本発明においては、画像記録材料を構成する記録層を、加熱処理、加水分解処理、又は超音波処理された「金属化合物(金属は2価以上)を含む溶液」を用いて構成したことを特徴とするものである。以下、本発明の画像記録材料用塗布液及びその製造方法、該画像記録材料用塗布液を用いた画像記録材料及びインクジェット記録媒体、並びに該インクジェット記録媒体を用いて記録を行なうインクジェット記録方法について詳細に説明する。
<画像記録材料用塗布液及びその製造方法>
本発明の画像記録材料用塗布液は、加熱処理、加水分解処理、又は超音波処理(以下、「本発明に係る処理」ということがある。)がなされた「2価以上の金属を含有する金属化合物を含む溶液」(以下、「本発明に係る金属化合物溶液」ともいう。)を用いて構成したものである。すなわち、後述のように所望の支持体上に層形成するときには、本発明に係る処理がなされた金属化合物溶液を用いた記録層が塗設された画像記録材料を作製することができる。
本発明の画像記録材料用塗布液は、本発明に係る処理がなされた金属化合物溶液の少なくとも一種を少なくとも含んでなり、場合により発色成分や色材成分、樹脂成分等の他の諸成分を更に含んでなり、特にインクジェット記録媒体作製用の塗布液に構成する場合には微粒子及び水溶性樹脂を更に含んでなる。
−本発明に係る金属化合物溶液−
本発明に係る金属化合物溶液は、2価以上の金属の金属化合物を含む溶液であり、該金属化合物としては例えば、2価以上の金属と強酸あるいは弱酸との塩(金属塩)や、2価以上の金属の水酸化物、ハロ水酸化物、錯体等、あるいはこれらに酸性基含有化合物〔窒素、酸素もしくは硫黄原子(好ましくは窒素もしくは酸素原子)を含む置換基と酸性基(例えばカルボキシル基、スルホ基、水酸基、ホスホノ基など)とを含む化合物〕を反応させて生成した錯体、などが挙げられる。金属化合物の含有により、作製された画像記録材料の耐光性(特にAlが好ましい)や経時滲みを向上させることができる。以下に、上記した金属塩や水酸化物、ハロ水酸化物、錯体の具体例を挙げる。
すなわち、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、
ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物、12タングスト珪酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドリン酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
また、金属化合物は、水溶性又は油溶性のいずれでもよく、「本発明に係る処理」の容易さの観点から水溶性が好ましい。
上記の中でも、前記2価以上の金属がアルミニウム、チタン、又はジルコニウムである金属化合物が好ましく、具体例として、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物等のアルミニウム含有化合物;四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等のチタン含有化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム含有化合物、が好適に挙げられる。
特に塩基性の金属塩が好ましい。ここでの塩基性は、例えばハロゲン化金属塩のハロゲン原子の一部が水酸基で置換されている状態をいい、例えばAlCl3の場合はAl2(OH)5Cl等が塩基性の金属塩に含まれる。上記のうち、かかる観点から具体的には、ポリ塩化アルミニウム、オキシ塩化ジルコニウムがより好ましく、ポリ塩化アルミニウムが最も好ましい。ポリ塩化アルミニウムの中でも、前記塩基性の程度(塩基度)が50%以上のものが好ましく、より好ましくは65%以上、特に好ましくは80%以上である。
なお、上記の金属化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用することもできる。
本発明に係る金属化合物溶液の第1の態様は、加熱処理されてなる金属化合物溶液である。上記した金属化合物が含有されるとアニオン性のインクに作用して画像の経時滲み及び耐光性をともに向上させることができ、更に加熱処理して用いることで光沢性をも向上させることができる。前記耐光性向上には、アルミニウムの金属化合物が特に好適である。さらに所望の画像記録材料に合わせて塗布液を調製したときの該塗布液の粘度上昇を抑止でき、粘度上昇に伴なって生ずる塗布性や塗布後の塗布面状の悪化を効果的に防止することができる。
上記の加熱処理は、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上の温度領域において、30分以上加熱処理するのが好ましく、より好ましくは1時間以上である。上記の温度域で加熱されたとき、金属化合物に特に光沢性の付与に好適な組成変化を生じさせ得る。また、加熱処理における上限温度は150℃が好ましい。
加熱処理された金属化合物溶液は、加熱処理を行なった直後に用いてもよいが、光沢性の向上効果の点で加熱処理後に(例えば加熱時の雰囲気で)所定時間経時させた後に用いることが好ましい。所定時間としては、1時間以上が好ましく、より好ましくは2時間以上であり、特に好ましくは4時間以上である。
加熱処理は、金属化合物を所望の溶媒に溶解した状態で行なうことができ、あるいは金属化合物を含んで所望の画像記録材料に合わせて調製された画像記録材料用塗布液の状態で行なうようにすることもできる。光沢性の向上効果の点では、前者のように予め金属化合物溶液を加熱するようにし、加熱後所定時間経過した後にこれを用いて所望の画像記録材料用塗布液を調製することが望ましい。前記溶媒には、水や酸もしくはアルカリを含む水溶液が含まれる。また、金属化合物を40%以上含有した水溶液(例えば市販品)をそのまま又は更に上記の溶媒で希釈して加熱するようにしてもよい。
前記金属化合物溶液の第2の態様は、加水分解処理されてなる金属化合物溶液である。ここでの金属化合物には、既述した金属化合物自体以外に、既述の金属化合物を40%以上含有した水溶液(例えば市販品など)を含む。ここで、溶液が加水分解処理されてなるとは、含まれる金属化合物が加水分解処理されていることをいう。既述のように、金属化合物を含有するので、記録された画像の経時滲み及び耐光性をともに向上でき、更に加水分解処理して用いることで同時に光沢性をも向上させることができる。前記耐光性向上には、アルミニウムの金属化合物が特に好適である。また更に、塗布液を調製したときの粘度上昇が抑えられ、粘度上昇に伴なう塗布性や塗布後の塗布面状の悪化を効果的に防止できる。
上記の加水分解処理は、水や酸もしくはアルカリを含む水溶液を金属化合物と混合して所定時間以上経時させることによって行なうことができ、加熱してもよい。加水分解処理に要する所定時間は、金属化合物の種類や温度、濃度などによって異なるが、非加熱の系において1時間以上行なうのが好ましく、より好ましくは2時間以上、特に好ましくは4時間以上である。上記のように加水分解されたとき、金属化合物に特に光沢性の付与に好適な組成変化を生じさせ得る。加熱する場合には、30〜100℃程度の温度領域とするのが望ましい。
本発明に係る加水分解処理には、金属化合物と水等とが混合された後1時間未満の経時での加水分解反応は実質的に含まれず、また、加水分解処理された金属化合物溶液には、金属化合物を40%以上含有して高濃度に調製された(例えば市販の)水溶液は含まれない。
加水分解処理された金属化合物溶液は、加水分解処理の直後に用いてもよいが、光沢性の向上効果の点で加水分解処理後に所定時間経時させた後に用いることが好ましい。所定時間としては、1時間以上が好ましく、より好ましくは2時間以上であり、特に好ましくは4時間以上である。
加水分解処理は、金属化合物を既述の水又は水溶液に溶解した状態で行なうことができ、あるいは金属化合物を含んで所望の画像記録材料に合わせて調製された画像記録材料用塗布液の状態で行なうようにすることもできる。光沢性の向上効果の点では、前者のように予め加水分解処理された金属化合物溶液を調製するようにし、加水分解後所定時間経過した後にこれを用いて所望の画像記録材料用塗布液を調製することが望ましい。
前記金属化合物の加水分解物の中でも、特に塩基性の金属塩の加水分解物が好ましく、より好ましくはアルミニウム、チタン、又はジルコニウムの加水分解物である。特に好ましくはポリ塩化アルミニウム、オキシ塩化ジルコニウムの加水分解物であり、更に好ましくはポリ塩化アルミニウムの加水分解物である。
前記金属化合物溶液の第3の態様は、超音波処理されてなる金属化合物溶液である。この場合にも既述のように、金属化合物を含有するので、記録された画像の経時滲み及び耐光性をともに向上でき、更に超音波処理して用いることで同時に光沢性をも向上させることができる。前記耐光性向上には、特にアルミニウムの金属化合物が好適である。また更に、塗布液を調製したときの粘度上昇が抑えられ、粘度上昇に伴なう塗布性や塗布後の塗布面状の悪化を効果的に防止できる。
上記の超音波処理は、金属化合物を所望の溶媒(既述の水や水溶液等)と混合した状態で行なうことができ、あるいは金属化合物を含んで所望の画像記録材料に合わせて調製された画像記録材料用塗布液の状態で行なうようにすることもできる。この場合、容器内に入れて行なってもよいし、フローさせて行なうようにしてもよい。このように超音波が付与されたときにも、金属化合物に特に光沢性の付与に好適な組成変化を生じさせ得る。
超音波処理には、例えば市販の超音波発生機(例えば超音波分散機(例:UH−600S、(株)エスエムテー製)など)、超音波洗浄器(例:HONDA W-113)など)等を用いることができ、使用する機器の出力ワット数や周波数、最大振幅等を適宜変えることにより行なうことができる。超音波処理に要する時間は、金属化合物の種類や量、機器の種類、処理条件などにより適宜選択すればよく、1秒以上行なうのが好ましく、より好ましくは5秒以上である。
超音波処理された金属化合物溶液は、超音波処理の直後に用いてもよいし、超音波処理後に所定時間経時させて用いるようにしてもよい。ここでの所定時間は、特に制限はなく、1秒以上が好ましく、より好ましくは1分以上であり、特に好ましくは1時間以上である。
既述したように、前記金属化合物溶液の超音波処理物の中でも、特に塩基性の金属塩の超音波処理物が好ましく、より好ましくはアルミニウム、チタン、又はジルコニウムの超音波処理物である。特に好ましくはポリ塩化アルミニウム、オキシ塩化ジルコニウムの超音波処理物であり、更に好ましくはポリ塩化アルミニウムの超音波処理物である。
金属化合物溶液が加熱処理、加水分解処理、又は超音波処理されていることの判断は、金属化合物の処理前後での組成(成分比等)の変化から行なうことが可能である。例えば27Al NMRやゲル透過クロマトグラム法(GPC)などによって、分子量や処理による分解等で生じた組成・構造の変化を、ピークの形状や位置、高さに関する処理前後での変化から判断することができる。
本発明の画像記録材料用塗布液は、前記本発明に係る金属化合物溶液以外に、所望とする画像記録材料、特に塗設しようとする記録層(画像記録材料に対応した、後述のトナー受像層、熱発色層、受像層、又は感光層など)に用いられる諸成分を含んで構成することができる。インクジェット記録媒体の作製に用いられる場合には、前記本発明に係る金属化合物溶液と共に少なくとも微粒子及び水溶性樹脂(並びに必要に応じ架橋剤や媒染剤等の他の成分)を更に含んで構成される(以下、この場合の画像記録材料用塗布液を「インクジェット記録媒体用塗布液」ともいう)。微粒子及び水溶性樹脂並びに他の成分については後述する。
本発明の画像記録材料用塗布液の好ましい実施態様、用途としては、画像記録材料の作製に用いられること以外に特に制限はなく、画像の長期保存の際の滲み(経時滲み)の防止、耐光性等の高い画像堅牢性、高光沢性を有する高画質な画像が要求される各種用途に好適に用いることができ、具体的には後述のインクジェット記録媒体をはじめそのほか、熱転写受像材料、昇華転写受像材料、電子写真用受像材料、感熱発色記録用材料、銀塩写真感光材料などの作製用(例えば記録層の塗設用)として好適である。
インクジェット記録媒体を作製する場合、上記した金属化合物は後述の媒染剤として用いることもできる。
<画像記録材料>
本発明の画像記録材料は、支持体と、該支持体の上に既述した本発明の画像記録材料用塗布液を塗布してなる記録層とで構成したものであり、画像記録材料に応じて他の層を更に設けて構成することができる。記録層は、作製しようとする画像記録材料に求められる成分構成を考慮し、支持体上に直接あるいは他の層を介して少なくとも一層設けることができる。本発明の画像記録材料は、既述の画像記録材料用塗布液を用いて作製されるので、画像の長期での滲み(経時滲み)の防止、耐光性、及び光沢性の点で特に優れる。
本発明の画像記録材料には、インクジェット記録媒体、電子写真用受像材料、感熱発色記録用材料、昇華転写受像材料、熱転写受像材料、銀塩写真感光材料などの各種記録材料が含まれる。
以下、本発明の画像記録材料についてインクジェット記録媒体を一例に詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体と、該支持体上に既述した本発明の画像記録材料用塗布液(以下、インクジェット記録媒体用塗布液又はインク受容層用塗布液ということがある。)の塗布により塗設された、少なくとも一層のインク受容性の記録層(以下、「インク受容層」と称する。)とで構成されている。また、必要に応じ更に他の層を有するように構成することができる。
[インク受容層]
本発明のインクジェット記録媒体を構成するインク受容層は、既述の本発明に係る金属化合物溶液に係る2価以上の金属を含む金属化合物と、微粒子と、水溶性樹脂とを少なくとも含有して構成され、必要に応じさらに水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤や媒染剤、界面活性剤等の他の成分を含有することができる。
−微粒子−
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)は、既述の本発明に係る金属化合物溶液又はそれに係る金属化合物と共に微粒子の少なくとも一種を含有する。インク受容層は、微粒子を含有することにより多孔質構造に構成され、インクの吸収性能が向上する。
特に、微粒子の量がインク受容層を塗設したときの該層における乾燥質量(固形分)の50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造とすることが可能となり、インク吸収性をより向上させることができる。ここで、微粒子のインク受容層における固形分含有量は、インク受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
上記の多孔質構造のインク受容層とは、空隙率が50〜75%、好ましくは60〜70%である層をいう。前記空隙率が、50%未満であるとインク吸収性が不充分となることがあり、75%を超えるとバインダー不足による粉落ちの問題を生ずることがある。また、インクジェット記録媒体の品質上、インク受容層の層厚は20〜40μmとなるように、60°光沢度は30〜70%となるように、構成されるのが好ましい。
