JP2005105069A - インクジェット用インク、液滴吐出装置および液滴吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 インク2の溶媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッド20におけるノズル91の目詰まりを防止することが可能な、インクジェット用インク2を提供する。
【解決手段】 インク2の溶媒のより高沸点の気液界面吸着剤をインク2に混入させることにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する構成とした。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インク2の溶媒の蒸発によるインク2の粘度増加や固形分の析出を抑制することが可能になり、ノズル91の目詰まりを防止することができる。なお、気液界面吸着剤は溶媒に対して表面配向性の強い液体である必要があり、シリコーンオイル、もしくはシランカップリング剤であることが望ましい。また、気液界面吸着剤の濃度は約0.1wt%以下であることが望ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 インク2の溶媒のより高沸点の気液界面吸着剤をインク2に混入させることにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する構成とした。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インク2の溶媒の蒸発によるインク2の粘度増加や固形分の析出を抑制することが可能になり、ノズル91の目詰まりを防止することができる。なお、気液界面吸着剤は溶媒に対して表面配向性の強い液体である必要があり、シリコーンオイル、もしくはシランカップリング剤であることが望ましい。また、気液界面吸着剤の濃度は約0.1wt%以下であることが望ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、インクジェット用インク、液滴吐出装置および液滴吐出方法に関するものである。
インクジェット法を用いたデバイスとして、有機EL装置やカラーフィルタ、金属配線、マイクロレンズアレイ等が挙げられる。これらのデバイスでは、インクジェットヘッドのノズルから機能性物質を含有する液体を基板上に吐出し、加熱や自然乾燥等により溶媒を蒸発させて、機能性薄膜を形成している(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−371196号公報
インクジェット法により吐出されるインクは、ノズルにおいて目詰まりを起こすことがないように、乾燥しにくい高沸点のインクに限定される。具体的には、特許文献1に記載されているように、最低でも150℃〜200℃以上、好ましくは250℃以上の高沸点のインクを使用する必要がある。
しかしながら、上述した高沸点のインクは、多くの場合高粘度であり、また機能性高分子材料の溶解性が低いという問題がある。そのため低濃度のインクを吐出していたので、成膜後の膜厚が薄くなり、所望の膜厚を得るためには何回か重ね打ちする必要があった。この場合、成膜工程のスループットが低く、また溶媒の無駄が多くなっていた。なお、これらの問題を解決するため、高機能性高分子の機能を落としてまで、溶解性を上げる試みもなされていた。
したがって、低粘度で溶解性のよい溶媒が求められている。しかし、それらの多くは低沸点である事が多い為、結果として低沸点な溶媒を用いたインクを吐出する術が切望されている。この場合、高濃度のインクを吐出することができるので、成膜後の膜厚が厚くなり、成膜工程のスループットが向上する。また、インクジェットで吐出する為には高沸点溶媒を用いないといけないという制約が無くなる為、沸点を気にせず、溶解性の高い溶媒を自由に選択できるようになる。今までのインクジェット用インクで用いられるような溶媒では溶解しにくい、もしくは溶解しない機能性物質を、低沸点ではあるが溶解しやすい、もしくは溶解するような溶媒を用いる事で、所望の濃度の安定吐出可能なインクを作成できる可能性が増すことから、インクジェットの工業用途が大幅に広がる可能性がある。
なお、低沸点のインクに保湿材として高沸点溶媒を混合することにより、インクの目詰まりを防止する方法が提案されている。しかし、インク自体の乾き易さは混合する高沸点溶媒の量に依存しており、混合量を増やせばそれだけ乾きにくくなる反面、高粘度や低溶解性などのデメリットの割合も増加する。さらに混合溶媒にすることで、成膜時の乾燥速度差による膜ムラが生じたり、膜の物性値が変化したりと、問題点も多く生じる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することが可能な、インクジェット用インク、液滴吐出装置および液滴吐出方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット用インクは、インクジェット用インクの溶媒または分散媒より高沸点であり、かつインクジェット用インクの溶媒に対して表面配向性を持つ気液界面吸着剤が混入されていることを特徴とする。
