[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2005076095A - 薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

薄膜形成装置及び薄膜形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005076095A
JP2005076095A JP2003309556A JP2003309556A JP2005076095A JP 2005076095 A JP2005076095 A JP 2005076095A JP 2003309556 A JP2003309556 A JP 2003309556A JP 2003309556 A JP2003309556 A JP 2003309556A JP 2005076095 A JP2005076095 A JP 2005076095A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vapor deposition
raw material
thin film
plasma
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2003309556A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeji Matsumoto
繁治 松本
Hisahiro Tange
久裕 丹下
Hiromitsu Honda
博光 本多
Takahiko Tachibana
孝彦 橘
Kazuhiro Sato
和広 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shincron Co Ltd
Original Assignee
Shincron Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shincron Co Ltd filed Critical Shincron Co Ltd
Priority to JP2003309556A priority Critical patent/JP2005076095A/ja
Publication of JP2005076095A publication Critical patent/JP2005076095A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Optical Filters (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】 安定した成膜プロセスを実現することによって、高密度な薄膜を、再現性よく、高い成膜速度で形成できることが可能な薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】 真空槽11内で原料Sa,Sbを加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置1に関する。薄膜形成装置1は、基体保持手段13と、原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる蒸着源30a,30bと、基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段60と、を備える。また、蒸着源30a,30bの上方位置Pa,Pbにプラズマを発生させることにより蒸着源30a,30bから蒸発した原料蒸発物を励起するために、プラズマ電極17a,17bと、励起電源26a,26bと、蒸着源30a,30bから発生した原料蒸発物がプラズマ電極17a,17b極に付着するのを抑制するための付着抑制部18a,18bと、を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は薄膜の製造方法および蒸着装置に係り、特に真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置および薄膜形成方法に関する。
薄膜、例えば光学薄膜を形成する技術として、イオンビームアシスト蒸着法(以下、「IAD」という。)が知られている。IADでは、例えばイオン銃を用いて、基板に向けてイオンビームを照射しながら蒸着を行う。IADによる成膜では、イオンの運動エネルギーを利用した高密度の薄膜を作成することに主眼がおかれ、蒸着材料の反応性に関しては、成膜速度とイオン電流密度の関係から従属的に制御する成膜が行われていた。
このIADでは、次の特徴が見られた。
(1) 成膜中にイオンを同時に照射することにより、その運動エネルギーが蒸着物質の形成の助けとなって、高密度の薄膜を形成することができる。
(2) イオン銃でのプラズマ生成プロセスと成膜プロセスが空間的に分離されているため、異なる材料による汚染を少なくすることが可能である。また、成膜プロセス中のプロセス環境の変化を少なくすることができ、成膜プロセスの再現性が高い。
(3) イオン銃によって照射するイオンのイオンエネルギーと、イオン電流密度を独立に制御できる。
(4) ニュートライザを併用することにより、異常放電を減じることが可能である。
(5) イオン電流密度を高めることで、成膜速度を早くすることが可能である。
(6) 成膜を比較的低圧力で行うことが可能であり、圧力の制御範囲が広い。
一方で、IADでは、成膜速度を上げるためにはイオン電流密度を高くする必要があるため、一般的には、TiO、ZrO、Al、Ta、Nb、HfO等の高屈折率(High Index)材料の成膜速度を上げることが難しいという欠点もあった。
薄膜を形成する技術としては、上記のIADの他に、イオンプレーティング法(以下、「IP」という。)も知られている。IPでは、例えば蒸着源と基板との間にプラズマを発生させる励起手段を設けて、この励起手段によってプラズマを発生させながら蒸着を行う。IPによる成膜では、蒸着材料の反応がプラズマ中の電子,ラジカルの化学反応によって、つまりプラズマ密度の制御によって直接的に制御され、反応性が高い。
このIPでは、次の特徴が見られた。
(1) プラズマ中の活性種(ラジカル)をプラズマ強度で制御することにより、光学的吸収の少ない光学薄膜を形成することが可能である。
(2) プラズマ制御のためのパラメータが少ない。
(3) 成膜コストが安価である。
(4) 良質の(例えば、光学的吸収の少ない)薄膜を高速で形成することが可能である。
一方で、特にRFイオンプレーティングといわれるようなIPでは、高周波を用いる励起手段を用いて、蒸着源と基板とのほぼ中間位置、或いは基板近くでプラズマを発生させ、光学的吸収の少ない薄膜の形成が試みられていたが、高密度のプラズマを形成することが困難であった。また、励起手段の電極や、基板での異常放電を抑えることが困難であった。
以上のようなIADとIPの特徴を生かしつつ、各々の欠点を補完するために、IADとIPとを同時に使用することにより、高密度な光学薄膜を高い成膜速度で行う技術が知られている(特許文献1,特許文献2)。
特開昭60−251269号公報(第2−3頁、第1図) 特開平7−37666号公報(第4頁、図1)
しかしながら、例えばRFイオンプレーティングを行った場合に、原料が蒸発することで発生した原料蒸発物等が高周波放電を行うRF電極に付着することがある。プラズマを発生させる電極に原料蒸発物が付着すると、これを原因として異常放電が生じる。この現象は、代表的な低屈折率(Low Index)材料であるSiO等を蒸着する場合において顕著である。すなわち、プラズマを発生させる電極に原料蒸発物が付着すると、この付着した原料蒸発物にイオンが滞留して異常放電が発生しやすくなる。異常放電の発生は、安定したプラズマの発生の妨げとなり、成膜プロセスを不安定にするという問題があった。
さらに、複数の蒸着源に対応して複数の励起手段を設けて、各蒸着源,励起手段を用いた成膜を交互に行う際に、各励起手段でのプラズマの発生・消失が、成膜プロセスの安定化に悪影響を及ぼすことがある。すなわち、一方の蒸着源,励起手段を用いて蒸着を行っている最中に他方の蒸着源に対応する励起手段でのプラズマを消しておいて、この他方の蒸着源,励起手段で蒸着を開始する際に当該励起手段でのプラズマを発生させることを繰り返すと、成膜プロセス中にプラズマの発生・消失が起きる。この成膜プロセス中のプラズマの発生・消失は、成膜プロセスを不安定にして、成膜の再現性を悪くする等の原因になっていた。このプラズマの発生・消失による成幕プロセスの不安定化の要因の1つには、プラズマの発生時に真空槽の壁面から不純物が発生するというプラズマと真空槽との相互作用が考えられる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、安定した成膜プロセスを実現することによって、高密度な薄膜を、再現性よく、高い成膜速度で形成できるとともに、光学的吸収,応力,散乱等の膜質を高精度で制御することが可能な薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の薄膜形成装置は、真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる蒸着源と、該蒸着源の上方位置にプラズマを形成させることにより該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源から発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成されたことを特徴とする。
このように、励起手段と、イオン照射手段とを備えているため、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。また、付着抑制部を備えているため、プラズマ電極への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項2に記載の薄膜形成装置は、請求項1に記載の薄膜形成装置において、前記プラズマ電極が、前記励起電源からの高周波電力の印加を受けて高周波放電によりプラズマを形成させる高周波コイルで構成されるとともに、前記蒸着源の直上の空間を囲繞するように配置されたことを特徴とする。
このように、構成することにより、電力をプラズマ電極へ効率的に供給することができる。また、蒸着源の直上の必要な空間でプラズマを発生させることが可能となるため、プラズマと真空槽との相互作用を少なくして、プラズマプロセスの安定化が可能となる。
上記課題を解決するために、請求項3に記載の薄膜形成装置は、真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる少なくとも2つの蒸着源と、該蒸着源のうちの少なくとも1つの蒸着源の上方位置にプラズマを発生させることにより当該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成されたことを特徴とする。
このように、励起手段と、イオン照射手段とを備えているため、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。また、付着抑制部を備えているため、少なくとも2つ設けられた蒸着源のうちの1つから発生した原料蒸発物のプラズマ電極への付着を抑制して、プラズマ電極への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項4に記載の薄膜形成装置は、請求項3に記載の薄膜形成装置において、前記プラズマ電極が、前記励起電源からの高周波電力の印加を受けて高周波放電によりプラズマを形成させる高周波コイルで構成されるとともに、前記蒸着源のうちの少なくとも1つの蒸着源に対応して該蒸着源の直上の空間を囲繞するように配置され、前記付着抑制部が、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が他の蒸発源に対応して配置された前記高周波コイルに付着するのを抑制するように構成されたことを特徴とする。
このように構成することにより、電力をプラズマ電極へ効率的に供給することができる。また、蒸着源の直上の必要な空間でプラズマを発生させることが可能となるため、プラズマと真空槽との相互作用を少なくして、プラズマプロセスの安定化が可能となる。さらに、少なくとも2つ設けられた蒸着源のうちの1つから発生した原料蒸発物が、他の蒸着源の直上の空間を囲繞するように配置された高周波コイルに付着するのを抑制することが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項5に記載の薄膜形成装置は、真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる少なくとも2つの蒸着源と、該少なくとも2つの蒸着源それぞれの上方位置にプラズマを発生させることにより当該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成され前記プラズマ電極が、前記少なくとも2つの蒸着源のいずれか1つに対応して配置された第1のプラズマ電極と、他の蒸着源の1つに対応して配置された第2のプラズマ電極と、で構成され、前記付着抑制部が、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記第1のプラズマ電極及び前記第2のプラズマ電極のうち少なくともいずれか一方に付着するのを抑制するように構成されたことを特徴とする。
このように、少なくとも2つの蒸着源それぞれの上方位置にプラズマを発生させる励起手段と、イオン照射手段とを備えているため、各蒸着源で発生する原料蒸発物を励起して、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。特に、例えば光学多層薄膜では2種以上の原料の原料蒸発物を励起して多層薄膜を形成する場合もあるが、そのような場合にも、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。また、付着抑制部を備えているため、少なくとも2つ設けられた蒸着源のうちの1つから発生した原料蒸発物が第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極のうち少なくともいずれか一方へ付着するのを抑制して、第1のプラズマ電極や第2のプラズマ電極への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項6に記載の薄膜形成装置は、請求項5に記載の薄膜形成装置において、前記励起電源が、前記記第1のプラズマ電極に電力を印加するための第1の励起電源と、前記第2のプラズマ電極に電力を印加するための第2の励起電源と、で構成され、前記第1のプラズマ電極と前記第2のプラズマ電極に前記励起電源から供給する電力を独立に制御するための電力制御手段を備えることを特徴とする。
