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JP2004521093A - グルカゴン様インスリン刺激性ペプチドを用いる長期治療計画 - Google Patents

グルカゴン様インスリン刺激性ペプチドを用いる長期治療計画 Download PDF

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JP2004521093A JP2002549286A JP2002549286A JP2004521093A JP 2004521093 A JP2004521093 A JP 2004521093A JP 2002549286 A JP2002549286 A JP 2002549286A JP 2002549286 A JP2002549286 A JP 2002549286A JP 2004521093 A JP2004521093 A JP 2004521093A
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Abstract

本発明は、GLP-1化合物の長期定常状態血清レベルを特定の範囲内に維持することにより疾病を治療する方法を包含する。

Description

【技術分野】
【0001】
この出願は、2000年12月13日出願の米国仮出願第60/255251号、2001年6月4日出願の同60/295655号、および2001年6月15日出願の同60/298652号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、医薬製造品および方法においてグルカゴン様インスリン刺激性ペプチドを使用する長期治療計画に関するものである。
【背景技術】
【0003】
腸管ホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、インスリン分泌を刺激し、グルカゴン分泌を低下させ、胃内容物排出を阻害し、グルコース利用を増大させ、そして食欲抑制と体重減少を誘発するその能力の故に、2型糖尿病治療薬として非常に有望である。さらに、前臨床試験は、GLP-1が、この疾病の進行と共に起こるβ細胞の劣化を防止するよう働くかも知れないことを示唆している。おそらくGLP-1の最も際だった特徴は、インスリン療法および幾つかの型の経口療法を使用する場合にしばしば観察される低血糖の危険性を伴わずにインスリン分泌を刺激する能力である。血中グルコースレベルが或る閾値レベル以下に低下した場合、GLP-1は活性でなくなる。
【0004】
しかしながら、GLP-1(1-37)は極めて活性が低く、また、天然に存在する2種類の末端切除ペプチドGLP-1(7-37)OHおよびGLP-1(7-36)NH2は半減期が極端に短く循環から速やかに浄化されるという事実によって、GLP-1ペプチドを含む治療の有用性は限定されてきた。したがって、GLP-1に関する研究は、より長い作用時間を与えるGLP-1アナログ、GLP-1誘導体、およびその製剤の開発に的が絞られている。この開発分野において多大な進歩があったにもかかわらず、長時間作用性GLP-1アナログまたは誘導体を用いたヒトにおける臨床データを報告する公開論文は無い。本発明以前には、特定の力価を持つGLP-1化合物の定常状態レベルが長期の治療期間安全に維持できるかどうか、そして、内因性GLP-1について解明された活性に伴う利点が提供され続けるかどうかは不明であった。
【0005】
連続注入または頻回投与を必要とする天然GLP-1による幾つかの短期臨床研究は、高濃度のGLP-1がしばしば吐き気と嘔吐を惹起することを示唆している。このことは、臨床家の間に、これらの望ましくない効果が投与を限定させ、したがってこの薬物が本来優れた効果を産むことができる可能性があっても、その有効性は限定されるであろうという懸念を生じさせた。
【0006】
患者への天然GLP-1(7-37)OHのi.v.または皮下連続注入による投与を含む幾つかの臨床研究が公表されている。Naslund, et al.,(1999) Am.J.Phys. 277(3):1-14; Deacon, et al.(1995) Diabetes 44:1126-1131; Toft-Nielsen, et al.(1999) Diabetes Care 22(7):1137-1143を参照されたい。公表されている研究は一貫して約0.75pmol/kg/分および2.4pmol/kg/分の間の用量を短時間使用している。しかしながら、GLP-1(7-37)OHは血漿に暴露されると速やかに分解するため、与えられた時点でどれだけのレベルの無傷/活性のGLP-1ペプチドが血漿中に存在するかは常に明確である訳ではない。
【0007】
にもかかわらずNaslund, et al.は、0.75pmol/kg/分の速度で180分間連続投与した後の無傷のGLP-1(7-37)OHの血漿レベルを予想することができた。この著者は、サンドイッチラジオイムノアッセイを用いてN末端分解したおよび無傷のGLP-1(7-37)OHの両者を検出した。無傷のGLP-1の血漿レベルは処置の最後の120分間の間およそ20ピコモルであった。同様の検定を用いて、Toft-Nielsen et al.は、1.2pmol/kg/分および2.4pmol/kg/分の投与後の無傷のGLP-1レベルはそれぞれおよそ10.2ピコモルおよび22.5ピコモルであると報告した。
【0008】
ところがこれらの研究は、無傷且つ活性なGLP-1の血漿レベルが、吐き気および嘔吐といった副作用を回避または最小化しつつ同時に治療効果を達成できるかどうかという疑問に答えてこなかった。同様にこれらの研究は、活性GLP-1の血漿レベルが、治療中相対的に平坦であるべきなのか、それとも生理的状態に似せたピークと谷が好ましいのかを指摘してはいない。したがって、かなりの進歩はあったものの、どのような治療計画が有効な長期治療を導き、そして吐き気や嘔吐のような副作用を最小にしつつ、係る治療を維持できるかどうかを発見および理解する必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は、GLP-1化合物の連続的血漿レベルを特定の範囲に維持することが有効な治療を提供することを発見した。ピークと谷が無いことは、吐き気や嘔吐のような副作用を回避または最小化すると考えられる。したがって本発明は、吐き気や嘔吐のような副作用を回避または最小化する、一定範囲内の連続的血漿中GLP-1化合物レベルを維持することを含む、長期治療計画を提供する。本発明が包含する血漿レベルは最適な血中グルコース制御を提供する。さらにこの治療計画は、体重減少の誘発、β細胞機能の改善、休眠状態のβ細胞の活性化、細胞のβ細胞への分化、β細胞増殖、および臓器機能の維持を包含する、長期にわたる建設的な健康への効能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、血中グルコースレベルを正常化し、β細胞の劣化を防止し、体重減少を誘発し、または、高血糖、2型糖尿病、肥満、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する方法であって、Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモル/リットルおよび約200ピコモル/リットルの間に維持することを含む[ここで、該GLP-1アナログまたは誘導体は、24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与する]方法を包含するものである。
【0011】
さらに本発明は、血中グルコースレベルを正常化し、β細胞の劣化を防止し、体重減少を誘発し、または、高血糖、2型糖尿病、肥満、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する方法であって、生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは数値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価であり、且つ、該GLP-1アナログまたは誘導体は24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与する]方法を包含するものである。
【0012】
さらに本発明は、血中グルコースを正常化し、β細胞を保持し、体重減少を誘発し、または、高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する医薬を製造するための、Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つGLP-1アナログまたは誘導体の用途であって、GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持することを含み、且つ、該GLP-1アナログまたは誘導体を、24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与する、用途を包含する。
【0013】
さらに本発明は、GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価であり、且つ、該GLP-1アナログまたは誘導体は24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与する]、血中グルコースを正常化し、β細胞を保持し、体重減少を誘発し、または、高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する医薬を製造するための、GLP-1アナログまたは誘導体の用途を包含するものである。
【0014】
さらに本発明は、ヒト医薬使用のための製造品であって、容器;Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ或る量のGLP-1アナログまたは誘導体を含む製剤、およびGLP-1アナログまたは誘導体の血漿レベルを約60ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持する該製剤の投与を規定する包装挿入物、を含む製造品を包含する。
【0015】
本明細書に開示し説明する本発明の目的のため、以下の用語および略語を下記のように定義する。
【0016】
「治療計画」とは、最適な血漿レベルが長期的に維持されるようなGLP-1化合物の投与である。本発明に係る計画に使用するGLP-1化合物は、GLP-1レセプターと呼ばれるレセプターにおいて作用することによりそれらの生物学的効果を発揮する。故に、GLP-1レセプター刺激に対してまたはGLP-1化合物の投与に対して有利に反応する疾病および/または状態を有する対象は、本発明に係る計画で治療することができる。
【0017】
したがってこの計画は、高血糖の治療、血中グルコース管理の維持、2型糖尿病の治療、肥満の治療、体重減少の誘発、卒中の治療、心筋梗塞の治療、手術後に起こるまたはその他の理由の異化作用変化の治療、過敏性腸症候群の治療、β細胞劣化の防止、β細胞増殖の誘発、インスリン遺伝子転写の刺激、IDX-1/PDX-1またはその他の成長因子のアップレギュレーション、β細胞機能の改善、休眠状態のβ細胞の活性化、細胞のβ細胞への分化、および/またはβ細胞複製を包含する(但しこれらに限定される訳ではない)様々な建設的効果を提供する。血漿レベルを長期にわたり特定範囲内に維持することからもたらされる建設的効果は、治療される疾病または状態に付随する症状の改善、治療される疾病または状態に付随する症状の発現の遅延、治療の無い場合に比して増大した寿命、および/または治療の無い場合に比してより優れた生活の質、を包含する。2型糖尿病およびこれに伴う高血糖の治療に関連する本発明に係る治療計画により提供されるさらなる利点は、血中グルコースの自己監視をなくすまたは減らすこと、および食事時間に合わせる必要のない薬物投与に起因する、利便性の向上を包含する。
【0018】
「長期的治療」とは、治療過程の間、活性GLP-1化合物の血漿レベルを特定範囲内に維持することを指す。特定の範囲とは、最適の有効性を提供し、且つ吐き気や嘔吐のような副作用を惹起しないまたは少なくとも最小化する活性GLP-1化合物の血漿レベルに相当する。計画される治療過程は治療される疾病または状態に応じて異なる。例えば、経口的薬物治療がもはや血中グルコースレベルを制御し得ない2型糖尿病患者のために計画された治療過程は、その患者がGLP-1レセプター刺激に反応する充分なβ細胞機能を持っている期間を包含する。肥満患者または体重減少を望む患者のために計画された治療過程は、その患者の身長と体格に基づく正常体重に到達するまでの期間を包含する。計画される治療過程はさらに、2型糖尿病の進行、糖尿病の発現、グルコース寛容減損、症状xの防止、または体重増加の防止といった予防的目標を持っているかも知れない。この型の治療は患者の生涯にわたり続く可能性がある。
【0019】
「長期」とは一般に、好ましくは1日に2回を超えない、最も好ましくは1日に1回を超えない長期間の規則的投与を指す。しかしながら本明細書で使用する長期投与は、1日に1回または2回の毎日投与に加え、他の治療計画をも包含できる。例えば、長期投与は、充分な治療的血漿レベルを提供する持続放出製剤の規則的投与を包含する。このような投与は週に1回、月に1回、またはそれ以下の頻度の投与を包含できる。短期または必要時投与とは対照的に、長期投与は、薬物投与を、食事のような事象、家庭でのグルコース監視の結果、または食欲抑制の必要性と連動しない。
