JP2005097084A - ガラスペースト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PDP等の気密封止構造体に利用されるガラスペーストとして、高い封止強度特性等の諸特性に加え、封止後の機密性を維持し続ける信頼性のある封止状態を併せ持つガラスペースト及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明のガラスペーストは、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有するガラスペーストであって、ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下にあるものである。また、本発明のガラスペーストの製造方法は,無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを混合するガラスペーストの製造方法であって、解砕装置によってガラスペースト中に存在する凝集体に係る凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製するものである。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のガラスペーストは、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有するガラスペーストであって、ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下にあるものである。また、本発明のガラスペーストの製造方法は,無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを混合するガラスペーストの製造方法であって、解砕装置によってガラスペースト中に存在する凝集体に係る凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製するものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、気密封止構造体を形成する用途のガラスペースト及びその製造方法に関し、特にプラズマディスプレイパネルの隔壁形成材料に適するガラスペースト及びその製造方法に関する。
気密封止構造体を構成するために使用されているガラスペーストは、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有しており、各種の成型法によって複雑で精密なパターンを形成することができ、しかも加熱焼成することによって高い気密性を実現するために、光部品や電子部品に加えて画像表示デバイス用途等で多用されてきている。その中でもガラスペーストにより精細な配列構造を形成するものとして、プラズマディスプレイパネル(以下PDPと称す)を構成する隔壁(バリアリブ、障壁)形成用途で利用されるガラスペーストがある。
PDPは自己発光型の画像表示装置であり、軽量薄型、高視野角を有し大型化が可能な優れた特性を有するフラットディスプレイであるが、図1にその代表的な断面構造を示す。この部分断面図に表した様に、この表示装置では、その間隔が100〜300μm程度の寸法に精密に調整された2枚のガラス基板11、12の間を多数のガス放電部に仕切る隔壁13が配設されている。また、ガラス基板11上には対をなすITO等の透明電極16が形成されており、この透明電極16間に放電ガスの放電開始電圧以上となる電圧を印加することによってプラズマ放電が発生する。
そしてこの透明電極16上には、基板ガラスを被覆するように配設された誘電体層17、及び放電によって生じるイオンの衝突から透明電極16を守る等の役割を有するMgOによる保護膜4が形成されている。背面ガラス基板12上には、アドレス電極18が形成され、さらにそれを被覆するように、例えば赤色についてはY2O3:Eu3+粉末、緑色についてはZn2SiO4:Mn粉末、青色についてはBaMgAl10O17:Eu2+等を使用して、RGB各色についての蛍光体21がそれぞれ塗布されている。透明電極16間に電圧が印加されて、隔壁13によって仕切られ、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Xe(キセノン)等の希ガスが封入された放電空間20内にプラズマが発生して、プラズマ放電によって生じた紫外線が蛍光体21に照射され、蛍光体21が発光するというのが、このPDPの基本的な動作原理である。
PDPには、各種のガラスペーストが種々の目的で利用されているが、例えばPDPパネルの隔壁13を成形する方法としては、特許文献1にあるように層状に形成したリブ層上に所望のパターンを有するレジスト膜を形成し、その後サンドブラスト加工で不要部を除去して隔壁13を形成するサンドブラスト法、特許文献2にあるように、厚膜ペーストのスクリーン印刷と焼成を複数回繰り返すことによって隔壁13を形成する印刷法、さらに感光性ペースト法やプレス法、転写法等がある。いずれの方法を採用するにしても、この隔壁13の大きさは、幅が50〜120μm程度であって、その高さは70〜300μmという微細な障壁構造物である。そして、何らかの理由でこの隔壁13が気密性を維持、確保することができなくなると、プラズマ放電を起こすことができなくなり、蛍光体は発光せず、PDPとしての機能が損なわれることとなる。
特開平10−283938号公報
特開平05−101776号公報
このようにPDPの精細な構造を有する隔壁13等に使用されるガラスペーストにおいては、そのガラスペースト中に成分として添加されたものではない、すなわち意図しない成分であって、意図しない粒径を有する不純物や気泡、隔壁形成後の傷、孔や窪み、サンドブラスト等の加工方法に起因する残査等の欠陥が隔壁13に存在していると、PDPを組み立てた後に隔壁13の機能として重要な気密構造が損なわれる。そのため放電空間20内の気密性等が維持できなくなり、透明電極16間に電圧を印加しても充分なプラズマ放電が得られず、結果としてPDPとしての機能を十分に発揮することができなくなる。
