JP2005034720A - 酸化用固体触媒の製造方法及び酸化的付加生成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒を製造するにあたり、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含有する液体媒体を該担体に接触させた後、乾燥及び還元処理する酸化用固体触媒の製造方法、及び本法により製造した触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン、或いは側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤および分子状酸素との酸化的付加生成物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパラジウムとテルルを有効成分として担体に担持した固体触媒、およびこの触媒と分子状酸素との存在下、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和グリコールジエステル、例えばブテンジオールジエステルはエンジニアリングプラスチックス、エラストマー、弾性繊維、合成皮革等の原料である1,4−ブタンジオールや、高性能溶剤、弾性繊維の原料であるテトラヒドロフランを製造するための重要な中間化合物である。このブテンジオールジエステルを製造する方法の一つとして、触媒存在下、ブタジエンをカルボン酸及び分子状酸素と反応させてブテンジオールジエステルを製造する方法がある。
【0003】
このような、オレフィンや芳香族化合物にアルコキシ基やアシルオキシ基等の求核剤を酸化的に付加させたり、アルキル基置換芳香族化合物の側鎖アルキル基にアシルオキシ基等の求核剤を酸化的に付加させたりする反応は「オキシアニオニゼーション」と呼ばれている。オキシアニオニゼーションで使用されるパラジウム触媒は、2価のパラジウム塩を活性種とするものと、0価の金属パラジウムまたは他金属と複合化させたパラジウム合金を活性種とするもの(以下、この金属パラジウムとパラジウム合金の総称としてPd[0]と記載する)の2つに大別される。
【0004】
2価のパラジウム塩を用いる場合、均一系触媒反応では高価なパラジウムの分離・回収が必須となる問題があり、不均一系触媒反応であってもパラジウム塩の経時的な流出によるパラジウム損失があるなど、いずれにせよ課題がある。
このため、Pd[0]を用いる方が工業的に望ましい。ところでPd[0]触媒の使用に当たっては反応中に触媒活性が低下することが知られ、対策として反応系中にアルカリ金属塩を共存させることが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。特許文献1には、共役ジエンから不飽和カルボン酸ジエステルを合成する気相流通反応において、Pd[0]、バナジウム及びアンチモンにアルカリ金属の酢酸塩及びハロゲン化物の両方を共存させることで、触媒寿命を延ばし、高収率、高選択率を得る方法が記載されている。特許文献2には、ブタジエンと低級脂肪酸と酸素を反応させ不飽和エステルを合成する気液混相反応において、Pd[0]と硫黄又はテルルに、アルカリ金属塩を共存させることで触媒活性低下を防ぐ方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、反応系中にアルカリ金属塩を共存させた場合、反応後に生成物を加熱、冷却、分離する工程において熱交換器内部(例えば伝熱面の表面)にアルカリ金属が析出してしまう問題が生じる。また、アルカリ金属塩がハロゲン化物であった場合は、腐食性の高いハロゲンが反応器中に共存することから反応器及び周辺装置に耐腐食性(耐ハロゲン性)の材質を用いる必要がある。しかも、一般的にこれらの反応は高温或いは高圧の条件下で行われるので、耐ハロゲン性をますます高める必要があり、極めて大きなコストがかかってしまう。
【0006】
更に、アルカリ金属塩が反応系から経時的に流出し、それに伴い触媒活性が低下する問題がある。反応中にアルカリ金属塩を連続的に供給する方法もあるが、添加する塩類のコストがかかる上、装置も複雑になることから、やはり工業的使用は困難である。
これに対して、反応系中にアルカリ金属塩を必要とせず、パラジウムを合金化して用いることで触媒活性を高め、かつ活性低下を防ぐ方法も提案されている。
【0007】
例えば、ブタジエンの酸化的アルコキシ化反応においてPdにTe、Se、Sから選ばれる一つ以上の第二成分を添加する方法(特許文献3)、シクロヘキセンからアシロキシシクロヘキセンを合成する反応においてPd−Te合金を用いる方法(特許文献4)である。これにより触媒の特性はかなり改善されるが、工業化する上では、より活性を高めたいとの要請がある。またパラジウムは高価な貴金属であるため、単位パラジウム当たりの活性をできるだけ高め、他の触媒に比して特に高活性な触媒を得ることが望まれている。そこで、触媒活性をさらに向上させる手法として、パラジウム及びテルルを触媒の外表面近傍に多く担持させる方法が提案されている(特許文献5)。
【0008】
【特許文献1】特開昭52−71410号
【特許文献2】特開昭54−14914号
【特許文献3】特開平6−9473号公報
【特許文献4】特開平11−315049号公報
【特許文献5】特開平10−175917号公報
【特許文献6】国際公開第98/026867号パンフレット
【非特許文献1】触媒、23巻(1981年)、115頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献5に記載の方法によれば、工業的にも概ね満足のゆく活性が得られてはいるが、触媒に用いるパラジウム原料が硝酸塩であり、活性成分を担体に担持した後の乾燥や還元工程において窒素酸化物(NOx)が多量に発生するため、工業的にはこれを除去する設備が必要となりコスト増の要因となる。そこで、窒素酸化物の発生を抑えることで、より安全性を高め、かつコストを低減したいとの要請があった。
【0010】
これに対して、パラジウム原料として硝酸塩に替えて例えば塩化物を用いることが考えられるが、塩化物を用いた触媒は硝酸塩を用いた触媒に比べて活性が低いことが知られ(非特許文献1)、工業的に十分な高活性は得られないとされていた。
また、特許文献6には、パラジウム合金を活性種として担体に担持させた触媒の製造方法として、パラジウム塩化物を原料に用いた次の方法が提案されているが依然として種々の問題点があった。即ちアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも1種類以上の金属の塩基性金属成分を含む担体を乾燥及び/又は焼成したものを、パラジウム塩化物及びアルカリ金属塩化物の溶液に瞬時に投入してパラジウムを不溶固定化させる。この担体を分離し洗浄した後、パラジウム合金を構成する他方の金属イオン(第2金属)を含む溶液を添加したのち還元処理し、パラジウム合金担持触媒を得る。
