JP2005047827A - 3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法 - Google Patents
3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法に関し、特に3−クロロメチル−3−セフェム系の各種抗生物質の合成中間体として有用な下記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を結晶として得ることができる製造方法に関するものである。
【0002】
【化5】
(式中、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
【0003】
【従来の技術】
前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は、セファロスポリン系抗生物質を合成するための合成中間体として有用な化合物であることが知られている(特許文献1〜8等参照)。
【0004】
従来、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の製造方法は、例えば、3−アセトキシメチルセファロスポリン誘導体の3位のアセトキシメチル基のアセトキシ基を三塩化ホウ素等のルイス酸の存在下に、ハロゲン化する方法(非特許文献1参照)、ペニシリンGから調製した2−アゼチジノン誘導体を電解反応によりクロル化した後、塩基処理してセフェム誘導体に閉環する方法(非特許文献2参照)、下記反応式(1)
【0005】
【化6】
【0006】
に従って、7−置換アミノ−3−ヒドロキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エステル(化合物(3))をアルカリ土類金属炭酸塩の存在下でクロル化剤と反応させる方法(特許文献9参照)、下記反応式(2)
【0007】
【化7】
【0008】
に従って、アゼチジノン誘導体(化合物(1a))を塩基の存在下に有機溶媒中で反応させる方法(特許文献10参照)等が提案されている。
【0009】
この中、特許文献10は、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物の製造方法であり、反応溶媒として原料のアゼチジノン誘導体(化合物(1a))と反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を共に溶解するジメチルホルムアミドを用いて、塩基として弱アルカルのアンモニア又はアンモニア水を用いて反応生成物の分解を防止しながら反応を行い、油状物として3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を得る方法である。
【0010】
なお、特許文献10では、反応溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが、塩基として、強塩基の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物が挙げられているが、アルコールは反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解しないために油状物を得ることはできず、またこれらのアルコールは塩基と反応して水を生成し、その水に塩基が溶解して反応系のpHが上りアルカリ性になると、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は分解するために収率が低下する。
【0011】
また、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は、分子内に反応活性が高い塩素原子を有しているため、油状物の状態では不安定で、例えば室温で保管すると塩酸を放出して自己分解を促進し、品質の低下を引き起こし、温和な条件で比較的長期安定性の優れたものが望まれていた。
【0012】
【特許文献1】
特開昭59−172493号公報
【特許文献2】
特開昭58−72591号公報
【特許文献3】
特開昭60−255796号公報
【特許文献4】
特開昭61−5084号公報
【特許文献5】
特開平1−156984号公報
【特許文献6】
特開平1−308287号公報
【特許文献7】
国際公開番号WO99/10352号公報
【特許文献8】
国際公開番号WO98/58932号公報
【特許文献9】
特開平4−66584号公報
【特許文献10】
特開昭58―74689号公報
【非特許文献1】
“Tetradedron lett.”,p.3991、1974年
【非特許文献2】
“Tetradedron lett.”,23、p.2187、1982年
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このため、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を油状物から結晶として得る方法が提案されている。
例えば、国際公開番号WO99/10352号公報(特許文献7)には、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物のジメチルホルムアミド溶液を冷却したアルコールまたはアルコール水の中で晶析させて、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶物を得る方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、国際公開番号WO99/10352号公報(特許文献7)によれば、一旦合成した3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物を、さらに晶析するという複雑な工程を経なければならず、工業的に有利でない。
【0015】
従って、本発明の目的は、セファロスポリン系の各種抗生物質の合成中間体として有用な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で得ることができる工業的に有利な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を反応をとおして一気に得る方法について鋭意研究を重ねた結果、原料の塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートとの組み合わせを見出し、さらに反応溶媒として3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を溶解しないアルコールと原料の塩素化アゼチジノン誘導体と反応副生物の不純物を溶解するエーテルの組み合わせを見出した。この反応系により、水の不存在下でpHを特定範囲となるように制御して反応を行うと、目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で製造することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0018】
【化8】
【0019】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、アルコールを含む溶媒中で、pH8以下で反応させることを特徴とする下記一般式(2)
【0020】
【化9】
【0021】
(式中、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法である。
【0022】
また、本発明は、下記一般式(1)
【0023】
【化10】
【0024】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、アルコールとエーテルを含む溶媒中で、pH8以下で反応させることを特徴とする下記一般式(2)
【0025】
【化11】
【0026】
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供するものである。
【0027】
本発明において、前記塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に加えて反応を行なうのが好ましい。
【0028】
また、前記アルコールを含有する溶液(C)中に、塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)の一部で反応当量の5〜30mol%の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を加えた後、残りの塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを同時に前記アルコールを含有する溶液(C)に加えて反応を行うのが好ましい。
【0029】
前記塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、塩素化アゼチジノン誘導体1molに対しアルコラートを0.8〜1.5molの割合で反応させるのが好ましい。
前記アルコールはメタノール又はエタノールから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
前記エーテルはジオキサンであるのが好ましい。
前記アルコラートは、ナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートであるのが好ましい。
【0030】
前記反応を5℃以下で行うのが好ましい。
前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンとアルコールに溶解した溶液であるのが好ましい。
前記アルコラートを含有する溶液(B)は、アルコラートをアルコールに溶解した溶液であるのが好ましい。
前記アルコールを含有する溶液(C)は、アルコールとジオキサンとの混合溶媒であるのが好ましい。
前記溶液(A)および溶液(B)は滴下により加えて反応を行うのが好ましい。
前記反応は水の不存在下で行うのが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(1)
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
【0034】
で表される塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)(以降、「塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)」と記す)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)(以降、「アルコラートを含有する溶液(B)」と記す)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、pH8以下で反応を行うことを特徴とする、下記一般式(2)
【0035】
【化13】
【0036】
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供するものである。
【0037】
また、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量は、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)中において、塩素化アゼチジノン誘導体1モルに対するアルコラートがモル比で0.8〜1.5倍モルが好ましい。
また、滴下終了後の反応溶媒中に含まれるアルコールの含有量が30〜95重量%となるように滴下することが好ましい。
【0038】
また、前記反応は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を調製し、先に、塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%となるように前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の一部をアルコールを含む溶媒中に滴下し、次いで、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残りと、アルコラートを含有する溶液(B)とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下して反応を行うことが好ましい。
【0039】
また、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンとアルコールの混合溶媒で溶解した溶液であることが好ましい。
また、前記アルコラートを含有する溶液(B)は、アルコラートをアルコールで溶解した溶液であることが好ましい。
また、前記アルコールを含有する溶液(C)は、アルコールとジオキサンとの混合溶媒であることが好ましい。
【0040】
下記に本発明の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法の反応式を示す。
【0041】
【化14】
【0042】
次に、本発明の製造方法に用いられる上記の溶液(A)〜(C)について説明する。
<塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)>
本発明で用いる原料の前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体(以降、「塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))」とも記す)の式中のR1は、置換又は非置換のアリール基、或いは、置換又は非置換の複素環残基を示す。アリール基としては具体的には、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−クロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等が挙げられる。また、置換又は非置換の複素環残基としては、2−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1,3,4−チアジアゾール−5−イル基、2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル基、1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基、1−メチル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基、1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基等が挙げられる。
【0043】
また、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。具体的には、ベンジル基、p−メトキシベンジル基,フェニル基,p−トリル基等が挙げられる。R2,R3は同一でもまたは異なっていてもよい。
【0044】