このため、使用する粉末ガラスの粒径を精密に調整し、粉末ガラスのペースト中における偏析等を防止する上で、ガラス粉末と有機溶媒の混合方法や分散方法として最適なものを採用するために、各種の製造装置による調整方法が調査された。また、前述した各種の隔壁形成方法は、さらに種々の改良が施されて、より寸法精度の高い隔壁が形成可能となる方法が採用されて利用されるようになってきている。さらに、真空度を損なうものとして、隔壁を構成する材料中の吸着ガスや水分等の存在量や濃度についても、減圧状態を実現するには充分な配慮が必要であって、隔壁構成材料の加熱処理や特定気体雰囲気中による熱処理等の発明も行われた。
しかし、上述のような各種の取り組みや改善にもかかわらず、PDPを大規模に生産する設備によりガラスペーストを使用して隔壁を形成する際に、組み立て成形品についての品質検査において、充分な真空状態が実現できずにPDPに所望の性能を発揮できない場合が発生した。このような不具合は、必ずしも大量に発生するものではないが、それでも高品質で高い歩留まりの製造状態を構築するためには、大きな障害となるものであった。
本発明者らは、かかる状況に鑑み、PDP等の気密封止構造体に利用されるガラスペーストとして、これまで求められてきた高い封止強度特性等の諸特性に加え、封止後の機密性を維持し続ける信頼性のある封止状態を併せ持つガラスペースト及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明のガラスペーストは、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有するガラスペーストであって、該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下にあることを特徴とする。
ここで、該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下にあるとは、ガラスペースト100g中に存在する凝集体の球相当直径の平均値とガラスペースト100g中の凝集体個数との積で表される値(これを凝集体粒度積値と呼称する。)が、50×102μm・個以下の値となることを意味している。
凝集体とは、ガラスペースト中に分散状態で存在する無機酸化物ガラス粉末やフィラー等のそれぞれの粒子が、水、有機溶媒等を介するかあるいは粒子自身のファンデルワールス力、イオン間力、価電子の共有による引力に起因する凝集エネルギーの低下によって強固に結合した複数の粒子よりなる固結構造体のことであって、その結合力の大小によって容易に解砕できる場合もあれば、解砕するために相当のエネルギーを要する場合もあるものである。
このような凝集体は、上記のような複数の粒子の集合体であって、集合力は問わないがその力は、粒子を1つに融合させるほどのものではなく、肉眼では1つの粒子として認識されても、それぞれの粒子は顕微鏡等によって明瞭に互いの界面が区別された状態で観察可能であり、互いの粒子間に作用する1以上の介在する結合力によって1つの粒子として振る舞うものであって、凝集体以外にも凝集物、凝固体、凝結体等と呼称される場合もある。
よって種々の形態を有する凝集体がガラスペーストそのものの性状に影響する度合いを特定するためには、凝集体の寸法を球相当に換算した粒度によって表し、ガラスペーストの諸特性との関連を調査するのが好ましい。そしてこのような観点から一連の調査を行う中で、本発明者らは凝集体の球相当直径と凝集体の個数の積をもってガラスペーストの性質、性状への関与を解明する手法を見出し、この新たな評価基準となる指標を「凝集体粒度積値」と呼称して、ガラスペーストに関する種々の状態と欠陥発生の機構を明瞭とすることが可能になることを発見した。
凝集体粒度積値は、その値が50×102μm・個より大きくなると、形成された気密構造体の表面精度等が損なわれ、その結果、気密構造体の強度が弱くなる等の構造に起因する問題が発生する場合がある。このような問題が顕著に認められる例として、スクリーン印刷法を採用して気密構造体を積層印刷することによって構成する場合を想定すれば、積層構造を形成する際、それぞれの印刷表面の表面粗さが大きくなりすぎると、印刷面と印刷面の間に気泡が多数残留した状態となり、その気泡が焼成時に膨張して気密性が損なわれたり、あるいは気密性が損なわれない場合でも強度的に弱い構造物となってしまうこともある。
また、凝集体粒度積値が50×102μm・個より大きいと、ガラスペーストの構成として設計されていた粘性が高くなりすぎ、気密構造体を形成する際の成形性に問題が発生する場合もある。所望の精密な形態を形成することができない場合には、気密構造体は設計に従う高い性能を実現することが困難となる。以上の様な点から、凝集体粒度積値は、その値が50×102μm・個以下であることが好ましく、より好ましくは30×102μm・個以下とする方がよく、一層好ましくは20×102μm・個以下とする方がよい。
さらに、凝集体粒度積値について、その値が10μm・個より小さい場合には、ガラスペースト凝集体を形成する、それぞれの粒子凝集力が強固で解砕しがたい傾向となる場合が多く、また効果的な解砕方法を採用しても長時間に亘る処理が必要となるためガラスペーストの製造原価に及ぼす影響が大きくなる等の問題がある。
さらに、ガラスペーストは有機溶媒中でそれぞれの粒子が分散した状態にあるものであるが、有機溶媒やガラス粉末の種類によってはある程度の凝集体が共存する方が、その分散系としてはむしろ安定な状態となる場合もある。つまり、粒子は使用する有機媒体の種類にもよるが、有機媒体中での分散操作等によって粒子表面の電気二重層に変化を生じ、粒子表面に電気的な帯電現象が認められるようになり、この際に凝集体を形成することによって、帯電によるチャージがキャンセルされることで一時的に安定化する場合がある。一方、このような電気的な不安定な状態があるにもかかわらず分散粒子の凝集を引き起こせない状態を意図的に作りだすと、気密構造体を形成する操作を行う際に、装置表面等の精密な気密構造体を形成にあたって重要となる箇所に、電気的に不安定な粒子が付着しやすくなる等の現象が発生することによって、その気密構造体を形成する操作に支障を引き起こす場合も確認されている。例えば、スクリーン印刷を行う際のスクリーンの目詰まりトラブルに、この粒子の帯電現象が影響を及ぼすこともあって、特にミクロンオーダーの精細な印刷物を形成する際には、無視できない要因となる場合もある。以上のような点から、本発明に係るような高い精密構造を形成する場合には、凝集体粒度積値は0.1×102μm・個以上であるほうが好ましく、より好ましくは0.2×102μm・個以上である方がよく、さらに好ましくは0.4×102μm・個以上である方がよい。
また、本発明のガラスペーストは、該ガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体が50個以下であることを特徴とする。
