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JP2005090549A - 転がり軸受 - Google Patents

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景介 横山
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Abstract

【課題】 水,塵埃等の侵入が生じにくく、且つ、回転トルクが小さい転がり軸受を提供する。
【解決手段】 深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置された複数の転動体3と、内輪1及び外輪2の間に複数の転動体3を保持する保持器4と、アクリルゴムで構成されたシールリップ部51を有する接触形シール5と、を備えている。
シールリップ部51のうち、内輪1のシール接触面11に接触する接触部51aには、硬質炭素被膜7が被覆されており、内輪1のシール接触面11には硬質炭素被膜は被覆されていない。
【選択図】 図2

Description

本発明は、接触形シールを備えた転がり軸受に関する。
自動車の電装部品やエンジン補機に用いられる転がり軸受は、エンジンの外部にあるベルト駆動の補助機械用軸受であることから、路面より跳ね上げられる泥水や雨水が侵入しやすく、水ポンプ用軸受ではさらにエンジン冷却用循環水の侵入も受けやすい。
一般に、転がり軸受の耐久寿命は、潤滑剤中に水分が混入すると大きく低下する。例えば古村らは、潤滑油(#180タービン油)に6%の水が混入すると、混入がない場合に比べて数分の1〜20分の1に転がり疲れ強さが低下することを報告している(非特許文献1を参照) 。また、Schatzbergらは、潤滑油中にわずか100ppmの水分が混入するだけで、鋼の転がり強さが32〜48%も低下することを報告している(非特許文献2を参照)。
水,塵埃等の軸受内部への侵入を防ぐ方法としては、接触形シールを用いて転がり軸受を密封する方法があるが、非接触形シールと比較すると回転トルクが大きいという問題がある。
このような問題を解決する技術として、シールリップ部の形状を工夫した接触形シールが特許文献1に記載されている。
特開平11−82526号公報 特開2002−21863号公報 古村恭三郎、城田伸一、平川清,「表面起点および内部起点の転がり疲れについて」,NSK Bearing Journal, No.636, p.1-10,1977 P.Schatzberg,I.M.Felsen,"Effects of water and oxygen during rolling contact Lubrication", wear, 12, p.331-342, 1968
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、シールリップ部の形状や寸法に制限があるため、必ずしも全てのシールに対して適用できるわけではない。
そこで、本発明は前述のような従来技術が有する問題点を解決し、接触形シールにより水,塵埃等の侵入が生じにくく、且つ、回転トルクが小さい転がり軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪のいずれか一方の軌道輪に取り付けられ他方の軌道輪に滑り接触する接触形シールと、を備える転がり軸受において、前記接触形シールのうち、前記他方の軌道輪のシール接触面に滑り接触する接触部を、アクリルゴム及びニトリルゴムの少なくとも一方で構成するとともに、前記接触部及び前記シール接触面のうち前記接触部のみに硬質炭素被膜を被覆したことを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、自動車の電装部品又はエンジン補機に用いられることを特徴とする。
硬質炭素被膜は摺動性に優れ低摩擦性であるので、接触形シールの前記接触部が摩耗しにくく、転がり軸受の密封性が長期間にわたって維持される。また、転がり軸受の回転トルクも小さい。
自動車に使用される部品は、コストを極端に低くすることが求められているため、自動車の電装部品やエンジン補機に使用される転がり軸受も、非常に安価であることが求められる。また、大量に生産されるものであるため、生産の容易さも求められる。本発明の転がり軸受は、硬質炭素被膜が前記接触部及び前記シール接触面のうち前記接触部のみに被覆されているので、両方に被覆されているものと比較して安価であるとともに生産が容易である。
