JP2005028745A - 印刷版材料の露光方法及び印刷版材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】CTPシステムで、印刷機上で現像される平版印刷版を用いて印刷を行う際に、安定した網点の再現性が得られ、耐刷力の減少することのない、平版印刷版の露光方法を提供することにある。
【解決手段】プラスチック支持体上に、親水性層及び該親水性層上の感熱性画像形成層からなる機能層を有し、かつ該親水性層及び該感熱性画像形成層の少なくとも一方の層が光熱変換材を含有し、該光熱変換材を含有する層の厚さが1μm〜5μmである、印刷機上で現像される印刷版材料を、該機能層でのレーザー光の透過率が1%〜30%であり該機能層を透過したレーザー光が該機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%〜5%の条件でレーザー露光することを特徴とする印刷版材料の露光方法。
【選択図】 なし
【解決手段】プラスチック支持体上に、親水性層及び該親水性層上の感熱性画像形成層からなる機能層を有し、かつ該親水性層及び該感熱性画像形成層の少なくとも一方の層が光熱変換材を含有し、該光熱変換材を含有する層の厚さが1μm〜5μmである、印刷機上で現像される印刷版材料を、該機能層でのレーザー光の透過率が1%〜30%であり該機能層を透過したレーザー光が該機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%〜5%の条件でレーザー露光することを特徴とする印刷版材料の露光方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料の画像露光方法及びそれに用いられる印刷版材料に関し、特に、網点再現性、耐刷性に優れた、印刷機上で非画像部が除去されて画像部が形成される印刷版材料の露光方法及びそれに用いられる印刷版材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接印刷版材料に記録するコンピュータートゥプレート(以下CTPという)システムが普及してきた。CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミニウム基材を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての機能層を設けたフレキシブルタイプがある。近年、商業印刷においては印刷の多品種少部数化傾向が進み、市場では高品質で低価格な印刷版材料への要望が強く、このような市場では、フレキシブルタイプの印刷版材料が多く用いられている。
【0003】
フレキシブルタイプの印刷版材料としては、例えば特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいはフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
銀塩拡散転写方式は、露光後に湿式の現像と乾燥の工程が必要であり、画像形成工程での寸法精度が十分得られないため、高品質の印刷に適するとはいえない。
【0005】
アブレーション方式は現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するためドット形状が不安定になりやすい。又、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。
【0006】
レーザー光を熱に変換し熱溶融画像を親水性層上に形成する方式の材料は、鮮鋭なドット形状が得られ、高精細な画像形成に適している。
【0007】
一方、印刷用の画像形成方法として、環境適性等の観点より画像データ書き込み(画像様露光)後の印刷版を直接オフセット印刷機で印刷することにより湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去する所謂印刷機上で現像を行う方法が知られている。そして、上記のレーザー光を熱に変換し画像形成層を親水性層上に溶融固着させる方式のフレキシブルタイプの印刷版材料が、このプロセスに有利に用いられる。この場合には、鮮鋭なドット形状、高精細な画像が得られ、又露光後の現像プロセスを必要とせず、品質安定性、環境適性にも優れている。
【0008】
しかしながら、近年印刷業界においても環境保全が叫ばれ、印刷に使用する湿し水に添加するイソプロピルアルコールの削減、印刷インキにおいては石油系の揮発性有機溶剤を使用しないインキ(例えば大豆油インキ)の普及が進みつつあり、従来の湿し水、インキに比べると印刷条件の実用許容幅が狭く、特にフレキシブルタイプの印刷機上現像可能な印刷版材料では網点の再現性が不安定になる、耐刷力が減少する場合がある等の問題点を有していた。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−96710号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2001−138652号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、CTPシステムで、印刷機上で現像される平版印刷版を用いて印刷を行う際に、安定した網点の再現性が得られ、耐刷力の減少することのない、平版印刷版の露光方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0013】
1.印刷版材料を固定部材上に密着固定し、レーザー光により画像露光を行う露光方法において、1)該印刷版材料がプラスチック支持体上に、親水性層及び該親水性層上の感熱性画像形成層からなる機能層を有し、かつ該親水性層及び該感熱性画像形成層の少なくとも一方の層が光熱変換材を含有し、該光熱変換材を含有する層の厚さが1μm〜5μmである、印刷機上で現像される印刷版材料であり、2)該機能層での該レーザー光の透過率が1%〜30%であり、かつ3)該機能層を透過したレーザー光が該機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%〜5%であることを特徴とする印刷版材料の露光方法。
【0014】
2.前記印刷版材料全体でのレーザー光の透過率が1%〜13%であることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0015】
3.前記印刷版材料が、前記プラスチック支持体の前記機能層面と反対側にバックコート層を有し、該バックコート層でのレーザー光の透過率が1%〜40%であることを特徴とする前記2項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0016】
4.前記プラスチック支持体でのレーザー光の透過率が1%〜70%であることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0017】
5.前記2項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
6.前記3項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
【0018】
7.前記4項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
以下本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明における印刷版材料は、プラスチック支持体上に親水性層及び感熱性画像形成層を支持体からこの順に有する。本発明の機能層は上記親水性層及び感熱性画像形成からなり、親水性層及び感熱性画像形成層の少なくとも一方の層に光熱変換材を含有する。
【0020】
本発明における印刷版材料は、画像露光後、特に現像工程を経ることなく、印刷工程に供せられる。本発明における、印刷機上で現像される、とは通常のオフセット印刷機に画像露光済みの印刷版材料を取り付けて印刷を行う際、版面に与えられた印刷用湿し水と印刷インクの作用により印刷版材料の未露光領域の画像形成層が印刷の初期に選択的に除去されることを意味する。
【0021】
露光入射光とは印刷版材料に入射する露光レーザー光であり、機能層でのレーザー光の透過率とは、露光入射光に対する機能層での透過割合である。同様に、印刷版材料全体でのレーザー光の透過率とは、露光入射光に対する、機能層、支持体を含めた印刷版材料全体での透過割合である。バックコート層およびプラスチック支持体での透過率とは、各々各層に入射する入射光に対する各層での透過割合である。再入射するときの光強度とは、露光入射光が機能層を透過した後、プラスチック支持体、固定部材などに反射して再び機能層に入射する光の強度である。
【0022】