【0011】
しかしこの方法では、パラジウム固定ののち第2金属の固定が行われるため両者の混合性が良好でないと考えられるし、第2金属の全てが担体に担持されず一部は溶媒側に残留してしまうので、触媒性能にとって極めて重要なパラジウムと第2金属の原子比のコントロールが困難になるとともに、触媒原料である第2金属塩を無駄に消費してしまう問題がある。更に、触媒を製造する工程が複雑であるという問題がある。
【0012】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性・高選択率を発現し、かつ窒素酸化物の発生を抑え低コストで触媒を得ることにある。また、オレフィンや芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含有する液体媒体を無機多孔体等の担体に接触させた後に、乾燥及び還元処理することにより極めて高い活性を有する触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】
即ち、本発明は、パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒を製造するにあたり、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含有する液体媒体を該担体に接触させた後、乾燥及び還元処理することを特徴とする、酸化用固体触媒の製造方法に存する。
【0015】
なお、乾燥処理と還元処理は別々に行っても良いし一処理として同時に行っても良い。
本発明においては、パラジウムハロゲン化物がパラジウム塩化物であることが好ましい。
また、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(以下、アルカリ金属類と総称する。)の塩は、好ましくはアルカリ金属類のハロゲン化物又はカルボン酸塩であり、より好ましくはアルカリ金属類のハロゲン化物であり、最も好ましくはアルカリ金属類の塩化物である。
【0016】
パラジウムハロゲン化物に含まれるハロゲンとアルカリ金属類ハロゲン化物に含まれるハロゲンは、必ずしも同種でなくてもよいが、好ましくは同種である。
本発明においては担体は無機多孔体であることが好ましく、無機多孔体としてはシリカが特に好ましい。
本酸化用固体触媒は、液相酸化用触媒として用いることが好ましい。即ち反応時に、基質及び酸素求核剤のうち、少なくとも1つ以上が液状で触媒と接触することが好ましい。中でも液相酸化的アシロキシ化(アシルオキシ化)及び/又はアルコキシ化用の触媒として用いると活性が高く好ましい。
【0017】
本発明の別の要旨は、上記固体触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、オレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0018】
或いは、本発明の別の要旨は、上記固体触媒及び分子状酸素の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。即ち、アルキル基置換芳香族化合物の側鎖アルキル基にアシルオキシ基等の求核剤を酸化的に付加させる。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒及び分子状酸素の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0019】
これら製造方法の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて、対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法である。
【0020】
他の一例は、上記固体触媒の存在下にシクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下にアルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法である。
【0021】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒を製造するにあたり、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含有する液体媒体を該担体に接触させた後、乾燥及び還元処理することを特徴とする。
【0023】
本発明の技術上の要旨は、触媒製造の過程においてパラジウムハロゲン化物及びテルル化合物にアルカリ金属類塩を共存させることにあり、従来のように反応系中にアルカリ金属類やハロゲンが存在する必要はない。
触媒製造の過程でパラジウムハロゲン化物及びテルル化合物にアルカリ金属類塩を共存させると、何故、高活性な触媒が得られるのかは必ずしも明らかではないが、次のように推定される。
【0024】
すなわち従来、無機多孔体などの担体に活性成分であるパラジウムとテルルを担持させて触媒を製造するにあたっては、パラジウム及びテルルの金属または金属塩を水などの溶媒に溶解して調製した溶液に担体を接触させ含浸させ、そののち乾燥または還元により金属成分を不溶化させ析出させていた。
一方本発明では、パラジウムとテルルの溶液にアルカリ金属類塩を溶解共存させることでパラジウムとテルルが溶解状態で錯塩等を形成すると推測され、このことが、パラジウムとテルルが担体に含浸されたのち乾燥や還元により析出する際にパラジウム原子とテルル原子の混合性を向上させ、ひいては触媒活性を向上させるのではないかと考えられる。
【0025】
本発明によれば、パラジウム原料としてパラジウム硝酸塩を用いる必要がないので、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えることができ、より取扱いが容易で安全性が高く、低コストで触媒が製造できる利点がある。
しかも、本製造法により得られた触媒は、パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒であって、パラジウム原料としてパラジウム硝酸塩を用いた場合と同等以上の、工業的に十分満足できる高活性・高選択率を発現できる利点がある。
【0026】
また、本発明によれば従来のように反応系中にアルカリ金属類やハロゲンが存在する必要はないので、例えば反応後のアルカリ金属析出の問題は無く、耐ハロゲン性の高コストの反応設備を用いる必要が無く、また反応系中にアルカリ金属塩を連続供給するコストも不要となる。従って、オレフィンや芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法に本発明に係る触媒を用いると、これら生成物を低コストで、しかも工業的に十分満足できる高収率かつ高選択率で得ることができる利点がある。
