JP2005021510A - 高透水性中空糸型血液浄化器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高透水性中空糸型血液浄化器において、臨床使用時の血液リークトラブルの原因である中空糸の切断やピンホールの発生は、中空糸膜のバースト圧と関係していることを見出した。中空糸膜のバースト圧は、中空糸膜紡糸時のノズルスリット幅のばらつきを小さくすること、製膜溶液中の不溶解性分除去時のフィルター孔径を制御することにより改善され、血液リーク発生の少ない安全な高透水性中空糸膜型血液浄化器を得ることが可能となった。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は安全性に優れた、慢性腎不全の治療に用いる高透水性能を有する医療用高透水性中空糸型血液浄化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
腎不全治療などにおける血液浄化療法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子を用いた透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液透析器、血液濾過器あるいは血液透析濾過器などのモジュールが広く使用されている。特に中空糸型の膜を分離材として用いたモジュールは体外循環血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらにモジュール生産時の生産性などの利点から透析器分野での重要度が高い。
【0003】
中空糸膜を用いた透析モジュールは、通常中空糸内空部に血液を流し、外側部に透析液を向流で流し、血液から透析液への拡散に基づく物質移動により尿素、クレアチニンなどの低分子量物質を血中から除くことを主眼としている。さらに、長期透析患者の増加に伴い、透析合併症が問題となり、近年では透析による除去対象物質は、尿素、クレアチニンなどの低分子量物質のみではなく、分子量数千の中分子量から分子量1〜2万の高分子量の物質まで拡大し、これらの物質をも除去できることが血液浄化膜に要求されている。特に、分子量11700のβ2ミクログロブリンは手根管症候群の原因物質であることがわかっており除去ターゲットとなっている。このような高分子量物質除去の治療に用いられる膜はハイパフォーマンス膜と呼ばれ、従来の透析膜より膜の細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたり、空孔率を上げたり、膜厚を薄くすることなどにより、中から高分子量物質の除去を可能としている。
【0004】
ところが、中から高分子量物質の除去性能は向上したものの、その半面、ハイパフォーマンス膜は、製膜時のポリマー溶液中のポリマー分率や、紡糸条件を変え、性能向上のため中空糸自体の糸強度を犠牲にしており、製造工程や輸送工程、取扱時に、糸へダメージを与え、糸が破損し、治療中に血液リークを起こしやすいなどの問題点が浮上し、これまでにこれらの解決方法はいくつか提案されている。
【0005】
血液リークを抑制する手段としては、芯剤を従来の有機溶剤含有水溶液中の有機溶剤濃度をさらに下げ、キャップ吐出後の気相通過時間及び芯剤濃度の適正な範囲を見出す技術がある。(例えば、特許文献1参照)。すなわち、透水性をコントロールしつつ膜内面に薄い緻密層を形成させる方法である。しかし、膜内面の緻密層の形成状態は透水性に顕著に影響し、透水性能の範囲を狭く設定するのが困難となる。
【0006】
また、ピンホールや膜破れを改良する目的で、膜形成ポリマー、該ポリマーの溶剤及びポリビニルピロリドンを混合し、溶解させたのち、孔径10μm以下のフィルターで濾過し、得られた製膜原液を所定の形状に形成することを特徴とする製膜方法がある(例えば、特許文献2参照)。ここでは、膜厚を薄くする検討はされておらず、孔径10μm以下のフィルターで濾過するだけでは薄膜化した場合の効果は不十分である。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−107577号公報(第3頁、課題を解決するための手段)
【特許文献2】
特開平11−244675号公報(第2頁、請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、糸強度の低下に起因する種々の問題を改良した高透水性中空糸型血液浄化器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下のものである。
(1)透水性が150mL/m2/hr/mmHg以上1500mL/m2/hr/mmHg以下で、平均膜厚が10μm以上50μm以下である中空糸膜を組み込んだ高透水性中空糸膜型血液浄化器において、バースト圧が0.5MPa以上であることを特徴とする高透水性中空糸型血液浄化器。
(2)中空糸膜の偏肉度が0.6以上であることを特徴とする(1)記載の高透水性中空糸型血液浄化器。
(3)中空糸膜の破断強力が5g以上である(1)または(2)記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
