JP2005005637A - 円弧領域照明光学装置、およびそれを用いた投影露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】円弧MLAを用いた照明装置において干渉縞のピッチを細かくして、円弧領域の照明を高照度かつ照度むら少なく照明する。
【解決手段】MLAの素子レンズからの位相を変調して被照明面での干渉縞のピッチを細かくする。例えば、隣り合う素子レンズ間の位相差を0度,180度,0度,180度とすることによって、位相差が0度の素子レンズ間で発生する干渉縞の暗部に、位相差が180度の素子レンズ間で発生する干渉縞の明部を重ねることによって、全体としての被照明面での干渉縞のピッチを従来の半分にする。
【選択図】 図1
【解決手段】MLAの素子レンズからの位相を変調して被照明面での干渉縞のピッチを細かくする。例えば、隣り合う素子レンズ間の位相差を0度,180度,0度,180度とすることによって、位相差が0度の素子レンズ間で発生する干渉縞の暗部に、位相差が180度の素子レンズ間で発生する干渉縞の明部を重ねることによって、全体としての被照明面での干渉縞のピッチを従来の半分にする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を用いて円弧状の照明領域を照明する照明光学系と、マスクに描画されたパターンを感光剤の塗布された基板上に投影する投影光学系とを備える露光装置に関し、特に、半導体素子,液晶表示素子,撮像素子(CCD等)または薄膜磁気ヘッド等を製造するためのリソグラフィ工程中に使用される投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子製造工程のリソグラフィ工程において、投影露光装置が用いられる。リソグラフィ工程とは、半導体素子の回路パターンを半導体素子となる基板(シリコン基板等)上に投影転写する工程のことである、近年、半導体素子の微細化への要求はますます高くなっており、線幅は0.15μmを切るようになってきている。そのため投影露光装置に対する解像力向上の要求は高くなっている。
【0003】
投影露光装置の解像力を向上させるために、投影レンズの高NA化と、露光波長の短波長化が近年ますます加速している。露光波長の短波長化はKrFエキシマレーザーを光源とした248nmから、ArFエキシマレーザーを光源とした193nm、そしてF2レーザーを光源とした157nmへと進んでいる。
【0004】
光学系には色収差と呼ばれる光の波長によって硝材の屈折率が異なる事に起因する結像性能を悪化させる収差がある。このため、KrFエキシマレーザーを光源として用いた投影露光装置においては、単一の光を発光するように狭帯域化されたKrFエキシマレーザーが用いられている。また、ArFエキシマレーザーを光源として用いた投影露光装置においては、投影光学系に石英と蛍石(CaF2)の2硝材を用いて色消しが行われている。
【0005】
F2レーザーを光源として用いた投影露光装置においては、F2レーザーを狭帯域化しようとする試みはなされているが、いずれも投影露光装置の光源として満足できる出力を達成していない。そのため、現在投影露光装置の光源としては、F2レーザーの自然発光をラインセレクトしたものが利用されている。ラインセレクトされたF2レーザーの半値幅は1pm程度であり、投影露光装置に用いられる投影光学系は色収差の補正が必要となる。
【0006】
157nmを露光波長として用いた場合、光を透過する硝材は限られている。今日、157nmの波長に対して満足のいく透過率が得られることが分かっている硝材には、蛍石(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF)等があるが、投影露光装置の投影光学系に用いる事が可能である硝材の均一性と結晶の大口径化を達成できる硝材は蛍石(CaF2)のみである。そのため、ArFエキシマレーザーを光源とした投影露光装置のように2硝材による色消しを行うことができない。
【0007】
そのため、屈折レンズだけではなくミラーを用いたカタディオ系を用いて色消しを行う投影光学系が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ミラーを用いた投影光学系はミラーにおいて光を遮らないように光学系を構成する必要があり、結像領域は軸上から特定の高さの円弧領域となる。
【0008】
結像領域が円弧領域である投影光学系をもちいて、マスクに描画されたパターンを感光剤の塗布された基板上に投影する投影露光装置においては、マスクを円弧状に照明する照明光学装置が必要となる。従来技術における円弧領域を照明領域とする照明光学装置は、矩形形状を照明し、視野絞りで円弧領域を切り出すものであった。
【0009】
従来の円弧領域を結像領域とする投影光学系を用いた走査型投影露光装置に対する照明装置について、図2を用いて説明する。
【0010】
1は光源となるF2レーザーである。F2レーザーは波長157nmの波長の光を射出する。
【0011】
2は被照射面上の照度を制御するための減光手段である。F2レーザー等のパルス光源を走査型投影露光装置の露光光源として使用する場合、レーザーのパルス間の出力バラツキに起因する露光量バラツキが発生する。そのため露光を行うパルス数を所定のパルス数以上として、パルスバラツキをパルス平均する事によって、露光量バラツキを軽減する必要がある。そのため、感光剤の感度が高い場合。光を減光して照度を下げて、所定のパルス数以上で露光するようにする必要がある。2はそのための減光手段である。
【0012】
3はビーム揺動手段である。F2レーザーは可干渉性があるために、被照明面にスペックルが発生する。スペックルが発生すると被照明面での照度むらとなるために露光量バラツキとなり、マスクから基板に焼き付けた像の線幅が場所によって異なる(CD均一性が悪化する)という問題が発生する。そのため、ビームを揺動してスペックルの分布を揺動して露光中に時間平均することが行われている。ビームを揺動する方法としては、傾けた平行平板を回転させる方法、ミラーを揺動する方法。クサビプリズムを回転させる方法等がある。
【0013】
4はハエノメレンズであり、5はコンデンサレンズである。4の射出面に形成された2次光源で5のコンデンサレンズを用いて6のハエノメレンズ入射面をケーラー照明している。4のハエノメレンズはターレット上に置かれており、切り替えることによってハエノメレンズからの射出NAが変えられ、6のハエノメレンズ入射面での照射範囲がかえらえる用になっている。これは、9のリレーレンズの倍率を変えた際に10のハエノメレンズ射出面での光強度分布が集光しないようにするためである。
【0014】
6はハエノメレンズであり、7はコンデンサレンズである。6の射出面に形成された3次光源で7のコンデンサレンズを用いて8の有効光源形成絞りをケーラー照明している。4から7の2段ハエノメレンズの構成によって、レーザービームのプロファイルが変化しても8の有効光源形成絞りでの光の分布が変化せず、常に均一な有効光源が形成できるようになっている。たとえば、4,5の1段目のハエノメレンズがないとすると、レーザーからの位置分布が変化した際に6の入射面での光強度分布が変化するので、8の有効光源形成絞りでの光の角度分布が変化する。もし、光の角度分布が変化すると、後述する10のハエノメレンズ射出面での光強度分布がシフトする為に、17の基板上での角度分布が傾き、基板がデフォーカスすると転写パターンの転写位置が変化するという軸上テレセン度となる。よって、4から7の2段ハエノメレンズの構成としている。
【0015】
8は有効光源形成絞りである。有効光源とはレチクル面を照明する照明光源の形状のことである。有効光源の形状は通常、円形である。一方6のハエノメレンズとしては、ハエノメレンズの素子レンズの外形が四角形である四角ハエノメレンズや、素子レンズの外形が六角形である六角ハエノメレンズ、シリンドリカルレンズを素子レンズとして並べたシリンドリカルレンズアレイといったものが使われる。そのため8の有効光源形成絞りの光源側で形成される分布は、四角ハエノメレンズ、シリンドリカルレンズアレイの場合、正方形となり、六角ハエノメレンズの場合は六角形となる。よって、有効光源の形状を円形とするために、円形の開口をもった8の有効光源形成絞りが必要となる。
【0016】