この構成によれば、インクに混入された高沸点の気液界面吸着剤を、インクのメニスカス部に吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、低沸点のインクの溶媒または分散媒が蒸発することによるインクの粘度増加や固形分の析出を抑制することが可能になる。したがって、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクに混入された高沸点の気液界面吸着剤を、インクのメニスカス部に吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、低沸点のインクの溶媒または分散媒が蒸発することによるインクの粘度増加や固形分の析出を抑制することが可能になる。したがって、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記気液界面吸着剤は、インクジェット用インクに用いる溶媒に対して表面配向性を持つ溶媒であり、シリコーンオイルもしくはシランカップリング剤であることが望ましい。
この構成によれば、高沸点のシリコーンオイルもしくはシランカップリング剤をインクのメニスカス部に吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、高沸点のシリコーンオイルもしくはシランカップリング剤をインクのメニスカス部に吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記気液界面吸着剤の濃度は、約1.0×10−7wt%以上、約0.1wt%以下であることが望ましい。
この構成によれば、成膜後に残留する気液界面吸着剤が、膜の性質に及ぼす影響は少ない。
この構成によれば、成膜後に残留する気液界面吸着剤が、膜の性質に及ぼす影響は少ない。
一方、本発明の液滴吐出装置は、インクジェット用インクのメニスカス部に対して、前記インクの溶媒または分散媒より高沸点の気液界面吸着剤を吸着させる、吸着手段を有することを特徴とする。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
なお前記吸着手段は、インクジェットヘッドのインク流路に対して前記気液界面吸着剤を供給する構成としてもよい。特に前記吸着手段は、前記インクジェットヘッドのノズル近傍における前記インク流路に対して前記気液界面吸着剤を供給する構成とすることが望ましい。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記吸着手段は、インクジェットヘッドのノズル外側から前記気液界面吸着剤を吹き付ける構成としてもよい。特に前記吸着手段は、前記気液界面吸着剤をミスト状にして吹き付ける構成とすることが望ましい。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記吸着手段は、インクジェットヘッドのノズル先端部に前記気液界面吸着剤を塗布する構成としてもよい。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクジェットヘッドに充填されたインクのメニスカス部に、高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
一方、本発明の液滴吐出方法は、インクジェット用インクのメニスカス部に対して、前記インクの溶媒または分散媒より高沸点であり、かつ前記溶媒または前記分散媒に対して表面配向性を持つ気液界面吸着剤を吸着させることを特徴とする。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
なお前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのインク流路に対して供給する構成としてもよい。特に前記気液界面吸着剤を、前記インクジェットヘッドのノズル近傍における前記インク流路に対して供給する構成とすることが望ましい。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのノズル外側から吹き付ける構成としてもよい。特に前記気液界面吸着剤を、ミスト状にして吹き付ける構成とすることが望ましい。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インクの溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
また前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのノズル先端部に塗布する構成としてもよい。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インク溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
この構成によれば、インクのメニスカス部に高沸点の気液界面吸着剤を吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、インク溶媒または分散媒が低沸点の場合でも、インクジェットヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
[第1実施形態]
最初に、本発明の第1実施形態につき、図1ないし図3を用いて説明する。第1実施形態では、あらかじめインクジェット用インクの溶媒に対して表面配向性を持つような気液界面吸着剤を混入させたインクジェット用インク(以下、単にインクと呼ぶ)を、インクジェットヘッド(以下、単にヘッドと呼ぶ)に充填して、インクのメニスカス部に気液界面吸着剤の被膜を形成する。
最初に、本発明の第1実施形態につき、図1ないし図3を用いて説明する。第1実施形態では、あらかじめインクジェット用インクの溶媒に対して表面配向性を持つような気液界面吸着剤を混入させたインクジェット用インク(以下、単にインクと呼ぶ)を、インクジェットヘッド(以下、単にヘッドと呼ぶ)に充填して、インクのメニスカス部に気液界面吸着剤の被膜を形成する。