プラスチック支持体の透過率は、プラスチック支持体のみの試料を用い入射光と透過光の強度を測定することにより求められる。機能層の透過率はプラスチック支持体上に機能層のみを設けた試料を用い、入射光と透過光の強度を測定し、透過光の強度から上記のプラスチック支持体の透過光の強度を減じた強度を用いて求められる。同様に、バックコート層での透過率は、プラスチック支持体上にバックコート層のみを設けた試料を用い、入射光と透過光の強度を測定し、上記プラスチック支持体の透過光の強度を利用して求められる。印刷版材料全体の透過率は印刷版材料を用い同様に入射光、透過光の光強度を測定することにより、求めることができる。
【0023】
機能層へ再入射するときの光強度は、固定部材上でのレーザー光の反射率を求め、前記露光入射光の強度に前記印刷版全体の透過率を乗じ、これに支持体の透過率を乗じ、これにバックコート層での透過率を乗じ、さらに固定部材の反射率を乗じて求める。即ち、再入射の光強度=印刷版材料全体の透過光強度×プラスチック支持体での透過率(%)/100×バックコート層での透過率(%)/100×固定部材での反射率(%)/100、である。
【0024】
上記の入射光、透過光、反射光の強度は市販の分光光度計を用いて測定できる。
【0025】
本発明における印刷版材料は、機能層でのレーザー光の透過率が1%〜30%であり、かつ機能層を透過した光が反射等により機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%から5%であることが必要である。機能層でのレーザー光の透過率が3%から20%がより好ましい。
【0026】
さらに、好ましい態様として、印刷版材料全体の透過率が1%から13%である場合、プラスチック支持体の透過率が1%〜40%である場合、バックコート層の透過率が1%から40%である場合が挙げられる。
【0027】
機能層での透過率は使用する光熱変換材の吸光度と機能層への含有量、及び機能層の厚みにより調整することができる。又プラスチック支持体、バックコート層の透過率は各層に含ませる光吸収剤の量や各層の厚みにより調整することができる。
【0028】
以下に本発明の印刷版材料等について詳細に説明する。
〈プラスチック支持体〉
本発明に用いられるプラスチック支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。印刷版作製装置内での搬送性と印刷版としての取り扱い易さからプラスチック支持体の厚さとしては100〜300μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0029】
プラスチック支持体の表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていてもよい。又、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に支持体表面を粗面化することもできる。更に、プラスチック支持対表面に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けてもよい。
【0030】
プラスチック支持体の前記透過率が1%から70%であることが、好ましい態様である。本発明に用いられるレーザーとしては、赤外領域の比較的長波長のものが有利に用いられるため、上記透過率にするには、これらの波長の光を吸収、拡散、反射する化合物を含有せしめればよい。
【0031】
露光波長の光を反射、拡散する化合物として、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ポリエチレン、等が挙げられ、プラスチック支持体を製膜する際に原材料プラスチック中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0032】
露光波長に吸収を有する化合物としては、カーボンブラック、フタロシアニンの銅、鉄、アルミ、チタン金属塩類、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクワリウム系色素、等から選ぶことができ、基材を製膜する際に原材料プラスチック中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0033】
〈機能層〉
本発明の機能層は、親水性層とその上に設けられた感熱画像形成層からなる。
【0034】
(親水性層)
本発明の親水性層とは、印刷時に印刷インキを着肉しない機能を有する層であり、この親水性層を形成する素材には、下記のものが挙げられる。
【0035】
親水性層を形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックス構造体や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックス構造体、金属酸化物等が好ましく用いられる。親水性層は特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0036】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0037】
本発明の親水性層には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、ネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液とした場合、アルカリ性を呈するものが好ましい。
【0038】
本発明において、親水性層を形成する素材の一つであるマトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を使用することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ粒子又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0039】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0040】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。
【0041】
また、本発明の印刷版材料の親水性層には、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0042】
上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0043】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。
【0044】
粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0045】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0046】
本発明の親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましい。金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0047】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0048】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0049】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0050】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0051】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0052】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0053】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0054】
粒径は1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましく、2μm〜6μmがさらに好ましい。
【0055】
親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0056】
本発明においては、親水性層は複数からなっていてもよい。例えば一つの親水層の上に別の親水性層(中間親水性層)を設けることができる。中間親水性層を設ける場合、中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。
【0057】
本発明に係る親水性層及び感熱画像形成層の少なくとも1層は、レーザー光を熱に変換する機能をもたせるために、光熱変換素材を含有する。本発明では、光熱変換材を含有する層の厚さが光熱変換効率の観点より1μm〜5μmである。
【0058】
親水性層及び感熱画像形成層の両者が光熱変換材を含む場合の光熱変換材を含有する層の厚さは、これら両者の合計の厚さである。本発明では、親水性層が光熱変換素材を含有する場合が特に好ましい。光熱変換素材の親水性層、画像形成層での含有量及び、含有層の厚さを調整することにより、前記透過率を調整することができるが、光熱変換材の含有量は、含有層に対して0.1〜60質量%であり、3〜60質量%が好ましく、3〜45質量%の範囲ががより好ましい。