前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体は、例えば一般式(1)中のR2がベンジル基、R3がp−メトキシベンジル基の化合物は、チアゾリンアゼチジノン誘導体を出発原料として下記反応式(3)及び反応式(4)に示す2段の反応によって製造することができる。(後記の特公平5−9425号公報参照)
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
(式中、R1は前記と同義である。)
【0047】
<塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)>
本発明に用いられる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、上記の反応式(4)に従って得られた反応生成物の塩素化アゼチジノン誘導体が溶媒に溶解している溶液を調整して用いることができる。
【0048】
または、本発明に用いられる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)として、前記塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1a))を溶解する溶媒を用い、所定の濃度に調製した溶液を用いることができる。
塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、前記塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を溶解する溶媒を用い、所定の濃度に調製した溶液である。
【0049】
塩素化アゼチジノン誘導体を溶解する溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いることができる(以下、「A1溶媒」と呼ぶ。)。この中、ジオキサンを用いるのが好ましい。
【0050】
これらの溶媒の含有量は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))100重量部に対して50〜500重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0051】
このような塩素化アゼチジノン誘導体を溶解した溶液はそのまま用いてもよいが、この溶液は粘性が高いので、更に、この溶液に、塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するアルコール(以下、「A2溶媒」と呼ぶ。)を添加して用いると粘性が低下し滴下の際の操作性が容易となるために好ましい。用いることができるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等の低級アルコールの1種又は2種以上で用いることができる。この中、低級アルコールとしてメタノール又はエタノールを用いて後述する反応条件で反応を行うと、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから特に好ましい。
【0052】
この場合、アルコール(A2溶媒)の配合量は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))100重量部に対して100〜500重量部、好ましくは200〜300重量部の範囲が望ましい。
かかる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液は塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を0.05〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.5モル/L含有する溶液として用いることが好ましい。
【0053】
<アルコラートを含有する溶液(B)>
本発明は、結晶化反応にアルコラートを用いることに特徴がある。
本発明で用いることができるアルコラートは、一般式;R4−OMで表される。式中のR4は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の低級アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基等のアルキル基が挙げられる。式中のMはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。
【0054】
アルコラートの具体的な化合物としては、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、リチウムメチラート、リチウムエチラート、カリウムt−ブチラート等が挙げられ、これらのアルコラートは1種又は2種以上で用いることができる。
【0055】
この中、アルコラートとしてナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートを用いるのが好ましい。
アルコラートを含有する溶液(B)は、前記アルコラートを溶解する溶媒を用いて所定の濃度に調製した溶液である。
【0056】
前記アルコラートを溶解する溶媒(以下、「B1溶媒」と呼ぶ。)としては、アルコールが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。この中、メタノール又はエタノールを用いるのが好ましい。
【0057】
<アルコールを含有する溶液(C)>
アルコールを含有する溶液は、少なくともアルコール(以下、「C1溶媒」と呼ぶ。)の単独溶媒、または他の溶媒(以下、「C2溶媒」と呼ぶ。)との混合溶媒が用いられる。用いることができるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等の低級アルコールが挙げられ、これらのアルコールは1種又は2種以上で用いることができる。この中、アルコールとして、メタノール又はエタノールを用いるのが好ましい。
【0058】
アルコールは、原料の一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するが、反応生成物の一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解しないために、反応生成物を直接結晶として回収できる反応溶媒として好適である。
【0059】
また、アルコール(C1溶媒)と混合する他の溶媒(C2溶媒)は、原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を溶解し、更に反応終了後に不純物となる未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体或いは反応副生物等の不純物を溶解するために前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を反応液から高純度で回収することができる。このような溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いることができる。この中、ジオキサンを用いるのが好ましい。
【0060】
アルコール類(C1溶媒)と他の溶媒(C2溶媒)との混合割合は、アルコール(C1溶媒)100重量部に対して他の溶媒(C2溶媒)が10〜30重量部、好ましくは10〜20重量部で後述する反応条件で反応を行うと、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから好ましく、一方、他の溶媒(C2溶媒)が10重量部未満では、反応が進行するに従って、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を抱くためダンゴ状になるので、高純度で、且つ高収率で3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得られなくなり、30重量部を越えると生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が溶解し収率の低下をまねくことから好ましくない。
【0061】
アルコールを含有する溶液(C)の使用量は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体100重量部に対して300〜2000重量部、好ましくは500〜1000重量部が望ましく、300重量部未満では、反応が進行しにくくなると共に、未反応原料が残存し、2000重量部を超えると溶媒を必要以上に多量に使用するため工業的に有利でない。
【0062】
<反応条件>
本発明の前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、pH8以下で反応を行うことにその特徴がある。
【0063】
本発明において、反応はpH8以下、好ましくはpH6〜8で行うのが好ましい。反応中のpHを上記範囲とする理由は、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶はアルカリに対して極めて不安定であり、pH8をこえると反応過程で分解し高純度で、且つ高収率で目的とする3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が得られなくなることから好ましくない。
【0064】
反応中のpHの測定は、例えば、反応は速やかに進行するために、反応系から反応液をリトマス試験紙にとり、これに水を滴下し測定したり、また、反応液の少量を採取し、これに2倍量の水を添加した後、pHメーター等により測定するのが好ましい。反応中のpHは、反応系中の未反応のアルコラートが弱塩基を示すために上昇し、アルカリ性に傾いていく。
【0065】
したがって、本発明における反応は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に、上記pHの範囲となるように滴下して加えるのが好ましい。
【0066】
また、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)および前記アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量を、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)中の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))に対するアルコラートを含有する溶液(B)中のアルコラートのモル比を0.8〜1.5倍モル、好ましくは1.1〜1.2倍モルとなるように滴下すると、未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))の残存量も少なくなることから、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高純度で、且つ高収率で得られることから好ましく、一方、0.8倍モル未満では、未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))が必要以上に残存し、1.5倍モルを越えると反応液がpH8を越えるアルカリ性となり、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が分解するので好ましくない。
【0067】
更に、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と前記アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量は、滴下終了後の溶液(A)〜溶液(C)の全体の反応溶媒中(A1溶媒+A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒+C2溶媒)のアルコールの含有量(A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒)が30〜95重量%、好ましくは60〜90重量%となるよう滴下するのが好ましい。滴下終了後の反応溶媒中のアルコールの含有量が30重量%未満では、反応原料のアルコラートが反応液に溶解しにくくなり、また、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が溶解し収率の低下をまねき、一方、95重量%を越えると反応が進行するに従って、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を溶解できなくなるためこの不純物を抱きダンゴ状になるので、高純度で、且つ高収率で3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得られなくなることから好ましくない。
【0068】
特に、本発明において、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)として、塩素化アゼチジノン誘導体を溶解する溶媒として、ジオキサン(A1溶媒)と、メタノール又は/及びエタノール(A2溶媒)の混合溶媒を用い、アルコラートを含有する溶液(B)として、メタノール又は/及びエタノール(B1溶媒)を用い、更に、アルコールを含む溶媒(C)としてメタノール又は/及びエタノール(C1溶媒)とジオキサン(C2溶媒)との混合溶媒を用いて、滴下終了後の反応溶媒中(A1溶媒+A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒+C2溶媒)のメタノール又は/及びエタノールの含有量が20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%となるように滴下すると、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから特に好ましい。
【0069】
前記の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)と前記のアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法としては下記の1〜2の滴下方法が挙げられる。
【0070】
1.前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)を調製し、アルコールを含有する溶液(C)中に、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)が前記アルコラート類を含有する溶液(B)に対して先行するように溶液(A)および(B)を、連続的又は継続的に反応系内のpHが上記範囲となるように滴下する方法(以下、「1の滴下方法」と呼ぶ。)。
【0071】
