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JP2005156482A - 血液凝固能測定方法および血液凝固能測定用試薬 - Google Patents

血液凝固能測定方法および血液凝固能測定用試薬 Download PDF

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Abstract

【課題】 抗リン脂質抗体を含む検体について、正確な血液凝固能を測定しうる血液凝固能測定方法及び血液凝固能測定試薬を提供することである。
【解決手段】 抗リン脂質抗体症候群の原因物質である抗リン脂質抗体を含む検体と特異的反応吸収物質である異好性阻止物質(マウスIgG、ウマIgG、HBR、NMS、MAK33、マウス血清、ウマ血清などの、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の免疫グロブリン又は血清)を混合させると、異好性阻止物質特異的に、抗リン脂質抗体の吸収又は中和反応が起こる。そこで上記異好性阻止物質の存在下で血液凝固能を測定することによって、抗リン脂質抗体の影響を受けずに正確な測定結果が得られる。

Description

本発明は、臨床検査に用いられる血液凝固能測定用試薬及び血液凝固能の検査用試薬の検査方法に関する。
血液凝固診断の分野において、プロトロンビン時間(prothrombin time:以下単に「PT」という場合もある。)の測定や複合因子の測定がスクリーニング試験として行われている。PTの測定では、患者の血漿を、少なくとも組織因子およびカルシウムイオンを含有する試薬と混合する。また、複合因子の測定では、患者の血漿を、少なくとも組織因子、血液凝固第V因子、フィブリノゲンおよびカルシウムイオンを含有する試薬と混合する。組織因子は脳や肺などの組織から精製するか、又は遺伝子組換え技術によって調製することができる。(非特許文献1)。この組織因子は血液凝固外因系経路を活性化する。PTの評価は血液凝固時間(秒)又は国際標準感度比(INR)で行われる。また、複合因子の評価は血液凝固時間(秒)、凝固活性(%)又は国際標準感度比(INR)で行われる。
INRはPRISI(式中、プロトロンビン比PRはサンプルの血液凝固時間と平均正常血液凝固時間の商であり、国際感度指数(ISI)は使用する試薬及び測定装置に依存する定数である)として計算される。試薬の感度が大きくなればなる程ISIの数字はますます小さくなる。0.9〜1.2のISIが外因系凝固システムの測定には至適の感度を与える。さらに小さいISI値では著しく長い血液凝固時間を生じ、このような測定システムで容易には測定できない。
PTおよび複合因子は、外因系血液凝固システムのスクリーニング及び経口抗凝固剤のチェックの場合に使用される。血液凝固能検査の中でPT測定は、外因系凝固系の血液凝固因子であるII、V、VII、X 因子の活性を総合的に検査するものであり、凝固能検査のスクリーニング検査及び経口抗凝固薬の効果判定検査として広く実施されている。PTの測定は、組織因子又は組織因子を含むヒト又は動物由来の組織トロンボプラスチンと適当な濃度のカルシウムイオンが主成分である測定試薬に、被検血漿を加え、血液凝固時間を測定することにより行われる。一方、複合因子の測定は、組織因子又は組織因子を含むヒト又は動物由来の組織トロンボプラスチンと血液凝固第V因子とフィブリノゲンと適当な濃度のカルシウムイオンとが主成分である測定試薬に、被検血漿を加え、血液凝固時間を測定することにより行われる。
組織因子又は組織トロンボプラスチンを含む試薬において、血液凝固因子活性を感度良く測定することを可能とするために、ニッケル化合物を含有させることを特徴とする組織因子含有組成物及び、当該組成物を用いたプロトロンビン時間測定方法及びプロトロンビン時間測定試薬に関するものが既に公知である(特許文献1)。
抗リン脂質抗体は、ホスファチジルセリンなどの陰性荷電をもった脂質とβ2-GPEあるいはプロトロンビン複合体に対する自己抗体の総称であり、代表的なものにはループスアンチコアグラント(以下、単に「LA」という場合もある。)がある。これらのいずれかが陽性で、多彩な血栓症・流早産・血小板減少などの特有な臨床症状を示す疾患を抗リン脂質症候群(antiphospholipid syndrome: APS)という。抗リン脂質抗体症候群の原因物質の一種であるLAは不均一な抗体であり、陰性荷電リン脂質(ホスファチジルセリン)か又はβ2-GPIをコファクターとするプロトロンビンに対する複合体の抗体であることが近年明らかになった。また、LAは個々の凝固因子活性を抑制することなく、リン脂質依存性の凝固反応を阻害する免疫グロブリンであることが知られている(抗リン脂質抗体症候群、新興医学出版社、第1版、40頁、松田重三)。