【0059】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物が好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0060】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0062】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0063】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0064】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0065】
これらの光熱変換素材の親水性層、画像形成層での含有量としては、0.1〜60質量%であり、3〜60質量%が好ましく、3〜45質量%がより好ましい。
【0066】
又親水性層と中間親水性層を有していて、両層とも光熱変換材料を含む場合、光熱変換材の添加量は親水性層と中間親水性層で異なっていてもよい。
【0067】
〈感熱画像形成層〉
本発明の感熱画像形成層は、画像様の加熱により画像を形成しうる層であり、熱溶融性微粒子及びまたは熱融着性微粒子を含有する。
【0068】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。
【0069】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0070】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0071】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0072】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0073】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0074】
本発明の画像形成層に用いることもできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0075】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0076】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0077】
熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0078】
熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0079】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0080】
本発明に係る画像形成層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0081】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0082】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0083】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0084】
画像形成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
〈バックコート層〉
本発明における印刷版材料の裏面には、バックコート層が形成されていてもよい。バックコート層には、バインダー成分とマット材の他、表面滑性や導電性を付与する化合物を添加することが好ましい。
【0085】
バインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、芳香族ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(R)樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、有機硼素化合物、芳香族エステル類、弗化ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらのモノマーを主成分とする共重合体などの汎用ポリマーを使用することができる。
【0086】
バインダーとして架橋可能なバインダーを用いることは、マット材の粉落ち防止やバックコートの耐傷性の向上に効果がある。又、保存時のブロッキングにも効果が大きい。この架橋手段は、用いる架橋剤の特性に応じて、熱、活性光線、圧力の何れか一つ又は組合せなどを特に限定することなく採用することができる。場合によっては、基材への接着性を付与するため、基材のバックコート層を設ける側に任意の易接着層を設けてもよい。
【0087】
バックコート層に好ましく添加されるマット材としては、有機又は無機の微粒子が使用できる。有機微粒子としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂よりなる有機微粒子等が挙げられ、中でも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子なども挙げられる。無機微粒子としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛等の無機微粒子が挙げられ、中でも、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化珪素が好ましい。
【0088】
無機微粒子の平均粒径としては0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、バックコート層に十分な粗面化を施すことができずに均一な密着を得るために長時間の減圧が必要になる。10μmを超えると、バックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が大きくなり、固定部材との安定した密着性が確保できなくなる。
【0089】
バックコート層は0.5〜3g/m2程度の付量で設けることが好ましい。尚、マット剤を添加しない場合のバックコート層の付き量は0.01〜1.0g/m2が好ましい。
【0090】
前記微粒子の含有量としては、バックコート層の全固形分質量に対し、0.5〜80質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0091】
バックコート層には、表面滑性を調整する目的で、各種界面活性剤、シリコンオイル、フッ素系樹脂、ワックス類等を添加することも好ましい。
【0092】
印刷版材料が搬送路内で摩擦帯電による搬送異常や、帯電に起因する異物の付着を防止するために帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子等が使用できる。中でも、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の微粒子、有機半導体等の導電性微粒子が好ましく用いられる。特にカーボンブラック、グラファイト、特に金属酸化物の微粒子を用いることは、温度等の環境の影響によらず安定した帯電防止能が得られるため好ましい。
【0093】
金属酸化物微粒子は、バックコート層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物微粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物微粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。又、本発明の印刷板材料は、支持体の画像形成層側に上記のような帯電防止層を有していてもよい。
【0094】
バックコート層の前記透過率が1%から40%であることも、好ましい態様である。本発明に用いられるレーザーとしては、赤外領域の比較的長波長のものが有利に用いられるため、上記透過率にするには、これらの波長の光を吸収、拡散、反射する化合物を含有せしめればよい。
【0095】
露光波長の光を反射、拡散する化合物として、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ポリエチレン、等が挙げられ、バックコート層を塗設する際に塗布液中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0096】
露光波長に吸収を有する化合物としては、カーボンブラック、フタロシアニンの銅、鉄、アルミ、チタン金属塩類、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクワリウム系色素、等から選ぶことができ、バックコート層の塗設する際に塗布液中に分散、混合して用いることが好ましい。
