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JP2004339071A - 苦味を低減した口腔内崩壊錠剤 - Google Patents

苦味を低減した口腔内崩壊錠剤 Download PDF

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Abstract

【課題】苦味を有する薬物の口腔内崩壊錠剤において薬物の口腔内放出を抑制し、苦味を低減させる。
【解決手段】(a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び
(b)糖または糖アルコールを水に不溶であるが親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、
との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤に関する。
【0002】
【背景技術】
経口投与のための固形製剤の剤形としては錠剤やカプセル剤が一般的である。これらは投与後そのままの形で食道を通って消化管に達し、消化管内で崩壊して薬物を放出するように設計されている。しかしながら老齢者や小児にとってはその嚥下が困難な場合があり、そのような患者に適した剤形として口腔内崩壊錠剤がある。この剤形は水を同時に飲用しなくても口腔内で唾液により速やかに崩壊し、老齢者や小児でも容易に嚥下し得るようになっている。
【0003】
苦味を有する薬物の場合、口腔内で崩壊した錠剤から放出された薬物は口腔内の味覚神経を強く刺激し、普通の錠剤よりむしろ苦味を強く感じさせる。
【0004】
特開2002−338500は、苦味を有する薬物を含む層と、酸化チタン、タルク等の水難溶性物質の粒子を含む層よりなり、薬物層から薬物が放出される前に水難溶性物質が放出されるようにこれらの層が配置されている多層例えば三層の口腔内崩壊錠を記載する。この錠剤において薬物の苦味が低減される原理は、薬物より早い段階で放出された水難溶性物質が舌表面を覆い、後から放出された薬物の舌への接触、吸着、透過等を回避することによると説明されている。この場合、苦味低減の程度は舌の上に沈着した水不溶性物質の量に依存し、従って満足な効果を得るためには錠剤を大型化しなければならない。
【0005】
また、この公報には、苦味を有する薬物自体をフィルムでコーティングし、口腔内で放出する薬物量を極力抑制することが考えられるが、しかしながら口腔内放出薬物量を低く抑制することは同時に消化管内放出を低くし、バイオアベイラビリティの低下を招く問題点があるとしている。特表平6−502194に開示されている急速崩壊性多粒子状錠剤はこれに当る。
【0006】
そこで本発明は、口腔内での薬物の放出を最小化する一方で、消化管内での薬物の放出を低下させない苦味を低減した口腔内崩壊錠剤を提供する。
【0007】
【本発明の開示】
本発明によれば、
(a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び
(b)糖または糖アルコールを水に不溶である親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、
との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤が提供される。
【0008】
本錠剤は、口腔内で唾液と接触する時、顆粒(b)は口腔内で崩壊するが、顆粒(a)はそのままの形で消化管へ通過するからその中に含まれる薬物は口腔内で放出されない。消化管に到達した顆粒(a)は、通常の胃溶性顆粒または腸溶性顆粒と同様に消化管内において崩壊し、同様なバイオアベイラビリティーを発揮する。
【0009】
【好ましい実施態様】
苦味を呈する薬物は錠剤や顆粒に用いられる通常の賦形剤と混合される。その例は、デンプン、マンニトール、乳糖などである。苦味を呈する薬物の種類は問わない。また賦形剤と薬物の混合比は造粒が可能であり、かつ所定の薬物含量が達成可能である限り任意である。
【0010】
薬物含有顆粒(a)は、この混合物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆することによって調製される。使用されるポリマーは製剤分野で錠剤や顆粒を胃溶性もしくは腸溶性とするために使用されるポリマーである。多数のそのようなポリマーが知られているが、環境および人体に対して無害なエタノールまたは含水エタノールに溶解するポリマーが好ましい。具体例としては、胃溶性ポリマーとしてアミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットEおよびRS)、およびポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートがあり、腸溶性ポリマーとしてメタクリル酸コポリマー(商品名オイドラギットS)などがある。薬物の性質によって顆粒を胃溶性とすべきかそれとも腸溶性とすべきかを選択する。
【0011】
薬物と賦形剤の混合物は上記ポリマーの溶液を用いて造粒される。造粒方法は任意であるが、流動層造粒法が好ましい。この場合賦形剤と混合した薬物を粉末状で流動させ、それへ前記ポリマーの溶液を噴霧してコーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製する。薬物に対するフィルム形成性ポリマーの比は、重量で1:1ないし6:1の範囲内が適当である。フィルム形成性ポリマーの重量比をあまり大きくすると薬物のバイオアベイラビリティが低下するので好ましくない。
【0012】
(a)顆粒には賦形剤と薬物のほかに、酸化チタンのような顔料や、タルクやステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤を含ませることができる。この場合顆粒(a)全重量のポリマーの割合は10ないし50%であることが望ましい。
【0013】
薬物不含顆粒(b)は、錠剤を口腔内崩壊型とするために配合される。(b)顆粒の賦形剤は(a)顆粒と同じものでよいが、乳糖およびトレハロースのような糖類、およびマンニトールのような糖アルコールが好ましい。
【0014】
(b)顆粒は、糖または糖アルコールを水に不溶であるが親水性の造粒成分を用いて造粒することにより調製される。そのような造粒成分の例はデンプン、クロスポビドン、微粒子無水ケイ酸またはヒドロキシプロピルスターチなどである。これらは糖または糖アルコールの賦形成分とは独立して存在し、親水性のため唾液の水分が錠剤内部まで速やかに浸透するのを助け、錠剤全体の口腔内での自壊を助ける。
【0015】
顆粒(b)の造粒も流動層造粒法を使用して行うことができる。この場合は、流動状態にある糖または糖アルコール粒子へ水に懸濁したデンプン等の造粒成分を噴霧してコーティングし、乾燥する。
【0016】
調製した顆粒(a)と顆粒(b)は適当な比率で混合され、錠剤に打錠される。薬物含有顆粒と薬物不含顆粒の混合比は、重量で1:1ないし1:5の範囲内であることが適当である。この混合比は錠剤の口腔内崩壊速度と錠剤硬度に関係し、両者の間の最適なバランスを確立するように選択される。
【0017】
顆粒(a)と顆粒(b)の混合物の打錠による圧縮成形に際し、混合物へステアリン酸マグネシウムや軽質無水ケイ酸のような滑沢剤が添加される。また必要に応じ、アスパルテームのような甘味剤およびメントールのような矯味剤を添加しても良い。
【0018】
【実施例】
限定を意図しない以下の実施例によって本発明を具体的に説明する。これら実施例においては、薬物としてプラバスチンナトリウムおよびファモチジンを用いたが、本発明は苦味を有する他の薬物に対しても同様に適用し得ることは自明である。
【0019】
実施例1
プラバスタチンナトリウム27.5gとD−マンニトール310gを流動層造粒装置(ワースターMP−01)に投入し、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットE)50gを70%エタノール1300mLに溶かした溶液に酸化チタン12.5gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−1)を調製した。
【0020】
一方、D−マンニトール489gをワースターMP−01に投入し、水520mLにクロスポビドン21gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(b−1)を調製した。
【0021】
顆粒(a−1)80gと、顆粒(b−1)170gと、アスパルテーム3.5gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.5gを加えて混合し、これをロータリー式打錠機を用いて打錠圧5kNにて打錠し、直径9.0mm、重量256mgの錠剤を製造した。
【0022】
薬物不含顆粒(b−2)の製造
以下の実施例2〜7において共通して用いられる顆粒(b−2)を以下のようにして調製した。
【0023】