【0020】
「インスリン刺激活性」とは、グルコースレベルの上昇に応答してインスリン分泌を刺激し、それにより細胞によるグルコース取り込みと血漿グルコースレベルの低下を惹起する能力を指す。インスリン刺激活性は、GLP-1レセプター結合活性またはレセプター活性化を測定するインビボ実験およびインビトロ検定(例えばGelfand, et al.のEP619322および米国特許第5120712号にそれぞれ記載のような、膵臓島細胞またはインスリノーマ細胞を用いる検定)の利用を包含する当分野で既知の方法により評価できる。これらの参考文献の全教示は引用により本明細書の一部とする。インスリン刺激活性はインスリンレベルまたはC-ペプチドレベルを測定することによりヒトにおいて常套的に測定する。
【0021】
「容器」とは、医薬製品の保存、運搬、調剤、および/または取り扱いのために好適な入れ物および密閉物を意味する。
【0022】
「包装」とは、簡便な投与を可能にする使用者にとって便利な装置および/またはデリバリー、教育、および/または投与を助ける付随的装置を意味する。包装は、患者へのGLP-1化合物の投与を改善し、患者の教育のための教示時間を短縮または改善し、改善された保健経済学的研究のための基盤を提供し、そして/または分配経路の作業負荷を限定することができる。また、包装は、紙製包装、収縮包装、シースルー上面包装、試用クーポン、教育材料、付随的供給品、および/またはデリバリー装置を包含できるがこれらに限定される訳ではない。
【0023】
「包装挿入物」とは、その製品をどのように投与するかという説明を提供する該製品に添付した情報、ならびに、医師、薬剤師、および患者に、該製品の使用についての情報開示に基づく決定をさせるために必要な安全性および有効性のデータ、および/または患者の教育的情報を意味する。包装挿入物は一般的には医薬品の「ラベル」と考えられる。
【0024】
「対象」または「患者」とはヒトである。
本明細書で使用する「インビトロ力価」とは、細胞に基づく検定においてGLP-1レセプターを活性化する或る化合物の強さまたは能力の尺度である。インビトロ力価は、一回の用量-反応実験において50%活性を産む、化合物の有効濃度である「EC50」として表す。本発明の目的のため、インビトロ力価は、ヒトGLP-1レセプターを安定に発現するHEK-293 Aurora CRE-BLAM細胞を使用する蛍光検定を用いて決定する。この検定は17頁および実施例3でより詳細に論ずる。本明細書に開示するインビトロ力価の値は、3ナノモルから30ナノモルまでのGLP-1化合物濃度をもたらす希釈を用いて用量反応曲線を作製することにより確立したEC50として表す。相対的インビトロ力価の値は、Val8-GLP-1(7-37)OHを対照とし、この対照を参照値1に割り当てることにより確立する。
【0025】
本発明に係るGLP-1化合物は、GLP-1レセプターに結合してシグナル伝達経路を始動させ、その結果本明細書に記載のようなインスリン刺激作用またはその他の生理的効果、例えばグルカゴンの阻害および胃内容物排出の遅延をもたらす能力を有するといった、GLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-37)OHの断片との充分な相同性を有する。例えばGLP-1化合物は、Lacy, et al.(1967) Diabetes 16:35-39に記載の方法の改変である、EP619322に記載のような細胞に基づく検定を用いて、インスリン刺激活性について試験することができる。膵臓組織のコラゲナーゼ消化物はフィコール勾配(ハンクス均衡塩類溶液中27%、23%、20.5%、および11%、pH7.4)で分離する。20.5%/11%界面から島を採集し、洗浄し、そして立体顕微鏡下に外分泌およびその他の組織を含まないように精選する。この島を、10%牛胎児血漿を添加し11mMグルコースを含有するRPMI1640培地中、37℃で95%空気/5%CO2で一夜インキュベートする。調べようとするGLP-1化合物を、10%牛胎児血漿および16.7mMグルコースを含有するRPMI培地中一定範囲の濃度、好ましくは3ナノモルないし30ナノモルに調製する。次に、単離した約8ないし10個の島を、96ウェル微量定量皿に入れた総体積250μlのGLP-1化合物含有培地にピペットで移す。この島を、37℃、95%空気、5%CO2で90分間、GLP-1化合物の存在下にインキュベートする。次いで島を含まない培地のアリコートを集め、その100μlを、存在するインスリン量について、Equate Insulin RIAキット(Binax,Inc., Portland, ME)を用いてラジオイムノアッセイにより検定する。
【0026】
本発明に係るGLP-1化合物はVal8-GLP-1(7-37)OHのインビトロ力価よりも10倍以上は低くないことが好ましい。好ましくはこのGLP-1化合物はVal8-GLP-1(7-37)OHのインビトロ力価より低くないインビトロ力価を有する。代表的なGLP-1化合物は以下に詳細に論ずる。さらに、本明細書に記載の長期治療計画に使用するGLP-1化合物は、要求された有効範囲に血漿レベルが長期間維持されるよう、修飾または製剤化を必要とするかも知れない。GLP-1化合物の修飾および製剤化もまた以下に詳細に論ずる。
【0027】
GLP-1は2型糖尿病の可能性ある治療として提起されたものの、その短い半減期およびプロテアーゼ分解に対する感受性がこれを研究するには困難な分子とした。さらに、活性GLP-1の1回の皮下またはi.v.ボーラス投与後に、吐き気や嘔吐といった副作用が観察された。本出願人は、これは、投与直後に得られる該化合物の初期ピークレベルに起因するものと考える。短時間作用性製剤が治療上の利益を与えるためには、治療範囲において少なくとも食後のグルコース低下作用を達成する程充分長い血中レベルを提供する充分な高用量を注射しなければならない。短時間作用性GLP-1製剤を比較的高用量投与した後に起こるこれらの望ましくない効果は、患者に投与できる量を限定し、それに応じて有効性を限定する。
【0028】
臨床研究は、インスリン分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、肝グルコース産生の低下、胃空虚下の阻害、および体重減少の促進を包含するGLP-1の生理的効果の幾つかを確立した。しかしながらGLP-1化合物は、薬理学的レベルの活性GLP-1が治療過程の間ずっと連続的に存在しない限り、治療計画において有効に使用することはできない。この事は、血中グルコース低下能力および本明細書に記載のその他の長時間の生理的効果を充分に活用するために、特に当てはまる。
【0029】
したがって本発明は、有効性を達成し尚且つ吐き気や嘔吐といった副作用を回避または最小化するために必要な特別の力価を有する活性GLP-1化合物の定常状態血漿レベルを記載するものである。薬物の定常状態濃度は、クリアランスと濃縮の所産である薬物排除が薬物のアベイラビリティーの速度に等しい時に実現する。間欠的投与の状況では、各投与の合間に薬物濃度が上がったり下がったりする。定常状態では、それぞれの合間にそのサイクル全体が全く同一に反復される。しかしながら本明細書に論じたように、投与の合間の活性GLP-1血漿中濃度の著明な変動は、吐き気や嘔吐のような副作用の原因であり、最適な生物学的応答をもたらさない。
【0030】
本発明に係る治療計画は、特定の状態のための特定の治療工程の間ずっと、GLP-1化合物の連続的な定常状態血漿レベルが維持されるようにGLP-1化合物を投与することを含む。本発明の文脈において、血漿レベルを「維持する」とは、いったん定常状態レベルが達成されたならば治療過程中の薬物の血漿濃度が著しく変動せず、したがって吐き気や嘔吐のような副作用が回避または最小化され、同時に最適な治療効果が得られる事を意味する。薬物レベルは、いったん定常状態の血漿レベルが達成された後にそれが要求された有効範囲内に維持されるならば著しく変動しない。驚くべき事に、天然GLP-1と似通った力価を持つ、外から投与されたGLP-1化合物の治療的血漿レベルは、体内で分泌される循環内のGLP-1レベルよりも著しく高い。
【0031】
本発明は、長時間作用性GLP-1製剤を3種類の異なる用量レベルで1日に1回皮下注射で投与する臨床治験から作製したデータに基づくものである。6日間の投与の後、薬物レベルは定常状態のプラトーに達し、これが治療過程の間連続的に維持された。本発明に係る長期治療計画は、本明細書に記載の範囲内の血漿レベルを得るため連続的に投与されるGLP-1化合物を含み、または、より好ましくは長時間作用性GLP-1化合物の投与を含む。本発明の文脈における長時間作用性とは、活性GLP-1化合物の血漿レベルが単一用量のデリバリー後少なくとも12時間、本明細書に記載の治療的範囲内にとどまる事を意味する。好ましくは血漿レベルは単一用量のデリバリー後少なくとも24時間この範囲内に維持される。この好ましい時間作用が1日1回の投与をもたらす。
【0032】
1日目にVal8-GLP-1(7-37)OHを含有する持続放出製剤を投与して、2.5mg、3.5mg、および2群の4.5mgにそれぞれ対応する用量について、105、147、300、および222pg/mLの平均Cmax値を達成した。これらのCmax値は、治療の1日目に所定用量のうち1つにおいて1群8人の患者について達成された無傷のVal8-GLP-1(7-37)OHの平均最大血漿中濃度を表す。(図1および3を参照されたい)。3つの群全てについてVal8-GLP-1(7-37)OHの血漿中濃度は幾らかのグルコース低下を生じ、200pg/mL以上のレベルが最も著明な効果を示した(第1表)。平均血漿プロファイルの精査は、6日間の1日1回投与の後に定常状態が本質上達成され、薬物の蓄積はほぼ3倍である事を示唆した。6日目において、2.5mg、3.5mg、および4.5mg投与群の平均Cmax値はそれぞれ534、525、および570pg/mLであった。活性薬物への暴露を表す、対応するAUC(0-24)値もまた似通ったものであり、それぞれ8878、9846、および10619ng*h/Lであった。したがって、1.8倍の用量増加に、1.2倍の平均定常状態暴露AUC(0-24)の増大が結び付いた(図1および3を参照されたい)。
【0033】
第1表
【表1】
Figure 2004521093
略語:Rmax = 平均最大濃度;AUC = 曲線下面積。
【0034】
投与前飢餓血中グルコースの臨床的に意味のある降下が、全治療群において投与後に観察された。Rmaxで表される平均最大観察グルコース濃度は、治療の6日目においてプラセボ対照群よりも23%ないし34%の範囲で低かった。さらに、6日目のグルコース応答は治療の21日後に観察されたものと似通っていた(図2および4を参照されたい)。応答のプラトーは2.5mgおよび3.5mg用量に相当する定常状態濃度で達成されたが、これはそれぞれ534および525pg/mLの平均Cmax値をもたらした。意外な事に、600pg/mL未満の血漿レベルを有する群では、重篤な吐き気および嘔吐は無く、稀な、概して短い吐き気または嘔吐のエピソードが観察されたに過ぎなかった。一人の患者にVal8-GLP-1(7-37)OHのCmax 990pg/mLをもたらす用量が投与されたが、この高いレベルは若干の吐き気を伴った。
【0035】
加えて、治療群では体重減少が起こった。21日間の投与期間中の患者一人あたりの平均体重減少量はおよそ2.1kgであった。
【0036】
類似の力価を有するGLP-1化合物の分子量には違いがあるため、観察されたVal8-GLP-1(7-37)OHの血漿中レベルをpg/mLからピコモル(pmole/L)に変換した。したがって、最大効果を提供し尚且つ吐き気および嘔吐といった副作用を回避または最小化する好ましい血漿レベルの範囲は、Val8-GLP-1(7-37)OHの力価と同様または2倍以内の力価を有するGLP-1化合物について約60および約200pmole/リットルの間である。より好ましくは、血漿レベルは約80ピコモルおよび約200ピコモルの間である。さらに好ましくは血漿レベルは約100ピコモルおよび約200ピコモルの間である。
【0037】
したがって、さらに本発明は、血中グルコースの正常化、β細胞の保持、体重減少の誘発、または、高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態の治療のための医薬を製造するための、Val8-GLP-1(7-37)OHの力価と類似または2倍以内の力価を持つGLP-1化合物の用途に関するものである[ここでこの医薬は、GLP-1化合物の長期定常状態血漿レベルが約60ピコモルおよび約200ピコモルの間、好ましくは約80ピコモルおよび約200ピコモルの間、より好ましくは約100ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持されるような長期投与に適合している]。
【0038】