(4)中空糸膜が主としてポリスルホン系高分子またはセルロース系高分子からなる(1)〜(3)いずれか記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題を解決するために血液浄化器に用いられる中空糸膜の物理的性質を検討した。高透水性能を目指した中空糸膜は、先に記載したように膜の孔径を大きくするなど、膜全体の空孔部分を多くする方向で開発されている。中空糸膜のバースト値(耐圧性)は肉厚に比例し、内径に反比例するが、高透水性能を目指した空孔率の高い中空糸膜では、薄膜化に加えて、膜の構造が、スポンジ構造であったり、ボイド構造を持っていたりなど、従来の血液浄化膜より、より高い空孔率のため膜強度が低く、上記の関係からは耐圧強度を予測することが難しい。また、通常、血液浄化に用いるモジュールは、製品となる最終段階で、中空糸やモジュールの欠陥を確認するため、中空糸内部あるいは外部をエアーによって加圧するリークテストを行う。加圧エアーによってリークが検出されたときには、モジュールは不良品として、廃棄あるいは、欠陥を修復する作業がなされる。このリークテストのエアー圧力は血液透析器の保証耐圧(通常500mmHg)の数倍であることが多い。しかしながら、特に高い透水性を持つ中空糸型血液浄化膜の場合、通常の加圧リークテストで検出できない中空糸の微小な傷、つぶれ、裂け目などが、リークテスト後の製造工程(主に滅菌や梱包)、輸送工程、あるいは臨床現場での取り扱い(開梱や、プライミングなど)時に、中空糸の切断やピンホールの発生につながり、ひいては治療時に血液がリークするトラブルの元になっていることを本発明者らは見出した。上記事象に関して鋭意検討したところ、臨床使用時の中空糸の切断やピンホールの発生につながる潜在的な糸の欠陥は、通常の加圧エアーリークテストにおける圧力では検出することができず、より高い圧力が必要である。また、空孔率を上げる手段として、従来の血液浄化膜と比較して、ポリマー濃度を低くし、製膜溶液の粘度を下げることから、バースト圧は低下する。バースト圧は、高透水性能を目的とした低空孔率や薄膜化した中空糸膜において、中空糸膜の耐リーク性に顕著な影響を与えるパラメータとなることがわかった。すなわち、中空糸膜のバースト圧が、使用時の中空糸の切断やピンホールの発生と密接に関係することを見出し、本発明にいたった。
【0011】
本発明におけるバースト圧とは、中空糸をモジュールにしてからの中空糸膜の耐圧性能の指標で、中空糸内側を空気で加圧し、加圧圧力を徐々に上げたときの、中空糸が内部圧に耐えられずに破裂(バースト)する圧力である。バースト圧は高いほど使用時の中空糸膜の切断やピンホールの発生が少ないため、0.5MPa以上が好ましく、0.7MPa以上がさらに好ましく、1.0MPa以上が特に好ましい。バースト圧が0.5MPa未満のものでは、中空糸膜に膜厚のムラがあったり、ピンホールや裂け目がある可能性があり、通常のリークテストでは検出できないが血液透析治療の際に血液リークを起こす可能性がある。
【0012】
本発明における中空糸膜の透水性は150mL/m2/hr/mmHg以上が好ましい。
150mL/m2/hr/mmHg以下の場合、バースト圧0.5MPa以上とすることは容易であるが、本発明の目的とする高透水性を持っているとは言えず、β2ミクログロブリンの除去率を高めることが難しい場合がある。また本発明の中空糸膜の透水性は1500mL/m2/hr/mmHg以下が好ましい。透水性が1500mL/m2/hr/mmHgを超える場合、細孔径が大きくなりすぎ、身体にとって必要なアルブミン(分子量67000)のリーク量が増えることがある。透水性のより好ましい範囲は150 mL/m2/hr/mmHg以上1200 mL/m2/hr/mmHg以下、さらに好ましくは150 mL/m2/hr/mmHg以上1000 mL/m2/hr/mmHg以下である。
【0013】
本発明における中空糸膜の平均膜厚は10μm以上50μm以下が好ましい。50μmを超えると、透水性は高くても、中〜高分子量物質の透過性が低下することがある。膜厚は薄いほうが物質透過性が高まり、45μm以下がより好ましく、40μm以下が特に好ましいが、10μm未満では、膜強度が低くバースト圧を0.5MPa以上とすることが困難な場合がある。
【0014】
本発明における偏肉度とは、中空糸膜モジュール中の100本の中空糸膜断面を観察した際の膜厚の偏りのことであり、最大値と最小値の比で示す。本発明では100本の中空糸の最小の偏肉度は0.6以上であることを特徴とする。100本の中空糸に1本でも偏肉度0.6未満の中空糸が含まれると、その中空糸が臨床使用時のリーク原因となることがあるので、本発明の偏肉度は平均値でなく、100本の最小値を表す。偏肉度は高いほうが、膜の均一性が増し、バースト圧が向上するので、さらに好ましくは0.7以上である。0.6未満では、前記バースト圧が低くなり、血液リークの原因になることがある。
【0015】
本発明における破断強力とは、有効試料長10cmの中空糸膜の破断点強度を示す。破断強力は5g以上が好ましく、より好ましくは7g以上、さらに好ましくは9g以上である。破断強力が5g以下である場合は、中空糸膜の取り扱い性が悪いばかりでなく、モジュール化や臨床使用の際に中空糸が糸切れする可能性がある。
【0016】
