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JP2005163134A - 細孔構造体およびその製造方法 - Google Patents

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JP2005163134A JP2003405829A JP2003405829A JP2005163134A JP 2005163134 A JP2005163134 A JP 2005163134A JP 2003405829 A JP2003405829 A JP 2003405829A JP 2003405829 A JP2003405829 A JP 2003405829A JP 2005163134 A JP2005163134 A JP 2005163134A
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Yoshinori Miyanaga
美紀 宮永
Kazuhiko Oda
一彦 織田
Akihiko Ikegaya
明彦 池ヶ谷
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

【課題】 多様な機能を発現させることが可能な細孔構造体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の細孔構造体の製造方法は、陽極となる基体4に相手負極5を対向させて溶液3中で陽極酸化処理を行うことで基体4の表面に細孔を形成する方法であって、基体4の領域4aに相手負極5を対向させて第1の陽極酸化処理を行なって領域4aに第1の径を有する細孔を形成する工程と、相手負極5を基体4の領域4bと対向する位置へ基体4に対して相対的に走査する工程と、領域4bに相手負極5を対向させて第1の陽極酸化処理と異なる条件で第2の陽極酸化処理を行なって領域4bに第1の径と異なる第2の径を有する細孔を形成する工程とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、細孔構造体およびその製造方法に関するものであり、特に、金型、マスク材、発光素子およびフィルタ材に用いられる細孔構造体およびその製造方法に関するものである。
直立した細孔を作成する方法としてリソグラフィ技術が一般的である。フォトリソグラフィ、電子線露光、X線露光などとエッチング技術とを組合せた半導体加工技術によって直接的に細孔が形成される。この場合、細孔径を小さくするためには露光の波長を短くする必要があるが、処理費が高くなり、マスク材、レンズ径などの新たな開発が必要であった。
直立した細孔構造を安価に製造するには、自己組織的に細孔を形成する方法があり、この方法として陽極酸化処理がある。この手法は、硫酸、シュウ酸、フッ酸といった酸性溶液中で電界処理を行ない、陽極側を酸化させることで直立した細孔を得るものである。陽極材料としては、Al(アルミニウム)が有名であるが、Si(シリコン)などでも同様の構造が得られる。細孔の径および細孔間の間隔は、陽極酸化処理時の電流、電圧を調整することにより制御できる。
また、細孔の位置制御性を高めるために予め細孔起点を導入しておく方法も提案されている。この方法として、プレスパターニングにて加工物表面に窪みを形成する方法(特開平10−121292号公報)、フォトリソグラフィによる干渉露光を利用して非レジスト部を細孔起点とする方法(特開2000−315785号公報)、また細孔起点の深さを制御することで細孔形成領域と非細孔形成領域とを作成する方法(特開2001−213700号公報)が検討されている。
このような直立した細孔を持つ構造はさまざまな機能を発現可能であるが、従来技術では同一平面内において細孔径が単一であるために機能が制限されていた。同一平面内で異なる細孔径を実現するために、個別に作成した種々の細孔径を有する細孔構造体を貼り合せなどの方法で組合せることも可能である。しかし、この方法では、貼り合せコストが高く、貼り合せ可能な同一細孔径を有する領域の面積単位も大きなものしかできないなどの問題があった。またこれらの方法では得られる細孔径が大きいために、同一平面内に細孔径が異なる領域を形成できても、機能が全く発現しない場合があった。
また、陽極酸化処理において相手負極材を操作して、酸化膜を形成する方法としては特開平7−37790号公報、特開平9−251947号公報が挙げられる。ただし、これらの方法は酸化膜を形成するものの、直立した細孔を形成するものではない。