ここで、該ガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体が50個以下であるとは、上述したように凝集体粒度積値が所定範囲にある状態であって、さらにそのガラスペースト100g中の凝集体の球相当直径が5μmから300μmであって、その数量が50個以下であることを意味している。
凝集体の寸法下限値について、その値を5μmとしたのは、この寸法より小さいと、複数の粒子が集合していても本発明で問題とする気密構造体の表面精度や内部欠陥に大きく影響する場合が少なく、仮にこのような凝集体が存在する場合には、当然5μmより大きい寸法を有する凝集体も存在するため、5μm以上の球相当直径の凝集体について管理して対処することでその数を低減することができさえすれば、それより小さい粒径の凝集体の個数はそれに正比例して減少することになって、重要なものではないからである。ちなみに、ここで球相当直径としたのは、凝集体は必ずしも球形状ではないため、その凝集体の体積と同体積の球の直径で表すとすれば、凝集体の粒径は、最小直径が5μmであることを意味している。
そして、この凝集体の最大粒径については、その寸法が大きければ大きい程、気密構造体の寸法に制限がある用途で利用されるガラスペーストに関しては、構造体中の欠陥を発生させる危険性は高くなる。しかし、大きい寸法の凝集体はそれだけ凝集体中の構造強度の弱い箇所が1つの凝集体に多く存在することとなり、ガラスペーストの混練等の製造操作中に一旦形成されても再び解砕され、より寸法の小さい凝集体となる場合も多い。しかし、300μm以上の凝集粒子が存在する場合には、その粒子が解砕されても、比較的大きい複数の粒子が発生することとなり、300μm以上の粒子1個に対して発生する欠陥と遜色ない複数の欠陥を気密構造体内に生み出す危険性が高くなる。以上のような点から、許容される凝集粒子の球相当最大径は、300μmであって、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは180μm以下、一層好ましくは150μm以下となる。
以上まとめると、本発明で特に注目する凝集体の寸法には、凝集体の球相当最小粒径と球相当最大粒径があり、その最小粒径は5μmであって、一方最大粒径は300μmである。そしてこの最小粒径5μmと最大粒径300μmについては、前記のようにガラスペースト100g中に存在する凝集体の数量が50個以下である場合についての寸法範囲であるということである。
そして、前述のガラスペースト中に分散する粒子表面の電位について、安定した状態を確実に実現するためには、凝集体個数が50個以下であればよい。よってガラスペースト100g中の5μm以上の凝集体が50個以下となる場合に、ガラスペーストを安定させた分散状態としやすく、封止構造体を製造する前の事前評価として封着試験や凝集体数調査等の各種の評価を行えば、その分散状態についての知見を得やすいものとなる。そして、この許容範囲は、使用するガラスペースト中の粒子の種類や有機溶媒の種類によっても変化し、ガラスペースト中の粒子表面の帯電状態が比較的早く解消できるような材質を使用している場合には、ガラスペースト100g中の5μm以上の凝集体が30個以下の場合にも許容され、さらに帯電解消の速度が速い、すなわち帯電状態の減衰半減期が短い場合にはガラスペースト100g中の5μm以上の凝集体が20個以下の場合にも許容されるものとなる。
そして、この凝集体に起因する気密構造体自体の欠陥としては、例えばスクリーン印刷による積層法等を使用して隔壁を形成する際に大きな問題となるものとして、前述したように印刷形成物の表面性状や内包する気泡への影響がある。また凝集体はそれ自体が構造的な欠陥として検知できるが、凝集体を構成する粒子と粒子を結合する介在物がガラスペーストの加熱等によって気化することで発泡し、より大きな欠陥となる場合もあるため、粒子そのものの寸法等による影響とその粒子間の介在物の種類によって発生する影響の両方が、ガラスペーストによる気密体構造物の精密な構造状態を実現するための妨げとなることもあり、注意を要する。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加え無機酸化物ガラス粉末が40〜85質量%、有機成分が15〜60質量%であることを特徴とする。
ここで、無機酸化物ガラス粉末が40〜85質量%、有機成分が15〜60質量%であることとは、ガラスペーストとしての両成分の混合比率が無機酸化物については40質量%から85質量%であって、一方有機成分については15質量%から60質量%であることを意味している。
無機酸化物ガラス粉末と有機成分の含有比率は、ガラスペーストの粘性、流動特性や成形性等の性質に大きく影響するものであって、気密封止構造体を所望の成形方法で製造するために、その比率を適宜選択することが可能なものである。ただし、無機酸化物ガラス粉末の比率が40質量%未満になると気密封止構造体を焼成する際に緻密化しがたく、一方その含有比が85質量%を越えるとガラスペーストの成形性を他の条件等によって調節しにくくなるという問題があるため、無機酸化物ガラス粉末の配合比率は40質量%から85質量%までの範囲であることが好ましい。そして、例えばPDP等の微細な配列構造を形成する用途でこのガラスペーストが使用される場合には、この条件はさらに厳しくなり45質量%から73質量%の範囲とする方がよく、さらに好ましくは50質量%から71質量%の範囲がよい。
また、有機成分の含有比率については、60質量%より多くなるとガラスペーストの粘性が小さくなりすぎるのは当然であるが、成形後のガラスペースト成形後の生地からの焼成等の脱気処理にも時間を要するため、60%以下とする方がよい。また有機成分が15質量%より少なくなると流動性が小さくなりすぎるため、ガラスペーストの成形性が阻害され、微細な形状を有する構造体などを形成することが困難となる。そしてこの限定範囲は、20μm以下の平均粒径を有するガラス粉末を採用する場合にはこの傾向がより顕著になるため、好ましくは18質量%から50質量%までに限定され、さらに好ましくは20質量%から45質量%の範囲とする方がよく、一層好ましくは20質量%から35質量%の範囲とする方がよい。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加えフィラーを1〜50質量%含有することを特徴とする。
