JP2004520048A - 真菌耐性トランスジェニック植物 - Google Patents
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Abstract
菌核病菌(Sclerotinia)及び根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるトランスジェニック植物ならびにかかるトランスジェニック植物を生産する方法を記載した。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の真菌耐性に、及びさらに特に菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)及び/または根朽病菌(Phoma lingam)感染に対して耐性を有する植物に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌病は多数の栽培種の病害に関わる。病害量は毎年変わり、温度、降雨量、及び圃場に存在する種菌の量に依存する。複数の事例においては真菌病は圃場を完全に破壊することもあり、世界中の作物に20%の見積平均収量損失を与えうる。根朽病(blackleg disease)は、アブラナ(rape)植物の主要な真菌病の1つであり、典型的には、毎年数千万ドルの損失をもたらす。菌核病(Sclerotinia)もまた他の主要な真菌病であり、アブラナ属(Brassica)植物を含むアブラナ科(Cruciferae)植物、ならびにヒマワリなどのキク科(Compositae)植物及びエンドウマメなどの豆果を生じる植物を含む400種の他の植物種に関わり、著しい経済的損失をもたらしうる。
【0003】
根朽病(blackleg)は子嚢菌類(Ascomycetes)真菌により引き起こされ、その完全もしくは有性型がレプトスファエリア・マキュランス菌(Leptosphaeria maculans)でありかつその不完全もしくは無性型が根朽病菌(フォーマ・リンガム)(Phoma lingam)である。有性型は毎年、一次種菌を提供し、真菌の高い可変性の原因となる。L・マキュランス菌(L. maculans)は、実際は、確認されている2つの主要群、TOX+及びTOX°の種の複合体である。TOX+種は攻撃性であり、2つの毒素、シロデスミン及びホマライドを産生する。TOX+ 種内には複数の菌株または病原性グループ(PG)が存在する。ヨーロッパ、オーストラリア、及びカナダ東部においては現在、PG3及びPG4がフォーマ(Phoma)の優勢菌株であるのに対して、カナダ西部においては現在、PG2がフォーマ(Phoma)の優勢菌株である。欧州におけるアブラナ植物の被害は典型的には冠の攻撃に限定されるが、北米においては、冠及び茎の両方に壊死が起こりうる。
【0004】
白腐病(white rot)もしくは菌核病(sclerotinia disease)も、子嚢菌類(Ascomycetes)真菌である菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)によって起こる。菌核病菌(S. sclerotiorum)は真菌の有性型であり、毎年、一次種菌を提供する。
【0005】
真菌病害を制限する方法は、作物輪作または作物細片の埋没などの予防対策、殺菌剤使用、及び遺伝的改良が挙げられる。しかし予防対策は、真菌が土壌中で多年にわたり生存しうるので非常に効果的というものではない。殺菌剤は適当な時に適用すると効果的であるが、費用が収率の利得と比較してしばしば高い。さらに、菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性に対する植物の遺伝的改良は、様々な植物種には低い真菌耐性しか存在しないので限られたものである。単一の耐性遺伝子を含有しかつL・マキュランス菌(L. maculans)PG3菌株に耐性があるアブラナ植物の変種は、真菌の適合または新しいアブラナ植物遺伝形質における耐性因子の希釈により効能を失っている。従って、かかる真菌に耐性がある植物に対する、ならびに真菌への植物耐性を改良する方法に対するニーズがある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ある特定のタンパク質の組合せが発現すると、根朽病菌(P. Lingam)及び/または菌核病菌(S. sclerotiorum)の感染に耐性がある植物を与えるという発見に基づく。特に、2以上のキチナーゼ、グルカナーゼ、オスモチン、及び病原性関連タンパク質1(PR1)などのタンパク質を発現すると、現存する自然耐性と比較して増強された耐性が得られる。タンパク質の発現を遺伝子操作することにより、タンパク質をある特定の位置(例えば、茎)に、ある特定の発生段階に、または適当な環境条件による刺激により発現させることができる。さらに、タンパク質の組合せを発現すると、多遺伝子耐性をもたらし、耐性の有効期間を延長させることができる。
【0007】
一態様においては、本発明は、少なくとも1つの核酸構築物を含んでなるトランスジェニック植物であって、対応する対照植物と比較して菌核病(Sclerotinia)に対して耐性がある前記トランスジェニック植物を特徴とする。その植物は、アブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)、ブラシカ・オレラサエ(Brassica oleracae)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)及びカブ(Brassica rapa)からなる群から選択される植物などのアブラナ科(Cruciferae)植物、またはヒマワリ(Helianthus annuus)であってもよい。
【0008】
核酸構築物は、a)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;b)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びc)オスモチンポリペプチドをコードする核酸分子と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む。核酸構築物はさらに、病原性関連-1(PR1)ポリペプチドをコードする核酸分子と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。PR1ポリペプチドは細胞内に発現してもよく、かつタバコ、パセリ、アブラナ(Brassica napus)、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis)由来であってもよい。キチナーゼポリペプチドは、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、シロイヌナズナ、または細菌由来であってもよく、かつ細胞内に発現してもよい。β-1,3-グルカナーゼポリペプチドは、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、コメ、キュウリ、またはトマト由来であってよく、かつ細胞内に発現してもよい。オスモチンポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、またはマメ由来であってもよい。
【0009】
トランスジェニック植物は3つの核酸構築物を含んでなり、それぞれの構築物がポリペプチドの1つをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有する前記核酸構築物を含有してもよい。キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、及びオスモチンポリペプチドはトランスジェニック植物の茎または葉に構成的に発現されてもよい。トランスジェニック植物は茎または葉における菌核病(Sclerotinia)に耐性がありうる。
【0010】
他の態様においては、本発明は、少なくとも1つの核酸構築物を含むトランスジェニックアブラナ属(Brassica)植物であって、対照植物と比較して根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある前記植物を特徴とする。核酸構築物は、a)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びb)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む。トランスジェニック植物の子葉及び/または茎は根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がありうる。トランスジェニック植物は根朽病菌(Phoma lingam)のPG2またはPG3菌株に耐性がありうる。
【0011】
本発明はまた、根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるアブラナ属(Brassica)植物系統を生産する方法を特徴とする。その方法は、a)根朽病菌(Phoma lingam)に感受性があるアブラナ属(例えば、アブラナ(B. napus)、カブ(B. rapa)、カラシナ(B. juncea)、B・ニグラ(B. nigra)、B・オレラサエ(B. oleracae)、またはB・カリナタ(B. carinata))の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、核酸構築物は、i)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びii)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;b)細胞から1以上の子孫植物を得ること;c)根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある少なくとも1つの子孫植物を同定すること;及びd)自家または他家受粉により少なくとも1つの子孫植物から根朽病菌(Phoma lingam)耐性があることを特徴とする植物系を生産することを含む。核酸構築物はさらにβ-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。核酸構築物はまた、PR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0012】
他の態様においては、本発明は、菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある植物系統を生産する方法を特徴とする。その方法は、a)菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性がある植物種の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、核酸構築物は、i)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びii)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びiii)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;b)細胞から1以上の子孫植物を得ること;c)菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある少なくとも1つの子孫植物を同定すること;及びd)自家または他家受粉により少なくとも1つの子孫植物から菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を有することを特徴とする植物系を生産することを含む。菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を有する植物種は、アブラナ属(Brassica)などのアブラナ科(Cruciferae)、ダイズ、ヒマワリ(Helianthus annuus)、またはトマトであってもよい。核酸構築物はさらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0013】
本発明はまた、a)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;b)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びc)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む核酸構築物も特徴とする。核酸構築物は、さらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。キチナーゼポリペプチドは、タバコ、マメ、キュウリ、またはトマト由来であってもよく、かつ細胞内で発現してもよい。β-1,3-グルカナーゼポリペプチドは、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、キュウリ、またはトマト由来であってもよく、かつ細胞内で発現してもよい。オスモチンポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、またはマメ由来であってもよい。調節エレメントはカリフラワーモザイクウイルス由来の促進された35Sプロモーターであってもよい。
【0014】
さらに他の態様においては、本発明は、a)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びb)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む核酸構築物を特徴とする。かかる核酸構築物はさらに、β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント及び/またはPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0015】
特に断らない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は、本発明に関わる技術分野の業者が通常理解するのと同じ意味を有する。適当な方法及び物質を以下に記載するが、本明細書に記載と類似のまたは同一の方法及び物質を利用して本発明を実施することができる。本明細書に記載した全ての開示、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が制御する。さらに、物質、方法、及び例は、説明のためであって限定的であることを意図するものではない。
【0016】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、真菌、特に菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)及び根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるトランスジェニック植物、ならびにかかる植物を作製する方法を特徴とする。本発明のトランスジェニック植物及び植物系統は、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチンもしくはオスモチン様(例えば、AP24)の2以上、及びPR1などの宿主防御に関わるタンパク質の組合せを発現する。キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチン、またはPR1に組み合わせて利用しうる他の宿主防御タンパク質は、ペルオキシダーゼ、リボソーム不活化タンパク質、プロテアーゼインヒビター、デフェンシン、チオニン、リボヌクレアーゼ、ポリガラクツロナーゼインヒビタータンパク質、脂質トランスファータンパク質、グリシンリッチタンパク質、及びエクステンシンまたはヒドロキシプロリンリッチタンパク質が挙げられる。
【0018】
キチナーゼは、多くの病原性真菌の壁構成成分であるキチンのN-アセチルグルコサミン残基間のβ-1,4結合を加水分解するエンドヒドロラーゼである。キチナーゼは一次構造に基づいて4クラスに分類される。クラスIキチナーゼは、長さがほぼ40個のアミノ酸であるシステインリッチドメインを含有する。クラスIIキチナーゼは、アミノ酸配列相同性に基づくとクラスIキチナーゼに類似しているが、システインリッチドメインを含有しない。クラスIとクラスIIキチナーゼは両方とも、単量体触媒ドメインを有する。クラスIIIキチナーゼは、クラスIまたはIIのキチナーゼと相同性がない。クラスIVキチナーゼは、クラスIキチナーゼと相同性を有しかつシステインリッチドメインを含有するが、クラスIキチナーゼより小さい。クラスIVキチナーゼとしては、サトウダイコン・キチナーゼ、塩基性アブラナ・キチナーゼChB4、及び酸性マメ・PR4キチナーゼが挙げられる。本発明で使用するのに適当なキチナーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、及び細菌からクローニングされている。タバコ・キチナーゼは特に有用である。典型的には、細胞内で発現したキチナーゼを利用して真菌耐性を与えるが、複数の実施形態においては、細胞外で発現したキチナーゼを利用してもよい。適当な細胞内タバコキチナーゼの核酸及びアミノ酸配列は、GenBank受託番号A16119にて提供される。他の適当なキチナーゼは、霊菌(Serratia marcescens)のchiAはGenBank受託番号AB015996に、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のキチナーゼはGenBank受託番号AB026636に、及びチョウセンアサガオ属ニコチニア・シルベストリス(Nicotinia sylvestris)のエンドキチナーゼはGenBank受託番号AJ301671に見出される。米国特許第5,993,808号も参照すること。
【0019】
β-1,3-グルカナーゼは、病原性真菌の他の壁構成成分であるグルカンの断片を分解するエンドヒドロラーゼのファミリーである。グルカナーゼはPR3ファミリーの一部であり、3つのクラスに分類される。クラスIグルカナーゼは、成熟段階にてほぼ33kDの分子量を有し、一般的に、空胞(vacuole)内に位置する。クラスII及びIIIグルカナーゼは一般的に、細胞外にあって、ほぼ34〜36kDの範囲の分子量を有する。適当なβ-1,3-グルカナーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、コメ、ゴムノキ(Hevea)(パラゴム)、及び細菌からクローニングされており、タバコβ-1,3-グルカナーゼが本発明に特に有用である。キチナーゼと同様に、典型的には細胞内に発現したβ-1,3-グルカナーゼを利用して真菌耐性を与えるが、複数の実施形態においては、細胞外に発現したグルカナーゼを利用することができる。タバコ由来の適当な細胞内β-1,3-グルカナーゼの核酸及びアミノ酸配列はGenBank受託番号A16121にて提供される。また、シロイヌナズナ(A. thaliana)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、及びコメ由来のグルカナーゼの核酸及びアミノ酸配列はそれぞれGenBank受託番号AB025632、AL353822、及びD76437を参照すること。米国特許第6,087,560号及び第6,066,491号も参照すること。
【0020】
PR5タンパク質は、タンパク質のオスモチンファミリーの一部であるタウマチン様タンパク質である。オスモチンは強い塩基性残基をもつ外表面を有する。オスモチンは、真菌の膜表面を透過化して、菌糸の先端を緊張状態に維持するpH勾配の改変及び圧力勾配の不安定化をもたらすと考えられる。その結果、細胞質内物質が漏洩して菌糸が破壊するか、または胞子の場合には、胞子が溶解する。適当なオスモチンもしくはオスモチン様ポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、及びマメからクローニングされている。AP24は、クラスIキチナーゼ及びグルカナーゼの様に空胞に通常保存される塩基性オスモチンであり、本発明に有用である。内因性AP24は典型的には、細胞内に発現されるが、複数の実施形態においては、細胞外AP24を利用することができる。タバコAP24が特に有用である。タバコ由来の適当な細胞内AP24の核酸及びアミノ酸配列は、GenBank受託番号X65701に提供されている。GenBank受託番号M29279、AL049500、及びD76437は、タバコ、シロイヌナズナ(A.thaliana)、及びチョウセンアサガオ属ニコチニア・シルベストリス(Nicotinia sylvestris)由来の他のオスモチンまたはオスモチン様タンパク質の核酸、及びアミノ酸配列を提供する。米国特許第6,087,161号も参照。
【0021】
内因性PR1タンパク質は、病原媒介体による感染中に、強く誘導される。PR1タンパク質はほぼ15〜17kDの分子量を有し、主に酸性である。PR1タンパク質は30個のアミノ酸の疎水性N末端配列を含有し、小胞体へ移行のシグナルペプチドに対応すると考えられる。適当なPR1タンパク質は、タバコ、シロイヌナズナ(Arabidopsis)及びパセリからクローニングされている。細胞内に発現される塩基性PR1タンパク質は本発明に特に有用である。この塩基性PR1タンパク質のヌクレオチド及びアミノ酸配列については、GenBank受託番号X14065を参照。また、シロイヌナズナ(A. thaliana)、パセリ及びアブラナ(B. napus)由来のPR1タンパク質の核酸及びアミノ酸配列はそれぞれ、GenBank受託番号AL031394、X12572、及びAI352904を参照。
【0022】