[インクジェット用インク]
一般に、液滴吐出装置を用いて機能性薄膜を形成する場合、溶質である機能性薄膜の形成材料を、溶媒である液体に溶解させてインクを作製する。本実施形態では、さらにインクの溶媒に対して表面配向性を持つような気液界面吸着剤を混入させてインクを作製する。この気液界面吸着剤とは、気体と液体との自由表面に吸着して被膜を形成する物質である。
図1は、インクジェットヘッドのノズル部における側面断面の部分拡大図であって、気液界面吸着剤の吸着状態の説明図である。図1に示すように、インク2に混入された気液界面吸着剤は、ヘッド20のノズル91における自由表面(メニスカス部)4に吸着して、被膜6を形成する。
一般に、液滴吐出装置を用いて機能性薄膜を形成する場合、溶質である機能性薄膜の形成材料を、溶媒である液体に溶解させてインクを作製する。本実施形態では、さらにインクの溶媒に対して表面配向性を持つような気液界面吸着剤を混入させてインクを作製する。この気液界面吸着剤とは、気体と液体との自由表面に吸着して被膜を形成する物質である。
図1は、インクジェットヘッドのノズル部における側面断面の部分拡大図であって、気液界面吸着剤の吸着状態の説明図である。図1に示すように、インク2に混入された気液界面吸着剤は、ヘッド20のノズル91における自由表面(メニスカス部)4に吸着して、被膜6を形成する。
特に本実施形態では、インク2の溶媒より高沸点で表面配向性を持つような気液界面吸着剤を採用する。この気液界面吸着剤の被膜6をメニスカス部4に形成すれば、溶媒の蒸発によるインク2の粘度増加や固形分の析出を抑制することが可能になり、ノズル部91における目詰まりを防止することができる。なお高沸点の気液界面吸着剤として、溶媒の2倍程度の沸点を有するものや、溶媒より100℃程度沸点が高いものを採用することが望ましい。また気液界面吸着剤として、従来のインクに採用されていた高沸点の溶媒と同等の沸点を有するものを採用すれば、少なくとも従来と同様にノズルの目詰まりを防止することができる。しかも、低沸点の溶媒を使用することが可能になり、製膜工程のスループットを向上させることができる。
また、インク2に対する気液界面吸着剤の混入割合は、飽和吸着濃度以上、0.1wt%以下とすることが望ましい。飽和吸着濃度は、溶媒への溶解性および分子量によって異なるが、例えば、約1.0×10−7wt%である。気液界面吸着剤の混入割合が少なすぎると、インク2のメニスカス部4に一様な被膜6が形成されにくくなり、ノズル91の目詰まりを防止することが困難になるからである。逆に、気液界面吸着剤の混入割合が多すぎると、成膜後に残留する気液界面吸着剤が多くなって、膜の性質に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
具体的な気液界面吸着剤の一つとして、シリコーンオイルを採用する。シリコーンオイルとは、線状で低重合度のシリコーンであり、常温で流動性を示すものをいう。なおシリコーンとは、ケイ素原子および酸素原子によるシロキサン結合の繰り返し構造からなるポリシロキサンのうち、アルキル基やアニール基などの有機基を持つものをいう。また側鎖の官能基を選択的に変更させた、水溶性、非水溶性のシリコーンオイルがある。代表的なシリコーンオイルであるポリジメチルシロキサンは、次の化学式で表される物質である。
シリコーンオイルの沸点は、シロキサン結合の重合度によって異なる。そこで、インク2の溶媒より高沸点となるように重合度を調整したシリコーンオイルを採用する。なお一例を挙げれば、シリコーンオイルの沸点は300℃程度である。このシリコーンオイルより低沸点のインク溶媒として、水(沸点100℃)やエタノール(沸点78℃)、キシレン(沸点138.4℃〜144.4℃)等を採用することが可能になる。
別の具体的な気液界面吸着剤として、シランカップリング剤を採用する。シランカップリング剤とは、一般になじみの悪い無機材料および有機材料の両者と化学結合できる官能基を持つ有機ケイ素化合物である。Y〜CH2SiX3の一般式を持つ。Xはアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基である。Yは有機質と反応しやすいビニル基、エポキシ基、アミノ基などである。
シランカップリング剤の沸点は、主に一般式中のYの分子量によって異なる。そこでインク2の溶媒より高沸点となるような分子量の大きいシランカップリング剤を採用する。なお一例を挙げれば、オクタデシルトリメトキシシランの沸点は170℃程度である。このシランカップリング剤より低沸点のインク溶媒として、水(沸点100℃)やエタノール(沸点78℃)、キシレン(沸点138℃〜144.4℃)等を採用することが可能になる。
[液滴吐出装置]
上述したインクジェット用インクは、液滴吐出装置によって吐出する。図2は、液滴吐出装置の斜視図である。液滴吐出装置10は、ベース12、第1移動手段14、第2移動手段16、重量測定手段である電子天秤(不図示)、ヘッド20、キャッピングユニット22、およびクリーニングユニット24を主として構成されている。第1移動手段14および第2移動手段16を含む液滴吐出装置10の動作は、制御装置23により制御されるようになっている。なお図2において、X方向はベース12の左右方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
