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGy、300kGyおよび600kGy照射してPFAとFEPを反応させて架橋させた。しかる後、成形体をpH4の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させてポリマーアロイ薄膜を得た。ポリマーアロイ薄膜の膜厚を試料の任意の5点でマイクロメーターにより測定したところ、150kGy照射した試料で12μm±1μmであり、300kGy照射した試料で11μm±1μmであり、600kGy照射した試料で9μm±1μmであった。この結果から、このポリマーアロイ薄膜は平滑な表面と均一な厚さを有する薄いフィルム状であることがわかる。
イオン交換基の付与のための試料の調製
実施例11(試料の調製:PTFE/FEP系)
水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.25μmのテトラフルオロエチレン重合体(PTFE)ファインパウダー60部を分散させた液体と水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.2μmのヘキサフルオロプロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)ファインパウダー55部を分散させた液体を重量比9:1(FE1)、8:2(FE2)、7:3(FE3)のそれぞれの割合で混合してPTFEとFEPが均一に分散した混合分散液を調製した。各々の混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによって、アルミニウム基板上に14μmの厚さのコート試料膜を得た。これら3種のコート膜の各々を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGy(試料名:FE1-150K、FE2-150K、FE3-150K)、300kGy(FE1-300K、FE2-300K、FE3-300K)、450kGy(FE1-450K、FE2-450K、FE3-450K)、600kGy(FE1-600K、FE2-600K、FE3-600K)のそれぞれの吸収線量で照射してPTFEとFEPを反応させて架橋させた。しかる後、各々の成形体をpH4の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させて、架橋度の異なる12種類のポリマーアロイ薄膜の試料を得た。
実施例12(試料の調製:PTFE/PFA系)
水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.25μmのテトラフルオロエチレン重合体(PTFE)ファインパウダー60部を分散させた液体と水および乳化剤系の分散媒100部に平均粒径0.25μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)ファインパウダー30部を分散させた液体を重量比19:1(FA1)、19:2(FA2)、19:3(FA3)19:4(FA4)のそれぞれの割合で混合してPTFEとPFAが均一に分散した混合分散液を調製した。各々の混合分散液を厚さ50μmのアルミニウム箔にワイヤーバーを用いて塗布し、すぐに乾燥させることによってアルミニウム基板上に14μmの厚さのコート試料膜を得た。これら4種のコート膜の各々を350℃で焼成した後、335℃で窒素雰囲気の照射容器に移して電子加速器で200kVに加速された電子線を150kGy(試料名:FA1-150K、FA2-150K、FA3-150K、FA4-150K)、300kGy(FA1-300K、FA2-300K、FA3-300K、FA4-300K)、450kGy(FA1-450K、FA2-450K、FA3-450K、FA4-450K)、600kGy(FA1-600K、FA2-600K、FA3-600K、FA4-600K)のそれぞれの吸収線量で照射してPTFEとPFAを反応させて架橋させた。しかる後、各々の成形体をpH4の酸性溶液に浸してアルミニウム箔を溶解させて、架橋度の異なる16種類のポリマーアロイ薄膜の試料を得た。
グラフトとスルホン化によるイオン交換基の付与
実施例13(気相トラップラジカル法)
実施例11で得た12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および実施例12で得た16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れて真空脱気し、室温でコバルト60によるγ線を10kGy、20kGyおよび30kGy照射して捕捉ラジカルを生成させた。次いで、十分に凍結脱気を行ったスチレンモノマーを真空に保持されているガラスアンプルにブレーカブルシールを破ることによって気相で導入し、全体を60℃、70℃および80℃で最大12時間まで恒温槽の中に保持することによって薄膜試料をスチレンモノマーと反応させた。反応後、試料を四塩化炭素に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除くとともに、試料中に溶存している四塩化炭素をアセトンを用いて除去した。次いで、真空乾燥機を用いて試料を60℃で24時間乾燥させた後に、重量を測定した。全ての試料において処理前と比較して重量が増加し、これはグラフト反応が生じた結果と考えられる。グラフト反応が生じたことを確認するためにFT-IR測定(赤外吸収分光測定)を行った結果、全ての試料においてスチレンの化学構造を反映する信号が検出された。
図1は、上の実験においてγ線を30kGy照射した後に80℃でグラフト反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。また図2は同じ条件で反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。グラフト反応の時間が長いほどグラフト率が高く、また架橋させるために電子線を照射したときの吸収線量が多いほどグラフト率が高いことがわかる。さらに、FEPまたはPFAの配合比が高いほどグラフト率が高いこと、ラジカルを生成させるためのγ線の照射線量が多いほどグラフト率が高いこと、グラフト反応の温度が高いほどグラフト率が高いことも確認された。FE2、FE3、FA2、FA3およびFA4の各シリーズの試料においても同様の結果が得られた。