このように電力制御手段を備えることにより、第1のプラズマ電極と第2のプラズマ電極とでそれぞれ発生させるプラズマを独立に制御して、各蒸着源で発生する原料蒸発物に適したプラズマを各蒸着源の上方位置に安定して形成することが可能となる。これにより、第1のプラズマ電極と第2のプラズマ電極を用いた成膜を、安定した成膜プロセスで実現することすることが可能となる。
請求項7に記載の薄膜形成装置は、請求項6に記載の薄膜形成装置において、前記第1のプラズマ電極に前記第1の励起電源から印加する所定の周波数の電力の位相と、前記第2のプラズマ電極に前記第2の励起電源から印加する所定の周波数の電力の位相とを制御するための位相制御手段を備えることを特徴とする。
このように、位相制御手段を備えることで、第1の励起電源で印加する電力の周波数と第2の励起電源で印加する電力の周波数とが緩衝することにより発生するうなりを抑制することが可能となる。これにより、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項8に記載の薄膜形成装置は、請求項1,請求項3,請求項5ないし請求項7のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置において、前記付着抑制部が、前記プラズマ電極を取り囲むように設けられた被覆部材であることを特徴とする。
このように構成することにより、簡素な構成で、プラズマ電極への原料蒸発物の付着を抑制することが可能となる。
請求項9に記載の薄膜形成装置は、請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置において、前記付着抑制部が、前記高周波コイルの内周側及び外周側を取り囲むように設けられた被覆部材で構成されたことを特徴とする。
このように構成することにより、簡素な構成で、高周波コイルの内周及び外周への原料蒸発物の付着を抑制することが可能となる。また、高周波コイルで発生させたプラズマを、高周波コイルの内側の比較的閉じられた空間に発生させることとが可能となる。これにより、原料蒸発物を効率的に励起することが可能となる。
請求項10に記載の薄膜形成装置は、請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置において、前記被覆部材が、前記高周波コイルの内周側に設けられた内側被覆部材と、前記プラズマ電極の外周側に設けられた外側被覆部材とで構成され、前記内側被覆部材が絶縁体で形成され、前記外側被覆部材が導電体で形成され、前記外側被覆部材が接地されていることを特徴とする。
このように構成することにより、内側被覆部材によって、高周波コイルによるプラズマの発生を妨げることなく、高周波コイルの内周への原料蒸発物の付着を抑制することが可能となる。また、高周波コイルで発生させたプラズマを、高周波コイルの内側の比較的閉じられた空間に発生させることとが可能となる。これにより、原料蒸発物を効率的に励起することが可能となる。また、外側被覆部材によって、高周波コイルの外周への原料蒸発物の付着を抑制することが可能となる。さらに、外側被覆部材によって、高周波コイルの外側でプラズマが発生することを防止して、プラズマを高周波コイルの内側の空間に限定的に発生させることが可能となり、プラズマと真空槽との相互作用をより少なくすることが可能となる。
請求項11に記載の薄膜形成装置は、請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置において、前記付着抑制部が、前記高周波コイルの少なくとも内周側を取り囲むように設けられた被覆部材で構成され、該被覆部材が、前記高周波コイルの内周側に設けられた第1の内側被覆部材と、該第1の内側被覆部材と所定の間隔をもって配置された第2の内側被覆部材とを有して構成されていることを特徴とする。
内側被覆部材によって、高周波コイルによるプラズマの発生を妨げることなく、高周波コイルの内周への原料蒸発物の付着を抑制することが可能となる。また、高周波コイルで発生させたプラズマを、高周波コイルの内側の比較的閉じられた空間に発生させることとが可能となる。これにより、原料蒸発物を効率的に励起することが可能となる。さらに、第1の内側被覆部材と第2の内側被覆部材とが所定の間隔をもって配置されているため、その間隔を利用して、内側被覆部材に付着した原料蒸発物やイオンの影響を最小限に抑えながら、高周波放電によるプラズマを安定して持続できる。
上記課題を解決するために、請求項12に記載の薄膜形成装置は、真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる蒸着源と、該蒸着源の上方位置にプラズマを形成させることにより該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に所定の周波数で電力を印加するための励起電源と、を有して構成され、前記プラズマ電極に対して前記励起電源からの所定の周波数の電力を該所定の周波数の周期よりも長い周期で間欠的に印加する異常放電防止手段を備えたことを特徴とする。
このように励起手段と、イオン照射手段とを備えているため、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。また、異常放電防止手段を備えているため、プラズマ電極に原料蒸発物が付着しても、この付着した原料蒸発物にイオンが滞留することを抑制することで異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項13に記載の薄膜形成装置は、請求項1乃至請求項12のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置において、前記蒸着源で発生させた原料蒸発物が前記基板に到達することを一時的に妨げるための蒸着停止手段を備え、該蒸着停止手段は、シャッタ部材と、該シャッタ部材を前記プラズマ電極と前記基体保持手段との間に位置させることが可能なシャッタ部材駆動部と、を備えたことを特徴とする。
このように構成することで、前記蒸着源で発生させた原料蒸発物が前記基板に到達することを一時的に妨げながら、励起手段によって蒸着源の上方位置にプラズマを形成させることが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項14に記載の薄膜形成方法は、真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、前記原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記基体に対して蒸着を行うことを特徴とする。
このように、原料の蒸発物が励起手段に付着することを抑制しながら蒸着を行うため、励起手段への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項15に記載の薄膜形成方法は、真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、前記励起手段によって前記蒸着源の直上の限定的な空間にプラズマを発生させながら前記基体に対して蒸着を行うことを特徴とする。
このように、蒸着を行うことで、蒸着源の直上の必要な空間でプラズマを発生させることが可能となるため、プラズマと真空槽との相互作用を少なくして、プラズマプロセスの安定化が可能となる。また、原料蒸発物を効率的に励起することが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項16に記載の薄膜形成方法は、真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、前記励起手段によるプラズマの発生を、前記真空槽内に設置されたプラズマ電極に対して所定の周波数の電力を印加することで放電により行うとともに、前記励起手段によるプラズマの発生の際に、前記プラズマ電極に対して前記所定の周波数の電力を該所定の周波数の周期よりも長い周期で間欠的に印加することを特徴とする。
このように、薄膜を形成させることで、励起手段に原料蒸発物が付着しても、この付着した原料蒸発物にイオンが滞留することを抑制することで異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
上記課題を解決するために、請求項17に記載の薄膜形成方法は、真空槽内に第1の蒸着源と第2の蒸着源を備えた薄膜形成装置を用いて基体に薄膜を形成させる薄膜形成方法において、前記第1の蒸着源に充填した第1の原料を加熱するともに、プラズマを発生させるための励起手段によって前記第1の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させながら前記基体に対して蒸着を行う第1蒸着工程と、前記第2の蒸着源に充填した第2の原料を加熱して前記基体に対して蒸着を行う第2蒸着工程と、を行い、前記第2の蒸着工程の最中に前記第1の蒸着源の直上の空間でプラズマを維持するとともに、前記第1蒸着工程及び前記第2蒸着工程の少なくともいずれか1つの工程において、前記真空槽内にイオンを照射するイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射することを特徴とする。
このように、第2の蒸着工程の最中に第1の蒸着源の直上の空間でプラズマを維持するため、成膜プロセス中に、プラズマの発生・消失を原因として、真空槽内の雰囲気等が急変することを回避し、成膜プロセスを安定化することが可能となる。また、成膜に必要なプロセス時間を短縮することが可能となる。
請求項18に記載の薄膜形成方法は、請求項17に記載の薄膜形成方法において、前記第2の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする。
このように、第2の原料の原料蒸発物が励起手段に付着することを抑制しながら第2の蒸着工程を行うため、第2の蒸着工程で励起手段への原料蒸発物の付着を抑制し、励起手段への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項19に記載の薄膜形成方法は、請求項17に記載の薄膜形成方法において、前記第1の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第1蒸着工程を行い、プラズマを発生させるための励起手段によって前記第2の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させるとともに、前記第2の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする。
このように、原料蒸発物が励起手段に付着することを抑制しながら第1の蒸着工程及び第2の蒸着工程を行うため、第1の蒸着工程及び第2の蒸着工程で、励起手段への原料蒸発物の付着を抑制し、励起手段への原料蒸発物の付着を原因とする異常放電の発生を抑制することが可能となる。異常放電の発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
請求項20に記載の薄膜形成方法は、請求項19に記載の薄膜形成方法において、前記第1蒸着工程では、前記第1の蒸着源に対応して設けられた第1の励起手段によって、前記第1の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させ、前記第2蒸着工程では、前記第2の蒸着源に対応して設けられた第2の励起手段によって、前記第2の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させ、前記第1の原料の原料蒸発物が前記第2の励起手段に付着することを抑制しながら前記第1蒸着工程を行い、前記第2の原料の原料蒸発物が前記第1の励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする。
このように、第1の原料の原料蒸発物が第2の励起手段に付着することを抑制しながら第1蒸着工程を行い、第2の原料の原料蒸発物が第1の励起手段に付着することを抑制しながら第2蒸着工程を行うため、第1の蒸着工程で第2の励起手段に原料蒸発物が付着すること、第2の蒸着工程で第1の励起手段に原料蒸発物が付着することを、抑制することが可能となる。
請求項21に記載の薄膜形成方法は、請求項17乃至請求項20のうちいずれか1つに記載の薄膜形成方法において、前記第1蒸着工程と前記第2蒸着工程との少なくともいずれか1つの工程において、前記イオン照射手段によって反応性ガスのイオンを照射することを特徴とする。
このように、反応性ガスのイオンを照射することで、基板に到達した原料蒸発物が反応性ガスのイオンビームによって叩かれるため、緻密な薄膜を形成することが可能となる。
請求項22に記載の薄膜形成方法は、請求項17乃至請求項21のうちいずれか1つに記載の薄膜形成方法において、前記第1蒸着工程と前記第2蒸着工程とを同時期に行うことを特徴とする。
以上のように、本発明の薄膜形成装置及び薄膜形成方法によれば、高密度で良好な薄膜を高速で形成することが可能となる。また、異常放電の発生を抑制して、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。また、プラズマと真空槽との相互作用を少なくして、プラズマプロセスの安定化が可能となる。
また、本発明の薄膜形成装置によれば、第1のプラズマ電極と第2のプラズマ電極を用いた成膜を、安定した成膜プロセスで実現することすることが可能となる。また、本発明の薄膜形成装置によれば、うなりの発生を抑制することで、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
また、本発明の薄膜形成方法によれば、第2の蒸着工程の最中に第1の蒸着源の直上の空間でプラズマを維持するため、成膜プロセス中に、プラズマの発生・消失を原因として真空槽内の雰囲気等が急変することを回避し、成膜プロセスを安定化することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,部材の配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