本発明に用いる中空糸膜の素材しては、再生セルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体などが上げられるが、透水性が150mL/m2/hr/mmHg以上の中空糸を得ることが容易なセルロース系やポリスルホン系が好ましく、膜厚を薄くすることが容易なためセルロース系ではセルロースジアセテートやセルローストリアセテート、ポリスルホン系ではポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0017】
本発明は、血液浄化用中空糸膜に好適に使用でき、特に血液透析や血液透析濾過、血液濾過など、腎不全患者の治療に用いる中空糸膜として好適である。
【0018】
このような血液浄化器に用いる中空糸膜の製造方法としては、以下に示す条件が好ましい。高い透水性能を得るために、製膜溶液のポリマー濃度は通常よりも低く、20重量%以下、より好ましくは19重量%以下とする。紡糸溶液は紡糸溶液中の不溶成分やゲルを取り除く目的でノズル吐出直前にフィルターで処理することが好ましい。フィルターの孔径は小さい方がよく、具体的には中空糸膜の膜厚以下のものが好ましく、中空糸膜の膜厚の1/2以下がより好ましい。例えば、中空糸膜の膜厚が15μmの場合、フィルターの孔径は15μm以下が好ましく、7.5μm以下がより好ましい。フィルターがない場合やフィルターの孔径が中空糸膜の膜厚以上では、ノズルスリットの一部に詰まりを生じた場合、偏肉糸の発生をまねき、ひいてはバースト圧の低下の原因となる。さらに、フィルター無しもしくはフィルター孔径が中空糸膜厚以上であると、紡糸溶液の不溶成分やゲルなどの混入が原因で部分的なボイドが形成されることがある。高い空孔率を持つ中空糸膜における部分的なボイドは、膜の物理的強度を低下させることがある。紡糸原液の濾過は、吐出するまでの間に複数回実施してもよく、この場合は次第に目を細かくすることで、フィルターの寿命を延ばすことができるため好ましい。
また、本発明の中空糸膜を得るためには、製膜溶液の吐出口であるノズルのスリット幅を厳密に均一にすることが好ましい。中空糸膜の紡糸ノズルは、一般的に、紡糸原液を吐出する環状部と、その内側に中空形成剤となる芯液吐出孔を有するチュ−ブインオリフィス型ノズルが用いられるが、スリット幅とは、前記紡糸原液を吐出する環状部の幅を指す。このスリット幅のばらつきを小さくすることで、紡糸された中空糸膜の偏肉を減らすことができる。具体的にはスリット幅の最大値と最小値の比が1.00以上1.11以下とするとともに、最大値と最小値の差を10μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがより好ましい。スリット幅は、用いる紡糸原液の粘度や、得られる中空糸膜の膜厚、芯液の種類によって異なるが、ノズルスリット幅のばらつきが大きいと、偏肉をまねき、肉厚の薄い部分がリーク原因となるし、偏肉が顕著である場合には膜厚不均一が原因の物理的強度、特にバースト圧、破断強力が低下する傾向がある。
【0019】
このようにして得られた透水性150mL/m2/hr/mmHg以上の中空糸膜を用い、中空糸膜のバースト圧が0.5MPa以上、偏肉度が0.6以上である高透水性中空糸型血液浄化器を得ることができる。
【0020】
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
(破断強力の測定)
(1)乾燥中空糸膜の場合
有効試料長10cmの中空糸膜試験片をクロスヘッドを10cm/分で引張試験を行った際の破断点を測定する。測定には、東洋ボールドウイン製テンシロンUTMIIを用いた。中空糸は1本のモジュールから30本をランダムにサンプリングし測定し、最低値を評価結果とする。
(2)湿潤中空糸膜の場合
引張特性の測定はインストロンエンジニアリングコ−ポレ−ション社製インストロン(モデルNo.TM)で、37℃の水中で行った。チャック間距離は5cm、引張速度は5cm/分である。中空糸は1本のモジュールから30本をランダムにサンプリングし測定し、最低値を評価結果とする。
【0022】
(透水性の測定)
透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子により流れを止め全濾過とする。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃高温槽で保温した透析器へ純水を送り、透析液側から流出した濾液をメスシリンダーで測定する。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出する。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積と透析器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m2)である。
【0023】
(膜面積の計算)
透析器の膜面積は中空糸の内径基準として求める。
A=n×π×d×L
ここで、nは透析器内の中空糸本数、πは円周率、dは中空糸の内径、Lは透析器内の中空糸の有効長である。
【0024】
(バースト圧の測定)
約10000本の中空糸膜よりなるモジュールの透析液側を水で満たし栓をする。血液側から空気を送り込み1分間に0.5MPaの割合で加圧していく。圧力を上昇させ、中空糸膜が加圧空気によって破裂(バースト)し、透析液側に満たした液に気泡が発生した時の空気圧をバースト圧とする。
