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JP2005032367A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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JP2005032367A
JP2005032367A JP2003271832A JP2003271832A JP2005032367A JP 2005032367 A JP2005032367 A JP 2005032367A JP 2003271832 A JP2003271832 A JP 2003271832A JP 2003271832 A JP2003271832 A JP 2003271832A JP 2005032367 A JP2005032367 A JP 2005032367A
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Noriko Inoue
典子 井上
Hiroaki Takano
博昭 高野
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】 高密度記録において、帯電防止効果に優れ、巻き姿が良好で、ドロップアウトの少ない磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体の片面に磁性層を有し、その反対面にバック層を有する磁気記録媒体において、該バック層は導電性物質で表面が被覆された被覆針状酸化物粉体、カーボンブラック及び結合剤を含み、かつ該バック層の空隙率が30〜65%であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電磁変換特性および走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体に関する。
磁気テープの分野において、近年ミニコンピューター、パーソナルコンピューター、ワークステーションなどのオフィスコンピューターの普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピューターデータを記録するための磁気テープ(いわゆるバックアップテープ)の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの実用化に際しては、とくにコンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために、記録容量の向上が強く要求される。
従来、磁気記録媒体には酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO2、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散した磁性層を支持体に塗設したものが広く用いられる。この中でも微粒子の強磁性合金粉末や六方晶系フェライト微粉末は高密度記録特性に優れていることが知られているが、従来、フレキシブルメディアを使用したシステムで主流として使われてきたインダクティブヘッドを用いた場合は、これらの強磁性粉末は飽和磁化が小さく、充分な出力が得られなかった。しかしながら、上記の様なフレキシブルメディアを用いたリムーバブル記録においても、ハードディスクで使われている磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)が用いられ始めている。
MRヘッドは、高感度なので前記微粒子合金粉末や六方晶系フェライト粉末を用いても充分な再生出力が得られ、これら微粉末の特徴である低ノイズ化によって高いC/N比が得られることが知られている。
MRヘッドを用いて高密度記録をする場合、分解能を改善するために、前記微粒子強磁性粉末を使用すること、磁性層表面を平滑にすること、磁性層を薄くすることが提案されてきた。
一方、平滑な磁性層を有する磁気記録媒体の走行性を改善するために、バック層に突起を設け、またバック層の表面粗さを増加させることが知られている。
しかしながら、バック層に突起を設けたことで、前記バック層と磁性面が重なりあうと、突起が磁性面に食い込み磁性面に陥没が生じる。また、バック層の表面粗さが平滑な磁性面に転写され、ノイズとなる。このバック層の突起と表面粗さの写りにより出力の低下を引き起こす。線記録密度が高く、かつ狭トラック化が進むと単なる出力の低下だけではなく、信号の欠落につながる。
突起の写りを防止する手段として、特許文献1では、高さ100nm以上の突起密度を規定(50〜3000個/100μm角)し、磁性層に剛性の高いウレタンを用い、8mmビデオにおいてバック写りの影響が低減されることが開示されている。
また、特許文献2においては、バック層の表面粗さを2〜15nmにすることにより、電磁変換特性が良好になることを示している。これまでは、写りに関して、突起の個数や表面粗さなどのバック層の表面性のみに注意が払われていた。その結果、写りを少なくするために、バック面が平滑になり、カートリッジに巻いた時、飛び出しが多くなり、巻き姿不良となる傾向にあった。
表面性以外にも、バック層の硬さはバック写りに影響を与えている。バック層の硬さは主に、空隙率で決定されており、空隙が多いと柔らかくなる。この空隙率を用いた硬さコントロールは、上層磁性層及び/又は下層非磁性層の空隙率を調整して磁性面のヘッド当たり改善の手段として用いられている(特許文献3参照)。
また、バック写りの低減による電磁変換特性の改善と共に表面電気抵抗を低減化することが行われているが、カーボンブラック等の導電性物質を用いて表面電気抵抗を低減化しようとするとガイドなどの走行系が汚れるという問題が生じた。
