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JP2005091353A - 試料測定装置及び試料測定方法 - Google Patents

試料測定装置及び試料測定方法 Download PDF

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JP2005091353A JP2004230656A JP2004230656A JP2005091353A JP 2005091353 A JP2005091353 A JP 2005091353A JP 2004230656 A JP2004230656 A JP 2004230656A JP 2004230656 A JP2004230656 A JP 2004230656A JP 2005091353 A JP2005091353 A JP 2005091353A
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Takashi Kodama
児玉高志
Hiroyuki Otani
大谷弘之
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Rikogaku Shinkokai
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Rikogaku Shinkokai
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Abstract

【課題】 原子間力顕微鏡のプローブなどの力付与部材を試料に接触させた際の試料の状態変化を検出すること。
【解決手段】 試料の所定位置に力を付与する力付与装置19と、力が付与された位置付近に光を照射する第1光源7と、力が付与された位置から発する光を分光する分光器10と、分光された光を撮像する第1撮像装置11とを備える試料測定装置、及びその試料測定方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、測定物質に力を付与し、測定物質から発する光を分光して、測定物質を測定する装置及び方法に関するものである。
試料を原子又は分子オーダーの分解能で画像化する装置として一連の走査型プローブ顕微鏡が知られている。その中で試料と測定プローブの間に働く原子間力によって測定プローブの支持台が撓むことを利用して、試料の形状測定などを様々な測定環境、測定試料を対象に行うことができる原子間力顕微鏡がビニッヒ(Binnig)等によって提案されている。この原子間力顕微鏡は、例えば下記の特許文献1に開示されている。この装置を用いて測定プローブである探針と試料表面との間の垂直方向の距離を変化させて、試料と探針の間の距離に対する探針に働く力を計測する測定をフォースカーブ測定という。この測定によって、試料表面の弾性や電磁気的特性、付着力のような試料の詳細な物性情報を計測することができる。
このような原子間力顕微鏡のうち試料のその他の情報も測定する試みが報告されている。まず原子間力顕微鏡と光学顕微鏡を組み合わせた測定装置としては,蛍光性試料を選択的に測定するためにプローブと蛍光試料の位置合わせを行う機能を有する装置が例えば非特許文献1に提案されている。またこれに関連した技術として例えば特許文献2に公開されている。
原子間力顕微鏡により計測した形状像とそれに対応した光学像を近接場光を利用して高分解能で同時に計測する装置が、例えば非特許文献2に提案されており、また例えば特許文献3に開示されている。
特開昭62−130302号 特許第3302216号 特開平7−260808号 C. A. J. Putman、K. O. van der Werf、B. G. de Grooth、N .F. van Hulst、F. B. Segerink and J. Greve, Atomic force microscope feat-uring an integrated optical microscope ; Ultramicroscopy. 42-44, 1549 (1992) H. Muramatsu、N. Chiba、T. Ataka、H. Monobe and M. Fujihira. Scanning near-field optic/atomic-force microscopy; Ultramicroscopy. 57,141-146(1995)