【0027】
なお、触媒製造の過程でハロゲンを用いるため触媒製造装置を耐ハロゲン性のものとする必要があるが、一般的に触媒製造の装置は、その触媒を用いた反応用の設備に比べ圧倒的に小さく、しかも常圧で使用するため、触媒製造装置に耐ハロゲン性を付加するコストはごく小さい。しかも、塩化物は工業用触媒の原料として一般に使用されているため、既に耐ハロゲン性を備えた触媒製造装置も多く、既存の設備をそのまま利用できる場合も多い。
【0028】
以下、本発明の触媒の製造方法についてより詳細に説明する。
本発明の触媒調整のために用いられるパラジウムハロゲン化物としては、パラジウムとハロゲンを含んでいれば特に制限されず、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物の何れも使用でき、2種以上のハロゲン化物を併用しても良いが、工業的に広く使用されている塩化物が、その入手の容易性や価格の理由で特に好ましい。
【0029】
また、パラジウムハロゲン化物の種類は、例として塩化物で表せば、PdCl2等のハロゲン化パラジウム、Na2PdCl4、K2PdCl4、Cs2PdCl4、MgPdCl4等のアルカリ金属類とパラジウムとの複合ハロゲン化物、(NH4)2PdCl4等のアンモニウム基とパラジウムとの複合ハロゲン化物、といった無機ハロゲン化物;[PdCl2(NH3)2]や[Pd(NH3)4]Cl2のようなアンミン錯体;アリルパラジウムクロライド二量体(C6H10Cl2Pd2)、ビスエチレンジアミンパラジウムクロライド[Pd(C2H4N2H4)2]Cl2、ジクロロビストリエチルホスフィンパラジウム[PdCl2{P(C6H5)3}2]等のような有機ハロゲン化物;等が挙げられる。必要ならば金属パラジウムをハロゲンを含む酸で溶解したものを用いても良い。また、これらと同様のフッ化物、臭化物、ヨウ化物も用いうる。
【0030】
中でも無機ハロゲン化物が好ましく、特にはハロゲン化パラジウムや、アルカリ金属類とパラジウムとの複合ハロゲン化物が好ましい。最も好ましくはPdCl2、Na2PdCl4及びK2PdCl4である。アルカリ金属類とパラジウムとの複合ハロゲン化物を用いる場合、更に別にアルカリ金属類塩を加える必要はない。
【0031】
触媒中のパラジウム濃度は、通常0.1重量%以上とし、好ましくは0.5重量%以上とする。但し通常10重量%以下とし、好ましくは6重量%以下とする。触媒中のパラジウム濃度があまり低すぎると単位触媒重量当たりの活性が低く実用的ではなく、一方あまり高すぎると単位パラジウム当たりの活性が低下し、更には高価なパラジウムを多量に必要とすることから触媒コストが高くなり、そのいずれも経済的に好ましくない。
【0032】
触媒の調製に用いられるテルル化合物としては、テルルを含んでいれば特に制限されないが、塩化テルル(II)、塩化テルル(IV)のようなハロゲン化合物、酸化テルル(IV)、酸化テルル(VI)のような酸化物、テルル酸(H6TeO6)及びその塩類、亜テルル酸(H2TeO3)及びその塩類、金属テルル、ソジウムハイドロジェンテルライド(NaHTe)、ジフェニルジテルライド([PhTe]2)に代表される有機テルル等が用いられる。
【0033】
担体に担持されるテルルの量は、触媒が十分な活性を示す範囲であれば特に制限されないが、担持されたパラジウム1モルに対する担持されたテルルのモル数で表すと、通常、テルルは0.05モル以上であり、好ましくは0.1モル以上であり、より好ましくは0.15モルである。但し、通常5モル以下であり、好ましくは2モル以下であり、より好ましくは0.5モル以下である。
【0034】
テルル量が少なすぎると、本触媒を用いて基質を反応させた場合、パラジウムが担体から反応液中に流出する虞がある。一方、大きすぎると、テルルが反応液中に流出する虞があり、何れの場合も触媒活性低下の原因となり、長時間の連続使用に耐えられなくなってしまう。
触媒の調製に用いられるアルカリ金属類(アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属)塩としては、本発明の目的に照らし窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の発生源となりうる硝酸塩、硫酸塩の使用は好ましくない。それ以外の塩であれば特に限定されないが、安全性及び活性の点から好ましくはハロゲン化物及び/又はカルボン酸塩である。本発明においてはパラジウムハロゲン化物を用いるので、後処理などの工程上、アルカリ金属類塩もハロゲン化物が特に好ましい。
【0035】
ハロゲン化物としては、アルカリ金属類とハロゲンを含んでいれば特に制限されず、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物の何れも使用でき、2種以上のハロゲン化物を併用しても良いが、工業的に広く使用されている塩化物が、その入手の容易性や価格の理由で特に好ましい。パラジウムハロゲン化物とアルカリ金属類ハロゲン化物のハロゲンは同種であっても異種であっても良いが、好ましくは同種のものを用いる。また、アルカリ金属類ハロゲン化物の種類は、例として塩化物で表せば、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等が用いられる。前述のとおり、Na2PdCl4のようにパラジウム塩にアルカリ金属類とハロゲンが包含されたパラジウム塩を用いても良い。また、これらと同様のフッ化物、臭化物、ヨウ化物も用いうる。
【0036】
使用するアルカリ金属類は1種でも良いし2種以上を併用しても良いが、工業的に広く使用されているナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが、その入手の容易性や価格の理由で特に好ましい。工業的に最も好ましいのはナトリウムである。
用いられるアルカリ金属類の量は、パラジウムハロゲン化物及びテルル化合物の溶液中のパラジウム1モルに対するアルカリ金属類のモル数で表すと、通常、アルカリ金属類は0.2モル以上であり、好ましくは0.5モル以上である。少なすぎるとアルカリ金属類を添加する効果が弱くなり、その結果、活性向上率が低く好ましくはない。但し、通常8モル以下であればその効果は十分であり、それ以上の添加はアルカリ金属塩類の費用の面で好ましくはなく、触媒中のアルカリ金属類を反応に供する前に除去したい場合等には、その後処理にかかる負荷の面で4モル以下がより好ましい。
【0037】
本発明においては、これらパラジウムハロゲン化物、テルル化合物及びアルカリ金属類塩が溶解した溶液(以下、金属塩溶液と称する)を調整し、担体と接触させ、担体に含浸させる。本溶液の調整法は、特に限定されるものではなく、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物及びアルカリ金属類塩が溶解していればよい。溶媒としては、一般的に水(H2O)が用いられるが、必要に応じてケトンやアルコール、有機カルボン酸、エーテル、エステル等の有機溶媒を用いても良い。