本発明は高密度記録において、帯電防止効果に優れ、巻き姿が良好で、ドロップアウトの少ない、かつ走行耐久性の優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の目的は、支持体の片面に磁性層を有し、その反対面にバック層を有する磁気記録媒体において、該バック層は導電性物質で表面が被覆された被覆針状酸化物粉体、カーボンブラック及び結合剤を含み、かつ該バック層の空隙率が30〜65%であることを特徴とする磁気記録媒体により達成できる。
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
・該カーボンブラックは該被覆針状酸化物粉体に対して10〜50質量%である。
・該被覆針状酸化物粉体は針状酸化物粉体に対して導電性物質を2〜15質量%含む。
・バック層の表面電気抵抗は1.0×105〜9.0×106である。
本発明はバック層に導電性物質被覆針状酸化物粉体を用いると共にバック層の空隙率を所定に制御することにより、バック面の磁性層への裏写りが防止され、バック面の表面電気抵抗及び摩擦係数を小さくでき、しかも巻き姿も良好にできる、電磁変換特性及び走行耐久性に優れる磁気記録媒体を提供することができる。
本発明は、バック層に導電性物質で表面が被覆された被覆針状酸化物粉体(以下、被覆針状酸化物粉体という)、カーボンブラック及び結合剤を含み、かつ該バック層の空隙率を30〜65%としたことを特徴とする。
本発明は、上記構成としたことにより、バック層の硬さを柔らかくかつバック層に弾性を与えることができ、ある程度のバック面表面粗さを保持したまま、バック面の写りが低減でき、ひいてはドロップアウトが低減でき、またある程度のバック層表面粗さを保持しているため、工程上の問題も少なく、巻き姿も良好とすることができる。また、上記構成としたことにより、表面電気抵抗を低減できると共にバック層膜強度を確保し、ガイド汚れ等のない走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供することができる。
バック層の空隙率を30〜65%、好ましくは30〜50%とする手段としては、粉体の種類と量の選定、結合剤種とその量の選定、溶剤種の選定、バック層塗布液調製の際のニーダー条件、バック層塗布後のカレンダー処理の有無等を適宜選択することが挙げられる。粉体においては、カーボンブラックのようなストラクチャー構造を持つ粉体は、空隙率が高い。また、結合剤においては、結合剤量が最も支配的である。結合剤量を増加させると空隙率は低下する。これは、過剰な結合剤が空隙を埋めていくためと考えられる。溶剤においては、揮発性の高い溶剤をバック層塗布液に用いることは、バック層の空隙率を高くする。また、ニーダー時間や練りの強さを変えることで、空隙率のコントロールが可能となる。また、特にカレンダー処理の有無で空隙率をコントロールすることが可能となる。
カレンダー処理有りでは、表面性は良好であるが、空隙率が低下する傾向がある。カレンダー処理なしでは、表面性は悪化するが、空隙率が増加し、バック面写りは、むしろ低減する。
空隙率が30%未満であると、バック層が硬く、バック面写りが増加する。また、空隙率が65%を超えると塗膜の強度が低下する。
本発明の空隙率は、窒素吸着法により求められる全細孔容積の、バック層の厚みと面積から求められるバック層体積に対する割合である。
バック層に用いるカーボンブラックは被覆針状酸化物粉体に対して10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。
被覆針状酸化物粉体を用いないで、カーボンブラックのみでは、バック層強度が低下し、耐久性を改善することができない。
被覆針状酸化物粉体は、形状が針状であるのでバック面の表面性の粗面化を抑制することができ、適度な表面粗さとすることに寄与する。また、素材が酸化物であるので、化学的に安定である。また、被覆針状酸化物粉体は、導電性物質を被覆しているのでバック面の表面電気抵抗を低減することに寄与する。
被覆針状酸化物粉体は針状酸化物粉体に対して導電性物質を2〜15質量%含むことが好ましく、3〜12質量%含むことが更に好ましい。この導電性物質の割合が15質量%を超えるとバック層強度が低下し、テープ走行後のガイドの付着物が多くなる等、走行耐久性が悪化する傾向がある。
該導電性物質としては、金属、In23などの半導体、カーボン等が挙げられ、カーボンが好ましく、カーボンブラックが更に好ましい。
バック層の表面電気抵抗は9.0×106Ω/sq以下が好ましく、1.0×105〜5.0×106Ω/sqが更に好ましい。本発明の系ではバック層の表面電気抵抗が9.0×106Ω/sqを超えると帯電が起こりやすくなる。
本発明に用いる被覆針状酸化物粉体は、上述のように針状酸化物粉体の表面に導電性物質が被覆されたものである。本発明において被覆とは、導電性物質が針状酸化物粉体表面に物理的に吸着されていてもよいし、導電性物質が針状酸化物粉体表面に共有結合にて結合されていてもよいが、ともに磁気記録媒体のバック層中において前記被覆状態が保持されていることが好ましい。そして、その保持率は導電性物質の50質量%以上が好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
導電性物質を針状酸化物粉体に被覆する前に針状酸化物粉体表面を予め処理しておくことが好ましい。この前処理としては、特に制限はなく従来公知の方法が用いられる。好ましい前処理としては、樹脂による被覆が挙げられ、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などによる処理が挙げられる。これら樹脂は、針状酸化物粉体に対して1〜40質量%被覆されることが好ましく、更には10〜20質量%が好ましい。