D−マンニトール500gをMP−01に投入し、トウモロコシデンプン350gを水1250mLに分散した液を噴霧コーティングし、乾燥し、顆粒(b−2)を調製した。
【0024】
実施例2
プラバスタチンナトリウム27.5gとD−マンニトール295gをMP−01に投入し、オイドラギットE50gを70%エタノール1300mLに溶かした溶液に酸化チタン12.5gおよびタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥し、顆粒(a−2)を調製した。
【0025】
顆粒(a−2)80g、顆粒(b−2)170g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム3.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.5gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧10kNにて打錠し、直径9.0mm,重量256mgの錠剤を製造した。
【0026】
実施例3
プラバスタチンナトリウム26.0gとD−マンニトール266.5gをMP−01に投入し、オイドラギットE80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5gおよびタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−3)を調製した。
【0027】
顆粒(a−3)80g、顆粒(b−2)170g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム7.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.5gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧10kNにて打錠し、直径9.0mm,重量260mgを錠剤を製造した。
【0028】
実施例4
プラバスタチンナトリウム26gとD−マンニトール226.5gをMP−01に投入し、オイドラギットE120gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5gおよびタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−4)を得た。
【0029】
顆粒(a−4)80g、顆粒(b−2)170g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム7.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.5gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧10kNにて打錠し、直径9.0mm,重量260mgを錠剤を製造した。
【0030】
実施例5
プラバスタチンナトリウム102gとD−マンニトール423gをMP−01に投入し、オイドラギットE300gを90%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン45gおよびタルク100gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−5)を調製した。
【0031】
顆粒(a−5)48.5g、顆粒(b−2)153g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム6.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.0gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧8kNにて打錠し、直径9.0mm,重量210mgの錠剤を製造した。
【0032】
実施例6
プラバスタチンナトリウム102gとD−マンニトール403gをMP−01に投入し、オイドラギットRS50gを90%エタノール400mLに溶解した溶液にステアリン酸マグネシウム20gを分散した液を噴霧コーティングした。次にオイドラギットE250gを90%エタノール1400mLに溶解した溶液に酸化チタン45gおよびタルク100gを分散した液をさらに噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−6)を調製した。
【0033】
顆粒(a−6)97g、顆粒(b−2)153g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム7.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.0gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧9kNにて打錠し、直径9.0mm、重量260mgの錠剤を製造した。
【0034】
実施例7
ファモチジン80gとD−マンニトール220gをMP−01に投入し、オイドラギットE120gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン20gおよびタルク20gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a−7)を調製した。
【0035】
顆粒(a−7)115g、顆粒(b−2)136g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム6.5gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.0gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を使用して打錠圧8kNにて打錠し、直径9.0mm、重量260mgの錠剤を製造した。
【0036】
比較例1
プラバスタチンナトリウム50gとトレハロース650gをMP−01に投入し、軽質無水ケイ酸100gを水1000mLに分散した溶液を噴霧コーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製した。
【0037】
一方、トレハロース500gをMP−01に投入し、トウモロコシデンプン100gを水1250mLに分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して薬物不含顆粒(b)を調製した。
【0038】
顆粒(a)800g、顆粒(b)1200g、トウモロコシデンプン50gおよびアスパルテーム5gをボーレ混合機で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム25gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用い、打錠圧6kNにて打錠し、直径9.0mm,重量253mgの錠剤を製造した。
【0039】
比較例2
プラバスタチンナトリウム20g、結晶セルロース100gおよび造粒乳糖395gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム4gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧6kNにて打錠し、直径9.0mm,重量260mgの錠剤を製造した。
【0040】
比較例3
ファモチジン40g、結晶セルロース100gおよび造粒乳糖276gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム4gを加えて混合、ロータリー式打錠機を用い、打錠圧6kNにて打錠し、直径8.0mm,重量210mgを錠剤を製造した。
【0041】
〔官能試験〕
実施例及び比較例で得た錠剤をパネラー5人を用いて、薬物の苦味抑制効果の官能試験を行った。錠剤を口に含み崩壊させ、60秒間口腔内にとどめ、その苦味を以下の6段階で評価してもらった。
【0042】
Figure 2004339071
結果を表1および表2に示す。
【0043】
【表1】
Figure 2004339071
【0044】
【表2】
Figure 2004339071
【0045】
〔硬度および崩壊性試験〕
実施例2で製造した錠剤(打錠圧10kNおよび12kN)について、常法により硬度を測定した。崩壊試験は水を使用して第14改正日本薬局方記載の方法に従って水中崩壊時間を測定し、口腔内崩壊時間は成人男子の口腔内に試験錠剤を含ませ、噛まない状態で完全に崩壊するまでの時間を測定した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 2004339071
【0047】
以上の結果が示すように、実施例の錠剤では苦味が顕著に低減されており、かつ口腔内の崩壊性と錠剤硬度との間の最適バランスが達成されている。これに対して比較例の錠剤では苦味は殆ど低減できないことがわかる。