微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子のいずれをも用いることができる。前記有機微粒子の好ましいものとして、例えば、乳化重合、マイクロエマルジョン系重合、ソープフリー重合、シード重合、分散重合、懸濁重合などにより得られるポリマー微粒子が挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フェノール樹脂、天然高分子等の粉末、ラテックス又はエマルジョン状のポリマー微粒子等が挙げられる。
また、無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。
これらの中でも、インク吸収性及び画像安定性の点から無機微粒子が好ましく、さらに良好な多孔質構造を形成する点から、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、又は擬ベーマイトが好ましい。
このうち、シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。前記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、前記「気相法シリカ」とは、当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。本発明におけるシリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
前記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
微粒子の平均一次粒径としては、2μm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。更に、平均一次粒径が30nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、この中でも特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
また、気相法シリカの場合、平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以下でり、特に好ましくは10nm以下であり、最も好ましくは3〜10nmである。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下のときに空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
シリカ微粒子は、上記した他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子とシリカ微粒子(特に気相法シリカ)とを併用する場合、全微粒子中のシリカ微粒子(特に気相法シリカ)の含有量は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
上記以外に、無機微粒子としてアルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好適である。このうち、アルミナ水和物は、インクをよく吸収し定着すること等から好ましく、特に擬ベーマイト(Al2O3・nH2O)が好ましい。アルミナ水和物は種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。
擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0cc/gが好ましく、0.5〜1.5cc/gがより好ましい。ここで、細孔半径及び細孔容積は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)を用いて測定できる。
また、アルミナ微粒子の中では、気相法アルミナ微粒子が比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナ微粒子の平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
上述の微粒子は、例えば、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同11−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号等の公報に開示された態様でも、好ましく用いることができる。
−水溶性樹脂−
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)は、既述の本発明に係る金属化合物溶液又はそれに係る金属化合物と共に水溶性樹脂の少なくとも一種を含有する。
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
前記ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号、特開昭58−181687号、特開平10−259213号、特開2001−72711号、特開2002−103805号、特開2000−63427号、特開2002−308928号、特開2001−205919号、特開2002−264489号等に記載されたもの等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落[0011]〜[0012]に記載の化合物、特開2001−205919号、特開2002−264489号に記載の化合物等も挙げられる。
水溶性樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、水溶性樹脂の量としては、インク受容層を塗設したときの該層の乾燥質量(固形分)に対し、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂には、上記その他の水溶性樹脂を併用してもよい。該その他の水溶性樹脂と上記ポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
インク受容層を主として構成する、上記の微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材を用いてもよいし、複数の素材の混合系を用いてもよい。なお、透明性を保持する観点からは、前記微粒子、特にシリカ微粒子と組合される水溶性樹脂の種類が重要である。例えば、気相法シリカで構成するときは、前記水溶性樹脂にはポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層を形成できるものと考えられる。これにより、多孔質構造のインク受容層は、インクジェット記録時に際して毛細管現象により、急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
〈微粒子と水溶性樹脂との含有比〉
微粒子(x)と水溶性樹脂(y)との質量含有比〔PB比(x:y)〕は、インク受容層の膜構造及び膜強度にも大きな影響を与える。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。前記PB比(x:y)としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ該PB比が小さ過ぎることに起因する、空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
インクジェットプリンタの搬送系を通過する場合、インクジェット記録媒体に応力が加わることがあるので、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。また、シート状に裁断加工する場合に、インク受容層の割れや剥がれ等を防止するうえでも、インク受容層は十分な膜強度を有していることが必要である。これらを考慮すると、PB比(x:y)は5:1以下がより好ましく、また、インクジェットプリンタによる高速印字時のインク吸収性を確保する観点からは、2:1以上がより好ましい。
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカと水溶性樹脂とを、PB比(x:y)2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、乾燥させた場合、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成され、その平均細孔径が30nm以下、空隙率が50〜80%、細孔比容積が0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
−他の成分−
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)は、上記以外に、さらに架橋剤、媒染剤、界面活性剤等の他の成分を含有することができる。
〈架橋剤〉
本発明に係るインク受容層は、既述の本発明に係る金属化合物溶液に係る金属化合物、微粒子及び水溶性樹脂等を含む層が、更に前記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された多孔質層である態様が好ましい。
前記水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールの架橋には、硼素化合物が好適に使用される。該硼素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩〔例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2〕、二硼酸塩〔例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5〕、メタ硼酸塩〔例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2〕、四硼酸塩〔例えばNa2B4O7・10H2O〕、五硼酸塩〔例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5〕等が挙げられる。中でも、架橋反応が速やかに起こる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
上記以外に、水溶性樹脂の架橋剤として下記化合物を用いることもできる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、1,2−シクロペンタンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル)尿素、ビス(2−クロロエチル)スルホン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、ジビニルケトン、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、メラミン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等のメラミン化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシナネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号等に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号等に記載のカルボジイミド系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物;テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等:米国特許明細書第2725294号、米国特許明細書第2725295号、米国特許明細書第2726162号、米国特許明細書第3834902号等に記載の多価酸の無水物、酸クロリド、ビススルホナート化合物;米国特許明細書第3542558号、米国特許明細書第3251972号等に記載の活性エステル化合物等が挙げられる。
前記架橋剤は、一種単独で用いる以外に二種以上を併用することもできる。
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、硼素化合物を例に説明する。すなわち、インク受容層がインク受容層用塗布液(第一液)を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、架橋硬化は、(1)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH7.1以上の塩基性溶液(第二液)を前記塗布層に付与することにより行なうことができる。塩基性溶液のpHは7.5以上が好ましく、特に好ましくは8以上である。架橋剤である硼素化合物は、第一液又は第二液のいずれかに含有すればよく、第一液及び第二液の両方に含有させておいてもよい。具体的には後述する。
架橋剤の使用量は、前記水溶性樹脂の質量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
〈媒染剤〉
本発明においては、画像の耐水性の向上と経時滲みの防止効果を更に高めるために、インク受容層に媒染剤を含有することが好ましい。媒染剤をインク受容層に存在させることにより、アニオン性染料を色材として含むインクとの間で相互作用が働いて安定化し、耐水性や経時滲み防止の点で有効である。
媒染剤としては、カチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤のいずれも使用できる。中でも、有機媒染剤が好ましく、特にカチオン性媒染剤が好ましい。有機媒染剤及び無機媒染剤は、それぞれ一種単独で用いるほか、二種以上を併用したり、有機媒染剤及び無機媒染剤を併用するようにしてもよい。
媒染剤は、インク受容層を形成するときのインク受容層用塗布液(第一液)及び塩基性溶液(第二液)のいずれに含有してもよいが、微粒子(特に気相法シリカ)を含む液とは別液となる第二液に含有して用いることが好ましい。すなわち、媒染剤を直接インク受容層用塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する気相法シリカとの共存下では凝集を生ずる場合があるが、媒染剤を含む液とインク受容層用塗布液とをそれぞれを独立に調製し、個々に塗布する方法を採用することで微粒子の凝集を考慮する必要がなく、媒染剤の選択範囲が広がる。
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(以下、「媒染剤モノマー」という。)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染剤モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、又は水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