本発明の磁気記録記録媒体は、支持体の一方の面に磁性層を有し、その反対面にバック層を有するものを広く含む。したがって、本発明の磁気記録媒体には、磁性層やバック層以外の層を有するものも含まれる。例えば、非磁性粉末を含む非磁性層、軟磁性粉末を含む軟磁性層、第2の磁性層、クッション層、オーバーコート層、接着層、保護層を有していてもよい。これらの層は、その機能を有効に発揮することができるように適切な位置に設けることができる。層の厚さは、磁性層を例えば通常、0.01〜1μm、好ましくは0.03〜0.5μm、さらに好ましくは0.03〜0.2μmにし、非磁性層を通常、0.5〜3μm、好ましくは0.5〜2μmにすることができる。非磁性層の厚さは、磁性層よりも厚いのが好ましい。また、磁性層を2層有する磁気記録媒体も好ましい。この場合は、例えば上層を通常、0.01〜2μm、好ましくは0.01〜1.5μmにし、下層を通常、0.02〜3μmにすることができる。なお、磁性層を単独で有する場合は、通常、0.1〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1.5μmにする。また、支持体と磁性層の間に軟磁性層を有する場合は、例えば磁性層を通常、0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μmにし、軟磁性層を通常、0.8〜3μmにすることができる。なお、磁性層については、上記のような強磁性粉末をバインダー中に分散含有する、いわゆる塗布型磁性層のみならず、真空下で蒸着またはスパッタリングにより製膜された薄膜型磁性層であってもよい。この薄膜磁性層の場合、その厚さは通常、0.05〜0.3μm、より好ましくは0.1〜0.2μmの範囲から選定される。本発明の磁気記録媒体に形成するバック層の厚さは、通常、0.05〜1.0μmの範囲内に設定する。その中でも0.1〜0.8μmの範囲内に設定するのが好ましく、0.2〜0.6μmの範囲内に設定するのがより好ましい。
本発明の磁気記録媒体のバック層は、被覆針状酸化物粉体を含む。針状酸化物粉体としては、例えば、酸化チタン、α−酸化鉄、ゲータイト、SiO2、SnO2、WO3、Al23、ZrO2、ZnO等の金属酸化物、BaSO4、チタン酸バリウムなどの塩、Cu、Alなどの金属ウィスカーなどを用いることができる。
被覆針状酸化物粉体の形状は任意であり、通常、針状酸化物粉体と相似形となるが、それに限定されるものではない。被覆針状酸化物粉体の針状比は2〜10が好ましく、3〜8が更に好ましい。また、長軸長は0.01〜0.3μmが好ましく、0.06〜0.2μmが更に好ましい。本発明において、針状比とは、粒子の長軸長を短軸長で除した値である。短軸長は、長軸に対して垂直な面で切断したときの断面の最大長を意味する。
被覆針状酸化物粉体の形状は、上記針状比を有した針状形が好ましい。針状比が小さ過ぎると塗布膜の空隙が減少する傾向がある。針状比が大きすぎると表面粗さが増大して裏写りが劣化する傾向がある。
被覆針状酸化物粉体の原料で、前記樹脂による前処理が施される針状酸化物粉体としては、その表面の少なくとも一部がAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23およびZnO2から選ばれた少なくとも一つの化合物、中でもAl23、SiO2およびZrO2から選ばれた少なくとも一つの化合物で被覆されているものが、樹脂の被覆性が優れている点で好ましい。このような粉体は針状酸化物粉体の粒子を合成してから、その表面に上記の様な別の化合物が沈着または被覆されるべく処理するか、または針状酸化物粉体とAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23およびZnO2から選ばれた少なくとも一つの化合物を共沈させる方法によって得ることができる。
また、このような針状酸化物粉体は市販品から入手することもできる。例えば、戸田工業(株)製のDPN−245、DPN−250、DPN−250BX、DPN−270BX、DPN−550BX、DPN−550RX、石原産業(株)製のTTO−S−2、TTO−M−1、TTO−M−2、TTO−D−1、TTO−D−2、E270、E271等を挙げることができる。
バック層に使用するカーボンブラックは、磁気記録媒体に通常使用されているものを広く用いることができる。例えば、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。バック層の凹凸が磁性層に写らないようにするために、カーボンブラックの粒径は100nm以下にするのが好ましい。特に好ましい粒径は、15〜80nmである。カ−ボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlであるのが好ましい。比表面積は通常、100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。具体例として、キャボット社製BLACK PEARL S2000、同1300、同1000、同900、同800、同880、同700、VULCAN XC−72;三菱化学(株)製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600;コロンビアンカ−ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、同8000、同7000、同5750、同5250、同3500、同2100、同2000、同1800、同1500、同1255、同1250;アクゾー社製ケッチェンブラックEC、旭カーボン社製の#55、#50、#30;コロンビアカーボン社製のRAVEN450、同430;カーンカルブ社製のサーマックスMT等を挙げることができる。これらカーボンブラックは、被覆針状酸化物粉体の導電性物質として用いることもできる。
カーボンブラックは、被覆針状酸化物粉体に対して好ましくは、10〜50質量%以下、更に好ましくは、20〜40質量%バック層に含有される。