2.前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を調製し、先に、塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%、好ましくは10〜20モル%となるように前記溶液(A)をアルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、次いで、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残りと、アルコラートを含有する溶液(B)とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に反応系内のpHが上記範囲となるように滴下する方法(以下、「2の滴下方法」と呼ぶ。)。
【0072】
前記1の滴下方法は、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)との滴下順序を適宜調製し反応系内のpHが常に上記範囲となるように前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法である。前記2の滴下方法は、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の所定量を予めアルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、反応系内を酸性領域(例えば、pH4)とし、これに、反応系内のpHが常に上記範囲となるように塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残さとアルコラートを含有する溶液(B)とをほぼ同時に継続的にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法である。
【0073】
なお、本発明の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法において、アルコールを含有する溶液(C)を調製する際に、予め前記塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%、好ましくは10〜30モル%をアルコールを含有する溶液(C)に仕込み、次いで前記2の滴下方法の反応操作と同じ操作で、更に反応に必要量の塩素化アゼチジノンを含有する溶液とアルコラートを含有する溶液とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に反応系内のpHが常に上記範囲となるように滴下してもよい。
【0074】
本発明における反応は、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、アルカリに対して極めて不安定であり、pH8以上になると反応過程で分解するために、初めから塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とを、同時にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下するとアルカリ側に振れる可能性があるために、上記の1および2の滴下方法に示す様に、反応系を絶えず塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を先行させてアルカリ側のpH8を越えない様に反応を行うのが好ましい。なお、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は約pH4程度であり、アルコラートを含有する溶液(B)の添加により反応系のpHは上昇する。
【0075】
本発明において、前記1と2の滴下方法の中、2の滴下方法の方がpH制御が容易である点で工業的に特に有利となる。
【0076】
また、本発明において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を、アルコールを含有する溶液(C)中に全量を仕込んで後、アルコラートを含有する溶液(B)を滴下してpH8以下で反応を行うと、反応が進行するにつれて生成する反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶に不純物が抱かれて品質が低下する傾向があるが、一気に結晶を得ることができ、後の精製工程での負担が多くなるが、反応としては簡単な操作で行うことができる。
【0077】
本発明において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)として、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を得る前工程のアゼチジノン誘導体の塩素化反応により得られる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液を用いることができる。この溶液は、例えば特公平5−9425号公報に記載されている方法で、アゼチジノン誘導体の塩素化により製造された塩素化アゼチジノン誘導体の溶液が挙げられる。この溶液を用いると、前製造工程の原料のアゼチジノン誘導体からの連続工程により、本発明の目的物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得ることができる。
【0078】
本発明の製造方法において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンに溶解したジオキサン溶液が好ましく用いられるが、ジオキサン溶液はジオキサンの融点が11℃であるために、反応温度を例えば10℃以下で行う場合、溶液の粘度が上昇し、また固化することがあるが、これを防止するために塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するメタノールまたはエタノール等のアルコールを添加して希釈することにより、溶液の粘度を低下して滴下しやすくすることができる。
【0079】
また、本発明の製造方法において、反応溶媒としてジオキサンを含有している反応系により反応を進行するのが好ましく、ジオキサンの含有量が少ないと、反応が進行するにつれて生成する反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を抱くためにダンゴ状になるので、反応系中のジオキサンの含有量が塩素化アゼチジノン誘導体に対して10〜30重量部の範囲に維持する様にするのが好ましい。
【0080】
また、本発明の製造方法において、反応は溶媒中で行われ、反応で水が生成することもなく、水の不存在下で行われるために、アルコラートが水に溶解してアルカリとして作用するこはなく、アルカリによる反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の分解を防止しやすい利点がある。
【0081】
本発明の製造方法において、上記反応は反応温度を5℃以下で反応を行うと副生物の生成を抑え、且つ高収率で目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得ることができることから好ましく、一方、−20℃未満では原料や不純物が析出するため、−20〜5℃、好ましくは−10〜5℃で反応を行うことが好ましい。
【0082】
かくすることにより、目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が反応の進行により反応溶液が白濁することにより結晶の随時析出が認められ、反応終了後、中和し、ろ過、乾燥して結晶が得られる。必要により、洗浄、再結晶により精製を行ってもよい。
【0083】
なお、洗浄及び再結晶で用いることができる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド類等の1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0084】
また、本発明の前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法によれば、例えば塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1a))とアルコラート(化合物(7))から下記反応式(5)
【0085】
【化17】
【0086】
(式中、R1は置換又は非置換の芳香族炭化水素基、R4は有機基、Mはアルカリ金属を示す。)
【0087】
に従って反応は進行し、目的とする3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(化合物(2a))と共に、スルフィン酸金属塩(化合物(8))が副生する。例えば、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を回収し、回収後の母液からスルフィン酸金属塩(化合物(8))を晶析により析出させ、次いで、この析出したスルフィン酸金属塩と臭素とを溶媒中で反応させることにより得られるスルホニルブロミドは、例えば、前述の反応式(3)のアゼチジノン誘導体(化合物(6))の製造原料として再利用することができる。
【0088】
本発明の製造方法で得られる前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、温和な条件下での長期安定性に優れ、例えば、下記反応式(6)
【0089】
【化18】
【0090】
に従って、各種のセファロスポリン系抗生物質として有用な7−アミノ−3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(化合物(9))に誘導することができる。
【0091】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
実施例1
下記化合物(10)
【0093】
【化19】
【0094】
で表される塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を47.7重量%を含有するジオキサン溶液68.6g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0095】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5g(0.060モル)を脱水メタノール67.2gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0096】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0097】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/8程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0098】
反応終了後、酢酸0.48gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0099】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0100】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))22.9g(純度94.1%、収率85.1%)を得た。
【0101】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0102】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1703cm−1、1645cm−1、1251cm−1、
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0103】
更に、実施例1で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を株式会社リガク製 X線回折装置 RINT2400を使用し、モノクロメータフィルターを通したλ=1.5418Åの銅放射線でX線回折分析を行った。そのX線粉末回折パターンを表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
(注)表1中のdは格子面間隔、I/I0 はd=4.17の回折ピークに対する相対強度を示す。
【0106】
実施例2
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を47.7重量%を含有するジオキサン溶液68.6g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0107】
ナトリウムエチラート4.46g(0.063モル)をメタノール103gで溶解して、ナトリウムエチラートを4重量%含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0108】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0109】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/5程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0110】
反応終了後、酢酸0.44gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0111】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0112】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))21.8g(純度94.3%、収率81.2%)を得た。
【0113】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0114】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0115】
更に、実施例2で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0116】
実施例3
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を46.9重量%を含有するジオキサン溶液69.75g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0117】
ナトリウムエチラート4.46g(0.063モル)を脱水エタノール103gで溶解して、ナトリウムエチラートを4重量%含有するエタノール溶液を調製しB液とした。
【0118】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0119】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/4程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0120】