特開平10−121292号公報 特開2000−315785号公報 特開2001−213700号公報 特開平7−37790号公報 特開平9−251947号公報
上述したように直立した細孔を持つ構造はさまざまな機能を発現できるが、従来技術では同一平面内における細孔径が単一であるため、機能が制限されていた。また、得られる細孔径が大きいために、細孔径が異なる領域を形成しても、機能が発現しない。
細孔構造体をたとえば発光素子として用いる場合、細孔内部に半導体材料を充填するか、または細孔構造体そのものを発光材料として用いる方法がある。この場合、発光材料の波長は細孔径に依存するため、同じ半導体材料を用いていても細孔径が異なると発光する波長が異なる。しかし、従来技術では同一平面内における細孔径が単一であるため、単一波長のみの光しか得られなかった。また、発光波長に影響を与える程度の細孔径サイズは、大きくとも100nm以下である。
また、細孔構造体をたとえばフィルタ機能材として用いる場合、細孔構造体の表面に分子を流すと細孔径のサイズに依存した分子を分離することができる。しかし、従来技術では同一平面内における細孔径が単一であるため、単一サイズの分子しか分離することができなかった。また、分子の大きさを考えると分離に利用できる細孔径サイズは、大きくとも100nm以下である。
それゆえ本発明の目的は、多様な機能を発現させることが可能な細孔構造体およびその製造方法を提供することである。
本発明の細孔構造体は、平面もしくは曲面上に形成された直立した細孔を有する膜を備え、膜に形成された細孔の径が0.1nm以上100nm以下であり、その膜は複数の領域を有し、かつ複数の領域のそれぞれには異なる径の細孔が形成されており、複数の領域のそれぞれの面積が10nm2以上100cm2以下の範囲であり、複数の領域のそれぞれにおけるその膜の材質が酸化された材質を有することを特徴とするものである。
上記の細孔構造体においては好ましくは、その膜に形成された細孔の径が0.1nm以上50nm以下である。
上記の細孔構造体においては好ましくは、その膜の構成元素の少なくとも1つにIIB族もしくはIIIB族もしくはIVB族もしくは遷移金属のうち少なくとも1種類の元素が含まれている。
上記の細孔構造体においては好ましくは、隣り合う細孔間の距離が1nm以上300nm以下である。
上記の細孔構造体においては好ましくは、細孔構造体は金型およびマスク材のいずれか一方として利用される。
上記の細孔構造体においては好ましくは、細孔構造体は発光素子として利用される。
上記の細孔構造体においては好ましくは、細孔構造体はフィルタ機能材として利用される。
本発明の細孔構造体の製造方法は、陽極となる被処理体に負極となる電極を対向させて溶液中で被処理体に陽極酸化処理を行うことで細孔を形成する細孔構造体の製造方法であって、被処理体の各領域において陽極酸化処理の条件を変えることにより、被処理体の各領域のそれぞれに異なる径の細孔を形成することを特徴とするものである。
上記の細孔構造体の製造方法において好ましくは、電極を被処理体に対して相対的に走査させることにより被処理体の複数の領域のそれぞれに個別に対向させ、電極と対向した被処理体の領域ごとに異なる条件で陽極酸化処理が行なわれる。
上記の細孔構造体の製造方法において好ましくは、電極は被処理体の複数の領域のそれぞれに対向しており、被処理体の複数の領域のそれぞれに対向する電極の部分ごとに、電気抵抗と前記被処理体からの距離との少なくともいずれかが異なっている。
本発明の細孔構造体によれば、複数の領域のそれぞれには異なる径の細孔が形成されており、これらの細孔の径が0.1nm以上100nm以下と微細であり、かつ同一径の細孔を形成する領域の面積が10nm2以上100cm2以下の範囲で小さいため、多様な機能を発現させることが可能である。
径が0.1nm未満の細孔を形成することができず、また径が100nmを超える場合には必要とされる機能が発現しない。また、同一径の細孔を形成する領域の面積が10nm2未満の場合には個々の細孔が機能を発現していても細孔の数が少ないために実用上必要な性能を達成することができず、その面積が100cm2を超える場合には最終製品が大きくなりすぎ実用に値しない。
また、上記の細孔構造体を金型およびマスク材のいずれか一方として利用することにより、同一平面内に多様な凹凸形状を有する転写体を得ることができる。
また、上記の細孔構造体を発光素子として利用することにより、種々の発光波長を同時に得ることができる。
また、上記の細孔構造体をフィルタ機能材として利用することにより、多種のサイズの分子などを1回の操作でフィルタリングすることができる。