本発明のトランスジェニック植物におけるキチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチン(例えば、AP24)、及びPR1の組合せの発現は、菌核病(sclerotinia)及び/または根朽病(blackleg)耐性を与える。例えば、アブラナ属(Brassica)におけるAP24及びキチナーゼの発現は、外因性ポリペプチドを発現しない対照植物と比較して、根朽病(blackleg)耐性を増強する。キチナーゼ、グルカナーゼ、及びAP24の発現は、外因性ポリペプチドを発現しない対照植物と比較して菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を増強する。複数の実施形態においては、2以上のキチナーゼをAP24とともにまたはAP24及びグルカナーゼと組合せて発現させてもよい。例えば、オオムギ・クラスIIキチナーゼ及びタバコ・クラスIキチナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。2以上のグルカナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。例えば、クラスI及びクラスIIグルカナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。
【0023】
核酸構築物
本発明のトランスジェニック植物を生産するための適当な核酸構築物は、プロモーターなどの1以上の調節エレメントと機能しうる形で連結された宿主防御ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後改変に関わらず、酵素機能を保持するいずれであってもよいアミノ酸鎖を含む。例えば、全長でないキチナーゼポリペプチドは、もしそのキチナーゼポリペプチドがキチンのN-アセチルグルコサミン残基間のβ-1,4結合を加水分解する能力を保持すれば、本発明の範囲内にある。宿主防御ポリペプチドをコードするそれぞれの核酸はセンス方向で調節エレメントと機能しうる形で連結されている。標準の分子生物学技術を利用して核酸構築物を作製することができる。
【0024】
調節エレメントは典型的には自身で遺伝子産物をコードしない。その代わり、調節エレメントはコード配列の発現レベルに影響を与える。適当なプロモーターは構成的であっても誘導的であってもよく、組織特異的(例えば、根、種子、葉脈など)または発生段階特異的(例えば、アブラナ属(Brassica)発生段階1、2、3、4、または5)であってもよい。本明細書に使用される用語「構成的プロモーター」は、有意な組織または時間的特異性なしに核酸の発現を容易にするプロモーターを意味する。誘導プロモーターは、誘導されたときに核酸分子の発現が有意な組織または時間的特異性なしに比較的一定または均一であれば、「構成的プロモーター」であると考えてもよい。適当なプロモーターは公知である(例えば、Weisingら, Ann. Rev. Genetics 22:421-478 (1988))。以下は本発明で使用するのに適当なプロモーターの例である:脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子由来の調節配列(例えば、Brassica fad2Dまたはfad2F、WO 00/07430を参照);トウモロコシ由来のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター;様々な種由来のリブロース二リン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)小サブユニット遺伝子プロモーターなどの光誘導プロモーター、;主要クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター;カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の19Sまたは35Sプロモーター;タバコ由来のhsr203jプロモーター(Pontierら, Plant J. 5: 507-21 (1994))ならびに誘導性または構成的である合成または他の自然プロモーター。例えば、米国特許第6,087,560号を参照。
【0025】
複数の実施形態においては、調節エレメントは、プラスチド遺伝子発現のプロモーターである。かかるプロモーターの例は、限定されるものでないが、16SリボソームRNAオペロンプロモーター、光合成遺伝子rbcL及びpsbAのプロモーター、ならびにpsbDオペロンの光調節プロモーターが挙げられる。プラスチドの安定な形質転換に適当な構築物については、米国特許第5,877,402号を参照。
【0026】
他の実施形態においては、調節配列は種子特異的、すなわち、特定の遺伝子産物が発生中の種子に優先的に発現され、植物の残りの組織には低いレベルでしかまたは全く発現されない。種子特異的プロモーターの例は、限定されるものでないが、ナピン(napin)、ファゼオリン(phaseolin)、オレオシン(oleosin)、及びクルシフェリン(cruciferin)プロモーターが挙げられる。キチナーゼ、グルカナーゼ、オスモチン、もしくはPR1、または宿主防御に関わる他の遺伝子の適当な発現に適した調節配列のさらなる例が、当技術分野では知られている。
【0027】
さらなる調節エレメントが本発明の核酸構築物に利用しうるのであって、限定されるものでないが、ポリアデニル化配列、翻訳制御配列(例えば、リボソーム結合部位)、エンハンサー、イントロン、ターゲティング配列(すなわち、プラスチドなどの特定の小器官をターゲティングする)、マトリックス付着領域(MAR)などが挙げられる。MARは、cDNA分子の末端に加えてサイレンシング現象を低下しうる配列エレメントである。かかるさらなる調節エレメントは宿主防御ポリペプチドの発現に必要ではないが、転写に影響を与えることによる発現、mRNAの安定性または翻訳効率を増加することができる。かかるエレメントを所望により核酸構築物に含有させて、宿主細胞における宿主防御核酸の最適な発現を得てもよい。しかし、時々は、かかる追加のエレメントなしに十分な発現を得ることができる。
【0028】
β-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼ、PR1、及びAP24をコードする本発明に有用な核酸構築物の一例を図1に与えた。他の適当な核酸構築物は、核酸の5’〜3’配置が図1の構築物と異なってもよく、例えば、その配置は5’から3’方向にキチナーゼ、グルカナーゼ、PR1及びオスモチンであってもよい。複数の実施形態においては、第1核酸構築物が1つの宿主防御ポリペプチドをコードしかつ第2構築物が3つの宿主防御ポリペプチドをコードしてもよい。他の実施形態においては、それぞれが1つの宿主防御ポリペプチドをコードする複数の核酸構築物を作製する。それぞれの構築物を同じ形質転換において導入してもよいし、または別々に導入しかつ以下に記載の育種計画において逐次組み合わせてもよい。
【0029】
トランスジェニック植物の生産
本発明のトランスジェニック植物は、例えば、アブラナ属(Brassica)(低エルカ及び高エルカ酸ナタネの両方)などのアブラナ科(Cruciferae)植物を含む、いずれの作物種であってもよい。適当なアブラナ属(Brassica)は、アブラナ(B. napus)、カラシナ(B. juncea)、B・ニグラ(B. nigra)、B・カリナタ(B. carinata)、B・オレラサエ(B. oleracae)、及びカブ(B. rapa)が挙げられる。他の適当な種は、ダイズ、ヒマワリ(Helianthus annuus)、トウゴマ、ピーナッツ、トマト、及びアマが挙げられる。<2%エルカ酸及び30μmol未満のグルコシノレート(glucosinolate)を含有する低エルカ性ナタネはキャノーラ(canola)としても知られる。複数の作物種(例えば、ナタネ)においては、根朽病(blackleg)及び/または菌核病(sclerotinia)に耐性がある植物変種を利用してもよい。利用しうるキャノーラ変種の例は、限定されるものでないが、根朽病菌(P. lingam)のPG2菌株に耐性がある登録された北アメリカ・キャノーラ変種Quantum、46A65、及びQ2、ならびに根朽病菌(P. lingam)のPG3及びPG4菌株に耐性がある登録されたオーストラリア・キャノーラ変種Surpass400、Dunkeld、Ranger、Rainbow、及びOscarが挙げられる。かかる変種において、根朽病菌(P. lingam)の特定菌株またはサブ菌株(例えば、PG1、PG2、PG3、またはPG4に対する)に対する耐性を改良することができる。
【0030】
世界の異なる地域には病原性の程度が異なる根朽病菌(P. lingam)のサブ菌株が存在しうることは注意すべきであり、例えば、ヨーロッパ及びオーストラリアのPG3菌株は、他の地理学的地域の菌株と比較すると、病原性の程度が異なる。さらに、真菌病が最も通常に観察される植物組織は、異なる地理学的地域の間で変わりうる。これは、順に、トランスジーン発現を最大にすることが所望される真菌の攻撃部位を反映しうる。従って、異なる組織(例えば、茎対葉)にポリペプチドの発現をもたらすプロモーターが、特定の地域では特に有用である。
【0031】
本明細書に記載した植物を親として利用し植物系統を発生させてもよいし、またはそれ自身、ある植物系統のメンバー、すなわち、ある特定の形質について個体間に少ししかまたは全く遺伝的変異を示さない植物群の1つであってもよい。かかる系統は、数世代の自家受粉と自家受粉を受け入れうる種の選択により作製することができる。単一の親からの、組織または細胞培養技術を利用する栄養繁殖を使うこともできる。複数の実施形態においては、細胞質雄性無菌育種系(cytoplasmic male sterility breeding system)を利用して系統を発生することができる。さらなる植物系統を作製する育種技術が当技術分野では知られている。
【0032】
一般的に、本発明の植物は、宿主防御ポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性核酸を導入することにより取得することができる。本明細書に使用される用語「外因性」は植物中に導入される核酸を意味する。外因性核酸は、植物中に自然に存在し1以上のさらなるコピーを与えるために導入された核酸ならびに植物中に自然に存在しない核酸が挙げられる。典型的には、1以上の宿主防御ポリペプチドをコードする核酸を含有する核酸構築物を植物細胞中に導入する。トランスジェニック植物が生産する種子を育種するかさもなくば繁殖し、構築物についてホモ接合性の植物を得ることができる。葉、種子、または他の組織を分析して、所望の構築物の発現を有するホモ接合体を同定することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して、種子または他の組織が該核酸構築物を含有するかどうかを決定することができる。複数の実施形態においては、第1核酸構築物由来の1以上の宿主防御ポリペプチドを発現する植物を、第2核酸構築物由来の1以上の異なる宿主防御ポリペプチドを発現する第2の植物と交雑または交配して、所望の宿主防御ポリペプチドの組合わせを得ることができる。交雑から生産される種子を植えて得られる植物を自家受粉してもよい。葉、冠茎組織、種子、または他の組織をスクリーニングして、宿主防御ポリペプチドの所望の組合せを発現するこれらの子孫植物を同定することができる。
【0033】
トランスジェニック植物を育種計画に入れて、例えば、種子を増加し、新規構築物を他の系統もしくは種に移入し、または他の所望の形質のさらなる選択をすることができる。所望の形質はまた、二ゲノム性半数体(dihaploid)法を用いて固定して胚をスクリーニング及び選択してもよい。かかる技術を受け入れうる種については、単一トランスジェニック植物の栄養繁殖により、さらなるトランスジェニック植物を得ることができる。
【0034】
トランスジェニック植物の子孫は、かかる子孫が菌核病菌(S. sclerotiorum)及び/または根朽病菌(P. lingam)耐性を示すのであれば、本発明の範囲内に含まれる。本発明の植物の子孫は、例えば、F1、F2、F3、及びその後の世代植物で生成した種子、またはBC1、BC2、BC3、及びその後の世代植物で生成した種子が挙げられる。
【0035】
本発明に利用する形質転換技術は、限定されるものでないが、アグロバクテリウム(Agrobacterium)が媒介する形質転換、プロトプラストのポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、及び粒子銃形質転換が挙げられる。形質転換技術の説明例は、WO 99/43202及び米国特許第5,204,253号(粒子銃)、米国特許第5,451,513号(プラスチド形質転換)及び米国特許第5,188,958号(アグロバクテリウム(Agrobacterium))に記載されている。アグロバクテリウム(Agrobacterium)のTi及びRiプラスチドを利用する形質転換方法は典型的にはバイナリータイプのベクターを使用する。Walkerpeach, C.ら, in「植物分子生物学マニュアル(Plant Molecular Biology Manual)」, S. Gelvin及びR. Schilperoort編, Kluwer Dordrecht, C1:1-19 (1994)。もし細胞または組織培養を形質転換のレシピエント組織として使用すれば、植物は当業者が周知する技術により再生することができる。さらに、様々な植物種を、花粉管経路(pollen tube pathway)技術を用いて形質転換することができる。
【0036】
菌核病菌(S. sclerotiorum)及び/または根朽病菌(P. lingam)耐性が増強された植物は、植物組織のin vitro試験または圃場試験を含む既知の技術により同定することができる。菌核病菌(S. sclerotiorum)の耐性試験は、植物の剥離した葉または茎に菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸を接種することにより実施し、次いで感染が発生するのに十分な時間の後に得られるいずれかの壊死を評価してもよい(例えば、壊死の長さを測定する)ことができる。
【0037】
根朽病(blackleg)耐性は、例えば、子葉または実生を根朽病菌(P. lingam)(L・マキュランス(L. maculans)の不完全型)を用いて接種し、そして感染が発生する十分な時間の後に、壊死の長さまたは平均病気重篤度(MDS)を測定することにより評価することができる。MDSは5を最悪として、0〜5のスケールで測定することができる。感受性変種と高抵抗性変種を用いて対照値を得る。かかる接種と評価には、得られる植物が存在する地理的地域で流行しているサブ菌株を、用いることが望ましい。
【0038】
複数の実施形態においては、増強された真菌耐性を有する植物は、植物組織におけるタンパク質発現レベルのin vitro分析及び次いでin vitro耐性ならびに全植物の圃場耐性の評価により同定することができる。
【0039】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これは請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1 材料と方法
Radke((1992) Plant Cell Reports 11:499)のプロトコルを用いて、根朽病(blackleg)及び菌核病(sclerotinia)の両方に感受性があるアブラナ(B. napus)変種Westarを、プラスミドpMOG803を用いて形質転換した。このプラスミドは、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、AP24、及びPR1(全てタバコ由来)をコードする核酸を含有する。カリフラワーモザイクウイルス由来の増強された35Sプロモーターを、それぞれの遺伝子に対するプロモーターとして使用した。プラスミドはまた、カナマイシンによる選択のためのnptII遺伝子も含有する。pMOG803の模式図は、図1を参照。形質転換体からT0植物を再生し(150植物)、自家受粉してT1系統(2〜3系統/T0植物)を得た。150 T0植物のうち103植物をELISAによりキチナーゼ発現を試験した。246 T1系統からのT2子孫は、ELISAにより試験した103 T0植物のそれぞれを代表した。
【0041】
形質転換植物のモニタリング 種子を直接0.3Lポットに植え、これを次いで18℃にて生育室に置いた。2週後に植物を5Lポットに移植して温室に置き、ここで植物は人工光を補充した日光により毎日14時間受光した。温室に入れる時に遅分解性肥料を加えた。植物は最大1週当たり1回そして下からのみ給水し、真菌病のリスク及びアブラムシによる問題を制限した。必要な時は、病理学的試験に問題のないアブラムシに対する処置を行った。殺菌剤は使用しなかった。次世代を取得する目的で、真菌汚染のリスク、特に分裂子(Oidium)のリスクを最小限にするよう注意して、成熟植物の自家受粉を実施した。茎におけるキチナーゼ発現及び菌核病(Sclerotinia)耐性に基づいて18系統を選択した。これらの18系統のそれぞれは異なるT0植物から誘導した。
【0042】
分子の特性決定 pMOG803の存在を確認するために、150 T0植物についてPCRを実施した。18の選択した系統のそれぞれの8つのT3植物もPCRにより試験した。DNAを96ウエルプレート中で次の方法で抽出した。約1cm2の1片をそれぞれのウエルに置いて2日間にわたり凍結乾燥した。ガラスビーズ(直径4mmを2個及び直径2mmを2個)を凍結乾燥した葉に加え、次いでその葉をポリボトロン(Polyvotron)PV80を用いて約20分間粉砕した。溶解バッファー600μlを加えた後、プレートを95℃にて45分間インキュベートした。溶解バッファーは、100ml当たり、2.9g NaCl、1.2g Trisma塩基、及び1.9mg EDTAを含んだ。使用直前に、メタ重亜硫酸ナトリウム(72.2mg)を溶解バッファー19ml当たりに加えた。プレートを10,000rpmにて15分間、4℃にて遠心分離した。上清を回収し、10M酢酸アンモニウム25μl及びイソプロパノール200μlを加えることにより、DNAを沈降した。数回ゆっくりと反転した後に、プレートを再び10,000rpmにて10分間、4℃にて遠心分離した。上清を除去し、70%エタノール500μlをそれぞれのウエルに加え、次いで10,000rpmにて10分間、4℃にて遠心分離した。次いで上清を除去し、プレートを濃縮蒸発器内でほぼ15分間乾燥した。DNAをTE、pH 8.8(1L当たり、Tris 1.21g及びEDTA 0.38g)100μl中に再懸濁した。
【0043】
ロボット(Biomeck)を利用して96ウエルプレート中でPCR反応物を調製した。ロボットは1ウエル当たり20μlの反応混合物を入れて、次いでDNA溶液1μlを加えた。反応混合物は、20μlの最終容積に対して、nptII遺伝子を増幅するためのプライマー0.6μl、アブラナ植物マイクロサテライトプライマー0.4μl、dNTP 1.8μl、10X バッファー2μl、Taq 0.2μl、及び容積を20μlに合わせるための無菌水を含有した。プレートをサーモサイクラー(thermocycler)に入れて、30サイクルのPCRをアニーリング温度58℃として実施した。PCRの後、バッファーとしてのTAE及びバッファー100ml当たりエチジウムブロミド10μlを用いて、サンプルを0.8%アガロースゲルを通して電気泳動した。
【0044】
サザン( Southern ) 圃場に植えた50系統のT2植物(生育室で生育した)について、サザンブロットを実施した。それぞれの系統に対して、分析は、異なるT2植物から誘導した6サンプルの混合物について実施した。DNAを、上記のように植物材料の約2cm2を使って抽出し、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコールの混合物による抽出により精製し、そしてイソプロパノールと(NH4)2CO3を用いて沈降した。DNAをTE、pH 8.8の50μlに再懸濁し、分光蛍光光度計でアッセイした。
【0045】
サザンブロットのために、BamH1により消化するDNAを1ウエル当たり約15〜20μg入れた。この酵素はゲノムを等しくかつ頻繁にかつT-DNA内で切断する。制限酵素消化は、37℃で一夜、ゲノムDNA 15-20μg、50units/μlのBamH1 10μl、10X バッファー4μl、20mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)0.4μl、及び容積40μlまでの無菌水を用いて実施した。
【0046】
サザンプロトコルは、nptII遺伝子の配列の一部に対応するプローブを用いかつBoehringer Mannheimのプロトコルに従って、ジゴキシゲニン及びホスファターゼと結合した抗体を使って実施した。バンドの可視化は、可視化用試薬としてCDP Starを用いてオートラジオグラフィにより実施した。
【0047】
ELISA 2シリーズのELISA分析を実施した。第1ELISA分析は、T2世代について実施し、246 T1系統のそれぞれの若い6植物を試験し、1サンプル当たり1ウエルを用いた。第2ELISAシリーズは、選択した18系統のT3植物について実施した(図2参照)。2分析を1系統当たり4植物に対して実施し、1サンプル当たり2ウエルを用いた。T3植物について実施したELISAでは、内部シリーズを、異なる発現レベルをもつトランスジェニック系統を一緒にグループ化して使用した。
【0048】
非常に若い葉の先端から、組織の小片、約50mm2を除去し、氷上の試験管内に入れた。サンプルの第1シリーズについては、抽出バッファー約100μlを加え、組織を電気ペッスル(pestle)を用いて粉砕した。第2シリーズでは、組織を、電気装置により水平攪拌した金属ビーズ(直径4mmを2個及び2mmを2個)を用いてホモジナイズした。チューブを、10,000rpmで10分間、4℃にて遠心分離し、上清を採集し、タンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)法により測定した。
【0049】