第1移動手段14は、ガイドレール40,40をY軸方向に一致させて、ベース12の上面に直接設置されている。この第1移動手段14は、ガイドレール40,40に沿って移動可能なスライダ42を有している。このスライダ42の駆動手段として、たとえばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ42がY軸方向に沿って移動可能とされ、また任意の位置で位置決め可能とされている。
スライダ42の上面にはモータ44が固定され、モータ44のロータにはテーブル46が固定されている。このテーブル46は、基板48を保持しつつ位置決めするものである。すなわち、図示しない吸着保持手段を作動させることにより、テーブル46の穴46Aを通して基板48が吸着され、基板48をテーブル46上に保持することができる。また、モータ44は、たとえばダイレクトドライブモータである。このモータ44に通電することにより、ロータとともにテーブル46がθz方向に回転して、テーブル46をインデックス(回転割り出し)することができるようになっている。なお、テーブル46には、ヘッド20がインクを捨打ち、或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリアが設けられている。
一方、ベース12の後方には支柱16A、16Aが立設され、その支柱16A,16Aの上端部にコラム16Bが架設されている。そして、そのコラム16Bの前面に第2移動手段16が設けられている。この第2移動手段16は、X軸方向に沿って配置されたガイドレール62A,62Aを有し、またガイドレール62A,62Aに沿って移動可能なスライダ60を有している。このスライダ60の駆動手段として、たとえばリニアモータを採用することができる。これにより、スライダ60がX軸方向に沿って移動可能とされ、また任意の位置で位置決め可能とされている。
スライダ60には、ヘッド20が設けられている。ヘッド20は、揺動位置決め手段としてのモータ62,64,66,68に接続されている。モータ62は、ヘッド20をZ軸方向に移動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ64は、ヘッド20をY軸回りのβ方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ66は、ヘッド20をX軸回りのγ方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。モータ68は、ヘッド20をZ軸回りのα方向に揺動可能とし、また任意の位置で位置決め可能とするものである。
以上のように、基板48はY方向に移動および位置決め可能とされ、θz方向に揺動および位置決め可能とされている。また、ヘッド20はX,Z方向に移動および位置決め可能とされ、α,β,γ方向に揺動および位置決め可能とされている。したがって、本実施形態の液滴吐出装置10は、ヘッド20のインク吐出面20Pと、テーブル46上の基板48との相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
[インクジェットヘッド]
ここで、ヘッド20の構造例について、図3を参照して説明する。図3は、インクジェットヘッドの側面断面図である。ヘッド20は、液滴吐出方式によりインク2をノズル91から吐出するものである。液滴吐出方式として、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクに熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。そこで、図3のヘッド20には、上述したピエゾ方式が採用されている。
ここで、ヘッド20の構造例について、図3を参照して説明する。図3は、インクジェットヘッドの側面断面図である。ヘッド20は、液滴吐出方式によりインク2をノズル91から吐出するものである。液滴吐出方式として、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクに熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。そこで、図3のヘッド20には、上述したピエゾ方式が採用されている。
ヘッド20のヘッド本体90には、リザーバ95およびリザーバ95から分岐された複数のインク室93が形成されている。リザーバ95は、各インク室93にインクを供給するための流路になっている。また、ヘッド本体90の下端面には、インク吐出面を構成するノズルプレートが装着されている。そのノズルプレートには、インクを吐出する複数のノズル91が、各インク室93に対応して開口されている。そして、各インク室93から対応するノズル91に向かって、インク流路が形成されている。一方、ヘッド本体90の上端面には、振動板94が装着されている。なお、振動板94は各インク室93の壁面を構成している。その振動板94の外側には、各インク室93に対応して、ピエゾ素子92が設けられている。ピエゾ素子92は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路99に接続されている。
そして、駆動回路99からピエゾ素子92に電圧を印加すると、ピエゾ素子92が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子92が収縮変形すると、インク室93の圧力が低下して、リザーバ95からインク室93にインク2が流入する。またピエゾ素子92が膨張変形すると、インク室93の圧力が増加して、ノズル91からインク2が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子92の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子92への印加電圧を制御することにより、インク2の吐出条件を制御しうるようになっている。