〈レーザー露光〉
本発明における印刷版材料へのレーザー露光には、具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましく用いられる。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0097】
本発明において、印刷版材料は、固定部材に密着固定された状態でレーザー光により画像露光される。露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。以下に本発明に用いられる露光方式の例を挙げる。
【0098】
(1)平板状である固定部材に密着固定された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状である固定部材の内側に、円筒面に沿って密着固定された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラムである固定部材表面に密着固定された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0099】
本発明の印刷版材料の画像形成に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0100】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、「部」は「質量部」を示す。
【0101】
実施例1
〈プラスチック支持体の作製〉
《基材の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、未延伸フィルムを作製した。これを所定の温度で2軸延伸し、厚さ175±3μmのポリエチレンテレフタレート基材(A)を作製した。
【0102】
次に、PETペレット中に重量平均分子量300000の高密度ポリエチレンを5質量%混合し、同一の条件で延伸し厚さ175±3μmのポリエチレンテレフタレート基材(B)を作製した。
【0103】
《下引き済み基材の作製》
上記で得られた各々の基材の両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液c−1またはc−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液d−1またはd−2を乾燥膜厚1.0μmになるように各々塗布し(c−1上にd−1をc−2上にd−2を)、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0104】
下引き済み支持体の808nmにおける透過率を、島津製作所製の分光光度計(UV2450)で測定したところ、ポリエチレンテレフタレート基材(A)を使用したものは91%、(B)を使用したものは65%であった。
【0105】
【0106】
【化1】
【0107】
成分d−11;
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0108】
【化2】
【0109】
《バックコート層の塗布》
下引き済み基材の下引き面Bに、表1に示すバックコート層用塗工液をワイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で1分熱処理して乾燥付量4g/m2になるように塗布した。表中の水準欄は各素材の混合割合を質量部で表したものである。表中の水準1〜3の塗工液から形成したバックコート層をBC層1〜3と表す。
【0110】
【表1】
【0111】
〈印刷版材料の作製〉
上記下引き済み支持体の下引き面A上に、表2に示す親水性層塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層塗布液(調製方法は下記に示す)、および表4に示す画像形成層塗布液を使用し、下引き済み基材の各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。
【0112】
まず、下引き済み基材上に親水性層用の塗布液を乾燥付量が2.5g/m2になるように塗布し、その上に中間親水性層塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。
【0113】
その後、表4に示す画像形成層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、40℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0114】
親水性層用塗布液の水準1〜5を用いた場合の機能層を、機能層1〜5と表す。
【0115】
《親水性層用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0116】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0117】
【表2】
【0118】
《中間親水性層用塗布液の調製》
表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して中間親水性層用塗布液を調製した。
【0119】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0120】
【表3】
【0121】
《感熱性画像形成層用塗布液の調製》
表4に記載の各素材を、表4に記載の組成で混合して感熱性画像形成用塗布液を調製した。
【0122】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0123】
【表4】
【0124】
【化3】
【0125】
上記により作製した印刷版材料を、745mm×650mmのサイズに切断し透過率測定、印刷に用いた。
【0126】
〈印刷版材料の透過率測定〉
作製した印刷版材料について、各印刷版材料の機能層、プラスチック支持体、バックコート層各々の808nm光に対する透過率を表5に示した。各層の透過率は、島津製作所製の分光光度計(UV2450)で測定した。
【0127】
【表5】
【0128】
次に、印刷版材料を固定部材に、機能層が上になるように固定した。このとき、露光部材表面の塗装濃度を変化し、808nmの反射率を(A)90%、(B)30%、(C)10%に変化させた。
【0129】
露光には、波長808nm、スポット径約18μm、印刷版面上でのレーザーパワーが270mWのレーザーを用い、露光エネルギーを印刷版材料面上で250mJ/cm2になるように設定し、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、表6に示す印刷版試料1〜39を作製した。
【0130】
各層の透過率データから、以下の計算により印刷版材料全体の透過率と露光部材上で反射して機能層に再入射する光強度の入射光に対する割合を求めた。
【0131】
入射光強度 :I(o)
全透過率(%):(機能層透過率(%)/100×支持体透過率(%)/100×BC層透過率(%)/100)×100
全透過光強度 :I(T)=I(o)×全透過率(%)/100
再入射光強度 :I(R)=I(T)×露光部材反射率(%)/100×BC層透過率(%)/100×支持体透過率(%)/100
再入射率(%):I(R)/I(o)×100
【0132】
【表6】
【0133】
〈印刷評価〉
上記のように画像露光した印刷版試料について、下記の印刷条件で諸特性を評価した。
【0134】
印刷機 :DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水 :アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インク :TKハイエコーSOY1(東洋インキ社製 大豆油インキ)
《評価項目》
1)網点再現性
印刷版面全面に175線50%相当の平網を露光し、印刷版面上の網点面積率を王子計測機器株式会社製ドットアナライザーDA−6000を用いて印刷版材料全面積均等に100点測定した。得られたドット面積の最大値、最小値を測定してドットのバラツキを評価した。
【0135】
○ 50%に対して、±5%未満のバラツキ
△ 50%に対して、±5%〜±10%未満のバラツキ
× 50%に対して、±10%以上のバラツキ
2)耐刷力
175線3%相当の網点が50%以上欠落するまでの印刷枚数を耐刷力と定義した。
【0136】
○ 22,000枚以上
△ 16,000〜21,999枚
× 16,000枚未満
評価結果を表7に示す。
【0137】
【表7】
【0138】
表7より、本発明の露光方法により、網点再現性の良好な印刷物が得られ、耐刷力が減少していないことが分かる。
【0139】
【発明の効果】
本発明により、CTPシステムで、印刷機上で現像される平版印刷版を用いて印刷を行う際に、安定した網点の再現性が得られ、耐刷力の減少することのない、平版印刷版の露光方法が提供できた。