ELISAは96ウエルプレートで実施した。測定するトランスジェニックタンパク質を認識できる抗体を含有する結合溶液約100μlを、それぞれのウエルに入れた。プレートを4℃の冷室に一夜維持し、次いで翌日、プレートをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて3回リンス洗浄した後、ブロッキング溶液200μlをウエルに入れて2時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄した後、タンパク質0.1ng/μlを含有するサンプルの希釈溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄し、ビオチン化した第1抗体を含有する溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄した後、ストレプトアビジン・ペルオキシダーゼを含有する溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄し、基質(ABTS、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)を含有する溶液100μlをウエルに入れ、15分間、室温にてインキュベートした。プレートを分光光度計において405nmにて読み取った。
【0050】
使用したバッファーの組成(1リットル当たり)は、次の通りであった:抽出バッファー、pH5.2:3M NaAc 15ml;結合バッファー、pH9.6:NaHCO3 6.22g、Na2CO3 2.75g、及びアジ化ナトリウム1ml;PBS、pH7.2:NaCl 8g、KCl 0.2g、及びNa2HPO4 1.44g;洗浄溶液:PBS 1リットル中にTween20 0.5ml;ブロッキング溶液:洗浄溶液250ml中にBSA 7.5g;基質溶液、pH4.2:0.1M Na2HPO4H2O 175mlを0.1M クエン酸溶液350mlに加え、次いでABTS 250mgをこの溶液100mlに加え、そして0.45μmフィルターにより無菌化。使用直前に30%過酸化水素3μlを基質溶液10mlに加えた。
【0051】
ウェスタンブロット タンパク質溶液の調製とそのアッセイはELISA分析に用いたのと同じプロトコルに従う。ウェスタンブロットについては、それぞれのサンプルを5% 2-β-メルカプトエタノール、10%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー、及び1%SDSを含有する、60mM Tris-塩基バッファー、pH6.8の20%(V/V)と混合した。タンパク質4μg当量のそれぞれのサンプルの希釈溶液ほぼ10μlを、2分間ボイルし、そして12.5%アクリルアミドゲル(アクリルアミド/ビスアクリルアミド:29/1)を通して電気泳動した。電気泳動は、80Vの電圧で44mAにて約2時間、20mM Tris-HCl pH8.8、150mMグリシン及び0.1% SDSを含有する泳動バッファーを用いて実施した。
【0052】
泳動後、ゲルを1時間、インモビロン(Immobilon)P膜(0.45μm、Milipore)上に20mM Tris-HCl、pH8.8、150mMグリシン、及び20%メタノールを含有するバッファーを用いて電気移送した。ゲルと予め純粋メタノールを含浸しておいた膜を2層のワットマン(Whatman)ペーパーの間に挟み、2枚の繊維質ナイロンパッド(例えば、Scotch-Brite(登録商標)パッド)の間で圧搾した。移送は30Vの電圧及び122mAで1時間実施した。次いで膜を37℃にて1時間、3%食品グレードゼラチンを含有するバッファーA(20mM Tris-HCl及び500mM NaCl、pH7.5)中で飽和し、そしてTween 20を0.05%含有するバッファーA中でそれぞれ5分間の洗浄を4回行った。1%スキムミルク及び所望のタンパク質に対する第1抗体(ウサギ抗体)を含有する洗浄バッファー中で一夜37℃にてインキュベートした後、膜を同じ溶液(抗体なしで)を用いて4回、それぞれ5分間洗浄した。次いで膜を、アルカリフォスフェートと結合した抗体(ヤギ抗ウサギ抗体)とともに同じバッファー中で2時間37℃にてインキュベートした。スキムミルク0.5%を含有するバッファーA中での第1洗浄の後、さらに100nMジエタノールアミンバッファー、pH9.8を用いて3回、それぞれ5分間洗浄を実施した。酵素反応物を、前記ジエタノールアミンバッファー中の0.005% BCIP(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-リン酸パラトルイジン)、0.01% NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)、及び1mM MgCl2との混合によって得た。反応は、蒸留水浴を用いて停止し、膜を光から保護して保存した。
【0053】
耐性の評価 4試験を利用して、トランスジェニック植物の耐性を評価した:菌核病(sclerotinia)耐性に対する2試験(茎の菌核病について50系統、及び葉の菌核病について18系統)、ならびに最良のキチナーゼ発現を有する及び最も菌核病(sclerotinia)耐性がある系統を用いる根朽病(blackleg)に対する2試験(系統213)。Westar及び/または系統205、ヌル対照を、根朽病(blackleg)及び菌核病(sclerotinia)耐性の感受性対照として用いた。根朽病菌(P. lingam)のPG3及びPG4菌株に耐性のある春蒔きアブラナ(B. napus)Dunkeld変種を、根朽病(blackleg)に対する耐性対照として用いた。
【0054】
菌核病( Sclerotinia ) 圃場における菌核病(sclerotinia)の試験はヨーロッパでCGB(Commission for Biomolecular Engineering)の同意を得て実施した。T2アブラナ植物を4月末、2ブロックからなる圃場にまいて、それぞれのブロックは50の無作為に分布した系統を含有した。それぞれのブロックにおいて、それぞれの系統の25植物を2列に配置した。接種は、開花の初期に実施した。植物の茎の土壌表面上約20cmの高さに孔を開け、菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸をその上に発生させたつま楊子(toothpick)をこの孔に入れた。感染した植物と壊死長さ(cm)を3週後に測定した。
【0055】
菌糸を含有するつま楊子は次のように作った。木製つま楊子45g(つま楊子ほぼ500本)、麦芽5g、及び水500mlを含有するエルレンマイヤーフラスコを、オートクレーブ処理しそして24時間後に再オートクレーブ処理した。30本のつま楊子を、麦芽寒天120mlを含有する円形ペトリ皿(直径14cm)の周辺部にそれぞれ配置し、ペトリ皿の中心に菌糸を接種した。真菌を4日間19℃にて培養した後、それぞれのつま楊子のほぼ2/3が真菌により覆われ、試験接種に使用する準備が整った。
【0056】
菌核病(sclerotinia)耐性をin vitro試験するには、長さ約10cmの十分に広がった若い葉を植物から除去して温室環境で育て、寒天(工業グレード寒天8g/l、75mlペトリ皿)を含有する正方形のペトリ皿(一辺12cm)中に置いた。菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸移植片(直径7mm)を葉の先端に置き、皿を空調した室内で19℃に保った。壊死長さ(cmにて)を5日後に測定した。菌糸移植片は、水を含有する寒天上で4日間、真菌を増殖し、次いでジャガイモデキストロース寒天(PDA)培地上で2日間サブ培養することにより調製した。試験は、選択した18系統のT3世代で実施した。18系統のそれぞれからの4植物を、それぞれの植物からの3枚の葉を用いて評価した。試験を実施するには2回の逐次播種が必要であった。
【0057】
根朽病( blackleg ) Williams試験(子葉に対するフォーマ試験(phoma test))をDunkeld変種、系統213、及びヌル対照について実施して、根朽病(blackleg)耐性を評価した。Williams及びDelwiche、1979 Cruciferae conference、164頁を参照。それぞれの系統の10アブラナ植物を含有する8フラットをこの試験に使用した。アブラナ植物を、温室土壌混合物を含有するフラットに播種し、試験を実施する準備が整うまで、25℃にて保持した。植物に給水及び施肥をした。播種後2週に、アブラナ植物を杭に縛った。若い葉を、接種の日まで計画的に除去し、播種後1ヶ月に接種した。小さい孔をそれぞれの子葉ローブに設けた後に接種し、粉胞子(500,000胞子/ml)の懸濁液をそれぞれの孔に入れた。フラットを覆いに入れて2日間置いた。壊死長さを2週後に測定した。
【0058】
粉胞子は、フォーマ(Phoma)PG3菌株から、この菌を近紫外光のもとでV8培地上で増殖し、粉胞子を無菌水に回収する(ピンク水滴)ことによって得た。混合物は不純物を除去するために濾過した。
【0059】
茎のフォーマ試験は、Dunkeld変種、系統213、系統205(ヌル対照)、ならびにDunkeld x 213及びDunkeld x 対照の交雑種の子孫について実施した。それぞれの系統の約30植物を無作為に温室内に配置し、3枚葉段階に接種した。土壌から約5cmにて茎に3mm孔を設け、粉胞子懸濁液10μl(4日間10mMグルコースをプレ含浸した粉胞子の500,000 粉胞子/mlの懸濁液)を孔内に入れた。湿度を保持するために接種部位を覆った。接種直後及びその2日後に霧吹きして湿度を増加した。ほぼ45日後に、壊死長さを測定した。
【0060】
統計解析 全ての統計解析は、STATITCFソフトウエアによるANOVAにより実施した。統計検定はNewman-Keuls検定を用いた。サンプル平均値の差はp<0.05のレベルで有意と考えた。
【0061】
実施例2 系統の選択と病理学的評価
タバコ キチナーゼの発現を246 T1系統のT2子孫の葉で試験した(FIG 2)。発現はELISAにより決定し、1系統当たり6植物について実施した。キチナーゼ発現は可変であり、可溶タンパク質の全量と比較してタンパク質の0〜0.18%の範囲にあった。ヌル対照、系統205(偽(mock)形質転換されていたWestar)は、菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染中でもELISAによりキチナーゼ発現を示さなかった。感染中のこの対照において発現がないことは、タバコ抗体による内因性アブラナ植物キチナーゼの認識が低いことを示唆しえた。
【0062】
菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性をさらに評価するために、50の独立系統を選択した。これらの50系統は広範囲のキチナーゼ発現レベルを有した。
【0063】
それぞれの系統の子孫を分析するために、数コピーを有する系統の事象におけるコピー数及び挿入部位数を決定した。この情報を利用して、それぞれの系統に予想される分離(segregation)のタイプを解釈した。例えば、1つの挿入をもつ系統においては、形質転換植物の3/4と非形質転換植物の1/4との分離が予想された。カナマイシンによる選択、またはELISAもしくはPCRによるスクリーニングを用いて後者を排除した。
【0064】
nptII遺伝子の一部分に対応するプローブを用いてサザンブロットを実施した。結果は、T1系統(76%)の大部分が単一コピーをもつことを示し、T0植物に観察された結果より大きかった(表1)。
【表1】
【0065】
選択の第2ステップにおいては、茎の菌核病菌(S. sclerotiorum)試験を用いて菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性系統を同定した。この試験を50系統のそれぞれに対して20植物の2回反復で実施した。感染について2つの測定(感染植物のパーセント及びその壊死長さ)を行った。
【0066】
感染植物のパーセントはトランスジェニック系統間で可変であり、感染のパーセントは0〜100%の範囲にあった。最良の系統のパーセントは約20%で、ヌル対照の65%と対比された。このように茎の耐性はトランスジェニック植物において改良された。壊死長さは、0〜40cmの範囲にあり、感染植物のパーセントと相関があった(R2=0.8)。最良の系統では、真菌増殖は、ヌル対照と比較して約20%だけ遅かった。
【0067】
試験した50系統のうち、菌核病(sclerotinia)耐性(感染葉、ほぼ0〜40%)、葉のキチナーゼ発現のレベル(系統213との相対値、ほぼ65〜113)または両方に基づいて、18系統を選んだ。18系統のうちの少数は高レベルのキチナーゼ発現または菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性の増加を示さなかった。T3植物についてさらなる研究を実施した。
【0068】
脱離した葉の菌核病(sclerotinia)試験を実施して、真菌が冒す最初の器官の1つである葉の耐性を評価した。選択した18系統(T3世代)のそれぞれからの3植物を、それぞれの植物からの単一葉を用いてこの試験により評価した。この試験は3回反復した。この試験を実施するために、2回の逐次播種が必要であった。試験は、接種後第5日に、菌糸移植片から真菌移動境界に到る葉の主脈(midrib)沿いの壊死長さを測定することによりスコアを付けた。結果は、4〜6cmの範囲の壊死長さ変動を示し、最良系統と系統205(ヌル対照)との間の有意差を実証した。系統213は4.2 ± 0.7cmの壊死長さを有し、系統205の6.0 ± 0.4と対比された。これらの系統についていえば、真菌の増殖速度は約30%だけ減少し、平均壊死長さが4.2cmであるDunkeld変異体と同等の耐性となった。茎に菌核病(sclerotinia)耐性がある12系統のうちの9系統は、葉にも耐性があった。相関はR2=0.5であった。茎に耐性を示すが葉に耐性を示さなかった系統138は、相関から排除した。
【0069】
総括すると、4つの宿主防御タンパク質をもつ遺伝子構築物は、選択した系統の葉及び茎に、有意な菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を与える。
【0070】
実施例3 根朽病( blackleg )耐性に対するフォーマ試験
子葉の定性的フォーマ試験を、最良のキチナーゼ発現レベルの1つ及び最良の菌核病(sclerotinia)耐性の1つを有した系統213について、PG3フォーマ(Phoma)菌株を用いて実施した。実験は4子葉 X 10植物 X 8フラットについて行った。系統213はヌル対照(系統205)と比較して、根朽病(blackleg)に統計的に有意な耐性を有し、系統213の壊死組織は13mmであり系統205のそれの11.8mmと対比された。その真菌増殖は系統205と比較して約9%遅かった。
【0071】
茎のフォーマ試験も系統213(系統213及び対照の30植物)に実施した。壊死長さ(接種後6週に測定した)は、系統213が10.2 ± 2.6cm、系統205が10.3 ± 3.6cm、そして耐性変異体Dunkeldが3.4 ± 1.0cmであった。系統213と系統205の間で、茎のフォーマ(phoma)菌耐性に有意差は観察されなかった。選択を最初、茎におけるキチナーゼ発現と菌核病(sclerotinia)耐性について実施したので、茎のフォーマ(phoma)菌に対して系統213より高い耐性を有する系統が選択されなかった可能性がある。
【0072】
系統をフォーマ(Phoma)のPG2菌株耐性について直接選択した結果は、実施例9及び10を参照。
【0073】
実施例4 アブラナ植物におけるトランスジェニックタンパク質の発現
発現研究を、上に選択した18系統のT3世代で実施した。葉または茎組織における4つのトランスジーンの発現をELISAにより、1系統当たり4植物の2つの独立した試験を用いて1植物当たり2反復で試験した。表3はトランスジーンの発現レベルを示す。全ての発現値はその値を100とした系統213との相対値である。
【0074】
キチナーゼ 異なる系統間のT3世代の葉におけるキチナーゼ発現レベルは広い範囲にわたる。さらに複数の系統においては、T3世代の発現レベルはT2世代に観察されたレベルと異なった。T3世代のキチナーゼ発現は最大で全可溶タンパク質の0.05%であったが、T2世代では最大で0.18%であった。
【0075】
世代間の発現の差を評価する目的で、系統213と187についてELISAを実施した。可能な偏差を除去するために、それぞれの系統のT2、T3、及びT4世代のサンプルを同じプレート上においた。それぞれの事例に対して6植物を分析し、1サンプル当たり2ウエルを用いた。結果(表2)は、T2世代後にキチナーゼの発現レベルが低下するが、T3とT4世代はそれぞれ同じ発現レベルであることを示した。
【0076】
茎におけるキチナーゼの発現は葉上で得たそれと酷似した(可溶タンパク質の最大値約0.06%)。
【表2】
【0077】
グルカナーゼ 葉グルカナーゼ発現レベルは、T3世代におけるキチナーゼ発現レベルと類似した。全可溶タンパク質の量に対する相対的なグルカナーゼのパーセントは、キチナーゼのそれとほとんど同一であり、グルカナーゼは最大で全可溶タンパク質の約0.04%であった。茎におけるグルカナーゼの発現レベルは、葉で得たそれと類似し、タバコ グルカナーゼは最大で全可溶タンパク質の約0.05%であった。
【0078】
PR1 及び AP24 PR1発現も全系統間で広範囲の発現レベルを示したが、発現レベルはグルカナーゼまたはキチナーゼより低かった。PR1は最大で全可溶タンパク質の0.02%であった。AP24も広範囲の発現レベルが観察されたが、発現の絶対レベルは他の3つのトランスジーンより高かった。AP24は最大で全可溶タンパク質の0.13であり、T2世代のキチナーゼの値に近かった。
【表3】
【0079】
試験した18系統の葉におけるグルカナーゼとキチナーゼの発現の間には相関が見られ(図3)、該トランスジーンは前記形質転換事象から同様に調節されたことを示した。全18系統に対してR2=0.6;系統158及び87を排除するとR2=0.7であった。グルカナーゼとキチナーゼ発現の間に明らかな相関があるので、これらの2タンパク質の発現値を一緒にグループ化して、系統213に対して相対的なグルカナーゼ-キチナーゼ平均の形で、グルカナーゼとキチナーゼの発現に対するそれぞれの系統の固有値の正確度を増強した。系統158及び87は、キチナーゼの発現なしに高いグルカナーゼを発現した(系統158はchi=72及びglu=0;系統87はchi=49及びglu=0)。
【0080】
明らかな相関はまた、茎におけるグルカナーゼとキチナーゼの発現の間にも観察された。系統98、117、158及び220を排除するとR2=0.9で、茎におけるグルカナーゼとキチナーゼトランスジーンの調節は葉のそれと類似することを示す。
【0081】
この結果は、茎及び葉の菌核病(sclerotinia)耐性は様々なトランスジーンの組合せの発現によって獲得できることを示す。
【0082】
実施例5 菌核病( Sclerotinia )に感染した葉におけるキチナーゼとグルカナーゼ発現
キチナーゼとグルカナーゼの発現レベルを、感染葉について測定し、トランスジーンが感染中に別々に調節されるのかを決定しかつ内因性キチナーゼとグルカナーゼが感染中に発現されるのかを決定した。本研究は、in vitroで菌核病(sclerotinia)試験を行った脱離葉を用いてELISAにより実施した。それぞれの系統からの2植物を評価し、4つの別々のELISA反応及び1サンプル当たり2ウエルを用いた。
【0083】
感染中のグルカナーゼとキチナーゼレベルは無感染葉で観察したレベルと同一であった。試験した系統はまた、お互いに対して相対的に同じ表現を示した。無感染葉のグルカナーゼ-キチナーゼ発現と感染葉のグルカナーゼ-キチナーゼ発現との間で観察された相関はR2=0.8(Table 3)であった。
【0084】
実施例6 ホモ接合体に対する相対的なヘミ接合体の発現の比較
ヘミ接合体をそれぞれのホモ接合体と比較する目的で、3つの交雑:213xWestar、218xWestar、及び187xWestarを実施した。キチナーゼ発現は、ELISAにより測定し、218xWestar及び187xWestar交雑用にはそれぞれの交雑から1分析当たり3つのF1植物、ならびに213xWestar交雑からそれぞれの分析に8つのF1植物を用いた。各サンプルは2つの異なるウエルで分析した。F1子孫の分析は、キチナーゼトランスジーンが優性で作用しすることを示した。
【0085】
トランスジーンの発現に対する遺伝的背景の影響を研究するために、系統213を耐性Dunkeld変種とまたはWestar(感受性変種)と交雑し、F1 子孫の発現プロフィールをELISA分析によって比較した。実験は1分析当たり8つの植物及び1サンプル当たり2つのウエルを用いて実施した。結果を系統213と比較した相対値で示した(表4)。
【表4】
【0086】
213xDunkeld交雑の子孫におけるキチナーゼの発現は、213xWestar交雑の子孫に対するより有意に大きかった(chi=152対94)。213xDunkeld交雑の子孫はまた、213xWestar交雑の子孫より有意に高いグルカナーゼを発現した(glu=502対164)。これらの結果は、遺伝形質がこれらのトランスジーンの発現を改変しうることを示唆する。
【0087】
トランスジェニック子孫における発現を評価するために、3つの交雑:213x218、213x187、及び218x187を実施した。それぞれの形質転換事象に対して、F1子孫はヘミ接合性であった。キチナーゼ発現をELISAにより、1分析当たり6植物について分析した。結果(表5)はF1子孫の発現レベルがそれぞれの親の発現レベルの和に対応しないことを示す。従って、結果は、かかる子孫は単一形質転換事象のそれに近いレベルの発現を維持し、親発現の若干の影響を受けることを示す。Newman Keuls検定によると213x187と218x187の子孫の間には、p<0.01のレベルで有意な相関がある。
【表5】
【0088】
実施例7 子葉におけるキチナーゼ発現