従来の原子間力顕微鏡によるフォースカーブ測定では、探針が計測した力とプローブが試料表面に対して動作した距離の情報は取得することができるが、その影響を反映した例えば分子の電子状態変化など試料の状態変化を検出することはできなかった。また、そのために試料の力学的物性と光学情報を同時に測定する装置として利用されている従来の走査型光近接場原子間力顕微鏡では、高分解能の試料表面の形状と光学情報の画像測定には適しているが、光ファイバを原子間力顕微鏡のカンチレバーとして使用する必要があるため、フォースカーブ測定のような微小な力の影響を反映した試料の状態変化を検出することは難しかった。
また従来の光学顕微鏡と原子間力顕微鏡を組み合わせた測定装置として提案されているものは、光学試料への大まかな原子間力顕微鏡のプローブ調整を行うためのものであり、局所的な原子間力顕微鏡の接触領域の位置合わせを行うことはできず、またプローブの影響による局所スペクトル測定を行うことを目的とした測定装置ではなかった。
本発明は、このような事情をふまえてなされたものであり、原子間力顕微鏡のプローブなどの力付与部材を試料に接触させた際の試料の状態変化を検出するものである。
本発明は、また、特に原子間力顕微鏡などの力付与装置のフォースカーブ測定に試料の状態変化の情報を付加するものである。
<1>本発明は、試料の所定位置に力を付与する力付与装置と、力が付与された位置付近に光を照射する第1光源と、力が付与された位置から発する光を分光する分光器と、分光された光を撮像する第1撮像装置とを備える試料測定装置にある。
<2>本発明は、また、試料に力付与部材により力を付与し、力が付与された位置付近に光を照射し、力が付与された位置から発する光を分光する、試料測定方法にある。
<1>本発明は、原子間力顕微鏡のプローブなどの力付与部材を試料に接触させた際の試料の状態変化を検出することができる。
<2>本発明は、また、原子間力顕微鏡などの力付与装置のフォースカーブ測定に試料の状態変化の情報を付加することができる。
<1>試料測定装置
試料測定装置は、試料に力を付与し、その試料から、蛍光スペクトルやラマンスペクトルなどの光学スペクトルを求めるものであり、少なくとも、試料に力を付与する力付与装置と、力が付与された個所付近の物質に光を照射する第1光源と、光が照射された物質から発する光を分光する分光器を備えている。分光器により光学スペクトルが求められる。
試料測定装置は、例えば図1に示すように、試料を配置する試料台5と、試料台5の上部に配置した原子間力顕微鏡と、下部に配置した倒立型共焦点光学顕微鏡とで形成することができる。倒立型共焦点光学顕微鏡は、光学スペクトルを求めるために第1光学系を有する。更に、測定位置の位置合わせのために、必要に応じて、第2光学系を配置する。
試料測定装置は、力付与装置を制御する制御装置17、アナログ-デジタル変換装置18、試料測定装置を制御する全体制御装置20、第1光源の光を全体制御装置20の制御の基に遮断制御する第1光源自動遮断装置を備えている。全体制御装置20は、フォーカスカーブの測定と同時に光学スペクトルの測定を行うように制御できる。それにより、全体制御装置20は、光学スペクトルをフォーカスカーブ中に対応付けることを可能とする。
試料測定装置は、具体的には、測定物質間に働く原子間力を利用して、計測物質の形状観察や物質間の相互作用などの測定を行う原子間力顕微鏡と光学顕微鏡を一体化させた光学原子間力顕微鏡である。試料測定装置は、励起光を照射し試料、もしくはプローブなどの力付与部材1から発生した蛍光、散乱光などをピンホール8を用いて局所的に検出し、分光器10を通して第1撮像装置11を使い光学スペクトル測定を行うことができる。それにより、原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定と同期させて接触領域近傍の局所光学スペクトル測定を行うことができる。
<2>力付与装置