また本発明の細孔構造体の製造方法によれば、被処理体の各領域で陽極酸化処理の条件を変えることにより、被処理体の各領域にそれぞれ異なる径の細孔を形成することができるため、径の異なる微細な細孔を小さな領域に多数形成することが可能となる。このため、多様な機能を発現させることが可能なる。
また、1回目の陽極酸化処理の後に電極を被処理体に対して相対的に走査して2回目の陽極酸化処理を行なうことにより、またこのような電極走査と陽極酸化処理とを繰り返すことにより、多様な機能を発現させることが可能な細孔構造体を安価に製造することができる。
また、被処理体の複数の領域のそれぞれに対向する電極の部分ごとに、電気抵抗と被処理体からの距離との少なくともいずれかを異ならせることにより、多様な機能を発現させることが可能な細孔構造体を安価に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
本実施の形態の細孔構造体の製造方法においては、同一平面内に径の異なる細孔を有する細孔構造体を形成するために陽極酸化処理が行なわれている。この陽極酸化処理は、硫酸、シュウ酸、硝酸などの酸性水溶液中で陽極となる基体(被処理体)に負極となる相手負極(電極)を対向させて、基体と相手負極とのそれぞれに直流電力もしくはパルス化した直流電力を導入することにより行なわれる。この電力の導入により、陽極である基体に細孔を有する酸化膜が形成される。このとき形成される細孔は基体表面に対して直立しており、細孔径は電力値によって変化する。一般的に電力値が高いと細孔径は大きくなるといわれている。そして、基体の第1の領域と第2の領域とで陽極酸化処理の条件が変えられることにより、第1の領域に第1の径を有する細孔が形成され、第2の領域に第1の径と異なる第2の径を有する細孔が形成される。
なお、相手負極には白金、ニッケル(Ni)などの耐腐食材料が用いられる。
次に本実施の形態の具体的な細孔構造体の製造方法について説明する。
図1(a)および(b)は、本発明の一実施の形態における細孔構造体の製造方法の第1の例を工程順に示す概念図である。図1(a)を参照して、容器2内の硫酸、シュウ酸、フッ酸などの電解溶液3中に、基体4と相手負極5とが配置される。相手負極5が基体4の領域4aに対向するように位置付けられる。この状態で、直流電源1により基体4と相手負極5との間に電圧を印加することにより第1の陽極酸化処理が行なわれて、領域4aにのみ第1の径の細孔を有する酸化膜が形成される。
図1(b)を参照して、相手負極5が領域4aと対向する位置から領域4bと対向する位置へ基体4に対して相対的に走査される。本実施の形態においては、基体4が固定されて相手負極5が移動するが、相手負極5が固定されて基体4が移動してもよく、また基体4と相手負極5との双方が移動してもよい。この走査により相手負極5が基体4の領域4bに対向するように位置付けられる。この状態で、直流電源1により基体4と相手負極5との間に電圧を印加することにより、第1の陽極酸化処理と異なる条件(たとえば基体4と相手負極5との距離を変える、または基体4と相手負極5とに印加する電圧値を変える)で、第2の陽極酸化処理が行なわれて、領域4bにのみ第1の径とは異なる第2の径の細孔を有する酸化膜が形成される。
このような操作を複数回繰り返すことにより、同一平面内の各領域4a、4bなど毎に異なる径の細孔を形成することが可能である。また、各細孔の径を0.1nm以上100nm以下と微細にすることが可能であり、かつ各領域4a、4bなどの面積を10nm2以上100cm2以下の範囲で形成することが可能である。
図2は、本発明の一実施の形態における細孔構造体の製造方法の第2の例を示す概念図である。図2を参照して、容器2内の硫酸、シュウ酸、フッ酸などの電解溶液3中に、基体4と相手負極5とが配置される。相手負極5は、その部分5c〜5gのそれぞれが基体4の各領域4c〜4gのそれぞれに対向するように位置付けられる。相手負極5の基体4と対向する表面は予めパターニングされており、高低差が設けられている。これにより、相手負極5の各部分5c〜5gの各電気抵抗値と基体4からの各距離とが異なっている。たとえば相手負極5の部分5cの電気抵抗および基体4からの距離は、相手負極5の部分5d〜5gの各電気抵抗および基体4からの各距離と異なっている。この状態で、直流電源1により基体4と相手負極5との間に電圧を印加することにより陽極酸化処理が行なわれて、領域4c〜4gのそれぞれに異なる径の細孔を有する酸化膜が形成される。
上記手法では、電気抵抗の違い、または正極と負極との距離の違いによって基体4に流れ込む電流量が異なるために、各領域4c〜4g毎に酸化膜に形成される細孔の径を制御することが可能である。したがって、各種細孔径を有する領域をどのように配置するかを予め設計して、その細孔径に対応した電気抵抗もしくは高低差を形成した相手負極5を用いて、陽極酸化処理を行なうことで、各種細孔径を有する領域を設計どおりに配置することができる。