本明細書で論ずる血漿レベルとは、血漿中で測定した活性GLP-1化合物の濃度を指す。血漿はDPP-IVとして知られる酵素を含有し、これはGLP-1化合物のN末端アミノ酸を容易に開裂する。GLP-1は活性であるためにはN末端に無傷のヒスチジンがなければならないという事が知られている。例えば、GLP-1(7-37)OHは血漿中に放出されると速やかに分解を受けてGLP-1(9-37)OHとなる。GLP-1(9-37)OHは活性でない。さらに、GLP-1はC末端での開裂によっても不活性化され得る。不活性なGLP-1(7-33)代謝産物もまた文献に報告されている。本明細書に記載のVal8-GLP-1(7-37)OHの血漿レベルはサンドイッチラジオイムノアッセイを用いて測定した。この検定は、Val8-GLP-1(7-37)OHの無傷のアミノ末端を特異的に認識する抗体を、Val8-GLP-1(7-37)OHの無傷のC末端を認識する別の抗体と組み合わせて利用するものである。このようにして活性Val8-GLP-1(7-37)OHの血漿レベルのみが測定される(実施例2を参照されたい)。
【0039】
Val8-GLP-1(7-37)OH以外の活性GLP-1化合物の血漿レベルは、被験化合物の無傷のN末端を特異的に同定し且つ天然GLP-1と交差反応しない抗体を当分野で周知の方法によって作製することにより、同様に測定できる。
【0040】
Arg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のような幾つかのGLP-1誘導体は、血漿アルブミンと結合し徐々にアルブミンから解離して、GLP-1レセプターに結合してシグナルを始動させ得る非結合誘導体として血漿中に放出されるため、長時間作用性である。本発明の目的のため、血漿レベルとは、アルブミンと結合せずに血漿中に存在するArg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のような活性GLP-1誘導体の濃度を指す。
【0041】
副作用を最小化しつつ最大の有効性を達成するため、GLP-1化合物の血漿レベルは治療過程中にいったん定常状態レベルが得られたならば著しく変動すべきでない。レベルは、治療過程全体を通じていったん定常状態レベルが達成された後にそれが本明細書に記載の範囲内に維持されるならば著しく変動しない。最も好ましくは、Val8-GLP-1(7-37)OHの力価と類似またはその2倍以内の力価を有するGLP-1化合物の血漿レベルを、定常状態レベルが得られた後、治療過程全体を通じて約100ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持する。例えば、図3は、1日1回の投与に基づく15日間の過程全体において、平坦且つ著しい変動の無いVal8-GLP-1(7-37)OHの血漿レベルを示す。レベルは、約120ピコモルおよび180ピコモルの間に相当する、約400および約600pg/mLの間に維持される。
【0042】
Val8-GLP-1(7-37)OHおよび類似力価のGLP-1化合物について適当な血漿レベルの最適範囲(第2表を参照されたい)は、異なる力価を持つエクセンディン-3およびエクセンディン-4を包含する他のGLP-1化合物にも適用できる。類似力価を持つGLP-1化合物は、インビトロ力価検定で測定した際にVal8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内の活性を持つ化合物を包含する。
【0043】
本発明の目的のための好ましい検定は、ヒトGLP-1レセプターを安定に発現するHEK-293 Aurora CRE-BLAM細胞を用いてEC50力価を測定するものである。これらのHEK-293細胞は、β-ラクタマーゼ(BLAM)遺伝子の発現をさせるcAMP応答要素(CRE)を持つDNAベクターを安定に取り込んだ。GLP-1アゴニストとレセプターとの相互作用は、cAMP応答要素の活性化およびそれに続くβ-ラクタマーゼの発現をもたらすシグナルを始動させる。次に、β-ラクタマーゼ(Aurora Biosciences Corp.)により開裂させた時に蛍光を放出するβ-ラクタマーゼCCF2/AM基質を、GLP-1アゴニスト力価の測定値を与える特定量のGLP-1アゴニストに暴露した細胞に加える事ができる。この検定はさらに、Zlokarnik, et al. (1998) Science 279:84-88に記載されている(実施例3をも参照されたい)。第2表に列挙したEC50値は、3ナノモルから30ナノモルまでの希釈を用いる用量反応曲線を作製することにより上記のBLAM検定を利用して決定した。
【0044】
エクセンディン-4はVal8-GLP-1(7-37)OHよりおよそ5倍高い力価を持っている。したがって、エクセンディン-4の最適血漿レベルはVal8-GLP-1(7-37)OHおよび類似力価を持つ化合物に関して適当なレベルよりもおよそ5倍低い。これは約6ピコモルおよび約40ピコモルの間、好ましくは約12ピコモルおよび約30ピコモルの間の範囲の血漿レベルに相当する。増大した力価を持つGLP-1化合物のもう一つの例は、Val8-GLP-1(7-37)OHよりおよそ3倍高い力価を持っているVal8-Glu22-GLP-1(7-37)OHである。したがってこの化合物の最適血漿レベルはVal8-GLP-1(7-37)OHについて決定されたレベルよりもおよそ3倍低い。
【0045】
第2表
【表2】
Figure 2004521093
【0046】
したがって、Val8-GLP-1(7-37)OHの力価とは異なる力価を持つGLP-1化合物について適当な血漿レベルの範囲を決定することができる。例えば、特定のGLP-1化合物のための血漿レベル範囲は約60/Xおよび200/Xの間、好ましくは約60/Xおよび150/Xの間、最も好ましくは約100/Xおよび約150/Xの間[ここでXは、Val8-GLP-1(7-37)OHに対する該GLP-1化合物のインビトロ力価である(ここでVal8-GLP-1(7-37)OHは参照値1を持つ)]である。
【0047】
さらに本発明は、血中グルコースの正常化、β細胞の保持、体重減少の誘発、または、高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態の治療のための医薬を製造するための、GLP-1化合物の用途に関するものである[ここでこの医薬は、GLP-1化合物の長期血漿レベルが約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間(ここでXは、参照値1を有するVal8-GLP-1(7-37)OHに対する該GLP-1化合物のインビトロ力価である)に維持されるような長期投与に適合している]。
【0048】
本発明の発明者が発見した範囲内に血漿レベルを維持することにより、患者の利便性の立場からの利益と同時に数多くの臨床上の利益が得られる。この治療計画を利用する際には、対象にとって低血糖の危険性は全くまたは殆ど無い。加えてこの治療法は、侵襲的な、計画的な、および/または時間のかかる事象を最小化する。さらにこの治療法は、利用に関連した血中グルコースの自己監視を減らす事により患者に利便性を与える。最も好ましくは、この治療計画を利用する対象の血中グルコースの自己監視を著しく減らす、または排除する。例えばこの利用は、患者が食事の前、最中、または後に計画することを必要としない。最も好ましくは、対象は、この計画の利用を、いかなる量のグルコース、カロリー、または栄養の消費事象とも結び付ける必要がない。さらに本発明の使用は、好ましくは必要な有効量を決定するために対象が必要とするいかなる用量滴定をも限定する。最も好ましくは、用量滴定は必要なく、この事によって1または2種類の用量が全患者にとって適当となる。
【0049】
前臨床データはGLP-1療法に伴う長期的な健康上の恩恵の幾つかを示唆しているが、係る恩恵の達成に要する定常血漿レベルに関する理解が不足しているため、ヒト患者でこれらの長期的な恩恵を利用することはできなかった。
【0050】
本明細書に記載の無傷のGLP-1化合物の血漿レベルを維持することにより、グルカゴンの抑制、ソマトスタチンのアップレギュレーション、インスリン遺伝子転写の刺激、IDX-1/PDX-1またはその他の成長因子のアップレギュレーション、β細胞機能の改善、休眠β細胞の活性化、細胞のβ細胞への分化、β細胞複製、およびβ細胞増殖から誘導される長期的恩恵がもたらされる。本発明の目的のため、β細胞を保持する方法は以下の効果の全てまたは幾つかまたは1つに起因し得る:β細胞機能の改善、休眠β細胞の活性化、細胞のβ細胞への分化、β細胞複製、例えばアポトーシスの阻害によるβ細胞劣化の防止、およびβ細胞増殖。
【0051】
本明細書に記載の無傷のGLP-1化合物の血漿レベルの維持は、体重減少または体重増加の欠如をもたらす食欲抑制といったような長期的恩恵をもたらす。例えば、肥満および関連状態は、この長期治療計画により治療または防止される。より少ない体重増加、体重増加の欠如、および/または減量による任意のおよび全ての体重減少は、総合的に前向きの身体的および心理的健康効果を対象に提供し、過大な体重に関連する危険因子を減らすのに寄与し、そして該化合物の使用遵守を強化し、それにより血中グルコース偏倚の可能性およびこれと同時に起こる作用を低減させる。
【0052】
主張した血清レベルの範囲内でGLP-1化合物に長期暴露させるもう一つの恩恵は、GLP-1化合物が最初に投与された時に起こる胃内容物排出の遅延を排除することを包含する。GLP-1化合物が投与されている患者の食物摂取に対するグルコースピークのタイミングを分析することにより、GLP-1化合物の存在により引き起こされる胃内容物排出の遅延はおよそ2ないし3時間である事が判明した。驚くべき事に、長期GLP-1化合物療法の6日後に、グルコースピークの分析は、この胃内容物排出の遅延が排除される事を示した。したがって、主張した血清レベルの範囲内でのGLP-1化合物への長期暴露は、胃内容物排出の遅延といったGI効果の排除を導き、故に、薬剤に対する患者の寛容性を増し、ことによると副作用を最小化する。
【0053】
この長期治療計画は、GLP-1化合物を他の血中グルコース低下薬、例えばメトフォルミン、スルホニル尿素類、チアゾリジンジオン類、および/またはビスグアニジン類と共に使用する治療を包含できる。本明細書に記載の血漿レベルの範囲は、GLP-1化合物を単一治療として使用、または経口抗糖尿病薬と併用する場合に適当である。
【0054】
「GLP-1化合物」という語は、GLP-1(7-37)OHおよびGLP-1(7-36)NH2ならびにこれらのアナログおよび誘導体を指す。GLP-1化合物はまたエクセンディン-3およびエクセンディン-4ならびにこれらのアナログおよび誘導体を包含する。これらのGLP-1化合物のいかなるものも、1回投与後に血漿レベルを長期間維持できるよう、さらなる修飾を要するかも知れず、または製剤化されるかも知れない。GLP-1ペプチドは、当分野で知られる様々な方法、例えば固相合成化学、天然供給源からのGLP-1分子の精製、組換えDNA技術、またはこれらの方法の組み合わせによって製造できる。例えば、GLP-1ペプチドを製造する方法は、米国特許第5118666、5120712、5512549、5977071および6191102号に記載されている。当技術の慣例として、GLP-1化合物のN末端残基を7位として表す。
【0055】
二つの天然に存在する末端切除GLP-1ペプチドを、式I、配列番号1に示す。
【化1】
Figure 2004521093
[式中、37位のXaaはGlyまたは-NH2である]
【0056】
好ましくは、GLP-1化合物は配列番号1のアミノ酸配列を有するか、または1、2、3、4または5個のアミノ酸が配列番号1と相違するように修飾されている。
【0057】
当分野で知られる幾つかのGLP-1化合物は、例えばGLP-1(7-34)およびGLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、Gln9-GLP-1(7-37)、D-Gln9-GLP-1(7-37)、Thr16-Lys18-GLP-1(7-37)およびLys18-GLP-1(7-37)を包含する。GLP-1(7-34)およびGLP-1(7-35)のようなGLP-1化合物は米国特許第5118666号に開示されており、これは引用により本明細書の一部とする。知られている他の生物活性GLP-1アナログが、米国特許第5977071号;米国特許第5545618号;米国特許第5705483号;米国特許第5977071号;米国特許第6133235号;およびAdelhorst, et al., J.Biol.Chem. 269:6275(1994)に開示されている。
【0058】
さらにGLP-1化合物は、GLP-1(7-37)OHのN末端および/またはC末端に1またはそれ以上のアミノ酸が付加されているポリペプチド、またはその断片もしくはアナログを包含する。好ましくは、1ないし6個のアミノ酸がGLP-1(7-37)OHのN末端に付加され、そして/または1ないし8個のアミノ酸がC末端に付加される。この型のGLP-1化合物は約39個までのアミノ酸を有することが好ましい。「伸長された」GLP-1化合物中のアミノ酸は、GLP-1(7-37)OH中の対応アミノ酸と同じ番号で表示する。例えば、GLP-1(7-37)OHのN末端に2個のアミノ酸を付加して得られるGLP-1化合物のN末端アミノ酸は5位にあり、GLP-1(7-37)OHのC末端に1個のアミノ酸を付加して得られるGLP-1化合物のC末端アミノ酸は39位にある。伸長GLP-1化合物のアミノ酸1-6は、好ましくはGLP-1(1-37)OHの対応位置のアミノ酸と同じであるか、またはその同類置換である。伸長GLP-1化合物のアミノ酸38-45は、好ましくはエクセンディン-3またはエクセンディン-4の対応位置のアミノ酸と同じであるか、またはその同類置換である。エクセンディン-およびエクセンディン-4のアミノ酸配列は式II、配列番号2に示す。