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料の画像露光方法及びそれに用いられる印刷版材料に関し、特に、網点再現性、耐刷性に優れた、印刷機上で非画像部が除去されて画像部が形成される印刷版材料の露光方法及びそれに用いられる印刷版材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接印刷版材料に記録するコンピュータートゥプレート(以下CTPという)システムが普及してきた。CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミニウム基材を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての機能層を設けたフレキシブルタイプがある。近年、商業印刷においては印刷の多品種少部数化傾向が進み、市場では高品質で低価格な印刷版材料への要望が強く、このような市場では、フレキシブルタイプの印刷版材料が多く用いられている。
【0003】
フレキシブルタイプの印刷版材料としては、例えば特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいはフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
銀塩拡散転写方式は、露光後に湿式の現像と乾燥の工程が必要であり、画像形成工程での寸法精度が十分得られないため、高品質の印刷に適するとはいえない。
【0005】
アブレーション方式は現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するためドット形状が不安定になりやすい。又、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。
【0006】
レーザー光を熱に変換し熱溶融画像を親水性層上に形成する方式の材料は、鮮鋭なドット形状が得られ、高精細な画像形成に適している。
【0007】
一方、印刷用の画像形成方法として、環境適性等の観点より画像データ書き込み(画像様露光)後の印刷版を直接オフセット印刷機で印刷することにより湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去する所謂印刷機上で現像を行う方法が知られている。そして、上記のレーザー光を熱に変換し画像形成層を親水性層上に溶融固着させる方式のフレキシブルタイプの印刷版材料が、このプロセスに有利に用いられる。この場合には、鮮鋭なドット形状、高精細な画像が得られ、又露光後の現像プロセスを必要とせず、品質安定性、環境適性にも優れている。
【0008】
しかしながら、近年印刷業界においても環境保全が叫ばれ、印刷に使用する湿し水に添加するイソプロピルアルコールの削減、印刷インキにおいては石油系の揮発性有機溶剤を使用しないインキ(例えば大豆油インキ)の普及が進みつつあり、従来の湿し水、インキに比べると印刷条件の実用許容幅が狭く、特にフレキシブルタイプの印刷機上現像可能な印刷版材料では網点の再現性が不安定になる、耐刷力が減少する場合がある等の問題点を有していた。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−96710号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2001−138652号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、CTPシステムで、印刷機上で現像される平版印刷版を用いて印刷を行う際に、安定した網点の再現性が得られ、耐刷力の減少することのない、平版印刷版の露光方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0013】
1.印刷版材料を固定部材上に密着固定し、レーザー光により画像露光を行う露光方法において、1)該印刷版材料がプラスチック支持体上に、親水性層及び該親水性層上の感熱性画像形成層からなる機能層を有し、かつ該親水性層及び該感熱性画像形成層の少なくとも一方の層が光熱変換材を含有し、該光熱変換材を含有する層の厚さが1μm〜5μmである、印刷機上で現像される印刷版材料であり、2)該機能層での該レーザー光の透過率が1%〜30%であり、かつ3)該機能層を透過したレーザー光が該機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%〜5%であることを特徴とする印刷版材料の露光方法。
【0014】
2.前記印刷版材料全体でのレーザー光の透過率が1%〜13%であることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0015】
3.前記印刷版材料が、前記プラスチック支持体の前記機能層面と反対側にバックコート層を有し、該バックコート層でのレーザー光の透過率が1%〜40%であることを特徴とする前記2項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0016】
4.前記プラスチック支持体でのレーザー光の透過率が1%〜70%であることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料の露光方法。
【0017】
5.前記2項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
6.前記3項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
【0018】
7.前記4項の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
以下本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明における印刷版材料は、プラスチック支持体上に親水性層及び感熱性画像形成層を支持体からこの順に有する。本発明の機能層は上記親水性層及び感熱性画像形成からなり、親水性層及び感熱性画像形成層の少なくとも一方の層に光熱変換材を含有する。
【0020】
本発明における印刷版材料は、画像露光後、特に現像工程を経ることなく、印刷工程に供せられる。本発明における、印刷機上で現像される、とは通常のオフセット印刷機に画像露光済みの印刷版材料を取り付けて印刷を行う際、版面に与えられた印刷用湿し水と印刷インクの作用により印刷版材料の未露光領域の画像形成層が印刷の初期に選択的に除去されることを意味する。
【0021】
露光入射光とは印刷版材料に入射する露光レーザー光であり、機能層でのレーザー光の透過率とは、露光入射光に対する機能層での透過割合である。同様に、印刷版材料全体でのレーザー光の透過率とは、露光入射光に対する、機能層、支持体を含めた印刷版材料全体での透過割合である。バックコート層およびプラスチック支持体での透過率とは、各々各層に入射する入射光に対する各層での透過割合である。再入射するときの光強度とは、露光入射光が機能層を透過した後、プラスチック支持体、固定部材などに反射して再び機能層に入射する光の強度である。
【0022】
プラスチック支持体の透過率は、プラスチック支持体のみの試料を用い入射光と透過光の強度を測定することにより求められる。機能層の透過率はプラスチック支持体上に機能層のみを設けた試料を用い、入射光と透過光の強度を測定し、透過光の強度から上記のプラスチック支持体の透過光の強度を減じた強度を用いて求められる。同様に、バックコート層での透過率は、プラスチック支持体上にバックコート層のみを設けた試料を用い、入射光と透過光の強度を測定し、上記プラスチック支持体の透過光の強度を利用して求められる。印刷版材料全体の透過率は印刷版材料を用い同様に入射光、透過光の光強度を測定することにより、求めることができる。
【0023】
機能層へ再入射するときの光強度は、固定部材上でのレーザー光の反射率を求め、前記露光入射光の強度に前記印刷版全体の透過率を乗じ、これに支持体の透過率を乗じ、これにバックコート層での透過率を乗じ、さらに固定部材の反射率を乗じて求める。即ち、再入射の光強度=印刷版材料全体の透過光強度×プラスチック支持体での透過率(%)/100×バックコート層での透過率(%)/100×固定部材での反射率(%)/100、である。
【0024】
上記の入射光、透過光、反射光の強度は市販の分光光度計を用いて測定できる。
【0025】
本発明における印刷版材料は、機能層でのレーザー光の透過率が1%〜30%であり、かつ機能層を透過した光が反射等により機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%から5%であることが必要である。機能層でのレーザー光の透過率が3%から20%がより好ましい。
【0026】
さらに、好ましい態様として、印刷版材料全体の透過率が1%から13%である場合、プラスチック支持体の透過率が1%〜40%である場合、バックコート層の透過率が1%から40%である場合が挙げられる。