【0038】
本発明における触媒の担体としては、通常、本質的に反応条件下に変化しない無機多孔体が使用される。例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物担体及びそれらの混合酸化物等が用いられ、特にシリカが好ましい。その担体物性としては多孔質である必要があり、平均細孔直径は10〜50nmの範囲が好ましい。担体形状については特に限定されるものではないが、固定床触媒反応形式を採用する場合には、工業的にはその担体粒子径が1mm以上であるのが好ましい。但し、担体粒子径が8mm以下であるのが好ましい。担体粒子径が大きすぎると触媒粒子の外表面積が相対的に小さくなってしまう。逆に小さすぎると触媒充填層の圧力損失が大きくなる。
【0039】
また流動床触媒反応形式や懸濁相触媒反応形式を採用する場合には、工業的にはその担体粒子径が5μm以上であるのが好ましく、より好ましくは10μm以上である。但し、担体粒子径が2000μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1000μmのである。担体粒子径が大きすぎると触媒の流動性が悪くなってしまう。逆に小さすぎると触媒の分離が困難になる。
【0040】
次に、金属塩溶液を担体に接触させ含浸させるが、接触方法は特に限定されるものではない。例えば、金属塩溶液に担体を加える方法、逆に担体に金属塩溶液を添加する方法、担体に金属塩溶液を噴霧する方法等の何れでも良い。金属塩溶液を担体に接触させる際の金属塩溶液の量は特に限定されず、仮に担体の細孔容積よりも過剰の金属塩溶液を用いた場合には、その過剰分をリサイクルしても良い。また、担体粒子の中心部まで含浸させたくない場合には、逆に担体の細孔容積よりも少ない量を使用すれば良い。
【0041】
金属塩溶液を含浸した固体担体を乾燥する方法も特に限定されるものではない。例えば、ロータリエバポレータやコニカルブレンダーを用いた流動床減圧乾燥、減圧乾燥機や棚段乾燥装置等の静置式乾燥、キルン乾燥装置等の流動床乾燥、冷却凍結させた状態で減圧し乾燥する方法、或いは気流中で加熱して乾燥する方法等、何れの乾燥方法でも良いが、工業的には気流中で加熱乾燥する方法が好ましい。
【0042】
気流中で乾燥する方式としては、固定床乾燥、流動床乾燥、キルン型乾燥の何れでも良い。キルン型乾燥は担体粒子径の制限を受けないが、固定床乾燥は工業的には担体粒子径が1mm以上の場合に適用するのが好ましく、流動床乾燥は0.2mm以下の場合に適用するのが好ましい。
気流乾燥の場合のガス成分としては、空気や窒素等の不活性ガスが一般に用いられ、必要に応じて除湿したガスを使用しても良い。或いは、水素ガスを用いて乾燥処理と還元処理を同一工程で実施しても良い。用いるガス流量は、通常触媒に対して空間速度(SV)で20(l/l・時)以上の範囲で選択されるが、より好ましいのは1000〜10000(l/l・時)の範囲である。SVの値が低すぎると乾燥に要する時間が長くなってしまい、また高すぎるとガス使用量が大きくなり高コストになる。
【0043】
このように乾燥した触媒は、通常、還元処理をした後に使用される。但し乾燥工程において還元処理も行われている場合は更なる還元工程を行う必要はない。還元方法は特に制限されないが、通常、水素ガスやメタノールガス等による気相還元、ヒドラジンやホルマリン、ギ酸及びその塩類で代表されるような液相還元などが用いうる。
【0044】
なお、例えば乾燥が不十分である場合や、予めある程度塩を分解させたい場合等には、還元処理前に更なる乾燥処理や焼成処理を行っても良く、必要とあればそれらを繰り返し行っても良い。焼成方法としては窒素や空気及びその混合物気流中、固定床或いはキルンの如く流動床に窒素や空気及びその混合物等のガス気流中で加熱する方法や、ガスを流通せずに加熱する方法のいずれでも良い。
【0045】
還元処理した触媒はそのままでも使用できるが、触媒中に残存するアルカリ金属類やハロゲンを除去処理した後に使用しても良い。その除去方法としては、通常、本質的にパラジウム合金を溶解させることのない液体により洗浄する方法が用いられる。その洗浄用の液体としては、例えば水や温水で良く、更には任意の濃度に調整された酢酸や蓚酸のような弱酸及び炭酸ナトリウムのような弱塩基を用いても良い。
【0046】
中でも水または温水が価格や安全性の面でより好ましい。なお、水または温水ではアルカリ金属類成分を完全に除去することは困難であるため、工業的には反応系中で問題にならない程度まで除去するのが一般的である。この問題にならない量は、反応基質や条件、プロセスフロー等によって変化する為、一概には言えないが、一般的には0.5%未満であり、好ましくは0.2%未満である。
【0047】
ただし、プロセスによってはアルカリ金属類やハロゲンをできるだけ完全に除去したい場合がある。アルカリを特に除去したい場合は、酢酸や蓚酸のような弱酸を用いて洗浄すると除去効率が良い。また、ハロゲン成分を特に除去したい場合は、炭酸ナトリウムのような弱塩基を用いて洗浄すると除去効率が良い。
洗浄方法は特に限定されるものではないが、工業的には洗浄槽に触媒を充填し、洗浄液を流通させるのが一般的である。
【0048】
以下、本発明により製造された触媒の使用方法についてより詳細に説明する。本発明に係る製造法で得られた触媒は広く酸化触媒反応の酸化用触媒として使用することができるが、液相反応での使用が好ましい。即ち反応時に、基質及び酸素求核剤のうち、少なくとも1つ以上が液状で触媒と接触することが好ましい。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。
【0049】
例えば、オレフィンの酸化によるアルデヒド合成、オキシクロリネーションや酸化的アシロキシ化、酸化的シアノ化、酸化的アルコキシ化等のオキシアニオニゼーション、オレフィン及び/または芳香族のカップリング反応、酸化的カルボキシル化等の反応で使用できる。