このように、被覆針状酸化物粉体をカーボンブラックよりも多量に含有させることによって、粉体の分散性が良好で面が平滑なバック層を形成することができ、該バック面の中心面平均表面粗さRaを好ましくは、2〜8nm、更に好ましくは、3〜7nmとすることができる。
また、バック面の突起高さは30nm以下にするのがバック写りを低減するために好ましいが、空隙率を30〜65%にすることで、突起の高さが30nm以上でも写りは低減される。この平滑なバック面に、高さ30〜100nmの突起が好ましくは、10〜2000個/90μm角形成されるように上記配合比、種類、サイズなどが選定される。このような突起は主としてカーボンブラック、被覆針状酸化物粉体によって形成されることが好ましい。この突起の高さ及び密度は、原子間力顕微鏡、米国デジタルインスツルメンツ社製NanoscopeIIIを用いて測定される値であり、その装置により3次元表面粗さを測定し、磁性層表面粗さの平均面から上記高さに存在する突起の個数が求まる。ここで、平均面とは測定面内の凹凸の体積が等しくなる面のことである。測定は90μm×90μmの範囲で、コンタクトモード、走査速度2Hzで行う。
このような組成を有するバック層形成用塗料は、従来のカーボンブラックを主体とするバック層形成用塗料に比べて、チキソトロピー性が高い。このため、高濃度でエクストルージョン方式やグラビア方式などの塗布を行うことが可能である。このような高濃度塗料を塗布することによって、その膜厚が薄いにもかかわらず支持体との接着強度が大きくて、力学強度が高いバック層を形成することができる。また、高濃度のバック層形成用塗料を使用すれば、バック層と支持体の間に低分子ポリエステルを主体とする下塗層を形成しても、該低分子ポリエステルがバック層表面へ浸出してくるのを抑制することができる。このため、従来から下塗層を形成した場合の問題点とされてきた浸出による粘着や走行不良を有効に回避することができる。したがって、接着性下塗層を形成することによって、バック層と支持体の間の接着強度を所望の範囲に調節することが容易となる。ただし、下塗層は必ずしも形成する必要はない。バック層形成用塗料の結合剤として塩化ビニル樹脂やウレタン樹脂を使用してその比率を調整したり、溶剤としてシクロヘキサノンを主体として使用することによって、支持体表面との界面エネルギー差を縮小し、接着強度を上げることもできる。本発明における支持体とバック層との間の接着強度はこれらの手段を適宜選択したり、組み合わせたりすることによって所望の範囲に調節することができる。
バック層結合剤の使用量は、バック層含有粉体の総質量を100質量部として好ましくは、10〜50質量部の範囲から選ばれ、より好ましくは20〜40質量部にする。このようにして形成されるバック層の膜強度は高く、表面電気抵抗は低くなる。このような優れた機能を有するバック層を有するために、本発明の磁気記録媒体は従来品に比べて走行耐久性が良好で電磁変換特性が優れている。
本発明のバック層用結合剤には、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。好ましい結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂である。その中でも、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂を用いるのが、バック層の硬度が磁性層の硬度に近くなりバック写りを低減することができるため、より好ましい。
ポリウレタン樹脂は、分子中に−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO3MM′、−OPO3MM′、−NRR′、−N+RR′R″COO-(ここで、M及びM′は、各々独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムであり、R及びR′は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、R″は炭素数1〜12のN結合アルキレン基を示す)から選ばれた少なくとも1種の極性基を含むことが好ましく、とくに好ましくは、−SO3M、−OSO3Mである。これらの極性基の量は好ましくは、1×10-5〜2×10-4eq/gであり、特に好ましくは5×10-5〜1×10-4eq/gである。1×10-5eq/gより少ないと粉体への吸着が不充分となるために分散性が低下する傾向があり、2×10-4eq/gより多くなると溶剤への溶解性が低下する傾向があるので分散性が低下する傾向がある。
ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は5000〜100,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜50,000であり、特に好ましくは20,000〜40,000である。5000未満では、塗膜の強度や耐久性が低い。また、100,000より多いと溶剤への溶解性や分散性が低い。ポリウレタン樹脂としては、環状構造及びエーテル基を含有したものが好ましい。ポリウレタン樹脂の環状構造は剛直性に寄与し、エーテル基は柔軟性に寄与する。
本発明の磁気記録媒体のバック層には、被覆針状酸化物粉体、カーボンブラック、結合剤以外の成分として潤滑剤を含有することが好ましい。潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが例示される。特に、脂肪酸を含有させることは、強度を維持したまま、繰り返し走行時の摩擦係数上昇を抑制するために必須となる。また、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドやモース硬度8以上の研磨剤を含有させることによっても、繰り返し走行時の摩擦係数上昇を抑制し、摺動耐久性を向上させることができる。さらに、芳香族有機酸化合物やチタンカップリング剤を含有させて分散性を向上させ強度を上げることによって、摩擦係数上昇を抑制することもできる。また、有機質粉末を含有させて摩擦係数上昇を抑制し、写りを低減することもできる。添加することができる脂肪酸の例として、炭素数8〜24の一塩基性脂肪酸を挙げることができる。中でも炭素数8〜18の一塩基性脂肪酸が好ましい。これらの具体例としてはラウリン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸等が挙げられる。また、これら脂肪酸のアミドも用いられる。