反応終了後、酢酸0.43gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0121】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0122】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))23.28g(純度91.6%、収率84.2%)を得た。
【0123】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0124】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0125】
更に、実施例3で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0126】
実施例4
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を50.6重量%を含有するジオキサン溶液64.55g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0127】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5gを脱水メタノール67.2gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.060モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0128】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水メタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0129】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/4程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。その後、A液とB液との同時滴下を継続して行い約2時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0130】
反応終了後、酢酸0.48gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0131】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0132】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))22.58g(純度94.4%、収率84.2%)を得た。
【0133】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0134】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0135】
更に、実施例4で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0136】
実施例5
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を57.6重量%を含有するジオキサン溶液57.4g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0137】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5gを脱水メタノール67.0gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.060モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0138】
窒素置換した反応用フラスコに、ジオキサン12.9gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全量を反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0139】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、B液を約2時間で滴下した。B液を約1/3程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。滴下を終了した時のpHは8であった。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0140】
反応終了後、酢酸0.40gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0141】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0142】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))20.50g(純度92.0%、収率74.5%)を得た。
【0143】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0144】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0145】
比較例1
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を49.7重量%を含有するジオキサン溶液65.8g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0146】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)17.0gを脱水メタノール85.0gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.076モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0147】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0148】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/5程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。その後、A液とB液との同時滴下を継続して行い約4時間かけてA液滴下を終了した(pH7〜8)。B液の滴下量は、80.4gで、この時点で(pH7〜8)となった。更に残りのB液の全量20gを30分を要して滴下した。反応液は、赤みを帯びた褐色となった。滴下を終了した時のpHは10であった。更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0149】
反応終了後、酢酸0.64gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0150】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0151】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))18.07g(純度85.9%、収率61.3%)を得た。
【0152】
比較例2
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))71.48g(0.104モル)を窒素雰囲気下、乾燥DMF640mLに溶解して、−30℃に冷却した。次いで−30〜−20℃で28%アンモニア水17.76g(0.292モル;2.8倍モル相当)を少量ずつ滴下した。滴下後−30〜−20℃で、1時間熟成した。
【0153】
反応終了後、反応液に5%塩酸を加えてpHを4〜5に調製した後、酢酸エチル1.92Lを加え、0℃で有機層を分離した。次いで、分離した有機層を飽和食塩水で2回洗い、更に、この有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。
【0154】
次に、この脱水後の有機層を減圧下に濃縮し、油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))38.0g(純度93.3%、収率70.0%)を得た。
【0155】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0156】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0157】
比較例3
比較例2で得られた油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))10.0gをDMF28mlに溶解した。
【0158】
これとは別に3℃に冷却したメタノール400mlを調製し、前記の油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解したDMF溶液を、この冷却メタノールに3〜5℃の温度で除々に滴下し、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を析出させた。
【0159】
固液分離後、回収した3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶をメタノールでリンスし、次いで減圧下に乾燥して3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶8.62g(純度94.0%、回収率86.2%、比較例2から求めた収率60.3%)を得た。
【0160】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0161】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0162】
更に、比較例3で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析をおこない、そのX線回折パターンを表2に示した。
【0163】
【表2】
【0164】
(注)表2中のdは格子面間隔、I/I0はd=4.17の回折ピークに対する相対強度を示す。
【0165】
比較例4
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))35.74g(0.052モル)を窒素雰囲気下、メタノール135gに希釈して、−5℃に冷却した。次いで、−5〜−2℃にて、苛性カリ12.5%を含む20%含水エタノール溶液35.0g(0.078モル;1.5倍モル相当)を30分で少量ずつ滴下した。滴下後−2〜0℃で、1時間熟成した。熟成後のpHは9であった。熟成終了後、酢酸を加えてpHを4〜5に調整した後、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノールでリンスした。洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し、黄褐色の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))の結晶15.15g(純度51.3%、収率30.7%)を得た。
【0166】
<安定性試験>
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体各5gを密閉したビーカに入れ、25℃に設定した恒温室に30日間放置した。
30日放置後の各3−クロロメチル−3−セフェム誘導体について、その純度を再び測定し、その結果を表3に示した。
【0167】
【表3】
【0168】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明の製造方法によれば、セファロスポリン系の各種抗生物質の合成中間体として有用な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を工業的に有利な方法で反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で製造することができる。また、本発明の製造方法で得られる3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、温和な条件下での長期安定性に優れたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法に関し、特に3−クロロメチル−3−セフェム系の各種抗生物質の合成中間体として有用な下記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を結晶として得ることができる製造方法に関するものである。
【0002】
【化5】
(式中、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
【0003】
【従来の技術】
前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は、セファロスポリン系抗生物質を合成するための合成中間体として有用な化合物であることが知られている(特許文献1〜8等参照)。
【0004】
従来、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の製造方法は、例えば、3−アセトキシメチルセファロスポリン誘導体の3位のアセトキシメチル基のアセトキシ基を三塩化ホウ素等のルイス酸の存在下に、ハロゲン化する方法(非特許文献1参照)、ペニシリンGから調製した2−アゼチジノン誘導体を電解反応によりクロル化した後、塩基処理してセフェム誘導体に閉環する方法(非特許文献2参照)、下記反応式(1)
【0005】
【化6】
【0006】
に従って、7−置換アミノ−3−ヒドロキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エステル(化合物(3))をアルカリ土類金属炭酸塩の存在下でクロル化剤と反応させる方法(特許文献9参照)、下記反応式(2)
【0007】
【化7】
【0008】
に従って、アゼチジノン誘導体(化合物(1a))を塩基の存在下に有機溶媒中で反応させる方法(特許文献10参照)等が提案されている。
【0009】
この中、特許文献10は、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物の製造方法であり、反応溶媒として原料のアゼチジノン誘導体(化合物(1a))と反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を共に溶解するジメチルホルムアミドを用いて、塩基として弱アルカルのアンモニア又はアンモニア水を用いて反応生成物の分解を防止しながら反応を行い、油状物として3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を得る方法である。
【0010】