【0025】
(偏肉度の測定)
中空糸100本の断面を200倍の投影機で観察する。一視野中、最も膜厚差がある一本の糸断面について、最も厚い部分と最も薄い部分の厚さを測定する。
偏肉度=最薄部/最厚部
偏肉度=1で膜厚が完璧に均一となる。
【0026】
(血液リークテスト)
生理食塩水にてプライミング処理したモジュールに、クエン酸を添加して血液凝固を抑制した37℃の牛血液を、血液浄化器に200mL/minで送液し、20mL/minの割合で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。15分間後に血液浄化器のろ液を採取し、赤血球のリークに起因する赤色を観察する。この血液リーク試験を各実施例、比較例ともに30本の血液浄化器を用い、血液リークを起こしたモジュール本数を調べる。
【0027】
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)17重量%、N−メチルピロリドン(三菱化学社製)58重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)25重量%を170℃で均一溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を5μmのフィルターに通した後、120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤である流動パラフィンと同時に吐出し、エアギャップを通過後、35℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均80μmであり、最大82μm、最小78μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.05であった。水洗し溶媒を除去した後70重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライアーで乾燥し巻き上げた。得られた中空糸膜の内径は202.1μm、膜厚は14.9μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の試験結果を表1に示した。
【0028】
(比較例1)
実施例1と同様の製膜溶液を50μmのノズルフィルターに通した後、実施例1と同じ120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、35℃の水中で凝固させた。水洗し溶媒を除去した後70重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライアーで乾燥し巻き上げた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均40μmであり、最大42μm、最小38μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.11であった。得られた中空糸膜の内径は202.5μm、膜厚は14.7μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。ノズルスリット幅よりも孔径の大きなフィルターを用いたため、ノズルスリットに異物が詰まり製膜溶液の吐出に偏りが生じ、中空糸膜の偏肉度が低下したものと思われる。
【0029】
(比較例2)
実施例1と同様の製膜溶液を5μmのノズルフィルターに通した後、120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、35℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均80μmであり、最大90μm、最小70μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.29であった。水洗し溶媒を除去した後70%のグリセリン水溶液中を通過させドライアーで乾燥し巻き上げた。得られた中空糸膜の内径は201.6μm、膜厚は15.1μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。ノズルスリット幅の偏りの大きなノズルを用いたため、中空糸膜の偏肉度が低下したこと、最薄部膜厚7μmの中空糸膜が混入したためバースト圧が低下したものと思われる。
【0030】
(実施例2)
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、商品名スミカエクセル5200P)18重量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製商品名コリドンK−90)5重量%、ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学社製)74重量%、水3重量%を50℃で溶解し、減圧脱泡して製膜溶液を得た。製膜溶液を15μmのノズルフィルターに通した後、60℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として30%ジメチルアセトアミド(DMAc)水溶液を用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、60℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大61μm、最小59μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.03であった。水洗し溶媒を除去した後巻き上げ、乾燥した。得られた中空糸膜の内径は198.5μm、膜厚は28.5μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。