力付与装置19は、試料に押圧力、引張力などの力を付与するものであり、例えば、原子間力顕微鏡のプローブなどの構成部材を利用できる。力付与装置19は、試料に直接力を付与する探針、プローブ、ビーズなどの力付与部材1を有する。特に、先端の鋭い探針を用いると、ナノスケールの測定が可能となる。また、力付与装置19は、必要に応じて、試料に付与する押圧力、引張力などの力の大きさを求めることができる。力の大きさは、例えば原子間力顕微鏡のプローブを支持しているカンチレバーの撓みにより算出することができる。カンチレバーの撓みは、例えばレーザー2と分割光電変換素子3で求めることができる。また、力付与装置19は、必要に応じて、試料表面に対する力付与部材1の微小距離変化を求めることができる。力付与部材1の水平方向や垂直方向の微小変位は、微動素子4により行うことができる。力付与装置19の制御は、原子間力顕微鏡の制御装置、即ち力付与装置制御装置17で行うことができる。力付与部材1は、少なくとも表面の一部を金属で形成することができる。金属は、金、銀、白金、銅などが使用される。特に、金属からなる探針又は探針の少なくとも一部が金属で被覆された、金属探針を利用すると、表面増強ラマンなどの近接場光を有効に利用することができる。
<3>第1光源
第1光源7は、試料に力が付与された個所付近の試料の物質に光を照射するものである。第1光源7の光は、試料の物質に関係するラマンスペクトルや蛍光スペクトルなどの光学スペクトルを生じさせることができる。第1光源から発する光は、第1光学系を通り、試料の所定位置に照射される。照射の結果生じた、力付与部材19の接触領域から発した光は、第1光学系を通り、分光器10で分光され、CCDカメラなどの第1撮像装置11で光学スペクトルとして撮影され、全体制御装置20の表示装置で表示することができる。
第1光学系は、倒立型共焦点光学顕微鏡を利用でき、第1光源7から発した光線は、全体制御装置20の制御の基に遮断制御する第1光源自動遮断装置を通り、ミラーで反射し、ダイクロイックミラー9で反射し、遮光板のピンホール8を通り、ミラーで反射し、対物レンズ6を通して試料に照射される。力付与部材19の接触領域から発した光は、第1光学系を戻り、対物レンズ6を通り、第2光学系の一部を通り、ミラーで反射し、遮光板のピンホール8、ダイクロイックミラー9(試料からくる励起光など、試料の光学スペクトルに関係しない光を取り除くミラー)を通り、分光器10に到達する。分光器10で分光された光学スペクトルは、第1撮像装置11で電子データとして取り込まれる。力付与装置19と第1撮像装置11は、共に力付与装置制御装置17で制御され、更に、全体制御装置20で全体に管理される。
<4>第2光源
第2光源12は、試料の位置を確認するものであり、第2光源の光は、第2光学系を通り、試料に照射され、試料から散乱光として反射され、第2撮像装置16で試料の散乱像として撮像され、散乱画像は、表示装置で表示される。第2光源から発する光は、第2光学系を通り、まず、アイリス13で正八角形などのパターンが形成され、可動ミラー14で反射し、可動ミラー15を通り、対物レンズ6を通り、試料の所定位置にパターンを照射する。試料から反射したパターンは、対物レンズ6を通り、第2光学系を戻り、可動ミラー15で反射して、CCDカメラなどの第2撮像装置16に入力される。第1光学系と第2光学系は、対物レンズ6を含む共通光軸の個所で光軸が一致している。
<5>試料測定装置の設定例
試料は、例えば結晶を作るような高濃度の蛍光色素溶液を有機溶媒に溶かし、カバーガラス基板表面に垂らし、溶媒を飛ばして形成する。試料が形成されているカバーガラス基板は、試料台5上に配置される。次に、第1光学系からピンホール8と分光器10を取り除いて、第1光源7の光を試料の下方から照射する。照射の結果、試料の結晶表面から蛍光が発生する。第1光学系を戻ってきた蛍光は、第1撮像装置で撮影され、試料表面の形状が表示装置に映し出される。この撮影画像は、結晶面の形状と対応しており、試料の表面形状を知ることができる。次に、ピンホール8を所定の配置にすると、ピンホール8を通った光スポット、即ち試料の特定位置の光点が第1撮像装置で撮影され、表示装置に表示される。これにより、試料表面の画像とその中のピンホールの光点の位置を知ることができる。