図1は、本実施形態の薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。図2,図3は、本実施形態の付着抑制部を示す図である。図4は、本実施形態の薄膜形成装置における制御手段の機能を説明するブロック図である。
図1に示した本実施形態の蒸着装置1は、本発明の薄膜形成装置の一例である。蒸着装置1は、真空槽11と、基板(不図示)を保持するための基板ホルダ13と、蒸着源30a,30bと、励起手段(高周波コイル17a,17b等)と、イオン銃60と、蒸着停止手段(シャッタ51a,51b等)と、を有して構成される。基板は、本発明の基体に相当するものである。本発明の基体に相当するものは、本実施形態のように板状の基板に限らず、円柱状,円管状等の部材であってもよい。基板ホルダ13は、本発明の基体保持手段に相当するものである。蒸着源30aは、本発明の第1の蒸着源に相当する。蒸着源30bは、本発明の第2の蒸着源に相当する。イオン銃60は、本発明のイオン照射手段に相当する。
真空槽11は、公知の蒸着装置で通常用いられるようなステンレス製の容器であり、概ね直方体の形状をしている。真空槽11には、排気用の配管11aが接続され、配管11aを介して接続された真空ポンプ12によって、真空槽11内が減圧される。また、真空槽11には、槽内にガスを導入するためのガス導入管11bが設けられている。ガス導入管11bには、ガスボンベ41が接続され、ガスボンベ41から真空槽11内に酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等のガスを供給できるようになっている。ガスボンベ41からのガスの流量はマスフローコントローラ42で調整される。なお、本実施形態では、ガス導入管11bのガス排出口が後述のプラズマ生成空間Pa,Pbに向くように、ガス導入管11bが配置される。
さらに、真空槽11の内壁には、補正板15が立設されている。補正板15は、板状の部材である。この補正板15は、蒸着源30a,30bから発生する原料蒸発物や、イオン銃60から照射されるイオンビームが、基板ホルダ13に配置される基板に均一に、又は所望の分布で到達するようにするためのものである。補正板15の形状は、基板の配置や、蒸着源30a,30bと基板ホルダ13との相対的な位置や、形成させようとする薄膜の膜厚分布等に応じて種々の形状が採用される。
基板ホルダ13は、薄膜を形成させる基板を保持するためのものであり、本実施形態の基板ホルダ13は、ドーム形状を有している。ドーム形状をした基板ホルダ13の内側面には複数枚の基板が配設され、真空槽11の底面に配置された蒸着源30a,30bと、基板とが対向するようになっている。すなわち、基板ホルダ13は、真空槽11の上部に蒸着源30a,30bに対向して設けられている。また、基板ホルダ13は、基板が蒸着源30a,30bに対向した状態で公転するように、モータ(不図示)によって回転させられる。また、基板ホルダ13の上部には、ヒーター14が配置され、ヒーター14に接続したヒーター電源24によって基板を熱することができるようになっている。なお、基板ホルダ13には、温度を測定するための熱伝対13a(図4参照)が設けられている。
蒸着源30a,30bは、真空槽11の底面に設けられる。本実施形態の蒸着源30a,30bは、電子ビーム蒸着源であり、水冷した坩堝に充填された蒸着原料に電子ビームを照射することにより、蒸着原料を蒸発させるように構成されている。本実施形態では、真空槽11内に蒸着源30aと蒸着源30bが設けられ、複数の蒸着源を用いて成膜することが可能とされている。蒸着源30aは、薄膜の原料を保持する坩堝31aと、坩堝31aに充填された原料に照射する電子ビームを発生させるための電子銃32aとを備えている。蒸着源30bも、蒸着源30aと同様に、坩堝31bと、電子銃32bとを備えている。なお、本実施形態の坩堝31a,31bは、全体形状が概ね立方体又は直方体をしており、上面に凹部を備えているものである。
電子銃32aには電子銃電源25aが接続され、電子銃32bには電子銃電源25bが接続されている。電子銃電源25a,25bによって電子銃32a,32bに電力を供給することで、電子銃32a,32bから電子ビームを発生させて、この電子ビームによって、坩堝31a,31b内の蒸着原料が加熱される。加熱された蒸着原料の蒸発物である原料蒸発物は、真空槽11内に拡散し、その一部が基板ホルダ13に保持された基板に付着して薄膜を形成する。
なお、蒸着源として、抵抗過熱蒸発源や、高周波加熱蒸発源を用いたり、レーザービームを用いた蒸着源を用いたりすることもできる。抵抗過熱蒸発源は、蒸着原料が充填されたヒータやボードに通電することで発生する電熱を利用して蒸着原料の蒸発を行う蒸着源である。高周波加熱蒸発源は、アルミナ等の坩堝に充填した蒸着原料を高周波コイルによる高周波誘導で加熱して蒸着原料の蒸発を行う蒸着源である。
次に、本発明の励起手段について説明する。本実施形態では、励起手段は、高周波コイル17a,17bと、高周波電源26a,26bと、マッチング回路29a,29bと、カバー部材18a,18bとを有して構成される。
高周波コイル17a,17bは、本発明のプラズマ電極に相当し、高周波コイル17aが第1のプラズマ電極に相当し、高周波コイル17bが第2のプラズマ電極に相当する。高周波コイル17a,17bは、銅製等の管材が螺旋状に形成された部材である。高周波コイル17a,17bは、蒸着源30a,30bの近傍に設けられ、蒸着源30a,30bの直上の空間を囲繞する。このとき、高周波コイル17a,17bは、高周波コイル17a,17bの螺旋状部分の中心軸が蒸着源30a,30bと基板ホルダ13を結ぶ方向を向き、蒸着源30a,30bから基板ホルダ13を臨むことができるように配設される。
高周波コイル17aにはマッチング回路29aを介して高周波電源26aが接続され、高周波コイル17bにはマッチング回路29bを介して高周波電源26bが接続され、高周波コイル17a,17bに高周波の電力が印加されるようになっている。高周波電源26a,26bは、13.56MHzの高周波電圧を出力するものである。なお、高周波電源26a,26bは、本発明の励起電源に相当する。また、高周波電源26aが本発明の第1の励起電源に相当し、高周波電源26bが本発明の第2の励起電源に相当する。
この高周波電源26a,26bによって、高周波コイル17a,17bに高周波電力を印加して、高周波コイル17a,17bからの高周波放電によってプラズマを発生させることが可能である。プラズマを発生させる場合、まず、真空ポンプ12で真空槽11内を減圧して、必要に応じてガスボンベ41からガスを真空槽11内に導入する。その後、高周波電源26a,26bで高周波コイル17a,17bに高周波電力を印加することで、蒸着源30aの直上の高周波コイル17aで囲われた空間であるプラズマ生成空間Paと、蒸着源30bの直上の高周波コイル17bで囲われた空間であるプラズマ生成空間Pbと、それぞれにプラズマを発生させることができる。
本実施形態の蒸着装置1では、高周波電源26aが高周波コイル17aに対応して設けられ、高周波電源26bが高周波コイル17bに対応して設けられることで、高周波コイル17aに対する電力供給と高周波コイル17bに対する電力供給を独立に制御可能な構成にしている。これにより、プラズマ生成空間Paとプラズマ生成空間Pbのプラズマを独立に制御して、プラズマ生成空間Pa,Pbで安定したプラズマを発生可能にしている。
また、本実施形態では、高周波コイル17a,17bを蒸着源30a,30bの近傍に設けて、高周波コイル17a,17bで囲われた比較的閉ざされたプラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマを発生させる構成にしているため、次の効果がある。すなわち、高周波電源26a,26bによって電子銃32a,32bで坩堝31a,31b内の原料を加熱・蒸発させながら、高周波電源26a,26bによって高周波コイル17a,17bに高周波電圧を印加することで、蒸着源30a,30bの近傍にある原料蒸発物(蒸着雲)をプラズマ化することができる。
蒸着源30a,30bの近傍且つ直上のプラズマ生成空間Pa,Pbは、原料蒸発物の密度が高い場所であり、この場所にプラズマを生成させることにより、原料蒸発物を効率よく励起して、そのエネルギー順位を高くすることができる。電子銃32a,32bで発生させる電子ビームの効果によっても、原料蒸発物が若干励起されることは、従来から知られているが、本実施形態では、これに加えて、高周波コイル17a,17bを蒸着源30a,30bの近傍に配置して、蒸着源30a,30bの近傍且つ直上のプラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマを生成させることによって、積極的に原料蒸発物をプラズマ化することを可能にしている。
また、本実施形態では、高周波コイル17a,17bを、基板(基板ホルダ13)から離間させて、蒸着源30a,30bの近傍に設けることで、高周波コイル17a,17bで発生させるプラズマの荷電粒子が基板や基板に形成する薄膜に悪影響を与えないように、また基板近傍で異常放電が生じないようにしている。さらに、蒸着源30a,30bの近傍に高周波コイル17a,17bを設けて、プラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマを発生させる構成とすることで、真空槽11の側壁面へのプラズマの影響を少なくして、真空槽壁面から不純物が発生するというプラズマと真空槽との相互作用を減らしている。
さらに、高周波電源26a,26bには、位相シフタ27を接続する。位相シフタは、うなり(ビート)を防止することができるように設けられているものである。高周波電源26aで印加する高周波電力と、高周波電源26bで印加する高周波電力の周波数には、僅かな差がある場合がある。このように周波数に僅かな差がある場合に、高周波電源26a,26bから同時期に電力を供給して高周波コイル17a,17bで高周波放電を行うと、うなりが発生することがある。位相シフタ27は、高周波電源26aの高周波電力と、高周波電源26bの高周波電力の位相を調整するものである。本実施形態では、位相シフタで位相を調整することで、うなりの発生を防止できる構成にしている。うなりの発生を防止することで、高周波コイル17a,17bで安定した高周波放電を可能にして、プラズマ生成空間Pa,Pbで安定したプラズマを発生可能にしている。
カバー部材18a,18bは、高周波コイル17a,17bを覆うように設けられている部材である。カバー部材18a,18bは、本発明の付着抑制部や、被覆部材に相当する。カバー部材18a,18bは、高周波コイル17a,17bの内周側及び外周側を取り囲むように設けられる。カバー部材18a,18bで高周波コイル17a,17を覆う構成にすることで、高周波コイル17a,17を覆うだけの簡素な構成で、原料蒸発物の高周波コイル17a,17bへの付着を抑制することが可能となる。
図2は、カバー部材18aの一例を示す。図2の(A)は、カバー部材18aの平面図である。図2の(B)は、図2の(A)におけるX−X断面図である。なお、図2には、高周波コイル17aや、ガスボンベ41から真空槽11内にガスを供給するガス導入管11bも示している。本実施形態のカバー部材18aは、高周波コイル17aの内周側から高周波コイル17aを覆う内周被覆部材18aと、高周波コイル17aの外周側と下側,上側から高周波コイル17aを覆う外周被覆部材18aとで構成され、高周波コイル17aの内周側と外周側とを覆うものである。
図2に示すように、本実施形態の内周被覆部材18aは、高周波コイル17aの内側に配置するために、高周波コイル17aの内径よりも小さな径を有する円筒状の部材である。本実施形態の外周被覆部材18aは、高周波コイル17aの外周側に位置する円筒状の側壁面W1と、高周波コイル17aの上側に位置する環状の上壁面W2と、高周波コイル17aの下側に位置する環状の下壁面W3とで構成され、側壁面W1と上壁面W2、側壁面W1と下壁面W3がそれぞれ一体に形成されている。外周被覆部材18aの下壁面W3には、高周波コイル17aを通すための挿通孔hoが設けられている。挿通孔hoを側壁面W1に設けるようにしてもよい。なお、内周被覆部材18aと外周被覆部材18aの間や、挿通孔hoでの外周被覆部材18aと高周波コイル17aの間に僅かに隙間を設けたり、内周被覆部材18aや外周被覆部材18aに微小な排気孔を設けたりして、内周被覆部材18aと外周被覆部材18aとで囲われた空間を排気等できるようにしておくのが好ましい。
本実施形態では、外周被覆部材18aは、図示しない支柱を介して真空層11に固定される。内周被覆部材18aは、外周被覆部材18aの下壁面W3に形成された支持溝mに嵌合されて、支持される。内周被覆部材18aと外周被覆部材18aの支持の方法は、これに限らず、内周被覆部材18aも支柱を介して真空槽11に固定したり、外周被覆部材18aに内周被覆部材18aをネジ等で取り付けたり、係合させたり等してもよい。内周被覆部材18aを支柱で真空槽11に固定して、外周被覆部材18aを内周被覆部材18aに支持させてもよい。
本実施形態では、内周被覆部材18aは、絶縁体で形成される。内周被覆部材18aを形成する絶縁体としては、例えばSiO、Al、MgO、BeO、BN、MgO・SiO等又はこれらを主成分とするものが考えられる。内周被覆部材18aを絶縁体で形成することにより、高周波コイル17a,17bの内側でのプラズマの発生が、内周被覆部材18aによって妨げられることなく、好適である。
外周被覆部材18aは、導電体で形成され、接地される。外周被覆部材18aを形成する導電体としては、例えばステンレス、ニッケル、銅、モリブデン等が考えられる。本実施形態では、導電体からなる外周被覆部材18aを接地する。外周被覆部材18aを接地することで、高周波コイル17aの外側にプラズマが発生することを防止して、プラズマを高周波コイル17aの内側の限定的な空間に発生させることが可能となる。言い換えると、プラズマを高周波コイル17aの内側に限定的に発生させることが可能となる。これにより、プラズマと真空槽11との相互作用をより少なくして、安定した成膜を実現することが可能となる。