Claims (7)

  1. (a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び
    (b)糖または糖アルコールを水に不溶であるが親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、
    との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤。
  2. 薬物含有顆粒:薬物不含顆粒の重量比が1:1ないし1:5である請求項1の口腔内崩壊錠剤。
  3. 水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーが、胃溶性コーティング剤または腸溶性コーティング剤である請求項1または2の口腔内崩壊錠剤。
  4. 胃溶性コーティング剤がアミノアルキルメタクリレートコポリマーまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートであり、腸溶性コーティング剤がメタクリル酸コポリマーである請求項3の口腔内崩壊錠剤。
  5. 薬物含有顆粒(a)中の薬物に対するフィルム形成性ポリマーの重量比が、1:1ないし6:1である請求項1ないし4のいずれかの口腔内崩壊錠剤。
  6. 薬物含有顆粒(a)中に占めるフィルム形成性ポリマーの割合が10ないし50重量%である請求項1ないし5のいずれかの口腔内崩壊錠剤。
  7. 薬物不含顆粒(b)がマンニトールをデンプン、クロスポビドン、微粒子無水ケイ酸またはヒドロキシプロピルスターチから選ばれた造粒成分で造粒もしくは被覆してなる請求項1ないし6のいずれかの口腔内崩壊錠剤。
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