9はズームリレーレンズであって、8の有効光源形成絞りで形成された円形の光強度分布を10のハエノメレンズ入射面に所定の倍率で投影している。レチクルを照明する照明光源の大きさはコヒーレンズファクタと呼ばれ、投影光学系のパフォーマンスをあげるために、転写するパターンに応じて可変にすることが望まれている。それを実現するために、9のリレー光学系の倍率を可変とすることによって、10のハエノメレンズ入射面での照射領域の大きさを変えられるようにしている。
【0017】
10はハエノメレンズであり11はコンデンサレンズである。11のハエノメレンズ射出面に形成される4次光源を用いて13のマスキングブレード上を均一な照度分布で照明する。
【0018】
12はスリットであって、被照明面の照明領域を制御するものである。10のハエノメレンズとしては、ハエノメレンズの素子レンズの外形が四角形である四角ハエノメレンズ、もしくはシリンドリカルレンズを素子レンズとして並べたシリンドリカルレンズアレイといったものが使われる。そのため12のスリットの位置は矩形形状で照明される。ところが、前述のように投影光学系の結像領域が円弧であるために、照明領域は円弧にする必要がある。そのために12のスリットは図3の円弧の開口を持ったものである。また走査投影露光装置においては、スリットの幅をスリットと垂直方向で変える事によって、スリットと垂直方向の露光量むらを補正する事が可能であるので、スリット幅を調整できるようにしておくことが望ましい。
【0019】
13は露光領域を制御するためのマスキングブレードである。所望の露光領域を得るために、走査露光にあわせて駆動される。
【0020】
14はマスキング結像レンズであり、13の光強度分布を15のレチクル面に投影する。
【0021】
15は回路パターンが描画されたレチクルである。157nmの波長に対しては、従来の石英基板のレチクルでは、十分な透過率が得られない。そのためFドープ石英や、蛍石等の157nmの波長に対して透過率の高い基板を用いる必要がある。
【0022】
16はカタディオ系の投影光学系であって、レンズとミラーによって色消しを行って、円弧の結像領域において、良好な結像性能を達成している。
【0023】
17は感光剤の塗布された基板である。15のレチクルの回路パターンが16の投影光学系によって投影される。 15のレチクルと17の感光剤の塗布された基板は、同期して走査露光され、投影光学系の結像領域よりも広い露光領域に露光される。
【0024】
18は17の基板が載せられたステージであって、前記露光時の走査と、ショットごとに行われるステップを行う。
【0025】
以上の従来技術によれば、円弧領域を照明するために、矩形照明領域がら12のスリットでの円弧切り出しを行っている。そのためスリットで光線が蹴られるために照明効率の低下が起こり、感光基板上において高い照度が得られない。感光基板上で高い照度が得られれば、露光時間の短縮化ができ、単位時間あたりの回路パターンの転写(スループット)を多くする事ができる。そのために感光基板上の高照度化を達成する事が求めらえている。
【0026】
高照度化の技術として、光ファイバを用いる方法や、ハエノメレンズの素子レンズの外形を円弧形状にした円弧ハエノメレンズを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0027】
光ファイバを用いる方法は、光ファイバによる均一化が良好でないという理由と、157nmの波長に対する光ファイバーができないという理由で実用は困難である。
【0028】
円弧ハエノメレンズを用いる方法も実用が困難である。素子レンズの加工は、ロッドレンズを加工後、外形を円弧状に削りだすために、非常にコストがかかり、加工の誤差も大きい。そのため、円弧ハエノメレンズはコストが高く、また素子レンズを積み重ねることによって加工誤差が積み上がり全体としての性能がでない。よって円弧ハエノメレンズを利用するという方法も実用が困難である。
【0029】
ところが近年、フォトリソグラフィーのエッチング技術を利用した、回折光学素子、マイクロレンズアレイ(MLA)の加工が可能になってきた。そこで、円弧ハエノメレンズをマイクロレンズアレイで製作して高照度化を達成する方法が検討されている。マイクロレンズアレイで製作した円弧ハエノメを以後円弧MLAと呼ぶ。図4に円弧MLAのR面から見た図とその断面を示す。円弧MLAはフォトリソグラフィーで製作するために、円弧ハエノメレンズの素子レンズに相当するR形状を数回の露光とエッチングで製作できる。よって比較的安価に製作する事が可能である。また、加工誤差も露光装置のアライメント誤差のみであるので少なく、また素子レンズを積み重ねるわけではないので、加工誤差が積みあがらず、性能の悪化もすくない。
【0030】
【特許文献1】
特開2001−228401号公報
【特許文献2】
特公平5−68846号公報
【特許文献3】
特開昭62−115718号公報
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにエッチングにより円弧MLAを製作する方法は、比較的安価に加工誤差の少ない円弧MLAの作成が出来るが、エッチングで作成しているために、深く掘れないという問題がある。エッチングによってレンズを形成は、レジストを基板上に塗布してグレーマスクを用いて露光を行いレジスト形状をレンズ形状として、その後エッチングによって、その形状を基板に写すことによって行われる。一般に用いられているノボラック系のレジストを用いると、通常半導体プロセスなどリソグラフィーで用いられるレジストの厚みは1μm以下の程度であり、エッチングにより基板に作製される形状もレジストの膜厚以下の構造となる。多少の解像力、すなわち鋭い形状の形成能力を妥協する必要があるが、半導体素子の実装に用いられるバンプ形成用のレジストには20μm程度のレジスト膜厚で用いるものがある。しかしこのバンプ用のレジストを用いたとしても形成できる形状の大きさがレジストの膜厚に依存していることには変わり無く、レンズサイズのうち、少なくとも高さ(サグ量)は数十μmが限度となる。つまり、基板を深く掘り込めないために、レンズのサグ量が取れず、結果として素子レンズの大きさが小さい円弧MLAしか作れないという制約がある。特に円弧MLAの場合、素子レンズの長手方向と短手方向での幅が異なる為、長手方向のサグ量で素子レンズの大きさが決まってしまい、短手方向の素子レンズのピッチは非常に細かくなってしまう。
【0032】
例えば、円弧領域の形状が、図3であって、そこでのNAが0.8で照明する照明装置を考える。円弧MLAの径をφ140とすると、ヘルムホルツ=ラグランジェの関係より、長手方向に、円弧MLAから射出するNAは21×0.8÷140=0.12が必要である。このときのコンデンサレンズの焦点距離fは(21÷2)÷0.12=87.5mmである。円弧MLAの素子レンズの曲率半径をR、長手方向の幅をX、円弧MLA基板の屈折率をNとすると、射出NAは(N−1)÷R×X÷2で求まる。一方サグ量は、中心と最軸外の距離をdとして、R−√(R2+d2)で求まる。dは最軸外までの距離であるが、長手方向と短手方向の差が大きい時には、d〜X÷2とできる。Nを1.5として、ほり込めるサグ量を10μmとすると、次の2つの方程式を解けば、素子レンズの曲率半径Rと、長手方向の幅Xが決まる。
【0033】
(1.5−1)÷R×X÷2=0.12
R−√(R2−(X÷2)2)=0.010
これより、素子レンズの曲率半径は0.342mm(342μm)、長手方向の幅は0.164mm(164μm)となる。短手方向の幅は、長手方向の幅の4÷21であるので、0.031mm(31μm)となる。
【0034】
ハエノメレンズとは素子レンズで波面分割をする光学素子である。そのため素子レンズが小さくなると、隣り合う素子レンズからの光が干渉をおこし、被照明面で干渉縞が発生する。
【0035】
光の干渉については、一般の物理の教科書にて回折格子の干渉として説明されている。回折格子の繰り返しパターンのピッチをp、露光波長をλ、コンデンサレンズの焦点距離をfとすると、被照明面での干渉縞のピッチは、fλ÷pとなる。よって、波長が短くなると干渉縞のピッチが短くなり、回折格子の繰り返しパターンのピッチが細かくなると、干渉縞のピッチが長くなる。これは、回折光としても理解できる。回折格子からの回折光が飛ぶ角度θは、p×sinθ=nλを満たす。回折光はコンデンサレンズによって、フーリエ変換されるため、角度分布が位置分布に変換される。よって、回折光の強めあう位置は、被照明面で、fnλ÷pとなり、fλ÷pピッチで強めあう縞ができる。(図8)