より具体的には、アルデヒド合成としてはエチレンからのアセトアルデヒド合成等があげられる。オキシクロリネーションとしては、エチレンからの塩化ビニル合成、プロピレンからの塩化アリル合成、ブタジエンからのジククロロブテン合成、イソプレンからのジクロロメチルブテン合成、ベンゼンからのクロロベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖クロロ化等があげられる。アシロキシ化としては、エチレンから酢酸ビニルで代表されるようなアシロキシビニル合成、ブタジエンからのジアシロキシブテン合成、イソプレンからのジアシロキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアシロキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アシロキシ化等があげられる。シアノ化としては、エチレンからのアクリロニトリル合成、ブタジエンからのジシアノブテン合成、イソプレンからのジシアノメチルブテン合成、ベンゼンからのシアノベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖シアノ化等があげられる。アルコキシ化としては、エチレンからのメチルエチルエーテル合成、ブタジエンからのジアルコキシブテン合成、イソプレンからのジアルコキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアルコキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アルコキシ化等があげられる。カップリング反応としてはベンゼンからのビフェニル合成、トルエンからのメチルベンゼン二量体合成、酢酸ビニルからのジアセトキシブタジエン合成、スチレンとベンゼンからのスチルベン合成、スチレンまたはスチレンとベンゼンからのトリフェニルベンゼン及びテトラフェニルベンゼン合成等があげられる。酸化的カルボキシル化としてはエチレンと一酸化炭素からのアクリル酸合成、一酸化炭素とアルコールからのシュウ酸ジエステル合成、エチレンと一酸化炭素及びアルコールからのコハク酸ジエステル合成、ブタジエンと一酸化炭素及びアルコールからのアジピン酸エステル類の合成等があげられる。
【0050】
最も好ましくは、液相酸化的アシロキシ化及び/又はアルコキシ化反応用の触媒として用いると、活性が極めて高く好ましい。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えばオレフィン又は芳香族化合物の不飽和結合部位に対して酸化的付加反応を行う。
【0051】
或いは、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えば側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
本発明の反応で使用される原料のオレフィンとしては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、直鎖又は分岐状のオレフィン、もしくは単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンが好ましく、中でも直鎖又は分岐状のオレフィンまたは単環のシクロオレフィンが好ましい。これらのオレフィン又はシクロオレフィンは、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0052】
置換基としては例えば、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
直鎖又は分枝状のオレフィンの炭素数は通常2〜30、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜10であり、単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンの炭素数は通常4〜30、好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10である。
【0053】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、2,3−ジメチルブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ブタジエン、シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
中でも好ましくは共役ジエンが挙げられる。共役ジエンとしては、具体的にはブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,4−ヘキサジエンの他、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチルブタジエン等のアルキル置換ブタジエン(分岐状オレフィンの一種である。)、更にはシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンのような環状ジエンを使用する事ができる。好ましくはブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンのいずれかであり、最も好ましくはブタジエン又はアルキル置換ブタジエンのいずれかである。
【0054】
またシクロオレフィンも好ましく、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどが挙げられる。特に好ましくはシクロヘキセンである。
本発明に用いる芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、単環又は縮合環の芳香族化合物が用いられ、縮合環の環の数は通常2〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは2または3である。これらの中でも好ましくは単環または2環の縮合環の芳香族化合物、より好ましくは単環の芳香族化合物である。これらの芳香族化合物は、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0055】
置換基としては例えば、アルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
以上のようなオレフィン又は芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えばその不飽和結合部位に酸化的付加反応を行う。
また、本発明に用いる側鎖アルキル基を有する芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、上記の芳香族化合物が一つのアルキル基で置換された化合物、またはこれにさらにアルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が直接結合した芳香族化合物等が例示される。
【0057】
具体的な例は次の通りである。トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ジエチルベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、ジクロロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、o−フェノキシトルエン、m−フェノキシトルエン、p−フェノキシトルエン、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0058】