【0059】
【化2】
Figure 2004521093
[式中、
8位のXaaはSerまたはGlyであり;そして、
9位のXaaはAspまたはGluである]
【0060】
本明細書中使用する同類置換とは、或るアミノ酸を、同じ正味の電荷、ならびにほぼ同じ大きさおよび形状を持つ別のアミノ酸で置換することである。脂肪族または置換脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、それらの側鎖にある炭素およびヘテロ原子の総数が約4より多く相違しない場合、ほぼ同じ大きさを持っている。それらは、側鎖にある分枝の数が1より多く相違しない場合、ほぼ同じ形状を持っている。側鎖にフェニルまたは置換フェニル基を持つアミノ酸は、ほぼ同じ大きさおよび形状を持つと考えられる。
【0061】
GLP-1化合物の好ましい群は、式III(配列番号3):
【化3】
Figure 2004521093
【0062】
[式中、7位のXaaは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチルヒスチジンであり;
8位のXaaはAla、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLysであり;
9位のXaaはGlu、Asp、Lys、Thr、Ser、Arg、Trp、Phe、TyrまたはHisであり:
11位のXaaはThr、Ala、Gly、Ser、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、Arg、HisまたはLysであり;
14位のXaaはSer、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLysであり;
12位のXaaはHis、Trp、Phe、またはTyrであり;
16位のXaaはVal、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Tyr、Glu、Asp、Trp、His、PheまたはLysであり;
17位のXaaはSer、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLysであり;
18位のXaaはSer、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、His、Pro、ArgまたはLysであり;
19位のXaaはTyr、Phe、Trp、Glu、Asp、Gly、Gln、Asn、Arg、CysまたはLysであり;
20位のXaaはLeu、Ala、Gly、Ser、Thr、Ile、Val、Glu、Asp、MetまたはLysであり;
21位のXaaはGlu、Asp、またはLysであり;
22位のXaaはGly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLysであり;
23位のXaaはGln、Asn、Arg、Glu、Asp、His、またはLysであり;
24位のXaaはAla、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Arg、Glu、AspまたはLysであり;
25位のXaaはAla、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、AspまたはLysであり;
26位のXaaはLys、Arg、Gln、Glu、Asp、Trp、Tyr、PheまたはHisであり;
27位のXaaはGlu、Asp、Ala、His、Phe、Tyr、Trp、Arg、LeuまたはLysであり;
30位のXaaはAla、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、HisまたはLysであり;
31位のXaaはTrp、Phe、Tyr、Glu、Asp、Ser、Thr、ArgまたはLysであり;
32位のXaaはLeu、Gly、Ala、Ser、Thr、Ile、Val、Glu、Asp、またはLysであり;
33位のXaaはVal、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Glu、Asp、ArgまたはLysであり;
34位のXaaはLys、Arg、Glu、Asp、AsnまたはHisであり;
35位のXaaはGly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、Arg、Trp、Tyr、Phe、Pro、HisまたはLysであり;
36位のXaaはArg、Lys、Glu、Asp、Thr、Ser、Trp、Tyr、Phe、GlyまたはHisであり;
37位のXaaはGly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp、His、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Gly-Pro、Gly-Pro-NH2、-NH2であるか、または削除されており;
38位のXaaはArg、Lys、Glu、Asp、Ser、もしくはHisであるか、または削除されており;
39位のXaaはArg、Lys、Glu、Asp、Ser、もしくはHisであるか、または削除されており;
40位のXaaはAsp、Glu、Gly、もしくはLysであるか、または削除されており;
41位のXaaはPhe、Trp、Tyr、Glu、Asp、Ala、もしくはLysであるか、または削除されており;
42位のXaaはPro、Lys、Glu、もしくはAspであるか、または削除されており;
43位のXaaはGlu、Asp、Pro、もしくはLysであるか、または削除されており;
44位のXaaはGlu、Asp、Pro、もしくはLysであるか、または削除されており;そして、
45位のXaaはVal、Glu、Asp、Ser、もしくはLysであるか、または削除されている]
で示されるGLP-1アナログ、または、
それらのC-1-6-エステル、もしくはアミド、またはC-1-6-アルキルアミド、またはC-1-6-ジアルキルアミド(但し、37、38、39、40、41、42、43、または44位のアミノ酸が削除されている場合、当該アミノ酸より下流の各アミノ酸もまた削除されている)に含まれる。式IIIの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OH、GLP-1(7-36)NH2、エクセンディン-3、またはエクセンディン-4の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を6個より多く持たない事が好ましい。式IIIの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OH、GLP-1(7-36)NH2、エクセンディン-3、またはエクセンディン-4の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を1個から5個の間持つ事がより好ましい。
【0063】
GLP-1化合物のもう一つの好ましい群は、式IV(配列番号4):
【化4】
Figure 2004521093
【0064】
[式中、
Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、またはThrであり;
Xaa8はAsp、Glu、Arg、Thr、Ala、Lys、またはHisであり;
Xaa11はHis、Trp、Phe、またはTyrであり;
Xaa16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Glu、またはAlaであり;
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys、またはシステイン酸であり;
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu、またはGlnであり;
Xaa24はGlu、His、Ala、またはLysであり;
Xaa26はAsp、Lys、Glu、またはHisであり;
Xaa27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg、またはLysであり;
Xaa30はAla、Glu、Asp、Ser、またはHisであり;
Xaa33はAsp、Arg、Val、Lys、Ala、Gly、またはGluであり;
Xaa34はGlu、Lys、またはAspであり;
Xaa35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His、またはGluであり;
Xaa36はArg、Glu、またはHisであり;
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro、もしくはGly-Pro-NH2であるか、または削除されている]
で示されるGLP-1アナログを含む。式IVの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OH、またはGLP-1(7-36)NH2の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を6個より多く持たない事が好ましい。式IVの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OH、またはGLP-1(7-36)NH2の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を1個から5個の間持つ事がより好ましい。
【0065】
GLP-1化合物のもう一つの好ましい群は、式V(配列番号5):
【化5】
Figure 2004521093
【0066】
[式中、
Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、またはThrであり;
Xaa12はHis、Trp、Phe、またはTyrであり;
Xaa16はLeu、Ser、Thr、Trp、His、Phe、Asp、Val、Glu、またはAlaであり;
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys、またはシステイン酸であり;
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu、またはGlnであり;
Xaa26はAsp、Lys、Glu、またはHisであり;
Xaa30はAla、Glu、Asp、Ser、またはHisであり;
Xaa35はThr、Ser、Lys、Arg、Trp、Tyr、Phe、Asp、Gly、Pro、His、またはGluであり;
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro、もしくはGly-Pro-NH2であるか、または削除されている]
で示されるGLP-1アナログを含む。式Vの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OH、またはGLP-1(7-36)NH2の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を6個より多く持たない事が好ましい。式Vの包含するアナログは、GLP-1(7-37)OHまたはGLP-1(7-36)NH2の対応アミノ酸と相違するアミノ酸を1個から5個の間持つ事がより好ましい。
【0067】
GLP-1化合物のもう一つの好ましい群は、式VI(配列番号6):
【化6】
Figure 2004521093
【0068】
[式中、
Xaa8はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、またはThrであり;
Xaa22はGly、Asp、Glu、Gln、Asn、Lys、Arg、Cys、またはシステイン酸であり;
Xaa23はHis、Asp、Lys、Glu、またはGlnであり;
Xaa27はAla、Glu、His、Phe、Tyr、Trp、Arg、またはLysであり;
Xaa30はAla、Glu、Asp、Ser、またはHisであり;
RはLys、Arg、Thr、Ser、Glu、Asp、Trp、Tyr、Phe、His、-NH2、Gly、Gly-Pro、もしくはGly-Pro-NH2であるか、または削除されている]
で示されるGLP-1アナログを含む。
【0069】
GLP-1化合物のもう一つの好ましい群は、式VII(配列番号7):
【化7】
Figure 2004521093
【0070】
[式中、
Xaa7は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンまたはα-メチル-ヒスチジンであり;
Xaa8はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリンまたはスレオニンであり、好ましくはXaa8はグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリンまたはスレオニンであり;