円弧MLAにおける干渉縞に関しても回折格子と同様にfλ÷pピッチで発生する。前述の長手方向21mm、短手方向4mmの円弧領域をNA0.80で照明する場合の円弧MLAについて当てはめると、焦点距離は87.5mm、短手方向のピッチは0.031mmであったので、157nmの波長に対しては、87.5×0.000157÷0.031=0.443mmピッチ、633nmの波長に対しては、1.79mmピッチの干渉縞が発生する事になる。短手方向の長さは4mmであるために、157nmでは短手方向には9本の干渉縞が、633nmでは2.2本の干渉縞が入る計算となる。そのため、被照明領域の照度分布はもはや連続的な分布とはならず、均一な分布ではなくなってしまう。
【0036】
図6に円弧MLAに光を入射した際の被照明面での照度分布をシミュレーションしたものを示す。干渉縞のピッチが見やすいように波長は633nmとしている。実際の157nmの波長においては波長分干渉縞のピッチが細かくなる。なお、コンデンサレンズには無収差の理想レンズを用いたので、実際の照明系においては収差によるボケが発生するため、干渉縞のコントラストは低下する。被照射面での照度分布はMLAの素子レンズの幾何光学的な照明領域内を、素子レンズの大きさから決まるピッチの干渉縞が埋める照度分布となる。y方向を円弧の動径方向とすると、x方向とy方向で素子レンズの大きさは異なるため、y方向のピッチはx方向のピッチに比べて大きいことがわかる。干渉縞は被照明面での照度むらとなり基板へのパターンの転写不良となる。x方向に干渉縞が存在すると、干渉縞の暗部では走査露光後の感光基板上で露光量が不足してしまう。y方向に干渉縞が存在すると、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが発生してしまう。
【0037】
そのため、エッチングで製作した円弧MLAを用いると、高照度化は達成できるものの、干渉縞に起因する露光量のバラツキが発生してしまうという問題があった。露光量のバラツキを緩和するためには干渉縞のピッチを細かくする必要がある。しかし、前述のようにエッチングによって掘り込めるサグ量が取れないために、素子レンズのピッチを大きくして干渉縞の周期を大きくする事ができない。そのため、円弧MLAを用いた投影露光装置の実用化がなされていなかった。
【0038】
本発明は、エッチングで製作した円弧MLAでありながら、干渉縞のピッチを細かくすることを課題とし、さらには、それを投影露光装置に用いて、高照度化を達成しながら、露光量のバラツキを小さくした投影露光装置を提供することを課題とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円弧MLAの素子レンズから射出される光の位相状態を制御する事によって、干渉縞の本数を増やして課題を解決する。
【0040】
前述の回折格子において隣り合う開口で位相差をつけると回折光の飛ぶ方向が変化する。例えば隣り合う開口からの光に、位相差が180度つくようにすると、位相差をつけなかった時の暗部が明部となり、明部が暗部となり、白黒反転した干渉縞となる。
【0041】
本発明はこれを利用したものであって、円弧MLAの素子レンズから射出する光に位相差をつけて、素子レンズ間の干渉縞のできる位置をずらして、全体として被照明面での干渉縞のピッチを細かくするものである。
【0042】
例えば、2つおきに位相差が180度つくようにして、隣り合う素子レンズ間の光の位相差が、0度,180度,0度,180度,0度…とつくようにするとする。位相差が0度である素子レンズ間の干渉縞の明部に、位相差が180度である素子レンズ間の干渉縞の暗部が存在し、位相差が0度である素子レンズ間の干渉縞の暗部に、位相差が180度である素子レンズ間の干渉縞の明部が存在するようになる。そのため見かけ上、干渉縞のピッチは、従来の円弧MLAに比べて半分となる。前述の図6と同じシミュレーション条件で、2つおきに位相差を180度つくようにした円弧MLAを用いた場合の、被照明面での照度分布を図7に示す。図6と図7を見比べると明らかなように、図7は干渉縞のピッチが半分になっている。
【0043】
本発明は、以上のように微小な素子レンズからなる光学素子において、位相つけて干渉縞のピッチを細かくするものであって、円弧MLAのみならず、屈折、もしくは回折によってパワーを持った微小な素子レンズが繰り返し配置された光学素子において有効である。例えば、矩形のマイクロレンズアレイであっても、干渉縞のピッチを細かくする事ができ、被照明面での照度むらを緩和する事が可能である。また、位相差の付け方は上述の2つおきに180度の位相差をつける方法のみならず、光学素子の右半分と左半分で、隣り合う光学素子の位相差を変えて、右半分を0度、左半分を180度とすれば、上述の2つおきに180度の位相差をつけたものと同様の効果を得ることができる。またさらには、素子レンズ間の位相差を0度と180度のみならず、隣り合う素子レンズからの光の位相差を0度から360度までの間でランダムにすることによって、干渉縞のピッチを無限小にまで細かくする事が可能である。
【0044】
隣り合う素子レンズからの光に位相差をつける方法としては、素子レンズの基板を掘り込んで隣り合う素子に光路長差をつける方法。素子レンズに屈折率の異なるシフターをつけて隣り合う素子に光路長差をつける方法などが考えられる。たとえば、素子レンズの基板を掘り込む方法の場合。基板の屈折率をN、掘り込み量をdとして、掘り込まなかった部分と掘り込んだ部分の位相差は(d÷(λ÷N)−d÷λ)×360度=(N−1)×d÷λ×360度となる。位相差を180度つけようとすると、N=1.5,λ=157nmとすると、d=157nmとなる。つまり、157nm基板を掘り込めばよい。基板の掘り込みは、屈折、もしくは回折によってパワーを持った面に行う方が、素子レンズとの位置合わせが容易であるため好適であるが、パワーをもたない面に行っても構わない。また、掘り込み量は波長程度と微小であるので、光学素子の光学性能への影響は殆どない。
【0045】
素子レンズからの光の位相を変調して、干渉縞のピッチを変えたMLAを位相変調MLAと以後呼ぶ事とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
図1を用いて本発明の第1の実施例を示す。従来例と異なるのは10のハエノメレンズの代わりに、19の位相変調円弧MLAを使用したインテグレータを用いたことである。19のインテグレータはフィールドタイプのインテグレータとするために、図9に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図9では、射出側のMLAのみに段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、0度,180度,0度,180度の位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0047】
図5は位相変調円弧MLAをR面から見た図と、断面の形状である。R面から見た図で、斜線が引いてあるところが掘り込まれているところであって、斜線が引いてあるところと、引いてないところで位相差がつけられている。180度の位相差をつけるために付けられている段差は、基板の屈折率をN、波長をλとすると、kを整数として
λ÷(2×(N−1))+k×λ÷(N−1)
である。よってN=1.5として157nmで使用する円弧MLAの場合には、157nmもしくは471nm、もしくは942nmの157nmの奇数倍の深さの段差をつける。
【0048】
x方向,y方向とも干渉縞のピッチが半分になるように、市松状に掘り込んで位相差をつけるのが好適である。なお、条件によっては素子レンズ間の位相差が0度と180度のもの比が1:1以外のときが好適な場合もある。たとえば、2:1の場合は、0度,0度,180度,0度,180度,0度,0度となるように、3つおきに段差を変えるようにすればよい。
【0049】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり、位相変調円弧MLAの加工方法の実施例を図10に示す。通常のMLAを製作後、レジストを塗布する。その後、露光と現像を行い、掘り込みたくない部分にレジストが残るようにする。その後エッチングを行い、レンズを掘り込み、位相差がつくようにする。
【0050】