以上のような側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えば側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
これら反応を用いた具体的な製造方法としては、例えば、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法、共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法、シクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法、アルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法、などが挙げられる。
【0059】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
上記反応例の内、一例として共役ジエンのアシロキシ化による不飽和グリコールジエステル製造に関して、以下に詳細説明する。
【0060】
本発明で示された触媒を用いて不飽和グリコールジエステルを製造する際に使用する反応原料である共役ジエン、例えばブタジエンは必ずしも純粋なものである必要はなく、窒素ガスのような不活性ガスや、メタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素、又はブテン等の不飽和炭化水素を含むものであっても良い。共役ジエンとしては他のジエン類、アルキル置換ブタジエン類、環状ジエン類を使用する事ができる。好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。
【0061】
他方の反応原料であるカルボン酸は、脂肪族、脂環族、芳香族など任意のものを用いることができるが、工業的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等の低級脂肪族のモノカルボン酸(炭素数4以下)を用いることが好ましく、特に反応性及び価格の点から酢酸がより好ましい。前記カルボン酸は反応原料でありながら溶媒を兼ねても良く、また必要であれば反応に不活性な有機溶媒、例えば飽和炭化水素、エステル等が存在していても良い。しかし、反応溶媒の50重量%以上は原料のカルボン酸である事が好ましい。カルボン酸の使用量は共役ジエン1モルに対する化学量論量以上、60モル以下の範囲が好ましい。
【0062】
本発明の方法では、上述の原料を分子状酸素を含有する気体を用いて、好ましくは液相下で固体触媒と接触させる。ここで分子状酸素を含有する気体とは、純酸素あるいは酸素と不活性気体の混合気体を指す。この不活性気体とは、窒素、アルゴン、ヘリウム等であり、混合気体としては空気も含まれる。分子状酸素は不活性気体と任意の混合比率にて、大気圧〜加圧状態として反応系に供給することができるが、酸素濃度は反応系内の気相部が爆発組成とならない範囲が好ましい。一般的に酸化反応は、酸素分圧が高い程反応速度的に有利なので、その限定された範囲内で安全率を考慮した最大濃度で供給するのがより好ましい。しかし、空気よりも高い酸素濃度については、燃焼反応の促進や、酸素高濃度化の為の設備が必要になり、更には高濃度酸素ガスそのものの危険性も増大する為、特に反応速度が必要な場合を除き、一般的には使用されない。また酸素分圧については、供給する酸素濃度、反応系中の組成と反応圧力、温度により決定される。
【0063】
本発明において、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールのカルボン酸ジエステルを製造する反応は、回分式、連続式のいずれの方法でも行う事ができる。また反応方式としては固定床式、流動床式、懸濁槽式等任意の方式を採用する事ができるが、工業的には固定床式がより好ましい。反応温度は通常20℃以上の温度で行われるが、反応速度及び副生物の生成等を考慮すると、好適な反応温度の範囲は40〜120℃である。また反応圧力は常圧、加圧のいずれも可能である。反応速度を高めるには加圧の方が好ましいが反応設備経費が高くなり、それらを考慮すると好適なのは常圧(1気圧)〜100kgf/cm2の範囲である。
【0064】
なお、上記反応例において、共役ジエンに代えてシクロヘキセンを用いることで、アシロキシシクロヘキセンを製造することができる。このとき、用いられるシクロヘキセンの純度には特に制限は無く、例えば若干のシクロヘキサン、ベンゼンを含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。また、共役ジエンに代えてアルキルベンゼンを用いることで、アシロキシアルキルベンゼンを製造することができる。このとき、用いられるアルキルベンゼンの純度には特に制限は無く、例えば若干のベンゼン等を含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。
【0065】
更に、上記反応例において、カルボン酸に代えてアルコールを用いることで、不飽和グリコールジエーテルを製造することができる。本発明に用いうるアルコールは、特に限定されないが、工業的には例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数4以下の低級アルコールが用いられる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り下記実施例によって限定されるものではない。なお、表−1及び表−2においてはナトリウム、マグネシウム等のアルカリ金属類をαで表す。
(実施例1)
50mlのメスフラスコに、13.7重量%のテルルを含有するテルル酸(H6TeO6)水溶液3.7gを入れ、これに19.3重量%のパラジウムを含有する塩化パラジウム(PdCl2)塩酸溶液8.7gを加え、更に6.0重量%のナトリウムを含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液12.0gを加え、次いで脱塩水を加えることにより50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)27.4gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液することにより55.9gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、8.0Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.5Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒28.9gを得た。この触媒はパラジウム3.0重量%及びテルル0.90重量%更にはナトリウム1.3重量%を含有していた。