上述のようにスチレンをグラフトした12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々について、下記の4通りの方法でグラフト鎖にスルホン酸基(イオン交換基)を付与した。
(スルホン化の方法:1)
試料を四塩化炭素(90vol%)とクロロスルホン酸(10vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させてスルホン化を行う。
(スルホン化の方法:2)
試料を四塩化炭素(99vol%)とクロロスルホン酸(1vol%)の混合溶液に浸し、25℃で24時間反応させてスルホン化を行う。
(スルホン化の方法:3)
試料を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、40℃で4時間反応させてスルホン化を行う。
(スルホン化の方法:4)
試料を四塩化炭素中で十分に膨潤させた後、1Nの濃硫酸に浸し、80℃で8時間反応させてスルホン化を行う。
実施例14(液相過酸化ラジカル法:不活性ガス中での照射)
実施例11で得た12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および実施例12で得た16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々をSUS304製の照射容器に入れ、容器内を酸素の無い状態にするために窒素に置換し、電子加速器で200keVに加速した電子を室温で15kGy、30kGyおよび45kGy照射して捕捉ラジカルを生成させた。次いで、室温で酸素を含む空気中に薄膜試料を暴露することによって捕捉ラジカルを過酸化ラジカルに転換した。SUS304製の反応容器(容積:120ml)に入れた100mlのスチレンモノマー溶液中に試料を入れ、試料の真空脱気を十分に行った後、全体を60℃、70℃、80℃、90℃および100℃で最大12時間まで恒温槽の中に保持することによって薄膜試料をスチレンモノマーと反応させた。反応後、試料を四塩化炭素に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除くとともに、試料中に溶存している四塩化炭素をアセトンを用いて除去した。次いで、真空乾燥機を用いて試料を60℃で24時間乾燥させた後に、重量を測定した。全ての試料において処理前と比較して重量が増加し、これはグラフト反応が生じた結果と考えられる。グラフト反応が生じたことを確認するためにFT-IR測定を行った結果、全ての試料においてスチレンの化学構造を反映する信号が検出された。
図3は、上の実験において電子線を30kGy照射した後に80℃でグラフト反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。また図4は同じ条件で反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。グラフト反応の時間が長いほどグラフト率が高く、また架橋させるために電子線を照射したときの吸収線量が多いほどグラフト率が高いことがわかる。さらに、FEPまたはPFAの配合比が高いほどグラフト率が高いこと、ラジカルを生成させるための電子線の照射線量が多いほどグラフト率が高いこと、グラフト反応の温度が高いほどグラフト率が高いことも確認された。FE2、FE3、FA2、FA3およびFA4の各シリーズの試料においても同様の結果が得られた。
上述のようにスチレンをグラフトした12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々について、実施例13で行ったのと同じ4通りの方法でグラフト鎖にスルホン酸基(イオン交換基)を付与した。
実施例15(液相過酸化ラジカル法:空気中での照射)
実施例11で得た12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および実施例12で得た16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々をSUS304製の照射支持台の上に置き、電子加速器で200keVに加速した電子を空気中室温下で15kGy、30kGyおよび45kGy照射して過酸化ラジカルを生成させた。次いで、SUS304製の反応容器(容積:120ml)に入れた100mlのスチレンモノマー溶液中に試料を入れ、試料の真空脱気を十分に行った後、全体を60℃、70℃および80℃で最大12時間まで恒温槽の中に保持することによって薄膜試料をスチレンモノマーと反応させた。反応後、試料を四塩化炭素に32時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除くとともに、試料中に溶存している四塩化炭素をアセトンを用いて除去した。次いで、真空乾燥機を用いて試料を60℃で24時間乾燥させた後に、重量を測定した。全ての試料において処理前と比較して重量が増加し、これはグラフト反応が生じた結果と考えられる。グラフト反応が生じたことを確認するためにFT-IR測定を行った結果、全ての試料においてスチレンの化学構造を反映する信号が検出された。
図5は、上の実験において電子線を30kGy照射した後に80℃で反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。また図6は同じ条件で反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。グラフト反応の時間が長いほどグラフト率が高く、また架橋させるために電子線を照射したときの吸収線量が多いほどグラフト率が高いことがわかる。さらに、FEPまたはPFAの配合比が高いほどグラフト率が高いこと、ラジカルを生成させるための電子線の照射線量が多いほどグラフト率が高いこと、グラフト反応の温度が高いほどグラフト率が高いことも確認された。FE2、FE3、FA2、FA3およびFA4の各シリーズの試料においても同様の結果が得られた。