上記の内容から勘案すると、被検者が抗リン脂質抗体の保有者であると、臨床検査におけるPTや複合因子の測定結果は、抗リン脂質抗体の影響を受けた可能性も否定できない。特に、近年の遺伝子組換え技術の発展により、PT測定や複合因子測定に使用する組織因子として遺伝子組換組織トロンボプラスチンが多く用いられるようになった。遺伝子組換え技術により得られた組織トロンボプラスチンは、従来の血清由来のものに比べて精製度が高いことが特長である。従来は試薬中の大過剰のリン脂質と、被検検体中のLA等の抗リン脂質抗体が反応することで、PT測定や複合因子測定に及ぼす影響は低く抑えられていたと考えられるが、精製度の高い組織トロンボプラスチンを使用することで、検体中に含まれる抗リン脂質抗体のPT測定や複合因子測定に及ぼす影響がかえって深刻になった。特に、LA陽性患者又はAPS患者でワーファリンのモニタリングを行なう場合、試薬中のリン脂質が検体中のLAに吸収されるために正確な凝固活性が得られず、これを改善することが課題であった(非特許文献2)。
そこで、被検者が予め抗リン脂質抗体の保有するか否かの検査を受けることなく、正確にPT又は複合因子を測定できることが望まれている。
特開2001−255332号公開公報 JH. Lawson et. al., Method Enzymol. 222:177-180(1993) Tripodi A, Chantarangkul V, Clerici M, Negri B, Galli M, Mannucci PM. Laboratory control of oral anticoagulant treatment by the INR system in patients with the antiphospholipid syndrome and lupus anticoagulant. Results of a collaborative study involving nine commercial thromboplastins. Br J Haematol. 2001: 115(3);672-8.
本発明の解決すべき課題は、被検者が抗リン脂質抗体の保有者であっても、抗リン脂質抗体を含む検体について、正確な血液凝固能を測定しうる血液凝固能測定方法および血液凝固能測定用試薬を提供することである。
本発明者らは、抗リン脂質抗体症候群の原因物質である抗リン脂質抗体を含む検体と、特異的反応吸収物質である異好性阻止物質(マウスIgG、ウマIgG、HBR、NMS、MAK33、マウス血清、ウマ血清などの、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の免疫グロブリン又は血清)を混合させると、異好性阻止物質特異的に、抗リン脂質抗体の吸収又は中和反応が起こることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、PT測定系あるいは複合因子測定系に上記異好性阻止物質を含ませることで、抗リン脂質抗体の影響を受けずに正確な測定結果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
1.異好性阻止物質の存在下で血液凝固能を測定する血液凝固能測定方法、
2.異好性阻止物質が、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の抗体、血清及び免疫グロブリンからなる群から選択される前項1に記載の血液凝固能測定方法、
3.異好性阻止物質を含有する血液凝固能測定用試薬、
4.異好性阻止物質が、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の抗体、血清及び免疫グロブリンからなる群から選択される前項3に記載の血液凝固能測定用試薬、
5.前記血液凝固能測定用試薬が、さらに組織因子を含有するプロトロンビン時間測定用試薬である前項3又は前項4に記載の血液凝固能測定用試薬。
6.前記血液凝固能測定用試薬が、さらに組織因子、血液凝固第V因子およびフィブリノゲンを含有してなる複合因子測定用試薬である前項3又は前項4に記載の血液凝固能測定用試薬、からなる。
異好性阻止物質の存在下で血液凝固能の測定を行うことにより、抗リン脂質抗体保有者の検体に対しても、抗リン脂質抗体の影響を低減させ、正確な血液凝固能の測定が可能になった。