上記手法では、高低差による方法と電気抵抗に差をつける方法とを併用することも可能であり、また高低差による方法と電気抵抗に差をつける方法とを各々単独で採用することも可能である。相手負極5に電気抵抗の差をつける方法としては、図3に示すように相手負極5に形成する絶縁膜6、7の厚さを制御することや、物性として電気抵抗の異なる膜6、7を形成することはよい手法であるが、特にこれに限定されるものではない。また、相手負極5に高低差をつける方法としては機械的に削り取る方法や化学エッチング、めっき法などがあるが、特にこれに限定されるものではない。
また、図2や図3に示すような相手負極5を基体4に対して走査して、基体4の平面上に繰返しパターンを形成することも本発明の範囲内である。
上述したように本実施の形態の細孔構造体の製造にあたっては陽極酸化処理が採用されるが、その後、化学的、物理的エッチング法を用いて細孔径を制御することができる。細孔径を制御するために、たとえばリン酸水溶液やクロム酸液により化学的にエッチングすることができ、また気相プロセスによるイオンエッチングやガスエッチングする手法を用いることもできる。
次に、本実施の形態の方法により製造された細孔構造体の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施の形態における製造方法により製造された細孔構造体の構成を示す平面図である。図4を参照して、本実施の形態の細孔構造体は、平面もしくは曲面上に形成された直立した細孔22a、22b、22cを有する膜20を備えている。その膜20に形成された細孔22a、22b、22cの径が0.1nm以上100nm以下である。その膜20は、たとえば、第1の径の細孔22aを複数有する領域21aと、第1の径とは異なる第2の径の細孔22bを複数有する領域21bと、第1および第2の径とは異なる第3の径の細孔22cを複数有する領域21cとを有している。領域21a、21b、21cの各平面占有面積が10nm2以上100cm2以下の範囲である。各領域21a、21b、21cは、膜20の材質が陽極酸化処理により酸化された材質を有している。
なお、細孔が形成される領域としてたとえば3つの領域21a、21b、21cについて説明したが、細孔が形成される領域は複数であれば、2つであってもよく、または4つ以上であってもよい。
上記において直立した細孔を有する膜20とは、陽極酸化処理を施される膜のことであり、陽極酸化処理を施された領域21a、21b、21cと、それ以外の陽極酸化処理を施されていない領域とを有している。この膜20の全体が陽極酸化処理を施されていてもよい。この膜20としては、たとえばAl、Ti(チタン)など陽極酸化処理により上述の細孔を形成できる物質のバルク体そのもの、もしくはSi、シリカガラス、ITO(Indium Tin Oxide)膜を形成したシリカガラス、金属などのバルク基材上にAl、Tiなどを陽極酸化処理により上述の細孔を形成できる物質を真空蒸着、電子ビーム蒸着、各種スパッタリング、陰極式アーク放電蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの一般的な薄膜形成法により形成したものが利用される。また、直立した細孔は、細孔が形成された面に対して、細孔の中心軸が−30°以上30°以下の角度の範囲内にある。
なお、膜20の全体が陽極酸化処理を施されていてもよい。
直立した細孔の径としては0.1nm以上100nm以下である必要がある。径が0.1nm未満の細孔を形成することができず、また径が100nmを超える場合、必要とされる機能が発現しないからである。望ましくは直立した細孔の径は0.1nm以上50nm以下である。
また、領域21a、21b、21cの各平面占有面積を10nm2以上100cm2以下の範囲としたが、平面占有面積が10nm2未満の場合には個々の細孔が機能を発現していても細孔の数が少ないために実用上必要な性能を達成することができず、平面占有面積が100cm2を超える場合には最終製品が大きくなりすぎ実用に値しない。
本実施の形態の細孔構造体に含まれる膜20は、構成元素の少なくとも1つにIIB族もしくはIIIB族もしくはIVB属もしくは遷移金属のうち少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。この膜20は陽極酸化処理によって直立した細孔を得られる材料であれば、どのようなものでもよく、Al、Zn(亜鉛)、Ti、Siであることが望ましく、またこれらの元素同士または他の元素が混合されていても直立した細孔を得ることができればよい。