上記のように、系統213を子葉のフォーマ(phoma)PG3菌株に対する耐性を試験し、若干の耐性を有することを見出した。そこで、植物のこの器官におけるキチナーゼの発現レベルを測定した。キチナーゼ発現は1分析当たり6つの植物及び1サンプル当たり2つのウエルについてELISAにより分析した。系統213について、タバコ キチナーゼは子葉で191の値に達し、葉の100と対比された。
【0089】
実施例8 アブラナ植物の菌核病( Sclerotinia )及びフォーマ( phoma )菌に対する自然耐性に与える、トランスジーン発現の影響
ウェスタンブロットを、葉の3つの独立した菌核病(sclerotinia)試験中に、系統213、187及び224、ヌル対照(系統205)、ならびに耐性Dunkeld変種に対して実施した。研究は、葉の先端から葉柄へ進む感染の前線から得た組織のバンド(3mm巾)について実施した。試験条件で処理した、従ってストレスを受けた、しかし菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染してない葉のサンプルも採集した。全植物から採集した葉のサンプルも対照として用いた。
【0090】
ストレスのない条件でのグルカナーゼ発現を試験するために、トランスジーン・グルカナーゼだけを観察した。ストレスはあるが感染のない条件下で、より高い分子量を有する新しいバンドが形質転換系統とヌル対照の両方に現れた。ほとんどの事例ではこのバンドは形質転換系統の方がより濃密であった。
【0091】
菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染後、最初の2つと比較して移動が中間にある新しいバンドが現れた。感染後第2日(D+2)に、形質転換系統とヌル対照のこのバンドは同じ強度であったが、感染後第5日(D+5)に、トランスジェニック系統のこのバンドの強度は様々に変化した。それぞれをヌル対照と比較すると、系統213はより低い強度のバンドを示し、系統187はより高い強度のバンドを有した。
【0092】
ヌル対照においては、感染のD+2段階で、ストレス中に観察されたアブラナ植物バンドは形質転換系統のそれと同じ強度に到達した。しかし、このバンドはD+5段階ではより弱くなって残った。
【0093】
キチナーゼ発現については、トランスジーン・キチナーゼの見かけ分子量を有するバンドだけがストレスの無い健康組織に現れた。ストレス条件下であるが、感染のない場合、ヌル系統にバンドは観察されなかった。脱離葉について3つの独立試験を実施した。2つの試験において2つの異なるプロフィールが観察され、2つの新しいバンドが現れたのに対して、第3の試験においては3つのバンドが見られ、そのうちの2つのバンドは他の独立した試験で観察された2つのバンドであり3つの試験において同じ強度を有した。
【0094】
これらの新しいタンパク質はトランスジェニック系統にのみ存在したので、これらはトランスジーンの存在と関係していた。新しいタンパク質は内因性キチナーゼまたはタバコ キチナーゼの分解産物でありうる。
【0095】
菌核病菌(S. sclerotiorum)による感染条件下で、全ての系統ならびにヌル対照は、先にストレスのある組織で記載したキチナーゼより大きい分子量をもつ、2つの新しいバンドを有する。これらは全ての系統において同じ強度である。トランスジェニック系統にのみ存在するこのキチナーゼは、従って、トランスジーンの存在と関係している。再び、ウェスタンブロットに観察された新しいバンドは内因性キチナーゼまたは分解産物を表わしうる。
【0096】
Dunkeld変種の特異的フォーマ(phoma)菌耐性に対するトランスジーンの発現の影響を研究するために、2つの交雑[Dunkeld x 213及びDunkeld x 系統205(ヌル対照)]を上記のとおり実施した。ELISA結果は、Dunkeld x 213 F1子孫におけるタバコ・キチナーゼとグルカナーゼの発現を立証した。フォーマ(phoma)菌耐性の評価を、PG3菌株による茎への試験を用いて実施した。子葉での予備試験は、Dunkeld変種がこの菌株に対応する耐性遺伝子を持つことを示した。
【0097】
結果(表6)は、系統205と系統213がPG3フォーマ(phoma)菌に対して同じ茎感受性を有することを示す。Dunkeld x系統205ハイブリッドはDunkeld耐性と系統205感受性の間の中間耐性を有し、その差は有意であることも注目しうる。Dunkeld x 213交雑から誘導されたF1 子孫とDunkeld x 205交雑から誘導されたF1 子孫の間に差は観察されなかった。
【表6】
【0098】
実施例9 根朽病( blackleg )耐性の選択
アブラナ(B. napus)変種Westarトランスジェニック系統を、実施例1に記載のとおり調製した。PCRを利用し、グルカナーゼ、PR1、及びnptIIに対するプライマーを用いて、完全な挿入を含有するT1系統を選択した。T1系統をT3世代まで増殖し、その時点で圃場及び研究室評価を開始した。圃場試験においては、T3〜T5トランスジェニック系統の増殖と発生は対照に対して正常であった。異常な形態学的形質は観察されず、種子サイズはチェックと類似した。
【0099】
トランスジェニック系統を根朽病(blackleg)または菌核病(sclerotinia)耐性の改良について評価した。典型的には、4つの独立した実験を、それぞれの実験に4植物、全16の実生を用いて実施した。Westar、耐性系統NS2186、及び中耐性系統NS2173を試験のチェックとして使用した。根朽病(blackleg)耐性については、生育室にて子葉段階でPG2フォーマ(Phoma)菌株を用いて接種試験を実施した。MDSは2枚の子葉について、5を最悪として0〜5のスケールで測定した。T3段階でPCRポジティブであった10のT4系統を試験した。結果を表7に示した。WestarはMDS4.95を有したのに対して、耐性変種Quantum及びNS2186はそれぞれ1.53及び1.45の平均スコアを有した。中耐性変種NS2173は1.98のMDSスコアを有した。中感受性変種Legend及びExcelはそれぞれ2.98及び3.15のMDSスコアを有した。T4系統の病気重篤度は2.8〜5.0の範囲にあった。3つのT4系統(97FM01132-01、97FM01532-01及び97FM00932-01)はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれ2.83、2.83、及び3.38のスコアであった(LSD0.05は0.66である)。
【表7】
【0100】
T4植物について根朽病(blackleg)耐性の圃場評価も実施した。MDSは成熟においてスコアをとった25植物に基づいて計算した。条件は、実生段階の人工接種によったが、病気発生にとって理想的ではなかった(平均発病率82%)。Westar、耐性系統NS2186、及び中耐性系統NS2173を試験のチェックに使用した。再び、病気重篤度を、5を最悪として0〜5のスケールで測定した。圃場評価(表8)において、Westarは2.6のMDSスコアを有し、平均発病率は79%であった。耐性系統NS2186は1.5のMDSスコアを有し、平均発病率76%であり、中耐性系統NS2173は1.8のMDSスコアを有し、平均発病率76%であった。4つのT4系統はWestarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示し、:系統97FM01617-01は1.7のスコアを有し、平均発病率80%であり、;系統97FM01625-01は1.4のスコアを有し、平均発病率76%であり、;系統97FM01723-01は1.7のスコアを有し、平均発病率68%であり、;そして系統97FM01728-01は1.4のスコアを有し、平均発病率72%であった。圃場においては、1回の反復で試験しただけでありかつ発病率が低かったので統計解析は行わなかった。
【表8】
【0101】
子葉試験または圃場試験でWestarを超える改良を示した系統を再び試験した。両方の試験において、変種Westar、Quantum、及びLegendをチェックとして用いた。子葉の接種試験は、候補が多数であるので、表9に示したように2つの無作為ブロックについて実施した。ブロックAでは、Westarは4.08のスコアを有し;Quantumは2.75のスコアを有し;そしてLegendは3.63のスコアを有した。再び、系統97FM01625-03、系統97FM01625-08、系統97FMO1913-02、及び系統97FM01728-07はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれは2.88、3.00、2.13、及び3.08のスコアを有し、Westarの4.08と対比された。ブロックBでは、Westarは4.30のMDSを有し;Quantumは2.33のMDSを有し;そしてLegendは3.78のMDSを有した。系統97FM00932-09及び97FM01625-03はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれ1.5及び3.08のMDSであり、Westarの4.30のMDSと対比された。
【表9】
【0102】
T5植物の圃場試験においては、Westar及びQuantumをチェックとして用いた。それぞれの試験エントリーに対して、50植物を、自然感染した植物の2回の反復の最小値から評価した。試験結果を表10に表示した。表10のそれぞれの系統ID番号はデータの2つの反復セットを表す。次に示した系統はWestarを超える病気耐性の改良を示した:系統97FM01913-02は3.36のMDSを有した;系統97FM00932-09は3.4のMDSを有し、1プロットは2.94のスコアを有した;系統97FM01617-01は3.82のスコアを有した;系統97FM01625-01は3.83のスコアを有した;系統97FM01625-03は3.55のスコアを有した;系統97FM01625-08は3.32のスコアを有した;そして系統97FM01728-01は3.63のスコアを有した。
【表10】
【0103】
実施例10 菌核病( Sclerotinia )耐性に対する圃場選択
菌核病(sclerotinia)耐性に対する圃場試験を上記のように、PCRポジティブであったT4系統(及び1つのT3系統)について実施した。結果を表11に示す。この表において、「5d」、「10d」及び「15d」は感染後日数を意味し、これらの列の数字はcmで表した病変サイズを意味する。「inct」は病害のスコアを付けるために用いた植物数を意味する。感受性変種Westarと耐性変種C022を試験のチェックに使用した。Westar(CK2)は、感染後5日に4.4cmの病変サイズを有し、感染後10日に12.0cmの病変サイズを有し、感染後15日に18.1cmの病変サイズを有した。耐性チェック022 (CK4)は感染後5日に3.1cmの病変サイズを有し、感染後10日に7.2cmの病変サイズを有し、感染後15日に11.4cmの病変サイズを有した。別の試験で、C022は感染後5日に2.1cmの病変サイズを有し、感染後10日に5.7cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.4cmの病変サイズを有した。
【0104】
7つの系統がWestarを超える実質的な改良を示した。系統97FM01625-02は感染後5日に2.3cmの病変サイズを有し、感染後10日に6.3cmの病変サイズを有し、感染後15日に10.9cmの病変サイズを有した。系統97FM01625-03は感染後5日に2.5cmの病変サイズを有し、感染後10日に7.5cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.9cmの病変サイズを有した。T3系統97FM01421-01は感染後5日に2.3cmの病変サイズを有し、感染後10日に5.9cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.8cmの病変サイズを有した。
【表11】
【0105】
実施例11 根朽病( blackleg )または菌核病( Sclerotinia )耐性に対して直接選択した系統の発現プロフィール
実施例9に記載の通り、系統を圃場試験条件下で根朽病(blackleg)耐性に対して選択した。4つのトランスジーンの葉における発現を、ELISAにより、T2世代から選択した系統の5つについて試験した(1系統当たり2植物かつ1サンプル当たり2ウエルによる4分析)。表12は系統213と相対的な葉における発現レベルを与える。複数の異なるトランスジーン発現の組合せを、フォーマ(phoma)菌耐性について選択した系統で観察した。4つのトランスジェニックPR(系統97FM01421-01)を強く発現する系統が子葉の試験において最もフォーマ(phoma)菌耐性があり、グルカナーゼ、キチナーゼ及び/またはPR1は子葉におけるフォーマ(phoma)菌耐性に重要な役割を果たしうることを示した。系統97FM01625は茎試験においてフォーマ(phoma)菌及び菌核病(sclerotinia)に対して最も耐性があり、キチナーゼとAP24が茎のフォーマ(phoma)菌及び菌核病(sclerotinia)に対する耐性に重要な役割を果たしうることを示した。
【表12】
【0106】
実施例12 T6 植物における菌核病( Sclerotinia )耐性
菌核病(sclerotinia)耐性に対する圃場試験を上記(実施例10)の通り、T6系統について実施した。試験結果を表13に示した。感受性キャノーラ変種Westar及び耐性変種5C21を試験のチェックに使用した。耐性変種5C21はC022から選択した(実施例10の耐性チェックを参照)。Westarは感染7日後に3.36cmの病変サイズを有しかつ感染12日後に7.26cmの病変サイズを有した。耐性チェック5C21は感染7日後に1.14cmの病変サイズを有しかつ感染12日後に2.27cmの病変サイズを有し、これはそれぞれWestarの7日後及び12日後の病変サイズの34.02%及び31.23%であった。
【表13】
【0107】
全ての系統は試験においてWestarより優れた菌核病(sclerotinia)に対する耐性を示した。系統を分類して、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの30%であると病気に耐性、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの30%〜50%であると病気に中耐性、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの50%〜75%であると病気に中感受性、そして系統の病変サイズがWestarの病変サイズの75%〜100%である病気に高感受性とした。
【0108】
次の系統:系統97FM01625-08、系統97FM01625-03、及び系統97FM01913-02は、Westarを超える実質的な菌核病(sclerotinia)耐性改良を示した。系統97FM01625-08の病変サイズは感染7日後に0.58cm(Westar病変サイズの17.37%)及び感染12日後に1.41cm(Westar病変サイズの19.48%)であった。この系統はまた、初期の試験においてWestarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示した。系統97FM01625-03は初期の試験において最も耐性のある系統の1つであった。これは一貫して菌核病(sclerotinia)に対する耐性があり、平均病変サイズは感染7日後に0.54cm(Westar病変サイズの15.98%)及び感染12日後に1.49cm(Westar病変サイズの20.49%)であった。系統97FM01913-02の病変サイズは感染7日後に1.01cm(Westar病変サイズの30.2%)及び感染12日後に1.60cm(Westar病変サイズの22.01%)であった。この系統はまた、Westarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示した。
【0109】
系統97FM00932-09、97FM01617-01、及び97FM01625-01はそれぞれ中耐性と分類され、病変サイズは感染後7及び12日の両方においてWestarの30-50%であった。これらの系統はまた、根朽病(blackleg)耐性も示した。
【0110】
系統97FM01913-02、97FM01728-01及び97FM01617-01はWesterを若干超えて改良された耐性を表し、病変サイズは感染後7及び12日の両方においてWestarの50-75%であった。
【0111】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と関連づけて記載したが、以上の記載は説明することを意図したものであり本発明の範囲を限定するものではなく、従って本発明の範囲は添付した請求項の範囲により規定されることは、理解されなければならない。他の態様、利点、及び改変は以下の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】pMOG803の模式図である。
【図2】トランスジェニック系統を同定するために用いる選択及びスクリーニングステップの模式図である。
【図3】葉におけるキチナーゼ発現とグルカナーゼ発現の間の相関(R2=0.6)のグラフである。キチナーゼとグルカナーゼの発現値は両方とも系統213に対する相対値である。
【0001】
本発明は、植物の真菌耐性に、及びさらに特に菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)及び/または根朽病菌(Phoma lingam)感染に対して耐性を有する植物に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌病は多数の栽培種の病害に関わる。病害量は毎年変わり、温度、降雨量、及び圃場に存在する種菌の量に依存する。複数の事例においては真菌病は圃場を完全に破壊することもあり、世界中の作物に20%の見積平均収量損失を与えうる。根朽病(blackleg disease)は、アブラナ(rape)植物の主要な真菌病の1つであり、典型的には、毎年数千万ドルの損失をもたらす。菌核病(Sclerotinia)もまた他の主要な真菌病であり、アブラナ属(Brassica)植物を含むアブラナ科(Cruciferae)植物、ならびにヒマワリなどのキク科(Compositae)植物及びエンドウマメなどの豆果を生じる植物を含む400種の他の植物種に関わり、著しい経済的損失をもたらしうる。
【0003】
根朽病(blackleg)は子嚢菌類(Ascomycetes)真菌により引き起こされ、その完全もしくは有性型がレプトスファエリア・マキュランス菌(Leptosphaeria maculans)でありかつその不完全もしくは無性型が根朽病菌(フォーマ・リンガム)(Phoma lingam)である。有性型は毎年、一次種菌を提供し、真菌の高い可変性の原因となる。L・マキュランス菌(L. maculans)は、実際は、確認されている2つの主要群、TOX+及びTOX°の種の複合体である。TOX+種は攻撃性であり、2つの毒素、シロデスミン及びホマライドを産生する。TOX+ 種内には複数の菌株または病原性グループ(PG)が存在する。ヨーロッパ、オーストラリア、及びカナダ東部においては現在、PG3及びPG4がフォーマ(Phoma)の優勢菌株であるのに対して、カナダ西部においては現在、PG2がフォーマ(Phoma)の優勢菌株である。欧州におけるアブラナ植物の被害は典型的には冠の攻撃に限定されるが、北米においては、冠及び茎の両方に壊死が起こりうる。
【0004】
白腐病(white rot)もしくは菌核病(sclerotinia disease)も、子嚢菌類(Ascomycetes)真菌である菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)によって起こる。菌核病菌(S. sclerotiorum)は真菌の有性型であり、毎年、一次種菌を提供する。
【0005】
真菌病害を制限する方法は、作物輪作または作物細片の埋没などの予防対策、殺菌剤使用、及び遺伝的改良が挙げられる。しかし予防対策は、真菌が土壌中で多年にわたり生存しうるので非常に効果的というものではない。殺菌剤は適当な時に適用すると効果的であるが、費用が収率の利得と比較してしばしば高い。さらに、菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性に対する植物の遺伝的改良は、様々な植物種には低い真菌耐性しか存在しないので限られたものである。単一の耐性遺伝子を含有しかつL・マキュランス菌(L. maculans)PG3菌株に耐性があるアブラナ植物の変種は、真菌の適合または新しいアブラナ植物遺伝形質における耐性因子の希釈により効能を失っている。従って、かかる真菌に耐性がある植物に対する、ならびに真菌への植物耐性を改良する方法に対するニーズがある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ある特定のタンパク質の組合せが発現すると、根朽病菌(P. Lingam)及び/または菌核病菌(S. sclerotiorum)の感染に耐性がある植物を与えるという発見に基づく。特に、2以上のキチナーゼ、グルカナーゼ、オスモチン、及び病原性関連タンパク質1(PR1)などのタンパク質を発現すると、現存する自然耐性と比較して増強された耐性が得られる。タンパク質の発現を遺伝子操作することにより、タンパク質をある特定の位置(例えば、茎)に、ある特定の発生段階に、または適当な環境条件による刺激により発現させることができる。さらに、タンパク質の組合せを発現すると、多遺伝子耐性をもたらし、耐性の有効期間を延長させることができる。
【0007】
一態様においては、本発明は、少なくとも1つの核酸構築物を含んでなるトランスジェニック植物であって、対応する対照植物と比較して菌核病(Sclerotinia)に対して耐性がある前記トランスジェニック植物を特徴とする。その植物は、アブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)、ブラシカ・オレラサエ(Brassica oleracae)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)及びカブ(Brassica rapa)からなる群から選択される植物などのアブラナ科(Cruciferae)植物、またはヒマワリ(Helianthus annuus)であってもよい。