また、第2光学系において、第2光源12の光は、アイリス13を通過し、八角形のアイリスパターンが作成される。アイリスパターンは、第2光学系を通して、下方から試料へ照射される。照射されたアイリスパターンは、試料面の散乱光として第2光学系を戻り、第2撮像装置16で撮像され、表示装置に表示される。その表示画像が図2である。図2には、アイリスパターン(八角形)と共に、力付与部材1が試料に当接している位置(1の矢印の位置)、及び、力付与部材1のビーズの形状(2の矢印の位置)が表示されている。第2光学系を利用して同じ試料の散乱画像を取得し、蛍光画像に対する位置との対応から散乱画像中のピンホール検出部位を知ることができる。力付与部材1の試料への当接は、力付与装置制御装置17が分割光電変換素子3の信号を受信し、微動素子4を制御して行う。
対物レンズ6と試料の焦点合わせは、試料台5又は対物レンズ6を垂直方向に相対的に移動し、アイリスパターンの鮮明状態で決定する。対物レンズ6の焦点が合えば、第1光学系と第2光学系、共に焦点が合ったことになる。試料台5を水平方向に移動しても、第1光源と第2光源の光軸が一致しているので、ピンホールによる光点と第2光源のパターンとの相対位置は変わらず、試料における光点の照射位置を容易に知ることができる。
<1>力付与部材の接触領域の蛍光スペクトルの取得
力付与部材1の接触領域の蛍光スペクトルを取得する場合、試料側、もしくは力付与部材1側に蛍光性物質を導入する。その際、力付与部材1の接触領域を例えばシリコンやポリスチレンのような市販されているビーズを力付与部材1の先端に導入して大きくするか、もしくは力付与部材1の試料接触部位にのみ蛍光物質を導入して測定する。試料のラマンスペクトルを測定する場合は、力付与部材1を金、銀といった金属で覆い、表面増強ラマン効果により接触領域のシグナルを増大する。
図2は、半径5μmのポリスチレンビーズを固定した原子間力顕微鏡プローブを第2光学系を利用して下方から第2光源12の光を照射して測定した2次元散乱画像である。力付与部材1を基盤に接触させ、対物レンズ6の焦点はカバーガラス基板の試料表面に調整したところ、球状のビーズの一部((2)の矢印の位置)が円形に見え、円の中心((1)の矢印の位置)がビーズの接触領域である。
図3は、図2に示した位置で取得した蛍光スペクトルである。カバーガラス基板表面をシランカップリング法を利用して-SH基が末端官能基となるように被膜し、そこに蛍光性色素であるテトラメチルローダミンを反応させた試料に、力付与部材1に固定されたポリスチレンビーズに同じく蛍光性色素であるフルオレセインを化学結合で固定し、両色素間の蛍光共鳴エネルギー移動を観察した測定例である。
図2の円形の部分(1)は、カバーガラス基板表面と球状のビーズが接触している部分であり、図3の(1)の測定データに示すように、蛍光エネルギー移動の影響でアクセプタ色素の蛍光強度が増加していることがわかる。図2の円形の部分(2)は、ビーズの部分のドナー色素の蛍光強度のスペクトルを示す。図3の(2)の測定データに示すように、蛍光エネルギー移動が生じていない。図2の部分(3)は、アクセプタ色素の蛍光強度のスペクトルを示すように、図3の(3)の測定データに示すように、蛍光エネルギー移動が生じていない。このように、力付与部材1がカバーガラス基板表面に接触することにより、ドナー色素であるフルオレセインの蛍光強度が減少し、アクセプタ色素の蛍光強度が増加していることがわかる。
<2>力付与部材と試料表面の接近状態の測定
図4は、力付与部材1表面にpH感受性色素として知られるフルオレセインを化学結合させ、親水性表面、疎水性表面に接近させたときの変化を調べた結果を示す。図4(a)、(b)は、親水性表面に接触する場合で、ガラス基板表面をシランカップリング法を利用して-NH基が末端官能基となるように被膜して親水性とし、溶液中において、力付与部材1をガラス基板表面に接近させたときのデータである。図4(a)はフォースカーブを示しており、グラフの右側の白丸の位置は、力付与部材1の先端がガラス基板表面から約200nm以内にあり、力が加えられていない状態を示している(横軸の数値は、ガラス基板表面からの距離でなく、単に力付与部材1の変化距離を示すものである。グラフが急に傾斜している個所がガラス基板表面との接触点である。)。グラフの左側の黒丸の位置は、力付与部材1の先端がガラス基板表面に接触している状態を示し、押圧力が約22nNである(図4(a))。図4(b)には、白丸(力付与部材1がガラス基板面から離れている場合の破線グラフ)と黒丸(力付与部材1がガラス基板面に接触している場合の実線グラフ)の測定データがほぼ同一であることを示している。このことは、力付与部材1の先端が白丸の位置でも黒丸の位置でも、力付与部材1の先端の色素が発光する蛍光強度において変化がないことを示している。