なお、特許文献10では、反応溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが、塩基として、強塩基の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物が挙げられているが、アルコールは反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解しないために油状物を得ることはできず、またこれらのアルコールは塩基と反応して水を生成し、その水に塩基が溶解して反応系のpHが上りアルカリ性になると、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は分解するために収率が低下する。
【0011】
また、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体は、分子内に反応活性が高い塩素原子を有しているため、油状物の状態では不安定で、例えば室温で保管すると塩酸を放出して自己分解を促進し、品質の低下を引き起こし、温和な条件で比較的長期安定性の優れたものが望まれていた。
【0012】
【特許文献1】
特開昭59−172493号公報
【特許文献2】
特開昭58−72591号公報
【特許文献3】
特開昭60−255796号公報
【特許文献4】
特開昭61−5084号公報
【特許文献5】
特開平1−156984号公報
【特許文献6】
特開平1−308287号公報
【特許文献7】
国際公開番号WO99/10352号公報
【特許文献8】
国際公開番号WO98/58932号公報
【特許文献9】
特開平4−66584号公報
【特許文献10】
特開昭58―74689号公報
【非特許文献1】
“Tetradedron lett.”,p.3991、1974年
【非特許文献2】
“Tetradedron lett.”,23、p.2187、1982年
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このため、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を油状物から結晶として得る方法が提案されている。
例えば、国際公開番号WO99/10352号公報(特許文献7)には、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物のジメチルホルムアミド溶液を冷却したアルコールまたはアルコール水の中で晶析させて、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶物を得る方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、国際公開番号WO99/10352号公報(特許文献7)によれば、一旦合成した3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の油状物を、さらに晶析するという複雑な工程を経なければならず、工業的に有利でない。
【0015】
従って、本発明の目的は、セファロスポリン系の各種抗生物質の合成中間体として有用な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で得ることができる工業的に有利な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を反応をとおして一気に得る方法について鋭意研究を重ねた結果、原料の塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートとの組み合わせを見出し、さらに反応溶媒として3−クロロメチル−3−セフェム誘導体の結晶を溶解しないアルコールと原料の塩素化アゼチジノン誘導体と反応副生物の不純物を溶解するエーテルの組み合わせを見出した。この反応系により、水の不存在下でpHを特定範囲となるように制御して反応を行うと、目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で製造することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0018】
【化8】
【0019】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、アルコールを含む溶媒中で、pH8以下で反応させることを特徴とする下記一般式(2)
【0020】
【化9】
【0021】
(式中、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法である。
【0022】
また、本発明は、下記一般式(1)
【0023】
【化10】
【0024】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
で表される塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、アルコールとエーテルを含む溶媒中で、pH8以下で反応させることを特徴とする下記一般式(2)
【0025】
【化11】
【0026】
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供するものである。
【0027】
本発明において、前記塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に加えて反応を行なうのが好ましい。
【0028】
また、前記アルコールを含有する溶液(C)中に、塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)の一部で反応当量の5〜30mol%の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を加えた後、残りの塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを同時に前記アルコールを含有する溶液(C)に加えて反応を行うのが好ましい。
【0029】
前記塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、塩素化アゼチジノン誘導体1molに対しアルコラートを0.8〜1.5molの割合で反応させるのが好ましい。
前記アルコールはメタノール又はエタノールから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
前記エーテルはジオキサンであるのが好ましい。
前記アルコラートは、ナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートであるのが好ましい。
【0030】
前記反応を5℃以下で行うのが好ましい。
前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンとアルコールに溶解した溶液であるのが好ましい。
前記アルコラートを含有する溶液(B)は、アルコラートをアルコールに溶解した溶液であるのが好ましい。
前記アルコールを含有する溶液(C)は、アルコールとジオキサンとの混合溶媒であるのが好ましい。
前記溶液(A)および溶液(B)は滴下により加えて反応を行うのが好ましい。
前記反応は水の不存在下で行うのが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(1)
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、R1は置換又は非置換のアリール基或いは置換又は非置換の複素環残基を示す。R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。)
【0034】
で表される塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)(以降、「塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)」と記す)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)(以降、「アルコラートを含有する溶液(B)」と記す)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、pH8以下で反応を行うことを特徴とする、下記一般式(2)
【0035】
【化13】
【0036】
で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法を提供するものである。
【0037】
また、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量は、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)中において、塩素化アゼチジノン誘導体1モルに対するアルコラートがモル比で0.8〜1.5倍モルが好ましい。
また、滴下終了後の反応溶媒中に含まれるアルコールの含有量が30〜95重量%となるように滴下することが好ましい。
【0038】
また、前記反応は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を調製し、先に、塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%となるように前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の一部をアルコールを含む溶媒中に滴下し、次いで、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残りと、アルコラートを含有する溶液(B)とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下して反応を行うことが好ましい。
【0039】
また、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンとアルコールの混合溶媒で溶解した溶液であることが好ましい。
また、前記アルコラートを含有する溶液(B)は、アルコラートをアルコールで溶解した溶液であることが好ましい。
また、前記アルコールを含有する溶液(C)は、アルコールとジオキサンとの混合溶媒であることが好ましい。
【0040】
下記に本発明の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法の反応式を示す。
【0041】
【化14】
【0042】
次に、本発明の製造方法に用いられる上記の溶液(A)〜(C)について説明する。
<塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)>
本発明で用いる原料の前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体(以降、「塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))」とも記す)の式中のR1は、置換又は非置換のアリール基、或いは、置換又は非置換の複素環残基を示す。アリール基としては具体的には、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−クロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等が挙げられる。また、置換又は非置換の複素環残基としては、2−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1,3,4−チアジアゾール−5−イル基、2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル基、1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基、1−メチル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基、1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル基等が挙げられる。
【0043】
また、R2,R3は置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。具体的には、ベンジル基、p−メトキシベンジル基,フェニル基,p−トリル基等が挙げられる。R2,R3は同一でもまたは異なっていてもよい。
【0044】
前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体は、例えば一般式(1)中のR2がベンジル基、R3がp−メトキシベンジル基の化合物は、チアゾリンアゼチジノン誘導体を出発原料として下記反応式(3)及び反応式(4)に示す2段の反応によって製造することができる。(後記の特公平5−9425号公報参照)
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
(式中、R1は前記と同義である。)
【0047】
<塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)>
本発明に用いられる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、上記の反応式(4)に従って得られた反応生成物の塩素化アゼチジノン誘導体が溶媒に溶解している溶液を調整して用いることができる。
【0048】
または、本発明に用いられる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)として、前記塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1a))を溶解する溶媒を用い、所定の濃度に調製した溶液を用いることができる。
塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、前記塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を溶解する溶媒を用い、所定の濃度に調製した溶液である。
【0049】
塩素化アゼチジノン誘導体を溶解する溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いることができる(以下、「A1溶媒」と呼ぶ。)。この中、ジオキサンを用いるのが好ましい。
【0050】
これらの溶媒の含有量は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))100重量部に対して50〜500重量部、好ましくは100〜500重量部である。
【0051】