ここで、フィラーを1〜50質量%含有することとは、本発明のガラスペースト中には、フィラーいわゆる骨材の粉末成分として50質量%まで含有することを意味している。すなわち、フィラーは添加しなくても良いし、添加する場合には、50質量%まで添加することが可能である。
フィラーは、緻密な構造を形成するために焼成を行う際に成形形状を維持するために添加されるものであって、併せて焼成後の気密構造体の強度等についても所望の特性を満足するために添加されるものである。しかし、フィラーを添加せずとも上記のような特性を実現できる場合には、フィラーを添加する必要はない。一方50質量%を越える場合には、ガラスの軟化温度が高くなる傾向があり、充分な焼結が行いにくいといった問題が発生する場合もあるため好ましくない。よって、その許容される含有範囲は、50質量%までであり、より好ましくは40質量%以下であって、一層好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加えフィラーとして結晶化ガラス粉末及び/または無機結晶質粉末を含有することを特徴とする。
ここで、フィラーとして結晶化ガラス粉末または/及び無機結晶質粉末を含有するとは、前述のフィラーとして結晶化ガラス、すなわちガラスセラミックスを含有するか、あるいは無機結晶、すなわちセラミックス等よりなる粉末を含有することを意味している。
ここで、結晶化ガラスはガラス相中に結晶相を加熱処理等により析出させたものであり、無機結晶についてはガラス質を含有しない結晶相のみの粉末である。そして、いずれの粉末を含有する場合でも、フィラーに必要とされる機能を満足すれば支障はない。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加えてフィラー中にチタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア及びムライトの何れかを少なくとも1質量%以上含有することを特徴とする。
ここで、フィラー中にチタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア及びムライトの何れかをフィラー中に少なくとも1質量%以上含有することとは、前述の結晶化ガラス粉末、無機結晶粉末のどちらであってもチタニアと称するTiO2(酸化チタニウム)、アルミナと称するAl2O3(酸化アルミニウム)、ジルコニアと称するZrO2(酸化ジルコニウム)、シリカと称するSiO2(二酸化珪素)、マグネシアと称するMgO(酸化マグネシウム)、ムライトと称するAl2O3−SiO2系化合物(3Al2O3・2SiO2と表記されることが多い)の内のいずれかを1質量%以上は含有していることを意味している。
フィラーは前述したような機能を実現するために添加するものであるが、具体的に気密構造体を構成するガラスペーストとして採用して特に好適なものは、チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ムライトである。また精細な配列構造を形成する際には、フィラーとしてジルコニア、アルミナを使用するのが好ましい。そして、本発明のガラスペーストでは、上記フィラーに加えてジルコン、ジルコン酸バリウム、コージエライト、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素、ウレマナイト等のフィラーも一種または2種以上を適宜使用することが可能であって、またその一部を必要に応じて無機顔料等に置換することも可能である。さらに、フィラー粒子の形状については、破砕物であっても造粒などの処理によって所定形状に意図的に変更したものであってもよい。すなわち、球状体、多面体やフィラメント状体等の形体の粉末粒子を適宜選択することが可能である。フィラーの調整方法としては、ボールミル等の各種粉砕、混合装置を必要に応じて併用することが可能である。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加え軟化点が620℃以下であることを特徴とする。
ここで、軟化点が620℃以下であるとは、ガラスペーストの焼成によってガラス基板等の他の気密構造体を構成する部位に支障がでないために必要となる温度であって、この温度より高くなるとガラス基板の変形等に伴う機能低下といったような実使用上の問題点が発生する場合もあるため好ましくない。また、ガラスペーストとしても、620℃より高い軟化点を有する場合には、焼成時の泡切れ性が劣化するため好ましくない。よって、さらに好ましくは550℃以下である方がよい。なお、本発明における軟化点はマクロ型示差熱分析計(MacroDTA)を使用することで計測したものである。
また、本発明のガラスペーストは、上記に加え無機酸化物ガラス粉末が、実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。
ここで、無機酸化物ガラス粉末が、本質的にPbOを含有しないとは、Pb(鉛)成分について、実質的に意図して添加しないということを意味しており、不純物等から含有することになるPbを酸化物換算でppmオーダー含有したとしてもそれを問題とするものではない。ここで、Pb成分については環境上含有しない成分によって構成された気密構造体が、より尊ばれ、より好ましいと考えられる用途で利用される場合については、いわゆる鉛フリーのガラス組成物や鉛フリーのフィラー粉末を採用することによって、所望の目的を達成することができることを意味している。よって、Pb含有ガラスでなければ、必要とされる特性を達成することが不可能であるならば、それを妨げるものではない。
また、本発明のガラスペーストは、ディスプレイ表示素子の気密封着に使用されるものであることを特徴とする。
ここで、ディスプレイ表示素子の気密封着に使用するとは、画像表示装置を構成する気密封着に使用するガラスペーストを意味している。例えば、代表的なディスプレイ表示素子であるブラウン管、すなわちCRTのチューブ組立におけるフェースとファンネルの封着に使用するガラスペーストが、本発明のガラスペーストにも該当するものである。
また、本発明のガラスペーストは、ディスプレイ表示素子がプラズマディスプレイパネル、電子放出素子、蛍光表示管の何れかであることを特徴とする。
ここで、ディスプレイ表示素子がプラズマディスプレイパネル(PDP)、電子放出素子(FED)、蛍光表示管(VFD)の何れかであるとは、プラズマディスプレイの隔壁等のように非常に微細なミクロンオーダーの構造体を形成する必要のある用途で利用されることによって、本発明のガラスペーストはその性能の威力を発揮することが可能となるものであることを意味している。