脂肪酸エステルの例として、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらの具体例としてはステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレートが挙げられる。
潤滑剤のバック層への添加量は、被覆針状酸化物粉体を100質量部としたとき、好ましくは、0.1〜5質量部、更に好ましくは0.5〜3質量部である。
モース硬度8以上の研磨剤としては、α−アルミナ、酸化クロム、人工ダイヤモンド、カーボン変性窒化硼素(CBN)等を挙げることができる。中でも、平均粒径が0.2μm以下であり、粒径がバック層の厚み以下であるものを使用するのが好ましい。本発明では、バック層を薄くすることができるため、少量の研磨剤を添加するだけで十分な摺動耐久性を確保することができる。芳香族有機酸化合物としては、フェニルフォスホン酸が好ましい。その使用量は、当該被覆針状酸化物粉体100質量部に対し、好ましくは、1〜10質量部、更に好ましくは3〜6質量部である。
有機質粉末としては、アクリル−スチレン共重合体系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料等を挙げることができる。
バック層のガラス転移温度は60〜120℃であるのが好ましく、乾燥厚みは通常、0.05〜1.0μm程度にする。
本発明の磁気記録媒体は、高テンションで巻き取って保存してもバック層が磁性層に写りにくいため、テープの厚さを4〜9μmにすることが可能である。
本発明の磁性層に使用する強磁性粉末は、Fe、Fe−Co等のFeを主体とした針状強磁性合金粉末もしくは六方晶系フェライト粉末が好ましく、六方晶系フェライト粉末としてはバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びそれらのCoなどの各置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti,Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn,Ni−Ti−Zn,Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
粒子サイズは合金、六方晶フェライトともに一次粒子の平均体積が通常1000〜10000nm3、好ましくは1500〜8500nm3、さらに好ましくは1500〜6500nm3である。針状合金粉末の場合、通常、平均長軸長が30〜100nm、好ましくは40〜80nmである。結晶子サイズは通常、5〜15nm、好ましくは8〜13nmである。六方晶フェライトの場合、平均板径で通常、10〜50nm、好ましくは10〜40nmであり、特に好ましくは15〜35nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、平均板径は35nm以下が好ましいが、10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。50nmを越えるとノイズが高く、本発明の高密度磁気記録には向かない。平均板状比{(板径/板厚)の算術平均}は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。平均板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
強磁性粉末で測定される抗磁力Hcは通常、40〜400kA/m程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。強磁性粉末のHcは119kA/m〜397kA/m程度が好ましく、好ましくは159〜320kA/mである。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、175kA/m以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは強磁性合金粉末の場合90〜150A・m2/kg、六方晶フェライトの場合40〜80A・m2/kgである。σsは微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。六方晶フェライトの製法としては、酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
本発明においては、結合剤、硬化剤及び強磁性粉末を、通常、磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性層形成用塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。磁性層形成用塗料は、上記成分以外に、α−Al23、Cr23等の研磨剤、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含んでいてもよい。