このような塩素化アゼチジノン誘導体を溶解した溶液はそのまま用いてもよいが、この溶液は粘性が高いので、更に、この溶液に、塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するアルコール(以下、「A2溶媒」と呼ぶ。)を添加して用いると粘性が低下し滴下の際の操作性が容易となるために好ましい。用いることができるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等の低級アルコールの1種又は2種以上で用いることができる。この中、低級アルコールとしてメタノール又はエタノールを用いて後述する反応条件で反応を行うと、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから特に好ましい。
【0052】
この場合、アルコール(A2溶媒)の配合量は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))100重量部に対して100〜500重量部、好ましくは200〜300重量部の範囲が望ましい。
かかる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液は塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を0.05〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.5モル/L含有する溶液として用いることが好ましい。
【0053】
<アルコラートを含有する溶液(B)>
本発明は、結晶化反応にアルコラートを用いることに特徴がある。
本発明で用いることができるアルコラートは、一般式;R4−OMで表される。式中のR4は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の低級アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基等のアルキル基が挙げられる。式中のMはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を示す。
【0054】
アルコラートの具体的な化合物としては、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、リチウムメチラート、リチウムエチラート、カリウムt−ブチラート等が挙げられ、これらのアルコラートは1種又は2種以上で用いることができる。
【0055】
この中、アルコラートとしてナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートを用いるのが好ましい。
アルコラートを含有する溶液(B)は、前記アルコラートを溶解する溶媒を用いて所定の濃度に調製した溶液である。
【0056】
前記アルコラートを溶解する溶媒(以下、「B1溶媒」と呼ぶ。)としては、アルコールが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。この中、メタノール又はエタノールを用いるのが好ましい。
【0057】
<アルコールを含有する溶液(C)>
アルコールを含有する溶液は、少なくともアルコール(以下、「C1溶媒」と呼ぶ。)の単独溶媒、または他の溶媒(以下、「C2溶媒」と呼ぶ。)との混合溶媒が用いられる。用いることができるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等の低級アルコールが挙げられ、これらのアルコールは1種又は2種以上で用いることができる。この中、アルコールとして、メタノール又はエタノールを用いるのが好ましい。
【0058】
アルコールは、原料の一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するが、反応生成物の一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解しないために、反応生成物を直接結晶として回収できる反応溶媒として好適である。
【0059】
また、アルコール(C1溶媒)と混合する他の溶媒(C2溶媒)は、原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を溶解し、更に反応終了後に不純物となる未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体或いは反応副生物等の不純物を溶解するために前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を反応液から高純度で回収することができる。このような溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いることができる。この中、ジオキサンを用いるのが好ましい。
【0060】
アルコール類(C1溶媒)と他の溶媒(C2溶媒)との混合割合は、アルコール(C1溶媒)100重量部に対して他の溶媒(C2溶媒)が10〜30重量部、好ましくは10〜20重量部で後述する反応条件で反応を行うと、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから好ましく、一方、他の溶媒(C2溶媒)が10重量部未満では、反応が進行するに従って、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を抱くためダンゴ状になるので、高純度で、且つ高収率で3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得られなくなり、30重量部を越えると生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が溶解し収率の低下をまねくことから好ましくない。
【0061】
アルコールを含有する溶液(C)の使用量は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体100重量部に対して300〜2000重量部、好ましくは500〜1000重量部が望ましく、300重量部未満では、反応が進行しにくくなると共に、未反応原料が残存し、2000重量部を超えると溶媒を必要以上に多量に使用するため工業的に有利でない。
【0062】
<反応条件>
本発明の前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法は、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、pH8以下で反応を行うことにその特徴がある。
【0063】
本発明において、反応はpH8以下、好ましくはpH6〜8で行うのが好ましい。反応中のpHを上記範囲とする理由は、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶はアルカリに対して極めて不安定であり、pH8をこえると反応過程で分解し高純度で、且つ高収率で目的とする3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が得られなくなることから好ましくない。
【0064】
反応中のpHの測定は、例えば、反応は速やかに進行するために、反応系から反応液をリトマス試験紙にとり、これに水を滴下し測定したり、また、反応液の少量を採取し、これに2倍量の水を添加した後、pHメーター等により測定するのが好ましい。反応中のpHは、反応系中の未反応のアルコラートが弱塩基を示すために上昇し、アルカリ性に傾いていく。
【0065】
したがって、本発明における反応は、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に、上記pHの範囲となるように滴下して加えるのが好ましい。
【0066】
また、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)および前記アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量を、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)中の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))に対するアルコラートを含有する溶液(B)中のアルコラートのモル比を0.8〜1.5倍モル、好ましくは1.1〜1.2倍モルとなるように滴下すると、未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))の残存量も少なくなることから、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高純度で、且つ高収率で得られることから好ましく、一方、0.8倍モル未満では、未反応原料の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))が必要以上に残存し、1.5倍モルを越えると反応液がpH8を越えるアルカリ性となり、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が分解するので好ましくない。
【0067】
更に、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と前記アルコラートを含有する溶液(B)の滴下量は、滴下終了後の溶液(A)〜溶液(C)の全体の反応溶媒中(A1溶媒+A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒+C2溶媒)のアルコールの含有量(A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒)が30〜95重量%、好ましくは60〜90重量%となるよう滴下するのが好ましい。滴下終了後の反応溶媒中のアルコールの含有量が30重量%未満では、反応原料のアルコラートが反応液に溶解しにくくなり、また、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が溶解し収率の低下をまねき、一方、95重量%を越えると反応が進行するに従って、生成する3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を溶解できなくなるためこの不純物を抱きダンゴ状になるので、高純度で、且つ高収率で3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得られなくなることから好ましくない。
【0068】
特に、本発明において、塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)として、塩素化アゼチジノン誘導体を溶解する溶媒として、ジオキサン(A1溶媒)と、メタノール又は/及びエタノール(A2溶媒)の混合溶媒を用い、アルコラートを含有する溶液(B)として、メタノール又は/及びエタノール(B1溶媒)を用い、更に、アルコールを含む溶媒(C)としてメタノール又は/及びエタノール(C1溶媒)とジオキサン(C2溶媒)との混合溶媒を用いて、滴下終了後の反応溶媒中(A1溶媒+A2溶媒+B1溶媒+C1溶媒+C2溶媒)のメタノール又は/及びエタノールの含有量が20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%となるように滴下すると、前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を高収率で、且つ高純度で得ることができることから特に好ましい。
【0069】
前記の塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を含有する溶液(A)と前記のアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法としては下記の1〜2の滴下方法が挙げられる。
【0070】
1.前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、前記アルコラートを含有する溶液(B)を調製し、アルコールを含有する溶液(C)中に、前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)が前記アルコラート類を含有する溶液(B)に対して先行するように溶液(A)および(B)を、連続的又は継続的に反応系内のpHが上記範囲となるように滴下する方法(以下、「1の滴下方法」と呼ぶ。)。
【0071】
2.前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を調製し、先に、塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%、好ましくは10〜20モル%となるように前記溶液(A)をアルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、次いで、前記一般式(1)で表される塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残りと、アルコラートを含有する溶液(B)とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に反応系内のpHが上記範囲となるように滴下する方法(以下、「2の滴下方法」と呼ぶ。)。
【0072】
前記1の滴下方法は、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)との滴下順序を適宜調製し反応系内のpHが常に上記範囲となるように前記塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とをアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法である。前記2の滴下方法は、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の所定量を予めアルコールを含有する溶液(C)中に滴下し、反応系内を酸性領域(例えば、pH4)とし、これに、反応系内のpHが常に上記範囲となるように塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)の残さとアルコラートを含有する溶液(B)とをほぼ同時に継続的にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下する方法である。
【0073】
なお、本発明の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法において、アルコールを含有する溶液(C)を調製する際に、予め前記塩素化アゼチジノン誘導体の反応当量の5〜30モル%、好ましくは10〜30モル%をアルコールを含有する溶液(C)に仕込み、次いで前記2の滴下方法の反応操作と同じ操作で、更に反応に必要量の塩素化アゼチジノンを含有する溶液とアルコラートを含有する溶液とを同時にアルコールを含有する溶液(C)中に反応系内のpHが常に上記範囲となるように滴下してもよい。
【0074】
