JP2004323162A - 保全事業シミュレータ、保全サービス立案支援システム、および、保全事業支援システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の保全事業支援システムは、保全事業に関する評価指標の確率分布特性を算出する保全事業シミュレーション部を備えるものである。また、前記保全事業シミュレーション部の出力を用い、保全事業計画の立案を支援する事業計画立案支援部と営業活動に対する支援情報を与える営業支援部5とを備える。さらに、保全作業実績、機器稼動実績、顧客データを収集するデータ収集システム7と、収集したデータより、機器部品の寿命分布を解析する部品寿命解析部8とを備える。さらに、本発明の保全事業支援システムは、サプライヤ30、自社工場25にも利用端末16、データ収集端末17を備える。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は昇降機などの機器の保全事業を支援する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、昇降機などの機器の保全事業として、事業戦略を立案するための支援技術がある。例えば、機器の構成部品の故障特性がよく分かっている場合、その故障特性に応じて保全活動に必要となる総コストを最小とする保全方式を導出する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
さらに、複数台のエレベータを対象とし、コストおよび工数の観点から保全事業を行う拠点としての全体最適性を目指した保全計画を立案する方法が提案されている(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】
「インフラ設備の最適アフターサービス戦略に関する研究(第1報)」、山品元ら、精密工学会誌、p1371−1377、Vol.66、No.9、2000
【非特許文献2】
「インフラ設備の最適アフターサービス戦略に関する研究(第2報)」、山品元ら、精密工学会誌、p1233−1238、Vol.67、No.8、2001
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの文献に記載されている手法は、個々の部品の寿命の確率分布より各部品に対して作業が行なわれる確率(以下、作業確率と呼ぶ)を求め、この作業確率を基に保全に要する作業量、コスト、機器故障による顧客損失等の評価指標を算出し、評価指標に基づいて最適な事業計画を立案するものである。これらは、評価指標の平均値(期待値)に着目したものであり、保全事業提供者側の観点から最適化を図ることを目的とし、個々の顧客に対しては、上記手法で立案された保全サービスが一律に適用されることとなる。
【0005】
しかし、昇降機の場合、例えば、病院では、保全費用が嵩んでも故障回数を抑えたいとか、マンションでは、故障回数は多少増えても保全費用を抑えたいなど、個々のユーザによって、望む保全サービスは異なる。
【0006】
上記手法は、ニーズの異なるユーザごとに最適な保全サービスを立案するには不十分であり、ユーザの満足に直結する保全計画を立案できない。このため、個々のユーザに最適と思われる保全方法は、専ら経験と勘を頼りに策定されている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み、個々のユーザに応じた保全サービスの立案に有用な情報を出力することにより、当該サービスの立案を支援し、顧客満足度を高めるとともに、事業者にとっても効率のよい保全事業の運営を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の保全事業シミュレータは、保全対象機器を構成する各部品の部品寿命と予め定められた保全方式とを用いて、前記各部品の保全作業回数の組み合わせの確率分布を算出する確率分布算出手段を備える。
【0009】
また、本発明の保全事業支援システムは、保全事業に関する評価指標の確率分布とを算出する保全事業シミュレータと、算出された確率分布を用いて各種の保全サービスまたは事業計画の立案を支援する支援システムとを備える。
【0010】
保全事業シミュレータは、保全対象機器を構成する各部品の保全作業回数の組み合わせの確率分布を算出する。
【0011】
また、前記部品各々の部品寿命を予め定められた確率分布関数に従って擬似乱数により発生させる部品寿命発生手段と、前記部品寿命発生手段において発生させた部品寿命と予め定められた前記部品各々の交換時期とに基づいて、それぞれ、故障が発生したことにより部品を交換する(事後交換)回数と、前記交換時期となったことにより部品を交換する(予防交換)回数とをカウントし、前記事後交換および前記予防交換の前記部品それぞれの回数の組み合わせの確率分布を算出する確率分布算出手段と、を備える。
【0012】
また、保全事業シミュレータは、前記確率分布から、予め保持している前記部品の特性に関する情報を用いて、保全作業に必要な部品数、コスト、作業の工数を含む評価指標の確率分布を算出する評価指標算出手段をさらに備える。一方、支援システムは、前記保全作業シミュレータによって算出された評価指標の確率分布を用いて、前記保全サービスの立案時に有用な情報を算出し、また、保全対象機器の稼動実績に関するデータから、当該保全対象機器を保有する顧客に提供する保全サービスの立案を支援する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態を適用した昇降機の保全事業支援システムの全体構成を説明するための図である。