前記媒染剤モノマーとしては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド;
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
具体的な化合物としては、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド;
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
また、アリルアミンやジアリルアミン、その誘導体、塩なども利用できる。このような化合物の例としてはアリルアミン、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミン及びこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルジメチルアンモニウム塩(該塩の対アニオンとしてはクロライド、酢酸イオン硫酸イオンなど)等が挙げられる。尚、これらのアリルアミン及びジアリルアミン誘導体はアミンの形態では重合性が劣るので塩の形で重合し、必要に応じて脱塩することが一般的な製法である。
また、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの重合単位を用い、重合後に加水分解によってビニルアミン単位とすること、及びこれを塩にしたものも利用できる。
前記非媒染剤モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェット用インク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さい単量体をいう。
前記非媒染剤モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。前記非媒染剤モノマーも、一種単独で又は二種以上を組合せて使用できる。
更に、カチオン性媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと他のモノマー(媒染剤モノマー、非媒染剤モノマー)との共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとSO2との共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリル塩酸塩等に代表される環状アミン樹脂およびその誘導体(共重合体も含む);ポリジエチルメタクリロイルオキシエチルアミン、ポリトリメチルメタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルベンジルメタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルヒドロキシエチルアクリロイルオキシエチルアンモニウムクロリド等に代表される2級アミノ、3級アミノまたは4級アンモニウム塩置換アルキル(メタ)アクリレート重合体及び他のモノマーとの共重合体;ポリエチレンイミンおよびその誘導体、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリビニルアミン及びその誘導体等に代表されるポリアミン系樹脂;ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等に代表されるポリアミド樹脂;カチオン化でんぷん、キトサンおよびキトサン誘導体等に代表される多糖類;ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物等に代表されるジシアンジアミド誘導体;ポリアミジンおよびポリアミジン誘導体;ジメチルアミンエピクロロヒドリン付加重合物等に代表されるジアルキルアミンエピクロロヒドリン付加重合物およびその誘導体;第4級アンモニウム塩置換アルキル基を有するスチレン重合体およびその他のモノマーとの共重合体等も好適に挙げることができる。
前記ポリマー媒染剤として、具体的には、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号、特開平1−161236号、同10−81064号、同10−157277号、同10−217601号、特開2001−138621号、同2000−211235号、同2001−138627号、特開平8−174992号、特公平5‐35162号、同5−35163号、同5‐35164号、同5−88846号、特許第2648847号、同2661677号等の各公報に記載のもの等が挙げられる。
本発明の媒染剤としては無機媒染剤を用いることも可能で、多価の水溶性金属塩や疎水性金属塩化合物等が挙げられる。
無機媒染剤の具体例としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。
具体的化合物としては、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム、塩基性スルファミン酸アルミニウム、塩基性ギ酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩基性アルミニウムグリシネート、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、乳酸ジルコニル、コハク酸ジルコニル、しゅう酸ジルコニル、酢酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、乳酸ジルコニウムナトリウム、塩基性ジルコニウムグリシネート、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物、硝酸ガリウム、硝酸ゲルマニウム、硝酸ストロンチウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硝酸インジウム、硝酸ランタン、塩化ランタン、酢酸ランタン、安息香酸ランタン、塩化セリウム、硫酸セリウム、オクチル酸セリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジミウム、硝酸サマリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、塩化ハフニウム、硝酸ビスマス等が挙げられる。
上記の中でも、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム、塩基性スルファミン酸アルミニウム、塩基性ギ酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩基性アルミニウムグリシネート、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物等のアルミニウム含有化合物;四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタン等のチタン含有化合物;及び、ジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、乳酸ジルコニル、コハク酸ジルコニル、しゅう酸ジルコニル、酢酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、乳酸ジルコニウムナトリウム、塩基性ジルコニウムグリシネート、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム含有化合物が好ましく、特に塩基性ジルコニウム及び/又は塩基性アルミニウム塩が好ましい。
前記無機媒染剤としては、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族の金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。
媒染剤のインク受容層中における量としては、0.01〜20g/m2が好ましく、0.1〜15g/m2がより好ましく、0.5〜10g/m2が特に好ましい。
〈その他〉
また更に、必要に応じて公知の各種添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することができる。
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)には、酸を添加することができる。酸の添加により層表面のpHを3〜7、好ましくは4〜6に調整することで、白地部の耐黄変性を向上させることができる。表面pHの測定は、日本紙パルプ技術協会(J.TAPPI)で定められた表面pHの測定のうち、A法(塗布法)により行なうことができる。例えば、前記A法に相当する、(株)共立理化学研究所製の紙面用PH測定セット「形式MPC」を使用して測定を行なうことができる。
酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、サリチル酸、サリチル酸金属塩(Zn,Al,Ca,Mg等の塩)、メタンスルホン酸、イタコン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、スルファニル酸、スルファミン酸、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、γ−レゾルシン酸、没食子酸、フロログリシン、スルホサリチル酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ビスフェノール酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ほう酸、ボロン酸等が挙げられる。これらの酸の添加量は、インク受容層の表面pHが3〜7になるように決めればよい。
上記の酸としては、金属塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、セシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、マグネシウム、ストロンチウム、セリウムなどの塩)、又はアミン塩(例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、ポリアリルアミンなど)の形態で使用してもよい。
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)には、紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤などの保存性向上剤を含有することが好ましい。これら紫外線吸剤、酸化防止剤、滲み防止剤としては、アルキル化フェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオエーテル結合を有する脂肪族、芳香族及び/又は複素環式化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−及びS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(TEMPO化合物を含む)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
上記の中でも、アルキル化フェノール化合物、チオエーテル結合を有する脂肪族、芳香族及び/又は複素環式化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
具体的な化合物例として、特開2002―36717号、特開平2002―86904号、特願2002−13005号、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特開平11−170686号、特公平4−34512号、EP1138509号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2001−94829号、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号;
特公昭45−4699号、同54−5324号、ヨーロッパ公開特許第223739号、同309401号、同309402号、同310551号、同第310552号、同第459416号、ドイツ公開特許第3435443号、特開昭54−48535号、同60−107384号、同60−107383号、同60−125470号、同60−125471号、同60−125472号、同60−287485号、同60−287486号、同60−287487号、同60−287488号、同61−160287号、同61−185483号、同61−211079号、同62−146678号、同62−146680号、同62−146679号、同62−282885号、同62−262047号、同63−051174号、同63−89877号、同63−88380号、同66−88381号、同63−113536号;
同63−163351号、同63−203372号、同63−224989号、同63−251282号、同63−267594号、同63−182484号、特開平1−239282号、特開平2−262654号、同2−71262号、同3−121449号、同4−291685号、同4−291684号、同5−61166号、同5−119449号、同5−188687号、同5−188686号、同5−110490号、同5−1108437号、同5−170361号、特公昭48−43295号、同48−33212号、米国特許第4814262号、同第4980275号、等に記載のものが挙げられる。
上記の各種添加剤は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用することもできる。また、水溶性化、分散化、ポリマー分散、エマルション化、油滴化して添加してもよく、マイクロカプセル中に内包することもできる。
インクジェット記録用媒体においては、上記の各種添加剤の添加量は、0.01〜10g/m2であるのが好ましい。
また、前記微粒子の分散性を改善する目的で、無機表面をシランカップリング剤で処理するようにしてもよい。シランカップリング剤としては、カップリング処理を行なう部位のほか、有機官能性基(例えば、ビニル基、アミノ基(1級〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基)、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アルキル基、フェニル基、エステル基、チオエーテル基等)を有するものが好ましい。
インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)は、界面活性剤を含有した形態が好ましい。界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコーン系の界面活性剤の中から適宜選択することができる。また、界面活性剤は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アセチレングリコール類(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び該ジオールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。該ノニオン系界面活性剤は、インク受容層用塗布液(第一液)及び塩基性溶液(第二液)のいずれに含有してもよく、また、一種単独で又は二種以上を併用することもできる。