一方、図2に示すキャッピングユニット22は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの乾燥を防止するため、液滴吐出装置10の待機時にインク吐出面20Pをキャッピングするものである。またクリーニングユニット24は、ヘッド20におけるノズルの目詰まりを取り除くため、ノズルの内部を吸引するものである。なおクリーニングユニット24は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの汚れを取り除くため、インク吐出面20Pのワイピングを行うことも可能である。
[液滴吐出方法]
次に、上述した液滴吐出装置10を用いてインクを吐出し、基板48上に機能性薄膜を形成する方法について説明する。
次に、上述した液滴吐出装置10を用いてインクを吐出し、基板48上に機能性薄膜を形成する方法について説明する。
まず、吐出すべきインクを作製する。そのインクは、機能性薄膜の構成材料を溶媒に溶解し、さらに気液界面吸着剤を混入して作製する。その気液界面吸着剤として、上述したシリコーンオイルを採用する。なお重合度を調整することにより、溶媒より沸点の高いシリコーンオイルを採用する。またシリコーンオイルは、0.1wt%以下の割合でインクに混入する。なお後述するように、溶媒には低沸点の溶媒を使用することが可能である。また、低沸点の溶媒の多くは溶質の溶解性が高いことから、高濃度の溶質を含むインクを作製することも可能である。
次に、作製したインクをヘッド20に充填する。具体的には、作製したインクを図示しないタンクに充填し、ポンプ等によりヘッド20に供給する。ヘッド20に供給されたインクは、図3に示すように、リザーバ95から各インク室93に分配され、さらにノズル91の内部に充填される。なおノズル91の先端部には、インクの自由表面(メニスカス部)4が形成される。
すると、図1に示すように、インク2に混入されていたシリコーンオイルが、インク2のメニスカス部4に吸着して、シリコーンオイルの被膜6が形成される。ここで、シリコーンオイルの沸点は溶媒より高く設定されているので、メニスカス部4における溶媒の蒸発を抑制することが可能になり、インク2の粘度増加や固形分の析出を抑制することができる。したがって、低沸点の溶媒を使用する場合でも、ノズル91における目詰まりを防止することができる。
次に、図2に示すヘッド20および/または基板48を所定位置に移動させ、ヘッド20から基板48に対してインクを吐出する。上述したように本実施形態では、ヘッド20におけるノズルの目詰まりを防止することができるので、ヘッド20から所定量のインク2を所定位置に正確に吐出することができる。
その後、吐出されたインクを乾燥させて溶媒を蒸発させれば、所望の機能性薄膜を焼成することができる。なお焼成された機能性薄膜に、シリコーンオイルが残留する場合がある。しかし、インクに対するシリコーンオイルの混入割合は約0.1wt%以下と微量であり、膜の性質に及ぼす影響は少ない。
その後、吐出されたインクを乾燥させて溶媒を蒸発させれば、所望の機能性薄膜を焼成することができる。なお焼成された機能性薄膜に、シリコーンオイルが残留する場合がある。しかし、インクに対するシリコーンオイルの混入割合は約0.1wt%以下と微量であり、膜の性質に及ぼす影響は少ない。
以上に詳述したように、第1実施形態の液滴吐出方法は、あらかじめ気液界面吸着剤を混入させたインクをヘッドに充填して、インクのメニスカス部に気液界面吸着剤の被膜を形成する構成とした。この構成によれば、インクに混入された高沸点の気液界面吸着剤をインクのメニスカス部に吸着させて、被膜を形成することができる。この被膜によりメニスカス部での蒸発を抑制する事が可能となり、低沸点の溶媒の蒸発によるインクの粘度増加や固形分析出が抑制されて、ヘッドにおけるノズルの目詰まりを防止することができる。これにともなって、低沸点の溶媒を用いてインクを作製することが可能になる。低沸点の溶媒の多くは低粘度であるため、インクを安定吐出することができる。また、低沸点の溶媒の多くは溶質の溶解性が高いものが多く、高濃度であったり、もしくは一般には溶け難い溶質を含んだインクジェットで安定吐出可能なインクを作製することができる。これにより、成膜後の膜厚が厚くなるので、インクの重ね打ちが不要となり、成膜工程のスループットを向上させることができる。
[有機EL装置]
次に、本実施形態の液滴吐出方法を使用して製造した有機EL装置につき、図7を用いて説明する。
有機EL装置200は、マトリクス状に配置された複数の画素領域R,G,Bを備えている。基板210の表面には各画素領域を駆動する回路部220が形成され、その回路部220の表面には複数の画素電極240がマトリクス状に形成されている。なお各画素電極240の周囲には、電気絶縁性材料からなるバンク245が形成されている。陽極として機能する画素電極240の表面には、正孔注入層250および発光層260が順次形成されている。さらに、発光層260およびバンク245の表面全体に、電子注入層270および共通陰極280が形成されている。なお、基板210の端部に封止基板(不図示)が貼り合わされて、全体が密閉封止されている。
次に、本実施形態の液滴吐出方法を使用して製造した有機EL装置につき、図7を用いて説明する。