本実施の形態の細孔構造体では、図5に示すように隣り合う細孔22a、22bまたは22c間の距離Lが1nm以上300nm以下であることが好ましい。隣り合う細孔22a、22bまたは22c間の距離Lとは、細孔22a、22bまたは22cを隔絶させる酸化物壁面23の厚さである。距離Lが1nm未満の場合、細孔22a、22bまたは22c同士が接近しすぎて孤立した細孔として働かない。距離Lが300nmを超える場合、1つの領域21a、21bまたは21cに存在する細孔22a、22bまたは22cの密度が低すぎて、十分な機能を発現することができない。
本実施の形態の細孔構造体は、金型、マスク材として利用されることが好ましい。以下、そのことを具体的に説明する。
まず、上述した陽極酸化処理により本実施の形態の細孔構造体が形成される。この細孔構造体を金型として、樹脂、金属、石英およびこれらの複合型などに構造を転写するのに用いることができる。転写の方法としては、一般的にナノプリンティング技術といわれる方法を用いることができる。この技術においては、たとえば、図6(a)に示すように転写したい材料30上に、金型である本実施の形態の細孔構造体25が直接的に形成されるか、もしくは別途形成しておいた本実施の形態の細孔構造体25が載置される。この後、図6(b)に示すように転写したい材料30の塑性変形圧力以上で本実施の形態の細孔構造体25を転写したい材料30側へプレスすることにより、本実施の形態の細孔構造体25の構造を転写したい材料30に転写することができる。
または、図7(a)に示すように液体状態の樹脂および無機−有機複合体40が本実施の形態の細孔構造体25に塗布され、細孔構造体25の細孔22内に含浸される。この後、この液体40を固化させることで、本実施の形態の細孔構造体25の構造を固化体40に転写することができる。
これらの転写材料30または40の構造は、本実施の形態の細孔構造体25の構造に対して反転した構造をとることになる。この後、転写材料30または40をさらに転写して本実施の形態の細孔構造体25と同様の形状を有する構造体を得ることも可能である。
マスク材として用いる場合は、ガスエッチングプロセスが用いられる。図8(a)に示すように転写したい材料50上に、マスク材として本実施の形態の細孔構造体25が直接的に形成されるか、もしくは別途形成しておいた本実施の形態の細孔構造体25が載置され、この状態でガスエッチングが行なわれる。これにより、本実施の形態の細孔構造体25の構造を、図8(b)に示すように転写したい材料50に転写することができる。エッチングプロセスとしては、各種のイオンエッチングを用いることができる。この場合、本実施の形態の細孔構造体25そのままの構造が、転写したい材料50に転写されることになる。
本実施の形態の細孔構造体は、発光素子として利用されることが好ましい。発光素子として用いられる場合、陽極酸化処理にて生成した酸化物を有する本実施の形態の細孔構造体そのものからの発光を利用する場合や、本実施の形態の細孔構造体の細孔内部に発光材料を導入する場合がある。
本実施の形態の細孔構造体そのものを用いる場合は、酸化物単体でもその用を成すものもあるが、ある元素をドープして発光効率、発光強度、寿命などを向上させる場合もある。ドープする元素としてはMn(マンガン)、Cr(クロム)が望ましい。細孔内部に発光材料を導入する場合は、溶融状態のイオンを電気的に移動させ基板上で反応、析出させる電析といわれる方法を用いることにより、選択的に細孔内に発光材料を導入することができる。また、発光材料を液体に分散させて細孔内に導入し、その後液体を固化または蒸発させることで発光材料を細孔内に導入することもできる。また、気相プロセスを用い、反応原料を細孔内まで析出させた後、不要部分をエッチングすることにより細孔部分だけに発光材料を残す方法もある。これらの方法は一例であり発光材料を導入できる方法であれば如何なる方法も用いることができ、これにより形成されたものを発光素子として用いることができる。発光波長は、細孔径のサイズに依存することから、本実施の形態の細孔構造体のように異なる径の細孔が形成されている場合には、同一平面上でさまざまな波長の光を発光させることが可能となる。