前記両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸及びその塩が挙げられる。これらは、一種単独で又は二種以上を併用することができる。
前記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えばステアリン酸ソーダ、オレイン酸カリ)、アルキル硫酸エステル塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン)、スルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルホコハク酸塩(例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、電解フッ素化、テロメリゼーション、オリゴメリゼーションなどの方法を用いてパーフルオロアルキル基を持つ中間体を経て誘導される化合物が挙げられる。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
前記シリコーン系界面活性剤としては、有機基で変性したシリコーンオイルが好ましく、シロキサン構造の側鎖を有機基で変性した構造、両末端を変性した構造、片末端を変性した構造をとり得る。有機基変性として、アミノ変性、ポリエーテル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、アルキル変性、アラルキル変性、フェノール変性、フッ素変性等が挙げられる。
前記界面活性剤のインク受容層用塗布液における含有量としては、0.001〜2.0%が好ましく、0.01〜1.0%がより好ましい。また、インク受容層用塗布液として二液以上を用いて塗布を行なう場合には、それぞれの塗布液に界面活性剤を添加するのが好ましい。
本発明において、インク受容層、又は該インク受容層を塗設するための本発明のインクジェット記録媒体用塗布液(画像記録材料用塗布液)はカール防止用に高沸点有機溶剤を含有するのが好ましい。前記高沸点有機溶剤は常圧で沸点が150℃以上の有機化合物で、水溶性又は疎水性の化合物である。これらは、室温で液体でも固体でもよく、低分子でも高分子でもよい。
具体的には、芳香族カルボン酸エステル類(例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、安息香酸フェニルなど)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばアジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸メチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなど)、リン酸エステル類(例えばリン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルなど)、エポキシ類(例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルなど)、アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば大豆油、ヒマワリ油など)高級脂肪族カルボン酸(例えばリノール酸、オレイン酸など)等が挙げられる。
[支持体]
支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用い、レーベル両側にインク受容層を設けることもできる。
前記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。前記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法にしたがって求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、前記各種紙支持体、前記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体等が挙げられる。白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
前記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
また、前記支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
次に、レジンコート紙など紙支持体に用いられる原紙について詳述する。
前記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。前記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
前記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好適に用いられ、漂白処理を行なって白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行なわれているように、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度及び色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01〜5μmが好ましい。
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
[インクジェット記録媒体の作製]
次に、インクジェット記録媒体の作製方法について一例を示す。例えばインクジェット記録媒体を作製する場合には、該媒体を構成するインク受容層(記録層)を、本発明に係る金属化合物溶液と微粒子と水溶性樹脂とを少なくとも含むインク受容層形成用の塗布液(インクジェット記録媒体用塗布液(インク受容層用塗布液);第一液)及び塩基性溶液(第二液)の少なくとも一方に架橋剤を添加すると共に、前記塗布液(第一液)を支持体上に塗布して塗布層を形成し、かつ更に(1)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、又は(2)前記塗布液(第一液)を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pHが7.1以上の前記塩基性溶液(第二液)を前記塗布層に付与し、前記塗布層を架橋硬化させる方法(Wet on Wet法)により形成することによって好適に得ることができる。
媒染剤を用いる場合、媒染剤を第二液に添加するようにしたときには、例えば、a)本発明に係る金属化合物溶液に係る金属化合物、微粒子、及び水溶性樹脂を含む塗布層を形成し、媒染剤含有溶液をその上に塗布する方法、b)本発明に係る金属化合物溶液に係る金属化合物、微粒子、及び水溶性樹脂を含む塗布液と媒染剤含有溶液とを重層塗布する方法など、任意に選択した方法で形成することができ、媒染剤をインク受容層の表面近くに多く存在させ得るので、インクの色材が十分に媒染され、記録された文字や画像の耐水性が向上させることができる。このようにすると、媒染剤がインク受容層の所定の部分に多く存在する結果、インクジェット記録用インクの色材が十分に媒染され、色濃度、経時によるインク滲み、印画部光沢、印画後の文字や画像の耐水性、耐オゾン性が高められる点で好ましい。ここで、塗布液に本発明に係る金属化合物溶液を含有すると共に、あるいは含有せずに、第二液中に媒染剤成分として本発明に係る金属化合物溶液を添加するようにすることもできる。
また、媒染剤含有溶液中に微粒子、水溶性樹脂、及び架橋剤等が含有されていてもよい。媒染剤の一部は第一液に含有させてもよく、その場合には第一液と第二液の媒染剤は同一でも異なっていてもよい。
前記第一液である、例えば本発明に係る塩基性の金属化合物と気相法シリカ(微粒子)とカチオン性ポリマー(分散剤)とポリビニルアルコールと硼素化合物とを含む塗布液の調製例について以下に説明する。すなわち、
気相法シリカとカチオン性ポリマーとを水中に添加する(例えば10〜20質量%)と共に、あらかじめ例えばポリ塩化アルミニウム(金属化合物)を水と混合して所定時間経時(加水分解処理)させて調製しておいた金属化合物処理液を加え、高速回転湿式コロイドミル(例えばクレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で20分間(好ましくは10〜30分間)分散させて微粒子分散液とした後、これに更に硼素化合物とポリビニルアルコール水溶液(例えばシリカ量の1/3程度の質量となるように)とを加えて更に上記と同じ条件で分散を行なうことによって調製することができる。
本発明に係る金属化合物溶液を塗布液に添加する際には、逐次添加してもよいし、一括添加してもよいし、あるいはインライン添加してもよい。
ここでの塗布液は、加水分解処理された金属化合物溶液を含む低粘度の均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布することにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受容層を塗設することができる。第一液には、必要に応じて更にpH調整剤、他の分散剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
また、上記の微粒子分散液の調製においては、気相法シリカ水分散液を予め調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加して調製するようにしてもよいし、分散剤水溶液を気相法シリカ水分散液に添加するようにしてよいし、同時に混合するようにしてもよい。このとき、本発明に係る金属化合物溶液は、気相法シリカ水分散液又は分散剤水溶液のいずれに加えられていてもよい。また、気相法シリカは、気相法シリカ水分散液としてではなく、粉体で分散剤水溶液に添加するようにすることもでき、上記のように分散剤を用いた水分散物として用いた場合にはインクジェット記録用媒体の光沢性がより良好になる点で好ましい。
また、気相法シリカと分散剤との混合後は、分散機を用いて細粒化することで平均粒子径50〜300nmの水分散液とすることができる。分散機としては、高速回転分散機や媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機など、従来公知の各種分散機を使用できるが、ダマ状になった微粒子の分散を効率的に行ない得るという点で、撹拌型分散機、コロイドミル分散機、又は高圧分散機が好ましい。
上記の第一液や第二液等の調製には、溶媒として水、有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
また、上記分散剤としてはカオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、前述の媒染剤の例などが挙げられる。また、分散剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
上記分散剤の微粒子に対する添加量は、0.1%〜30%が好ましく、1%〜10%がより好ましい。
第一液(インク受容層用塗布液)の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法によって行なうことができる。
第一液(インク受容層用塗布液)の塗布と同時又は塗布した後に、該塗布層に第二液(塩基性溶液)が付与されるが、該第二液は、塗布後の塗布層が減率乾燥を示すようになる前に付与してもよい。すなわち、インク受容層用塗布液の塗布後、この塗布層が恒率乾燥を示す間に塩基性溶液を導入することで好適に製造される。この第二液には、媒染剤を含有させてもよい。
ここで、前記「塗布層が減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、インク受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
上記の通り、第一液の塗布後、該塗布層が減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
減率乾燥を示すようになる前に第二液を付与する方法としては、(i)第二液を塗布層上に更に塗布する方法、(ii)スプレー等の方法により噴霧する方法、(iii)第二液中に該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
前記方法(i)において、第二液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等のように、既に形成されている第一塗布層にコーターが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
第二液の付与量としては、5〜50g/m2が一般的であり、10〜30g/m2が好ましい。
第二液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行なわれる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。例えば、第一液中に含有する架橋剤を硼酸や硼素化合物(硼砂など)とする場合には、60〜100℃での加熱を5〜20分間行なうことが好ましい。
また、前記塩基性溶液(第二液)を、インク受容層用塗布液(第一液)を塗布すると同時に付与する場合、第一液及び第二液を、第一液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることによりインク受容層を形成することができる。
前記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。
前記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコーターにより行なった場合、同時に吐出される二種の液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコーターの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。したがって、上記のように同時塗布する際は、第一液及び第二液の塗布と共に、バリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
前記バリアー層液は、特に制限なく選択できる。例えば、水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、セルロース系樹脂(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス等)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダー、グロスカレンダー等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なう必要がある。