【0027】
機能層での透過率は使用する光熱変換材の吸光度と機能層への含有量、及び機能層の厚みにより調整することができる。又プラスチック支持体、バックコート層の透過率は各層に含ませる光吸収剤の量や各層の厚みにより調整することができる。
【0028】
以下に本発明の印刷版材料等について詳細に説明する。
〈プラスチック支持体〉
本発明に用いられるプラスチック支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。印刷版作製装置内での搬送性と印刷版としての取り扱い易さからプラスチック支持体の厚さとしては100〜300μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0029】
プラスチック支持体の表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていてもよい。又、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に支持体表面を粗面化することもできる。更に、プラスチック支持対表面に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けてもよい。
【0030】
プラスチック支持体の前記透過率が1%から70%であることが、好ましい態様である。本発明に用いられるレーザーとしては、赤外領域の比較的長波長のものが有利に用いられるため、上記透過率にするには、これらの波長の光を吸収、拡散、反射する化合物を含有せしめればよい。
【0031】
露光波長の光を反射、拡散する化合物として、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ポリエチレン、等が挙げられ、プラスチック支持体を製膜する際に原材料プラスチック中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0032】
露光波長に吸収を有する化合物としては、カーボンブラック、フタロシアニンの銅、鉄、アルミ、チタン金属塩類、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクワリウム系色素、等から選ぶことができ、基材を製膜する際に原材料プラスチック中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0033】
〈機能層〉
本発明の機能層は、親水性層とその上に設けられた感熱画像形成層からなる。
【0034】
(親水性層)
本発明の親水性層とは、印刷時に印刷インキを着肉しない機能を有する層であり、この親水性層を形成する素材には、下記のものが挙げられる。
【0035】
親水性層を形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックス構造体や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックス構造体、金属酸化物等が好ましく用いられる。親水性層は特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0036】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0037】
本発明の親水性層には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、ネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液とした場合、アルカリ性を呈するものが好ましい。
【0038】
本発明において、親水性層を形成する素材の一つであるマトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を使用することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ粒子又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0039】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0040】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。
【0041】
また、本発明の印刷版材料の親水性層には、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0042】
上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0043】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。
【0044】
粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0045】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0046】
本発明の親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましい。金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0047】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0048】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0049】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0050】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0051】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0052】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0053】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0054】
粒径は1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましく、2μm〜6μmがさらに好ましい。
【0055】
親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0056】
本発明においては、親水性層は複数からなっていてもよい。例えば一つの親水層の上に別の親水性層(中間親水性層)を設けることができる。中間親水性層を設ける場合、中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。
【0057】
本発明に係る親水性層及び感熱画像形成層の少なくとも1層は、レーザー光を熱に変換する機能をもたせるために、光熱変換素材を含有する。本発明では、光熱変換材を含有する層の厚さが光熱変換効率の観点より1μm〜5μmである。
【0058】
親水性層及び感熱画像形成層の両者が光熱変換材を含む場合の光熱変換材を含有する層の厚さは、これら両者の合計の厚さである。本発明では、親水性層が光熱変換素材を含有する場合が特に好ましい。光熱変換素材の親水性層、画像形成層での含有量及び、含有層の厚さを調整することにより、前記透過率を調整することができるが、光熱変換材の含有量は、含有層に対して0.1〜60質量%であり、3〜60質量%が好ましく、3〜45質量%の範囲ががより好ましい。
【0059】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物が好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0060】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0062】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0063】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0064】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0065】
これらの光熱変換素材の親水性層、画像形成層での含有量としては、0.1〜60質量%であり、3〜60質量%が好ましく、3〜45質量%がより好ましい。
【0066】
又親水性層と中間親水性層を有していて、両層とも光熱変換材料を含む場合、光熱変換材の添加量は親水性層と中間親水性層で異なっていてもよい。
【0067】
〈感熱画像形成層〉
本発明の感熱画像形成層は、画像様の加熱により画像を形成しうる層であり、熱溶融性微粒子及びまたは熱融着性微粒子を含有する。