カバー部材18bも、上記カバー部材18aと同様に、絶縁体で形成された内周被覆部材18b及び導電体で形成された外周被覆部材18bで構成され、外周被覆部材18bが接地される。また、内周被覆部材18bや外周被覆部材18bの形状も、図2で示した内周被覆部材18aや外周被覆部材18aの形状と同様である。なお、内周被覆部材18a,18bが、本発明の内側被覆部材に相当し、外周被覆部材18a,18bが、本発明の外側被覆部材に相当する。
本発明の付着抑制部や、被覆部材に相当するものとしては、上記のカバー部材18a、18bの例の他に、次に説明するカバー部材118a,118bのような構成としてもよい。
図3は、カバー部材118aを示す。図示は省略するが、カバー部材118bも、このカバー部材118aと同様の構成とすることができる。図3の(A)は、カバー部材118aの平面図である。図3の(B)は、図3の(A)におけるY−Y断面図である。なお、図3には、高周波コイル17aや、ガス導入管11bも示している。本実施形態のカバー部材118aは、高周波コイル17aの内周側から高周波コイル17aを覆う内周被覆部材118aと、高周波コイル17aの外周側と下側,上側から高周波コイル17aを覆う外周被覆部材118aとで構成され、高周波コイル17aの内周側と外周側とを覆うものである。内周被覆部材118aが、本発明の内側被覆部材に相当し、外周被覆部材118aが、本発明の外側被覆部材に相当する。
図3に示すように、本実施形態の内周被覆部材118aは、本発明の第2の内側被覆部材に相当する内周下側被覆部材118a_dと、本発明の第1の内側被覆部材に相当する内周上側被覆部材118a_uで構成される。内周下側被覆部材118a_d、内周上側被覆部材118a_uは、いずれも高周波コイル17aの内側に配置するために、高周波コイル17aの内径よりも小さな径を有する円筒状の部材である。本実施形態では、内周下側被覆部材118a_dが、内周上側被覆部材118a_uの径よりもさらに小さい径を有する。本実施形態の外周被覆部材118aは、上記の図2に示した外周被覆部材18aと同様の形状を備える。ただし、外周被覆部材118aの上壁面には係合部haを備える。なお、本実施形態において、係合部haは、外周被覆部材118aの上壁面端部に設けられた段差である。
本実施形態では、外周被覆部材118aは、図示しない支柱を介して真空層11に固定される。内周下側被覆部材118a_dは、外周被覆部材118aの下壁面W3に形成された支持溝mに嵌合されて、支持される。内周上側被覆部材118a_uは、内周上側被覆部材118a_uの上端に形成された係合片haを、外周被覆部材118aの上壁面に形成された係合部haに係合させることで、支持される。さらに、内周下側被覆部材118a_dは、少なくともその一部が内周上側被覆部材118a_uの内側に挿入されて、内周下側被覆部材118a_dと内周上側被覆部材118a_uとが、少なくとも一部で重なり合うように配置される。このとき、内周下側被覆部材118a_dと内周上側被覆部材118a_uとの間に所定の間隔(数ミリ程度)ができるように、内周下側被覆部材118a_d、内周上側被覆部材118a_uの径が定められている。なお、内周下側被覆部材118a_d,内周上側被覆部材118a_uと外周被覆部材18aの支持の方法は、上記に限らず、内周下側被覆部材118a_d,内周上側被覆部材118a_uをネジ等で取り付けてもよい。
図3の例では、上記のように、内周下側被覆部材118a_dと内周上側被覆部材118a_uとの間に所定の間隔ができるように、内周下側被覆部材118a_d,内周上側被覆部材118a_uが配置されている。このように内周下側被覆部材118a_dと内周上側被覆部材118a_uとの間に間隔を設けることで、その間隔を利用して、内周被覆部材118aに付着した原料蒸発物やイオンの影響を最小限に抑えながら、プラズマ生成空間Paで高周波放電によるプラズマを安定して持続できる。
内周被覆部材118aは、上記の内周被覆部材18aの場合と同様に絶縁体で形成されるのが好ましい。しかし、内周被覆部材118aでは、内周下側被覆部材118a_dと内周上側被覆部材118a_uとの間に間隔を設け、その間隔を利用して高周波放電を行うことが可能なため、ステンレス、ニッケル、銅、モリブデン等の導電体で内周被覆部材118aを形成することも可能である。外周被覆部材118aは、上記の外周被覆部材118aと同様に、導電体で形成され、接地される。
次に、本発明の蒸着停止手段について説明する。本発明の蒸着停止手段は、本実施形態では、シャッタ51a,51bと、回転棒52a,52bと、シャッタ駆動モータ53a,53bと、で構成される。なお、シャッタ51a,51bが、本発明のシャッタ部材に相当し、回転棒52a,52b及びシャッタ駆動モータ53a,53bが、本発明のシャッタ部材駆動部に相当する。
シャッタ51aは、プラズマ生成空間Pa上部を覆う大きさの板状をした部材である。シャッタ51bは、プラズマ生成空間Pbの上部を覆う大きさの板状をした部材である。本実施形態のシャッタ51aには回転棒52aを介してシャッタ駆動モータ53a(図4参照)が連結され、シャッタ51bには回転棒52bを介してシャッタ駆動モータ53b(図4参照)が連結されている。シャッタ駆動モータ53aを駆動させることで、回転棒52aが回転する。シャッタ51aは、この回転棒52aの回転にともなって、プラズマ生成空間Paの上部を覆う位置と、覆わない位置との間で移動するようになっている。シャッタ51bもシャッタ51aと同様に、プラズマ生成空間Pbの上部を覆う位置と、覆わない位置との間で移動する。
シャッタ51a,51bがプラズマ生成空間Pa,Pbの上部を覆わない位置にあるときには、原料蒸発物がプラズマ生成空間Pa,Pbから基板ホルダ13の方向へ移動して基板に到達することが可能となる。シャッタ51a,51bがプラズマ生成空間Pa,Pbの上部を覆う位置にあるときには、原料蒸発物がプラズマ生成空間Pa,Pbから基板ホルダ13の方向へ移動して基板に到達することが一時的に妨げられる。なお、本実施形態では、シャッタ51a,51がプラズマ生成空間Pa,Pbの上部を覆う位置にあるときでも、ガス導入管11bからのガスや、蒸着源30a,30bからの原料蒸発物がプラズマ生成空間Pa,Pbに供給されることが妨げられることがないため、プラズマ生成空間Pa,Pbでプラズマを持続させることが比較的容易となっている。
次に、本発明のイオン照射手段に相当するイオン銃60について説明する。イオン銃60は、真空槽11内で基板に向けてイオンビームを照射するためのものである。なお、上述の励起手段(高周波コイル17a,17b,高周波電源26a,26b等)でプラズマを発生させることによっても、真空槽11内にイオンを生じ、このイオンが基板に達することもある。しかし、上述の励起手段は、蒸発雲を積極的に励起するためのものである。本発明のイオン照射手段は、これとは異なり、基板に向けて高エネルギーのイオンを照射するために、上述の励起手段とは別に設けられるものである。
イオン銃60には、ガスボンベ61が配管を介して接続され、このガスボンベ61から酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等のガスが、イオン銃60に導入できるように構成されている。ガスボンベ61からのガスの流量はマスフローコントローラ63で調整される。イオン銃60に導入されたガスは、イオン銃60でイオン化・励起され、イオン化・励起されたガスがイオンビームとして真空槽11内に照射されることとなる。そのため、イオン銃60には、ガスのイオン化・励起、イオンの加速等のための電力を供給するイオン銃電源62が接続されている。また、イオン銃60には、空間電荷を中和するためにニュートラライザ機能が備わっている。イオン銃60としては、例えば、高周波放電型(Freeman)型、熱電子衝撃(Kaufman)型、マイクロ波型、冷陰極型等のイオン銃を用いることができる。
イオン銃60のイオンビームを照射する部分にはシャッタ64が設けられている。本実施形態のシャッタ64には回転棒65を介してシャッタ駆動モータ66(図4参照)が連結されている。シャッタ駆動モータ66を駆動させることで、回転棒65が回転する。シャッタ64は、この回転棒65の回転にともなって、イオン銃60の上部を覆う位置と、覆わない位置との間で移動する。シャッタ64がイオン銃60の上部を覆わない位置にあるときには、イオンビームが基板ホルダ13の方向へ移動して基板に到達することが可能となる。シャッタ64がイオン銃60の上部を覆う位置にあるときには、イオンビームが基板ホルダ13の方向へ移動して基板に到達することが一時的に妨げられる。
蒸着装置1には、さらに、形成された薄膜の膜厚を監視するために、投光器71、受光器72、モニタ73、モニタマスク74、投光側ミラー75、受光側ミラー76が設けられている。投光器71から発せられた光は投光側ミラー75で反射してモニタ73に達する。モニタ73で反射した光は、受光側ミラー76を介して受光器72に達する。受光器72で受ける光の変化量から、モニタ73に形成された薄膜の膜圧を監視する。
本実施形態では、モニタ73の蒸着源30a,30b側には板状のモニタマスク74が設けられている。モニタマスク74には穴が設けられ、モニタ73には、このモニタマスク74の穴に対応する位置にだけ薄膜が形成される。したがって、モニタマスク74を回転させる等により、穴の位置を移動させれば、同じモニタ73の異なる位置に薄膜を形成させることができる。したがって、例えば、薄膜を積層させる場合等には、薄膜の各層の形成を開始する際に、モニタマスク74の穴の位置を移動させて新しい場所に薄膜を形成させるようにすれば、層毎の膜厚を正確に監視することが可能となる。
図4は、蒸着装置1の制御手段の機能を説明するブロック図である。制御装置80は、各種の制御をおこなうCPU,CPUの動作プログラムを記憶するROM,CPUの動作で必要に応じて情報の記憶を行うRAM等で構成される。制御装置80は、受光器72、熱伝対13a等からの検出信号等の入力を受ける。また、制御装置80は、ヒーター電源24、電子銃電源25a,25b、高周波電源26a,26b、位相シフタ27、イオン銃電源62、シャッタ駆動モータ53a,53b、マスフローコントローラ42,63の制御等を統括的に行うものである。電子銃電源25a,25bを制御する制御装置80が、本発明の電力制御手段に相当する。また、位相シフタ27や、位相シフタ27を制御する制御装置80が本発明の位相制御手段に相当する。
制御装置80は、外部からのスイッチ等の操作に応じて、又は予め定められた制御プログラムに従って、各種の制御を行う。例えば、成膜中等に熱伝対13aからの信号を受けて、基板(基板ホルダ13)を所望の温度に維持するように、ヒーター電源24の出力を調整する。また、制御装置80は、受光器72からの信号を受けて、所定の膜厚の薄膜が基板に蒸着されたことを検知すると、シャッタ駆動モータ53a,53b等を制御して、蒸着の中断等を行う。また、成膜の状況に応じて、制御装置80から高周波電源26a,26b、位相シフタ27、マスフローコントローラ42,63等へ制御信号を与える構成にして、制御装置80を介してプラズマ状態の調整を行う。
以下に、上述の本実施形態の蒸着装置1を用いて、2種類の薄膜(例えば、屈折率の相違する2種類の薄膜)を交互に積層させた薄膜を形成する方法について説明する。
まず、坩堝31aに原料Saを充填し、坩堝31bに原料Sbを充填する。原料Saは、本発明の第1の原料に相当する。原料Sbは、本発明の第2の原料に相当する。本実施形態では、坩堝31aと坩堝31bに、それぞれ異なる原料を充填して、2種類の薄膜を交互に積層させた薄膜を形成する。例えば、原料Saとして酸化ケイ素(SiO)を、原料Sbとして酸化タンタル(Ta)を使用する。次いで、基板ホルダ13に基板を保持させて、真空槽11内に配置する。この状態で、真空槽11内を所定の圧力まで減圧する。例えば、約1×10−3Pa以下に調整する。この段階では、シャッタ51a,51bはプラズマ生成空間Pa,Pbの上部を覆う位置にあり、シャッタ64はイオン銃60の上部を覆う位置にある。
真空槽11内が所定の圧力で安定したら、マスフローコントローラ42を制御して、ガスボンベ41から、所定流量で必要なガスを真空槽11内に導入する。例えば、約50ccm(sccmは、0℃,1atmにおける、1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。)で、酸素ガスを真空槽11内に導入する。勿論、必要なければ、ガスボンベ41からのガス導入を行わなくてもよい。
また、マスフローコントローラ63を制御してイオン銃60にガスを導入し、イオン銃電源62からイオン銃に電力を供給して、イオン銃60に導入したガスのイオンをイオンビームとして真空槽11内へ照射する。この時点では、シャッタ64をイオン銃60の上部を覆う位置に配置しておく。イオン銃60によるイオンビームの真空槽11内への照射は、後述の原料Saの蒸着の最中、及び原料Sbの蒸着の最中に亘って行われる。なお、イオン銃60に導入するガスは、形成する薄膜の構成元素等に応じて適宜都合のよいものを選ぶ。例えば、酸素ガス,窒素ガス等の反応性ガスを導入するようにする。反応性ガスのイオンを基板に形成する薄膜に照射することで、反応性ガスのイオンビームの運動エネルギーを薄膜に与えて、緻密な薄膜を形成することが可能となる。
続いて、電子銃電源25a,25bによって電子銃32a,32bに対する電力供給を開始する。なお、この時点では、蒸着は未だ開始しないため、電子銃32a,32bに対する電力供給は必要最小限で維持する。次に、シャッタ駆動モータ66を駆動させることで、シャッタ64をイオン銃60の上部を覆わない位置へ移動させることで、イオンビームを真空槽11内の基板に向けて照射する。また、このようにシャッタ64を移動させるとともに、高周波電源26a,26bによって高周波コイル17a,17bに電力を供給して、プラズマ生成空間Pa,Pbでプラズマを発生させる。
制御装置80によって、ガス流量や、高周波コイル17a,17bに供給する電力等を調整することで、プラズマ生成空間Paとプラズマ生成空間Pbそれぞれに、待機状態のプラズマを発生させて、この状態を維持する。本実施形態では、高周波コイル17a,17bに対して、プラズマが消えない程度の電力を供給するように調整して、待機状態のプラズマを維持する。また、高周波コイル17a,17bに供給する電力の位相は、位相シフタ27によって調整する。待機状態のプラズマが安定したところで、その後、本発明の第1蒸着工程に相当する工程として、原料Saの蒸着を開始する。