【0031】
(比較例3)
実施例2と同じ製膜溶液を40μmのノズルフィルターに通した後、60℃に加温した実施例2と同じチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として30%DMAc水溶液を用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、60℃の水中で凝固させた。水洗し溶媒を除去した後巻き上げ、乾燥した。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大64μm、最小57μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.12であった。得られた中空糸膜の内径は199.3μm、膜厚は28.7μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。ノズルスリット幅よりも孔径の大きなフィルターを用いたため、ノズルスリットに異物が詰まり製膜溶液の吐出に偏りが生じ、中空糸膜の偏肉度が低下したものと思われる。
【0032】
(比較例4)
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社製、スミカエクセル5200P)16重量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK−30)6重量%、ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学社製)76重量%、水2重量%を50℃で溶解し、減圧脱泡して製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を15μmのノズルフィルターに通した後、60℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として30%DMAc水溶液を用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、70℃の水中で凝固させた。使用したチューブインオリフィスノズルのノズルスリット幅は、平均60μmであり、最大66μm、最小54μm、スリット幅の最大値、最小値の比は1.22であった。水洗し溶媒を除去した後巻き上げ、乾燥した。得られた中空糸膜の内径は197.8μm、膜厚は29.2μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて、血液浄化器を組み立てた。この時、血液浄化器内の中空糸充填率は52〜55vol%となるようにケースのサイズを調整した。使用した血液浄化器は、モジュール組立後に、0.1MPaの圧力で加圧空気を充填し、10秒間の圧力降下が30mmAq以下のモジュールを試験に用いた。得られた血液浄化器の分析結果を表1に示した。中空糸膜の透水性が高い(すなわち空隙率が高い)こと、またノズルスリット幅の偏りの大きなノズルを用いたため、中空糸膜の偏肉度が低下し、バースト圧が低下したものと思われる。
【0033】
【表1】
中空糸膜のバースト圧と偏肉度を向上させることにより、高い透水性を持つ血液浄化器の血液リークが改善された。
【0034】
【発明の効果】
高透水性中空糸型血液浄化器において、中空糸膜のバースト圧と偏肉度をコントロールすることにより、血液リークの可能性の少ない安全な高透水性中空糸型血液浄化器を得ることが出来る。
Claims (4)
- 透水性が150mL/m2/hr/mmHg以上1500mL/m2/hr/mmHg以下で、平均膜厚が10μm以上50μm以下である中空糸膜を組み込んだ高透水性中空糸膜型血液浄化器において、バースト圧が0.5MPa以上であることを特徴とする高透水性中空糸膜型血液浄化器。
- 中空糸膜の偏肉度が0.6以上であることを特徴とする請求項1記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
- 中空糸膜の破断強力が5g以上である請求項1または2記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
- 中空糸膜が主としてポリスルホン系高分子またはセルロース系高分子からなる請求項1〜3いずれか記載の高透水性中空糸膜型血液浄化器。
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JP2003192270A JP2005021510A (ja) | 2003-07-04 | 2003-07-04 | 高透水性中空糸型血液浄化器 |
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