次に本発明が多層構成を有する場合に存在する下層非磁性層又は下層磁性層(以下、下層非磁性層又は下層磁性層を下層ともいう)について説明する。本発明の下層に用いられる無機粉末は、磁性粉末、非磁性粉末を問わない。例えば非磁性粉末の場合、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物や非磁性金属から選択することができる。無機化合物としては、例えば酸化チタン(TiO2、TiO)、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化すず、酸化タングステン、酸化バナジウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、ゲーサイト、水酸化アルミニウムなどを単独又は組合せで使用することができる。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは特開平5−182177号公報に記載の二酸化チタン、および特開平6−60362号公報、特開平9−170003号公報に記載のα−酸化鉄である。非磁性金属としては、Cu、Ti、Zn、Al等が挙げられる。これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmであるのが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは、平均粒径が0.01μm〜0.2μmの非磁性粉末である。非磁性粉末のpHは6〜9であるのが特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmであるのが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれであっても良い。
軟磁性粉末としては、粒状Fe、Ni、粒状マグネタイト、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Co−Ni、Fe−Al−Co(センダスト)合金、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mg−Znフェライト、Mg−Mnフェライト、その他、近角聡信著(「強磁性体の物理(下)磁気特性と応用」(裳華房、1984年)、368〜376頁)に記載されているもの等が挙げられる。これらの非磁性粉末や軟磁性粉末の表面はその少なくとも一部がAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで被覆されるように表面処理しておくのが好ましい。このうち、特に良好な分散性を与えるのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であり、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いてもよい。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで被覆されるべく処理した後にその表層をシリカで被覆されるべく処理する方法、又はその逆の方法を採ってもよい。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、一般に均質で密である方が好ましい。
下層にカ−ボンブラックを混合させることによって、表面電気抵抗Rsを下げ、しかも所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。カ−ボンブラックの平均粒径は通常、5nm〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。具体的には、上述のバック層に用いることができるカーボンブラックと同じものを用いることができる。本発明の下層にはまた、無機粉末として磁性粉末を用いることもできる。磁性粉末としては、γ−Fe23、Co変性γ−Fe23、α−Feを主成分とする合金、CrO2等が用いられる。下層の磁性体は、目的に応じて選定することができ、本発明の効果は磁性体の種類には依存しない。ただし、目的に応じて、上下層で性能を変化させることは公知の通りである。例えば、長波長記録特性を向上させるためには、下層磁性層のHcを上層磁性層のHcより低く設定するのが望ましく、また、下層磁性層のBrを上層磁性層のBrより高くするのが有効である。それ以外にも、公知の重層構成を採ることによる利点を付与させることができる。下層磁性層又は下層非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、上記の磁性層のものを適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
本発明に用いることのできる支持体としては、可撓性のものが好ましい。可撓性支持体として、二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等を挙げることができる。これらの支持体は、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ったものであってもよい。また本発明に用いることのできる支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて通常、0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲にあって、表面が優れた平滑性を有しているのが好ましい。また、これらの支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μ以上の粗大突起がないことが好ましい。支持体の厚さは4〜15μm、好ましくは4〜9μmである。薄い場合は、バック層の凹凸がハンドリングテンションで写りやすくなるため、上述のポリウレタン樹脂を最上層に使用することによってこれを効果的に抑制することができる。厚が7μm以下の場合は、PENもしくはアラミド等の芳香族ポリアミドを使用するのが好ましい。最も好ましいのはアラミドである。