Xaa22はアスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、アルギニン、システイン、またはシステイン酸であり;
Rは-NH2またはGly(OH)である]
で示されるGLP-1アナログを含む。
【0071】
式I、II、III、IV、V、およびVIで示される最も好ましいGLP-1化合物は、係るアナログまたは断片の骨格が8位にアラニン以外のアミノ酸を含むGLP-1アナログを含む(8位アナログ)。8位の好ましいアミノ酸は、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニンであり、より好ましくはバリンまたはグリシンである。
【0072】
その他の好ましいGLP-1化合物は、8位のアミノ酸が好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであって、且つ22位がグルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、またはアルギニン、より好ましくはグルタミン酸またはリジンである事を除いてはGLP-1(7-37)OHの配列を有するGLP-1アナログである。
【0073】
その他の好ましいGLP-1化合物は、8位のアミノ酸が好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであって、且つ30位がグルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、またはヒスチジン、より好ましくはグルタミン酸である事を除いてはGLP-1(7-37)OHの配列を有するGLP-1アナログである。
【0074】
その他の好ましいGLP-1化合物は、8位のアミノ酸が好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであって、且つ37位がヒスチジン、リジン、アルギニン、スレオニン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、より好ましくはヒスチジンである事を除いてはGLP-1(7-37)OHの配列を有するGLP-1アナログである。
【0075】
その他の好ましいGLP-1化合物は、8位のアミノ酸が好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであって、且つ22位がグルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、またはアルギニン、より好ましくはグルタミン酸またはリジンであって、且つ23位がリジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびヒスチジンであり、さらに好ましくはリジンまたはグルタミン酸である事を除いてはGLP-1(7-37)OHの配列を有するGLP-1アナログである。
【0076】
その他の好ましいGLP-1化合物は、8位のアミノ酸が好ましくはグリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、またはメチオニン、より好ましくはバリンまたはグリシンであって、且つ22位がグルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、またはアルギニン、より好ましくはグルタミン酸またはリジンであって、且つ27位がアラニン、リジン、アルギニン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、またはヒスチジン、より好ましくはアラニンである事を除いてはGLP-1(7-37)OHの配列を有するGLP-1アナログである。
【0077】
本明細書中使用する、GLP-1化合物を表記する命名法において、置換アミノ酸とその位置は親構造の前に示す。例えば、Val8-GLP-1(7-37)OHは、通常GLP-1(7-37)OH(式I、配列番号1)の8位に存在するアラニンがバリンに置き換わっているGLP-1化合物を示す。
【0078】
その他の好ましいGLP-1化合物は、
【化8−1】
Figure 2004521093
【化8−2】
Figure 2004521093
を包含する。
【0079】
より好ましいGLP-1化合物は、
【化9】
Figure 2004521093
である。
【0080】
GLP-1化合物はさらに、GLP-1またはGLP-1アナログのアミノ酸配列を持ち、但し加えてそのアミノ酸側鎖、α-炭素原子、末端アミノ基、または末端カルボキシ基の1個またはそれ以上に化学的修飾を有する分子として定義される「GLP-1誘導体」を包含する。化学的修飾とは、化学的基の付加、新たな結合の創出、および化学的基の除去を包含するがこれらに限定される訳ではない。
【0081】
この長期治療計画に使用するGLP-1化合物は、血漿レベルが、要求される有効な範囲に長期間維持されるよう、修飾または製剤化を必要とするかも知れない。例えばGLP-1化合物を、懸濁状のアモルファスまたは結晶性粒子に取り込ませる事[ここでGLP-1化合物は亜鉛またはプロタミンと複合体形成し、投与されると徐々に可溶化する]を包含する様々な手段が、長時間の作用を達成するために利用できる。別の手段は、GLP-1化合物が血漿アルブミンと結合して時間と共にゆっくりと解離するよう、GLP-1化合物を誘導体化することを包含する。さらに、経時的持続放出を提供するための生体吸着性ポリマーを使用するデポ製剤もまた、本発明での使用に好適である。
【0082】
例えば、GLP-1化合物は、選択されたGLP-1ペプチドを約9.5ないし約11.5のpHでグリシン不含溶液に溶解することにより、長時間の作用を有する亜鉛結晶中に組み入れる事ができる。この「アルカリ性正常化」工程は該ペプチドのβシートコンホメーションの含有量を減らし、幾つかのGLP-1化合物の溶解度とバイオアベイラビリティーを増強するように見受けられる。この工程はまた、その後のプロセスに先立ち、該ペプチドを好ましいαヘリックスコンホメーションに維持する役割を果たす。このようにしてこの重要工程は、該ペプチドのバルクロットにおける変化を、より再生産性のある均質な溶液へと「正常化」する。
【0083】
好ましくは、このアルカリ性正常化溶液中のペプチド濃度は5mg/mLより大きい。より好ましくはこの濃度は約10mg/mLないし約30mg/mLである。溶解しているペプチドの、他の好ましい濃度範囲は、約5mg/mLないし約25mg/mL、約8mg/mLないし約25mg/mLおよび約10mg/mLないし約20mg/mLである。最も好ましい濃度は約15mg/mLである。
【0084】
好ましくは、水および塩基、例えばNaOH、KOHまたは水酸化アンモニウムのみを含むアルカリ性水溶液を使用して該ペプチドを溶解する。より好ましい塩基はNaOHである。
【0085】
好ましくは、アルカリ性正常化工程のpHは約10.0ないし約11.0である。より好ましくはpHは約10.5である。溶解しているペプチドを含むアルカリ溶液は、約5分間ないし約3時間の間、一般に約20℃および約25℃の間である(但しこれに限定されると解してはならない)周囲温度で静置させておく事ができる。このアルカリ性溶液は穏やかに攪拌してもよい。より好ましくは、溶解しているアルカリ性ペプチド溶液は周囲温度で約1時間静置させる。当業者は、ペプチドコンホメーションの「正常化」を確実とし、しかも該ペプチドに起こり得る化学分解を回避または最小化する、この工程のためのpH、時間、温度および攪拌条件の組み合わせを、それぞれのペプチドについて容易に確立できる事が理解できるであろう。
【0086】
選択されたペプチドの結晶を製造するプロセスにおける次の工程は、グリシンの添加である。グリシンのようなアミノ酸は亜鉛イオンに結合し、これはさらにペプチド中のヒスチジン残基(群)と極めて強固に結合する。したがって、亜鉛結合についての競合が、ペプチド結晶の形成に、そしてその後の結晶性組成物の安定性に役割を果たす事ができる。アルカリ性ペプチド溶液に添加されるグリシンは固体形態または保存溶液であってよい。好ましくはグリシンは固体で添加する。好ましくは、添加されるグリシンは遊離塩基型である。好ましくは、アルカリ性ペプチド溶液中で得られるグリシン濃度は約5mMないし約250mMである。より好ましいグリシンの濃度範囲は約10mMないし約150mM、約20mMないし約100mM、約40mMないし約80mMおよび約55mMないし約65mMである。最も好ましくはグリシン濃度は約60mMである。
【0087】
所望により、グリシン添加後にこのアルカリ性ペプチド溶液のpHを再調整してもよい。pHを調節する場合、好ましくは約9.0および約11.0の間のpHに調節する。より好ましくは約9.2および約9.8の間のpHに調節する。最も好ましくは約pH9.5に調節する。
【0088】
所望により、グリシンを添加したアルカリ性ペプチド溶液を濾過してもよい。溶液中に不溶の粒子、粉末または繊維状物質の形跡が明らかな場合は濾過が推奨される。所望によりこれは、このプロセスの中で、無菌濾過を実施することにより溶液を滅菌する良い機会でもある。好ましくはこの濾過は、0.45μmまたはそれ以下の孔径を有する低蛋白結合性の無菌発熱性物質不含フィルターを用いて実施する。好ましくはこのフィルターは、0.22μmまたはそれ以下の孔径を有する、無菌で発熱性物質不含の低蛋白結合フィルターである。より好ましくはこのフィルターは、無菌0.22μm Millex(登録商標)フィルター(Millipore Corporation, Waltham, MA, USA)である。
【0089】
結晶を作製するプロセスにおける次の工程は、最終的総容量の約2%ないし約20%の、エタノールおよびイソプロパノールより成る群から選ばれるアルコール、および、該ペプチド1モルあたり約0.5モルないし約2.5モルの亜鉛を、アルカリ性ペプチド溶液に添加することである。この亜鉛とエタノールは単一の水性保存液で添加してよく、または1もしくはそれ以上の段階に分けて任意の順序で添加してよい。好ましくはアルコールを亜鉛の前に添加する。
【0090】
好ましくは、添加されるアルコールは、アルカリ性ペプチド-亜鉛-アルコール溶液の最終総容量の約2%ないし約20%(容量)を構成する。より好ましくは、アルコールは最終総容量の約5%ないし約15%を構成する。より好ましくは、アルコールは最終総容量の約6%ないし約12%を構成する。最も好ましくは、アルコールは最終総容量の約9%を構成する。好ましくは、アルコールはエタノールである。
【0091】
この段階で添加される亜鉛とは亜鉛イオンを指す。この亜鉛は様々な形態で添加できるが、希HClで酸性化した酸化亜鉛溶液および酢酸亜鉛または塩化亜鉛のような塩の形態が好ましい。希HClで酸性化した酸化亜鉛溶液がより好ましい。
【0092】
好ましくは、ペプチド1モルあたり1.0モルないし約2.25モルの亜鉛をこの工程で添加する。亜鉛添加についての別の好ましい範囲は、ペプチド1モルあたり1.1ないし2.0モルの亜鉛、ペプチド1モルあたり1.3ないし1.7モル、およびペプチド1モルあたり1.4ないし1.6モルを包含する。最も好ましくは、ペプチド1モルあたり約1.5モルの亜鉛を添加する。
【0093】
好ましくは、ペプチド溶液に添加する亜鉛を含む溶液は、徐々にそして/または少量ずつ添加し、それにより添加部位で形成され得るペプチドおよび/または亜鉛複合体の限局的沈殿が最少化される。より好ましくは、グリシンは、この工程で添加される亜鉛を含む溶液の成分でもある。例えば、亜鉛-グリシン溶液は、酸化亜鉛をpH約1.6となるまで希HClに溶解し、次いで固体グリシンを添加することによって製造できる。溶液のpHを約pH2および約pH3の間となるまで上昇させるに充分な量のグリシンを加える。亜鉛-グリシン溶液のpHはさらに、例えば希NaOHを用いて上昇させる事ができる。この亜鉛-グリシン溶液の好ましいpH範囲は約pH4.0ないし約pH6.0である。亜鉛-グリシン溶液の、より好ましいpH範囲は約pH5.0ないし約pH5.5である。先に述べたように、グリシンは、該ペプチドと亜鉛の結合と競合し得る、亜鉛に対する結合親和性を有する。したがって、限局的沈殿形成の問題が最小化するため、該組成物に添加される亜鉛を含む溶液中のグリシンの存在は、この亜鉛溶液をより速やかに添加することを可能にする。加えて、亜鉛-グリシン溶液をpH2.0以上、好ましくは約pH4.0ないし約pH6.0とすることにより、無菌ペプチド組成物中にこれを導入する前に、製造者によって例えばpH2-10の溶液を取り扱うと考えられるフィルターを使用して、該溶液を無菌濾過することが可能となる。好ましくはこの亜鉛-グリシン溶液は、約50mMないし約70mMのグリシンおよび約20mMないし約200mMの亜鉛を含む。
【0094】
選択されたペプチドの最初の結晶化における最終工程は、溶液のpHを約pH7.5および約pH10.5の間に調節してペプチドの結晶を形成させる事である。溶液のpH調節に有用な好ましい試薬溶液は希HCl、希酢酸および希NaOHを包含する。
【0095】
選択されたペプチドの結晶化にとって好ましいpH範囲は、約pH8.0ないし約pH10.0、約pH7.5ないし約pH9.5、約pH8.5ないし約pH9.2、約pH9.0ないし約pH9.5、約pH7.5ないし約pH8.5、約pH8.7ないし約pH9.5、および約pH9.2ないし約pH10.0を包含する。
【0096】