カレンダー処理を行なう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
前記インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
次に、上記のインクジェット記録媒体以外の画像記録材料について説明する。
−電子写真用受像材料−
電子写真用受像材料は、支持体と該支持体の少なくとも一面に設けられた少なくとも一層のトナー受像層(記録層)とを有し、必要に応じて適宜選択したその他の層、例えば、表面保護層、中間層、下塗り層、クッション層、帯電調節(防止)層、反射層、色味調整層、保存性改良層、接着防止層、アンチカール層、平滑化層などを有してなる。これらの各層は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
−銀塩写真感光材料−
銀塩写真感光材料としては、例えば支持体上に少なくともYMCに発色する感光層(記録層)を設けた構成を有し、焼付露光された後に複数の処理槽内を順次浸漬しながら通過させることによって発色現像、漂白定着、水洗を行ない、乾燥させて画像を得るハロゲン化銀写真方式に用いられる材料、等が挙げられる。
−熱転写受像材料−
熱転写受像材料としては、例えば支持体上に少なくとも受像層(記録層)を設けた構成を有し、少なくとも熱溶融性インク層が支持体に設けられた熱転写材料を感熱ヘッドにより加熱して熱溶融性インク層からインクを溶融転写させる方式に用いられる材料、等が挙げられる。
−感熱発色記録用材料−
感熱発色記録用材料としては、例えば支持体上に少なくとも熱発色層(記録層)を設けた構成を有し、感熱ヘッドによる加熱と紫外線等による定着の繰り返しにより加熱発色させて画像形成するサーモオートクローム方式(TA方式)に用いられる材料、等が挙げられる。
−昇華転写受像材料−
昇華転写受像材料としては、例えば支持体上に少なくとも受像層(記録層)を設けた構成を有し、少なくとも熱拡散性色素(昇華性色素)を含有するインク層が支持体に設けられた昇華転写材料を感熱ヘッドにより加熱してインク層から熱拡散性色素を転写させる昇華転写方式に用いられる材料、等が挙げられる。
また、上記の電子写真用受像材料、感熱発色記録用材料、昇華転写受像材料、熱転写受像材料、又は銀塩写真感光材料は、少なくとも各々の材料に対応した記録層(トナー受像層、熱発色層、受像層、又は感光層)が支持体の上に設けられるように、本発明の画像記録材料用塗布液を用いて既述の[インクジェット記録媒体の作製]に類似した方法により記録層を塗設することによって作製することができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、既述の本発明のインクジェット記録媒体の上に、少なくとも1種のイエロー染料を含有するイエローインク、少なくとも1種のマゼンタ染料を含有するマゼンタインク、及び少なくとも1種のシアン染料を含有するシアンインクを最小の構成要素とし、前記マゼンタ染料及び前記シアン染料の少なくとも一方の酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であるインクセットを用いて画像を形成するようにしたものである。すなわち、既述のように本発明に係る金属化合物溶液を用いて構成されたインクジェット記録媒体と、酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であるマゼンタ染料及び/又はシアン染料を用いたインクセットとを組合せて画像を記録する。
本記録方法におけるインクセットでは、該インクセットを構成するマゼンタインク及び/又はシアンインクにおいて、酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であるマゼンタ染料またはシアン染料が用いられる。酸化電位は貴であるほど好ましく、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であるものがより好ましく、1.1V(vs SCE)よりも貴であるものが更に好ましく、1.15V(vs SCE)より貴であるものが特に好ましく、1.2V(vs SCE)より貴であるものが最も好ましい。特にマゼンタ染料に、酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であるシアン染料を併用することが、グレイバランスがとれる点で好ましい。
酸化電位の値は、試料から電極への電子の移り易さを表し、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移り難い、換言すれば、酸化され難いことを表す。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。
酸化電位の値については後述するが、化合物がボルタンメトリーにおいて陽極で化合物の電子が引き抜かれる電位を意味し、その化合物の基底状態におけるHOMOのエネルギーレベルと近似的に一致すると考えられている。
また、着色画像のオゾン堅牢性に関する研究の結果、着色画像に用いる化合物の酸化電位とオゾン堅牢性との間には相関があり、酸化電位の値が飽和カロメル電極(SCE)に対してより貴である化合物を用いることにより、オゾン堅牢性が改良されることが分かった。オゾン堅牢性が改良される理由としては、化合物とオゾンガスのHOMO(最高被占軌道)及びLUMO(最低空軌道)の関係によって説明できる。すなわち、着色剤のHOMOとオゾンガスのLUMOとの反応により着色剤が酸化され、そのために着色画像のオゾン堅牢性が低下すると考えられることから、オゾン堅牢性を向上させるには着色剤のHOMOを下げてオゾンガスとの反応性を低下させればよい。
酸化電位の値(Eox)は、当該業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば、P.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年、Interscience Publishers)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年、技報堂出版社)に詳しく記載されている。
ここで、酸化電位の測定について具体的に説明する。
酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-4〜1×10-6mol・dm-3溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィーを用いてSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。
また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。使用可能な支持電解質や溶媒については、上記の藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年、技報堂出版社刊)p.101〜118に記載がある。
酸化電位の値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を用いて校正することにより、測定された電位の値の再現性を保証することができる。
本明細書における酸化電位は、0.1mol・dm-3の過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド中(化合物の濃度は1×10-3mol・dm-3)で、参照電極としてSCE(飽和カロメル電極)、作用極としてグラファイト電極、対極として白金電極を使用し、直流ポーラログラフィーにより測定した値を使用する。
本発明に係る染料は、上記の酸化電位を満足するものであればいずれの構造のものでも使用できる。特にイエロー染料は、元々酸化電位が貴(HOMOが低い)なため、構造上の制約が少ない。
以下、前記酸化電位を満足するために必要な染料の構造について詳述する。
本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。したがって、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度であるハメットの置換基定数σp値を用いて説明すると、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基のようにσp値が大きい置換基を導入することにより酸化電位をより貴とすることができるといえる。
ハメットの置換基定数σp値について以下に説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。
上記置換基のほか、一般に電子陰性度の高い原子を発色団の構成原子として多く含むほど酸化電位を貴とすることができる。したがって、例えば、発色団の構成要素として、アリール基よりも不飽和複素環を用いた方が酸化電位を貴とすることができる。電子陰性度の高いヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、特に窒素原子が好ましい。したがって、本発明に係る染料としては、発色団がヘテロ原子で構成されているもの、不飽和複素環を含むもの、電子吸引性基を含むものが好ましい。ヘテロ原子で構成されている好ましい発色団としては、アゾ染料、アゾメチン染料、フタロシアニン染料等を挙げることができるが、特にアゾ染料が好ましい。
前記不飽和複素環としては、5員もしくは6員の不飽和複素環が好ましく、チオフェン環、フラン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などを例として挙げられる。不飽和複素環は、炭化水素環又は複素環との縮合環を形成してもよい。含窒素複素環の場合には、窒素原子は4級化されていてもよい。また、互変異性となり得る複素環については、互変異性体の1つのみを記載している場合でも、他の互変異性体も合わせて含まれる。上記のうち、好ましいものとしてチアゾール環、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環が挙げられる。特に好ましくは、イソチアゾール環、ピラゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環である。
好ましい電子吸引性の置換基としては、ハメットのσp値が0.40以上の置換基が好ましく、更に0.45以上の置換基が好ましく、特に0.50以上の置換基が好ましい。また、発色団上の置換基として複数の電子吸引性基が存在する場合には、置換基のσp値の総和が0.50以上のものが好ましく、0.60以上がより好ましく、特に0.70以上が好ましい。σpが0.40以上の電子吸引性基の具体例については、前述の、J.A.Dean編「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版(1979年、Mc Graw−Hill)や、「化学の領域」増刊 122号(p.96〜103、1979年、南光堂)が挙げられる。
好適な染料として、下記一般式(1)で表される染料が挙げられる。一般式(1)において、Chは不飽和複素環を含む発色団を表し、EWGは、後述するσp値が0.40以上の電子吸引性の置換基を表す。nは1〜8の整数を表す。
(Ch)−(EWG)n …一般式(1)
前記Chとしては、不飽和複素環を発色団に有するアゾ染料、フタロシアニン染料、アゾメチン染料、キノン系染料(アントラキノン染料、アントラピリドン染料等)、カルボニウム染料(トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等)、及びアジン系染料(オキサジン、チアジン等)の各発色団が挙げられる。好ましいものは、不飽和複素環を発色団に有するアゾ染料、フタロシアニン染料、アゾメチン染料、及びアントラピリドン染料であり、特に好ましいものは、不飽和複素環を発色団に有するアゾ染料、フタロシアニン染料である。
マゼンタ染料、イエロー染料として用いることのできる、好ましいアゾ染料として下記一般式(2)で表される染料が挙げられる。一般式(2)において、Het(A)及びHet(B)は、それぞれ独立に5員もしくは6員の不飽和複素環を表す。
Het(A)−N=N−Het(B) …一般式(2)
前記Het(A)又はHet(B)で表される不飽和複素環の例としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などが挙げられる。これらの不飽和複素環は更に置換基を有していてもよい。不飽和複素環上の置換基同士が結合することで、炭化水素環又は不飽和複素環との縮合環を形成してもよく、更に縮合環上に置換基を有してもよい。含窒素不飽和複素環の場合には、窒素原子は4級化されていてもよい。また、互変異性となり得る不飽和複素環については、互変異性体の1つのみを記載している場合でも、他の互変異性体も合わせて含まれる。
染料が水溶性染料である場合には、置換基として更にイオン性親水性基を有することが好ましい。置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。
前記Het(A)又はHet(B)で表される、好ましい複素環としては、チアゾール環、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピラジン環が挙げられる。更に好ましくは、イソチアゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環である。特に好ましくはピラゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、ピリジン環である。
前記Het(A)及びHet(B)は、各々置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスホリル基、ホスホノ基、ホスフィニル基、ホスホニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を例として挙げることができる。
前記置換基の中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスホリル基、ホスホノ基、ホスフィニル基、ホスホニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基が好適であるが、中でも特に電子吸引性基が好ましく、特にσpが0.40以上の置換基が好ましい。
σpが0.40以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスホノ基、ホスホリル基、及び電子吸引性基で置換されたアルキル基(トリハロメチル基、パーフルオロアルキル基、ジシアノメチル基、イミノメチル基等)、電子吸引性基で置換されたアルケニル基(トリシアノビニル基など)、4級塩置換基(スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基)が挙げられる。上記基のうち、水素原子を有するものは、これに代えて更に上記の基が置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基などが挙げられる。