本発明の磁気記録媒体の製造は、例えば、乾燥後の層厚が上述の所定の範囲内になるように、走行下にある支持体の表面に塗料を蒸着または塗布してゆくことによって行うことができる。複数の磁性塗料もしくは非磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。磁性塗料を塗布するための塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。片面に2以上の層を有する磁気記録媒体を製造するときには、例えば以下の方法を用いることができる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置によってまず下層を塗布し、下層が乾燥する前に特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置等を用いて、上層を塗布する方法。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されている塗料通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッド等を用いて、上下層をほぼ同時に塗布する方法。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置等を用いて、上下層をほぼ同時に塗布する方法。
バック層は、被覆針状酸化物粉体、カーボンブラック、研磨剤などの粉体成分と結合剤を有機溶剤に分散したバック層形成用塗料を、磁性層とは反対の面に塗布することによって調製することができる。塗布した磁性層は、磁性層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理した後に乾燥する。磁場配向処理は、当業者に周知の方法によって適宜行うことができる。磁性層は、乾燥後にスーパーカレンダーロールなどを用いて表面平滑化処理する。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上する。このため、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
本発明の磁気記録媒体は、平滑性が良好な表面を有しているのが好ましい。平滑性を良好にするためには、例えば上述したように特定の結合剤を選んで形成した磁性層に上記カレンダー処理を施すのが有効である。カレンダー処理は、カレンダーロールの温度を60〜100℃、好ましくは70〜100℃、特に好ましくは80〜100℃にし、圧力を通常、100〜500kg/cm(98〜490kA/m)、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kA/m)、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kA/m)にして行う。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。カレンダー処理を経た磁気記録媒体は、熱処理するのが一般的である。最近では、高密度磁気記録媒体の直線性(オフトラックマージン確保)のために、熱収縮率を下げることが重視されている。特に、狭トラック化に伴い、使用環境下でのMD方向(長手方向)の収縮率を0.07%以下に抑えることが求められている。熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルク又はカセットに組み込んだ場合のようにテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理)がある。前者を用いた場合は、バック面の凹凸が写る危険性は少ないが、熱収縮率を大きく下げることはできない。アニール温度、滞在時間及びテープ厚、ハンドリングテンションによって多少変わるが、70℃、48時間後の熱収縮率で0.1〜0.12%が限界である。後者のサーモ処理は熱収縮率を大幅に改善できるが、バック面の凹凸がかなり写ってしまうため、磁性層が面粗れして出力低下とノイズ増加を引き起こす場合がある。
本発明の磁気記録媒体の構成を採用すれば、高弾性で塑性変形の残りにくい層形成を行うことができるため、特に、サーモ処理を伴う磁気記録媒体で、高出力、低ノイズの磁気記録媒体を供給することができる。本発明の磁気記録媒体においては、バック層の表面性を調整することができるため、バック層の摩擦係数を程よい大きさに設定することができる。これによってバック層と磁性層との間の層間摩擦係数が高くなるので、磁気記録媒体作製時に高速ハンドリングしてもロール、スリットパンケーキ、組込リールに巻き上げられたテープの巻姿が良好である。同様にして、ビデオカセットレコーダーを高速で早送りしたり、巻戻したりした後のリール上のテープの巻姿も良好である。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」の表示は特に断らない限り「質量部」を示す。
以下、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。
実施例1
<塗料の作成>
磁性層用塗布液
磁性体(表1) 100部
塩化ビニル共重合体
MR110(日本ゼオン社製) 5部
ポリウレタン樹脂
UR8200(東洋紡社製) 3部
ポリイソシアネート 8部
αアルミナ
HIT55(住友化学社製) 5部
カ−ボンブラック
#50(旭カーボン社製) 1部
フェニルホスホン酸 2部
ブチルステアレート 10部
ブトキシエチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 3部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 125部
シクロヘキサノン 125部
<非磁性塗料>