本実施の形態の細孔構造体は、フィルタ機能材として利用されることが好ましい。本実施の形態の細孔構造体は、異なる径の細孔を有しているため、細孔径に依存したサイズの分子、ウイルス、菌を分離することができる。分離対象物質が分散した溶液を、本実施の形態の細孔構造体上に流すことにより、上記の分離操作が行なわれる。本実施の形態の細孔構造体のように同一平面上に異なる径の細孔が形成されている場合には、様々なサイズを持つ分離対象物質を1回の分離操作で連続的に分離することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施の形態における細孔構造体の製造方法を用いて細孔構造体を製造し、細孔の径を測定した。また、発光特性および分離性能についても調べた。以下、その製造方法について説明する。
(基体の作製方法)
基体として、3N(99.9%)の純度を持つAl、Ti、導電性Si、ITO薄膜が形成された石英ガラスを準備した。また、準備される基体として、導電性Siとグラファイト板上に、Al、Ti、Zn(亜鉛)、I(イットリウム)などのIIB族もしくはIIIB族もしくはIVB族もしくは遷移金属材料の膜が形成されたものも準備した。また、発光材料として用いる場合は微量の遷移金属をドーピングすることもある。膜を形成する手法としては、スパッタリング法、抵抗加熱式蒸着法、EB(Electron Beam)蒸着法、陰極式アーク蒸着法が用いられる。この他、CVD法、めっき法といった既知の薄膜作製プロセスを利用することができる。
スパッタリング法による成膜を行なう場合、真空槽内を133.3×10-4Pa(1×10-4Torr)以下の圧力にした後、Ar(アルゴン)ガスを導入して真空槽内を13.33mPa〜2666mPa(0.1mTorr〜20mTorr)の圧力とした。この後、成膜する金属材料で作製されたターゲット材(サイズφ4インチ)に100W〜400Wの電力を与えるように負の電圧を印加した。ターゲット材に対向するように、導電性Si、グラファイト板、ITO膜が形成された石英ガラスを基材としてセットして、スパッタリングされたターゲット材料をこの基材上に析出させた。このとき基材側にも0〜−400Vの負の電圧を印加した。
抵抗加熱式のEB蒸着法においては、真空槽内を133.3×10-4Pa(1×10-4Torr)以下の圧力にした後、Arガスを導入して真空槽内を13.33mPa〜2666mPa(0.1mTorr〜20mTorr)の圧力とした。この後、成膜する金属材料を融点以上まで加熱して蒸発させた。ターゲット材に対向するように、導電性Si、グラファイト板、ITO膜が形成された石英ガラスを基材としてセットして、蒸発したターゲット材料をこの基材上に析出させた。陰極式のアーク蒸着も同様の形式で、金属材料であるターゲットに負電圧となるように30A〜100Aの電流を流してアーク放電を起こさせることで金属原料を蒸着した。
(相手負極の作製方法)
相手負極の材料としてはAu(金)、Pt(白金)、Cu(銅)またはAg(銀)を用いた。相手負極の各部において電気抵抗値の差をつける方法を述べる。まず、相手負極上に絶縁物であるレジスト材を塗布し、予め作製したマスク材を通してレジスト材に露光処理を施した。この露光処理により露光されたレジスト材の部分を剥離液により溶解除去することで、相手負極である導電部とレジスト材の残部である絶縁部とを作製した。
このとき、レジスト材の種類によっては露光されていない部分が溶解除去される場合もある。このようにレジスト材のネガ型、ポジ型を選択したり、予め作製しておくマスク材を設計することで、最終的な導電部と絶縁部との配置は任意となる。またはレジスト材を除去した部分にSiO2、SiN、TiO2などの無機絶縁物が形成される。レジスト材の場合は、10μm〜100μm厚みのものが用いられ、無機絶縁膜の場合は0.1μm〜10μm厚みのものが用いられる。SiO2は表面抵抗値□1015Ωであり、TiO2は表面抵抗値□1014Ωである。
次に高低差をつける方法を述べる。まず相手負極上にレジスト材を塗布し、予め作製したマスク材を通してレジスト材に露光処理を施した。この露光処理により露光されたレジスト材の部分を剥離液により溶解除去することで、相手負極である導電部とレジスト材の残部である絶縁部とを作製した。次に、めっき法により金、白金、銅または銀を相手負極の導電部の露出部に析出させた後にレジスト材を除去することで、相手負極の表面に1μm〜100μmの高低差をつけた。
なお、めっき法以外に、抵抗加熱式真空蒸着法を用いて金、白金、銅、銀を析出させた後、レジスト部を除去する方法によっても相手負極5の表面に高低差をつけることができる。
(溶液)
陽極酸化処理に用いる溶液として、硫酸、シュウ酸、リン酸、フッ酸水溶液0.01〜0.5M(0.01〜0.5mol/dm3)を準備した。
(陽極酸化処理方法)