【0008】
核酸構築物は、a)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;b)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びc)オスモチンポリペプチドをコードする核酸分子と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む。核酸構築物はさらに、病原性関連-1(PR1)ポリペプチドをコードする核酸分子と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。PR1ポリペプチドは細胞内に発現してもよく、かつタバコ、パセリ、アブラナ(Brassica napus)、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis)由来であってもよい。キチナーゼポリペプチドは、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、シロイヌナズナ、または細菌由来であってもよく、かつ細胞内に発現してもよい。β-1,3-グルカナーゼポリペプチドは、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、コメ、キュウリ、またはトマト由来であってよく、かつ細胞内に発現してもよい。オスモチンポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、またはマメ由来であってもよい。
【0009】
トランスジェニック植物は3つの核酸構築物を含んでなり、それぞれの構築物がポリペプチドの1つをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有する前記核酸構築物を含有してもよい。キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、及びオスモチンポリペプチドはトランスジェニック植物の茎または葉に構成的に発現されてもよい。トランスジェニック植物は茎または葉における菌核病(Sclerotinia)に耐性がありうる。
【0010】
他の態様においては、本発明は、少なくとも1つの核酸構築物を含むトランスジェニックアブラナ属(Brassica)植物であって、対照植物と比較して根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある前記植物を特徴とする。核酸構築物は、a)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びb)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む。トランスジェニック植物の子葉及び/または茎は根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がありうる。トランスジェニック植物は根朽病菌(Phoma lingam)のPG2またはPG3菌株に耐性がありうる。
【0011】
本発明はまた、根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるアブラナ属(Brassica)植物系統を生産する方法を特徴とする。その方法は、a)根朽病菌(Phoma lingam)に感受性があるアブラナ属(例えば、アブラナ(B. napus)、カブ(B. rapa)、カラシナ(B. juncea)、B・ニグラ(B. nigra)、B・オレラサエ(B. oleracae)、またはB・カリナタ(B. carinata))の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、核酸構築物は、i)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びii)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;b)細胞から1以上の子孫植物を得ること;c)根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある少なくとも1つの子孫植物を同定すること;及びd)自家または他家受粉により少なくとも1つの子孫植物から根朽病菌(Phoma lingam)耐性があることを特徴とする植物系を生産することを含む。核酸構築物はさらにβ-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。核酸構築物はまた、PR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0012】
他の態様においては、本発明は、菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある植物系統を生産する方法を特徴とする。その方法は、a)菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性がある植物種の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、核酸構築物は、i)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びii)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びiii)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;b)細胞から1以上の子孫植物を得ること;c)菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある少なくとも1つの子孫植物を同定すること;及びd)自家または他家受粉により少なくとも1つの子孫植物から菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を有することを特徴とする植物系を生産することを含む。菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を有する植物種は、アブラナ属(Brassica)などのアブラナ科(Cruciferae)、ダイズ、ヒマワリ(Helianthus annuus)、またはトマトであってもよい。核酸構築物はさらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0013】
本発明はまた、a)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;b)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びc)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む核酸構築物も特徴とする。核酸構築物は、さらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。キチナーゼポリペプチドは、タバコ、マメ、キュウリ、またはトマト由来であってもよく、かつ細胞内で発現してもよい。β-1,3-グルカナーゼポリペプチドは、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、キュウリ、またはトマト由来であってもよく、かつ細胞内で発現してもよい。オスモチンポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、またはマメ由来であってもよい。調節エレメントはカリフラワーモザイクウイルス由来の促進された35Sプロモーターであってもよい。
【0014】
さらに他の態様においては、本発明は、a)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びb)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含む核酸構築物を特徴とする。かかる核酸構築物はさらに、β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント及び/またはPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでもよい。
【0015】
特に断らない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は、本発明に関わる技術分野の業者が通常理解するのと同じ意味を有する。適当な方法及び物質を以下に記載するが、本明細書に記載と類似のまたは同一の方法及び物質を利用して本発明を実施することができる。本明細書に記載した全ての開示、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が制御する。さらに、物質、方法、及び例は、説明のためであって限定的であることを意図するものではない。
【0016】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、真菌、特に菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)及び根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるトランスジェニック植物、ならびにかかる植物を作製する方法を特徴とする。本発明のトランスジェニック植物及び植物系統は、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチンもしくはオスモチン様(例えば、AP24)の2以上、及びPR1などの宿主防御に関わるタンパク質の組合せを発現する。キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチン、またはPR1に組み合わせて利用しうる他の宿主防御タンパク質は、ペルオキシダーゼ、リボソーム不活化タンパク質、プロテアーゼインヒビター、デフェンシン、チオニン、リボヌクレアーゼ、ポリガラクツロナーゼインヒビタータンパク質、脂質トランスファータンパク質、グリシンリッチタンパク質、及びエクステンシンまたはヒドロキシプロリンリッチタンパク質が挙げられる。
【0018】
キチナーゼは、多くの病原性真菌の壁構成成分であるキチンのN-アセチルグルコサミン残基間のβ-1,4結合を加水分解するエンドヒドロラーゼである。キチナーゼは一次構造に基づいて4クラスに分類される。クラスIキチナーゼは、長さがほぼ40個のアミノ酸であるシステインリッチドメインを含有する。クラスIIキチナーゼは、アミノ酸配列相同性に基づくとクラスIキチナーゼに類似しているが、システインリッチドメインを含有しない。クラスIとクラスIIキチナーゼは両方とも、単量体触媒ドメインを有する。クラスIIIキチナーゼは、クラスIまたはIIのキチナーゼと相同性がない。クラスIVキチナーゼは、クラスIキチナーゼと相同性を有しかつシステインリッチドメインを含有するが、クラスIキチナーゼより小さい。クラスIVキチナーゼとしては、サトウダイコン・キチナーゼ、塩基性アブラナ・キチナーゼChB4、及び酸性マメ・PR4キチナーゼが挙げられる。本発明で使用するのに適当なキチナーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、及び細菌からクローニングされている。タバコ・キチナーゼは特に有用である。典型的には、細胞内で発現したキチナーゼを利用して真菌耐性を与えるが、複数の実施形態においては、細胞外で発現したキチナーゼを利用してもよい。適当な細胞内タバコキチナーゼの核酸及びアミノ酸配列は、GenBank受託番号A16119にて提供される。他の適当なキチナーゼは、霊菌(Serratia marcescens)のchiAはGenBank受託番号AB015996に、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のキチナーゼはGenBank受託番号AB026636に、及びチョウセンアサガオ属ニコチニア・シルベストリス(Nicotinia sylvestris)のエンドキチナーゼはGenBank受託番号AJ301671に見出される。米国特許第5,993,808号も参照すること。
【0019】
β-1,3-グルカナーゼは、病原性真菌の他の壁構成成分であるグルカンの断片を分解するエンドヒドロラーゼのファミリーである。グルカナーゼはPR3ファミリーの一部であり、3つのクラスに分類される。クラスIグルカナーゼは、成熟段階にてほぼ33kDの分子量を有し、一般的に、空胞(vacuole)内に位置する。クラスII及びIIIグルカナーゼは一般的に、細胞外にあって、ほぼ34〜36kDの範囲の分子量を有する。適当なβ-1,3-グルカナーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、エンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、キュウリ、トマト、コメ、ゴムノキ(Hevea)(パラゴム)、及び細菌からクローニングされており、タバコβ-1,3-グルカナーゼが本発明に特に有用である。キチナーゼと同様に、典型的には細胞内に発現したβ-1,3-グルカナーゼを利用して真菌耐性を与えるが、複数の実施形態においては、細胞外に発現したグルカナーゼを利用することができる。タバコ由来の適当な細胞内β-1,3-グルカナーゼの核酸及びアミノ酸配列はGenBank受託番号A16121にて提供される。また、シロイヌナズナ(A. thaliana)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、及びコメ由来のグルカナーゼの核酸及びアミノ酸配列はそれぞれGenBank受託番号AB025632、AL353822、及びD76437を参照すること。米国特許第6,087,560号及び第6,066,491号も参照すること。
【0020】
PR5タンパク質は、タンパク質のオスモチンファミリーの一部であるタウマチン様タンパク質である。オスモチンは強い塩基性残基をもつ外表面を有する。オスモチンは、真菌の膜表面を透過化して、菌糸の先端を緊張状態に維持するpH勾配の改変及び圧力勾配の不安定化をもたらすと考えられる。その結果、細胞質内物質が漏洩して菌糸が破壊するか、または胞子の場合には、胞子が溶解する。適当なオスモチンもしくはオスモチン様ポリペプチドは、タバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、及びマメからクローニングされている。AP24は、クラスIキチナーゼ及びグルカナーゼの様に空胞に通常保存される塩基性オスモチンであり、本発明に有用である。内因性AP24は典型的には、細胞内に発現されるが、複数の実施形態においては、細胞外AP24を利用することができる。タバコAP24が特に有用である。タバコ由来の適当な細胞内AP24の核酸及びアミノ酸配列は、GenBank受託番号X65701に提供されている。GenBank受託番号M29279、AL049500、及びD76437は、タバコ、シロイヌナズナ(A.thaliana)、及びチョウセンアサガオ属ニコチニア・シルベストリス(Nicotinia sylvestris)由来の他のオスモチンまたはオスモチン様タンパク質の核酸、及びアミノ酸配列を提供する。米国特許第6,087,161号も参照。
【0021】
内因性PR1タンパク質は、病原媒介体による感染中に、強く誘導される。PR1タンパク質はほぼ15〜17kDの分子量を有し、主に酸性である。PR1タンパク質は30個のアミノ酸の疎水性N末端配列を含有し、小胞体へ移行のシグナルペプチドに対応すると考えられる。適当なPR1タンパク質は、タバコ、シロイヌナズナ(Arabidopsis)及びパセリからクローニングされている。細胞内に発現される塩基性PR1タンパク質は本発明に特に有用である。この塩基性PR1タンパク質のヌクレオチド及びアミノ酸配列については、GenBank受託番号X14065を参照。また、シロイヌナズナ(A. thaliana)、パセリ及びアブラナ(B. napus)由来のPR1タンパク質の核酸及びアミノ酸配列はそれぞれ、GenBank受託番号AL031394、X12572、及びAI352904を参照。
【0022】
本発明のトランスジェニック植物におけるキチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、オスモチン(例えば、AP24)、及びPR1の組合せの発現は、菌核病(sclerotinia)及び/または根朽病(blackleg)耐性を与える。例えば、アブラナ属(Brassica)におけるAP24及びキチナーゼの発現は、外因性ポリペプチドを発現しない対照植物と比較して、根朽病(blackleg)耐性を増強する。キチナーゼ、グルカナーゼ、及びAP24の発現は、外因性ポリペプチドを発現しない対照植物と比較して菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を増強する。複数の実施形態においては、2以上のキチナーゼをAP24とともにまたはAP24及びグルカナーゼと組合せて発現させてもよい。例えば、オオムギ・クラスIIキチナーゼ及びタバコ・クラスIキチナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。2以上のグルカナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。例えば、クラスI及びクラスIIグルカナーゼを他の宿主防御ポリペプチドと組み合わせて発現させてもよい。
【0023】
核酸構築物
本発明のトランスジェニック植物を生産するための適当な核酸構築物は、プロモーターなどの1以上の調節エレメントと機能しうる形で連結された宿主防御ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後改変に関わらず、酵素機能を保持するいずれであってもよいアミノ酸鎖を含む。例えば、全長でないキチナーゼポリペプチドは、もしそのキチナーゼポリペプチドがキチンのN-アセチルグルコサミン残基間のβ-1,4結合を加水分解する能力を保持すれば、本発明の範囲内にある。宿主防御ポリペプチドをコードするそれぞれの核酸はセンス方向で調節エレメントと機能しうる形で連結されている。標準の分子生物学技術を利用して核酸構築物を作製することができる。
【0024】
調節エレメントは典型的には自身で遺伝子産物をコードしない。その代わり、調節エレメントはコード配列の発現レベルに影響を与える。適当なプロモーターは構成的であっても誘導的であってもよく、組織特異的(例えば、根、種子、葉脈など)または発生段階特異的(例えば、アブラナ属(Brassica)発生段階1、2、3、4、または5)であってもよい。本明細書に使用される用語「構成的プロモーター」は、有意な組織または時間的特異性なしに核酸の発現を容易にするプロモーターを意味する。誘導プロモーターは、誘導されたときに核酸分子の発現が有意な組織または時間的特異性なしに比較的一定または均一であれば、「構成的プロモーター」であると考えてもよい。適当なプロモーターは公知である(例えば、Weisingら, Ann. Rev. Genetics 22:421-478 (1988))。以下は本発明で使用するのに適当なプロモーターの例である:脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子由来の調節配列(例えば、Brassica fad2Dまたはfad2F、WO 00/07430を参照);トウモロコシ由来のアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター;様々な種由来のリブロース二リン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)小サブユニット遺伝子プロモーターなどの光誘導プロモーター、;主要クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター;カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の19Sまたは35Sプロモーター;タバコ由来のhsr203jプロモーター(Pontierら, Plant J. 5: 507-21 (1994))ならびに誘導性または構成的である合成または他の自然プロモーター。例えば、米国特許第6,087,560号を参照。
【0025】
複数の実施形態においては、調節エレメントは、プラスチド遺伝子発現のプロモーターである。かかるプロモーターの例は、限定されるものでないが、16SリボソームRNAオペロンプロモーター、光合成遺伝子rbcL及びpsbAのプロモーター、ならびにpsbDオペロンの光調節プロモーターが挙げられる。プラスチドの安定な形質転換に適当な構築物については、米国特許第5,877,402号を参照。
【0026】
他の実施形態においては、調節配列は種子特異的、すなわち、特定の遺伝子産物が発生中の種子に優先的に発現され、植物の残りの組織には低いレベルでしかまたは全く発現されない。種子特異的プロモーターの例は、限定されるものでないが、ナピン(napin)、ファゼオリン(phaseolin)、オレオシン(oleosin)、及びクルシフェリン(cruciferin)プロモーターが挙げられる。キチナーゼ、グルカナーゼ、オスモチン、もしくはPR1、または宿主防御に関わる他の遺伝子の適当な発現に適した調節配列のさらなる例が、当技術分野では知られている。
【0027】