また、本発明のガラスペーストを構成するガラス粉末のガラス組成としては、特に限定されるものではないが、PbOを含有するガラスでなければ所望の特性を実現できないならば、例えばPbO−B2O3−SiO2系ガラス等を採用することができる。またそれ以外にも、BaO−ZnO−B2O3系、ZnO−Bi2O3−B2O3系等を採用することも可能である。PbO−B2O3−SiO2系ガラスの例をあげれば、質量百分率でPbO 50〜75%、B2O3 0〜20%、SiO2 10〜30%、Al2O3 0〜6%、 ZnO 1〜10%、CaO+MgO+SrO+BaO 0〜10% SnO2+TiO2+ZrO2 0〜6%の組成を有するものが好適に使用できる。またBaO−ZnO−B2O3系ガラスの例をあげれば、モル百分率で、BaO 5〜40%、ZnO 20〜55%、B2O3 15〜50%、SiO2 0〜2%の組成を有するものが好適に使用できる。さらに、ZnO−Bi2O3−B2O3系ガラスであれば、質量百分率でZnO 25〜45%、Bi2O3 15〜35%、B2O3 10〜30% SiO2 0.5〜8% CaO+SrO+BaO 8〜24%の組成を有するものが好適に使用できる。
また、上記のような組成系のガラスに、適宜必要性に応じた範囲内で、着色成分としてCu、Fe、Ni、Mn、Co、Cr、Ag、Au、Te等を添加することが可能である。これらの添加成分は、酸化物、炭酸塩、金属、硝酸塩、硫酸塩等としてガラス中に添加溶融して所定の機能を満足させることが可能であって、具体的な添加量としては、これらの添加物を酸化物として表して0.5質量%以下の含有量とすることで目的を達成することができる。
また、本発明のガラスペーストは上記の有機成分として、熱可塑性樹脂、可塑剤、溶剤等を必要に応じて添加する事ができる。熱可塑性樹脂は、ペーストの乾燥後の強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、その含有量の範囲は、質量百分率で0.1〜20%である。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリブチルメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等を単独、あるいは所定配合比で混合して使用することが可能である。また、可塑剤は、乾燥速度を調整するとともに柔軟性も付与できる成分であり、その含有量は質量百分率で0〜10%が添加できる。可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジカプリルフタレート等が使用可能であって、単独、あるいは所定配合比で混合して使用することが可能である。さらに溶剤は、材料をペースト化するために必要となる成分であってその含有量は、質量百分率で5〜30%が使用できる。溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(別称ブチルカルビトールアセテート)、ターピネオール(別称テルピネオール)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート、ジブチルフタレート(別称フタル酸ジブチル)、ジオクチルフタレート(別称フタル酸ジオクチル)、ポリエチレングリコール等を単独,あるいは所定配合比で混合して使用することが可能である。
また、本発明のガラスペーストに感光性を付与する場合、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマー等を少なくとも1種以上含有させ、さらに必要に応じて光重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、分散剤、沈降防止剤等を適宜添加して所定の機能を付与することもできる。
上記の諸材料、諸成分を用いてペーストを作製するには、それぞれの材料すなわちガラス粉末、フィラー、樹脂、可塑剤、溶剤等を用意して、次いでそれぞれを配合比に見合う適量分だけ秤量して混合調整すればよい。この時、混合の手順や混合装置等は、必要に応じて選択することが可能であって、不用意に乾燥させたり、混合操作等が不十分であったりすることによって、ペースト内に凝集体が発生することないように管理することができるならば、特に限定されるものではない。
本発明のガラスペーストの製造方法は、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを混合するガラスペーストの製造方法であって、解砕装置によって該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製することを特徴とする。
ここで、解砕装置によって該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製することとは、ガラスペースト100g中に存在する凝集体について、球相当の平均直径と該当する個数との積の値が、50×102μm・個以下となるように凝集体を個々の粒子に解砕することのできる解砕装置によって処理することを意味している。
このような処理を行うことができる装置として、処理時間や処理温度、そして処理量を適宜変更することによって、連続的に処理条件を変更することのできる装置であれば、特に限定されるものではない。よって該当する装置は、各種の解砕方式を採用したものがあり、これらの装置の諸設定をガラスペーストによって変更することで、目的を達成することが可能となるものである。
さらに、本発明のガラスペーストの製造方法は、上記に加えて解砕装置によってガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体を50個以下とすることを特徴とする。
ここで、解砕装置によってガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体を50個以下とすることとは、ガラスペースト中に存在する凝集体を多くともペースト100g当たり球相当直径が5μm〜300μmであって、かつその凝集体の個数を50個以下にできる能力を有する解砕装置によってガラスペーストに所望の処理を施すことを意味している。