また複素環上の置換基同士が結合することで、複素環と縮合環を形成してもよく、更に縮合環上に置換基を有してもよい。
好ましいマゼンタ染料は、下記一般式(M−I)で表されるものである。
前記一般式(M−I)において、Aは、5員複素環ジアゾ成分(A−NH2)の残基を表し、B1及びB2については、B1が=CR1−を表しかつB2が−CR2=を表すか、あるいはB1及びB2のいずれか一方が窒素原子を、他方が=CR1−又は−CR2=を表す。
前記一般式(M−I)中のR5及びR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基を表す。各基は更に置換基を有していてもよい。
前記一般式(M−I)中のG、R1、及びR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(複素環アミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、又は複素環チオ基を表す。各基は更に置換されていてもよい。また、R1とR5、又はR5とR6は互いに結合して5員環もしくは6員環を形成してもよい。
前記一般式(M−I)で表される化合物について更に詳細に説明する。
前記一般式(M−I)中のAで表される「5員複素環ジアゾ成分(A−NH2)の残基」の、該5員複素環のヘテロ原子の例としては、N、O、Sを挙げることができる。好ましくは、含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環又は他の複素環が縮合していてもよい。Aの好ましい複素環の例としては、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は、更に置換基を有していてもよい。
中でも、下記一般式(M−a)〜(M−f)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
前記一般式(M−a)〜(M−f)中のR7〜R20は、後に説明する一般式(M−I)中のG、R1及びR2と同じ基を表す。
前記一般式(M−a)〜(M−f)の中でも、一般式(M−a)又は一般式(M−b)で表されるピラゾール環、イソチアゾール環が好ましく、最も好ましいのは一般式(M−a)で表されるピラゾール環である。
前記一般式(M−I)中のB1及びB2については、B1が=CR1−を表しかつB2が−CR2=を表すか、あるいはB1及びB2のいずれか一方が窒素原子を、他方が=CR1−又は−CR2=を表すが、B1が=CR1−を表しかつB2が−CR2=を表すものがより好ましい。
上記のR5又はR6で表される基の中でも、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基が好ましく、更には水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基が好ましい。最も好ましくは、水素原子、アリール基、又は複素環基である。各基は更に置換基を有していてもよい。但し、R5、R6が同時に水素原子であることはない。
前記G、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、又はスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
前記一般式(M−I)中のGの好ましい基としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及び複素環チオ基が挙げられ、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)、又はアシルアミノ基であり、中でも水素原子、アニリノ基、アシルアミノ基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していてもよい。
前記一般式(M−I)中のB1、B2を構成するR1、R2の好ましい基としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していてもよい。
前記一般式(M−I)において、R1とR5、またはR5とR6は、互いに結合して5〜6員環を形成してもよい。また、一般式(M−I)中のA、R1、R2、R5、R6、Gで表される各基が更に置換基を有する場合の置換基としては、既述の前記G、R1、R2で挙げた基を挙げることができる。
本発明の染料が水溶性染料である場合には、A、R1、R2、R5、R6、Gのいずれかの位置に置換基として、更にイオン性親水性基を有することが好ましい。置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。
以下、G、R1及びR2で表される各基について詳しく説明する。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、及び置換アラルキル基を意味する。脂肪族基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基及び置換アラルキル基のアリール部分はフェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。脂肪族基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、及びアリル基を挙げることができる。
本明細書中において、芳香族基は、アリール基及び置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される芳香族基の炭素数としては、6〜20が好ましく、6〜16が更に好ましい。芳香族基の例としては、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基が挙げられる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環基には、置換基を有する複素環基及び無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環、又は他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員又は6員環の複素環基が好ましい。置換基の例としては、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、及びイオン性親水性基などが含まれる。複素環基の例としては、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、及び2−フリル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基の例としては、各々、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基を挙げることができる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルキルスルフィニル基及びアリールスルフィニル基の例としては、各々、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基を挙げることができる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアシル基には、置換基を有するアシル基及び無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましい。ここでの置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例としては、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアミノ基には、アルキル基、アリール基、又は複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基、及び複素環基はさらに置換基を有していてもよい。無置換のアミノ基は含まれない。
アルキルアミノ基としては、炭素数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。さらに有する置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ基及びジエチルアミノ基が挙げられる。
アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基及び無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素数6〜20のアリールアミノ基が好ましい。さらに有する置換基の例としてはハロゲン原子、イオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基、2−クロロアニリノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環アミノ基には、置換基を有する複素環アミノ基及び無置換の複素環アミノ基が含まれる。複素環アミノ基としては、炭素数2〜20個の複素環アミノ基が好ましい。ここでの置換基の例には、アルキル基、ハロゲン原子、及びイオン性親水性基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基及び無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルコキシ基、ヒドロキシル基、及びイオン性親水性基が含まれる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基及び無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルコキシ基、及びイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるシリルオキシ基としては、炭素数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基の例としては、トリメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシが含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基及び無置換の複素環オキシ基が含まれる。複素環オキシ基としては、炭素数が2〜20の複素環オキシ基が好ましい。ここでの置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、及びイオン性親水性基が含まれる。複素環オキシ基の例としては、3−ピリジルオキシ基、3−チエニルオキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基及び無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例としては、メトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基及び無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例としては、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基が含まれる。前記アシルアミノ基としては、炭素数2〜20のアシルアミノ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノ、3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるウレイド基には、置換基を有するウレイド基及び無置換のウレイド基が含まれる。前記ウレイド基としては、炭素数1〜20のウレイド基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルキル基、アリール基が含まれる。ウレイド基の例としては、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、3−フェニルウレイド基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるスルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基及び無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例としては、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基及び無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例としては、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基としては、炭素数1〜20のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニルアミノ基の例としては、メチルスルホニルアミノ基、N−フェニルメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、及び3−カルボキシベンゼンスルホニルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基及び無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例としては、メチルカルバモイル基及びジメチルカルバモイル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基及び無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基を有する場合の置換基の例としてはアルキル基が含まれる。