第1の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が、18本となり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0051】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0052】
本発明の第2の実施例は第1の実施例では180度つけていた位相変調円弧MLAの位相差を120度にしたものである。位相変調円弧MLAを用いたインテグレータの形状としては第1の実施例と同じく図9に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図9では、射出側のMLAのみに段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、0度,120度,0度,−120度の位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0053】
位相差が120度ついた素子レンズ間で発生する干渉縞は、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞に対して、fλ÷p×(120÷360)だけずれた場所に同じピッチの干渉縞を発生する。つまり、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞のピッチの3分の1ずれた場所に干渉縞を発生する。一方位相差が−120度ついた素子レンズ間で発生する干渉縞は、120度ついた素子レンズ間が発生する干渉縞と反対方向に、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞のピッチの3分の1ずれた場所に干渉縞を発生する。よって、位相変調円弧MLA全体としては、これら3種類の干渉縞が重なり合った干渉縞を発生し、被照明面での干渉縞のピッチは、位相差をつけなかったときに比べて3分の1となる。
【0054】
位相変調円弧MLAの形状も第1の実施例と同じく図5となるが、段差の量が第1の実施例と異なる。120度の位相差をつけるために付けられている段差は、基板の屈折率をN、波長をλとすると、kを整数として
λ÷(3×(N−1))+k×λ÷(N−1)
である。よってN=1.5として157nmで使用する円弧MLAの場合には、104.7nmもしくは418.7nm、もしくは732.7nmの段差をつける。
【0055】
x方向,y方向ともピッチが3分の1になるように、市松状に掘り込んで位相差をつけるのが好適である。なお、条件によっては素子レンズ間の位相差が0度と180度のもの比が1:1以外のときが好適な場合もある。たとえば、2:1の場合は、0度,0度,120度,0度,120度,0度,0度となるように、3つおきに段差を変えるようにすればよい。
【0056】
第2の実施例を用いた際の633nmの光に対する被照明面での照度分布のシミュレーション結果を図10にしめす。位相差をつけない場合に比べて干渉縞のピッチが細かくなり、被照明領域の照度均一性が高まっている。
【0057】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり。
【0058】
位相変調円弧MLAの加工方法の実施例を図10に示す。通常のMLAを製作後、レジストを塗布する。その後、露光と現像を行い、掘り込みたくない部分にレジストが残るようにする。その後エッチングを行い、レンズを掘り込み、位相差がつくようにする。
【0059】
第2の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が27本となり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0060】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0061】
本発明の第3の実施例は第1の実施例では180度つけていた位相変調円弧MLAの位相差を0から360度の間でランダムにしたものである。位相変調円弧MLAを用いたインテグレータの形状としては図13に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図13では、射出側のMLAの各素子レンズにランダムな段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、ランダム位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0062】
ランダムな位相差をつけたことにより、隣り合う素子レンズによって発生する干渉縞は、それぞれのペアによって異なる位置に発生する。第3の実施例を用いた際の633nmの光に対する被照明面での照度分布のシミュレーション結果を図12にしめす。位相差をつけない場合に比べて干渉縞のピッチが細かくなり、被照明領域の照度均一性が高まっている。
【0063】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり。
【0064】
位相変調円弧MLAの加工は第1,第2の実施例と同様にエッチングによって段差をつけるが、つける段差ごとにマスクを交換しなくてはいけないために、完全にランダムな無限数の段差をつけることは難しいので、2段階,4段階,8段階の2の累乗の段数をつけることが実際的である。よって実際には2の累乗の段差を基板ないでランダムに各素子レンズに与える。
【0065】
第3の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が多くなり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0066】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0067】
なお、本明細書では、位相差が180度,120度、ランダムの場合についての実施例を述べたが、光学系の構成方法よっては、それ以外の位相差をつけたほうが効果がえらえる場合もある。
【0068】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、円弧領域を被照明面とする投影露光装置にたいして、高照度化を達成しながら、露光量のバラツキを小さくした投影露光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の位相変調MLAを用いた投影露光装置の実施例を示す。
【図2】従来技術による投影露光装置を示す。
【図3】スリットの説明図。
【図4】円弧MLAの説明図。
【図5】位相変調MLAの説明図。
【図6】円弧MLAを用いた場合の照射面での干渉縞(シミュレーション)。
【図7】位相変調MLAを用いた場合の照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図8】回折格子における干渉縞の説明。
【図9】位相変調MLAを用いたインテグレータ。
【図10】位相変調MLAの加工方法についての説明。
【図11】第2の実施例での照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図12】第3の実施例での照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図13】第3の実施例におけるインテグレータ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光を用いて円弧状の照明領域を照明する照明光学系と、マスクに描画されたパターンを感光剤の塗布された基板上に投影する投影光学系とを備える露光装置に関し、特に、半導体素子,液晶表示素子,撮像素子(CCD等)または薄膜磁気ヘッド等を製造するためのリソグラフィ工程中に使用される投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子製造工程のリソグラフィ工程において、投影露光装置が用いられる。リソグラフィ工程とは、半導体素子の回路パターンを半導体素子となる基板(シリコン基板等)上に投影転写する工程のことである、近年、半導体素子の微細化への要求はますます高くなっており、線幅は0.15μmを切るようになってきている。そのため投影露光装置に対する解像力向上の要求は高くなっている。
【0003】
投影露光装置の解像力を向上させるために、投影レンズの高NA化と、露光波長の短波長化が近年ますます加速している。露光波長の短波長化はKrFエキシマレーザーを光源とした248nmから、ArFエキシマレーザーを光源とした193nm、そしてF2レーザーを光源とした157nmへと進んでいる。