また、自動車の電装部品やエンジン補機に使用される転がり軸受は、油と接触したり高温に曝されたりするので、該転がり軸受に装着されるシールは、耐油性,耐グリース性,耐熱性を有するアクリルゴムやニトリルゴムで構成されることが多い。ところが、アクリルゴムやニトリルゴムで構成された接触形シールは、転がり軸受の内部に封入されたグリースが軸受の回転の遠心力により移動して、シールリップ部がグリース不足状態になると、摩擦係数が大きくなるという問題点を有している。本発明の転がり軸受は、接触形シールのうちシール接触面に滑り接触する接触部がアクリルゴムやニトリルゴムで構成されているものの、該接触部には硬質炭素被膜が被覆されているので、グリース不足状態になったとしても低摩擦性である。すなわち、硬質炭素被膜の被覆は、アクリルゴムやニトリルゴムを原料とした接触形シールに対して有効である。特に、アクリルゴムを原料とした接触形シールに対して、低摩擦性を付与する効果が大きい。
本発明の転がり軸受は、水,塵埃等の侵入が生じにくく、且つ、回転トルクが小さい。また、安価であるとともに生産が容易である。
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態を示す部分縦断面図であり、図2は、図1の要部を拡大して示した断面図である。
図1の深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置された複数の転動体3と、内輪1及び外輪2の間に複数の転動体3を保持する保持器4と、弾性体からなるシールリップ部51を有する接触形シール5と、を備えている。
接触形シール5は、環状の板状部材である芯金52の外周縁部に断面が略V字形の係止部53が連続して形成されていて、この係止部53を、外輪2の内周面の両端部に外輪2の全周にわたって設けられている断面略V字形のシール溝21,21に嵌入することにより、接触形シール5,5が深溝玉軸受に装着されている。そして、接触形シール5の芯金52の内周縁部に連続して形成されているシールリップ部51は、内輪1の外周面に滑り接触していて、接触形シール5,5が外輪2の内周面と内輪1の外周面との間の開口部分を覆っている。
接触形シール5のシールリップ部51はアクリルゴムで構成されており、シールリップ部51のうち、内輪1のシール接触面11に接触する接触部51aには、硬質炭素被膜7が被覆されている(図2を参照)。内輪1のシール接触面11には、硬質炭素被膜は被覆されていない。
なお、内輪1と外輪2と接触形シール5,5とにより囲まれた空間には、グリース等の潤滑剤(図示せず)が充填され、接触形シール5,5により深溝玉軸受の内部に密封されている。ただし、潤滑剤は備えていなくてもよい。
このような構成の深溝玉軸受は、硬質炭素被膜7が摺動性に優れ低摩擦性であるため、接触形シール5の接触部51aが摩耗しにくい。そのため、この深溝玉軸受は、長期間にわたって高い密封性を保持するとともに、低トルクである。また、接触部51a及びシール接触面11のうち接触部51aのみにしか硬質炭素被膜7を被覆していないので、安価であるとともに生産が容易である。よって、この深溝玉軸受は、自動車の電装部品やエンジン補機に組み込まれる転がり軸受として好適であり、自動車の燃費の向上等に寄与する。
ここで、硬質炭素被膜について詳細に説明する。硬質炭素は炭素及び水素のみから構成され、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも呼ばれる。転がり軸受に使用されるグリースの基油が、鉱油,ポリα−オレフィン油等の炭化水素油である場合には、硬質炭素と基油との化学構造が近いことから、硬質炭素被膜が被覆されたシールリップ部は基油に対する濡れ性が優れたものとなり、良好な潤滑状態が保たれる。
硬質炭素被膜を形成する方法としては、パルス的(断続的)に発生させたプラズマで炭化水素ガスを分解して成膜するプラズマCVD法、炭素イオン又は炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法、プラズマイオン注入法等を例示することができる。
硬質炭素被膜の膜厚は、0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。膜厚が0.5μm未満であると、部分的に下地が露出し摺動性,耐摩耗性等の性能が不十分となるおそれがある。一方、10μm超過であると、硬質炭素被膜の内部応力が増大して自己破壊が発生しやすくなるので、トルクの増大を招くおそれがある。このような不都合が生じにくくするためには、硬質炭素被膜の膜厚は1μm以上5μm以下とすることがより好ましく、硬質炭素被膜の成膜時間やガス圧の制御等を考えると、1μm以上3μm以下とすることがさらに好ましい。
次に、アクリルゴム(又はニトリルゴム)で構成されたシールリップ部について、詳細に説明する。シールリップ部の硬さは、JIS K6301に規定されたスプリング硬さAスケールで、40以上90以下であることが好ましい。スプリング硬さが40未満であると、転がり軸受の回転時にシールリップ部が必要以上に変形する。そうすると、発熱やトルク上昇が生じやすくなり、エネルギー効率が悪化する。一方、スプリング硬さが90超過であると、ゴム弾性が低下して転がり軸受の密封性が悪くなる。このような不都合が生じにくくするためには、スプリング硬さは50以上80以下であることがより好ましい。