有機EL装置200は、マトリクス状に配置された複数の画素領域R,G,Bを備えている。基板210の表面には各画素領域を駆動する回路部220が形成され、その回路部220の表面には複数の画素電極240がマトリクス状に形成されている。なお各画素電極240の周囲には、電気絶縁性材料からなるバンク245が形成されている。陽極として機能する画素電極240の表面には、正孔注入層250および発光層260が順次形成されている。さらに、発光層260およびバンク245の表面全体に、電子注入層270および共通陰極280が形成されている。なお、基板210の端部に封止基板(不図示)が貼り合わされて、全体が密閉封止されている。
上述した発光層260の構成材料として、高分子材料が好適に用いられる。そこで、その高分子材料を溶質とするインクを作製し、本実施形態の液滴吐出方法を用いて発光層を形成する。具体的には、まず発光層の構成材料である高分子材料を溶媒に溶解する。その溶媒として、トルエン、キシレン等の低沸点の無極性溶媒を使用することが可能である。その溶液に、シリコーンオイルを0.1wt%以下の割合で混入させて、インクジェット用インクを作製する。そして、液滴吐出装置によりインクを正孔注入層250の表面に吐出する。さらに吐出されたインクを乾燥させて、発光層260を焼成する。
本実施形態の液滴吐出方法を使用することにより、高濃度の高分子材料を含む低沸点のインクを吐出することが可能になる。したがって、発光層形成工程のスループットを向上させることができる。なお発光層260以外の機能層についても、各実施形態の液滴吐出方法を使用して形成することにより、製造工程のスループットを向上させることが可能である。また有機EL装置の機能層以外にも、カラーフィルタや金属配線、マイクロレンズアレイなどを、各実施形態の液滴吐出方法を使用して製造することにより、製造工程のスループットを向上させることが可能である。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態につき、図4を用いて説明する。第2実施形態では、ヘッド20内部に充填されたインク2に対して、気液界面吸着剤を供給することにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第2実施形態につき、図4を用いて説明する。第2実施形態では、ヘッド20内部に充填されたインク2に対して、気液界面吸着剤を供給することにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
図4は、インクジェットヘッドのノズル部における側面断面の部分拡大図である。第2実施形態の液滴吐出装置は、気液界面吸着剤の吸着手段120を備えている。この吸着手段120は、気液界面吸着剤を貯留するタンク122と、そのタンク122からヘッド20に対して気液界面吸着剤を供給する配管124と、その配管124の途中に配設されたポンプ126とを主として構成されている。
配管124の先端部はヘッド20のインク流路に接続され、インク流路を流れるインク2に対して気液界面吸着剤を供給し得るようになっている。なお、気液界面吸着剤はノズル91先端のメニスカス部4に吸着するので、ノズル91近傍のインク流路に対して気液界面吸着剤を供給することが望ましい。この場合、気液界面吸着剤の供給直後に被膜6を形成することができるので、インク2の乾燥によるノズル91の目詰まりを防止することができる。またポンプ126は、ヘッド20に対して気液界面吸着剤を強制供給するとともに、ヘッド20に対する気液界面吸着剤の供給量を調整しうるように形成されている。
次に、第2実施形態の液滴吐出装置を用いた液滴吐出方法について説明する。まず、吸着手段120を稼動させて、ヘッド20に気液界面吸着剤を供給する。具体的には、配管124に配設されたポンプ126を運転して、ヘッド20のインク流路を流れるインク2に対して気液界面吸着剤を供給する。すると、インク2に混入した気液界面吸着剤が、インク2のメニスカス部4に吸着して被膜6が形成される。なお、ポンプ126の運転条件を制御して、インク2に対する気液界面吸着剤の混入割合が約0.1wt%以下となるように気液界面吸着剤を供給する。その後、ヘッド20から基板に対してインクを吐出する。さらに、吐出されたインクを乾燥させて、機能性薄膜を焼成する。
なお、溶媒の蒸発によるノズル91の目詰まりが液滴吐出装置の動作中に発生することは少ないので、少なくとも液滴吐出装置の待機中に気液界面吸着剤の被膜を形成すれば足りる。したがって、液滴吐出装置を待機状態とする前の一定時間だけ、気液界面吸着剤を供給する構成としてもよい。なお、待機中の液滴吐出装置に対して所定時間おきに気液界面吸着剤を供給すれば、液滴吐出装置を長時間待機させてもノズル91の目詰まりを発生させることがない。上記の場合、気液界面吸着剤の消費量を低減し得るだけでなく、成膜された機能性薄膜に気液界面吸着剤が残留することがない。さらに、吸着手段120の運転コストを低減することも可能である。
上述した第2実施形態では、ヘッド内部に充填されたインクに対して、高沸点の気液界面吸着剤を混入させることにより、インクのメニスカス部に被膜を形成する。この場合にも、第1実施形態と同様に、ノズルの目詰まりを防止することができる。これにともなって、低沸点の溶媒を用いて低粘度のインクを作製することが可能になり、インクを安定吐出することができる。また、低沸点の溶媒を用いて高濃度のインクを作製することが可能になり、製膜工程のスループットを向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態につき、図5を用いて説明する。第3実施形態では、ノズル91の外側から気液界面吸着剤を吹き付けることにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第3実施形態につき、図5を用いて説明する。第3実施形態では、ノズル91の外側から気液界面吸着剤を吹き付けることにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