上述のようにスチレンをグラフトした12種類のPTFE/FEP系ポリマーアロイ薄膜試料および16種類のPTFE/PFA系ポリマーアロイ薄膜試料の各々について、実施例13で行ったのと同じ4通りの方法でグラフト鎖にスルホン酸基(イオン交換基)を付与した。
イオン交換容量の測定
実施例16
実施例13、14および15の各々で得たイオン交換基を有する薄膜試料の各々について、イオン交換容量(IEC)を測定した。測定方法は次の通りである。
濃度1MのHCl水溶液に試料を24時間浸漬した後に精製水で洗浄する操作を3回繰り返し、官能基を完全にH型にする。次いで、試料表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定する。次いで、試料を濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100mlに20℃で24時間浸漬した後に浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行う。このとき0.01MのNaOHを含む1MのNaCl溶液を中和するのに要する0.01MのHCl水溶液の量(A(ml))を求める。次いで、試料を1MのHCl水溶液に24時間浸漬した後に精製水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて試料を60℃で24時間乾燥させた後に、乾燥状態での試料の重量(Wd(g))を測定する。
このときイオン交換容量は次の式によって求められる。
イオン交換容量=0.01×(B−A)×(100/40)/Wd
ここで、Bは0.01MのNaOHを含む1MのNaCl溶液40mlの中和滴定に要する0.01MのHCl水溶液の量(この実験においては39.2ml)である。(なお、膜の含水率を求める必要のある場合は、含水率=(Ww−Wd)/Wd×100の式を用いる。)
イオン交換容量を測定した結果、市販のNafion(ナフィオン)NF112(DuPont社製)のイオン交換容量である1.02meq/gと比較して全ての試料において2〜3.5meq/gの高いイオン交換容量を有していることがわかった。Nafion NF112はパーフルオロスルホン酸のタイプのイオン交換膜である。図7は、実施例14(液相過酸化ラジカル法:不活性ガス中での照射)で得たFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について電子線を30kGy照射し、80℃で2時間および5時間グラフト反応させ、そして(1)のスルホン化方法でイオン交換基を付与した場合のグラフト反応率とイオン交換容量の関係を示すグラフである。グラフト反応率が高いほどイオン交換容量が大きいことがわかる。また、スルホン化の方法を変えても、その方法の如何にかかわらず、グラフト反応率が高いほどイオン交換容量が大きかった。
熱重量分析
実施例17
実施例13、14および15の各々で得たイオン交換基を有する薄膜試料の各々について、熱重量分析を行った。その結果、ラジカルを生成させるための電子線の照射線量が多いほど試料の含水率が小さかった。図8は、実施例15(液相過酸化ラジカル法:空気中での照射)で得たFE2-300KおよびFE2-450Kの試料に電子線を30kGy照射し、80℃で5時間グラフト反応させ、そして(1)のスルホン化方法でイオン交換基を付与した場合の熱重量分析における薄膜試料の温度と試料の重量減量率の関係を示すグラフであり、熱分解特性に関するものである(グラフ中のGYはグラフト率である)。100〜400℃の範囲で二つの試料の間での重量減量率の差が大きい。薄膜試料の重量減量率が小さいほど含水率が小さいことを意味し、そのような薄膜は膨潤しにくいので変形しにくい。また図9は、実施例14(液相過酸化ラジカル法:不活性ガス中での照射)で得たFA1-150K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料に電子線を30kGy照射し、80℃で5時間グラフト反応させ、そして(1)のスルホン化方法でイオン交換基を付与した場合の熱重量分析における薄膜試料の温度と試料の重量減量率の関係を示すグラフである。図中にはNafion NF112について熱重量分析を行った結果も示す。400〜550℃の範囲でFA1シリーズの試料はNafionよりも小さな重量減量率を示している。
架橋させたポリマーアロイ薄膜試料に気相トラップラジカル法によってγ線を30kGy照射した後に80℃でグラフト反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。 架橋させたポリマーアロイ薄膜試料を図1の場合と同じ条件でグラフト反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。 架橋させたポリマーアロイ薄膜試料に液相過酸化ラジカル法によって不活性ガス中で電子線を30kGy照射した後に80℃でグラフト反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。 架橋させたポリマーアロイ薄膜試料を図3の場合と同じ条件でグラフト反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。 架橋させたポリマーアロイ薄膜試料に液相過酸化ラジカル法によって空気中で電子線を30kGy照射した後に80℃でグラフト反応させたときのFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料について、グラフト反応の時間とグラフト率の関係を示すグラフである。 架橋させたポリマーアロイ薄膜試料を図5の場合と同じ条件でグラフト反応させたときのFA1-150K、FA1-300K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料についての結果を示すグラフである。 液相過酸化ラジカル法(不活性ガス中での照射)で得たFE1-150K、FE1-300K、FE1-450KおよびFE1-600Kの試料に電子線を30kGy照射し、80℃で2時間および5時間グラフト反応させ、そしてイオン交換基を付与した場合のグラフト反応率とイオン交換容量の関係を示すグラフである。 液相過酸化ラジカル法(空気中での照射)で得たFE2-300KおよびFE2-450Kの試料について電子線を30kGy照射し、80℃で5時間グラフト反応させ、そしてイオン交換基を付与した場合の熱重量分析における薄膜試料の温度と試料の重量減量率の関係を示すグラフである。 液相過酸化ラジカル法(不活性ガス中での照射)で得たFA1-150K、FA1-450KおよびFA1-600Kの試料に電子線を30kGy照射し、80℃で5時間グラフト反応させ、そしてイオン交換基を付与した場合の熱重量分析における薄膜試料の温度と試料の重量減量率の関係を示すグラフである(Nafion NF112についての結果もあわせて示す)。