【0068】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。
【0069】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0070】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0071】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0072】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0073】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0074】
本発明の画像形成層に用いることもできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0075】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0076】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0077】
熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0078】
熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0079】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0080】
本発明に係る画像形成層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0081】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0082】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0083】
又、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0084】
画像形成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
〈バックコート層〉
本発明における印刷版材料の裏面には、バックコート層が形成されていてもよい。バックコート層には、バインダー成分とマット材の他、表面滑性や導電性を付与する化合物を添加することが好ましい。
【0085】
バインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、芳香族ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テフロン(R)樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、有機硼素化合物、芳香族エステル類、弗化ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらのモノマーを主成分とする共重合体などの汎用ポリマーを使用することができる。
【0086】
バインダーとして架橋可能なバインダーを用いることは、マット材の粉落ち防止やバックコートの耐傷性の向上に効果がある。又、保存時のブロッキングにも効果が大きい。この架橋手段は、用いる架橋剤の特性に応じて、熱、活性光線、圧力の何れか一つ又は組合せなどを特に限定することなく採用することができる。場合によっては、基材への接着性を付与するため、基材のバックコート層を設ける側に任意の易接着層を設けてもよい。
【0087】
バックコート層に好ましく添加されるマット材としては、有機又は無機の微粒子が使用できる。有機微粒子としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂よりなる有機微粒子等が挙げられ、中でも、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子なども挙げられる。無機微粒子としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛等の無機微粒子が挙げられ、中でも、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化珪素が好ましい。
【0088】
無機微粒子の平均粒径としては0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、バックコート層に十分な粗面化を施すことができずに均一な密着を得るために長時間の減圧が必要になる。10μmを超えると、バックコート層の粗面化が粗すぎてスムースター値が大きくなり、固定部材との安定した密着性が確保できなくなる。
【0089】
バックコート層は0.5〜3g/m2程度の付量で設けることが好ましい。尚、マット剤を添加しない場合のバックコート層の付き量は0.01〜1.0g/m2が好ましい。
【0090】
前記微粒子の含有量としては、バックコート層の全固形分質量に対し、0.5〜80質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0091】
バックコート層には、表面滑性を調整する目的で、各種界面活性剤、シリコンオイル、フッ素系樹脂、ワックス類等を添加することも好ましい。
【0092】
印刷版材料が搬送路内で摩擦帯電による搬送異常や、帯電に起因する異物の付着を防止するために帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子等が使用できる。中でも、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の微粒子、有機半導体等の導電性微粒子が好ましく用いられる。特にカーボンブラック、グラファイト、特に金属酸化物の微粒子を用いることは、温度等の環境の影響によらず安定した帯電防止能が得られるため好ましい。
【0093】
金属酸化物微粒子は、バックコート層中に10〜90質量%の範囲で含まれていることが好ましい。金属酸化物微粒子の粒子径は、平均粒子径が0.001〜0.5μmの範囲が好ましい。ここでいう平均粒子径とは、金属酸化物微粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。又、本発明の印刷板材料は、支持体の画像形成層側に上記のような帯電防止層を有していてもよい。
【0094】
バックコート層の前記透過率が1%から40%であることも、好ましい態様である。本発明に用いられるレーザーとしては、赤外領域の比較的長波長のものが有利に用いられるため、上記透過率にするには、これらの波長の光を吸収、拡散、反射する化合物を含有せしめればよい。
【0095】
露光波長の光を反射、拡散する化合物として、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ポリエチレン、等が挙げられ、バックコート層を塗設する際に塗布液中に分散、混合して用いることが好ましい。
【0096】
露光波長に吸収を有する化合物としては、カーボンブラック、フタロシアニンの銅、鉄、アルミ、チタン金属塩類、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクワリウム系色素、等から選ぶことができ、バックコート層の塗設する際に塗布液中に分散、混合して用いることが好ましい。
〈レーザー露光〉
本発明における印刷版材料へのレーザー露光には、具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましく用いられる。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0097】
本発明において、印刷版材料は、固定部材に密着固定された状態でレーザー光により画像露光される。露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。以下に本発明に用いられる露光方式の例を挙げる。
【0098】
(1)平板状である固定部材に密着固定された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状である固定部材の内側に、円筒面に沿って密着固定された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラムである固定部材表面に密着固定された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0099】
本発明の印刷版材料の画像形成に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0100】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、「部」は「質量部」を示す。
【0101】
実施例1
〈プラスチック支持体の作製〉