【0067】
次に、この触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、60kgf/cm2、80℃において酢酸2.5モル/時、窒素100Nl/時の流量で7時間流通させ、触媒に含有しているアルカリ金属類及びハロゲンを洗浄した。その後、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いて1,3−ブタジエン0.15モル/時、酢酸2.5モル/時、酸素6容量%を含有する窒素100Nl/時の流量で流通し、連続的に7時間反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性及び選択率を求め、その結果を表−1に示した。
【0068】
なお、実施例1〜4及び比較例1〜3の評価項目において、活性は、反応生成物のうち3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン、1−アセトキシクロトンアルデヒド、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン(14DABE)、1−ヒドロキシ−4−アセトキシ−2−ブテン、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ジアセトキシオクタトリエン、トリアセトキシブテンの合計の生成量が触媒1kg、1時間当たり何mmolであったかを表し、「1,4−DABE選択率」とは、上記生成物にフラン、アクロレイン、モノアセトキシブテン、ブタノール、モノアセトキシ−1,3−ブタジエンの生成物を加えた合計の生成物量に対し、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの生成量の占める割合(mol%)を表す。
【0069】
【表1】
(実施例2)
50mlのメスフラスコに、13.7重量%のテルルを含有するテルル酸水溶液3.6gを入れ、これに19.3重量%のパラジウムを含有する塩化パラジウム塩酸溶液8.7gを加え、更に6.3重量%のマグネシウムを含有する塩化マグネシウム水溶液5.8gを加え、次いで脱塩水を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)26.2gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により53.3gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、8.0Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.5Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒27.3gを得た。この触媒はパラジウム3.0重量%及びテルル0.90重量%更にはマグネシウム0.65重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
【0070】
(実施例3)
50mlのメスフラスコに、19.3重量%のパラジウムを含有する塩化パラジウム塩酸溶液8.7gを入れ、これに6.0重量%のナトリウムを含有する塩化ナトリウム水溶液12.1gを加え、更に四塩化テルル(TeCl4)を1.05g加え、次いで脱塩水を加える事により50mlへメスアップすると共に四塩化テルルを完全に溶解させた。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)21.5gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により44.0gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.5gを得た。この触媒はパラジウム3.0重量%及びテルル0.89重量%更にはナトリウム1.31重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
【0071】
(実施例4)
50mlのメスフラスコに、20.1重量%のテルルを含有するテルル酸水溶液2.5gを入れ、これに16.0重量%のパラジウムを含有するNa2PdCl4水溶液10.3gを加え、次いで脱塩水を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)26.3gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により52.4gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、8.0Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.5Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒27.3gを得た。この触媒はパラジウム2.9重量%及びテルル0.88重量%更にはナトリウム1.28重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
【0072】
(実施例5)
実施例4と同一の触媒6gを内径3.5cm(有効断面積9.6cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、約1リットル/時の蒸留水で連続的に8時間洗浄した。その後に硝酸銀水溶液を用いた試験により、洗浄水中に塩素イオンを含有していないことを確認した。これを濾過して溶液を除去し、内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、1.8Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。この洗浄処理した触媒の塩素は0.01%未満であり、ナトリウムは0.1%であった。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
【0073】
(比較例1)
50mlのメスフラスコに、19.7重量%のテルルを含有するテルル酸水溶液2.7gを入れ、これに24.2重量%のパラジウムを含有する塩化パラジウム塩酸溶液7.4gを加え、更に脱塩水を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)22.8gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により46.0gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒23.7gを得た。この触媒はパラジウム3.2重量%及びテルル0.96重量%を含有していた。