図4(c)、(d)は、疎水性表面に接近する場合で、ガラス基板表面をシランカップリング法を利用して−CF基が末端官能基となるように被膜して疎水性とし、溶液中において、力付与部材1をガラス基板表面に接近させたときのデータである。図4(c)はフォースカーブを示しており、グラフの右側の白丸の位置は、力付与部材1の先端がガラス基板表面から約200nm以内にあることを示している。この白丸の位置では、力が付与されていないが、力付与部材1が一度ガラス基板表面に接してから離す場合、引張力が作用することを示している。グラフの左側の黒丸の位置は、力付与部材1の先端がガラス基板表面に接触していることを示している。この黒丸の位置では、押圧力が約10nNである。図4(d)の破線データは、白丸(力付与部材1がガラス基板面から離れている状態)でのデータであり、実線データは、黒丸(力付与部材1がガラス基板面に接触している状態)のデータである。破線データは、主に500nm〜550nmの波長付近で蛍光強度が大きいが、実線データでは、消えている。このことは、力付与部材1の先端が疎水性表面に接近すると、蛍光が消光することを示しており、これは、疎水性表面ではバルクと違い溶媒分子が少なく、その結果安定な結合型を取り蛍光強度が減少したものと考えられる。
<3>力付与部材による生体高分子の分子操作
試料測定装置は、全体制御装置20の制御の基に、力付与装置1のフォースカーブ測定と同期させて第1撮像装置11で発光スペクトルを測定でき、その発光スペクトルを得られたフォースカーブに対応付けることが可能である。また、第1撮像装置11が光学スペクトルを撮像する時間内にフォースカーブ測定中の力付与部材1が垂直方向に動作した範囲も対応付けることが可能である。そのため力付与装置19の力付与部材1が施した力による試料の動的状態変化を詳細に検出することができる。なお、垂直方向に動作した範囲は、図6(a)、(c)及び、図8(b)に示されているように番号と対応する線分の範囲である。この番号は、1が1工程操作開始時の非圧縮の状態、2が圧縮の状態、3が伸張の状態、4が伸張後の非圧縮の状態を示している。
図5、図6は発光タンパク質であるグリーンフルオレッセント・プロテイン(Green Fluorescent Protein(GFP))をガラス基板表面に固定し、力付与部材1により分子操作を行った際の測定結果を示す。GFP分子は、タンパク質の形状が変化すると発する蛍光強度が減少するという特徴がある。ガラス基板表面をシランカップリング法を利用して修飾し、GFP分子の末端を化学結合で選択的にガラス基板表面に固定した。図5(a)〜(c)のようにGFP分子に力付与部材1で圧縮力や固定したビーズ表面を適切に修飾してガラス基板表面とビーズ表面で架橋することで伸張力を施した。図5(a)は、GFP分子に圧縮力を付与している状態を示している。図5(b)は、適当な箇所をビーズ表面に結合させ、強い力でGFP分子に伸張力を付与している状態を示している。図5(c)は、もう一方の末端を選択的にビーズ表面に付着させ、弱い力で伸張力を付与している状態を示している。