非磁性粉末(針状ヘマタイト) 80部
(平均長軸長:0.15μm、BET法による比表面積:50m2/g、pH:8.5、表面処理層:Al23
カ−ボンブラック(平均粒子径:20nm) 20部
塩化ビニル共重合体{MR110(日本ゼオン社製)} 12部
ポリウレタン樹脂{UR8200(東洋紡社製)} 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤)250部
<バック層用塗布液>
主粉体 80部
(針状ヘマタイト、平均長軸長:150nm、導電性物質被覆率:表1)
カ−ボンブラック1
#50(旭カーボン社製) 5部
カ−ボンブラック2(平均粒子径:20nm) 20部
塩化ビニル共重合体
MR110(日本ゼオン社製) 12部
ポリウレタン樹脂
UR8200(東洋紡社製) 5部
ポリイソシアネート 8部
ブチルステアレート 10部
ブトキシエチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 3部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤) 250部
上記の磁性層、バック層用塗布液について、各成分をニ−ダで混練したのち、サンドミルをもちいて分散させた。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層用およびバック層用塗液をそれぞれ調製した。
得られた磁性層用塗布液を、厚さ7μmで中心線平均表面粗さが3nmのPET支持体上に塗布し、湿潤状態のうちに塗布磁場強度300mTの中を通過させて、長手配向処理を行い、乾燥後、7段のカレンダ−で温度90℃、線圧294kN/mで処理を行い、その後、厚み0.5μmのバック層を塗布した。1/2インチ幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレ−ドが磁性面に押し当たるように取り付け、テ−プクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行い、テープ試料を得た。
実施例2〜3、比較例1〜3
実施例1において、磁性体、導電性物質被覆率(質量%):(100×導電性物質質量/被覆前主粉体質量)、全質量に対するカーボンの割合:カーボンブラック1及び2のバック層全質量に対する割合(質量%)、カーボンブラック2の添加量を変更した。尚、比較例1は、被覆針状酸化物粉体を用いず、カーボンブラック2を主粉体として用いた。バック層のカレンダー処理の有無を表1にように変更して実施例1と同様にしてテープ試料を作製した。バック面カレンダー処理有りは、磁性層塗布後、カレンダー処理することなく、バック層を設け、その後、磁性層とバック層を同時にカレンダー処理を行った。バック面カレンダー処理無しは、磁性層を塗布後、カレンダー処理を行い、磁性層のみカレンダー処理をし、その後にバック層を塗布したサンプルである。
得られたテープの各々の物性、性能を下記の測定法により評価した。
測定法
(1)空隙率
QUANTA CHROME社製全自動ガス吸着量測定装置AUTOSORB−1を用い、窒素吸着法により、全細孔容積を測定した。これをサンプルの体積(サンプルの面積×厚みより算出)で割り、割合として計算した。
(2)バック面の中心面平均表面粗さ(Ra):WYKO社製HD2000を用いて、約242.4μm×184.2μmの面積のRaを測定した。測定波長約632nmである。本方式は光干渉にて測定する非接触表面粗さ計である。
(3)バック面の表面電気抵抗(Rs)
IEC式Rsの測定を行った。
(4)バック面の100Pμ値(走行性)
測定は、4mmφのSUS420Jに90度に角度でテープを渡し、荷重を50g、秒速13mmで100パス摺動させて、抵抗値T2を得、オイラーの式に基づいて100パス目の摩擦係数を求めた。測定環境は、23℃、50%であった。
μ=(1/π)In(T2/50)
(5)50nm以上の窪みの個数
原子間力顕微鏡を用いて磁性層表面90μm四方の窪み深さが50nm以上の窪み個数を、コンタクトモードで測定した。窪みの個数を数えるため、Invert機能を用いた。窪み深さは、中心面(平面と粗さ曲面で囲まれた体積が平面に対し上下で等しくかつ最小になる平面)を基準面とした深さと定義した。
(6)巻き姿
テープにおいて、10m/secの速さで609mを組み込んだ。飛び出しの数をカウントし、5個以上を不良、3個以上をやや不良、1個以下を良好とした。
(7)ガイド汚れ
テープをバック面タッチで、テンション130g、速度5m/sでガイドにタッチさせ、走行テストを行った。1時間走行させた後のガイドの汚れについて、汚れ多い、汚れやや多い、汚れ少ない、なしの4段階で評価を行った。
評価結果を表1に示す。
Figure 2005032367
表中、磁性体の欄でBaFeはバリウムフェライトを、MPは強磁性金属粉末を示し、サイズは、前者は平均板径、後者は、平均長軸長を示す。バック層の被覆針状酸化物粉体のサイズは、平均長軸長を示し、被覆されたカーボンを含まない。また、バック面Rsで例えば、7.40E+5は、7.40×10+5を意味する(他も同様である)。
上表より、本発明の実施例は、バック層の空隙率が所定範囲であるため、バック面への写りが少なく、巻き姿が良好で、かつ100Pμ値も小さく走行耐久性も良好であるが、比較例1及び2はバック面写りが多く、磁性面の窪みが多く、走行耐久性も悪い。比較例3は巻き姿が改善されない。

Claims (1)

  1. 支持体の片面に磁性層を有し、その反対面にバック層を有する磁気記録媒体において、該バック層は導電性物質で表面が被覆された被覆針状酸化物粉体、カーボンブラック及び結合剤を含み、かつ該バック層の空隙率が30〜65%であることを特徴とする磁気記録媒体。
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