本発明における反応は、反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、アルカリに対して極めて不安定であり、pH8以上になると反応過程で分解するために、初めから塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)とアルコラートを含有する溶液(B)とを、同時にアルコールを含有する溶液(C)中に滴下するとアルカリ側に振れる可能性があるために、上記の1および2の滴下方法に示す様に、反応系を絶えず塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1))を先行させてアルカリ側のpH8を越えない様に反応を行うのが好ましい。なお、塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は約pH4程度であり、アルコラートを含有する溶液(B)の添加により反応系のpHは上昇する。
【0075】
本発明において、前記1と2の滴下方法の中、2の滴下方法の方がpH制御が容易である点で工業的に特に有利となる。
【0076】
また、本発明において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を、アルコールを含有する溶液(C)中に全量を仕込んで後、アルコラートを含有する溶液(B)を滴下してpH8以下で反応を行うと、反応が進行するにつれて生成する反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶に不純物が抱かれて品質が低下する傾向があるが、一気に結晶を得ることができ、後の精製工程での負担が多くなるが、反応としては簡単な操作で行うことができる。
【0077】
本発明において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)として、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を得る前工程のアゼチジノン誘導体の塩素化反応により得られる塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液を用いることができる。この溶液は、例えば特公平5−9425号公報に記載されている方法で、アゼチジノン誘導体の塩素化により製造された塩素化アゼチジノン誘導体の溶液が挙げられる。この溶液を用いると、前製造工程の原料のアゼチジノン誘導体からの連続工程により、本発明の目的物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得ることができる。
【0078】
本発明の製造方法において、原料の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンに溶解したジオキサン溶液が好ましく用いられるが、ジオキサン溶液はジオキサンの融点が11℃であるために、反応温度を例えば10℃以下で行う場合、溶液の粘度が上昇し、また固化することがあるが、これを防止するために塩素化アゼチジノン誘導体を溶解するメタノールまたはエタノール等のアルコールを添加して希釈することにより、溶液の粘度を低下して滴下しやすくすることができる。
【0079】
また、本発明の製造方法において、反応溶媒としてジオキサンを含有している反応系により反応を進行するのが好ましく、ジオキサンの含有量が少ないと、反応が進行するにつれて生成する反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が結晶に反応副生物等の不純物を抱くためにダンゴ状になるので、反応系中のジオキサンの含有量が塩素化アゼチジノン誘導体に対して10〜30重量部の範囲に維持する様にするのが好ましい。
【0080】
また、本発明の製造方法において、反応は溶媒中で行われ、反応で水が生成することもなく、水の不存在下で行われるために、アルコラートが水に溶解してアルカリとして作用するこはなく、アルカリによる反応生成物の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の分解を防止しやすい利点がある。
【0081】
本発明の製造方法において、上記反応は反応温度を5℃以下で反応を行うと副生物の生成を抑え、且つ高収率で目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を得ることができることから好ましく、一方、−20℃未満では原料や不純物が析出するため、−20〜5℃、好ましくは−10〜5℃で反応を行うことが好ましい。
【0082】
かくすることにより、目的とする前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶が反応の進行により反応溶液が白濁することにより結晶の随時析出が認められ、反応終了後、中和し、ろ過、乾燥して結晶が得られる。必要により、洗浄、再結晶により精製を行ってもよい。
【0083】
なお、洗浄及び再結晶で用いることができる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド類等の1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0084】
また、本発明の前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法によれば、例えば塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(1a))とアルコラート(化合物(7))から下記反応式(5)
【0085】
【化17】
【0086】
(式中、R1は置換又は非置換の芳香族炭化水素基、R4は有機基、Mはアルカリ金属を示す。)
【0087】
に従って反応は進行し、目的とする3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(化合物(2a))と共に、スルフィン酸金属塩(化合物(8))が副生する。例えば、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を回収し、回収後の母液からスルフィン酸金属塩(化合物(8))を晶析により析出させ、次いで、この析出したスルフィン酸金属塩と臭素とを溶媒中で反応させることにより得られるスルホニルブロミドは、例えば、前述の反応式(3)のアゼチジノン誘導体(化合物(6))の製造原料として再利用することができる。
【0088】
本発明の製造方法で得られる前記一般式(2)で表される3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、温和な条件下での長期安定性に優れ、例えば、下記反応式(6)
【0089】
【化18】
【0090】
に従って、各種のセファロスポリン系抗生物質として有用な7−アミノ−3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(化合物(9))に誘導することができる。
【0091】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
実施例1
下記化合物(10)
【0093】
【化19】
【0094】
で表される塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を47.7重量%を含有するジオキサン溶液68.6g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0095】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5g(0.060モル)を脱水メタノール67.2gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0096】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0097】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/8程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0098】
反応終了後、酢酸0.48gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0099】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0100】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))22.9g(純度94.1%、収率85.1%)を得た。
【0101】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0102】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1703cm−1、1645cm−1、1251cm−1、
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0103】
更に、実施例1で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を株式会社リガク製 X線回折装置 RINT2400を使用し、モノクロメータフィルターを通したλ=1.5418Åの銅放射線でX線回折分析を行った。そのX線粉末回折パターンを表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
(注)表1中のdは格子面間隔、I/I0 はd=4.17の回折ピークに対する相対強度を示す。
【0106】
実施例2
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を47.7重量%を含有するジオキサン溶液68.6g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0107】
ナトリウムエチラート4.46g(0.063モル)をメタノール103gで溶解して、ナトリウムエチラートを4重量%含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0108】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0109】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/5程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0110】
反応終了後、酢酸0.44gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0111】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0112】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))21.8g(純度94.3%、収率81.2%)を得た。
【0113】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0114】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0115】
更に、実施例2で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0116】
実施例3
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を46.9重量%を含有するジオキサン溶液69.75g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0117】
ナトリウムエチラート4.46g(0.063モル)を脱水エタノール103gで溶解して、ナトリウムエチラートを4重量%含有するエタノール溶液を調製しB液とした。
【0118】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0119】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/4程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液を同時に滴下し約4時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0120】
反応終了後、酢酸0.43gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0121】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0122】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))23.28g(純度91.6%、収率84.2%)を得た。
【0123】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0124】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0125】
更に、実施例3で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0126】
実施例4
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を50.6重量%を含有するジオキサン溶液64.55g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0127】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5gを脱水メタノール67.2gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.060モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0128】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水メタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0129】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/4程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。その後、A液とB液との同時滴下を継続して行い約2時間かけて滴下を終了した(pH7〜8)。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0130】
反応終了後、酢酸0.48gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0131】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0132】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))22.58g(純度94.4%、収率84.2%)を得た。