□500μmの寸法の白金上にレジスト材を塗布した後に露光・現像処理により□3μm、□50μmの寸法で白金表面を露出させた相手負極を、基体との間隔が0.01μm〜1μmの範囲となるようにセットした。この後、相手負極と基体との間に15Vの電圧を印加して、1回目の陽極酸化処理を施した。基体にはグラファイト板上にAl薄膜を10μm厚みで形成したものを用いた。その後、X方向に100μm、Y方向に100μm移動させて、40Vの電圧を印加して2回目の陽極酸化処理を施した。その結果、1回目の陽極酸化処理では5nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られ、2回目の陽極酸化処理では20nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られた。なお、溶液温度は0℃であった。
また、基体としてTi、Zn膜を形成した導電性Siを用い、シュウ酸水溶液中で上記と同様の電圧印加、操作距離によって1回目および2回目の陽極酸化処理を施した。Ti膜の場合、15Vを印加した領域における細孔の径は2nmであり、40Vを印加した領域における細孔の径は50nmであった。Zn膜の場合、15Vを印加した領域における細孔の径は10nmであり、40Vを印加した領域における細孔の径は50nmであった。
また、基体として導電性Siを用い、フッ酸水溶液中で上記と同様の電圧印加、操作距離によって1回目および2回目の陽極酸化処理をした。15Vを印加した領域における細孔の径は8nmであり、40Vを印加した領域における細孔の径は30nmであった。
また、□100nm、□1μm、□1mm、□1cmのそれぞれを有する領域1と領域2とを形成し、領域1の□100nm、□1μm、□1mm、□1cmのそれぞれにおいては相手負極を露出させ、領域2の□100nm、□1μm、□1mm、□1cmのそれぞれににおいてはTiO2を析出し露出させた相手負極を準備した。なお、相手負極とTiO2が露出している部分以外はSiO2で覆った。TiO2、SiO2の膜厚はともに1μmとした。また、これとは別に、相手負極の表面を基準点として□100nm、□1μm、□1mm、□1cmの各領域にそれぞれに、200μmの高さの丘を形成した相手負極と、190μmの高さの丘を形成した相手負極も準備した。
これらの相手負極材を0.01〜1μmの範囲に近づけてセットした後、40Vの電圧を印加した。その結果、相手負極が露出した部分に対向する領域では20nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られ、TiO2が露出した部分に対向する領域では5nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られた。SiO2で覆った部分には細孔は形成されなかった。また、高低差を設けた相手負極の場合、200μm高さの丘を設けた部分に対向する領域では20nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られたが、190μm高さの丘を設けた部分に対向する領域では10nmの径の直立した細孔を有する酸化膜が得られ、基準点では直立した細孔構造を有する膜は得られなかった。
(細孔径拡大処理)
陽極酸化処理を施した後、細孔構造体を2質量%のリン酸水溶液中に浸漬させて細孔径の拡大処理を行なった。溶液温度は25℃であった。この処理によって陽極酸化処理直後は5nm、20nmであった各細孔径が、処理時間の増加とともに増加し、それぞれ5nm〜40nm、20nm〜50nmの範囲で増加した。
(発光特性)
導電性Si、ITO膜を形成した石英ガラス上に形成したAl(5%Mn元素ドープ)を陽極酸化処理して2nmの径を有する直立した細孔と、10nmの径を有する直立した細孔とを有する酸化膜を得た。この後、PL測定によって発光波長を測定した。その結果、2nmの径の細孔を有する領域と10nmの径の細孔を有する領域とのそれぞれにおいて、570nm付近の発光波長と650nm付近の発光波長のそれぞれを確認することができた。
同様にAl(5%Cr元素ドープ)を陽極酸化処理して2nmの径を有する直立した細孔と、10nmの径を有する直立した細孔とを有する酸化膜を得た。この後、PL測定によって発光波長を測定した。その結果、2nmの径の細孔を有する領域と10nmの径の細孔を有する領域とのそれぞれにおいて、590nm付近の発光波長と690nm付近の発光波長のそれぞれを確認することができた。
(分離性能)