【0074】
次に、この触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いて1,3−ブタジエン0.15モル/時、酢酸2.5モル/時、酸素6容量%を含有する窒素100Nl/時の流量で流通し、連続的に7時間反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性及び選択率を求め、その結果を表−1に示した。
【0075】
(比較例2)
50mlのメスフラスコに、2.8重量%のテルルを含有するテルル酸と、9.5重量%のパラジウムを含有する硝酸パラジウムとを含む硝酸酸性水溶液を16.8g入れ、更に脱塩水を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)21.8gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により44.4gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.6gを得た。この触媒はパラジウム3.0重量%及びテルル0.89重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は比較例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
【0076】
(比較例3)
50mlのメスフラスコに、パラジウムとして6.3重量%の金属パラジウム及びテルルとして1.9重量%の金属テルルを硝酸に溶解した溶液を26.2g入れ、これに8.0重量%のナトリウムを含有する塩化ナトリウム水溶液13.8gを加え、更に脱塩水を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−15、粒子直径1.7〜3.4mm)21.5gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により46.0gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.7gを得た。この触媒はパラジウム3.0重量%及びテルル0.91重量%更にはナトリウム2.0重量%を含有していた。
【0077】
この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−1に示した。
(実施例6)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、60kgf/cm2、80℃において酢酸2.5モル/時、窒素100Nl/時の流量で7時間流通させ、触媒に含有しているアルカリ金属類及びハロゲンを洗浄した。その後、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてイソプレン81ミリモル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素100Nl/時の流量で流通し、連続的に7時間反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより1,4−ジアセトキシ−2−メチル−2−ブテンを定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性を求め、その結果を表−2に示した。
【0078】
【表2】
(実施例7)
実施例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例6と同様にイソプレンのアセトキシ化反応を実施した。その結果を表−2に示した。
【0079】
(比較例4)
比較例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてイソプレン81ミリモル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素100Nl/時の流量で流通し、連続的に7時間反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性を求め、その結果を表−2に示した。
【0080】
表−1及び表−2の結果から、触媒調整の際にパラジウムのハロゲン化物とアルカリ金属類の塩を併用した場合に特異的に、活性が高く、しかも高い1,4−DABE選択率を保っていることが分かる。
本法により得られた触媒を用いることで、この反応に限らずより広い多くの酸化的付加反応でも同様の高い活性が得られる。
【0081】
【発明の効果】
本発明の触媒製造方法によれば、触媒のパラジウム原料としてパラジウム硝酸塩を用いる必要がないので、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えることができ、より取扱いが容易で安全性が高く、低コストで触媒が製造できる利点がある。
しかも、本製造法により得られた触媒は、パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒であって、パラジウム原料としてパラジウム硝酸塩を用いた場合と同等以上の、工業的に十分満足できる高活性・高選択率を発現できる利点がある。
【0082】
また、本発明によれば従来のように反応系中にアルカリ金属類やハロゲンが存在する必要はないので、例えば反応後のアルカリ金属析出の問題は無く、耐ハロゲン性の高コストの反応設備を用いる必要が無く、また反応系中にアルカリ金属塩を連続供給するコストも不要となる。従って、オレフィンや芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法に本発明に係る触媒を用いると、これら生成物を低コストで、しかも工業的に十分満足できる高収率かつ高選択率で得ることができる利点がある。
Claims (3)
- パラジウムとテルルを活性成分として担体に担持した酸化用固体触媒を製造するにあたり、パラジウムハロゲン化物、テルル化合物並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を含有する液体媒体を該担体に接触させた後、乾燥及び還元処理することを特徴とする、酸化用固体触媒の製造方法。
- 請求項1に記載の方法により製造された酸化用固体触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、オレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
- 請求項1に記載の方法により製造された酸化用固体触媒及び分子状酸素の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
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