図6は、力付与装置19で得られたフォースカーブとGFP分子に圧縮力や伸張力を施すことで同期させて、第1撮像装置11で得られた蛍光スペクトルを示している。図6(b)、(d)は、フォースカーブと同期して得られた蛍光スペクトルを示している。蛍光スペクトルは、1から4まで順番に測定されたことを示している。また図6(b)、(d)の蛍光スペクトルの1と4は、力付与部材1が基板から離れている時に測定されたスペクトルである。また図6(b)、(d)の蛍光スペクトルの2は、力付与部材1がGFP分子に圧縮力を施しているときに測定された結果である。また図6(b)、(d)の蛍光スペクトルの3は、力付与部材1がGFP分子に伸張力を施しているときに得られた結果である。また図6(b)、(d)の蛍光スペクトルの2、3を測定した際の力付与部材1の状態を同じ番号で、図6(a)、(c)のフォースカーブ中に示した。図6(a)、(b)は、図5(b)のようにGFP分子の任意の箇所をビーズ表面に結合させて伸張した際の測定結果を示している。また図6(c)、(d)は、図5(c)のように末端を選択的にビーズ表面に付着させて測定された結果を示している。図6(b)、(d)は、力付与部材がGFP分子に接触させて圧縮力を加える場合、その蛍光強度が減少していることを示している。また、図6(b)は、GFP分子を適当な箇所で強く伸張した場合、その蛍光強度が接触により圧縮力を施した場合よりも大きく減少していることがわかる。一方、図6(d)は、GFP分子の末端の官能基を選択的にビーズ表面に付着させて架橋して伸張力を加えた場合、GFP分子の蛍光強度が力を付与していないときと比較してほとんど変化していないことが示されている。このように通常の原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定を利用して行われている生体高分子の分子操作に新たに光学スペクトルの情報を付加して示すことができる。それにより、フォースカーブ測定からでは得られなかった生体高分子の安定性や動的構造情報をより詳細に得ることが可能である。
<4>金属探針による生体高分子測定
試料をナノスケールで測定するためには、先端の鋭い金属探針を使って測定する。試料測定装置、並びに測定方法をナノスケールに適用する場合、金属が示す表面増強ラマンなどの近接場光を利用することができる。第1光源7の波長に応じて選択された金や銀、白金、銅などの金属により覆われた金属探針を利用することにより、試料の形状と局所的な光学情報を同時に取得することができる。
図7は、試料測定装置を利用して測定された生体膜の形状像である。これらの生体膜は光駆動プロトンポンプを行うバクテリオロドプシン(bacteriorhodopsine(bR))を含む紫膜断片である。探針は、シランカップリング法を利用して表面に末端官能基を導入した後に、あらかじめ用意しておいた直径70nm程度の銀微粒子を吸着させた。図7は多数の膜断片がガラス基板表面に吸着していることを示している。図8は、この膜断片で測定されたフォースカーブと表面増強ラマンスペクトルを示している。図8(a)はラマンスペクトルで、1は銀探針がガラス基板表面にある紫膜断片から離れているとき、2は銀探針がガラス基板表面にある紫膜断片に接触し、力を付与しているときに、それぞれ測定されたラマンスペクトルを表している。1と比較して2は強いラマン信号が検出されていることを示している。この2は紫膜中に含まれているbR分子のラマンスペクトルである。金属探針を利用したラマン測定は、先端に存在している分子のラマンスペクトルのみを検出することができる。このように生体膜などの生体試料の画像測定を生理的条件下においてナノスケールで行い、その画像中の光学情報を局所的に容易に検出することができる。この方法を利用することにより、力学測定に光学分解能を超えた光学情報を同時に対応付けることが可能である。このように生体膜などの生理条件下で測定する必要がある、生体試料の力学的性質と光学的性質を同時に検出することができる。これにより生体試料の動的な構造解析や試料の分子の識別を行うことができる。
以上のように、試料測定装置は、力付与部材1を試料の面に接触させたり、離間させることができ、その時々における、力付与部材1の位置における試料の発光変化を的確に測定することができる。特に、試料に押圧力や引張力を付与でき、その力の大きさも測定でき、又は、力付与部材1の微小距離変化による測定も可能である。また、試料測定装置は、試料表面の分子種の同定や力付与部材1と試料表面間の溶媒状態の検出、力付与部材1の摩擦などによる固体表面の状態変化の検出、固体物理・表面科学分野、更に接触領域内の分子の力学的構造変化による電子状態変化の検出、タンパク質など生体高分子の単分子レベルの相互作用解析や構造解析など、幅広い学術分野の新しい測定装置として有用である。試料測定装置は、単体の新たな測定装置の他に、原子間力顕微鏡に機能を付加する形で提供できる。そのため測定対象は固体から生体物質まで幅が広い。一方産業的な価値は高く、例えば、ナノスケールの力学的応答による状態変化を観察することが可能なため、原子間力顕微鏡のようにナノ材料の作成ができ、また、さまざまな産業用チップ等の検査装置として原子間力顕微鏡に新しい機能を提供できる。