スルファモイル基の例としては、ジメチルスルファモイル基及びジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基及び無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としては、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例としては、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるカルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基及び無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基を有する場合の置換基の例としては、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例としては、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基及び無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニル基の例としては、フェノキシカルボニル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基及び無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニルアミノ基の例としては、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表されるアルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基には、置換基を有するアルキル、アリール及び複素環チオ基と、無置換のアルキル、アリール及び複素環チオ基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基としては、炭素数1〜20のものが好ましい。置換基を有する場合の置換基の例としてはイオン性親水性基が含まれる。アルキル,アリール及び複素環チオ基の例としては、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環オキシカルボニル基には、置換基を有する複素環オキシカボニル基及び無置換の複素環オキシカルボニル基が含まれる。複素環オキシカルボニル基としては、炭素数が2〜20の複素環オキシカルボニル基が好ましい。ここでの置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。複素環オキシカルボニル基の例としては、2−ピリジルオキシカルボニル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環スルホニルアミノ基には、置換基を有する複素環スルホニルアミノ基及び無置換の複素環スルホニルアミノ基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基としては、炭素数が1〜12の複素環スルホニルアミノ基が好ましい。ここでの置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基の例としては、2−チオフェンスルホニルアミノ基、3−ピリジンスルホニルアミノ基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環スルホニル基には、置換基を有する複素環スルホニル基及び無置換の複素環スルホニル基が含まれる。複素環スルホニル基としては、炭素数が1〜20の複素環スルホニル基が好ましい。ここでの置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニル基の例としては、2−チオフェンスルホニル基、3−ピリジンスルホニル基が含まれる。
前記一般式(M−I)のG、R1又はR2で表される複素環スルフィニル基には、置換基を有する複素環スルフィニル基及び無置換の複素環スルフィニル基が含まれる。複素環スルフィニル基としては、炭素数が1〜20の複素環スルフィニル基が好ましい。ここでの置換基の例にはイオン性親水性基が含まれる。複素環スルフィニル基の例としては、4−ピリジンスルフィニル基が含まれる。
上記の一般式(M−I)で表される染料のうち、下記一般式(M−II)で表される染料が好ましい。
前記一般式(M−II)において、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子求引性基を表す。Z1はσp値が0.30〜1.0の電子求引性基であるのが好ましい。中でも、σp値が0.45〜1.0の電子求引性基であるのが好ましく、0.60〜1.0の電子求引性基であるのが好ましい。
好ましい具体的な置換基については後述する電子求引性置換基を挙げることができるが、中でも炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
前記一般式(M−II)中のR1、R2、R5、及びR6は、各々既述の一般式(M−I)におけるR1、R2、R5及びR6と各々同義である。
前記一般式(M−II)中のR3及びR4は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表す。その中でも、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、水素原子、芳香族基、複素環基が特に好ましい。
前記一般式(M−II)中のZ2は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。
前記一般式(M−II)中のQは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表す。その中でも、Qは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。この5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。その中でも、特に、芳香族基、複素環基が好ましい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子及び炭素原子が挙げられる。5〜8員環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環、及びチアン環等が挙げらる。
前記一般式(M−II)で説明した各基は、更に置換基を有していてもよい。これらの各基が更に置換基を有する場合の該置換基としては、前記一般式(M−I)で説明した置換基、G、R1及びR2で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。
ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えてアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)を挙げることができる。
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加えてアシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、及び複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニルー2−ベンズイミダゾリル)を挙げることができる。
ハメット置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加えてハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(M−I)で表される化合物として、特に好ましいR5、R6、A、B1、B2及びGの組み合わせは以下の通りである。
(イ)R5及びR6は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは水素原子、アリール基、複素環基である。但し、R5及びR6が共に水素原子であることはない。
(ロ)Gは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基であり、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アミド基である。
(ハ)Aは、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
(ニ)B1及びB2は、各々=CR1−、−CR2=であり、かつR1及びR2の各々は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシ基である。
なお、前記一般式(M−I)で表される化合物において、R5、R6、A、B1、B2及びGの好ましい組み合わせは、R5、R6、A、B1、B2及びGの少なくとも1つが上記(イ)〜(ニ)に記載の好ましい基である化合物が好ましく、2つ以上が上記(イ)〜(ニ)に記載の好ましい基である化合物がより好ましく、全てが上記(イ)〜(ニ)に記載の好ましい基である化合物が最も好ましい。
好ましいシアン染料は、下記一般式(C−I)で表されるフタロシアニン染料である。
前記一般式(C−I)において、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立にσpが0.40以上の電子吸引性基を表す。Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に一価の置換基を表す。Mは、水素原子、金属元素又はその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表す。a1〜a4は、各々X1〜X4の置換基数であり、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。b1〜b4は、各々Y1〜Y4の置換基数であり、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。ただし、a1〜a4の総和は2以上であり、3以上が好ましく、特にa1=a2=a3=a4=1である場合が最も好ましい。染料が水溶性染料である場合には、X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3、Y4のいずれかの位置に置換基として更にイオン性親水性基を有することが好ましい。置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。
前記一般式(C−I)で表されるフタロシアニン染料の中でも、下記一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が更に好ましい。以下、一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料について詳述する。
前記一般式(C−II)において、X11〜X14は、それぞれ独立に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR1R2、スルホ基、−CONR1R2、又は−CO2R1を表し、Y11〜Y18は、それぞれ独立に一価の置換基を表す。、Mは、水素原子、金属原子又はその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表す。a11〜a14は、各々X11〜X14の置換基数であり、それぞれ独立に1又は2の整数を表す。また、Zは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。
前記一般式(C−II)中、a11〜a14は、4≦a11+a12+a13+a14≦6を満たす値が特に好ましく、中でも特にa11=a12=a13=a14=1の場合が特に好ましい。
X11、X12、X13及びX14は、互いに同一の置換基であってもよく、あるいは例えば、X11、X12、X13及びX14の全てが−SO2−Zを表すが各Zは互いに異なるものを含む場合など、同種の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基であってもよく、あるいは例えば、−SO2−Zと−SO2NR1R2とが同時に置換した場合など、互いに異なる置換基を含んでいてもよい。
前記一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料の中でも、特に好ましい構造(置換基)は以下の通りである。
前記X11〜X14については、それぞれ独立に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR1R2、又はCONR1R2であるのが好ましく、−SO2−Z又はSO2NR1R2であるのが特に好ましく、−SO2−Zであるのが最も好ましい。
前記Zについては、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基であるのが好ましく、中でも特に置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基であるのが最も好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高める観点から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向上させる観点から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好ましい。
前記R1、R2については、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基であるのが好ましく、中でも特に水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環基であるのが好ましい。但し、R1及びR2がともに水素原子であるのは好ましくない。特に染料の溶解性やインク安定性を高める観点から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向上させる観点から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好ましい。
更に前記Y11〜Y18については、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、及びスルホ基であるのが好ましく、特に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、及びスルホ基であるのが好ましく、水素原子であるのが最も好ましい。
前記a11〜a14については、それぞれ独立に1又は2であるのが好ましく、特にa11〜a14の全てが1であるのが好ましい。
前記Mについては、水素原子、金属元素又はその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物であるのが好ましく、Cu、Ni、Zn、又はAlであるのが特に好ましく、Cuであるのが最も好ましい。
前記(C−I)又は(C−II)で表されるフタロシアニン染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。前記イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基の中でも、カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基が特に好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は染料の溶解性を高めインク安定性を向上させる点で特に好ましい。