当業者は、結晶化の好ましいpHは、該ペプチドの性質およびその濃度、アルコール濃度、亜鉛濃度、溶液のイオン強度ならびに結晶化温度を包含する多くの因子に依存するという事が理解できるであろう。例を挙げると、ペプチドVal8-Glu30-GLP-1(7-37)OHは、約7.7ないし約8.1のpH範囲で選ばれたエタノールおよび亜鉛濃度においてのみ結晶を生成したが、ペプチドVal8-His37-GLP-1(7-37)OHは約9.8ないし約10.4のpH範囲で広範囲の亜鉛およびエタノール濃度において結晶を生成した。
【0097】
当業者はさらに、与えられた条件の組について、結晶化の最適pHを決定する好ましい方法はこれを実験的に決定すること、即ち、酸性化溶液、好ましくは希HClまたは希酢酸を少量ずつ徐々に添加し、それぞれの添加の後に何が起こるかを観察することであるという事が理解できるであろう。一般に、酸性溶液の添加箇所で少量の限局的領域の沈殿形成が起こる。沈殿の完全な再溶解のため、穏やかな攪拌にだんだん長い時間がかかるようになった時、それが、酸の添加を停止し透明または僅かに濁った溶液から結晶化を進行させるための最適な時点である。
【0098】
当業者はさらに、結晶化のために選択するpHと温度は、結晶化が進む速度、結晶化収率、および生成する結晶の大きさと均質性に影響するという事が理解できるであろう。好ましくは、選択されたペプチドの結晶化のpHは約pH8.0ないし約pH10である。より好ましくはこのpHは約8.7ないし約9.5である。別の範囲の好ましい結晶化pHは約8.8ないし約9.3、約9.0ないし約9.5、および約8.5ないし約9.3である。最も好ましくは結晶化は約pH9.1で実施する。
【0099】
好ましくは結晶化の温度は約10℃ないし約30℃である。より好ましくは結晶化温度は約15℃ないし約28℃である。最も好ましくは結晶化温度は周囲温度、または約20℃ないし約25℃である。
【0100】
好ましくは、上記の結晶化工程は、約3時間ないし約72時間のうちに完結させる、即ち該ペプチドの90%またはそれ以上がほぼ結晶型で沈殿する。より好ましくはこの結晶化は約10時間ないし約48時間で完結する。最も好ましくはこの結晶化は約16時間ないし約26時間で完結する。結晶化の完結は、組成物のアリコートに存在する該ペプチドのHPLC分析を包含する種々の手段で決定できる。本明細書の方法5は、利用できるこのような1つのプロトコルを記載するものである。
【0101】
好ましくは、上記プロセスの工程に従って生成される結晶は薄板状結晶である。このプロセスにより生成した結晶は顕微鏡で調べる事ができる。
【0102】
上記のように製造したGLP-1ペプチドの結晶を含む薬用組成物は、原母液中の結晶懸濁液に適当な薬学上許容し得る賦形剤を添加することにより製造できる。別法として、この結晶を、濾過、低速遠心分離またはその他の相分離手段により単離し、様々な方法で薬学上許容し得る組成物の製造に利用できる。当業者は、このような薬用組成物の製造に役立つ好適な方法および賦形剤が理解できるであろう。
【0103】
以下のプロセスは、最初の結晶化段階から得た結晶および原母液から出発し、安定な薬用組成物の製造に至る。
【0104】
選択されたペプチドの結晶の安定な薬用組成物を製造するため、原母液全量またはその一部の中にある結晶懸濁液のpHを、該ペプチドの97%またはそれ以上が不溶性となるpH値まで下げる。好ましくはプロセスのこの部分は、最初の結晶化の完結が決定された後数時間以内に開始する。好ましくは、HClまたは酢酸の希釈溶液を用いてpHを下げ、この酸性溶液は徐々に、そして漸増する量を添加する。当業者は、この第二段階の結晶化を起こさせる好ましいpHは、該ペプチドの性質およびその濃度、アルコール濃度、亜鉛濃度、懸濁液のイオン強度ならびに結晶化温度を包含する多くの因子に依存するという事が理解できるであろう。好ましくはこのpHは、最初の結晶化が進行したpHよりも約0.2ないし2.0pH単位だけ低くする。より好ましくはこのpHは最初の結晶化が進行したpHよりも約0.5ないし約1.5pH単位だけ低くし、最も好ましくは約0.8ないし1.3pH単位だけ低くする。この第二段階の結晶化の温度は好ましくは周囲温度または約20℃ないし約25℃である。ペプチドVal8-GLP-1(7-37)OHについては、好ましいpHは約7.5ないし約8.5である。より好ましいpHは約7.8ないし約8.2である。
【0105】
好ましくは、ペプチド結晶の懸濁液のpHを、98%またはそれ以上、より好ましくは99%またはそれ以上のペプチドが該組成物中で不溶性となるpHまで下げる。この第二段階の結晶化で生成するさらなる沈殿は結晶を含む。好ましくは、この第二段階の結晶化で生成するさらなる沈殿は、主として第一段階の結晶化で生成したものと同等の形態およびサイズ分布を有する結晶となる。
【0106】
好ましくは、第二段階の結晶化は、この第二段階の結晶化開始から30時間以内に、より好ましくは18時間以内に、より好ましくは6時間以内に、そして最も好ましくは2時間以内に次工程を開始させるに十分な程完結させる、即ち該ペプチドの97%またはそれ以上が不溶性となるようにする。沈殿化収率の定量は、該組成物のアリコート中に存在するペプチドのHPLC分析を包含する種々の手段により決定できる。
【0107】
選択されたペプチド結晶の安定な薬用組成物を製造するプロセスにおける次の工程は、薬学上許容し得る保存剤ならびにTRIS、マレイン酸塩、燐酸塩、琥珀酸塩、グリシルグリシンおよびアジピン酸塩より成る群から選ばれる緩衝剤を添加することである。所望により1またはそれ以上の浸透圧物質、例えば塩化ナトリウム、その他の塩類、グリセリンまたはマンニトールを添加できる。これらの成分は単一の溶液として、または組み合わせた溶液として、または個別的に任意の順序で添加できる。保存剤は最後に加えるのが好ましい。これらの成分のうち、好ましい緩衝剤はTRISおよびマレイン酸塩より成る群から選ばれ、好ましい保存剤はm-クレゾールであり、そして好ましい浸透圧物質は塩化ナトリウムである。より好ましい緩衝剤はTRISである。
【0108】
選択された緩衝剤がTRISである場合、結晶性ペプチド懸濁液に添加するTRISの好ましい量は、最終組成物中のTRIS濃度が約5mMないし約40mMであるような量である。最終組成物中のTRIS濃度のより好ましい範囲は約10mMないし約20mMである。最終組成物中のTRISの最も好ましい濃度は約15mMである。
【0109】
選択された緩衝剤がマレイン酸塩である場合、結晶性ペプチド懸濁液に添加するマレイン酸塩の好ましい量は、最終組成物中のマレイン酸塩濃度が約2mMないし約20mMであるような量である。最終組成物中のマレイン酸塩濃度のより好ましい範囲は約5mMないし約15mMである。最終組成物中のマレイン酸塩の最も好ましい濃度は約9mMである。
【0110】
該ペプチド組成物の成分に塩化ナトリウムを選択する場合、結晶性ペプチド懸濁液に添加するための好ましい量は、最終組成物中の添加された塩化ナトリウム濃度が約30mMないし約200mMであるような量である。最終組成物中の添加された塩化ナトリウムのより好ましい濃度は50mMないし約150mMである。好ましい塩化ナトリウム濃度のその他の範囲は、約80mMないし約120mM、約70mMないし約130mM、および約90mMないし約130mMである。薬用組成物中の添加された塩化ナトリウムの最も好ましい量は約110mMである。
【0111】
プロセスのこの時点で、いかなる薬学上許容し得る保存剤を結晶性ペプチド懸濁液に添加してもよいが、本発明に係る組成物のためにはフェノール性保存剤またはベンジルアルコールが好ましい。フェノール性保存剤の例は、フェノール、クロロクレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、チモールまたはこれらの混合物を包含する。より好ましい保存剤はベンジルアルコール、m-クレゾール、フェノール、メチルパラベンおよびこれらの混合物である。最も好ましい薬学上許容し得る保存剤はm-クレゾールである。
【0112】
プロセスのこの時点で結晶性ペプチド組成物に添加する薬学上許容し得る保存剤の好ましい量は、最終組成物中の保存剤濃度が約1.0mg/mLないし約20.0mg/mLとなるような量である。最終組成物中の保存剤のより好ましい濃度範囲は、約2.0mg/mLないし約8.0mg/mL、約2.5mg/mLないし約4.5mg/mLおよび約2.0mg/mLないし約4.0mg/mLである。最終組成物中の保存剤の最も好ましい濃度は約3.0mg/mLである。
【0113】
選択されたペプチド結晶の安定な薬用組成物を製造するプロセスの最終工程は、最終的pHを約6.0および約8.5の間、好ましくは約pH6.5および約pH8.0の間に調節することである。このpH調節には多岐にわたる酸性化および/またはアルカリ性化試薬溶液のうち任意のものを使用できるが、希HCl、希NaOHおよび希酢酸が好ましい。より好ましい試薬溶液は希HClおよび希NaOHである。この組成物が調節される好ましいpHは、選択されたペプチド、ペプチド濃度、提唱された投与経路および選択された緩衝剤に或る程度依存するであろう。
【0114】
好ましくは、選択された緩衝剤としてTRISを用いる場合、pHは約6.5および約8.5の間に調節する。より好ましくは、pHは約7.0および約7.8の間、約7.2および約7.8の間、約7.5および約8.5の間、または約7.0および約8.0の間に調節する。選択された緩衝剤がTRISである場合、この組成物が調節される最も好ましいpHは約7.5である。選択された緩衝剤としてマレイン酸塩を用いる場合、pHは約6.0および約7.5の間に調節する。より好ましくは、pHは約6.4および約7.5の間、約6.4および約7.0の間、または約6.0および約7.0の間に調節する。選択された緩衝剤がマレイン酸塩である場合、この組成物が調節される最も好ましいpHは約6.5である。
【0115】
製剤化アプローチの代わりに、本発明に係る治療計画に好適な長時間作用性GLP-1化合物を誘導体化することができる。誘導体化は様々な手段によって達成する。アミノ酸側鎖基の修飾は、リジンε-アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンのN-アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、ならびにグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化を包含するが、これらに限定されない。末端アミノ基の修飾は、デスアミノ、N-低級アルキル、N-ジ低級アルキル、およびN-アシル修飾を包含するがこれらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾は、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾を包含するがこれらに限定されない。さらに、1またはそれ以上の側鎖基または末端基を、当分野における通常の知識を有する蛋白化学者に周知の保護基によって保護することができる。アミノ酸のα炭素はモノまたはジメチル化できる。
【0116】
好ましいGLP-1誘導体はアシル化によって取得できる。脂肪酸誘導体化の原則を使用して、血中アルブミンおよび末梢組織にある脂肪酸結合部位への脂肪酸残基の結合を介した血漿アルブミンとの結合を促進することによって、GLP-1の作用を長期化する。好ましいGLP-1誘導体はArg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。GLP-1誘導体および係る誘導体を製造する方法は、Knudsen, et al.(2000) J.Med.Chem. 43:1664-1669に開示されている。加えて、多数の公開された出願が、GLP-1、GLP-1アナログ、エクセンディン-4、およびエクセンディン-4アナログの誘導体を記載している。米国特許第5512540号、WO96/29342、WO98/08871、WO99/43341、WO99/43708、WO99/43707、WO99/43706、およびWO99/43705を参照されたい。
【0117】
GLP-1ペプチドはまた、ミクロスフェアを用いてカプセル化し、その後経口的にデリバリーすることができる。例えば、GLP-1化合物は市販の生物適合性、生物分解性ポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)-COOHおよび増量剤としてのオリーブ油より成るミクロスフェア中にカプセル化できる。Joseph, et al.(2000) Diabetologia 43:1319-1328を参照されたい。Alkermes由来のMedisorb(登録商標)およびProlease(登録商標)生物分解性ポリマーといった他の型のミクロスフェア技術もまた商業的に利用可能である。Medisorb(登録商標)ポリマーはラクチド異性体のいずれかを用いて製造できる。ラクチド:グリコリド比を0:100および100:0の間で変え、ポリマーの性質を広範囲とすることができる。これにより、数週間から数ヶ月の範囲の再吸収時間を持つデリバリーシステムおよび移植可能装置の設計が可能となる。
【0118】
本発明のもう一つの態様は、包装挿入物、容器を含むヒト医薬使用のための製造品を包含し、この挿入物は、特定の力価を持つGLP-1化合物の血漿レベルを、吐き気や嘔吐といった副作用を回避または最小化する或る範囲内に維持することを含む治療計画を記載している。
【0119】