【0004】
光学系には色収差と呼ばれる光の波長によって硝材の屈折率が異なる事に起因する結像性能を悪化させる収差がある。このため、KrFエキシマレーザーを光源として用いた投影露光装置においては、単一の光を発光するように狭帯域化されたKrFエキシマレーザーが用いられている。また、ArFエキシマレーザーを光源として用いた投影露光装置においては、投影光学系に石英と蛍石(CaF2)の2硝材を用いて色消しが行われている。
【0005】
F2レーザーを光源として用いた投影露光装置においては、F2レーザーを狭帯域化しようとする試みはなされているが、いずれも投影露光装置の光源として満足できる出力を達成していない。そのため、現在投影露光装置の光源としては、F2レーザーの自然発光をラインセレクトしたものが利用されている。ラインセレクトされたF2レーザーの半値幅は1pm程度であり、投影露光装置に用いられる投影光学系は色収差の補正が必要となる。
【0006】
157nmを露光波長として用いた場合、光を透過する硝材は限られている。今日、157nmの波長に対して満足のいく透過率が得られることが分かっている硝材には、蛍石(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化リチウム(LiF)等があるが、投影露光装置の投影光学系に用いる事が可能である硝材の均一性と結晶の大口径化を達成できる硝材は蛍石(CaF2)のみである。そのため、ArFエキシマレーザーを光源とした投影露光装置のように2硝材による色消しを行うことができない。
【0007】
そのため、屈折レンズだけではなくミラーを用いたカタディオ系を用いて色消しを行う投影光学系が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ミラーを用いた投影光学系はミラーにおいて光を遮らないように光学系を構成する必要があり、結像領域は軸上から特定の高さの円弧領域となる。
【0008】
結像領域が円弧領域である投影光学系をもちいて、マスクに描画されたパターンを感光剤の塗布された基板上に投影する投影露光装置においては、マスクを円弧状に照明する照明光学装置が必要となる。従来技術における円弧領域を照明領域とする照明光学装置は、矩形形状を照明し、視野絞りで円弧領域を切り出すものであった。
【0009】
従来の円弧領域を結像領域とする投影光学系を用いた走査型投影露光装置に対する照明装置について、図2を用いて説明する。
【0010】
1は光源となるF2レーザーである。F2レーザーは波長157nmの波長の光を射出する。
【0011】
2は被照射面上の照度を制御するための減光手段である。F2レーザー等のパルス光源を走査型投影露光装置の露光光源として使用する場合、レーザーのパルス間の出力バラツキに起因する露光量バラツキが発生する。そのため露光を行うパルス数を所定のパルス数以上として、パルスバラツキをパルス平均する事によって、露光量バラツキを軽減する必要がある。そのため、感光剤の感度が高い場合。光を減光して照度を下げて、所定のパルス数以上で露光するようにする必要がある。2はそのための減光手段である。
【0012】
3はビーム揺動手段である。F2レーザーは可干渉性があるために、被照明面にスペックルが発生する。スペックルが発生すると被照明面での照度むらとなるために露光量バラツキとなり、マスクから基板に焼き付けた像の線幅が場所によって異なる(CD均一性が悪化する)という問題が発生する。そのため、ビームを揺動してスペックルの分布を揺動して露光中に時間平均することが行われている。ビームを揺動する方法としては、傾けた平行平板を回転させる方法、ミラーを揺動する方法。クサビプリズムを回転させる方法等がある。
【0013】
4はハエノメレンズであり、5はコンデンサレンズである。4の射出面に形成された2次光源で5のコンデンサレンズを用いて6のハエノメレンズ入射面をケーラー照明している。4のハエノメレンズはターレット上に置かれており、切り替えることによってハエノメレンズからの射出NAが変えられ、6のハエノメレンズ入射面での照射範囲がかえらえる用になっている。これは、9のリレーレンズの倍率を変えた際に10のハエノメレンズ射出面での光強度分布が集光しないようにするためである。
【0014】
6はハエノメレンズであり、7はコンデンサレンズである。6の射出面に形成された3次光源で7のコンデンサレンズを用いて8の有効光源形成絞りをケーラー照明している。4から7の2段ハエノメレンズの構成によって、レーザービームのプロファイルが変化しても8の有効光源形成絞りでの光の分布が変化せず、常に均一な有効光源が形成できるようになっている。たとえば、4,5の1段目のハエノメレンズがないとすると、レーザーからの位置分布が変化した際に6の入射面での光強度分布が変化するので、8の有効光源形成絞りでの光の角度分布が変化する。もし、光の角度分布が変化すると、後述する10のハエノメレンズ射出面での光強度分布がシフトする為に、17の基板上での角度分布が傾き、基板がデフォーカスすると転写パターンの転写位置が変化するという軸上テレセン度となる。よって、4から7の2段ハエノメレンズの構成としている。
【0015】
8は有効光源形成絞りである。有効光源とはレチクル面を照明する照明光源の形状のことである。有効光源の形状は通常、円形である。一方6のハエノメレンズとしては、ハエノメレンズの素子レンズの外形が四角形である四角ハエノメレンズや、素子レンズの外形が六角形である六角ハエノメレンズ、シリンドリカルレンズを素子レンズとして並べたシリンドリカルレンズアレイといったものが使われる。そのため8の有効光源形成絞りの光源側で形成される分布は、四角ハエノメレンズ、シリンドリカルレンズアレイの場合、正方形となり、六角ハエノメレンズの場合は六角形となる。よって、有効光源の形状を円形とするために、円形の開口をもった8の有効光源形成絞りが必要となる。
【0016】
9はズームリレーレンズであって、8の有効光源形成絞りで形成された円形の光強度分布を10のハエノメレンズ入射面に所定の倍率で投影している。レチクルを照明する照明光源の大きさはコヒーレンズファクタと呼ばれ、投影光学系のパフォーマンスをあげるために、転写するパターンに応じて可変にすることが望まれている。それを実現するために、9のリレー光学系の倍率を可変とすることによって、10のハエノメレンズ入射面での照射領域の大きさを変えられるようにしている。
【0017】
10はハエノメレンズであり11はコンデンサレンズである。11のハエノメレンズ射出面に形成される4次光源を用いて13のマスキングブレード上を均一な照度分布で照明する。
【0018】
12はスリットであって、被照明面の照明領域を制御するものである。10のハエノメレンズとしては、ハエノメレンズの素子レンズの外形が四角形である四角ハエノメレンズ、もしくはシリンドリカルレンズを素子レンズとして並べたシリンドリカルレンズアレイといったものが使われる。そのため12のスリットの位置は矩形形状で照明される。ところが、前述のように投影光学系の結像領域が円弧であるために、照明領域は円弧にする必要がある。そのために12のスリットは図3の円弧の開口を持ったものである。また走査投影露光装置においては、スリットの幅をスリットと垂直方向で変える事によって、スリットと垂直方向の露光量むらを補正する事が可能であるので、スリット幅を調整できるようにしておくことが望ましい。
【0019】
13は露光領域を制御するためのマスキングブレードである。所望の露光領域を得るために、走査露光にあわせて駆動される。
【0020】
14はマスキング結像レンズであり、13の光強度分布を15のレチクル面に投影する。
【0021】
15は回路パターンが描画されたレチクルである。157nmの波長に対しては、従来の石英基板のレチクルでは、十分な透過率が得られない。そのためFドープ石英や、蛍石等の157nmの波長に対して透過率の高い基板を用いる必要がある。
【0022】
16はカタディオ系の投影光学系であって、レンズとミラーによって色消しを行って、円弧の結像領域において、良好な結像性能を達成している。
【0023】
17は感光剤の塗布された基板である。15のレチクルの回路パターンが16の投影光学系によって投影される。 15のレチクルと17の感光剤の塗布された基板は、同期して走査露光され、投影光学系の結像領域よりも広い露光領域に露光される。
【0024】