シールリップ部は、アクリルゴム(又はニトリルゴム)を主成分とするゴム組成物を加硫成形することにより得られる。このゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤,加硫促進剤,加硫促進助剤,老化防止剤,補強剤,可塑剤,カップリング剤等の添加剤を適宜配合してもよい。また、補強性充填剤,加工助剤,摩耗改良剤,潤滑油,潤滑剤等を、必要に応じてさらに添加してもよい。
加硫剤(架橋剤)としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、高分散性硫黄等の各種硫黄や、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、チウラムポリスルフィド等の硫黄を生成可能な硫黄化合物や、ジクミルパーオキサイド、ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物等があげられる。
また、硫黄系の加硫剤を用いた場合は、グアニジン系化合物,アルデヒド−アンモニア系化合物,チアゾール系化合物,チオウレア系化合物,スルフェンアミド系化合物,チウラム系化合物,ジチオカルバメート系化合物,キサンテート系化合物等の加硫促進剤を併用してもよい。加硫剤として高分散性硫黄を使用した場合には、チウラム系化合物であるテトラメチルチウラムジスルフィド等又はスルフェンアミド系化合物であるN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド等と、チアゾール系化合物である2−メルカプトベンゾチアゾール等とを併用してもよい。なお、加硫促進剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
さらに、加硫促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属酸化物,金属炭酸塩,金属水酸化物,ステアリン酸等の有機酸とその誘導体,及びアミン類等があげられる。なお、加硫促進助剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ゴム組成物に配合される加硫促進剤と加硫促進助剤との合計量は、通常は、アクリルゴム100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である。
さらに、酸化劣化を防止する老化防止剤としては、アミン・ケトン縮合生成物,芳香族第二級アミン類,モノフェノール誘導体,ビス又はポリフェノール誘導体,ヒドロキノン誘導体,硫黄系老化防止剤,リン系老化防止剤等があげられる。この中でも、アミン・ケトン縮合生成物系の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、ジフェニルアミンとアセトンとの縮合反応物、芳香族第二級アミン系のN,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等が特に好ましい。
さらに、熱分解を防止して耐熱性を向上するため、上記の老化防止剤とともに2次老化防止剤を併用してもよい。2次老化防止剤としては、硫黄系化合物である2−メルカプトベンズイミダゾール,2−メルカプトメチルベンズイミダゾール,及びこれらの亜鉛塩等があげられる。
さらに、日光又はオゾンの作用による亀裂が生じることを抑制する日光亀裂防止剤として、融点が55〜70℃程度のワックス類を、アクリルゴム100質量部に対して0.5質量部以上2質量部以下程度添加してもよい。0.5質量部未満であると、オゾンの作用による亀裂を防止する効果がほとんど得られず、また、2質量部超過であると、不必要なワックス類がゴム組成物の表面に滲み出してくるため、加工性に問題が生じるおそれがある。
さらに、成形性を向上させる必要がある場合には、上記のような添加剤の他に、加工助剤として可塑剤が適宜添加される。ただし、成形に特に問題がない場合は添加しなくてもよい。添加する場合は、アクリルゴム100質量部に対して3質量部以上20質量部以下添加すればよく、必要以上に添加すると、ゴム組成物が軟化するとともに、完全に混合されずにブリードアウトが生じるおそれがある。