本製造品に使用する容器は薬学技術において常套的である。一般にこの容器は、通常ガラスでできているバイアルまたはカートリッジ、および付属の蓋、閉鎖用部品、ビーズ、プランジャー、隔壁、および/または患者もしくは薬剤師の使用に適したその他の係る製造品である。或いはまた、この容器は、乾燥粉末を入れたカートリッジと適当な希釈剤を前もって充填した注射筒で構成されるキットの一部である。その他の選択肢は、希釈剤の液体と乾燥粉末とを再構成が望まれるまで相互に分離しておく、バイパス付きの二室式カートリッジより成る容器を包含する。再構成の時点でこの二室式カートリッジが希釈剤の液体を乾燥粉末中に流入させる。好ましくはこの容器は、0.1ないし100mL、好ましくは0.5ないし25mL、より好ましくは5ないし10mL、さらに好ましくは1.5ないし3mL容量が入る大きさである。或いはまた、この容器は、ブリスター、カプセル、またはブリスターディスクである。この容器のためのその他の選択肢は、経皮パッチ、移植可能な装置、ミクロスフェア担体およびその他のデポデリバリーシステムを包含する。
【0120】
挿入物は医師に、本明細書に記載の範囲内のGLP-1化合物の血漿レベルをもたらす幾つかの用量の選択肢を提供し、または好ましくは挿入物は医師に、本明細書に記載の範囲内のGLP-1化合物の血漿レベルをもたらす単一の用量を提供する。
【0121】
包装挿入物は、医薬製品を如何に投与するかという説明と、医師、薬剤師、および患者に当該製品の使用に関して情報を提供された上での決定を可能にさせるために必要な、安全性および有効性のデータを提供する。包装挿入物は一般に、医薬製品のラベルとみなされている。
【0122】
包装挿入物は以下のような指摘またはラベル説明の幾つかまたは全てを提供できる:
1) 単独治療として、または単一もしくは複数の経口抗糖尿病薬との組み合わせ治療としての、単一もしくは複数の経口抗糖尿病薬で充分に管理されていない患者において、係る薬剤のみと比較した場合に改善されている血糖管理;
2) 高血糖が充分に管理されていない患者のための使用;
3) 単一または複数の経口抗糖尿病薬で充分に管理されていない患者における、0.5%より大きいまたはこれに等しい、好ましくは1%より大きいまたはこれに等しいHbAlcの平均低下;
4) 単独治療の患者の平均体重増加量は、3ヶ月間またはそれ以上の期間、TZDまたはスルホニル尿素いずれかの単独治療で治療された患者の平均体重増加量より少ない;
5) 統計学的に有意な体重減少の証明;
6) 治療用量において重篤な低血糖が無い;
7) 治療用量において症候性低血糖が無い;
8) 固定された注射食事間隔が無い;
9) 毎日投与の開始は中等度以上の用量滴定を必要とせず(4用量未満またはこれに等しい)、その後の毎日投与は血中グルコース監視とは無関係である;
10) 少なくとも12ヶ月、好ましくは少なくとも18ヶ月の冷蔵貯蔵寿命;
11) 室温での使用時保管;
12) 治療用量において最小の注射部位の苦痛;
13) 治療用量において注射部位の苦痛が無い;
14) 治療用量において最小の吐き気;
15) 動物モデルでのβ細胞の保持;
16) ヒトでのβ細胞の保持;
17) 0.1および0.25mLの間の注射容量;および、
18) 子供における使用の安全性。
【0123】
さらに、包装挿入物は、患者の体重もしくはボディマス指数、性別、または年齢に拘わらずGLP-1の連続的血漿レベルを治療範囲内に維持することを含む、本発明に包含される治療計画についての指示を提供できる。加えて包装挿入物は、本発明が、患者がグルコースレベルを自己監視する必要のない、且つ食事時間に合わせる必要のない(それにより、最適な血中グルコースの管理を安全に維持しつつ患者に利便性を与える事ができる)プロトコルによって、定常状態のGLP-1レベルを維持する手段をどのようにして提供するのかを説明する。
【0124】
長期投薬計画を提供する本発明で特許請求される製造品によって、副作用の発生は著しく減少する。故に、好ましい製造品は、本明細書に記載の範囲内の血漿レベルを有する患者の30%未満にしか吐き気の発生が無いという事を報告している包装挿入物を提供する。より好ましくは、吐き気および嘔吐は本明細書に記載の範囲内の血漿レベルを有する患者の20%未満にしか起こらない。さらに好ましくは、本明細書に記載の範囲内の血漿レベルを有する患者の10%未満しか係る副作用を経験しない。最も好ましくは、吐き気および嘔吐は、本明細書に記載の範囲内の血漿レベルを有する患者の5%未満にしか起こらない。
【0125】
本明細書に記載の治療計画に起因する低血糖の発生は稀である。63mg/dL未満の血中グルコースレベルを特徴とする低血糖の発生が報告されている包装挿入物は10%未満、好ましくは5%未満であり、最も好ましくは低血糖の報告は無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0126】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらはいかなるやり方によっても限定的である事を意図するものではない。
【0127】
実施例1
2型糖尿病患者における臨床試験
2型糖尿病患者8名ずつの4群をVal8-GLP-1(7-37)OHの長時間作用製剤で治療した。最初の3群には2.5または3.5または4.5mgのいずれかを1日に1回6日間投与した。4群目には1日に1回4.5mgを21日間投与した。試験の前日、それぞれの患者にプラセボとして食塩水の注射を行った。血中グルコースを13時間追跡した。評価の日程中、食事は全て厳密に標準化した。患者は、24時間にわたる6日目および21日目の評価を除き、外来患者であった。1日目の注射の後、4時間の間グルコースおよびVal8-GLP-1(7-37)OHの血漿レベルを求めるため、血液試料を採取した。患者には毎朝投与した。投与の6日目(第4群については21日目にも)、血中グルコースおよびVal8-GLP-1(7-37)OH血漿レベル測定のため、投与後26時間まで試料を採取した。Val8-GLP-1(7-37)OH血漿レベルを図1および3に、そして対応するグルコースレベルを図2および4に示す。21日の投与群の患者は平均2.125kg体重が減少した(標準偏差:1.36kg)。5名の対象は計3kg、1名は2kg減少し、2名は減少しなかった。
【0128】
実施例2
Val8-GLP-1(7-37)OH血漿レベルの測定:
天然GLP-1ペプチド、およびDPP-IVによるGLP-1(9-37)OHのような分解産物の内因性濃度が存在するため、無傷のVal8-GLP-1(7-37)OH濃度は、分解されていない完全長Val8-GLP-1(7-37)OHを特異的に認識するELISA検定を用いて測定した。微量定量プレート上に固定化したN末端抗Val8-GLP-1(7-37)OH特異的抗血清によって、免疫反応性Val8-GLP-1(7-37)OHを血漿から捕捉する。この抗血清はVal8-GLP-1(7-37)OHのN末端に極めて特異的である。GLP-1のC末端に特異的なアルカリホスファターゼコンジュゲート化抗体を添加して「サンドイッチ」を完成する。検出はpNPP、アルカリホスファターゼに対する比色定量基質を用いて完成する。生成した色の量は、試料中に存在する免疫反応性Val8-GLP-1(7-37)OHの濃度に直接比例する。ヒト血漿中のVal8-GLP-1(7-37)OHの定量は、Val8-GLP-1(7-37)OHをレファランス標準に用いる標準曲線から内挿できる。加重4パラメータロジスティクアルゴリズムを用いるコンピュータプログラムによってデータを解析した。被験試料中の免疫反応性Val8-GLP-1(7-37)OHの濃度を標準曲線を用いて決定した。
【0129】
実施例3
インビトロ力価検定:
ヒトGLP-1レセプターを発現するHEK-293 Aurora CRE-BLAM細胞を20000ないし40000細胞/ウェル/100μlで96ウェル黒色透明底プレートに蒔く。播種の翌日、培地を無血漿培地に交換する。播種の3日後、異なる濃度のGLP-1アゴニストを含有する無血漿培地20μlを各ウェルに加え、用量反応曲線を作製する。一般に、3ナノモルから30ナノモルまでのGLP-1化合物を含有する14種類の希釈液を用いて用量反応曲線を作製し、ここからEC50値が決定できた。GLP-1化合物と共に5時間インキュベートした後、β-ラクタマーゼ基質(CCF2-AM Aurora Biosciences 製品コード100012)20μlを加え、インキュベーションを1時間継続し、この時点で蛍光をcytoflourで測定した。
【0130】
実施例4
GLP-1(7-37)OHの結晶化:
GLP-1(7-37)OHを、このペプチドの質量に基づき0.015NのNaOH約0.5mLに約17mg/mLの濃度で溶解した。この蛋白溶液を希NaOHで約pH10.5に調節した。この溶液を約1時間周囲温度に維持した。
【0131】
このペプチド溶液のアリコート390μLに1.0Mグリシン(pH10)溶液25μLを加え、GLP-1(7-37)OH約16mg/mLおよびグリシン約60mMの最終濃度とした。この溶液のpHを必要に応じて希HClおよび/または希NaOHで約pH10に調節した。
【0132】
次にこの溶液を、60mMグリシン緩衝液(pH10)で前もってすすいだ滅菌0.22μm Millex(登録商標)-GV(Millipore Corporation, Waltham, MA, USA)4mmフィルターユニットでガラスバイアル中に濾過した。
【0133】
濾過したペプチド溶液300μLに50%エタノール水溶液66μLを加えた。この溶液に150mM酸化亜鉛(pH2.3)溶液(希HClにて調製)計14.1μLを、少量ずつ、それぞれの添加後に手動攪拌しながら、溶液が透明になるまで添加した。亜鉛:ペプチドのモル比は約1.5:1であった。
【0134】
最終溶液を約pH9.0に調節し、周囲温度で結晶化を進行させた。この結晶化溶液は、約12.6mg/mL GLP-1(7-37)OH、47mMグリシン、8.7%(容量)エタノール、およびpH9.0のGLP-1(7-37)OH 1モルあたり約1.5モルの亜鉛を含んでいた。
【0135】
周囲温度で1日後、400X倍率の顕微鏡下でGLP-1(7-37)OHの薄板結晶が観察された。
【0136】
結晶化の収率を、0.01N HClに10倍希釈で再溶解した懸濁液全体のアリコートの吸光度を、分光光度計を用いて、14000 X gで約4分間この懸濁液を遠心分離し同様に希釈して得た上清と比較することにより、決定した。この実験について結晶化収率は92%であった。
【0137】
実施例5
Val8-GLP-1(7-37)OHの結晶化:
Val8-GLP-1(7-37)OHを、このペプチドの質量に基づき0.015NのNaOH約0.57mLに約17mg/mLの濃度で溶解した。この蛋白溶液を希NaOHで約pH10.5に調節した。この溶液を約1時間周囲温度に維持した。
【0138】
このペプチド溶液のアリコート390μLに1.0Mグリシン(pH8)溶液25μLを加え、Val8-GLP-1(7-37)OH約16mg/mLおよびグリシン約60mMの最終濃度とした。この溶液のpH(約pH9.0)を必要に応じて希HClおよび/または希NaOHで約pH9.9に調節した。
【0139】
次にこの溶液を、滅菌0.22μm Millex(登録商標)-GV(Millipore Corporation, Waltham, MA, USA)4mmフィルターユニットで0.5mLエッペンドルフ管中に濾過した。
【0140】
清浄な試験管に入れた、濾過したペプチド溶液300μLに50%エタノール水溶液66μLを加えた。この溶液に150mM酸化亜鉛(pH2.3)溶液(希HClにて調製)計14.1μLを、少量ずつ、それぞれの添加後に手動攪拌しながら、溶液が透明になるまで添加した。亜鉛:ペプチドのモル比は約1.5:1であった。
【0141】
最終溶液を約pH8.9に調節し、周囲温度で結晶化を進行させた。この結晶化溶液は、約12.6mg/mL Val8-GLP-1(7-37)OH、47mMグリシン、8.7%(容量)エタノール、およびpH8.9のVal8-GLP-1(7-37)OH 1モルあたり約1.5モルの亜鉛を含んでいた。
【0142】
周囲温度で約3日後、400X倍率の顕微鏡下でVal8-GLP-1(7-37)OHの薄板結晶が観察された。
【0143】
実施例6
Val8-GLP-1(7-36)NH2の結晶化:
Val8-GLP-1(7-36)NH2を、このペプチドの質量に基づき0.015NのNaOH約0.44mLに約17mg/mLの濃度で溶解した。この蛋白溶液を希NaOHで約pH10.5に調節した。この溶液を約1時間周囲温度に維持した。
【0144】
このペプチド溶液のアリコート390μLに1.0Mグリシン(pH10.2)溶液25μLを加え、Val8-GLP-1(7-36)NH2約16mg/mLおよびグリシン約60mMの最終濃度とした。
【0145】
次にこの溶液を、滅菌0.22μm Millex(登録商標)-GV(Millipore Corporation, Waltham, MA, USA)4mmフィルターユニットでガラスバイアル中に濾過した。
【0146】
清浄なガラスバイアルに入れた、濾過したペプチド溶液300μLに50%エタノール水溶液66μLを加えた。この溶液に150mM酸化亜鉛(pH2.3)溶液(希HClにて調製)計14.1μLを、少量ずつ、それぞれの添加後に手動攪拌しながら、溶液が透明になるまで添加した。亜鉛:ペプチドのモル比は約1.5:1であった。