18は17の基板が載せられたステージであって、前記露光時の走査と、ショットごとに行われるステップを行う。
【0025】
以上の従来技術によれば、円弧領域を照明するために、矩形照明領域がら12のスリットでの円弧切り出しを行っている。そのためスリットで光線が蹴られるために照明効率の低下が起こり、感光基板上において高い照度が得られない。感光基板上で高い照度が得られれば、露光時間の短縮化ができ、単位時間あたりの回路パターンの転写(スループット)を多くする事ができる。そのために感光基板上の高照度化を達成する事が求めらえている。
【0026】
高照度化の技術として、光ファイバを用いる方法や、ハエノメレンズの素子レンズの外形を円弧形状にした円弧ハエノメレンズを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0027】
光ファイバを用いる方法は、光ファイバによる均一化が良好でないという理由と、157nmの波長に対する光ファイバーができないという理由で実用は困難である。
【0028】
円弧ハエノメレンズを用いる方法も実用が困難である。素子レンズの加工は、ロッドレンズを加工後、外形を円弧状に削りだすために、非常にコストがかかり、加工の誤差も大きい。そのため、円弧ハエノメレンズはコストが高く、また素子レンズを積み重ねることによって加工誤差が積み上がり全体としての性能がでない。よって円弧ハエノメレンズを利用するという方法も実用が困難である。
【0029】
ところが近年、フォトリソグラフィーのエッチング技術を利用した、回折光学素子、マイクロレンズアレイ(MLA)の加工が可能になってきた。そこで、円弧ハエノメレンズをマイクロレンズアレイで製作して高照度化を達成する方法が検討されている。マイクロレンズアレイで製作した円弧ハエノメを以後円弧MLAと呼ぶ。図4に円弧MLAのR面から見た図とその断面を示す。円弧MLAはフォトリソグラフィーで製作するために、円弧ハエノメレンズの素子レンズに相当するR形状を数回の露光とエッチングで製作できる。よって比較的安価に製作する事が可能である。また、加工誤差も露光装置のアライメント誤差のみであるので少なく、また素子レンズを積み重ねるわけではないので、加工誤差が積みあがらず、性能の悪化もすくない。
【0030】
【特許文献1】
特開2001−228401号公報
【特許文献2】
特公平5−68846号公報
【特許文献3】
特開昭62−115718号公報
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにエッチングにより円弧MLAを製作する方法は、比較的安価に加工誤差の少ない円弧MLAの作成が出来るが、エッチングで作成しているために、深く掘れないという問題がある。エッチングによってレンズを形成は、レジストを基板上に塗布してグレーマスクを用いて露光を行いレジスト形状をレンズ形状として、その後エッチングによって、その形状を基板に写すことによって行われる。一般に用いられているノボラック系のレジストを用いると、通常半導体プロセスなどリソグラフィーで用いられるレジストの厚みは1μm以下の程度であり、エッチングにより基板に作製される形状もレジストの膜厚以下の構造となる。多少の解像力、すなわち鋭い形状の形成能力を妥協する必要があるが、半導体素子の実装に用いられるバンプ形成用のレジストには20μm程度のレジスト膜厚で用いるものがある。しかしこのバンプ用のレジストを用いたとしても形成できる形状の大きさがレジストの膜厚に依存していることには変わり無く、レンズサイズのうち、少なくとも高さ(サグ量)は数十μmが限度となる。つまり、基板を深く掘り込めないために、レンズのサグ量が取れず、結果として素子レンズの大きさが小さい円弧MLAしか作れないという制約がある。特に円弧MLAの場合、素子レンズの長手方向と短手方向での幅が異なる為、長手方向のサグ量で素子レンズの大きさが決まってしまい、短手方向の素子レンズのピッチは非常に細かくなってしまう。
【0032】
例えば、円弧領域の形状が、図3であって、そこでのNAが0.8で照明する照明装置を考える。円弧MLAの径をφ140とすると、ヘルムホルツ=ラグランジェの関係より、長手方向に、円弧MLAから射出するNAは21×0.8÷140=0.12が必要である。このときのコンデンサレンズの焦点距離fは(21÷2)÷0.12=87.5mmである。円弧MLAの素子レンズの曲率半径をR、長手方向の幅をX、円弧MLA基板の屈折率をNとすると、射出NAは(N−1)÷R×X÷2で求まる。一方サグ量は、中心と最軸外の距離をdとして、R−√(R2+d2)で求まる。dは最軸外までの距離であるが、長手方向と短手方向の差が大きい時には、d〜X÷2とできる。Nを1.5として、ほり込めるサグ量を10μmとすると、次の2つの方程式を解けば、素子レンズの曲率半径Rと、長手方向の幅Xが決まる。
【0033】
(1.5−1)÷R×X÷2=0.12
R−√(R2−(X÷2)2)=0.010
これより、素子レンズの曲率半径は0.342mm(342μm)、長手方向の幅は0.164mm(164μm)となる。短手方向の幅は、長手方向の幅の4÷21であるので、0.031mm(31μm)となる。
【0034】
ハエノメレンズとは素子レンズで波面分割をする光学素子である。そのため素子レンズが小さくなると、隣り合う素子レンズからの光が干渉をおこし、被照明面で干渉縞が発生する。
【0035】
光の干渉については、一般の物理の教科書にて回折格子の干渉として説明されている。回折格子の繰り返しパターンのピッチをp、露光波長をλ、コンデンサレンズの焦点距離をfとすると、被照明面での干渉縞のピッチは、fλ÷pとなる。よって、波長が短くなると干渉縞のピッチが短くなり、回折格子の繰り返しパターンのピッチが細かくなると、干渉縞のピッチが長くなる。これは、回折光としても理解できる。回折格子からの回折光が飛ぶ角度θは、p×sinθ=nλを満たす。回折光はコンデンサレンズによって、フーリエ変換されるため、角度分布が位置分布に変換される。よって、回折光の強めあう位置は、被照明面で、fnλ÷pとなり、fλ÷pピッチで強めあう縞ができる。(図8)
円弧MLAにおける干渉縞に関しても回折格子と同様にfλ÷pピッチで発生する。前述の長手方向21mm、短手方向4mmの円弧領域をNA0.80で照明する場合の円弧MLAについて当てはめると、焦点距離は87.5mm、短手方向のピッチは0.031mmであったので、157nmの波長に対しては、87.5×0.000157÷0.031=0.443mmピッチ、633nmの波長に対しては、1.79mmピッチの干渉縞が発生する事になる。短手方向の長さは4mmであるために、157nmでは短手方向には9本の干渉縞が、633nmでは2.2本の干渉縞が入る計算となる。そのため、被照明領域の照度分布はもはや連続的な分布とはならず、均一な分布ではなくなってしまう。
【0036】
図6に円弧MLAに光を入射した際の被照明面での照度分布をシミュレーションしたものを示す。干渉縞のピッチが見やすいように波長は633nmとしている。実際の157nmの波長においては波長分干渉縞のピッチが細かくなる。なお、コンデンサレンズには無収差の理想レンズを用いたので、実際の照明系においては収差によるボケが発生するため、干渉縞のコントラストは低下する。被照射面での照度分布はMLAの素子レンズの幾何光学的な照明領域内を、素子レンズの大きさから決まるピッチの干渉縞が埋める照度分布となる。y方向を円弧の動径方向とすると、x方向とy方向で素子レンズの大きさは異なるため、y方向のピッチはx方向のピッチに比べて大きいことがわかる。干渉縞は被照明面での照度むらとなり基板へのパターンの転写不良となる。x方向に干渉縞が存在すると、干渉縞の暗部では走査露光後の感光基板上で露光量が不足してしまう。y方向に干渉縞が存在すると、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが発生してしまう。
【0037】
そのため、エッチングで製作した円弧MLAを用いると、高照度化は達成できるものの、干渉縞に起因する露光量のバラツキが発生してしまうという問題があった。露光量のバラツキを緩和するためには干渉縞のピッチを細かくする必要がある。しかし、前述のようにエッチングによって掘り込めるサグ量が取れないために、素子レンズのピッチを大きくして干渉縞の周期を大きくする事ができない。そのため、円弧MLAを用いた投影露光装置の実用化がなされていなかった。
【0038】