ガラスペースト100g当たりの5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体を50個以下にできる能力を有する解砕装置としては、粒子が荷電、ファンデルワールス力によって結合したフロキュレート状態にある粒子以外に他の媒体や熱エネルギー、磁性等の影響によって比較的強く結合した、いわゆるアグリゲート状態にある粒子についても強制的に分離することができる力を効率的に印加することのできる装置であるならば、特に限定されるものではない。また、この処理を行う際に、凝集している粒子以外に処理前には分断されていなかった粒子が2以上に分断されても、当初の平均粒径より2割以上の変動が起こらない装置であるならば、問題はなく採用できるものである。
また、本発明のガラスペーストの製造方法では、上記に加えて解砕装置として種々のボールミル等を適宜選択して使用することが可能である。ここでのボールミルとは、セラミックス製のボール等を容器内で転動することによって凝集粒子を解離する働きをする、いわゆる狭義のボールミルばかりでなく、振動ボールミルや媒体遊星ミル等をも含むものである。またそれ以外にロールミル等も使用でき、3本ロールに代表される凝集粒子の解離装置や、その応用装置の利用が可能である。
さらに、凝集体を解離するために上記の装置以外に超音波による解砕や衝撃波による解砕、それ以外に電気的な手法や熱的な方法についてもガラスペーストの性能を損なわないものであるならば併用することが可能である。またその使用方法についても、通常より凝集体の解離に着目した方法を採用するものである。例えば、上記の3本ロールミルの使用方法については、通常利用されるよりも通過回数を増加させることによって対処することができる。あるいは、ボールミルの場合にはボール粒径を複数回に分けて処理回数を重ねる方法を採用することができる。ただし、ここで注意する必要があるのは、解砕等の操作によって粉液比が変わることであって、特に微量の変化であっても成形性に著しく影響するような場合には、その影響を充分考慮した上記のような各種処理が可能である。
(1)以上のように本発明のガラスペーストは、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有するガラスペーストであって、該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下であるため、気密構造体を形成するスクリーン印刷等の各種の成形操作が円滑に行え、精細にして精密な構造体を容易に製造することを可能とするものであり、気密構造体が形成された電子部品あるいはディスプレイデバイス、画像表示装置等に要求される高い機能を確実に実現できる優れた品位を有するものである。
(2)また本発明のガラスペーストによれば、ガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体が50個以下であるため、ガラスペースト製造後の品質評価として行う封着試験等の工程内評価を行わずとも高い品位を有する製品を迅速かつ大量に生産することができ、市場の要求に合致する秀逸な機能を有するガラス製品を過不足なく供給することを可能とするものである。
(3)さらに、本発明のガラスペーストは、上記に加えて無機酸化物ガラス粉末が40〜85質量%、有機成分が15〜60質量%であるため、気密構造体を製造する際に必要となる最適な流動特性を満足する粉液比率を採用することによって、強固な気密性を有する構造体を容易に製造することを可能にするものであり、用途を問わず高い成形性によってもたらされる所望の性能を実現することのできるガラス製品を潤沢に供給することによって、ガラス製品の使用される産業を一層興隆させることを可能とするものである。
(4)また、本発明のガラスペーストは、上記に加えてフィラーを1〜50質量%含有することを特徴とするため、精細かつ精密な構造を形成する場合であっても焼成等の操作によって形状が変形したりすることなく、高い成形維持性能を有するものであって、ガラスペーストを使用して形成することのできる微細構造物の製造について、高い信頼性を有する成形品を高収率で生産することが可能となるものである。
(5)さらに、本発明のガラスペーストは、上記に加えてフィラーとして結晶化ガラス粉末及び/または無機結晶質粉末を含有するものであるため、使用される用途に応じて最適な性質を実現することのできる粉末を採用することによって焼成後の気密構造体に特定の性能を付与することができるものであって、今後新規用途等で必要となる性能を実現する際にも選択する幅が広がり、迅速な材質改良による対応が容易に行えるものである。
(6)また、本発明のガラスペーストは、フィラー中にチタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア及びムライトの何れかを少なくとも1質量%以上含有するものであるため、気密構造体に求められる強度、耐薬品性、形状維持性等の特性を必要に応じてガラスペーストに付与することのできる順応性を有するものであって、多くの用途での使用が可能となる高い汎用性のある材料であり、今後の新たな商品等への応用検討においても活用することのできるものである。
(7)さらに、本発明のガラスペーストは、軟化点が620℃以下であるため、気密構造体を構成する他の部材に対し負担を強いることのないという点に加えて、加熱処理等を行う設備等の劣化を遅延させ、設備費用に関わる定期的なメンテナンス費用負担等を抑制することをも可能とする卓越した製品であって、費用負担等の軽減によってもたらされる余剰資材、費用等を他用途等に振り向けることを可能とするものである。
(8)また、本発明のガラスペーストは、上記に加えて無機酸化物ガラス粉末が、実質的にPbOを含有しないため、製造設備等に環境上必要となる集塵設備等の費用負担を低減するばかりでなく、本製品を採用した気密構造体を利用する各種商品についても、環境上の各種配慮を施す必要性がなく、広く利用が可能となるものであって、利用者に安心して使用できる電子機器等を製造する際に必須となる安全性に関する基準を満足することが確実に実現でき、今後広く普及する生活用品等への応用においても活用されるものとなる可能性を有するものである。
(9)さらに本発明のガラスペーストは、上述の特徴を備えディスプレイ表示素子の気密封着に使用されるものであるため、気密性ばかりでなく封着後の封止部強度、化学的耐久性、絶縁性等の性質についても充分な機能を有するものであって、気密封止体の寸法等に左右されない高い封着後特性を実現できるものであって、過酷環境下等で利用される電子部品、映像関連デバイスへも充分に対応することのできる機能を有するものであり、高い価値のあるガラス製品である。