原料Saの蒸着では、先ず、電子銃32aに供給する電力を所定の値に上げて、電子ビームを原料Saに照射して、原料Saの蒸発物である原料蒸発物Sa’を発生させる。これと同時期に、高周波コイル17aに供給する電力を上げて、プラズマ生成空間Paに原料Sa蒸着時のプラズマを発生させる。原料Sa蒸着時のプラズマは、待機状態のプラズマよりもプラズマ密度が高い状態のプラズマである。そして、プラズマ生成空間Paで原料Sa蒸着時のプラズマを安定させたら、シャッタ駆動モータ53aを制御して、シャッタ51aをプラズマ生成空間Paの上部を覆わない位置に移動させる。これにより、プラズマ生成空間Paを通過した原料蒸発物Sa’が基板ホルダ13の方向へ移動して、その一部が基板に付着することで、原料Saの蒸着が行われる。本実施形態では、カバー部材18a,18bで覆われた高周波コイル17a,17bを備えた蒸着装置1を用いて原料Saの蒸着を行うことで、高周波コイル17a,17bへの原料蒸発物Sa’の付着を抑制しながら原料Saの蒸着を行う。
原料Saの蒸着が行われている間、制御装置80は、受光器72からの信号を監視する。制御装置80は、受光器72からの信号によって、所望の膜厚の薄膜が基板に形成されたことを確認すると、シャッタ駆動モータ53aを制御してシャッタ51aをプラズマ生成空間Paの上部を覆う位置に移動させる。このようにシャッタ51aを移動させることで、原料蒸発物Sa’が基板ホルダ13の方向へ移動することを妨げて、原料Saの蒸着を終了する。次いで、電子銃32aに供給する電力を下げるとともに、高周波コイル17aに供給する電力を下げて、プラズマ生成空間Paで待機状態のプラズマを維持する。
次に、本発明の第2蒸着工程に相当する工程として、原料Sbの蒸着を開始する。原料Sbの蒸着では、先ず、電子銃32bに供給する電力を所定の値に上げて、電子ビームを原料Sbに照射して、原料Sbの蒸発物である原料蒸発物Sb’を発生させる。これと同時期に、高周波コイル17bに供給する電力を上げて、プラズマ生成空間Pbに原料Sb蒸着時のプラズマを発生させる。原料Sb蒸着時のプラズマは、待機状態のプラズマよりもプラズマ密度が高い状態のプラズマである。そして、プラズマ生成空間Pbで原料Sb蒸着時のプラズマを安定させたら、シャッタ駆動モータ53bを制御して、シャッタ51bをプラズマ生成空間Pbの上部を覆わない位置に移動させる。これにより、プラズマ生成空間Pbを通過した原料蒸発物Sb’が基板ホルダ13の方向へ移動して、その一部が基板に付着することで、原料Sbの蒸着が行われる。本実施形態では、カバー部材18a,18bで覆われた高周波コイル17a,17bを備えた蒸着装置1を用いて原料Sbの蒸着を行うことで、高周波コイル17a,17bへの原料蒸発物Sb’の付着を抑制しながら原料Sbの蒸着を行う。
原料Sbの蒸着が行われている間も、制御装置80は、受光器72からの信号を監視する。制御装置80は、受光器72からの信号によって、所望の膜厚の薄膜が基板に形成されたことを確認すると、シャッタ駆動モータ53bを制御してシャッタ51bをプラズマ生成空間Pbの上部を覆う位置に移動させる。このようにシャッタ51bを移動させることで、原料蒸発物Sb’が基板ホルダ13の方向へ移動することを妨げて、原料Sbの蒸着を終了する。次いで、電子銃32bに供給する電力を下げるとともに、高周波コイル17bに供給する電力を下げて、プラズマ生成空間Pbで待機状態のプラズマを維持する。
上述の原料Saの蒸着、原料Sbの蒸着を繰り返すことで、積層数を増やした薄膜を形成することができる。
本実施形態の蒸着装置1を用いて、上記のように薄膜を形成することで、以下の効果を奏する。
本実施形態では、高周波電源26によって高周波コイル17a,17bに電力を供給して、プラズマ生成空間Pa,Pbでプラズマを発生させる前に、予め、イオン銃60からイオンビームを真空槽11内に照射している。予め、イオンビームを真空槽11内に照射することで、プラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマが発生するきっかけとなるイオン,電子を多量に存在させておくことができる。従来は、高周波コイルを用いて(RF誘導結合型で)プラズマを発生させるために、3×10−2Pa程度の圧力が必要であった。しかし、本実施形態のように、プラズマが発生するきっかけとなるイオン,電子を多量に存在させ、比較的閉じた空間であるプラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマを発生させることで、従来よりも低い圧力でプラズマをプラズマ生成空間Pa,Pbに発生させることが可能となる。また、従来は、プラズマを維持させるために、3.0×10−2Pa以上の圧力が必要であったが、本実施形態では、イオン銃60からイオン等が供給されるため、2.0×10−2Pa程度の低い圧力でプラズマを維持させることができる。これにより、従来に比べて広い圧力範囲で薄膜の形成をすることが可能になる。
本実施形態では、高周波コイル17a,17bでプラズマ生成空間Pa,Pbにプラズマを発生させながら蒸着を行うことで、原料蒸発物Sa’,Sb’は、プラズマ生成空間Pa,Pbで励起される。従って、高周波コイル17a,17bを設けない場合に比べて、ガスボンベ41から供給された反応性ガス等と原料蒸発物Sa’,Sb’とを反応させ易くなる。このように原料蒸発物Sa’,Sb’が反応性ガスと反応し易くなれば、原料蒸発物Sa’,Sb’と反応性ガスを充分に反応させながら、薄膜の形成速度(成膜速度)を上昇させることができる。特に本実施形態では、ガス導入管11bのガス排出口がプラズマ生成空間Pa,Pbに向くようにガス導入管11bが配置されているため、原料蒸発物Sa’,Sb’と反応性ガスを充分に反応させ易くなっている。
例えば、形成させる薄膜が酸化物である場合には、ガスボンベ41からプラズマ生成空間Pa,Pbに反応性ガスとして酸素ガスを供給すれば、プラズマ生成空間Pa,Pbを通過した原料蒸発物Sa’,Sb’を酸素ガスと反応させやすくなる。このように原料蒸発物Sa’,Sb’が酸素ガスと反応し易くなれば、原料蒸発物Sa’,Sb’と反応性ガスを充分に反応させながら、薄膜の形成速度を上昇させて、酸素欠損の少ない薄膜を形成することができる。
一方で、高周波電源26で供給する電力を調整したり、ガスボンベ41から供給するガス流量を調整したりすることで、プラズマ生成空間Pa,Pbのプラズマ中における励起種の密度を調整できるため、原料蒸発物Sa’,Sb’と反応性ガスとの反応し易さの程度を変化させて、基板に形成する膜質を高精度に制御できる。
また、基板に到達した原料蒸発物Sa’,Sb’は、基板面上でイオン銃60から照射されたイオンビームによって叩かれるため、緻密な薄膜を形成することができる。さらに、蒸着装置1によれば、高周波電源26a,26bの制御と、イオン銃電源62の制御とを独立に行うことができるため、成膜プロセス条件をきめ細かく調整することができ、形成する薄膜の性能を精密に制御することができる。
また、本実施形態では、カバー部材18a,18bが設けられているため、高周波コイル17a,17bに原料蒸発物Sa’,Sb’が付着することを抑制することができる。特に、本実施形態では、カバー部材18a,18bが高周波コイル17a,17bの内周側及び外周側を取り囲むように設けられているため、坩堝31aの中から発生した原料蒸発物Sa’が高周波コイル17bの外周側に付着することや、坩堝31bの中から発生した原料蒸発物Sb’が高周波コイル17aの外周側に付着することを抑制することができる。高周波コイル17a,17bへの原料蒸発物Sa’,Sb’の付着を抑制することにより、プラズマ生成空間Pa,Pbにおけるプラズマを安定させることができる。
また、本実施形態では、原料Sbの蒸着が行われている間、すなわち、プラズマ生成空間Pbで原料Sb蒸着時のプラズマを発生させているときに、プラズマ生成空間Paではプラズマが消えないように、待機状態のプラズマを維持する。また、原料Saの蒸着が行われている間、すなわち、プラズマ生成空間Paで原料Sa蒸着時のプラズマを発生させているときに、プラズマ生成空間Pbではプラズマが消えないように、待機状態のプラズマを維持する。すなわち、高周波コイル17aに対する電力供給と高周波コイル17bに対する電力供給を独立に制御して、プラズマ生成空間Pa,Pbで成膜中は常にプラズマが維持されているように構成して、プラズマの発生・消失を原因とする真空槽11内の雰囲気等の急変を回避することで、成膜プロセスを安定化し、再現性良く同質の薄膜を形成することが可能となっている。
以上のように本実施形態の蒸着装置1を用いて薄膜を形成することで、安定したプラズマ状態の実現により、成膜プロセスを安定させることができ、均一で良質な薄膜を再現性よく形成することができる。
次に、本実施形態の蒸着装置1を用いて、酸化ケイ素(SiO)と酸化タンタル(Ta)の薄膜を積層させた薄膜を形成した実験例を示す。
本実験は、蒸着装置(1),蒸着装置(2),蒸着装置(3)を用いて薄膜を形成する実験を行っている。蒸着装置(1),蒸着装置(2)は、イオン銃60を備えているが、本実施形態の蒸着装置1に比べて、高周波コイル17a,17bや高周波電源26a,26bを備えていない蒸着装置である。なお、蒸着装置(1)は、株式会社シンクロン製,形式SID−1100Dを用いている。蒸着装置(2)は、株式会社シンクロン製,形式SID−1350Dを用いている。蒸着装置(3)は、本実施形態の蒸着装置1と同様の構成を備える蒸着装置であり、高周波コイル17a,17b、カバー部材18a,18b、高周波電源26、位相シフタ27、マッチング回路29a,29bを備えている点等を除いては、蒸着装置(2)と同様である。
本実験例では、高周波コイル17a,17bとして、銅製の管材(管径6.35φ)を螺旋状に二重に巻いたものを用いた。高周波コイル17a,17bの外径は230φであるである。この高周波コイル17a,17bを、蒸着源30a,30bに充填された原料原料から約150mmの位置に設けた。因みに、高周波コイル17a,17bと基板ホルダ13とは、約900mm離間させている。このように、高周波コイル17a,17bを配置することで、高周波コイル17a,17bを蒸着源30a,30bの近傍に設けている。なお、高周波コイル17a,17bを配置する蒸着源30a,30bの近傍の位置としては、本実験例の上記値に限らず、本実験例の高周波コイル17a,17bを用いるのであれば、蒸着源30a,30bから100mm〜300mm程度の距離であってもよい。
蒸着装置(1),(2),(3)は、いずれも、蒸着源を2つ備え、本実験では、一方の蒸着源に酸化ケイ素(SiO)を充填して、他方の蒸着源に酸化タンタル(Ta)を充填して、酸化ケイ素(SiO)と酸化タンタル(Ta)を交互に、各50層程度を積層させた薄膜を形成した。蒸着装置(3)を用いた実験では、上記実施形態の薄膜形成方法で薄膜を形成した。
表1は、本実験例の結果を示す。
Figure 2005076095
表1中の「基板ドーム径」は、基板ホルダ13に相当する基板ホルダのドームの直径を示している。表1中の「排気時間」は、蒸着開始前に、真空槽内を6.0×10−4Paまで減圧するのに要する時間を示している。表1中の「成膜後の待機時間」は、イオン銃60の保護のために、全ての層の成膜が全て終了した後に蒸着装置を待機させておくのに必要な時間を示している。表1中の「成膜時間」は、1層目の蒸着開始から最後の層の蒸着を終了させるまでに要した時間を示している。表1中の「成膜速度」は、薄膜が形成される速度で、酸化ケイ素(SiO)と酸化タンタル(Ta)それぞれについての成膜速度を示している。表1中の「サイクル時間」は、成膜のために必要な全体の時間であり、上記「排気時間」,「成膜後の待機時間」,「成膜時間」を足し合わせた時間を示している。表1中の「生産性」は、蒸着装置(1)を用いて薄膜を形成した場合の生産量を基準として、各蒸着装置での薄膜の生産量を示している。なお、いずれの装置を用いた場合も、酸化ケイ素(SiO)の蒸着を1層終了してから、酸化タンタル(Ta)の蒸着を開始するまでには、約2分の待ち時間を設け、酸化タンタル(Ta)の蒸着を1層終了してから、酸化ケイ素(SiO)の蒸着を開始するまでには、約1分の待ち時間を設けた。
いずれの装置を用いた場合も、基板温度を成膜中約250℃に保ち、イオン銃60には酸素ガスを約50sccmで導入し、イオン銃60の加速電圧は約1000V,加速電流は約1200mAである。
蒸着装置(3)を用いた製膜では、酸化ケイ素(SiO)蒸着時のプラズマを発生させるために約1kWの電力を高周波コイル17aに供給し、酸化タンタル(Ta)蒸着時のプラズマを発生させるために約1kWの電力を高周波コイル17bに供給した。待機状態のプラズマは、約200Wの電力を高周波コイル17a,17bに供給することで維持した。蒸着装置(3)におけるカバー部材18a,18bの内周被覆部材18a,18bは、溶融石英から形成したものである。
上記表1の結果からわかるように、上記した本実施形態の蒸着装置1と同様の蒸着装置(3)を用いて、本実施形態の薄膜形成方法によって薄膜を形成した場合に、成膜速度が速く、また生産性に優れることがわかる。
なお、蒸着装置(2)を用いた場合の生産性の値が、蒸着装置(1)を用いた場合の生産性の値よりも大きくなっているのは、基板ドーム径の値が大きいことにともなって、多くの基板を基板ドームに配置して一度に成膜できる薄膜の面積が広いことに起因する。
図5,図6は、酸化タンタル(Ta)の薄膜を形成させた実験結果を示す。なお、図5,図6に示す実験結果は、上記の蒸着装置(3)を用いて、酸化タンタル(Ta)の層だけで構成される薄膜を形成させた場合の実験結果を示す。すなわち、蒸着源に酸化タンタル(Ta)を充填して薄膜を形成した。
図5は、上記の蒸着装置(3)を用いて形成した酸化タンタル(Ta)薄膜の屈折率を示した表である。図5で示した表は、各基板に形成した酸化タンタル(Ta)薄膜について、400,450,500,550,600,650,700nmの波長に対する屈折率を示している。「1」〜「9」番の各基板は、基板ホルダ13の回転中心から順番に、125,182.5,240,297.5,355,412.5,470,521.5,585mmの距離に配置されたものである。また、図5には、各波長について、屈折率の標準偏差σ,平均値Av,変動係数CVを示している。
図6は、上記の蒸着装置(3)を用いて形成した酸化タンタル(Ta)薄膜の分光特性を示している。
表1,図5,図6の実験結果から、上記の蒸着装置(3)を用いて薄膜を形成することで、基板ホルダ13に対する基板の配置位置による屈折率等のばらつきが少ない良好な薄膜を高速で成膜できることがわかる。