さらに、可塑剤の具体例としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジエステル,アジペート系可塑剤,セバケート系可塑剤,ホスフェート系可塑剤,ポリエーテル系可塑剤,ポリエステル系可塑剤,ポリエーテルエステル系可塑剤,液状ゴム等があげられる。ただし、近年問題となっている環境ホルモン問題を考慮すると、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジエステル以外のものを用いることが好ましい。
さらに、カップリング剤としては、シラン系,アルミニウム系,チタネート系のカップリング剤があげられる。例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等である。
さらに、補強性充填剤としては、カーボンブラックや白色系充填剤等があげられる。カーボンブラックとしては、具体的には、SAF(Super Abrasion Furnace black),ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace black ),HAF(High Abrasion Furnace black ),MAF(Medium Abrasion Furnace black ),FEF(Fast Extruding Furnace black),GPF(General Purpose Furnace black ),SRF(Semi-Reinforcing Furnace black),FT(Fine Thermal Furnace black),MT(Medium Thermal Furnace black)等を例示することができる。補強性及び追従性を考慮すると、HAF,FEF,SRFがより好ましい。
さらに、白色系充填剤としては、具体的には、各種シリカ,塩基性炭酸マグネシウム,活性化炭酸カルシウム,特殊炭酸カルシウム,超微粉ケイ酸マグネシウム,クレー,タルク,珪藻土,ウォラストナイト等があげられる。
補強性充填剤の添加量は、カーボンブラックの場合は、アクリルゴム100質量部に対し20質量部以上90質量部以下とすることが好ましい。20質量部未満であると十分な補強性が発現されず、また、90質量部超過であると、ゴム組成物の硬さが高くなるとともに伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまう。
白色系充填剤の場合は、アクリルゴム100質量部に対し20質量部以上150質量部以下とすることが好ましい。20質量部未満であると十分な補強性が発現されず、また、150質量部超過であると、ゴム組成物の硬さが高くなるとともに伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまう。
さらに、補強性充填剤としてカーボンブラックと白色系充填剤とを混合して使用した場合は、アクリルゴム100質量部に対し、合計で20質量部以上200質量部以下とすることが好ましい。このうち、カーボンブラックは10質量部以上90質量部以下で、白色系充填剤は10質量部以上110質量部以下である。補強性充填剤が20質量部未満であると十分な補強性が発現されず、また、200質量部超過であると、ゴム材料組成物の硬度が高くなるとともに伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまう。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。下記の各種材料を表1に示すような組成(単位は質量部である)で配合して、ゴム組成物を製造した。
Figure 2005090549
・原料ゴムA:アクリルゴム(トウペ株式会社製のAR620)
・原料ゴムB:アクリルゴム(日本メクトロン株式会社製のNOXTITE PA602)
・原料ゴムC:ニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製のDN3380)
・原料ゴムD:フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製のG901)
・加硫剤:硫黄(鶴見化学工業株式会社製の粉末硫黄)
・架橋剤A:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業株式会社製のノクセラーPZ)
・架橋剤B:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製のTAIC)
・架橋剤C:有機過酸化物(日本油脂株式会社製のパーヘキサ25B)
・加硫促進助剤:ステアリン酸(花王株式会社製のLunac S−35)
・老化防止剤A:2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(日本メクトロン株式会社製のケミノックスCL−T−Y)
・老化防止剤B:4,4’−ビス(α, α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業株式会社製のノクラックCD)