(10)また本発明のガラスペーストは、上記に加えてディスプレイ表示素子がプラズマディスプレイパネル(PDP)、電子放出素子(FED)、蛍光表示管(VFD)の何れかに使用されるものであるため、封着構造体が必要とされる性能を長時間に亘り発揮させることのできるよう、長期的に安定した封着構造を形成維持することのできる安定した品位を有するものであって、利用される商品のライフを増加させるばかりでなく、これら商品への信頼性を高め、さらなる需要を喚起することにも繋がるものであり、この分野における定番的な商品となるものである。
(11)本発明のガラスペーストの製造方法は、解砕装置によってガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製するものであるため、欠陥が著しく少ない気密構造体を形成するために必須となるガラスペーストを安価に製造する方法であるばかりでなく、ガラスペーストの製造装置の消耗を少なくし、その使用期間を延ばすことによって安定生産が実現される製造環境を整えるという点からも価値あるものである。
(12)また本発明のガラスペーストの製造方法は、無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを混合するガラスペーストの製造方法であって、解砕装置によってガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体を50個以下とするものであるため、封着後に封着部に加わる外力によってもたらされる封着体内部の応力分布が局所的に集中されて拡大されるようなことがなく、その結果局所的に脆弱な構造となるような封着構造体になってしまうことが極めて少ない優れた構造体を構築することが可能となる製造方法であって、本発明のガラスペーストが使用される商品について、その性能におけるばらつきを極力減少させ、同等の機能を付与することを可能とするものである。
以下に本発明のガラスペーストとその製造方法について、実施例に基づいて説明する。
本発明に係るガラスペーストは、次のような手順で作製される。まず、ガラス粉末は、表1に示したA〜Jの様な所定組成となるように各種無機原料を秤量、混合して原料バッチを作製する。この原料バッチを白金坩堝、あるいは石英坩堝中で1000℃以上の温度に加熱することによって、ガラス化反応を起こさせ、5時間以上溶融してその間に機械的な撹拌操作も行うことによって、均質な溶融状態とする。次いでこの坩堝の底部に配設された溶融ガラス流出口より溶融ガラスを所定速度で流出させ、約1mmの薄板状ガラスにロール成形し、さらにまだ高温状態にある板ガラスを水冷状態にある容器中に投入して熱衝撃を与えて粗粉砕を行う。得られた粗粉砕ガラス(フレーク状ガラス)表面に付着する水分を除去するため、加熱炉中で脱水乾燥処理を10時間おこなって、乾燥した状態の粗砕ガラスを得る。そして、この乾燥した粗砕ガラスをアルミナ製ボールミル中に投入して6時間の粉砕処理を行う。得られたガラス粉末について、その平均粒度(D50)の計測を島津製作所製のSALD−2000Jを使用して行い、一方軟化点の測定をマクロ型示差熱分析計により行い、変曲点の該当する点を軟化点とした。以上の計測の結果を表1にまとめる。
また、フィラーについては、表2に示した様な配合比のものを使用した。なお、アルミナについては前述同様の方法で平均粒度を測定したところ、D50=2.0μm、同様にチタニアについては、D50=0.5μm、α−石英については、D50=2.1μm、ジルコニアについては、D50=1.8μm、マグネシアについては、D50=2.1μmであった。
次に、得られたガラス粉末を最終的なガラスペースト中の配合比として、表3にまとめて表したような比率で混合する作業を行った。具体的には、まずガラス粉末として71〜51質量%、フィラーとしてアルミナ、チタニア、ジルコニア等を適宜配分したフィラー7〜21質量%相当をそれぞれ秤量して準備した。また有機成分としては、溶剤としてブチルカルビトールアセテート、ターピネオールを適量、可塑剤としてジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレートを適量、さらに分散剤としてソルビタンセスキオレート、グリセロールモノオレートを適量調整して、併せてガラスペーストに対する配合比で22〜30質量%添加し、ホモジナイザーにより均質混合し、そこに上記のガラス粉末、フィラーを添加した。そして得られた無機粉末と有機成分の粗混合ペーストについて、ロール間隙を隙間ゲージで予め微調整し、3本ロールミルを使用して5回に亘る混練処理操作を行い、さらに5mmのアルミナボールを使用したボールミル中で混練操作を3時間おこなうことによってガラスペーストを得た。
得られたガラスペーストを使用して、封止状態での有機質異物の数を計測する評価を行うため、スクリーン印刷装置を使用して、200mm×200mm×1mmの寸法を有する無アルカリ板ガラス表面にスクリーン印刷によって10〜100μmの複数の厚みを有する積層構造体を形成した。そしてこの構造物をサンドブラスト処理に掛けた後、構造物の表面を走査型電子顕微鏡によって500倍の倍率にて調査し、ガラスペースト100g当たりの凝集体の数を計測した。サンドブラスト処理によって凝集体の存在する箇所には、存在しない箇所とは異なり、表面に凹凸が認められるため、その数を容易に検出することができる。その結果、本発明のガラスペーストは表3に示す様に、いずれも5μm以上の球相当直径を有する凝集体の数が検出限界以下か、多くても3個/100gと少なく高い清浄性を有する状態にあることが確認できた。また、走査型電子顕微鏡に接続した画像解析装置を使用して凝集体の球相当直径を算出し、得られた球相当直径と凝集体数の積を算出して凝集体粒度積値を得た。その結果、凝集体粒度積値は、0から142μm・個までの値であって、充分小さいものであった。表3でNDと表記したのは、いずれも検出できなかったことを表している。
(比較例1)比較例としてガラスペースト中の凝集体に対する諸々の対策を施さない場合について同様の評価を実施した。すなわち実施例1と同様の手順によって、製造工程に何ら特別の凝集体に対する対策を行わず、できあがったガラスペーストを実施例1と同様のガラスペーストを作製して、同様の評価を行ったところ、表4の様な結果となり凝集体の数は58〜412個/100gの品位となり、実使用に供することが困難な品位であることが判明した。また、上記同様に電子顕微鏡に付属する画像処理装置によって、この凝集体の球相当寸法を計測し、それに基づいて凝集体粒度積値を算出したところ、少ないものでも5231μm・個であり、多いものでは9242μm・個という高い値となることが判明した。