【0015】
本図に示すように、昇降機保全事業支援システムは、保全事業のシミュレーションを行い、結果に基づいて保全事業の立案や個々のユーザに応じた保全サービスの提案を支援する意思決定支援システム1と、各昇降機から直接、または、保全作業員からの入力により、保全対象の昇降機の実績データを入手し、解析する、実績データ収集/解析システム6と、保全事業立案に必要な各種のデータを保持するデータベースシステム10とを備える。
【0016】
意思決定支援システム1と、データベースシステム10と、実績データ収集/解析システム6とは、イントラネット20−3を介して接続されている。また、このイントラネット20−3には、サプライヤ30、自社工場40が接続され、また、通信回線20−2を介してGUI部16−1および収集端末17−1が接続される。
【0017】
また、実績データ収集/解析システム8には、通信回線20−1を介して各昇降機の稼動実績収集端末18−1、18−2が接続され、実際の昇降機の稼動に係わるデータを取得する。
【0018】
なお、上記のネットワーク構成は、本図に限られず、また、通信回線20−1、20−2は、電話回線、インターネットなどが考えられるが、データの送受ができれば、これに限られない。
【0019】
意思決定支援システム1は、バスラインにより接続された保全事業シミュレーション部2と、事業計画立案支援部3と、シミュレーション結果ファイル4と、営業支援部5と、意思決定支援システム1の使用者からの入力データを受け付ける入力装置と使用者に結果を提示する出力装置とを備えたGUI部16−2と、イントラネット20−3とのインタフェースである通信処理部19−1とを備える。
【0020】
保全事業シミュレーション部2は、顧客に提供する各種の保全サービスの立案および事業計画立案を支援するために有用な情報を算出するためのシミュレーションを行なう。具体的には、昇降機を構成する各部品の寿命分布から保全作業回数の組み合わせ、コスト等の確率分布を求め出力する。
【0021】
図2は、保全事業シミュレーション部2の機能構成を示す図である。
【0022】
図2(a)に示すように、保全事業シミュレーション部2は、保全作業シミュレータ24を備える。
【0023】
保全作業シミュレータ24は、入力データ27を基に予め定められた手法で保全作業回数の組み合わせの確率分布のシミュレーションを行い、必要なデータを加味して評価指標の確率分布を算出し、出力データ28として出力する。
【0024】
ここで、入力データ27は、営業支援部5または事業計画立案支援部3を介して入力を受け付けたシミュレーション条件とシミュレーション対象、および、データベースシステム10に格納されている諸データである。シミュレーション条件は、生成する標本関数の数、シミュレーション期間、シミュレーション時間刻み、集計期間、集計時の時間刻み、所望の評価指標、データベース10に格納されている諸データのうち、利用者がシミュレーションのために新規に与えるデータである。なお、本実施形態では、モンテカルロシミュレーションを用いる。また、所望の評価指標は、部品需要数、部品コスト、作業工数、作業コストなどである。シミュレーション対象は、顧客、または、機種、などである。
【0025】
保全作業シミュレータ24は、擬似乱数を用いて保全作業対象の製品を構成する部品の寿命を変化させ、予め定められたシミュレーションの手順に従い、指定された集計期間中に発生する保全作業回数の組み合わせの確率分布を求める。求めた保全作業回数の組み合わせの確率分布から、指定された評価指標に応じて、データベースシステム10に格納されている諸データ等を用いて保全に必要となるコストなどの各種の評価指標の確率分布を算出し、出力データ28として出力する。シミュレーション手順の詳細は後述する。
【0026】
保全事業シミュレーション部2は、算出した結果の数値データをシミュレーション結果ファイル4に格納する。ここで、利用者が各種の意思決定をしやすいように、図3(a)〜(f)に例示するようにGUI部16−2の表示画面に出力するよう構成することも可能である。
【0027】
ここで、保全事業シミュレーション部2の出力イメージ例を図3に示す。
【0028】
図3(a)は横軸に保全に関するパラメータ(交換周期、点検周期、倉庫拠点数、人員数等)をとり、縦軸に保全コスト、故障発生回数等をとったものであり、保全方式立案時等の事前検討を支援するためのものである。
【0029】
図3(b)は保全コスト、故障発生回数等の時系列変化を確認するものである。
【0030】
図3(c)は横軸に顧客に関するパラメータ(走行時間、階床数等)をとり、縦軸に保全コスト、故障発生回数等をとったものであり、保全契約見積時等に用いる。
【0031】
図3(d)は、得られた評価指標の確率分布をグラフ化したものである。期待値だけでなく、分散等を考慮した検討を行う際に用いる。この評価指標の確率分布の出力は、後述する営業支援部5において、例えば、サービスのレベルを具体的に保証するサービスレベルアグリーメント(SLA)契約などを考案するにあたって、確度の高い基礎データとなり得る。算出方法の詳細は後述する。
【0032】