・カップリング剤:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製のKBM803)
・可塑剤:旭電化株式会社製のアデカルーブ60Z01A
・カーボンブラックA:HAF(東海カーボン株式会社製のシースト3)
・カーボンブラックB:Cancarb社製のThermax N−990
・シリカ:塩野義製薬株式会社製のカープレックス#1120
次に、ゴム組成物を製造する方法について説明する。加硫剤(架橋剤),加硫促進助剤以外の材料をバンバリーミキサーに投入し、混練りを行った(第一混練工程)。混練りした材料をバンバリーミキサーから取り出し、2本ロールを有するゴム用混練ロールに投入した。そして、加硫剤(架橋剤),加硫促進助剤を投入し、均一になるまで切り返し操作を行った(第二混練工程)。
得られたゴム組成物をシート状に成形し、SPCC材製の芯金とともにシール成形用の加硫金型内に入れ、加熱及び加圧することによりシートと芯金とを一体化してシールを製造した。
次に、上記のようにして得られたシールのシールリップ部に、硬質炭素被膜を形成する処理を施した。まず、芯金部分にマスキングを施した後に真空容器中に入れ、株式会社栗田製作所製の3Dプラズマパック表面処理装置を用いて、シールリップ部のうち軌道輪(内輪)のシール接触面に滑り接触する部分に、膜厚1μmの硬質炭素被膜を形成した。
このようにして得られたシールを、深溝玉軸受(内径17mm,外径52mm,幅16mm)に装着して試験軸受を得て、日本精工株式会社製の回転試験機を用いて回転トルク(内輪回転)を測定して、その結果から摩擦係数を求めた。なお、シールは、外輪の内周面に取り付け、内輪の外周面に滑り接触するものとした。また、回転試験時の雰囲気温度は室温とし、回転速度は1000min-1とした。さらに、回転トルクは、90分間回転させた後の回転が安定した状態において測定した。さらに、深溝玉軸受の内部には、ポリα−オレフィンを基油とし、ウレア化合物を増ちょう剤とするグリースを封入した。グリースの封入量は、軸受の回転時にシールとシール接触面との間が潤滑されないような量とした。
表1に、回転試験により得られた各試験軸受の摩擦係数を示す。なお、表1に記載の摩擦係数の数値は、硬質炭素被膜が形成されていないシールを有する軸受を基準とした場合の相対値である。すなわち、各試験軸受について、シールに硬質炭素被膜が形成されていないことを除いては全く同一構成の軸受(基準軸受)をそれぞれ用意し、その基準軸受の摩擦係数を前述のような方法で測定した。そして、試験軸受の摩擦係数を、対応する基準軸受の摩擦係数を100とした場合の相対値として表示した。
表1から分かるように、実施例1〜3の軸受は、硬質炭素被膜が形成されていないものと比較して摩擦係数が小さく、硬質炭素被膜の優れた効果が確認された。比較例の軸受は、硬質炭素被膜が形成されていないものと比較して摩擦係数は小さかったが、実施例1〜3の場合と比べると硬質炭素被膜の効果は小さかった。この結果から、フッ素ゴムと比べると、アクリルゴム及びニトリルゴムの方が硬質炭素被膜を形成した効果が大きいことが分かる。そして、アクリルゴムは、硬質炭素被膜を形成した効果がより大きいことが分かる。
本発明の転がり軸受は、高温,高速,高荷重条件下で、しかも水が侵入しやすいような条件下での使用に好適である。例えば、本発明の転がり軸受は、自動車の電装部品、自動車のエンジン補機(オルタネータ,中間プーリ,カーエアコンディショナ用電磁クラッチ,水ポンプ等)、ガスヒートポンプ用電磁クラッチ、コンプレッサ等に使用される転がり軸受として好適である。
本発明に係る転がり軸受の一実施形態を示す部分縦断面図である。 図1の要部を拡大して示した断面図である。
符号の説明
1 内輪
2 外輪
3 転動体
5 接触形シール
7 硬質炭素被膜
11 シール接触面
51 シールリップ部
51a 接触部

Claims (2)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪のいずれか一方の軌道輪に取り付けられ他方の軌道輪に滑り接触する接触形シールと、を備える転がり軸受において、
    前記接触形シールのうち、前記他方の軌道輪のシール接触面に滑り接触する接触部を、アクリルゴム及びニトリルゴムの少なくとも一方で構成するとともに、前記接触部及び前記シール接触面のうち前記接触部のみに硬質炭素被膜を被覆したことを特徴とする転がり軸受。
  2. 自動車の電装部品又はエンジン補機に用いられることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
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