上記説明したように、PTの測定は血液凝固診断の分野において最も慣用されているスクリーニング試験である。経口抗凝固剤のモニタリングの場合に使用されることは上記説明したとおりであるが、このような試験を受ける被検者が、抗リン脂質抗体保有者であるか否かは、別途検査を受けなければならない。別の検査により、抗リン脂質抗体保有者であることが判明した場合には、PT測定又は複合因子測定において、抗リン脂質抗体の影響を最小限にするための措置を行うことができるが、PT測定時又は複合因子測定時においてそのような検査を予め受けているか否か、通常不明である。したがって、PT測定時又は複合因子測定時において抗リン脂質抗体の影響のみを最小限に抑え、他に影響を及ぼさないような測定系があれば、予め抗リン脂質抗体症候群であるか否かの検査を受ける必要なく、正確に測定を行うことができる。
異好性阻止物質とは、通常は異好性抗体による干渉を抑制することを目的として検査系に使用する物質をいう。本発明における異好性阻止物質の例としてヒト及びブタを除く哺乳動物由来の抗体、血清、免疫グロブリン等が挙げられる。具体的にはマウスIgG、ウマIgG、ウシIgG、マウス血清、ウマ血清、ウシ血清、マウス、ウマ又はウシのα-グロブリンなどから選ばれる物質であり、より具体的にはHBR、NMS、MAK33などが挙げられる。例えば、異好性抗体による干渉を抑制することを目的とした異好性阻止試薬として市販されているHBR(Human anti-Mouse Antibodies Blocking Reagent: Scantibodies社製) や、MAK33 (ロッシュ社製) などが適用される。
本発明において、異好性阻止物質は、測定系において検体中に含有する抗リン脂質抗体、例えばLAと接触可能な態様で使用することができる。
例えば、異好性阻止物質は、予めプロトロンビン時間(PT)測定用試薬又は複合因子測定用試薬に混合することができる。添加する異好性阻止物質の量は、1テスト(サンプル量10〜20μl)当たり5〜100μg、好ましくは10〜50μgを含ませることができる。異好性阻止物質は、1種類又は2種類を混合して使用することができる。具体的には、PT測定試薬10mlあたり異好性阻止物質を100〜500μg含ませて使用することができる。また、複合因子測定試薬10mlあたり異好性阻止物質を5〜200μg含ませて使用することができる。
又は血液凝固能測定を行う検体に、異好性阻止物質を添加して使用することができる。この場合には、通常のPT測定用試薬又は複合因子測定用試薬を用いることができる。この場合も異好性阻止物質は1種類又は2種類を混合して使用することができる。
測定は、検体と異好性阻止物質との混合操作により、選択的に含有するヒト抗リン脂質抗体が異好性阻止物質に吸収される条件下で行うことができる。例えば、ヒトLAの吸収のために必要な時間は1〜30分、好ましくは2〜10分、より好ましくは約5分程度であり、好適なpHは6〜8であり、好適な温度は30〜40℃であり、塩濃度は1〜500mMの条件である。
測定に付される検体は、血漿が一般的である。その他、一般的な血液凝固測定系で調製される血液由来物質に適用可能である。つまり、被検体より採血、又はヘパリン等の抗凝固剤を添加して採血して得た血液試料を、遠心分離などの常法に基づき成分分離して得られた血漿ないし血清成分を検体として使用することができる。また、測定法に起因する非特異的吸着を抑制し、より高精度の測定とするために、この血漿及び血清成分をさらに超遠心分離により分離して特定画分を得、検体としてもよい。
PT測定用試薬としては、異好性阻止物質、組織因子及びカルシウムイオンを含有するPT測定試薬、異好性阻止物質及び組織因子を含有する第1試薬とカルシウムイオンを含有する第2試薬とからなるPT測定試薬キット等が使用可能である。組織因子としては、ヒト又は動物由来の組織トロンボプラスチン、遺伝子組換え技術により調製された組織因子にリン脂質を再構成した再脂質化組織因子組成物等によるものが使用可能である。複合因子測定用試薬としては、異好性阻止物質、組織因子、血液凝固第V因子、フィブリノゲン及びカルシウムイオンを含有する複合因子測定試薬、異好性阻止物質、組織因子、血液凝固第V因子及びフィブリノゲンを含有する第1試薬とカルシウムイオンを含有する第2試薬とからなる複合因子測定試薬キット等が使用可能である。血液凝固第V因子及びフィブリノゲンとしては、それぞれ精製品を使用してもよいが、通常は硫酸バリウム吸着血漿が使用される。硫酸バリウム吸着血漿は、ウシ血漿に約10〜30(W/V)%の硫酸バリウムを加えて室温で約20分間混和した後、硫酸バリウムを除去することにより調製することができる。この吸着血漿は実質的に少なくとも凝固第II、VII及びX因子を含まず、目的とする第V因子及びフィブリノゲンを含有する。PT測定用試薬及び複合因子測定用試薬は凍結乾燥試薬あるいは液状試薬の何れであってもよい。なお、凍結乾燥試薬の場合、使用時に精製水又は緩衝液で溶解して使用するが、この精製水又は緩衝液に異好性阻止物質を添加するようにしても良い。この場合には、凍結乾燥試薬であるPT測定用試薬又は複合因子測定用試薬には異好性阻止物質を添加しなくても良い。