さらなる調節エレメントが本発明の核酸構築物に利用しうるのであって、限定されるものでないが、ポリアデニル化配列、翻訳制御配列(例えば、リボソーム結合部位)、エンハンサー、イントロン、ターゲティング配列(すなわち、プラスチドなどの特定の小器官をターゲティングする)、マトリックス付着領域(MAR)などが挙げられる。MARは、cDNA分子の末端に加えてサイレンシング現象を低下しうる配列エレメントである。かかるさらなる調節エレメントは宿主防御ポリペプチドの発現に必要ではないが、転写に影響を与えることによる発現、mRNAの安定性または翻訳効率を増加することができる。かかるエレメントを所望により核酸構築物に含有させて、宿主細胞における宿主防御核酸の最適な発現を得てもよい。しかし、時々は、かかる追加のエレメントなしに十分な発現を得ることができる。
【0028】
β-1,3-グルカナーゼ、キチナーゼ、PR1、及びAP24をコードする本発明に有用な核酸構築物の一例を図1に与えた。他の適当な核酸構築物は、核酸の5’〜3’配置が図1の構築物と異なってもよく、例えば、その配置は5’から3’方向にキチナーゼ、グルカナーゼ、PR1及びオスモチンであってもよい。複数の実施形態においては、第1核酸構築物が1つの宿主防御ポリペプチドをコードしかつ第2構築物が3つの宿主防御ポリペプチドをコードしてもよい。他の実施形態においては、それぞれが1つの宿主防御ポリペプチドをコードする複数の核酸構築物を作製する。それぞれの構築物を同じ形質転換において導入してもよいし、または別々に導入しかつ以下に記載の育種計画において逐次組み合わせてもよい。
【0029】
トランスジェニック植物の生産
本発明のトランスジェニック植物は、例えば、アブラナ属(Brassica)(低エルカ及び高エルカ酸ナタネの両方)などのアブラナ科(Cruciferae)植物を含む、いずれの作物種であってもよい。適当なアブラナ属(Brassica)は、アブラナ(B. napus)、カラシナ(B. juncea)、B・ニグラ(B. nigra)、B・カリナタ(B. carinata)、B・オレラサエ(B. oleracae)、及びカブ(B. rapa)が挙げられる。他の適当な種は、ダイズ、ヒマワリ(Helianthus annuus)、トウゴマ、ピーナッツ、トマト、及びアマが挙げられる。<2%エルカ酸及び30μmol未満のグルコシノレート(glucosinolate)を含有する低エルカ性ナタネはキャノーラ(canola)としても知られる。複数の作物種(例えば、ナタネ)においては、根朽病(blackleg)及び/または菌核病(sclerotinia)に耐性がある植物変種を利用してもよい。利用しうるキャノーラ変種の例は、限定されるものでないが、根朽病菌(P. lingam)のPG2菌株に耐性がある登録された北アメリカ・キャノーラ変種Quantum、46A65、及びQ2、ならびに根朽病菌(P. lingam)のPG3及びPG4菌株に耐性がある登録されたオーストラリア・キャノーラ変種Surpass400、Dunkeld、Ranger、Rainbow、及びOscarが挙げられる。かかる変種において、根朽病菌(P. lingam)の特定菌株またはサブ菌株(例えば、PG1、PG2、PG3、またはPG4に対する)に対する耐性を改良することができる。
【0030】
世界の異なる地域には病原性の程度が異なる根朽病菌(P. lingam)のサブ菌株が存在しうることは注意すべきであり、例えば、ヨーロッパ及びオーストラリアのPG3菌株は、他の地理学的地域の菌株と比較すると、病原性の程度が異なる。さらに、真菌病が最も通常に観察される植物組織は、異なる地理学的地域の間で変わりうる。これは、順に、トランスジーン発現を最大にすることが所望される真菌の攻撃部位を反映しうる。従って、異なる組織(例えば、茎対葉)にポリペプチドの発現をもたらすプロモーターが、特定の地域では特に有用である。
【0031】
本明細書に記載した植物を親として利用し植物系統を発生させてもよいし、またはそれ自身、ある植物系統のメンバー、すなわち、ある特定の形質について個体間に少ししかまたは全く遺伝的変異を示さない植物群の1つであってもよい。かかる系統は、数世代の自家受粉と自家受粉を受け入れうる種の選択により作製することができる。単一の親からの、組織または細胞培養技術を利用する栄養繁殖を使うこともできる。複数の実施形態においては、細胞質雄性無菌育種系(cytoplasmic male sterility breeding system)を利用して系統を発生することができる。さらなる植物系統を作製する育種技術が当技術分野では知られている。
【0032】
一般的に、本発明の植物は、宿主防御ポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性核酸を導入することにより取得することができる。本明細書に使用される用語「外因性」は植物中に導入される核酸を意味する。外因性核酸は、植物中に自然に存在し1以上のさらなるコピーを与えるために導入された核酸ならびに植物中に自然に存在しない核酸が挙げられる。典型的には、1以上の宿主防御ポリペプチドをコードする核酸を含有する核酸構築物を植物細胞中に導入する。トランスジェニック植物が生産する種子を育種するかさもなくば繁殖し、構築物についてホモ接合性の植物を得ることができる。葉、種子、または他の組織を分析して、所望の構築物の発現を有するホモ接合体を同定することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して、種子または他の組織が該核酸構築物を含有するかどうかを決定することができる。複数の実施形態においては、第1核酸構築物由来の1以上の宿主防御ポリペプチドを発現する植物を、第2核酸構築物由来の1以上の異なる宿主防御ポリペプチドを発現する第2の植物と交雑または交配して、所望の宿主防御ポリペプチドの組合わせを得ることができる。交雑から生産される種子を植えて得られる植物を自家受粉してもよい。葉、冠茎組織、種子、または他の組織をスクリーニングして、宿主防御ポリペプチドの所望の組合せを発現するこれらの子孫植物を同定することができる。
【0033】
トランスジェニック植物を育種計画に入れて、例えば、種子を増加し、新規構築物を他の系統もしくは種に移入し、または他の所望の形質のさらなる選択をすることができる。所望の形質はまた、二ゲノム性半数体(dihaploid)法を用いて固定して胚をスクリーニング及び選択してもよい。かかる技術を受け入れうる種については、単一トランスジェニック植物の栄養繁殖により、さらなるトランスジェニック植物を得ることができる。
【0034】
トランスジェニック植物の子孫は、かかる子孫が菌核病菌(S. sclerotiorum)及び/または根朽病菌(P. lingam)耐性を示すのであれば、本発明の範囲内に含まれる。本発明の植物の子孫は、例えば、F1、F2、F3、及びその後の世代植物で生成した種子、またはBC1、BC2、BC3、及びその後の世代植物で生成した種子が挙げられる。
【0035】
本発明に利用する形質転換技術は、限定されるものでないが、アグロバクテリウム(Agrobacterium)が媒介する形質転換、プロトプラストのポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、及び粒子銃形質転換が挙げられる。形質転換技術の説明例は、WO 99/43202及び米国特許第5,204,253号(粒子銃)、米国特許第5,451,513号(プラスチド形質転換)及び米国特許第5,188,958号(アグロバクテリウム(Agrobacterium))に記載されている。アグロバクテリウム(Agrobacterium)のTi及びRiプラスチドを利用する形質転換方法は典型的にはバイナリータイプのベクターを使用する。Walkerpeach, C.ら, in「植物分子生物学マニュアル(Plant Molecular Biology Manual)」, S. Gelvin及びR. Schilperoort編, Kluwer Dordrecht, C1:1-19 (1994)。もし細胞または組織培養を形質転換のレシピエント組織として使用すれば、植物は当業者が周知する技術により再生することができる。さらに、様々な植物種を、花粉管経路(pollen tube pathway)技術を用いて形質転換することができる。
【0036】
菌核病菌(S. sclerotiorum)及び/または根朽病菌(P. lingam)耐性が増強された植物は、植物組織のin vitro試験または圃場試験を含む既知の技術により同定することができる。菌核病菌(S. sclerotiorum)の耐性試験は、植物の剥離した葉または茎に菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸を接種することにより実施し、次いで感染が発生するのに十分な時間の後に得られるいずれかの壊死を評価してもよい(例えば、壊死の長さを測定する)ことができる。
【0037】
根朽病(blackleg)耐性は、例えば、子葉または実生を根朽病菌(P. lingam)(L・マキュランス(L. maculans)の不完全型)を用いて接種し、そして感染が発生する十分な時間の後に、壊死の長さまたは平均病気重篤度(MDS)を測定することにより評価することができる。MDSは5を最悪として、0〜5のスケールで測定することができる。感受性変種と高抵抗性変種を用いて対照値を得る。かかる接種と評価には、得られる植物が存在する地理的地域で流行しているサブ菌株を、用いることが望ましい。
【0038】
複数の実施形態においては、増強された真菌耐性を有する植物は、植物組織におけるタンパク質発現レベルのin vitro分析及び次いでin vitro耐性ならびに全植物の圃場耐性の評価により同定することができる。
【0039】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これは請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0040】
実施例1 材料と方法
Radke((1992) Plant Cell Reports 11:499)のプロトコルを用いて、根朽病(blackleg)及び菌核病(sclerotinia)の両方に感受性があるアブラナ(B. napus)変種Westarを、プラスミドpMOG803を用いて形質転換した。このプラスミドは、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、AP24、及びPR1(全てタバコ由来)をコードする核酸を含有する。カリフラワーモザイクウイルス由来の増強された35Sプロモーターを、それぞれの遺伝子に対するプロモーターとして使用した。プラスミドはまた、カナマイシンによる選択のためのnptII遺伝子も含有する。pMOG803の模式図は、図1を参照。形質転換体からT0植物を再生し(150植物)、自家受粉してT1系統(2〜3系統/T0植物)を得た。150 T0植物のうち103植物をELISAによりキチナーゼ発現を試験した。246 T1系統からのT2子孫は、ELISAにより試験した103 T0植物のそれぞれを代表した。
【0041】
形質転換植物のモニタリング 種子を直接0.3Lポットに植え、これを次いで18℃にて生育室に置いた。2週後に植物を5Lポットに移植して温室に置き、ここで植物は人工光を補充した日光により毎日14時間受光した。温室に入れる時に遅分解性肥料を加えた。植物は最大1週当たり1回そして下からのみ給水し、真菌病のリスク及びアブラムシによる問題を制限した。必要な時は、病理学的試験に問題のないアブラムシに対する処置を行った。殺菌剤は使用しなかった。次世代を取得する目的で、真菌汚染のリスク、特に分裂子(Oidium)のリスクを最小限にするよう注意して、成熟植物の自家受粉を実施した。茎におけるキチナーゼ発現及び菌核病(Sclerotinia)耐性に基づいて18系統を選択した。これらの18系統のそれぞれは異なるT0植物から誘導した。
【0042】
分子の特性決定 pMOG803の存在を確認するために、150 T0植物についてPCRを実施した。18の選択した系統のそれぞれの8つのT3植物もPCRにより試験した。DNAを96ウエルプレート中で次の方法で抽出した。約1cm2の1片をそれぞれのウエルに置いて2日間にわたり凍結乾燥した。ガラスビーズ(直径4mmを2個及び直径2mmを2個)を凍結乾燥した葉に加え、次いでその葉をポリボトロン(Polyvotron)PV80を用いて約20分間粉砕した。溶解バッファー600μlを加えた後、プレートを95℃にて45分間インキュベートした。溶解バッファーは、100ml当たり、2.9g NaCl、1.2g Trisma塩基、及び1.9mg EDTAを含んだ。使用直前に、メタ重亜硫酸ナトリウム(72.2mg)を溶解バッファー19ml当たりに加えた。プレートを10,000rpmにて15分間、4℃にて遠心分離した。上清を回収し、10M酢酸アンモニウム25μl及びイソプロパノール200μlを加えることにより、DNAを沈降した。数回ゆっくりと反転した後に、プレートを再び10,000rpmにて10分間、4℃にて遠心分離した。上清を除去し、70%エタノール500μlをそれぞれのウエルに加え、次いで10,000rpmにて10分間、4℃にて遠心分離した。次いで上清を除去し、プレートを濃縮蒸発器内でほぼ15分間乾燥した。DNAをTE、pH 8.8(1L当たり、Tris 1.21g及びEDTA 0.38g)100μl中に再懸濁した。
【0043】
ロボット(Biomeck)を利用して96ウエルプレート中でPCR反応物を調製した。ロボットは1ウエル当たり20μlの反応混合物を入れて、次いでDNA溶液1μlを加えた。反応混合物は、20μlの最終容積に対して、nptII遺伝子を増幅するためのプライマー0.6μl、アブラナ植物マイクロサテライトプライマー0.4μl、dNTP 1.8μl、10X バッファー2μl、Taq 0.2μl、及び容積を20μlに合わせるための無菌水を含有した。プレートをサーモサイクラー(thermocycler)に入れて、30サイクルのPCRをアニーリング温度58℃として実施した。PCRの後、バッファーとしてのTAE及びバッファー100ml当たりエチジウムブロミド10μlを用いて、サンプルを0.8%アガロースゲルを通して電気泳動した。
【0044】
サザン( Southern ) 圃場に植えた50系統のT2植物(生育室で生育した)について、サザンブロットを実施した。それぞれの系統に対して、分析は、異なるT2植物から誘導した6サンプルの混合物について実施した。DNAを、上記のように植物材料の約2cm2を使って抽出し、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコールの混合物による抽出により精製し、そしてイソプロパノールと(NH4)2CO3を用いて沈降した。DNAをTE、pH 8.8の50μlに再懸濁し、分光蛍光光度計でアッセイした。
【0045】
サザンブロットのために、BamH1により消化するDNAを1ウエル当たり約15〜20μg入れた。この酵素はゲノムを等しくかつ頻繁にかつT-DNA内で切断する。制限酵素消化は、37℃で一夜、ゲノムDNA 15-20μg、50units/μlのBamH1 10μl、10X バッファー4μl、20mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)0.4μl、及び容積40μlまでの無菌水を用いて実施した。
【0046】
サザンプロトコルは、nptII遺伝子の配列の一部に対応するプローブを用いかつBoehringer Mannheimのプロトコルに従って、ジゴキシゲニン及びホスファターゼと結合した抗体を使って実施した。バンドの可視化は、可視化用試薬としてCDP Starを用いてオートラジオグラフィにより実施した。
【0047】
ELISA 2シリーズのELISA分析を実施した。第1ELISA分析は、T2世代について実施し、246 T1系統のそれぞれの若い6植物を試験し、1サンプル当たり1ウエルを用いた。第2ELISAシリーズは、選択した18系統のT3植物について実施した(図2参照)。2分析を1系統当たり4植物に対して実施し、1サンプル当たり2ウエルを用いた。T3植物について実施したELISAでは、内部シリーズを、異なる発現レベルをもつトランスジェニック系統を一緒にグループ化して使用した。
【0048】
非常に若い葉の先端から、組織の小片、約50mm2を除去し、氷上の試験管内に入れた。サンプルの第1シリーズについては、抽出バッファー約100μlを加え、組織を電気ペッスル(pestle)を用いて粉砕した。第2シリーズでは、組織を、電気装置により水平攪拌した金属ビーズ(直径4mmを2個及び2mmを2個)を用いてホモジナイズした。チューブを、10,000rpmで10分間、4℃にて遠心分離し、上清を採集し、タンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)法により測定した。
【0049】
ELISAは96ウエルプレートで実施した。測定するトランスジェニックタンパク質を認識できる抗体を含有する結合溶液約100μlを、それぞれのウエルに入れた。プレートを4℃の冷室に一夜維持し、次いで翌日、プレートをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて3回リンス洗浄した後、ブロッキング溶液200μlをウエルに入れて2時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄した後、タンパク質0.1ng/μlを含有するサンプルの希釈溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄し、ビオチン化した第1抗体を含有する溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄した後、ストレプトアビジン・ペルオキシダーゼを含有する溶液100μlをウエルに入れ、1時間、37℃にてインキュベートした。プレートをリンス洗浄し、基質(ABTS、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)を含有する溶液100μlをウエルに入れ、15分間、室温にてインキュベートした。プレートを分光光度計において405nmにて読み取った。
【0050】
使用したバッファーの組成(1リットル当たり)は、次の通りであった:抽出バッファー、pH5.2:3M NaAc 15ml;結合バッファー、pH9.6:NaHCO3 6.22g、Na2CO3 2.75g、及びアジ化ナトリウム1ml;PBS、pH7.2:NaCl 8g、KCl 0.2g、及びNa2HPO4 1.44g;洗浄溶液:PBS 1リットル中にTween20 0.5ml;ブロッキング溶液:洗浄溶液250ml中にBSA 7.5g;基質溶液、pH4.2:0.1M Na2HPO4H2O 175mlを0.1M クエン酸溶液350mlに加え、次いでABTS 250mgをこの溶液100mlに加え、そして0.45μmフィルターにより無菌化。使用直前に30%過酸化水素3μlを基質溶液10mlに加えた。
【0051】
ウェスタンブロット タンパク質溶液の調製とそのアッセイはELISA分析に用いたのと同じプロトコルに従う。ウェスタンブロットについては、それぞれのサンプルを5% 2-β-メルカプトエタノール、10%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー、及び1%SDSを含有する、60mM Tris-塩基バッファー、pH6.8の20%(V/V)と混合した。タンパク質4μg当量のそれぞれのサンプルの希釈溶液ほぼ10μlを、2分間ボイルし、そして12.5%アクリルアミドゲル(アクリルアミド/ビスアクリルアミド:29/1)を通して電気泳動した。電気泳動は、80Vの電圧で44mAにて約2時間、20mM Tris-HCl pH8.8、150mMグリシン及び0.1% SDSを含有する泳動バッファーを用いて実施した。
【0052】
泳動後、ゲルを1時間、インモビロン(Immobilon)P膜(0.45μm、Milipore)上に20mM Tris-HCl、pH8.8、150mMグリシン、及び20%メタノールを含有するバッファーを用いて電気移送した。ゲルと予め純粋メタノールを含浸しておいた膜を2層のワットマン(Whatman)ペーパーの間に挟み、2枚の繊維質ナイロンパッド(例えば、Scotch-Brite(登録商標)パッド)の間で圧搾した。移送は30Vの電圧及び122mAで1時間実施した。次いで膜を37℃にて1時間、3%食品グレードゼラチンを含有するバッファーA(20mM Tris-HCl及び500mM NaCl、pH7.5)中で飽和し、そしてTween 20を0.05%含有するバッファーA中でそれぞれ5分間の洗浄を4回行った。1%スキムミルク及び所望のタンパク質に対する第1抗体(ウサギ抗体)を含有する洗浄バッファー中で一夜37℃にてインキュベートした後、膜を同じ溶液(抗体なしで)を用いて4回、それぞれ5分間洗浄した。次いで膜を、アルカリフォスフェートと結合した抗体(ヤギ抗ウサギ抗体)とともに同じバッファー中で2時間37℃にてインキュベートした。スキムミルク0.5%を含有するバッファーA中での第1洗浄の後、さらに100nMジエタノールアミンバッファー、pH9.8を用いて3回、それぞれ5分間洗浄を実施した。酵素反応物を、前記ジエタノールアミンバッファー中の0.005% BCIP(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-リン酸パラトルイジン)、0.01% NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)、及び1mM MgCl2との混合によって得た。反応は、蒸留水浴を用いて停止し、膜を光から保護して保存した。
【0053】
耐性の評価 4試験を利用して、トランスジェニック植物の耐性を評価した:菌核病(sclerotinia)耐性に対する2試験(茎の菌核病について50系統、及び葉の菌核病について18系統)、ならびに最良のキチナーゼ発現を有する及び最も菌核病(sclerotinia)耐性がある系統を用いる根朽病(blackleg)に対する2試験(系統213)。Westar及び/または系統205、ヌル対照を、根朽病(blackleg)及び菌核病(sclerotinia)耐性の感受性対照として用いた。根朽病菌(P. lingam)のPG3及びPG4菌株に耐性のある春蒔きアブラナ(B. napus)Dunkeld変種を、根朽病(blackleg)に対する耐性対照として用いた。