Claims (18)

  1. テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物に放射線照射処理を施すことによって前記重合体および/または共重合体が架橋していて、かつ前記重合体および/または共重合体の中の分子どうしが化学反応することによって分子複合化した網目構造を有することを特徴とするテトラフルオロエチレンポリマーアロイ。
  2. 前記混合物におけるテトラフルオロエチレン系共重合体の含有量がテトラフルオロエチレン重合体の含有量に対して1〜75重量%である、請求項1に記載のテトラフルオロエチレンポリマーアロイ。
  3. 架橋した前記重合体および/または共重合体はグラフト鎖を有していて、このグラフト鎖にイオン交換基が付加していることを特徴とする、請求項1または2に記載のテトラフルオロエチレンポリマーアロイ。
  4. 前記グラフト鎖はスチレンからなり、前記イオン交換基はスルホン酸基であることを特徴とする、請求項3に記載のテトラフルオロエチレンポリマーアロイ。
  5. テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物を加圧成形し、得られた成形体に放射線を照射することによって前記重合体および/または共重合体を架橋させる工程を含む、テトラフルオロエチレンポリマーアロイの成形体を製造する方法。
  6. 前記放射線の照射処理が酸素濃度200ppm以下の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲で行われ、放射線の吸収線量が0.1kGy〜20MGyである、請求項5に記載の製造方法。
  7. 表面を平滑にした基材をテトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物で被覆し、この混合物からなる被覆に放射線を照射することによって前記重合体および/または共重合体を架橋させ、次いで前記基材から被覆を剥離または分離させるかあるいは前記基材を溶解させることによって、薄膜状のテトラフルオロエチレンポリマーアロイを製造する方法。
  8. 前記基材から前記被覆を剥離または分離する処理が−20℃〜150℃の溶液中で行われることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記基材から前記被覆を剥離または分離する処理が、被覆された前記基材を65℃以上の温度から30℃以下の温度に急冷することによって行われることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
  10. 前記基材を溶解させる処理が、基材の材料を溶かす有機溶媒または酸またはアルカリ性溶液を用いて行われることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
  11. 前記テトラフルオロエチレンポリマーアロイの膜厚が150μm以下であり、かつ膜厚の変化率が±10%以内であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
  12. 前記放射線の照射処理が酸素濃度200ppm以下の雰囲気中で室温から400℃の温度範囲で行われ、放射線の吸収線量が0.1kGy〜20MGyである、請求項7に記載の製造方法。
  13. テトラフルオロエチレン重合体と1種または2種以上のテトラフルオロエチレン系共重合体の混合物または2種以上の前記テトラフルオロエチレン系共重合体の混合物を成形体に加工し、この成形体に放射線を照射することによって前記重合体および/または共重合体を架橋させてテトラフルオロエチレンポリマーアロイとし、このポリマーアロイにさらに放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖にラジカルを生成させ、前記ポリマーアロイをスチレンモノマーまたはその変性モノマーと反応させて前記ラジカルの部位にスチレンのグラフト鎖を付与し、次いでポリマーアロイを酸化剤と反応させることによって前記グラフト鎖にイオン交換基を付与させる工程を含む、テトラフルオロエチレンポリマーアロイの成形体を製造する方法。
  14. 前記成形体は薄膜であることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記前記イオン交換基はスルホン酸基であることを特徴とする、請求項13または14に記載の製造方法。
  16. 前記ラジカルを生成させる工程は、真空中で前記ポリマーアロイに放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に捕捉ラジカルを生成させる工程を含む、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。
  17. 前記ラジカルを生成させる工程は、不活性ガス中で前記ポリマーアロイに放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に捕捉ラジカルを生成させ、次いで前記ポリマーアロイを酸素を含む雰囲気と反応させることによって前記捕捉ラジカルを過酸化ラジカルに転換する工程を含む、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。
  18. 前記ラジカルを生成させる工程は、酸素を含む雰囲気中で前記ポリマーアロイに放射線を照射することによってポリマーアロイの主鎖に過酸化ラジカルを生成させる工程を含む、請求項13から15のいずれかに記載の製造方法。
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