試料測定装置の説明図 ビーズを固定した試料の第2光学系による散乱画像の図 図2中の場所1、2、3で測定した代表的な蛍光スペクトルの図 親水面(a)〜(b)、疎水面(c)〜(d)に付着した際のプローブ結合フルオレセインの発光変化を示す図 蛍光性タンパク質であるグリーンフルオレッセント・プロテインに力を付与する実施例の説明図 グリーンフルオレッセント・プロテインに圧縮力と(a)、(b)適当な箇所で大きな伸張力、(c)、(d)タンパク質の末端に弱い伸張力をそれぞれ施したときの発光変化を示す図 銀探針を使って力付与装置で測定された紫膜の形状画像を示す図。 銀探針で紫膜に力を付与しながら測定されたラマン散乱スペクトルを示す図。
符号の説明
1・・・力付与部材
2・・・レーザー
3・・・分割光電変換素子
4・・・微動素子
5・・・試料台
6・・・対物レンズ
7・・・第1光源
8・・・ピンホール
9・・・ダイクロイックミラー
10・・分光器
11・・第1撮像装置
12・・第2光源
13・・アイリス
14・・可動ミラー
15・・可動ミラー
16・・第2撮像装置
17・・力付与装置制御装置
18・・アナログ-デジタル変換装置
19・・力付与装置
20・・全体制御装置
21・・第1光源自動遮断装置

Claims (13)

  1. 試料の所定位置に力を付与する力付与装置と、
    力が付与された位置付近に光を照射する第1光源と、
    力が付与された位置から発する光を分光する分光器と、
    分光された光を撮像する第1撮像装置とを備えることを特徴とする試料測定装置。
  2. 請求項1に記載の試料測定装置において、
    力付与装置は、試料に付与する力の大きさを求めることができることを特徴とする、試料測定装置。
  3. 請求項1に記載の試料測定装置において、
    力付与装置は、少なくとも先端表面が金属で形成された探針を備えていることを特徴とする、試料測定装置。
  4. 請求項2に記載の試料測定装置において、
    力付与装置と分光器を制御する制御装置を備え、
    フォーカスカーブと光学スペクトルを同時に測定できることを特徴とする、試料測定装置。
  5. 請求項1に記載の試料測定装置において、
    力付与装置は、試料の一面から力を付与し、
    第1光源は、試料の他面から光を照射することを特徴とする、試料測定装置。
  6. 請求項1に記載の試料測定装置において、
    第1光源の光線が通過するピンホールを有する遮光板を備えていることを特徴とする、試料測定装置。
  7. 請求項1に記載の試料測定装置において、
    試料に光を照射する第2光源と、
    試料からの散乱光を撮像する第2撮像装置とを備え、
    第1光源と第2光源との光軸を試料の照射付近でほぼ一致してあることを特徴とする、試料測定装置。
  8. 試料に力付与部材により力を付与し、
    力が付与された位置付近に光を照射し、
    力が付与された位置から発する光を分光することを特徴とする試料測定方法。
  9. 請求項8に記載の試料測定方法において、
    試料に付与する力の大きさを求めることを特徴とする試料測定方法。
  10. 請求項8に記載の試料測定方法において、
    試料は生体試料であることを特徴とする試料測定方法。
  11. 請求項9に記載の試料測定方法において、
    光学スペクトルをフォーカスカーブに対応付けることを特徴とする、試料測定方法。
  12. 請求項8に記載の試料測定方法において、
    試料に力を付与する際、力付与部材と試料の間に溶剤を介在させることを特徴とする試料測定方法。
  13. 請求項8に記載の試料測定方法において、
    少なくとも先端表面が金属で形成された探針で試料に力を付与することを特徴とする試料測定方法。

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