図9(a)および(b)に示すように、導電性Si、グラファイト板上に形成したAl膜11、またはAl板11を陽極酸化処理して、2nmの径を有する直立した細孔を有する酸化膜12と、10nmの径を有する直立した細孔を有する酸化膜13とを得た。この後、幅1mm×深さ0.5mmの流路14を形成して、その流路14内を2nm、10nmの分子径を含む溶液を流した。その結果、1回の操作でそれぞれの直立した細孔構造を有する膜領域12、13において2nmと10nmの分子径を持つ分子を分離することができた。なお、図9(b)は、図9(a)のIX−IX線に沿う概略断面図である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の細孔構造体およびその製造方法は、金型、マスク材、発光素子およびフィルタ材に特に有利に適用され得る。
本発明の一実施の形態における細孔構造体の製造方法の第1の例を工程順に示す概念図である。 本発明の一実施の形態における細孔構造体の製造方法の第2の例を示す概念図である。 相手負極に電気抵抗の差をつける方法を示す図である。 本発明の一実施の形態における製造方法により製造された細孔構造体の構成を示す平面図である。 細孔間の距離を示す平面図である。 本発明の一実施の形態における細孔構造体を用いてプレスにより転写する様子を示す図である。 本発明の一実施の形態における細孔構造体を用いて液体を含浸・固化させることにより転写する様子を示す図である。 本発明の一実施の形態における細孔構造体を用いてエッチングすることにより転写する様子を示す図である。 本発明の一実施の形態における細孔構造体を分離性能を調べるために用いた様子を示す平面図(a)と、断面図(b)である。
符号の説明
1 直流電源、2 容器、3 電解溶液、4,20 基体、5 相手負極、6,7 絶縁膜、11 グラファイト板上に形成したAl膜またはAl板、12,13 細孔を有する酸化膜、14 流路、21a,21b,21c 同一細孔径領域、22a,22b,22c 細孔、25 細孔構造体、30,40,50 転写したい材料。

Claims (10)

  1. 平面もしくは曲面上に形成された直立した細孔を有する膜を備え、
    前記膜に形成された前記細孔の径が0.1nm以上100nm以下であり、
    前記膜は複数の領域を有し、かつ前記複数の領域のそれぞれには異なる径の細孔が形成されており、
    前記複数の領域のそれぞれの面積が10nm2以上100cm2以下の範囲であり、前記複数の領域のそれぞれにおける前記膜の材質が酸化された材質を有する、細孔構造体。
  2. 前記膜に形成された前記細孔の径が0.1nm以上50nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の細孔構造体。
  3. 前記膜の構成元素の少なくとも1つにIIB族もしくはIIIB族もしくはIVB族もしくは遷移金属のうち少なくとも1種類の元素が含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の細孔構造体。
  4. 隣り合う細孔間の距離が1nm以上300nm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の細孔構造体。
  5. 金型およびマスク材のいずれか一方として利用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の細孔構造体。
  6. 発光素子として利用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の細孔構造体。
  7. フィルタ機能材として利用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の細孔構造体。
  8. 陽極となる被処理体に負極となる電極を対向させて溶液中で前記被処理体に陽極酸化処理を行うことで細孔を形成する細孔構造体の製造方法であって、
    前記被処理体の各領域において陽極酸化処理の条件を変えることにより、前記被処理体の各領域のそれぞれに異なる径の細孔を形成する、細孔構造体の製造方法。
  9. 前記電極を前記被処理体に対して相対的に走査させることにより前記被処理体の複数の領域のそれぞれに個別に対向させ、前記電極と対向した前記被処理体の領域ごとに異なる条件で陽極酸化処理を行なうことを特徴とする、請求項8に記載の細孔構造体の製造方法。
  10. 前記電極は前記被処理体の複数の領域のそれぞれに対向しており、前記被処理体の複数の領域のそれぞれに対向する前記電極の部分ごとに、電気抵抗と前記被処理体からの距離との少なくともいずれかが異なっている、請求項8に記載の細孔構造体の製造方法。
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