【0054】
菌核病( Sclerotinia ) 圃場における菌核病(sclerotinia)の試験はヨーロッパでCGB(Commission for Biomolecular Engineering)の同意を得て実施した。T2アブラナ植物を4月末、2ブロックからなる圃場にまいて、それぞれのブロックは50の無作為に分布した系統を含有した。それぞれのブロックにおいて、それぞれの系統の25植物を2列に配置した。接種は、開花の初期に実施した。植物の茎の土壌表面上約20cmの高さに孔を開け、菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸をその上に発生させたつま楊子(toothpick)をこの孔に入れた。感染した植物と壊死長さ(cm)を3週後に測定した。
【0055】
菌糸を含有するつま楊子は次のように作った。木製つま楊子45g(つま楊子ほぼ500本)、麦芽5g、及び水500mlを含有するエルレンマイヤーフラスコを、オートクレーブ処理しそして24時間後に再オートクレーブ処理した。30本のつま楊子を、麦芽寒天120mlを含有する円形ペトリ皿(直径14cm)の周辺部にそれぞれ配置し、ペトリ皿の中心に菌糸を接種した。真菌を4日間19℃にて培養した後、それぞれのつま楊子のほぼ2/3が真菌により覆われ、試験接種に使用する準備が整った。
【0056】
菌核病(sclerotinia)耐性をin vitro試験するには、長さ約10cmの十分に広がった若い葉を植物から除去して温室環境で育て、寒天(工業グレード寒天8g/l、75mlペトリ皿)を含有する正方形のペトリ皿(一辺12cm)中に置いた。菌核病菌(S. sclerotiorum)菌糸移植片(直径7mm)を葉の先端に置き、皿を空調した室内で19℃に保った。壊死長さ(cmにて)を5日後に測定した。菌糸移植片は、水を含有する寒天上で4日間、真菌を増殖し、次いでジャガイモデキストロース寒天(PDA)培地上で2日間サブ培養することにより調製した。試験は、選択した18系統のT3世代で実施した。18系統のそれぞれからの4植物を、それぞれの植物からの3枚の葉を用いて評価した。試験を実施するには2回の逐次播種が必要であった。
【0057】
根朽病( blackleg ) Williams試験(子葉に対するフォーマ試験(phoma test))をDunkeld変種、系統213、及びヌル対照について実施して、根朽病(blackleg)耐性を評価した。Williams及びDelwiche、1979 Cruciferae conference、164頁を参照。それぞれの系統の10アブラナ植物を含有する8フラットをこの試験に使用した。アブラナ植物を、温室土壌混合物を含有するフラットに播種し、試験を実施する準備が整うまで、25℃にて保持した。植物に給水及び施肥をした。播種後2週に、アブラナ植物を杭に縛った。若い葉を、接種の日まで計画的に除去し、播種後1ヶ月に接種した。小さい孔をそれぞれの子葉ローブに設けた後に接種し、粉胞子(500,000胞子/ml)の懸濁液をそれぞれの孔に入れた。フラットを覆いに入れて2日間置いた。壊死長さを2週後に測定した。
【0058】
粉胞子は、フォーマ(Phoma)PG3菌株から、この菌を近紫外光のもとでV8培地上で増殖し、粉胞子を無菌水に回収する(ピンク水滴)ことによって得た。混合物は不純物を除去するために濾過した。
【0059】
茎のフォーマ試験は、Dunkeld変種、系統213、系統205(ヌル対照)、ならびにDunkeld x 213及びDunkeld x 対照の交雑種の子孫について実施した。それぞれの系統の約30植物を無作為に温室内に配置し、3枚葉段階に接種した。土壌から約5cmにて茎に3mm孔を設け、粉胞子懸濁液10μl(4日間10mMグルコースをプレ含浸した粉胞子の500,000 粉胞子/mlの懸濁液)を孔内に入れた。湿度を保持するために接種部位を覆った。接種直後及びその2日後に霧吹きして湿度を増加した。ほぼ45日後に、壊死長さを測定した。
【0060】
統計解析 全ての統計解析は、STATITCFソフトウエアによるANOVAにより実施した。統計検定はNewman-Keuls検定を用いた。サンプル平均値の差はp<0.05のレベルで有意と考えた。
【0061】
実施例2 系統の選択と病理学的評価
タバコ キチナーゼの発現を246 T1系統のT2子孫の葉で試験した(FIG 2)。発現はELISAにより決定し、1系統当たり6植物について実施した。キチナーゼ発現は可変であり、可溶タンパク質の全量と比較してタンパク質の0〜0.18%の範囲にあった。ヌル対照、系統205(偽(mock)形質転換されていたWestar)は、菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染中でもELISAによりキチナーゼ発現を示さなかった。感染中のこの対照において発現がないことは、タバコ抗体による内因性アブラナ植物キチナーゼの認識が低いことを示唆しえた。
【0062】
菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性をさらに評価するために、50の独立系統を選択した。これらの50系統は広範囲のキチナーゼ発現レベルを有した。
【0063】
それぞれの系統の子孫を分析するために、数コピーを有する系統の事象におけるコピー数及び挿入部位数を決定した。この情報を利用して、それぞれの系統に予想される分離(segregation)のタイプを解釈した。例えば、1つの挿入をもつ系統においては、形質転換植物の3/4と非形質転換植物の1/4との分離が予想された。カナマイシンによる選択、またはELISAもしくはPCRによるスクリーニングを用いて後者を排除した。
【0064】
nptII遺伝子の一部分に対応するプローブを用いてサザンブロットを実施した。結果は、T1系統(76%)の大部分が単一コピーをもつことを示し、T0植物に観察された結果より大きかった(表1)。
【表1】
【0065】
選択の第2ステップにおいては、茎の菌核病菌(S. sclerotiorum)試験を用いて菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性系統を同定した。この試験を50系統のそれぞれに対して20植物の2回反復で実施した。感染について2つの測定(感染植物のパーセント及びその壊死長さ)を行った。
【0066】
感染植物のパーセントはトランスジェニック系統間で可変であり、感染のパーセントは0〜100%の範囲にあった。最良の系統のパーセントは約20%で、ヌル対照の65%と対比された。このように茎の耐性はトランスジェニック植物において改良された。壊死長さは、0〜40cmの範囲にあり、感染植物のパーセントと相関があった(R2=0.8)。最良の系統では、真菌増殖は、ヌル対照と比較して約20%だけ遅かった。
【0067】
試験した50系統のうち、菌核病(sclerotinia)耐性(感染葉、ほぼ0〜40%)、葉のキチナーゼ発現のレベル(系統213との相対値、ほぼ65〜113)または両方に基づいて、18系統を選んだ。18系統のうちの少数は高レベルのキチナーゼ発現または菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性の増加を示さなかった。T3植物についてさらなる研究を実施した。
【0068】
脱離した葉の菌核病(sclerotinia)試験を実施して、真菌が冒す最初の器官の1つである葉の耐性を評価した。選択した18系統(T3世代)のそれぞれからの3植物を、それぞれの植物からの単一葉を用いてこの試験により評価した。この試験は3回反復した。この試験を実施するために、2回の逐次播種が必要であった。試験は、接種後第5日に、菌糸移植片から真菌移動境界に到る葉の主脈(midrib)沿いの壊死長さを測定することによりスコアを付けた。結果は、4〜6cmの範囲の壊死長さ変動を示し、最良系統と系統205(ヌル対照)との間の有意差を実証した。系統213は4.2 ± 0.7cmの壊死長さを有し、系統205の6.0 ± 0.4と対比された。これらの系統についていえば、真菌の増殖速度は約30%だけ減少し、平均壊死長さが4.2cmであるDunkeld変異体と同等の耐性となった。茎に菌核病(sclerotinia)耐性がある12系統のうちの9系統は、葉にも耐性があった。相関はR2=0.5であった。茎に耐性を示すが葉に耐性を示さなかった系統138は、相関から排除した。
【0069】
総括すると、4つの宿主防御タンパク質をもつ遺伝子構築物は、選択した系統の葉及び茎に、有意な菌核病菌(S. sclerotiorum)耐性を与える。
【0070】
実施例3 根朽病( blackleg )耐性に対するフォーマ試験
子葉の定性的フォーマ試験を、最良のキチナーゼ発現レベルの1つ及び最良の菌核病(sclerotinia)耐性の1つを有した系統213について、PG3フォーマ(Phoma)菌株を用いて実施した。実験は4子葉 X 10植物 X 8フラットについて行った。系統213はヌル対照(系統205)と比較して、根朽病(blackleg)に統計的に有意な耐性を有し、系統213の壊死組織は13mmであり系統205のそれの11.8mmと対比された。その真菌増殖は系統205と比較して約9%遅かった。
【0071】
茎のフォーマ試験も系統213(系統213及び対照の30植物)に実施した。壊死長さ(接種後6週に測定した)は、系統213が10.2 ± 2.6cm、系統205が10.3 ± 3.6cm、そして耐性変異体Dunkeldが3.4 ± 1.0cmであった。系統213と系統205の間で、茎のフォーマ(phoma)菌耐性に有意差は観察されなかった。選択を最初、茎におけるキチナーゼ発現と菌核病(sclerotinia)耐性について実施したので、茎のフォーマ(phoma)菌に対して系統213より高い耐性を有する系統が選択されなかった可能性がある。
【0072】
系統をフォーマ(Phoma)のPG2菌株耐性について直接選択した結果は、実施例9及び10を参照。
【0073】
実施例4 アブラナ植物におけるトランスジェニックタンパク質の発現
発現研究を、上に選択した18系統のT3世代で実施した。葉または茎組織における4つのトランスジーンの発現をELISAにより、1系統当たり4植物の2つの独立した試験を用いて1植物当たり2反復で試験した。表3はトランスジーンの発現レベルを示す。全ての発現値はその値を100とした系統213との相対値である。
【0074】
キチナーゼ 異なる系統間のT3世代の葉におけるキチナーゼ発現レベルは広い範囲にわたる。さらに複数の系統においては、T3世代の発現レベルはT2世代に観察されたレベルと異なった。T3世代のキチナーゼ発現は最大で全可溶タンパク質の0.05%であったが、T2世代では最大で0.18%であった。
【0075】
世代間の発現の差を評価する目的で、系統213と187についてELISAを実施した。可能な偏差を除去するために、それぞれの系統のT2、T3、及びT4世代のサンプルを同じプレート上においた。それぞれの事例に対して6植物を分析し、1サンプル当たり2ウエルを用いた。結果(表2)は、T2世代後にキチナーゼの発現レベルが低下するが、T3とT4世代はそれぞれ同じ発現レベルであることを示した。
【0076】
茎におけるキチナーゼの発現は葉上で得たそれと酷似した(可溶タンパク質の最大値約0.06%)。
【表2】
【0077】
グルカナーゼ 葉グルカナーゼ発現レベルは、T3世代におけるキチナーゼ発現レベルと類似した。全可溶タンパク質の量に対する相対的なグルカナーゼのパーセントは、キチナーゼのそれとほとんど同一であり、グルカナーゼは最大で全可溶タンパク質の約0.04%であった。茎におけるグルカナーゼの発現レベルは、葉で得たそれと類似し、タバコ グルカナーゼは最大で全可溶タンパク質の約0.05%であった。
【0078】
PR1 及び AP24 PR1発現も全系統間で広範囲の発現レベルを示したが、発現レベルはグルカナーゼまたはキチナーゼより低かった。PR1は最大で全可溶タンパク質の0.02%であった。AP24も広範囲の発現レベルが観察されたが、発現の絶対レベルは他の3つのトランスジーンより高かった。AP24は最大で全可溶タンパク質の0.13であり、T2世代のキチナーゼの値に近かった。
【表3】
【0079】
試験した18系統の葉におけるグルカナーゼとキチナーゼの発現の間には相関が見られ(図3)、該トランスジーンは前記形質転換事象から同様に調節されたことを示した。全18系統に対してR2=0.6;系統158及び87を排除するとR2=0.7であった。グルカナーゼとキチナーゼ発現の間に明らかな相関があるので、これらの2タンパク質の発現値を一緒にグループ化して、系統213に対して相対的なグルカナーゼ-キチナーゼ平均の形で、グルカナーゼとキチナーゼの発現に対するそれぞれの系統の固有値の正確度を増強した。系統158及び87は、キチナーゼの発現なしに高いグルカナーゼを発現した(系統158はchi=72及びglu=0;系統87はchi=49及びglu=0)。
【0080】
明らかな相関はまた、茎におけるグルカナーゼとキチナーゼの発現の間にも観察された。系統98、117、158及び220を排除するとR2=0.9で、茎におけるグルカナーゼとキチナーゼトランスジーンの調節は葉のそれと類似することを示す。
【0081】
この結果は、茎及び葉の菌核病(sclerotinia)耐性は様々なトランスジーンの組合せの発現によって獲得できることを示す。
【0082】
実施例5 菌核病( Sclerotinia )に感染した葉におけるキチナーゼとグルカナーゼ発現
キチナーゼとグルカナーゼの発現レベルを、感染葉について測定し、トランスジーンが感染中に別々に調節されるのかを決定しかつ内因性キチナーゼとグルカナーゼが感染中に発現されるのかを決定した。本研究は、in vitroで菌核病(sclerotinia)試験を行った脱離葉を用いてELISAにより実施した。それぞれの系統からの2植物を評価し、4つの別々のELISA反応及び1サンプル当たり2ウエルを用いた。
【0083】
感染中のグルカナーゼとキチナーゼレベルは無感染葉で観察したレベルと同一であった。試験した系統はまた、お互いに対して相対的に同じ表現を示した。無感染葉のグルカナーゼ-キチナーゼ発現と感染葉のグルカナーゼ-キチナーゼ発現との間で観察された相関はR2=0.8(Table 3)であった。
【0084】
実施例6 ホモ接合体に対する相対的なヘミ接合体の発現の比較
ヘミ接合体をそれぞれのホモ接合体と比較する目的で、3つの交雑:213xWestar、218xWestar、及び187xWestarを実施した。キチナーゼ発現は、ELISAにより測定し、218xWestar及び187xWestar交雑用にはそれぞれの交雑から1分析当たり3つのF1植物、ならびに213xWestar交雑からそれぞれの分析に8つのF1植物を用いた。各サンプルは2つの異なるウエルで分析した。F1子孫の分析は、キチナーゼトランスジーンが優性で作用しすることを示した。
【0085】
トランスジーンの発現に対する遺伝的背景の影響を研究するために、系統213を耐性Dunkeld変種とまたはWestar(感受性変種)と交雑し、F1 子孫の発現プロフィールをELISA分析によって比較した。実験は1分析当たり8つの植物及び1サンプル当たり2つのウエルを用いて実施した。結果を系統213と比較した相対値で示した(表4)。
【表4】
【0086】
213xDunkeld交雑の子孫におけるキチナーゼの発現は、213xWestar交雑の子孫に対するより有意に大きかった(chi=152対94)。213xDunkeld交雑の子孫はまた、213xWestar交雑の子孫より有意に高いグルカナーゼを発現した(glu=502対164)。これらの結果は、遺伝形質がこれらのトランスジーンの発現を改変しうることを示唆する。
【0087】
トランスジェニック子孫における発現を評価するために、3つの交雑:213x218、213x187、及び218x187を実施した。それぞれの形質転換事象に対して、F1子孫はヘミ接合性であった。キチナーゼ発現をELISAにより、1分析当たり6植物について分析した。結果(表5)はF1子孫の発現レベルがそれぞれの親の発現レベルの和に対応しないことを示す。従って、結果は、かかる子孫は単一形質転換事象のそれに近いレベルの発現を維持し、親発現の若干の影響を受けることを示す。Newman Keuls検定によると213x187と218x187の子孫の間には、p<0.01のレベルで有意な相関がある。
【表5】
【0088】
実施例7 子葉におけるキチナーゼ発現
上記のように、系統213を子葉のフォーマ(phoma)PG3菌株に対する耐性を試験し、若干の耐性を有することを見出した。そこで、植物のこの器官におけるキチナーゼの発現レベルを測定した。キチナーゼ発現は1分析当たり6つの植物及び1サンプル当たり2つのウエルについてELISAにより分析した。系統213について、タバコ キチナーゼは子葉で191の値に達し、葉の100と対比された。
【0089】
実施例8 アブラナ植物の菌核病( Sclerotinia )及びフォーマ( phoma )菌に対する自然耐性に与える、トランスジーン発現の影響
ウェスタンブロットを、葉の3つの独立した菌核病(sclerotinia)試験中に、系統213、187及び224、ヌル対照(系統205)、ならびに耐性Dunkeld変種に対して実施した。研究は、葉の先端から葉柄へ進む感染の前線から得た組織のバンド(3mm巾)について実施した。試験条件で処理した、従ってストレスを受けた、しかし菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染してない葉のサンプルも採集した。全植物から採集した葉のサンプルも対照として用いた。
【0090】
ストレスのない条件でのグルカナーゼ発現を試験するために、トランスジーン・グルカナーゼだけを観察した。ストレスはあるが感染のない条件下で、より高い分子量を有する新しいバンドが形質転換系統とヌル対照の両方に現れた。ほとんどの事例ではこのバンドは形質転換系統の方がより濃密であった。
【0091】
菌核病菌(S. sclerotiorum)に感染後、最初の2つと比較して移動が中間にある新しいバンドが現れた。感染後第2日(D+2)に、形質転換系統とヌル対照のこのバンドは同じ強度であったが、感染後第5日(D+5)に、トランスジェニック系統のこのバンドの強度は様々に変化した。それぞれをヌル対照と比較すると、系統213はより低い強度のバンドを示し、系統187はより高い強度のバンドを有した。
【0092】
ヌル対照においては、感染のD+2段階で、ストレス中に観察されたアブラナ植物バンドは形質転換系統のそれと同じ強度に到達した。しかし、このバンドはD+5段階ではより弱くなって残った。
【0093】
キチナーゼ発現については、トランスジーン・キチナーゼの見かけ分子量を有するバンドだけがストレスの無い健康組織に現れた。ストレス条件下であるが、感染のない場合、ヌル系統にバンドは観察されなかった。脱離葉について3つの独立試験を実施した。2つの試験において2つの異なるプロフィールが観察され、2つの新しいバンドが現れたのに対して、第3の試験においては3つのバンドが見られ、そのうちの2つのバンドは他の独立した試験で観察された2つのバンドであり3つの試験において同じ強度を有した。
【0094】
これらの新しいタンパク質はトランスジェニック系統にのみ存在したので、これらはトランスジーンの存在と関係していた。新しいタンパク質は内因性キチナーゼまたはタバコ キチナーゼの分解産物でありうる。
【0095】
菌核病菌(S. sclerotiorum)による感染条件下で、全ての系統ならびにヌル対照は、先にストレスのある組織で記載したキチナーゼより大きい分子量をもつ、2つの新しいバンドを有する。これらは全ての系統において同じ強度である。トランスジェニック系統にのみ存在するこのキチナーゼは、従って、トランスジーンの存在と関係している。再び、ウェスタンブロットに観察された新しいバンドは内因性キチナーゼまたは分解産物を表わしうる。
【0096】
Dunkeld変種の特異的フォーマ(phoma)菌耐性に対するトランスジーンの発現の影響を研究するために、2つの交雑[Dunkeld x 213及びDunkeld x 系統205(ヌル対照)]を上記のとおり実施した。ELISA結果は、Dunkeld x 213 F1子孫におけるタバコ・キチナーゼとグルカナーゼの発現を立証した。フォーマ(phoma)菌耐性の評価を、PG3菌株による茎への試験を用いて実施した。子葉での予備試験は、Dunkeld変種がこの菌株に対応する耐性遺伝子を持つことを示した。
【0097】
結果(表6)は、系統205と系統213がPG3フォーマ(phoma)菌に対して同じ茎感受性を有することを示す。Dunkeld x系統205ハイブリッドはDunkeld耐性と系統205感受性の間の中間耐性を有し、その差は有意であることも注目しうる。Dunkeld x 213交雑から誘導されたF1 子孫とDunkeld x 205交雑から誘導されたF1 子孫の間に差は観察されなかった。
【表6】
【0098】
実施例9 根朽病( blackleg )耐性の選択
アブラナ(B. napus)変種Westarトランスジェニック系統を、実施例1に記載のとおり調製した。PCRを利用し、グルカナーゼ、PR1、及びnptIIに対するプライマーを用いて、完全な挿入を含有するT1系統を選択した。T1系統をT3世代まで増殖し、その時点で圃場及び研究室評価を開始した。圃場試験においては、T3〜T5トランスジェニック系統の増殖と発生は対照に対して正常であった。異常な形態学的形質は観察されず、種子サイズはチェックと類似した。
【0099】