本発明は、エッチングで製作した円弧MLAでありながら、干渉縞のピッチを細かくすることを課題とし、さらには、それを投影露光装置に用いて、高照度化を達成しながら、露光量のバラツキを小さくした投影露光装置を提供することを課題とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】
本発明は、円弧MLAの素子レンズから射出される光の位相状態を制御する事によって、干渉縞の本数を増やして課題を解決する。
【0040】
前述の回折格子において隣り合う開口で位相差をつけると回折光の飛ぶ方向が変化する。例えば隣り合う開口からの光に、位相差が180度つくようにすると、位相差をつけなかった時の暗部が明部となり、明部が暗部となり、白黒反転した干渉縞となる。
【0041】
本発明はこれを利用したものであって、円弧MLAの素子レンズから射出する光に位相差をつけて、素子レンズ間の干渉縞のできる位置をずらして、全体として被照明面での干渉縞のピッチを細かくするものである。
【0042】
例えば、2つおきに位相差が180度つくようにして、隣り合う素子レンズ間の光の位相差が、0度,180度,0度,180度,0度…とつくようにするとする。位相差が0度である素子レンズ間の干渉縞の明部に、位相差が180度である素子レンズ間の干渉縞の暗部が存在し、位相差が0度である素子レンズ間の干渉縞の暗部に、位相差が180度である素子レンズ間の干渉縞の明部が存在するようになる。そのため見かけ上、干渉縞のピッチは、従来の円弧MLAに比べて半分となる。前述の図6と同じシミュレーション条件で、2つおきに位相差を180度つくようにした円弧MLAを用いた場合の、被照明面での照度分布を図7に示す。図6と図7を見比べると明らかなように、図7は干渉縞のピッチが半分になっている。
【0043】
本発明は、以上のように微小な素子レンズからなる光学素子において、位相つけて干渉縞のピッチを細かくするものであって、円弧MLAのみならず、屈折、もしくは回折によってパワーを持った微小な素子レンズが繰り返し配置された光学素子において有効である。例えば、矩形のマイクロレンズアレイであっても、干渉縞のピッチを細かくする事ができ、被照明面での照度むらを緩和する事が可能である。また、位相差の付け方は上述の2つおきに180度の位相差をつける方法のみならず、光学素子の右半分と左半分で、隣り合う光学素子の位相差を変えて、右半分を0度、左半分を180度とすれば、上述の2つおきに180度の位相差をつけたものと同様の効果を得ることができる。またさらには、素子レンズ間の位相差を0度と180度のみならず、隣り合う素子レンズからの光の位相差を0度から360度までの間でランダムにすることによって、干渉縞のピッチを無限小にまで細かくする事が可能である。
【0044】
隣り合う素子レンズからの光に位相差をつける方法としては、素子レンズの基板を掘り込んで隣り合う素子に光路長差をつける方法。素子レンズに屈折率の異なるシフターをつけて隣り合う素子に光路長差をつける方法などが考えられる。たとえば、素子レンズの基板を掘り込む方法の場合。基板の屈折率をN、掘り込み量をdとして、掘り込まなかった部分と掘り込んだ部分の位相差は(d÷(λ÷N)−d÷λ)×360度=(N−1)×d÷λ×360度となる。位相差を180度つけようとすると、N=1.5,λ=157nmとすると、d=157nmとなる。つまり、157nm基板を掘り込めばよい。基板の掘り込みは、屈折、もしくは回折によってパワーを持った面に行う方が、素子レンズとの位置合わせが容易であるため好適であるが、パワーをもたない面に行っても構わない。また、掘り込み量は波長程度と微小であるので、光学素子の光学性能への影響は殆どない。
【0045】
素子レンズからの光の位相を変調して、干渉縞のピッチを変えたMLAを位相変調MLAと以後呼ぶ事とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
図1を用いて本発明の第1の実施例を示す。従来例と異なるのは10のハエノメレンズの代わりに、19の位相変調円弧MLAを使用したインテグレータを用いたことである。19のインテグレータはフィールドタイプのインテグレータとするために、図9に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図9では、射出側のMLAのみに段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、0度,180度,0度,180度の位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0047】
図5は位相変調円弧MLAをR面から見た図と、断面の形状である。R面から見た図で、斜線が引いてあるところが掘り込まれているところであって、斜線が引いてあるところと、引いてないところで位相差がつけられている。180度の位相差をつけるために付けられている段差は、基板の屈折率をN、波長をλとすると、kを整数として
λ÷(2×(N−1))+k×λ÷(N−1)
である。よってN=1.5として157nmで使用する円弧MLAの場合には、157nmもしくは471nm、もしくは942nmの157nmの奇数倍の深さの段差をつける。
【0048】
x方向,y方向とも干渉縞のピッチが半分になるように、市松状に掘り込んで位相差をつけるのが好適である。なお、条件によっては素子レンズ間の位相差が0度と180度のもの比が1:1以外のときが好適な場合もある。たとえば、2:1の場合は、0度,0度,180度,0度,180度,0度,0度となるように、3つおきに段差を変えるようにすればよい。
【0049】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり、位相変調円弧MLAの加工方法の実施例を図10に示す。通常のMLAを製作後、レジストを塗布する。その後、露光と現像を行い、掘り込みたくない部分にレジストが残るようにする。その後エッチングを行い、レンズを掘り込み、位相差がつくようにする。
【0050】
第1の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が、18本となり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0051】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0052】
本発明の第2の実施例は第1の実施例では180度つけていた位相変調円弧MLAの位相差を120度にしたものである。位相変調円弧MLAを用いたインテグレータの形状としては第1の実施例と同じく図9に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図9では、射出側のMLAのみに段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、0度,120度,0度,−120度の位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0053】
位相差が120度ついた素子レンズ間で発生する干渉縞は、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞に対して、fλ÷p×(120÷360)だけずれた場所に同じピッチの干渉縞を発生する。つまり、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞のピッチの3分の1ずれた場所に干渉縞を発生する。一方位相差が−120度ついた素子レンズ間で発生する干渉縞は、120度ついた素子レンズ間が発生する干渉縞と反対方向に、位相差がついていない素子レンズ間で発生する干渉縞のピッチの3分の1ずれた場所に干渉縞を発生する。よって、位相変調円弧MLA全体としては、これら3種類の干渉縞が重なり合った干渉縞を発生し、被照明面での干渉縞のピッチは、位相差をつけなかったときに比べて3分の1となる。
【0054】
位相変調円弧MLAの形状も第1の実施例と同じく図5となるが、段差の量が第1の実施例と異なる。120度の位相差をつけるために付けられている段差は、基板の屈折率をN、波長をλとすると、kを整数として
λ÷(3×(N−1))+k×λ÷(N−1)
である。よってN=1.5として157nmで使用する円弧MLAの場合には、104.7nmもしくは418.7nm、もしくは732.7nmの段差をつける。
【0055】