図5は、液滴吐出装置のインクジェットヘッド近傍における側面断面の部分拡大図である。第3実施形態の液滴吐出装置は、気液界面吸着剤の吸着手段130を備えている。この吸着手段130は、ノズル91に向かって気液界面吸着剤を噴霧しうるように形成されている。なお吸着手段130は、気液界面吸着剤をミスト状にして噴霧しうるように形成することが望ましい。これにより、インク2のメニスカス部4に一様な被膜6を形成することができる。
次に、第3実施形態の液滴吐出装置を用いた液滴吐出方法について説明する。第3実施形態では、吸着手段130を稼動させて、ノズル91の外側から気液界面吸着剤を吹き付ける。すると、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤が吸着して被膜6が形成される。なお、吸着手段130による吹き付け量を制御して、メニスカス部4における被膜の膜厚を調整する。また、溶媒の蒸発によるノズルの目詰まりが液滴吐出装置の動作中に発生することは少ないので、液滴吐出装置を待機状態とする前に気液界面吸着剤を吹き付ければよい。
上述した第3実施形態では、ノズルの外側から高沸点の気液界面吸着剤を吹き付けることによって、インクのメニスカス部に被膜を形成する。この場合にも、第1実施形態と同様に、ノズルの目詰まりを防止することができる。これにともなって、低沸点の溶媒を用いて低粘度のインクを作製することが可能になり、インクを安定吐出することができる。また、低沸点の溶媒を用いて高濃度のインクを作製することが可能になり、製膜工程のスループットを向上させることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態につき、図6を用いて説明する。第4実施形態では、ノズル91の先端に気液界面吸着剤を塗布することにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第4実施形態につき、図6を用いて説明する。第4実施形態では、ノズル91の先端に気液界面吸着剤を塗布することにより、インク2のメニスカス部4に気液界面吸着剤の被膜6を形成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
図6は、液滴吐出装置のインクジェットヘッド近傍における側面断面の部分拡大図である。第4実施形態の液滴吐出装置は、気液界面吸着剤の吸着手段140を備えている。この吸着手段140は、気液界面吸着剤の塗布シート142と、塗布シート142に対する気液界面吸着剤の噴霧手段144と、塗布シート142の繰り出しローラ146、巻き取りローラ149、第1ガイドローラ147および第2ガイドローラ148とを主として構成されている。塗布シート142は、不織布等によって構成され、繰り出しローラ146から第1ガイドローラ147および第2ガイドローラ148を介して巻き取りローラ149に巻き回されている。その繰り出しローラ146と第1ガイドローラ147との間における塗布シート142に対向して、気液界面吸着剤の噴霧手段144が設けられている。
次に、第4実施形態の液滴吐出装置を用いた液滴吐出方法について説明する。第4実施形態では、吸着手段140を稼動させて、ノズル91の先端部に気液界面吸着剤を塗布する。具体的には、まず噴霧手段144から塗布シート142に対して気液界面吸着剤を吹き付ける。次に、気液界面吸着剤が付着した塗布シート142を巻き取って、第1ガイドローラ147と第2ガイドローラ148との間まで移動させる。そして、吸着手段140およびヘッド20を相互に接近させ、塗布シート142をヘッド20に押し当てる。すると、塗布シート142に付着した気液界面吸着剤がインク2のメニスカス部4に吸着して、気液界面吸着剤の被膜6が形成される。なお、溶媒の蒸発によるノズルの目詰まりが液滴吐出装置の動作中に発生することは少ないので、液滴吐出装置を待機状態とする前に気液界面吸着剤を塗布すればよい。
上述した第4実施形態では、ノズルの先端に気液界面吸着剤を塗布することによって、インクのメニスカス部に被膜を形成する。この場合にも、第1実施形態と同様に、ノズルの目詰まりを防止することができる。これにともなって、低沸点の溶媒を用いて低粘度のインクを作製することが可能になり、インクを安定吐出することができる。また、低沸点の溶媒を用いて高濃度のインクを作製することが可能になり、製膜工程のスループットを向上させることができる。
[電子機器]
次に、各実施形態の液滴吐出方法を使用して形成した電子機器につき、図8を用いて説明する。図8は、携帯電話の斜視図である。図8において符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000は、各実施形態の液滴吐出方法を使用して形成した表示部1001を備えている。したがって、良好な表示特性を発揮する携帯電話1000を低コストで提供することができる。