以上に説明した実施形態は、例えば、以下の(a)〜(k)のように、改変することもできる。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一部材は同一の符号を用いて示しており、その説明は上記と同様であるので省略する。
(a) 上記実施形態では、本発明の付着抑制部や被覆部材に相当するカバー部材18a,18bは、高周波コイル17a,17bを内周側から覆うための内周被覆部材18a,18bと、高周波コイル17aを外周側と下側,上側から覆うための外周被覆部材18a,18bとで構成した。しかし、カバー部材18a,18bの構成はこれに限定されるものではない。例えば、内周被覆部材18a,18bが高周波コイル17a,17bを内周側及び上側から覆うように構成し、外周被覆部材18a,18bが高周波コイル17a,17bを外周側及び下側から覆うように構成してもよい。また、上記実施形態では、外周被覆部材18b,18aを導電体で形成したが、絶縁体で形成するように構成しても、原料蒸発物の高周波コイル17a,17bへの付着を抑制することが可能である。
(b) 上記実施形態では、原料Saの蒸着の後に、原料Sbの蒸着を行うことで、2種類の薄膜を交互に積層させた薄膜を形成する場合について説明した。しかし、原料Saの蒸着と原料Sbの蒸着とを同時期に行うことで、原料Saと原料Sbを混合させた薄膜を形成することもできる。すなわち、プラズマ生成空間Paにおける原料Sa蒸着時のプラズマの発生と、プラズマ生成空間Paにおける原料Sb蒸着時のプラズマの発生とを同時期に行い、原料Saの蒸着と原料Sbの蒸着とを同時期に行うこともできる。
(c) 上記実施形態では、原料Saの蒸着を行うときや、原料Sbの蒸着を行うときには、シャッタ64がイオン銃60の上部を覆わない位置にあって、イオンビームを基板に向けて照射していた。しかし、原料Saの蒸着を行うとき、又は原料Sbの蒸着を行うときのいずれか一方において、シャッタ64をイオン銃60の上部を覆う位置へ移動させておくこともできる。すなわち、原料Saの蒸着を行うとき、又は原料Sbの蒸着を行うときのいずれか一方において、イオンビームを基板に向けて照射しないようにすることもできる。
(d) 上記実施形態では、高周波コイル17a,17bと蒸着源30a,30bを備えたが、高周波コイル17b,蒸着源30bを備えないように構成することもできる。
また、この場合には、蒸着源30aにおける坩堝31aの構造を図7,図8に示すように改変して、蒸着源30aに代えて蒸着源130を用いることができる。図7は、蒸着装置1を改変した本発明の薄膜形成装置に相当する蒸着装置101の概略構成を示す説明図である。図8は、坩堝31aの構造を説明する説明図であり、坩堝31aを基板ホルダ13の方からみた図である。
図7に示す蒸着装置101は、真空槽11の底面に坩堝131を備える。坩堝131は、その全体形状が概ねドーナツ状をしており、上面に原料を保持するための環状に形成された凹部131aを備えている(図8参照)。図8に示す例では、凹部131aは、連続した環状に形成されているが、凹部131aを、環状に間欠的に形成してもよい。蒸着装置101には、坩堝131を回転させる機構が備えられている。図7に示す例では、坩堝131を回転させる機構として、坩堝131を支持するとともに回転させる回転軸131bを備える。回転軸131bは、図8の矢印Rで示す方向に、坩堝駆動モータ(不図示)によって回転駆動される。
蒸着装置101の高周波コイル17aは、蒸着源130の近傍に設けられ、ドーナツ状をした坩堝131直上で、電子銃32aに近い側の一部の空間を囲繞するように配置されている。高周波コイル17aに電力を供給することによって、蒸着源130直上の高周波コイル17aで囲われた空間であるプラズマ生成空間にプラズマを発生させることができる。電子銃32aからの電子ビームは、坩堝131の凹部131aに充填される原料のうち、高周波コイル17aの直下に位置する原料に照射される。
上記蒸着装置101を使用して、原料Saの蒸着の後に原料Sbの蒸着を行うことで、2種類の薄膜を交互に積層させた薄膜を形成する場合について説明する。まず、坩堝131には、原料Sa及び原料Sbを充填する。このとき、例えば、図8に示すように、原料Sa及び原料Sbが環状に交互に配置するように充填される。この状態で、真空槽11内を所定の圧力まで減圧する。この段階では、原料Saが高周波コイル17aの直下に位置し、シャッタ51aはプラズマ生成空間の上部を覆う位置にあり、シャッタ64はイオン銃60の上部を覆う位置にある。
真空槽11内が所定の圧力で安定したら、マスフローコントローラ42を制御して、必要なガスを真空槽11内に導入する。そして、イオン銃電源62からイオン銃に電力を供給して、イオン銃60に導入したガスのイオンをイオンビームとして真空槽11内へ照射する。この時点では、シャッタ64をイオン銃60の上部を覆う位置に配置しておく。イオンビームの真空槽11内への照射は、後述の原料Saの蒸着の最中、及び原料Sbの蒸着の最中に亘って行われる。続いて、電子銃32aに対する電力供給を開始する。なお、この時点では、蒸着は未だ開始しないため、電子銃32aに対する電力供給は必要最小限で維持する。
次に、シャッタ64をイオン銃60の上部を覆わない位置へ移動させて、イオンビームを真空槽11内の基板に向けて照射する。また、このようにシャッタ64を移動させるとともに、高周波コイル17aに電力を供給してプラズマ生成空間でプラズマを発生させる。
制御装置80によって、ガス流量や、高周波コイル17aに供給する電力等を調整することで、プラズマ生成空間に、待機状態のプラズマを発生させて、この状態を維持する。待機状態のプラズマが安定したところで、その後、原料Saの蒸着を開始する。その後、原料Saの蒸着を上記の実施形態と同様に行う。原料Saの蒸着を終了すると、電子銃32aに供給する電力を下げるとともに、高周波コイル17aに供給する電力を下げて、プラズマ生成空間で待機状態のプラズマを維持する。
次に、原料Sbの蒸着を開始するために、坩堝駆動モータ(不図示)を駆動させて、原料Sbが高周波コイル17aの直下に位置するように、坩堝131を回転させる。続いて、プラズマ生成空間でプラズマが安定したら、その後、原料Sbの蒸着を原料Saの蒸着の場合と同様に行う。原料Sbの蒸着を終了すると、電子銃32aに供給する電力を下げるとともに、高周波コイル17aに供給する電力を下げて、プラズマ生成空間で待機状態のプラズマを維持する。
更に、上述の原料Saの蒸着、原料Sbの蒸着を繰り返す場合には、坩堝駆動モータ(不図示)を駆動させて、原料Saが高周波コイル17aの直下に位置するように、坩堝131を回転させる。そして、上述の原料Saの蒸着、原料Sbの蒸着を繰り返す。
本実施形態のように蒸着装置101を用いて薄膜の形成を行う場合には、上記実施形態の蒸着装置1を用いる場合に比べて、原料の種類を容易に増減させることができる。すなわち、蒸着装置1を用いる場合には、原料の種類の増加に応じて、蒸着源,高周波コイル等の設置数を増加させる必要があるが、蒸着装置101を用いる場合には、坩堝131に複数の原料を並べれば、坩堝131や高周波コイルの数を増加する必要がない。
(e) 図4の破線で示したように、プラズマの状態をモニタするためのプラズマモニタ90を設け、このプラズマモニタ90からの信号を制御装置80が受付けるように構成してもよい。これにより、プラズマモニタ90からの信号に基づいて、プラズマの状態を判別しながら成膜を行うことが可能になる。例えば、プラズマモニタ90からの成膜中の信号に基づいて、プラズマの状態を判断し、必要に応じて所望のプラズマ状態になるように、高周波電源26a,26b、マスフローコントローラ42,63等の制御を行う。
(f) 図9は、蒸着装置1を改変した本発明の薄膜形成装置に相当する蒸着装置201の概略構成を示す説明図である。上記の蒸着装置1では、蒸着源30aの直上の空間だけを囲うように高周波コイル17aが設けられ、蒸着源30bの直上の空間だけを囲繞するように高周波コイル17bが設けられていた。しかし、図9のように改変することができる。すなわち、図9の蒸着装置201では、高周波コイル17a,高周波コイル17bの代わりに、真空槽11内に本発明のプラズマ電極に相当する高周波コイル217を設けて、高周波コイル217が、蒸着源30a及び蒸着源30bの直上の空間を囲繞する構成となっている。この構成によっても、原料蒸発物Sa’,Sb’は、高周波コイル217に囲われた空間で励起されることによって、酸素ガス等と反応し易くなる。なお、蒸着装置201も、上記実施形態のカバー部材18a又は、カバー部材118aに相当するカバー部材218を備え、カバー部材218が高周波コイル217を覆っている。
(g) 上記の蒸着装置1では、蒸着源30a,30bの直上の空間を囲繞するように高周波コイル17a,17bが設けられ、カバー部材18a,18bが高周波コイル17a,17bを覆っていた。蒸着源30bからの原料蒸発物Sb’を励起する必要があるが、蒸着源30aからの原料蒸発物Sa’を励起する必要がない場合等には、高周波コイル17a,カバー部材18aを設けずに、高周波コイル17b,カバー部材18bだけを設けた構成としてもよい。
(h) 図10は、蒸着装置1を改変した本発明の薄膜形成装置に相当する蒸着装置301の概略構成を示す説明図である。上記の蒸着装置1では、蒸着源30a,30bの直上の空間を囲繞するように高周波コイル17a,17bが設けられ、カバー部材18a,18bが高周波コイル17a,17bを覆っていた。しかし、図10のように改変することができる。すなわち、図10の蒸着装置301では、高周波コイル17a、カバー部材18a,18bを設けずに、高周波コイル17bだけを設ける。そして、蒸着源30aと高周波コイル17bとの間を仕切る仕切り壁318を、真空槽11内の底面に立設した構成とする。この場合、仕切り壁318が、本発明の付着抑制部に相当する。
上記蒸着装置301は、蒸着源30aからの原料蒸発物Sa’を励起する必要がない場合等に用いられるために、高周波コイルに17aを設けずに、高周波コイルに17bだけを設けている。また、蒸着装置301は、蒸着源30bからの原料蒸発物Sb’が高周波コイルに17bに付着し難い物質である場合等に用いられるために、カバー部材18bを設けていない。また、蒸着装置301では、蒸着源30aからの原料蒸発物Sa’が高周波コイルに17bに付着するのを抑制するために、仕切り壁318を設けている。ここで、仕切り壁318は、板状部材で、ステンレス等の導電体で形成し、仕切り壁318を接地するとよい。
(i) 上記実施形態では、本発明の励起手段に相当する構成として高周波コイル17a,17b,217を用いて、所謂RF誘導結合型でプラズマを発生させる構成としていた。プラズマの発生の方法には、RF誘導結合型の他にも、RF容量結合型、熱電子衝撃型や、マイクロ波を用いた方法等がある。本発明の励起手段は、これらのプラズマの発生の方法に応じて上記実施形態と異なる構成とすることができる。
図11は、RF容量結合型でプラズマを発生させる場合の励起手段を備えた蒸着装置401の概略構成を示す説明図である。図11に示すように、RF容量結合型でプラズマを発生させる場合には、蒸着源30a,30bの近傍に、本発明のプラズマ電極に相当するプラズマ発生電極417a,417bを設け、さらに、プラズマ発生電極417a,417bに本発明の励起電源に相当する高周波電源426a,426bを接続する。プラズマ発生電極417aは対向する一対の平板状の電極で構成されており、蒸着源30aの直上の空間を囲繞するように、当該一対の平板状の電極が対向して設けられている。プラズマ発生電極417bも、上記プラズマ発生電極417aと同様に、一対の平板状の電極が対向して蒸着源30bの直上の空間を囲繞するように設けられている。高周波電源426a,426bは、プラズマ発生電極417a,417bに100KHz〜50MHzの高周波電力を印加するものであり、高周波電源426a,426bによってプラズマ発生電極417a,417bへ電力を供給することで、蒸着源30a,30bの直上の空間にプラズマを発生させる。蒸着装置401でも、上記の仕切り壁318に相当するものを設けて、蒸着源30aからの原料蒸発物がプラズマ発生電極417bに付着するのを抑制したり、蒸着源30bからの原料蒸発物がプラズマ発生電極417aに付着するのを抑制したりすることができる。なお、プラズマ発生電極417aとプラズマ発生電極417bのいずれか一方のみ設けるようにすることもできる。
図12は、熱電子衝撃型でプラズマを発生させる場合の励起手段を備えた蒸着装置501の概略構成を示す説明図である。図12に示すように、熱電子衝撃型でプラズマを発生させる場合には、蒸着源30a,30bの近傍に、熱陰極517a,517bを設け、さらに、熱陰極517a,517bに本発明の励起電源に相当する熱陰極電源526a,526bを接続する。熱陰極517a,517bは、タングステン、トリウム−タングステンで形成されるフィラメントである。熱陰極517a,517bは、蒸着源30a,30bの近傍に設けられる。熱陰極電源526a,526bによって熱陰極517a,517bへ電力を供給することで、熱陰極517a,517bが熱電子を放出し、蒸着源30a,30bの直上の空間にプラズマを発生させる。蒸着装置501でも、上記の仕切り壁318に相当するものを設けて、蒸着源30aからの原料蒸発物が熱陰極517bに付着するのを抑制したり、蒸着源30bからの原料蒸発物が熱陰極517aに付着するのを抑制したりすることができる。なお、熱陰極517aと熱陰極517bのいずれか一方のみ設けるようにすることもできる。
マイクロ波を用いたプラズマ発生装置を用いる場合には、概ね蒸着装置1の場合と同様の構成であるが、高周波電源26a,26bの代わりに、マイクロ波電源を用いる。マイクロ波電源では、2.45GHzのマクロ波を印加して、蒸着源30a,30bの直上の空間にプラズマを発生させる。なお、高周波コイル17a,17bの形状等をマイクロ波の放電のために適宜変更する。
(j) 上記した蒸着装置1,101,201ではカバー部材18a,18b,218が設けられ、蒸着装置301,401,501では仕切り壁318が設けられ、この構成によって、原料蒸発物等が、高周波コイル17a,17b,217、プラズマ発生電極417a,417b、熱陰極517a,517bへ付着するのを抑制していた。カバー部材18a,18b,218や仕切り壁318を設けない場合や、カバー部材18a,18b,218や仕切り壁318を設けても、僅かに蒸着原料が高周波コイル等に付着する場合には、異常放電を抑制するために、高周波電源26a,26b,426a,426bや、熱陰極電源526a,526b、又は制御装置80に異常放電防止手段を備えるように構成することができる。