【0147】
最終溶液を約pH9.85に調節し、周囲温度で結晶化を進行させた。この結晶化溶液は、約12.6mg/mL Val8-GLP-1(7-36)NH2、47mMグリシン、8.7%(容量)エタノール、およびpH9.85のVal8-GLP-1(7-36)NH2 1モルあたり約1.5モルの亜鉛を含んでいた。
【0148】
周囲温度で約3日後、400X倍率の顕微鏡下でVal8-GLP-1(7-36)NH2の微結晶が観察された。
【0149】
実施例7
Val8-GLP-1(7-37)NH2の結晶化:
Val8-GLP-1(7-37)NH2を、このペプチドの質量に基づき0.015NのNaOH約0.48mLに約17mg/mLの濃度で溶解した。この蛋白溶液を希NaOHで約pH11.1に調節し、次いで希HClでpH10.36に調節した。この溶液を約1時間周囲温度に維持した。
【0150】
このペプチド溶液のアリコート390μLに1.0Mグリシン(pH10)溶液25μLを加え、Val8-GLP-1(7-37)NH2約16mg/mLおよびグリシン約60mMの最終濃度とした。
【0151】
次にこの溶液を、滅菌0.22μm Millex(登録商標)-GV(Millipore Corporation, Waltham, MA, USA)4mmフィルターユニットでガラスバイアル中に濾過した。
【0152】
清浄なガラスバイアルに入れた濾過したペプチド溶液300μLに50%エタノール水溶液66μLを加えた。この溶液に150mM酸化亜鉛(pH2.3)溶液(希HClにて調製)計約7μLを、少量ずつ、それぞれの添加後に手動攪拌しながら、溶液が透明になるまで添加した。亜鉛:ペプチドのモル比は約0.75:1であった。
【0153】
最終溶液を約pH9.8に調節し、周囲温度で結晶化を進行させた。この結晶化溶液は、約12.6mg/mL Val8-GLP-1(7-37)NH2、47mMグリシン、8.7%(容量)エタノール、およびpH9.8のVal8-GLP-1(7-37)NH2 1モルあたり約0.75モルの亜鉛を含んでいた。
【0154】
周囲温度で約48時間後、400X倍率の顕微鏡下でVal8-GLP-1(7-37)NH2のクラスターが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、2型糖尿病患者にプラセボ(基線)、2.5mg(第1群)、および3.5mg(第2群)のVal8-GLP-1(7-37)OHを1日に1回投与した後の、平均(+/-SEM)血漿中Val8-GLP-1(7-37)OH濃度を表すグラフである。
【図2】図2は、2型糖尿病患者にプラセボ(基線)、2.5mg(第1群)、および3.5mg(第2群)のVal8-GLP-1(7-37)OHを1日に1回投与した後の、平均(+/-SEM)グルコース濃度を表すグラフである。
【図3】図3は、2型糖尿病患者にプラセボ(基線)および4.5mg(第3群および4群)のVal8-GLP-1(7-37)OHを1日に1回投与した後の、平均(+/-SEM)血漿中Val8-GLP-1(7-37)OH濃度を表すグラフである。
【図4】図4は、2型糖尿病患者にプラセボ(基線)および4.5mg(第3群および4群)のVal8-GLP-1(7-37)OHを1日に1回投与した後の、平均(+/-SEM)グルコース濃度を表すグラフである。

Claims (32)

  1. Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモル/リットルおよび約200ピコモル/リットルの間に維持することを含む、血中グルコースレベルを正常化する方法。
  2. 高血糖、2型糖尿病、肥満、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する方法であって、Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモル/リットルおよび約200ピコモル/リットルの間に維持することを含む方法。
  3. Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1化合物の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモル/リットルおよび約200ピコモル/リットルの間に維持することを含む、β細胞の劣化を防止する方法。
  4. Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つ生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1化合物の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモル/リットルおよび約200ピコモル/リットルの間に維持することを含む、体重減少を誘発する方法。
  5. 血漿レベルを約100ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持する、請求項1ないし4のいずれか記載の方法。
  6. 血漿レベルを約100ピコモルおよび約180ピコモルの間に維持する、請求項5に記載の方法。
  7. 生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価である]、血中グルコースレベルを正常化する方法。
  8. 高血糖、2型糖尿病、肥満、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する方法であって、生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価である]方法。
  9. 生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価である]、β細胞の劣化を防止する方法。
  10. 生物活性型のGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することを含む[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価である]、体重減少を誘発する方法。
  11. 血漿レベルを約100/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持する、請求項7ないし10のいずれか記載の方法。
  12. 血漿レベルを約100/Xピコモルおよび約180/Xピコモルの間に維持する、請求項11に記載の方法。
  13. GLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1回を超えずに投与する、請求項1ないし12のいずれか記載の方法。
  14. GLP-1アナログまたは誘導体が、Val8-GLP-1(7-37)OH、Val8-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-GLP-1(7-37)OH、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Lys22-GLP-1(7-37)OH、Val8-Lys22-GLP-1(7-36)NH2、Val8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Val8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Gly8-Glu30-GLP-1(7-37)OH、Gly8-Glu30-GLP-1(7-36)NH2、Val8-His37-GLP-1(7-37)OH、およびVal8-His37-GLP-1(7-36)NH2、Arg34-GLP-1(7-36)NH2、Arg34-GLP-1(7-37)OHより成る群から選ばれる、請求項1ないし6のいずれか記載の方法。
  15. GLP-1アナログまたは誘導体が結晶懸濁液製剤として投与されるGLP-1アナログである、請求項1ないし6のいずれか記載の方法。
  16. GLP-1アナログまたは誘導体が、アシル化されたGLP-1誘導体である、請求項1ないし14のいずれか記載の方法。
  17. アシル化されたGLP-1誘導体が、26位に存在するリジンのイプシロンアミノ基においてアシル化されているGLP-1アナログである、請求項16に記載の方法。
  18. アシル化されたGLP-1誘導体がArg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である、請求項17に記載の方法。
  19. エクセンディン-4を皮下注射することにより投与し、エクセンディン-4の長期定常状態血漿レベルを約6ピコモル/リットルおよび約40ピコモル/リットルの間に維持することを含む、血中グルコースレベルを正常化する方法。
  20. 高血糖、2型糖尿病、肥満、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する方法であって、エクセンディン-4を皮下注射することにより投与し、エクセンディン-4の長期定常状態血漿レベルを約6ピコモル/リットルおよび約40ピコモル/リットルの間に維持することを含む方法。
  21. エクセンディン-4を皮下注射することにより投与し、エクセンディン-4の長期定常状態血漿レベルを約6ピコモル/リットルおよび約40ピコモル/リットルの間に維持することを含む、β細胞の劣化を防止する方法。
  22. エクセンディン-4を皮下注射することにより投与し、エクセンディン-4の長期定常状態血漿レベルを約6ピコモル/リットルおよび約40ピコモル/リットルの間に維持することを含む、体重減少を誘発する方法。
  23. 6日間の1日1回長期投薬後にGLP-1が定常状態血漿レベルに到達する、請求項1ないし18のいずれか記載の方法。
  24. 6日間の1日1回長期投薬後にGLP-1化合物が血漿中でおよそ3倍に蓄積する、請求項23に記載の方法。
  25. a) 容器;
    b) Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つGLP-1アナログまたは誘導体の或る量を含む製剤;および、
    c) GLP-1化合物の血漿レベルを60ピコモルおよび200ピコモルの間に維持する製剤の投与を規定する包装挿入物、
    を含む、ヒト医薬用途のための製造品。
  26. 包装挿入物が、高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満、および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療するための使用を教示する、請求項25に記載の製造品。
  27. GLP-1アナログまたは誘導体が、Val8-GLP-1(7-37)OHおよびArg34Lys26-(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)より成る群から選ばれる、請求項25または26に記載の製造品。
  28. a) 容器;
    b) エクセンディン-4の或る量を含む製剤;および、
    c) エクセンディン-4の血漿レベルを6ピコモルおよび40ピコモルの間に維持する製剤の投与を規定する包装挿入物、
    を含む、ヒト医薬用途のための製造品。
  29. Val8-GLP-1(7-37)OHの2倍以内のインビトロ力価を持つGLP-1アナログまたは誘導体を24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、該GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持することにより、血中グルコースを正常化し、β細胞を保持し、体重減少を誘発し、または高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する医薬の製造のための、該GLP-1アナログまたは誘導体の用途。
  30. 血漿レベルが約100ピコモルおよび約200ピコモルの間に維持される、請求項29に記載の用途。
  31. エクセンディン-4を皮下注射することにより投与し、エクセンディン-4の長期定常状態血漿レベルを約6ピコモルおよび約40ピコモルの間に維持することにより、血中グルコースを正常化し、β細胞を保持し、体重減少を誘発し、または高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する医薬の製造のための、エクセンディン-4の用途。
  32. GLP-1アナログまたは誘導体は24時間毎に1または2回を超えずに皮下注射することにより投与し、GLP-1アナログまたは誘導体の長期定常状態血漿レベルを約60/Xピコモルおよび約200/Xピコモルの間に維持することにより[ここで、Xは参照値1としてのVal8-GLP-1(7-37)OHに対するGLP-1アナログまたは誘導体のインビトロ力価である]、血中グルコースを正常化し、β細胞を保持し、体重減少を誘発し、または高血糖、2型糖尿病、卒中、心筋梗塞、手術後に起こる異化作用の変化、肥満および過敏性腸症候群より成る群から選ばれる状態を治療する医薬の製造のための、該GLP-1アナログまたは誘導体の用途。
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