また、前記イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン系染料1分子中に少なくとも2個以上であることが好ましく、特にスルホ基及び/又はカルボキシル基を少なくとも2個以上有することが好ましい。
前記一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料の好ましい置換基の組合せとしては、各置換基の少なくとも一つが上記した好ましい基を表す構造が好ましく、より多くの置換基が上記した好ましい基を表す構造がより好ましく、全ての置換基が上記の好ましい基を表す構造が最も好ましい。
前記フタロシアニン染料の好ましい化学構造としては、スルフィニル基、スルホニル基、スルファモイル基のような電子吸引性基を、フタロシアニンの4つの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.6以上となるように導入することが好ましい。
前記一般式(C−I)で表されるフタロシアニン染料は、その合成法によって不可避的に置換基Xn(n=1〜4)及びYm(m=1〜4)の導入位置及び導入個数が異なる類縁体混合物である場合が一般的であり、したがって一般式はこれら類縁体混合物を統計的に平均化して表している場合が多い。本発明では、これらの類縁体混合物を以下に示す3種類に分類すると、特定の混合物が特に好ましいことを見出したものである。すなわち前記一般式(C−I)及び(C−II)で表されるフタロシアニン系染料類縁体混合物を置換位置に基づいて以下の3種類に分類して定義する。
(1)β位置換型:2位及び/又は3位、6位及び/又は7位、10位及び/又は11位、14位及び/又は15位に特定の置換基を有するフタロシアニン染料。
(2)α位置換型:1位及び/又は4位、5位及び/又は8位、9位及び/又は12位、13位及び/又は16位に特定の置換基を有するフタロシアニン染料
(3)α,β位混合置換型:1〜16位に規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン染料
本明細書中において、構造が異なる(特に置換位置が異なる)フタロシアニン染料を説明する場合、上記のβ位置換型、α位置換型、α,β位混合置換型を使用する。
本発明に用いられるフタロシアニン染料は、例えば、白井−小林共著「フタロシアニン−化学と機能−」(p.1〜62、(株)アイピーシー発行)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行“Phthalocyanines−Properties and Applications”(p.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組合せて合成することができる。
前記一般式(C−I)で表されるフタロシアニン染料は、WO00/17275、同00/08103、同00/08101、同98/41853、特開平10−36471号などに記載されているように、例えば無置換のフタロシアニン化合物のスルホン化、スルホニルクロライド化、アミド化反応を経て合成することができる。この場合、スルホン化がフタロシアニン核のどの位置でも起こり得るうえにスルホン化される個数も制御が困難である。したがって、このような反応条件でスルホ基を導入した場合には、生成物に導入されたスルホ基の位置と個数は特定できず、必ず置換基の個数や置換位置の異なる混合物を与える。したがって、それを原料として本発明の化合物を合成するときには、複素環置換スルファモイル基の個数や置換位置は特定できないので、フタロシアニン染料としては置換基の個数や置換位置の異なる化合物が何種類か含まれる、α,β位混合置換型混合物として得られる。
既述のように例えば、スルファモイル基のような電子求引性基を数多くフタロシアニン核に導入すると酸化電位がより貴となり、オゾン耐性が高まる。上記の合成法に従うと、電子求引性基が導入されている個数が少ない、すなわち酸化電位がより卑であるフタロシアニン染料が混入してくることが避けられない。したがって、オゾン耐性を向上させるには、酸化電位がより卑である化合物の生成を抑えるような合成法を用いることがより好ましい。
それに対し、前記一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料は、例えば下記式で表されるフタロニトリル誘導体(化合物P)及び/又はジイミノイソインドリン誘導体(化合物Q)を、一般式(C−III)で表される金属誘導体と反応させて得ることができる。あるいは下記式で表される4−スルホフタル酸誘導体(化合物R)と一般式(C−III)で表される金属誘導体とを反応させて得られるテトラスルホフタロシアニン化合物から誘導することができる。
前記各式中、Xpは、前記一般式(C−II)におけるX1、X2、X3、又はX4と同義であり、Yq及びYq’はそれぞれ、前記一般式(C−II)におけるY11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16、Y17、又はY18と同義である。前記化合物Rにおいて、M’はカチオンを表す。
M−(Y)d …一般式(C−III)
前記一般式(C−III)中、Mは、前記一般式(C−II)のMと同義であり、Yは、ハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、酸素等の1価又は2価の配位子を表し、dは1〜4の整数を表す。
すなわち、上記の合成法に従えば所望の置換基を特定の数だけ導入することができるのである。特に、本発明のように酸化電位を貴とするために電子求引性基を数多く導入したい場合には、上記の合成法は前記一般式(C−I)の合成法と比較して極めて優れたものである。
前記一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料は、通常、Xpの各置換位置における異性体である下記一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物の混合物、すなわちβ位置換型となっている。
上記の合成法において、Xpとして全て同一のものを使用すればX11、X12、X13及びX14が同一の置換基であるβ位置置換型のフタロシアニン染料を得ることができる。一方、Xpとして異なるものを組合せて使用すれば、同種の置換基であるが部分的に互いに異なる置換基をもつフタロシアニン染料、あるいは互いに異なる種類の置換基をもつフタロシアニン染料を合成することができる。前記一般式(C−II)の染料の中でも、互いに異なる電子吸引性置換基を持つ場合には染料の溶解性、会合性、インクの経時安定性などを調整できる点で特に好ましい。
上記いずれの置換型においても酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であることが堅牢性の向上の点で特に重要であり、また中でも、α,β位混合置換型よりβ位置換型の方が色相や光堅牢性及びオゾンガス耐性等の点で優れている傾向にあった。
前記一般式(C−I)又は(C−II)で表されるフタロシアニン染料は、例えば、特開2002−302623号、特開2002−294097号、特開2002−249677号、特開2003−012952号に記載の方法により合成することができる。また、出発物質、染料中間体及び合成ル−トについてはこれらにより限定されるものでない。
本発明に係るマゼンタ染料及び/又はシアン染料の酸化電位が0.8V(vs SCE)よりも貴であるが、シアン染料としてのフタロシアニン染料は、会合体を形成しているために酸化電位が多少低くとも堅牢性を補償できるのに対し、マゼンタ染料は会合を形成するものではないため、堅牢性を高めるには酸化電位をシアン染料以上に貴に設定することが好ましい。
以下、本発明において好適な染料の例を示す。但し、本発明においてはこれらに制限されるものではない。なお、括弧内には酸化電位を示す。
イエロー染料の具体例〔Y−1〜Y−35〕を列挙する。
次に、マゼンタ染料の具体例〔M−1〜M−26〕を列挙する。
次に、シアン染料の具体例〔C−1〜C−50〕を列挙する。
上記のほか、特開2002−294097号、特開2002−249677号、特開2002−256167号、特開2002−275386号、特開2003−012952号、特開2001−279145号、特開2002−309116号に記載の化合物も挙げることができるが、これらに限定されるものでもない。また、上記の各化合物は上記の方法により容易に合成できる。
−インクジェット記録用インク−
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも1種のイエロー染料を含有するイエローインク、少なくとも1種のマゼンタ染料を含有するマゼンタインク、及び少なくとも1種のシアン染料を含有するシアンインクを最小の構成要素とする。ここで、各インクに含まれる染料としては、上述の各種染料が用いられる。通常、インクセットの各インクは、親油性媒体や水性媒体中に染料を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。水性媒体を用いる水性インクの方が、作業環境及び省資源の面で好ましい。
染料の他に必要に応じて各種の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲内において添加し得る。このような添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
前記乾燥防止剤はインクジェット記録方法に用いるノズルのインク噴射口において、該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
これらのうち、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
前記浸透促進剤は、インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。該浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常、充分な効果があり、印字の滲みや紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で使用するのが望ましい。
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。該紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。該褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、チオエーテル類、チオウレア類、複素環類などがあり(例えば、特開2002−36717号公報、特開2002−86904号公報記載のもの)、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の頁127〜137に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
前記防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
前記pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。該pH調整剤はインクの保存安定性を向上させる目的で、該インクのpHが6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
前記表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、本発明に係るインクの表面張力は25〜70mPa・sが好ましく、25〜60mN/mがより好ましい。また、インクの粘度は30mPa・s以下が好ましく、更に20mPa・s以下がより好ましい。
これら界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型や、N,N−ジメチル−N−ラウリル−カルボメチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩含有ベタイン型両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157、636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使用できる。
前記消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
本発明に係る染料が油溶性の場合に水性媒体に分散させる方法としては、特開平11−286637号、特開2001−240763号、特開2001−262039号、特開2001−247788号の各公報に記載のように染料と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特開2001−262018号、特開2001−240763号、特開2001−335734号、特開2002−080772号の各公報に記載のように高沸点有機溶媒に溶解した染料を水性媒体中に分散することが好ましい。本発明における染料を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記公報に記載されたものを好適に適用することができる。あるいは、染料を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方法については、先述の特許以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されていて、本発明に係るインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。該水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、該水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
本発明に係るインクセットを構成するインクは、インク100質量部に対して、染料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましい。また、イエロー、シアンの各インクは、二種以上の染料を併用してもよい。マゼンタインクは、酸化電位が0.8Vより貴であれば二種以上の染料を併用してもよい。二種以上の染料を併用する場合は、染料の含有量の合計が上記範囲となっているのが望ましい。
近年、高画質化を目的に、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクがしばしば染料濃度の異なる二種以上のインクから構成されるが、本発明においては、濃淡各インクで用いられる染料は、いずれも酸化電位が0.8Vより貴であることが望ましい。
本発明において、同色相のインクとして2種以上の異なるインクを用いる場合、一種のインク濃度に対して、他種のインク濃度が0.05〜0.5倍であることが好ましい。
本発明に係るインクセットは、フルカラーの画像形成に用いるものであるが、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。