異常放電防止手段は、高周波コイル17a,17b,217、プラズマ発生電極417a,417b、熱陰極517a,517b(以下「高周波コイル17a等」という)に対して、高周波電源26a,26b,426a,426b、熱陰極電源526a,526b(以下「高周波電源26a等」という)で印加する電力の周波数の周期1/Fよりも長い周期1/fで、高周波電源26a等からの周波数Fの電力を印加する手段である。例えば、振動子を用いて高周波電源26a等で印加する電力の周波数Fよりも低い周波数fを発生させて、高周波コイル17a等に対して、高周波電源26a等からの周波数Fの電力を、周期1/Fよりも長い周期1/fで間欠的に印加する。例えば、高周波電源26a,26bの周波数F(=13.56MHz)に対しては、それよりも低い周波数1kHz〜400kHz、好ましくは10〜100kHzの周波数の周期で、高周波電源26a,26bからの電力が間欠的に供給されるようにする。具体的には、図13に示すような電力を印加する。
図13は、プラズマ電極に印加される電圧を示している。縦軸が電圧で、横軸が時間である。図13の(A)が、本実施形態の異常放電防止手段を備えない場合、図13の(B)が、本実施形態の異常放電防止手段を備えた場合である。本実施形態では、図3の(B)で示すように、異常放電防止手段を用いて、高周波コイル17a等のプラズマ電極に対して、プラズマを発生させるための周波数Fの電力を、周期1/fで間欠的に印加して、プラズマ電極への電力の供給が休止されるような開放時間Tを周期1/fで設ける。プラズマ電極に原料蒸発物が付着して、この付着した原料蒸発物にイオンが滞留しそうになっても、このようにプラズマ電極に対して電力を印加することで、プラズマを発生させるための周波数Fの電力が途切れる開放時間Tにイオンが開放される。イオンが開放されれば、プラズマ電極に付着した原料蒸発物にイオンが滞留しなくなり、原料蒸発物にイオンが滞留することを要因として発生する異常放電の発生を抑制して、安定した成膜プロセスを実現することが可能となる。
(k) 上記実施形態では、坩堝31a,31bに充填する原料として酸化ケイ素(SiO),酸化タンタル(Ta)を用いているが、これに限定されるものではない。坩堝31a,31bに充填する原料として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),スズ(Sn),クロム(Cr),タンタル(Ta),テルル(Te),鉄(Fe),マグネシウム(Mg),ハフニウム(Hf),ニッケル・クロム(Ni−Cr),インジウム・スズ(In−Sn)などの金属を用いることもできる。また、これらの金属の化合物,例えば、Al,TiO,ZrO,Ta,HfO等を用いることもできる。なお、坩堝31a,31bに保持する原料を同一のものとしてもよいことは勿論である。
これらの原料を用いた場合、ガスボンベ41,61から供給するガスを適宜、酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等に代えることで、Al,TiO,ZrO,Ta,SiO,Nb,HfO,MgF等の光学膜ないし絶縁膜、ITO等の導電膜、Feなどの磁性膜、TiN,CrN,TiCなどの超硬膜を形成することができる。
本発明に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 図2は、付着抑制部を示す図である。 図3は、付着抑制部を示す図である。 本発明に係る薄膜形成装置の制御手段の機能を説明するブロック図である。 図5は、本発明に係る薄膜形成装置を用いて薄膜を形成させた場合の実験結果を示す。 図6は、本発明に係る薄膜形成装置を用いて薄膜を形成させた場合の実験結果を示す。 別の実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 坩堝の構造の説明する説明図である。 別の実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 別の実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 別の実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 別の実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を示す説明図である。 プラズマ電極に印加される電圧を示している。
符号の説明
1,101,201,301,401,501 蒸着装置
11 真空槽
11a 配管
11b ガス導入管
12 真空ポンプ
13 基板ホルダ
13a 熱伝対
14 ヒーター
15 補正板
17a,17b,217 高周波コイル
18a,18b,118a,118b,218 カバー部材
18a1,18b1,118a1 内周被覆部材
18a2,18b2,118a2 外周被覆部材
24 ヒーター電源
25a,25b 電子銃電源
26a,26b,426a,426b 高周波電源
27 位相シフタ
29a,29b マッチング回路
30a,30b,130 蒸着源
31a,31b,131 坩堝
32a,32b 電子銃
41,61 ガスボンベ
42,63 マスフローコントローラ
51a,51b,64 シャッタ
52a,52b,65 回転棒
53a,53b,66 シャッタ駆動モータ
60 イオン銃
62 イオン銃電源
71 投光器
72 受光器
73 モニタ
74 モニタマスク
75 投光側ミラー
76 受光側ミラー
80 制御装置
90 プラズマモニタ
118a1_d 内周下側被覆部材
118a1_u 内周上側被覆部材
131a 凹部
131b 回転軸
318 仕切り壁
417a,417b プラズマ発生電極
517a,517b 熱陰極
526a,526b 熱陰極電源
ha1 係合片
ha2 係合部
ho 挿通孔
m 支持溝
Pa,Pb プラズマ生成空間
Sa,Sb 原料
Sa’,Sb’ 原料蒸発物
W1 側壁面
W2 上壁面
W3 下壁面

Claims (22)

  1. 真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、
    前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、
    原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる蒸着源と、
    該蒸着源の上方位置にプラズマを形成させることにより該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、
    前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、
    前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源から発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成されたことを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 前記プラズマ電極が、前記励起電源からの高周波電力の印加を受けて高周波放電によりプラズマを形成させる高周波コイルで構成されるとともに、前記蒸着源の直上の空間を囲繞するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
  3. 真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、
    前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、
    原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる少なくとも2つの蒸着源と、
    該蒸着源のうちの少なくとも1つの蒸着源の上方位置にプラズマを発生させることにより当該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、
    前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、
    前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成されたことを特徴とする薄膜形成装置。
  4. 前記プラズマ電極が、前記励起電源からの高周波電力の印加を受けて高周波放電によりプラズマを形成させる高周波コイルで構成されるとともに、前記蒸着源のうちの少なくとも1つの蒸着源に対応して該蒸着源の直上の空間を囲繞するように配置され、
    前記付着抑制部が、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が他の蒸発源に対応して配置された前記高周波コイルに付着するのを抑制するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載薄膜形成装置。
  5. 真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、
    前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、
    原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる少なくとも2つの蒸着源と、
    該少なくとも2つの蒸着源それぞれの上方位置にプラズマを発生させることにより当該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、
    前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、
    前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に電力を印加するための励起電源と、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記プラズマ電極に付着するのを抑制するための付着抑制部と、を有して構成され
    前記プラズマ電極が、前記少なくとも2つの蒸着源のいずれか1つに対応して配置された第1のプラズマ電極と、他の蒸着源の1つに対応して配置された第2のプラズマ電極と、で構成され、
    前記付着抑制部が、前記蒸着源のうちの少なくとも1つから発生した原料蒸発物が前記第1のプラズマ電極及び前記第2のプラズマ電極のうち少なくともいずれか一方に付着するのを抑制するように構成されたことを特徴とする薄膜形成装置。
  6. 前記励起電源が、前記記第1のプラズマ電極に電力を印加するための第1の励起電源と、前記第2のプラズマ電極に電力を印加するための第2の励起電源と、で構成され、
    前記第1のプラズマ電極と前記第2のプラズマ電極に前記励起電源から供給する電力を独立に制御するための電力制御手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成装置。
  7. 前記第1のプラズマ電極に前記第1の励起電源から印加する所定の周波数の電力の位相と、前記第2のプラズマ電極に前記第2の励起電源から印加する所定の周波数の電力の位相とを制御するための位相制御手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の薄膜形成装置。
  8. 前記付着抑制部が、前記プラズマ電極を取り囲むように設けられた被覆部材であることを特徴とする請求項1,請求項3,請求項5ないし請求項7のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
  9. 前記付着抑制部が、前記高周波コイルの内周側及び外周側を取り囲むように設けられた被覆部材で構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置。
  10. 前記被覆部材が、前記高周波コイルの内周側に設けられた内側被覆部材と、前記プラズマ電極の外周側に設けられた外側被覆部材とで構成され、
    前記内側被覆部材が絶縁体で形成され、前記外側被覆部材が導電体で形成され、
    前記外側被覆部材が接地されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置。
  11. 前記付着抑制部が、前記高周波コイルの少なくとも内周側を取り囲むように設けられた被覆部材で構成され、
    該被覆部材が、前記高周波コイルの内周側に設けられた第1の内側被覆部材と、該第1の内側被覆部材と所定の間隔をもって配置された第2の内側被覆部材とを有して構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の薄膜形成装置。
  12. 真空槽内で原料を加熱して生じた原料蒸発物を基体に付着させて薄膜を形成させる薄膜形成装置において、
    前記真空槽内に配置されて前記基体を保持するための基体保持手段と、
    原料を蒸発させて原料蒸発物を発生させる蒸着源と、
    該蒸着源の上方位置にプラズマを形成させることにより該蒸着源から蒸発した原料蒸発物を励起するための励起手段と、
    前記基体に向けてイオンを照射するためのイオン照射手段と、を備え、
    前記励起手段が、前記真空槽内に配置されたプラズマ電極と、該プラズマ電極に所定の周波数で電力を印加するための励起電源と、を有して構成され、
    前記プラズマ電極に対して前記励起電源からの所定の周波数の電力を該所定の周波数の周期よりも長い周期で間欠的に印加する異常放電防止手段を備えたことを特徴とする薄膜形成装置。
  13. 前記蒸着源で発生させた原料蒸発物が前記基板に到達することを一時的に妨げるための蒸着停止手段を備え、
    該蒸着停止手段は、シャッタ部材と、該シャッタ部材を前記プラズマ電極と前記基体保持手段との間に位置させることが可能なシャッタ部材駆動部と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
  14. 真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、