x方向,y方向ともピッチが3分の1になるように、市松状に掘り込んで位相差をつけるのが好適である。なお、条件によっては素子レンズ間の位相差が0度と180度のもの比が1:1以外のときが好適な場合もある。たとえば、2:1の場合は、0度,0度,120度,0度,120度,0度,0度となるように、3つおきに段差を変えるようにすればよい。
【0056】
第2の実施例を用いた際の633nmの光に対する被照明面での照度分布のシミュレーション結果を図10にしめす。位相差をつけない場合に比べて干渉縞のピッチが細かくなり、被照明領域の照度均一性が高まっている。
【0057】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり。
【0058】
位相変調円弧MLAの加工方法の実施例を図10に示す。通常のMLAを製作後、レジストを塗布する。その後、露光と現像を行い、掘り込みたくない部分にレジストが残るようにする。その後エッチングを行い、レンズを掘り込み、位相差がつくようにする。
【0059】
第2の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が27本となり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0060】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0061】
本発明の第3の実施例は第1の実施例では180度つけていた位相変調円弧MLAの位相差を0から360度の間でランダムにしたものである。位相変調円弧MLAを用いたインテグレータの形状としては図13に示したように、2つのMLAが対になってそれぞれの素子レンズが一致するように配置されている。図13では、射出側のMLAの各素子レンズにランダムな段差をつけて、インテグレータの隣り合う素子レンズ間に、ランダム位相差をつけている。なお、入射側,射出側両方に段差をつけても良いし、入射側に段差をつけても良いし、基板と屈折率の異なるシフターを用いても良い。
【0062】
ランダムな位相差をつけたことにより、隣り合う素子レンズによって発生する干渉縞は、それぞれのペアによって異なる位置に発生する。第3の実施例を用いた際の633nmの光に対する被照明面での照度分布のシミュレーション結果を図12にしめす。位相差をつけない場合に比べて干渉縞のピッチが細かくなり、被照明領域の照度均一性が高まっている。
【0063】
一つの素子レンズの大きさは、上述のように、照明領域と照明面でのNA,MLAの径とプロセスによって彫れるサグ量できまるが、短手方向の円弧の幅が30μmから50μmで、長手方向の幅が150μmから300μm程度であり。
【0064】
位相変調円弧MLAの加工は第1,第2の実施例と同様にエッチングによって段差をつけるが、つける段差ごとにマスクを交換しなくてはいけないために、完全にランダムな無限数の段差をつけることは難しいので、2段階,4段階,8段階の2の累乗の段数をつけることが実際的である。よって実際には2の累乗の段差を基板ないでランダムに各素子レンズに与える。
【0065】
第3の実施例のインテグレータを用いる事により、従来4mmスリット中に9本であった干渉縞が多くなり、光源がパルス光であるために走査方向に走査速度に依存した周期で露光量のバラツキが従来に比べて小さくなる。
【0066】
なお、本発明は走査型露光を行うものであるので、干渉縞の方向が走査方向と一致しないように、走査方向に対して数度位相変調円弧MLAを用いたインテグレータを傾けると走査後の露光量の均一性が高まり、効果的である。
【0067】
なお、本明細書では、位相差が180度,120度、ランダムの場合についての実施例を述べたが、光学系の構成方法よっては、それ以外の位相差をつけたほうが効果がえらえる場合もある。
【0068】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、円弧領域を被照明面とする投影露光装置にたいして、高照度化を達成しながら、露光量のバラツキを小さくした投影露光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の位相変調MLAを用いた投影露光装置の実施例を示す。
【図2】従来技術による投影露光装置を示す。
【図3】スリットの説明図。
【図4】円弧MLAの説明図。
【図5】位相変調MLAの説明図。
【図6】円弧MLAを用いた場合の照射面での干渉縞(シミュレーション)。
【図7】位相変調MLAを用いた場合の照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図8】回折格子における干渉縞の説明。
【図9】位相変調MLAを用いたインテグレータ。
【図10】位相変調MLAの加工方法についての説明。
【図11】第2の実施例での照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図12】第3の実施例での照明面での干渉縞(シミュレーション)。
【図13】第3の実施例におけるインテグレータ。
Claims (7)
- 円弧状の被照明領域を照明する円弧領域照明光学装置において、屈折、もしくは回折によってパワーを持った円弧形状の微小な素子レンズが繰り返し配置され、0度以外の位相差がついている、隣り合う素子レンズの対が1つ以上存在する光学素子から射出された光を2次光源としてケーラー照明により照明することを特徴とする円弧領域照明光学装置。
- 前記素子レンズが2つ以上の素子レンズ群に分けられ、前記光学素子に位相のそろった平行光を入れた際に、同一の素子レンズ群に属する2つの素子レンズから射出する光の位相はほぼ等しく、異なる素子レンズ群に属する2つの素子レンズから射出する光には、位相差がついていることを特徴とする円弧領域照明光学装置。
- 各素子レンズにおいて、ある方向に隣接する素子レンズが属する素子レンズ群と、その反対方向に隣接する素子レンズが属する素子レンズ群が異なる事を特徴とする請求項2に記載の円弧領域照明光学装置。
- 光学素子が2つの素子レンズ群からなり、異なる素子レンズ群に属する2つの素子レンズから射出する光の位相差が略180度であることを特徴とする請求項3に記載の円弧領域照明光学装置。
- 光学素子が2つの素子レンズ群からなり、異なる素子レンズ群に属する2つの素子レンズから射出する光の位相差が略120度であることを特徴とする請求項3に記載の円弧領域照明光学装置。
- 前記光学素子はサグ量が50μm以下のマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5記載の円弧領域照明光学装置。
- 回路パターンの描画されたマスクを円弧状の領域で照明する円弧領域照明光学装置と、パターンを感光剤の塗布された基板上に転写する円弧領域の結像領域を持つ投影光学系を備えた投影露光装置において、前記円弧領域照明光学装置が請求項6に記載の円弧領域照明光学装置であることを特徴とする投影露光装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008124149A (ja) * | 2006-11-09 | 2008-05-29 | Advanced Lcd Technologies Development Center Co Ltd | 光学装置および結晶化装置 |
JP2010114438A (ja) * | 2008-10-28 | 2010-05-20 | Asml Netherlands Bv | フライアイインテグレータ、イルミネータ、リソグラフィ装置および方法 |
JP2010219522A (ja) * | 2009-03-12 | 2010-09-30 | Nikon Corp | オプティカルインテグレータ、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法 |
CN109964176A (zh) * | 2016-09-13 | 2019-07-02 | 佳能株式会社 | 照明装置、曝光装置以及物品的制造方法 |
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2003
- 2003-06-16 JP JP2003170372A patent/JP2005005637A/ja not_active Withdrawn
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