次に、各実施形態の液滴吐出方法を使用して形成した電子機器につき、図8を用いて説明する。図8は、携帯電話の斜視図である。図8において符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000は、各実施形態の液滴吐出方法を使用して形成した表示部1001を備えている。したがって、良好な表示特性を発揮する携帯電話1000を低コストで提供することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。例えば、以上には溶質を溶媒に溶解させた溶液でインクジェット用インクを構成する場合を例にして説明したが、分散質を分散媒に分散させた分散液でインクジェット用インクを構成する場合にも本発明を適用することが可能である。
第1実施形態と同様に、気液界面吸着剤を混入させたインクを作成して、気液界面吸着剤を混入させないインクとの比較を行った。
まず、ポリスチレン微粒子(粒径1.5μm)をキシレンに1.0wt%分散させて、インクAを作製した。また、インクAにシリコーンオイルを0.1wt%添加して、インクBを作成した。そして、インクAおよびインクBをそれぞれ液滴吐出装置から吐出して、インクジェットヘッドのノズルにおける目詰まりの発生有無を調査した。
その結果、インクAを用いた場合には、ノズル部でインクがすぐに乾燥してしまい、ポリスチレン微粒子が析出、凝集して、目詰まりが発生した。したがって、インクAでは安定吐出が不可能であった。一方、インクBを用いた場合には、目詰まりが発生することなく、安定吐出が可能であった。
2インク 4メニスカス部 6被膜 20インクジェットヘッド 91ノズル
Claims (15)
- インクジェット用インクの溶媒または分散媒より高沸点であり、かつ前記溶媒または前記分散媒に対して表面配向性を持つ気液界面吸着剤が混入されていることを特徴とするインクジェット用インク。
- 前記気液界面吸着剤は、シリコーンオイル、又はシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記気液界面吸着剤の濃度は、前記インクジェット用インクに対して約1.0×10−7wt%以上、約0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット用インク。
- インクジェット用インクのメニスカス部に対して、前記インクの溶媒または分散媒より高沸点の気液界面吸着剤を吸着させる、吸着手段を有することを特徴とする液滴吐出装置。
- 前記吸着手段は、インクジェットヘッドのインク流路に対して前記気液界面吸着剤を供給することを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
- 前記吸着手段は、前記インクジェットヘッドのノズル近傍における前記インク流路に対して前記気液界面吸着剤を供給することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
- 前記吸着手段は、インクジェットヘッドのノズル外側から前記気液界面吸着剤を吹き付けることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
- 前記吸着手段は、前記気液界面吸着剤をミスト状にして吹き付けることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
- 前記吸着手段は、インクジェットヘッドのノズル先端部に前記気液界面吸着剤を塗布することを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
- インクジェット用インクのメニスカス部に対して、前記インクの溶媒または分散媒より高沸点であり、かつ前記溶媒または前記分散媒に対して表面配向性を持つ気液界面吸着剤を吸着させることを特徴とする液滴吐出方法。
- 前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのインク流路に対して供給することを特徴とする請求項10に記載の液滴吐出方法。
- 前記気液界面吸着剤を、前記インクジェットヘッドのノズル近傍における前記インク流路に対して供給することを特徴とする請求項11に記載の液滴吐出方法。
- 前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのノズル外側から吹き付けることを特徴とする請求項10に記載の液滴吐出方法。
- 前記気液界面吸着剤を、ミスト状にして吹き付けることを特徴とする請求項13に記載の液滴吐出方法。
- 前記気液界面吸着剤を、インクジェットヘッドのノズル先端部に塗布することを特徴とする請求項10に記載の液滴吐出方法。
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JP2003338196A JP2005105069A (ja) | 2003-09-29 | 2003-09-29 | インクジェット用インク、液滴吐出装置および液滴吐出方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013234295A (ja) * | 2012-05-10 | 2013-11-21 | Konica Minolta Inc | ガラス用インクジェットインクセット及びそれを用いたインクジェット記録方法 |
JP2017502485A (ja) * | 2013-10-31 | 2017-01-19 | カティーバ, インコーポレイテッド | インクジェット印刷のためのポリチオフェン含有インク組成物 |
-
2003
- 2003-09-29 JP JP2003338196A patent/JP2005105069A/ja not_active Withdrawn
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