トランスジェニック系統を根朽病(blackleg)または菌核病(sclerotinia)耐性の改良について評価した。典型的には、4つの独立した実験を、それぞれの実験に4植物、全16の実生を用いて実施した。Westar、耐性系統NS2186、及び中耐性系統NS2173を試験のチェックとして使用した。根朽病(blackleg)耐性については、生育室にて子葉段階でPG2フォーマ(Phoma)菌株を用いて接種試験を実施した。MDSは2枚の子葉について、5を最悪として0〜5のスケールで測定した。T3段階でPCRポジティブであった10のT4系統を試験した。結果を表7に示した。WestarはMDS4.95を有したのに対して、耐性変種Quantum及びNS2186はそれぞれ1.53及び1.45の平均スコアを有した。中耐性変種NS2173は1.98のMDSスコアを有した。中感受性変種Legend及びExcelはそれぞれ2.98及び3.15のMDSスコアを有した。T4系統の病気重篤度は2.8〜5.0の範囲にあった。3つのT4系統(97FM01132-01、97FM01532-01及び97FM00932-01)はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれ2.83、2.83、及び3.38のスコアであった(LSD0.05は0.66である)。
【表7】
【0100】
T4植物について根朽病(blackleg)耐性の圃場評価も実施した。MDSは成熟においてスコアをとった25植物に基づいて計算した。条件は、実生段階の人工接種によったが、病気発生にとって理想的ではなかった(平均発病率82%)。Westar、耐性系統NS2186、及び中耐性系統NS2173を試験のチェックに使用した。再び、病気重篤度を、5を最悪として0〜5のスケールで測定した。圃場評価(表8)において、Westarは2.6のMDSスコアを有し、平均発病率は79%であった。耐性系統NS2186は1.5のMDSスコアを有し、平均発病率76%であり、中耐性系統NS2173は1.8のMDSスコアを有し、平均発病率76%であった。4つのT4系統はWestarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示し、:系統97FM01617-01は1.7のスコアを有し、平均発病率80%であり、;系統97FM01625-01は1.4のスコアを有し、平均発病率76%であり、;系統97FM01723-01は1.7のスコアを有し、平均発病率68%であり、;そして系統97FM01728-01は1.4のスコアを有し、平均発病率72%であった。圃場においては、1回の反復で試験しただけでありかつ発病率が低かったので統計解析は行わなかった。
【表8】
【0101】
子葉試験または圃場試験でWestarを超える改良を示した系統を再び試験した。両方の試験において、変種Westar、Quantum、及びLegendをチェックとして用いた。子葉の接種試験は、候補が多数であるので、表9に示したように2つの無作為ブロックについて実施した。ブロックAでは、Westarは4.08のスコアを有し;Quantumは2.75のスコアを有し;そしてLegendは3.63のスコアを有した。再び、系統97FM01625-03、系統97FM01625-08、系統97FMO1913-02、及び系統97FM01728-07はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれは2.88、3.00、2.13、及び3.08のスコアを有し、Westarの4.08と対比された。ブロックBでは、Westarは4.30のMDSを有し;Quantumは2.33のMDSを有し;そしてLegendは3.78のMDSを有した。系統97FM00932-09及び97FM01625-03はWestarを超える有意な改良を示し、それぞれ1.5及び3.08のMDSであり、Westarの4.30のMDSと対比された。
【表9】
【0102】
T5植物の圃場試験においては、Westar及びQuantumをチェックとして用いた。それぞれの試験エントリーに対して、50植物を、自然感染した植物の2回の反復の最小値から評価した。試験結果を表10に表示した。表10のそれぞれの系統ID番号はデータの2つの反復セットを表す。次に示した系統はWestarを超える病気耐性の改良を示した:系統97FM01913-02は3.36のMDSを有した;系統97FM00932-09は3.4のMDSを有し、1プロットは2.94のスコアを有した;系統97FM01617-01は3.82のスコアを有した;系統97FM01625-01は3.83のスコアを有した;系統97FM01625-03は3.55のスコアを有した;系統97FM01625-08は3.32のスコアを有した;そして系統97FM01728-01は3.63のスコアを有した。
【表10】
【0103】
実施例10 菌核病( Sclerotinia )耐性に対する圃場選択
菌核病(sclerotinia)耐性に対する圃場試験を上記のように、PCRポジティブであったT4系統(及び1つのT3系統)について実施した。結果を表11に示す。この表において、「5d」、「10d」及び「15d」は感染後日数を意味し、これらの列の数字はcmで表した病変サイズを意味する。「inct」は病害のスコアを付けるために用いた植物数を意味する。感受性変種Westarと耐性変種C022を試験のチェックに使用した。Westar(CK2)は、感染後5日に4.4cmの病変サイズを有し、感染後10日に12.0cmの病変サイズを有し、感染後15日に18.1cmの病変サイズを有した。耐性チェック022 (CK4)は感染後5日に3.1cmの病変サイズを有し、感染後10日に7.2cmの病変サイズを有し、感染後15日に11.4cmの病変サイズを有した。別の試験で、C022は感染後5日に2.1cmの病変サイズを有し、感染後10日に5.7cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.4cmの病変サイズを有した。
【0104】
7つの系統がWestarを超える実質的な改良を示した。系統97FM01625-02は感染後5日に2.3cmの病変サイズを有し、感染後10日に6.3cmの病変サイズを有し、感染後15日に10.9cmの病変サイズを有した。系統97FM01625-03は感染後5日に2.5cmの病変サイズを有し、感染後10日に7.5cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.9cmの病変サイズを有した。T3系統97FM01421-01は感染後5日に2.3cmの病変サイズを有し、感染後10日に5.9cmの病変サイズを有し、感染後15日に12.8cmの病変サイズを有した。
【表11】
【0105】
実施例11 根朽病( blackleg )または菌核病( Sclerotinia )耐性に対して直接選択した系統の発現プロフィール
実施例9に記載の通り、系統を圃場試験条件下で根朽病(blackleg)耐性に対して選択した。4つのトランスジーンの葉における発現を、ELISAにより、T2世代から選択した系統の5つについて試験した(1系統当たり2植物かつ1サンプル当たり2ウエルによる4分析)。表12は系統213と相対的な葉における発現レベルを与える。複数の異なるトランスジーン発現の組合せを、フォーマ(phoma)菌耐性について選択した系統で観察した。4つのトランスジェニックPR(系統97FM01421-01)を強く発現する系統が子葉の試験において最もフォーマ(phoma)菌耐性があり、グルカナーゼ、キチナーゼ及び/またはPR1は子葉におけるフォーマ(phoma)菌耐性に重要な役割を果たしうることを示した。系統97FM01625は茎試験においてフォーマ(phoma)菌及び菌核病(sclerotinia)に対して最も耐性があり、キチナーゼとAP24が茎のフォーマ(phoma)菌及び菌核病(sclerotinia)に対する耐性に重要な役割を果たしうることを示した。
【表12】
【0106】
実施例12 T6 植物における菌核病( Sclerotinia )耐性
菌核病(sclerotinia)耐性に対する圃場試験を上記(実施例10)の通り、T6系統について実施した。試験結果を表13に示した。感受性キャノーラ変種Westar及び耐性変種5C21を試験のチェックに使用した。耐性変種5C21はC022から選択した(実施例10の耐性チェックを参照)。Westarは感染7日後に3.36cmの病変サイズを有しかつ感染12日後に7.26cmの病変サイズを有した。耐性チェック5C21は感染7日後に1.14cmの病変サイズを有しかつ感染12日後に2.27cmの病変サイズを有し、これはそれぞれWestarの7日後及び12日後の病変サイズの34.02%及び31.23%であった。
【表13】
【0107】
全ての系統は試験においてWestarより優れた菌核病(sclerotinia)に対する耐性を示した。系統を分類して、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの30%であると病気に耐性、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの30%〜50%であると病気に中耐性、系統の病変サイズがWestarの病変サイズの50%〜75%であると病気に中感受性、そして系統の病変サイズがWestarの病変サイズの75%〜100%である病気に高感受性とした。
【0108】
次の系統:系統97FM01625-08、系統97FM01625-03、及び系統97FM01913-02は、Westarを超える実質的な菌核病(sclerotinia)耐性改良を示した。系統97FM01625-08の病変サイズは感染7日後に0.58cm(Westar病変サイズの17.37%)及び感染12日後に1.41cm(Westar病変サイズの19.48%)であった。この系統はまた、初期の試験においてWestarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示した。系統97FM01625-03は初期の試験において最も耐性のある系統の1つであった。これは一貫して菌核病(sclerotinia)に対する耐性があり、平均病変サイズは感染7日後に0.54cm(Westar病変サイズの15.98%)及び感染12日後に1.49cm(Westar病変サイズの20.49%)であった。系統97FM01913-02の病変サイズは感染7日後に1.01cm(Westar病変サイズの30.2%)及び感染12日後に1.60cm(Westar病変サイズの22.01%)であった。この系統はまた、Westarを超える根朽病(blackleg)耐性の改良を示した。
【0109】
系統97FM00932-09、97FM01617-01、及び97FM01625-01はそれぞれ中耐性と分類され、病変サイズは感染後7及び12日の両方においてWestarの30-50%であった。これらの系統はまた、根朽病(blackleg)耐性も示した。
【0110】
系統97FM01913-02、97FM01728-01及び97FM01617-01はWesterを若干超えて改良された耐性を表し、病変サイズは感染後7及び12日の両方においてWestarの50-75%であった。
【0111】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と関連づけて記載したが、以上の記載は説明することを意図したものであり本発明の範囲を限定するものではなく、従って本発明の範囲は添付した請求項の範囲により規定されることは、理解されなければならない。他の態様、利点、及び改変は以下の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】pMOG803の模式図である。
【図2】トランスジェニック系統を同定するために用いる選択及びスクリーニングステップの模式図である。
【図3】葉におけるキチナーゼ発現とグルカナーゼ発現の間の相関(R2=0.6)のグラフである。キチナーゼとグルカナーゼの発現値は両方とも系統213に対する相対値である。
Claims (36)
- 少なくとも1つの核酸構築物を含んでなるトランスジェニック植物であって、前記少なくとも1つの核酸構築物がa)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;b)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びc)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有し、対応する対照植物と比較して菌核病(Sclerotinia)に耐性を有する前記トランスジェニック植物。
- 前記植物がアブラナ科(Cruciferae)植物である、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記植物がアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(Brassica juncea)、ブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)、ブラシカ・オレラサエ(Brassica oleracae)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)及びカブ(Brassica rapa)からなる群から選択される、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記植物がヒマワリ(Helianthus annuus)である、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記少なくとも1つの核酸構築物がさらに病原性関連-1(PR1)ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなる、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記PR1ポリペプチドが細胞内に発現される、請求項5に記載のトランスジェニック植物。
- 前記PR1ポリペプチドがタバコ、パセリ、アブラナ(Brassica napus)、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である、請求項5に記載のトランスジェニック植物。
- 前記キチナーゼポリペプチドがタバコ、マメ、キュウリ、トマト、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、または細菌由来である、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記キチナーゼポリペプチドが細胞内に発現される、請求項8に記載のトランスジェニック植物。
- 前記β-1,3-グルカナーゼポリペプチドがエンドウマメ、ダイズ、タバコ、マメ、コメ、キュウリ、またはトマト由来である、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記β-1,3-グルカナーゼポリペプチドが細胞内に発現される、請求項10に記載のトランスジェニック植物。
- 前記オスモチンポリペプチドがタバコ、ダイズ、ニンジン、ワタ、ジャガイモ、またはマメ由来である、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 請求項1に記載のトランスジェニック植物であって、前記トランスジェニック植物が3つの核酸構築物を含んでなり、それぞれの前記構築物が前記ポリペプチドの個々の1つをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなる、前記トランスジェニック植物。
- 前記キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、及びオスモチンポリペプチドが前記トランスジェニック植物の茎に構成的に発現される、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、及びオスモチンポリペプチドが前記トランスジェニック植物の葉に構成的に発現される、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記トランスジェニック植物が茎の菌核病(Sclerotinia)に耐性がある、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- 前記トランスジェニック植物が葉の菌核病(Sclerotinia)に耐性がある、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
- トランスジェニックアブラナ属(Brassica)植物であって、少なくとも1つの核酸構築物を含んでなり、前記核酸構築物がa)AP24ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びb)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなり、対応する対照植物と比較して根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある前記植物。
- 前記トランスジェニック植物の子葉が根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
- 前記トランスジェニック植物の茎が根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
- 根朽病菌(Phoma lingam)のPG2菌株に耐性がある、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
- 根朽病菌(Phoma lingam)のPG3菌株に耐性がある、請求項18に記載のトランスジェニック植物。
- 根朽病菌(Phoma lingam)に耐性があるアブラナ属(Brassica)植物系統を生産する方法であって、
a)根朽病菌(Phoma lingam)に感受性があるアブラナ属(Brassica)の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、前記核酸構築物がi)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びii)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;
b)前記細胞から1以上の子孫植物を取得すること;
c)根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある前記子孫植物の少なくとも1つを同定すること;及び
d)前記少なくとも1つの子孫植物から自家または他家受粉により、前記根朽病菌(Phoma lingam)に耐性がある植物系を生産することを含んでなる前記方法。 - 前記Brassica種がアブラナ(Brassica napus)である、請求項23に記載の方法。
- 前記Brassica種がカブ(Brassica rapa)である、請求項23に記載の方法。
- 前記Brassica種がカラシナ(Brassica juncea)である、請求項23に記載の方法。
- 前記Brassica種がブラシカ・ニグラ(Brassica nigra)、ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata)、またはブラシカ・オレラサエ(Brassica oleracae)である、請求項23に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの核酸構築物がさらにβ-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなる、請求項23に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの核酸構築物がさらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなる、請求項28に記載の方法。
- 菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある植物系統を生産する方法であって、
a)菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性がある植物種の細胞中に少なくとも1つの核酸構築物を導入し、ここで、前記核酸構築物がi)キチナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;ii)β-1,3-グルカナーゼポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメント;及びiii)オスモチンポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含有すること;
b)前記細胞から1以上の子孫植物を取得すること;
c)菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある前記子孫植物の少なくとも1つを同定すること;及び
d)前記少なくとも1つの子孫植物から自家または他家受粉により、菌核病菌(S. sclerotiorum)に耐性がある前記植物系を生産することを含んでなる前記方法。 - 菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性ある前記植物種がアブラナ科(Cruciferae)植物である、請求項30に記載の方法。
- 前記アブラナ科(Cruciferae)植物がアブラナ属(Brassica)植物である、請求項31に記載の方法。
- 菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性ある前記植物種がダイズである、請求項30に記載の方法。
- 菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性ある前記植物種がヒマワリ(Helianthus annuus)である、請求項30に記載の方法。
- 菌核病菌(S. sclerotiorum)に感受性ある前記植物種がトマトである、請求項30に記載の方法。
- 前記核酸構築物がさらにPR1ポリペプチドをコードする核酸と機能しうる形で連結された調節エレメントを含んでなる、請求項30に記載の方法。
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