    前記原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記基体に対して蒸着を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
  15. 真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、
    前記励起手段によって前記蒸着源の直上の限定的な空間にプラズマを発生させながら前記基体に対して蒸着を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
  16. 真空槽内の蒸着源に充填した原料を加熱することで原料蒸発物を発生させ、プラズマを発生させるための励起手段によって前記蒸着源の上方の空間にプラズマを発生させるとともに、イオンを照射するためのイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射しながら、前記基体に対して蒸着を行うことで薄膜を形成させる薄膜形成方法において、
    前記励起手段によるプラズマの発生を、前記真空槽内に設置されたプラズマ電極に対して所定の周波数の電力を印加することで放電により行うとともに、
    前記励起手段によるプラズマの発生の際に、前記プラズマ電極に対して前記所定の周波数の電力を該所定の周波数の周期よりも長い周期で間欠的に印加することを特徴とする薄膜形成方法。
  17. 真空槽内に第1の蒸着源と第2の蒸着源を備えた薄膜形成装置を用いて基体に薄膜を形成させる薄膜形成方法において、
    前記第1の蒸着源に充填した第1の原料を加熱するともに、プラズマを発生させるための励起手段によって前記第1の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させながら前記基体に対して蒸着を行う第1蒸着工程と、
    前記第2の蒸着源に充填した第2の原料を加熱して前記基体に対して蒸着を行う第2蒸着工程と、を行い、
    前記第2の蒸着工程の最中に前記第1の蒸着源の直上の空間でプラズマを維持するとともに、
    前記第1蒸着工程及び前記第2蒸着工程の少なくともいずれか1つの工程において、前記真空槽内にイオンを照射するイオン照射手段によって前記基体に向けてイオンを照射することを特徴とする薄膜形成方法。
  18. 前記第2の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする請求項17に記載の薄膜形成方法。
  19. 前記第1の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第1蒸着工程を行い、
    プラズマを発生させるための励起手段によって前記第2の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させるとともに、前記第2の原料の原料蒸発物が前記励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする請求項17に記載の薄膜形成方法。
  20. 前記第1蒸着工程では、前記第1の蒸着源に対応して設けられた第1の励起手段によって、前記第1の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させ、
    前記第2蒸着工程では、前記第2の蒸着源に対応して設けられた第2の励起手段によって、前記第2の蒸着源の直上の空間にプラズマを発生させ、
    前記第1の原料の原料蒸発物が前記第2の励起手段に付着することを抑制しながら前記第1蒸着工程を行い、
    前記第2の原料の原料蒸発物が前記第1の励起手段に付着することを抑制しながら前記第2蒸着工程を行うことを特徴とする請求項19に記載の薄膜形成方法。
  21. 前記第1蒸着工程と前記第2蒸着工程との少なくともいずれか1つの工程において、前記イオン照射手段によって反応性ガスのイオンを照射することを特徴とする請求項17乃至請求項20のうちいずれか1つに記載の薄膜形成方法。
  22. 前記第1蒸着工程と前記第2蒸着工程とを同時期に行うことを特徴とする請求項17乃至請求項21のうちいずれか1つに記載の薄膜形成方法。
JP2003309556A 2003-09-02 2003-09-02 薄膜形成装置及び薄膜形成方法 Withdrawn JP2005076095A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003309556A JP2005076095A (ja) 2003-09-02 2003-09-02 薄膜形成装置及び薄膜形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003309556A JP2005076095A (ja) 2003-09-02 2003-09-02 薄膜形成装置及び薄膜形成方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005076095A true JP2005076095A (ja) 2005-03-24

Family

ID=34411657

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003309556A Withdrawn JP2005076095A (ja) 2003-09-02 2003-09-02 薄膜形成装置及び薄膜形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005076095A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008023440A1 (fr) * 2006-08-25 2008-02-28 Nalux Co., Ltd. Élément optique doté d'un film de protection contre un laser, et son procédé de fabrication
WO2008023802A1 (fr) * 2006-08-25 2008-02-28 Nalux Co., Ltd. Dispositif optique à film multicouche et procédé pour produire celui-ci
JP2009179828A (ja) * 2008-01-29 2009-08-13 Hoya Corp 蒸着方法及び蒸着装置
US7852562B2 (en) 2005-02-28 2010-12-14 Nalux Co., Ltd. Optical element with laser damage suppression film
WO2014119840A1 (ko) * 2013-01-29 2014-08-07 한국기초과학지원연구원 플라즈마 보조 물리 기상 증착원
WO2015182977A1 (ko) * 2014-05-27 2015-12-03 한국기초과학지원연구원 플라즈마 보조 물리 기상 증착원 및 이를 이용한 증착 장치
WO2017044278A1 (en) * 2015-09-08 2017-03-16 Cpfilms Inc. Vapor deposition device and method employing plasma as an indirect heating medium
EP3063571A4 (en) * 2013-10-30 2017-10-18 Tecport Optics, Inc. Ophthalmic optical filters for prevention and reduction of photophobic effects and responses
JP2019515430A (ja) * 2016-04-25 2019-06-06 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドApplied Materials,Incorporated バッテリ用途のセパレータ製作のための方法及び装置

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7852562B2 (en) 2005-02-28 2010-12-14 Nalux Co., Ltd. Optical element with laser damage suppression film
WO2008023440A1 (fr) * 2006-08-25 2008-02-28 Nalux Co., Ltd. Élément optique doté d'un film de protection contre un laser, et son procédé de fabrication
WO2008023802A1 (fr) * 2006-08-25 2008-02-28 Nalux Co., Ltd. Dispositif optique à film multicouche et procédé pour produire celui-ci
US8263172B2 (en) 2006-08-25 2012-09-11 Nalux Co., Ltd. Method for producing optical element having multi-layered film
JP2009179828A (ja) * 2008-01-29 2009-08-13 Hoya Corp 蒸着方法及び蒸着装置
KR101432514B1 (ko) 2013-01-29 2014-08-21 한국기초과학지원연구원 플라즈마 보조 물리 기상 증착원
WO2014119840A1 (ko) * 2013-01-29 2014-08-07 한국기초과학지원연구원 플라즈마 보조 물리 기상 증착원
CN104955979A (zh) * 2013-01-29 2015-09-30 韩国基础科学支援研究院 等离子体辅助物理气相沉积源
JP2016511791A (ja) * 2013-01-29 2016-04-21 コリア ベーシック サイエンス インスティテュート プラズマ補助物理気相蒸着源
EP3063571A4 (en) * 2013-10-30 2017-10-18 Tecport Optics, Inc. Ophthalmic optical filters for prevention and reduction of photophobic effects and responses
WO2015182977A1 (ko) * 2014-05-27 2015-12-03 한국기초과학지원연구원 플라즈마 보조 물리 기상 증착원 및 이를 이용한 증착 장치
WO2017044278A1 (en) * 2015-09-08 2017-03-16 Cpfilms Inc. Vapor deposition device and method employing plasma as an indirect heating medium
JP2019515430A (ja) * 2016-04-25 2019-06-06 アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドApplied Materials,Incorporated バッテリ用途のセパレータ製作のための方法及び装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6113752A (en) Method and device for coating substrate
JP6408862B2 (ja) 低圧アーク・プラズマ浸漬被膜気相堆積及びイオン処理
TWI683020B (zh) 成膜方法及成膜裝置
JP6707559B2 (ja) 被覆された基板の製造方法
JP2017031501A (ja) 遠隔アーク放電プラズマ支援プロセス
EP1640474B1 (en) Thin film forming device
JPH11286781A (ja) 成膜方法及び成膜装置
JP2001234338A (ja) 金属化合物薄膜の形成方法およびその形成装置
JP2005076095A (ja) 薄膜形成装置及び薄膜形成方法
JPH1060659A (ja) プラズマ処理装置
JP2001073136A (ja) 光学薄膜製造装置
JP2004204304A (ja) 薄膜の製造方法およびスパッタリング装置
JP7160531B2 (ja) 表面処理装置
US20210164092A1 (en) Device and method for producing layers with improved uniformity in coating systems with horizontally rotating substrate guiding
JP3779317B2 (ja) 薄膜の形成方法
JP2009120925A (ja) スパッタリング装置
US20230067917A1 (en) Device and method for producing layers with improved uniformity in coating systems with horizontally rotating substrate and additional plasma sources
JPH11269643A (ja) 成膜装置およびそれを用いた成膜方法
JP4859523B2 (ja) プラズマ源、成膜装置および膜の製造方法
TW201123298A (en) System and apparatus to facilitate physical vapor deposition to modify non-metal films on semiconductor substrates
US20130129937A1 (en) Vapor Deposition of Ceramic Coatings
JP2000336477A (ja) 高効率プラズマガス中凝縮クラスター堆積装置
JP2010168648A (ja) 成膜装置及び基板の製造方法
TW201540858A (zh) 用以產生金屬氧化物塗層的系統和方法
JP5372223B2 (ja) 成膜方法及び成膜装置

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20061107