本発明は上述したPT測定用試薬や複合因子測定用試薬の他にAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)測定用試薬にも応用可能である。
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(試薬の調製方法)
市販PT試薬(トロンボチェックPT;シスメックス社製(試薬1))瓶に2mg/mLの異好性阻止物質(HBR)1 mLを添加(A) し、精製水9mLを混合して全量10mLとした。一方、生理食塩水1mLを同様に添加し、精製水9mLを混合して調製した異好性阻止物質無添加(B)の2種類のPT試薬を調製した。同様に、別の市販品である遺伝子組換えPT試薬、イノビン(デイドベーリング社製,ドイツ(試薬2))及びヒト胎盤組織因子PT試薬、トロンボレルS(デイドベーリング社製,ドイツ(試薬3))について、異好性阻止物質(HBR)を添加した試薬(A) 及び無添加の試薬(B)を調製した。
(測定方法)
血漿検体(50μg/ml)に、上記の3種類のPT試薬より調製した試薬(A) 及び試薬(B) を100μg/ml添加して混合し、全自動血液凝固分析装置コアグレックス800(島津製作所(株))を用いて測定回数2回づつで測定を行なった。正常血漿としてコアグトロールN(シスメックス社製)を用いて、LA陽性患者血漿、ワーファリン投与患者血漿、LA陽性ワーファリン投与患者、ヘパリン投与患者血漿、第2因子欠乏患者血漿を測定試料とした。これらの患者検体は、ジョージキングバイオメディカル社、グラディポア社、ADI 社、サンフコ社などから購入することができる。
(結果)
その結果を表1に示した。
ワーファリン投与LA陽性患者群の血漿では、異好性阻止物質(HBR)を添加しない系(B)に比べ、添加した系(A)で測定した場合に凝固時間の短縮が見られた。一方、ワーファリン投与患者、ヘパリン投与患者、凝固因子欠損患者、ワーファリンもヘパリンも投与しないLA陽性患者の血漿及び正常血漿では、異好性阻止物質の無添加試薬系(B)及び添加試薬系(A)での凝固時間並びにINRの変動は見られなかった。
一方、ワーファリン投与LA陽性患者血漿のループスアンチコアグラント(LA)をdRVVT(希釈ラッセル蛇毒法)で測定したところ、いずれの血漿でもカットオフ値1.3を越える陽性と判定された。
これらの結果より、異好性阻止物質(HBR)を添加したPT試薬は、LAを中和し、正確なワーファリンモニタリングを施行することができることが明らかとなった。
Figure 2005156482
以上説明したように、血液凝固能の測定を異好性阻止物質の存在下で行うことにより検体中の抗リン脂質抗体の影響を受けることなく、正確な測定が可能となり、より正確な血液凝固診断が可能となる。

Claims (6)

  1. 異好性阻止物質の存在下で血液凝固能を測定する血液凝固能測定方法。
  2. 異好性阻止物質が、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の抗体、血清及び免疫グロブリンからなる群から選択される請求項1に記載の血液凝固能測定方法。
  3. 異好性阻止物質を含有する血液凝固能測定用試薬。
  4. 異好性阻止物質が、ヒト及びブタを除く哺乳動物由来の抗体、血清及び免疫グロブリンからなる群から選択される請求項3に記載の血液凝固能測定用試薬。
  5. 前記血液凝固能測定用試薬が、さらに組織因子を含有するプロトロンビン時間測定用試薬である請求項3又は請求項4に記載の血液凝固能測定用試薬。
  6. 前記血液凝固能測定用試薬が、さらに組織因子、血液凝固第V因子およびフィブリノゲンを含有してなる複合因子測定用試薬である請求項3又は請求項4に記載の血液凝固能測定用試薬。
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