以上のように、実施例1と比較例1から、本発明のガラスペーストはペースト中に存在する凝集体の個数が極めて少なく、気密構造体を形成するに相応しい品位であることが判明した。
次いで、本発明のガラスペーストを使用して封止構造体を形成した後のリーク性評価について、以下の手順で評価を行った。
まず、実施例1同様の操作によって、ガラス粉末、フィラー、有機成分を準備し、秤量、調合を行って、実施例1の試料No.1〜10のガラスペーストを作製した。次いで、これらガラスペーストを予め準備したPDP用の板ガラス(寸法10×10×0.7mm)にスクリーン印刷で板ガラスの透光面の一面側上に端面に沿って幅100μm、高さ100μmの障壁類似の印刷断面となるよう、ロの字状の外観となるように複数回に亘る積層印刷を行った。その後、この印刷を行った試料面を上に向けて仮焼成を行い、同じ寸法を有する別のPDP用板ガラスを印刷によって形成したガラスペーストによる構造体面を挟むように乗せて、PDPの製造工程で行われると同様の複数回に亘る加熱焼成を行った。こうして得られた試験用焼成構造体を500検体(試料No.1〜10の各ペーストについて50検体ずつ作製した。)使用して、グロスリーク試験、ファインリーク試験を行った。その結果、本発明のガラスペーストを使用した場合には、グロスリーク試験、ファインリーク試験のいずれについても問題のある試料は認められない品位であることが判明した。
(比較例2)一方、比較例として試料No.11〜20のガラスペーストを使用して実施例2同様の作成手順によって気密構造体を500検体作製した。この構造体によって実施例2同様のグロスリーク試験、ファインリーク試験を行ったところ、グロスリーク試験では500検体中14検体にリークが認められ、さらにファインリーク試験によって500検体中に7検体にリークが認められた。リークの発生した試験体について、リーク箇所の調査を行ったところ、リークの認められた21検体中5検体は、封止部のクラックによるものであり、それ以外の16検体は、いずれも凝集物の存在した箇所が起源となって発泡が認められるかあるは変形した形状となっていることが判明した。
実施例2と比較例2の評価によって、本発明のガラスペーストによって作製された気密構造体は、リーク試験に耐える品位を有することが判明した。
本発明のガラスペーストは、気密構造体を形成する用途として例えばPDPの隔壁形成材料として利用する場合について述べたが、それ以外にも強固な封着を実現するような用途、例えば光部品用途等で利用されるレンズ部品の封止、電子部品用途で利用される低温焼成基板の封止等の用途で好適な性能を実現できるものである。
また、本発明のガラスペーストの製造方法は、封着用途よは限定せず、無機酸化物ガラス粉末と有機溶媒を混合して利用される用途であるならば、どのような場合にでもその応用が可能となるものであって、種々の用途で採用することのできるものである。
4 保護膜
10 プラズマディスプレイパネル
11 前面ガラス基板
12 背面ガラス基板
13 隔壁
16 透明電極
17 誘電体層
18 アドレス電極
20 放電空間
21 蛍光体
10 プラズマディスプレイパネル
11 前面ガラス基板
12 背面ガラス基板
13 隔壁
16 透明電極
17 誘電体層
18 アドレス電極
20 放電空間
21 蛍光体
Claims (12)
- 無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを含有するガラスペーストであって、該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下にあることを特徴とするガラスペースト。
- 該ガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体が50個以下であることを特徴とする請求項1記載のガラスペースト。
- 無機酸化物ガラス粉末が40〜85質量%、有機成分が15〜60質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガラスペースト。
- フィラーを1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1から請求項3に記載のガラスペースト。
- フィラーとして結晶化ガラス粉末及び/または無機結晶質粉末を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガラスペースト。
- フィラー中にチタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア及びムライトのいずれかを少なくとも1質量%以上含有することを特徴とする請求項5に記載のガラスペースト。
- 軟化点が620℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のガラスペースト。
- 無機酸化物ガラス粉末が、実質的にPbOを含有しないことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のガラスペースト。
- ディスプレイ表示素子の気密封着に使用されるものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のガラスペースト。
- ディスプレイ表示素子がプラズマディスプレイパネル、電子放出素子、蛍光表示管のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のガラスペースト。
- 無機酸化物ガラス粉末と有機成分とを混合するガラスペーストの製造方法であって、解砕装置によって該ガラスペースト中に存在する凝集体の平均球相当直径にガラスペースト100g中の凝集体個数を乗じた凝集体粒度積値が、50×102μm・個以下となるようにガラスペーストを調製することを特徴とするガラスペーストの製造方法。
- 解砕装置によってガラスペースト100g中に存在する5μm〜300μmの球相当直径を有する凝集体を50個以下とすることを特徴とする請求項11記載のガラスペーストの製造方法。
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