【0133】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0134】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0135】
更に、実施例4で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析を行ったところ、実施例1と同様なX線回折パターンを示した。
【0136】
実施例5
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を57.6重量%を含有するジオキサン溶液57.4g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0137】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)13.5gを脱水メタノール67.0gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.060モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0138】
窒素置換した反応用フラスコに、ジオキサン12.9gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全量を反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0139】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、B液を約2時間で滴下した。B液を約1/3程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。滴下を終了した時のpHは8であった。滴下終了後、更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0140】
反応終了後、酢酸0.40gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0141】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0142】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))20.50g(純度92.0%、収率74.5%)を得た。
【0143】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0144】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0145】
比較例1
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))を49.7重量%を含有するジオキサン溶液65.8g(0.052モル)を窒素置換した滴下ロートに仕込み、脱水メタノール(関東化学試薬)50gを添加し希釈しA液とした。
【0146】
ナトリウムメチラートを24重量%含有するメタノール溶液(試薬1級)17.0gを脱水メタノール85.0gで希釈して、ナトリウムメチラートを4重量%(0.076モル)含有するメタノール溶液を調製しB液とした。
【0147】
反応用フラスコに、ジオキサン13gを仕込み、脱水エタノール160mLを仕込み、−2〜2℃に冷却した。冷却した反応用溶媒の入った四つ口フラスコに、前記A液の全体量の1/8量を前記で調製した反応溶媒に仕込んだ(pH4)。
【0148】
次いで、反応系の温度を−2〜2℃の間を維持しながら、前記A液とB液とを同時に滴下した。B液を約1/5程度滴下すると反応液の白濁が始まり、白色結晶を含むスラリーとなった。その後、A液とB液との同時滴下を継続して行い約4時間かけてA液滴下を終了した(pH7〜8)。B液の滴下量は、80.4gで、この時点で(pH7〜8)となった。更に残りのB液の全量20gを30分を要して滴下した。反応液は、赤みを帯びた褐色となった。滴下を終了した時のpHは10であった。更に、攪拌下に0℃で0.25時間反応を行った。
【0149】
反応終了後、酢酸0.64gを反応終了後の反応液に添加し中和した。なお、中和後の反応系のpHは4〜5であった。中和処理後、更に、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。
【0150】
次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノール18gでリンスした。
【0151】
洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶(一般式(2a))18.07g(純度85.9%、収率61.3%)を得た。
【0152】
比較例2
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))71.48g(0.104モル)を窒素雰囲気下、乾燥DMF640mLに溶解して、−30℃に冷却した。次いで−30〜−20℃で28%アンモニア水17.76g(0.292モル;2.8倍モル相当)を少量ずつ滴下した。滴下後−30〜−20℃で、1時間熟成した。
【0153】
反応終了後、反応液に5%塩酸を加えてpHを4〜5に調製した後、酢酸エチル1.92Lを加え、0℃で有機層を分離した。次いで、分離した有機層を飽和食塩水で2回洗い、更に、この有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。
【0154】
次に、この脱水後の有機層を減圧下に濃縮し、油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))38.0g(純度93.3%、収率70.0%)を得た。
【0155】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0156】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0157】
比較例3
比較例2で得られた油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))10.0gをDMF28mlに溶解した。
【0158】
これとは別に3℃に冷却したメタノール400mlを調製し、前記の油状の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体を溶解したDMF溶液を、この冷却メタノールに3〜5℃の温度で除々に滴下し、3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を析出させた。
【0159】
固液分離後、回収した3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶をメタノールでリンスし、次いで減圧下に乾燥して3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶8.62g(純度94.0%、回収率86.2%、比較例2から求めた収率60.3%)を得た。
【0160】
(同定データ)
・ 1H−NMR(δ,CDCl3 )
3.41(1H,d,j=18.5)、3.59(1H,d,j=18.5)、4.92(1H,d,j=4.9)、5.82(1H,d,d,j=4.9,9.3)、6.12(1H,d,j=9.3)、3.58(1H,d,j=16.1)、3.67(1H,d,j=16.1)、7.40−7.28(5H,m)、4.39(1H,d,j=11.9)、4.50(1H,d,j=11.9)、5.20(2H,s)、7.32(2H,d,j=8.6)、6.88(2H,d,j=8.6)、3.80(3H,s)
【0161】
・FT−IR(cm−1,KBr)
3449cm−1、3271cm−1、1778cm−1、1251cm−1
・FAB−MS
M+1:487m/z
【0162】
更に、比較例3で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を実施例1と同様な方法でX線回折分析をおこない、そのX線回折パターンを表2に示した。
【0163】
【表2】
【0164】
(注)表2中のdは格子面間隔、I/I0はd=4.17の回折ピークに対する相対強度を示す。
【0165】
比較例4
塩素化アゼチジノン誘導体(化合物(10))35.74g(0.052モル)を窒素雰囲気下、メタノール135gに希釈して、−5℃に冷却した。次いで、−5〜−2℃にて、苛性カリ12.5%を含む20%含水エタノール溶液35.0g(0.078モル;1.5倍モル相当)を30分で少量ずつ滴下した。滴下後−2〜0℃で、1時間熟成した。熟成後のpHは9であった。熟成終了後、酢酸を加えてpHを4〜5に調整した後、そのまま−2〜2℃で0.5時間攪拌下に熟成した。次いで、熟成終了後、3Gグラスフィルターでろ過し、得られたろ過ケーキを氷冷したメタノール18gでリンスし、更に30%の水を含むメタノール溶液36gで2回目のリンスを行い、3回目は、氷冷したメタノールでリンスした。洗浄処理したケーキをデシケーターに入れ、室温で一晩、真空ポンプで乾燥し、黄褐色の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体(一般式(2a))の結晶15.15g(純度51.3%、収率30.7%)を得た。
【0166】
<安定性試験>
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた3−クロロメチル−3−セフェム誘導体各5gを密閉したビーカに入れ、25℃に設定した恒温室に30日間放置した。
30日放置後の各3−クロロメチル−3−セフェム誘導体について、その純度を再び測定し、その結果を表3に示した。
【0167】
【表3】
【0168】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明の製造方法によれば、セファロスポリン系の各種抗生物質の合成中間体として有用な3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶を工業的に有利な方法で反応をとおして一気に高収率で、且つ高純度で製造することができる。また、本発明の製造方法で得られる3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶は、温和な条件下での長期安定性に優れたものである。
Claims (14)
- 前記塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを、アルコールを含有する溶液(C)中に加えて反応を行なう請求項1または2記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記アルコールを含有する溶液(C)中に、塩素化アゼチジノン誘導体をエーテルを含む溶媒に溶解した溶液(A)の一部で反応当量の5〜30mol%の塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)を加えた後、残りの塩素化アゼチジノン誘導体を含有する溶液(A)と、アルコラートをアルコールを含む溶媒に溶解した溶液(B)とを同時に前記アルコールを含有する溶液(C)に加えて反応を行う請求項1乃至3のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記塩素化アゼチジノン誘導体とアルコラートを、塩素化アゼチジノン誘導体1molに対しアルコラートを0.8〜1.5molの割合で反応させる請求項1乃至4のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記アルコールはメタノール又はエタノールから選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記エーテルはジオキサンである請求項1乃至4のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記アルコラートは、ナトリウムメチラート又はナトリウムエチラートである請求項1乃至4のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記反応を5℃以下で行う請求項1乃至8のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記溶液(A)は、塩素化アゼチジノン誘導体をジオキサンとアルコールの混合溶媒に溶解した溶液である請求項3または4記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記溶液(B)は、アルコラートをアルコールに溶解した溶液である請求項3または4記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記溶液(C)は、アルコールとジオキサンとの混合溶媒である請求項3または4記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記溶液(A)および溶液(B)は滴下により加えて反応を行う請求項1乃至12のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
- 前記反応は水の不存在下で行う請求項1乃至13のいずれかの項に記載の3−クロロメチル−3−セフェム誘導体結晶の製造方法。
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Cited By (2)
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2003
- 2003-07-30 JP JP2003203683A patent/JP2005047827A/ja active Pending
Cited By (3)
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EP1666483A1 (en) * | 2003-09-09 | 2006-06-07 | Nippon Chemical Industrial Company Limited | Process for producing 3-chloromethyl-3-cephem derivative |
EP1666483A4 (en) * | 2003-09-09 | 2008-12-03 | Nippon Chemical Ind Company Lt | PROCESS FOR THE PRODUCTION OF 3-CHLOROMETHYL-3-CEPHEME DERIVATIVES |
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