《基材の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、未延伸フィルムを作製した。これを所定の温度で2軸延伸し、厚さ175±3μmのポリエチレンテレフタレート基材(A)を作製した。
【0102】
次に、PETペレット中に重量平均分子量300000の高密度ポリエチレンを5質量%混合し、同一の条件で延伸し厚さ175±3μmのポリエチレンテレフタレート基材(B)を作製した。
【0103】
《下引き済み基材の作製》
上記で得られた各々の基材の両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液c−1またはc−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液d−1またはd−2を乾燥膜厚1.0μmになるように各々塗布し(c−1上にd−1をc−2上にd−2を)、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0104】
下引き済み支持体の808nmにおける透過率を、島津製作所製の分光光度計(UV2450)で測定したところ、ポリエチレンテレフタレート基材(A)を使用したものは91%、(B)を使用したものは65%であった。
【0105】
【0106】
【化1】
【0107】
成分d−11;
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0108】
【化2】
【0109】
《バックコート層の塗布》
下引き済み基材の下引き面Bに、表1に示すバックコート層用塗工液をワイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で1分熱処理して乾燥付量4g/m2になるように塗布した。表中の水準欄は各素材の混合割合を質量部で表したものである。表中の水準1〜3の塗工液から形成したバックコート層をBC層1〜3と表す。
【0110】
【表1】
【0111】
〈印刷版材料の作製〉
上記下引き済み支持体の下引き面A上に、表2に示す親水性層塗布液(調製方法は下記に示す)、表3に示す親水性層塗布液(調製方法は下記に示す)、および表4に示す画像形成層塗布液を使用し、下引き済み基材の各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。
【0112】
まず、下引き済み基材上に親水性層用の塗布液を乾燥付量が2.5g/m2になるように塗布し、その上に中間親水性層塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。
【0113】
その後、表4に示す画像形成層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、40℃で72時間のシーズニング処理を施した。
【0114】
親水性層用塗布液の水準1〜5を用いた場合の機能層を、機能層1〜5と表す。
【0115】
《親水性層用塗布液の調製》
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0116】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0117】
【表2】
【0118】
《中間親水性層用塗布液の調製》
表3に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表3に記載の組成で混合、濾過して中間親水性層用塗布液を調製した。
【0119】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0120】
【表3】
【0121】
《感熱性画像形成層用塗布液の調製》
表4に記載の各素材を、表4に記載の組成で混合して感熱性画像形成用塗布液を調製した。
【0122】
なお、各素材の詳細は、以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0123】
【表4】
【0124】
【化3】
【0125】
上記により作製した印刷版材料を、745mm×650mmのサイズに切断し透過率測定、印刷に用いた。
【0126】
〈印刷版材料の透過率測定〉
作製した印刷版材料について、各印刷版材料の機能層、プラスチック支持体、バックコート層各々の808nm光に対する透過率を表5に示した。各層の透過率は、島津製作所製の分光光度計(UV2450)で測定した。
【0127】
【表5】
【0128】
次に、印刷版材料を固定部材に、機能層が上になるように固定した。このとき、露光部材表面の塗装濃度を変化し、808nmの反射率を(A)90%、(B)30%、(C)10%に変化させた。
【0129】
露光には、波長808nm、スポット径約18μm、印刷版面上でのレーザーパワーが270mWのレーザーを用い、露光エネルギーを印刷版材料面上で250mJ/cm2になるように設定し、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、表6に示す印刷版試料1〜39を作製した。
【0130】
各層の透過率データから、以下の計算により印刷版材料全体の透過率と露光部材上で反射して機能層に再入射する光強度の入射光に対する割合を求めた。
【0131】
入射光強度 :I(o)
全透過率(%):(機能層透過率(%)/100×支持体透過率(%)/100×BC層透過率(%)/100)×100
全透過光強度 :I(T)=I(o)×全透過率(%)/100
再入射光強度 :I(R)=I(T)×露光部材反射率(%)/100×BC層透過率(%)/100×支持体透過率(%)/100
再入射率(%):I(R)/I(o)×100
【0132】
【表6】
【0133】
〈印刷評価〉
上記のように画像露光した印刷版試料について、下記の印刷条件で諸特性を評価した。
【0134】
印刷機 :DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水 :アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インク :TKハイエコーSOY1(東洋インキ社製 大豆油インキ)
《評価項目》
1)網点再現性
印刷版面全面に175線50%相当の平網を露光し、印刷版面上の網点面積率を王子計測機器株式会社製ドットアナライザーDA−6000を用いて印刷版材料全面積均等に100点測定した。得られたドット面積の最大値、最小値を測定してドットのバラツキを評価した。
【0135】
○ 50%に対して、±5%未満のバラツキ
△ 50%に対して、±5%〜±10%未満のバラツキ
× 50%に対して、±10%以上のバラツキ
2)耐刷力
175線3%相当の網点が50%以上欠落するまでの印刷枚数を耐刷力と定義した。
【0136】
○ 22,000枚以上
△ 16,000〜21,999枚
× 16,000枚未満
評価結果を表7に示す。
【0137】
【表7】
【0138】
表7より、本発明の露光方法により、網点再現性の良好な印刷物が得られ、耐刷力が減少していないことが分かる。
【0139】
【発明の効果】
本発明により、CTPシステムで、印刷機上で現像される平版印刷版を用いて印刷を行う際に、安定した網点の再現性が得られ、耐刷力の減少することのない、平版印刷版の露光方法が提供できた。
Claims (7)
- 印刷版材料を固定部材上に密着固定し、レーザー光により画像露光を行う露光方法において、1)該印刷版材料がプラスチック支持体上に、親水性層及び該親水性層上の感熱性画像形成層からなる機能層を有し、かつ該親水性層及び該感熱性画像形成層の少なくとも一方の層が光熱変換材を含有し、該光熱変換材を含有する層の厚さが1μm〜5μmである、印刷機上で現像される印刷版材料であり、2)該機能層での該レーザー光の透過率が1%〜30%であり、かつ3)該機能層を透過したレーザー光が該機能層へ再入射するときの光強度が露光入射光の0%〜5%であることを特徴とする印刷版材料の露光方法。
- 前記印刷版材料全体でのレーザー光の透過率が1%〜13%であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料の露光方法。
- 前記印刷版材料が、前記プラスチック支持体の前記機能層面と反対側にバックコート層を有し、該バックコート層でのレーザー光の透過率が1%〜40%であることを特徴とする請求項2に記載の印刷版材料の露光方法。
- 前記プラスチック支持体でのレーザー光の透過率が1%〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料の露光方法。
- 請求項2の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
- 請求項3の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
- 請求項4の露光方法に用いられることを特徴とする印刷版材料。
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