図3(e)は各倉庫/営業所間の部品輸送量を表すものであり、保全体制検討時等に輸送コストの確認等を行う際に用いる。
【0033】
図3(f)は各倉庫/営業所における部品在庫量を表すものであり、保全体制検討時等に在庫コストの確認等を行う際に用いる。
【0034】
シミュレーション結果ファイル4は、保全事業シミュレーション部2のシミュレーション結果を格納する。
【0035】
営業支援部5は、GUI部16−2を介して受け付けた指示に従い、保全事業シミュレーション部2に必要なシミュレーションを行なわせ、その結果に必要なデータを付加してGUI部16−2の表示装置に表示することにより、顧客に提供する保全サービスの立案に必要な情報を立案者に提示する。
【0036】
保全事業シミュレーション部2により得られる評価指標の確率分布のデータによれば、個々の顧客の昇降機の稼動特性の抽出が容易である。営業支援部5は、このデータを用いて、個々の顧客にふさわしい各種の保守サービスの提案の立案を支援する。
【0037】
営業支援部5は、SLA立案支援機能51、顧客提案時期検討支援機能52、要調査顧客抽出機能53の各機能を備える。なお、営業支援部5は、これらの機能を全て備えている必要はなく、少なくとも1つ備えていればよい。
【0038】
次にSLA立案支援機能51の機能について説明する。ここで、例えば、年間の故障回数を所定の回数以下に抑え、故障回数がそれを超えた場合はペナルティを支払うといったサービスレベルを定めた保守契約がある。このような契約を顧客に提案する場合、SLAを遵守できる確率を求め、収益性を検討する必要がある。
【0039】
SLA立案支援機能51は、個々の顧客の保有機種の故障回数のシミュレーション結果と保守実績とから、上述のSLAの遵守率などを算出し、その結果をGUI部16−2の出力装置に表示させる。これにより、SLA契約策定者の支援を行なう。SLAの対象としては、故障回数だけでなく、復旧時間、保守員到着時間などが考えられる。
【0040】
なお、本機能により作成された資料は、顧客プレゼンテーションなどに用いることも可能である。
【0041】
顧客提案時期検討支援機能52は、個々の顧客の保有機器の、指定の集計期間ごとの評価指標(例えば、故障回数など)の平均値を算出し、その結果をGUI部16−2の出力装置に表示させる。これにより、新たな保全契約を結ぶために、顧客にアプローチする時期の決定を支援する。
【0042】
要調査顧客抽出機能53は、個々の顧客の保有機種の一般的な評価指標の確率分布と保全作業実績とを算出しGUI部16−2の出力装置に表示させる。これにより、当該顧客への調査が必要か否かを判断することを支援する。各機能の詳細な処理フローは後述する。
【0043】
事業計画立案支援部3は、GUI部16−2を介して受け付けた指示に従い、保全事業シミュレーション部2に必要なシミュレーションを行なわせ、その結果をGUI部16−2の表示装置に表示することにより、保全事業の立案に必要な情報を提示する。
【0044】
事業計画立案支援部3は、保全事業シミュレーション部2に、入力パラメータを変えて繰り返しシミュレーションを行なわせることにより保全事業に必要となる計画の最適化を図り、例えば、保全作業のスケジュールなどを立案する。
【0045】
その他、在庫/配送計画の立案に必要な情報の提示の指示を受け付けると、当該計画立案に必要な部品所要量を、条件を変化させて保全事業シミュレーション部2に算出させ、その結果を提示する。人員計画(採用、配置等)の立案に必要な情報の提示の指示を受け付けると、条件を変化させて保全作業量を保全事業シミュレーション部2に算出させてその結果を提示する。経営計画(投資計画等)の立案に必要な情報の提示の指示を受け付けると、コストや収益を保全事業シミュレーション部2に算出させてその結果を提示する。
【0046】
事業計画を立案しようとする者は、GUI部16−2の表示装置に表示された上記の各種の結果を見ることで、事業計画の立案を進めることができる。
【0047】
なお、これらは、前記非特許文献2に提案された方法等を用いて実現可能である。
【0048】
上述の意思決定支援システム1は、データのやりとりのインタフェースである入出力部と、演算処理を行なうCPUなどからなる演算部と、データ等を格納するメモリやハードディスク等からなる記憶部を備えた一般的な情報処理装置上に構築される。
【0049】
上記の保全事業シミュレーション部2、事業計画立案支援部3、営業支援部5は、CPUが予め記憶部に格納された所定のプログラムを実行することで実現される。また、シミュレーション結果ファイル4は、メモリやハードディスクが利用される。
【0050】
なお、本実施形態では、意思決定支援システム1を構成する上記の各部は、物理的に同一の情報処理装置上に構築した例をあげて説明するが、必ずしも、同一の情報処理装置上に構築する必要はない。複数の情報処理装置に分散して構築するようにしてもよい。
【0051】
実績データ収集/解析システム6は、バスラインにより接続された稼動実績収集部7と、保全実績収集部8と、部品寿命解析部9と、使用者が必要なデータを入力する入力装置と使用者に結果を提示する出力装置とを備えたGUI部16−3と通信回線20−1とのインタフェースである通信処理部19−2と、イントラネット20−3とのインタフェースである通信処理部19−3とを備える。
【0052】
稼動実績収集部7は、昇降機に設置された情報収集端末18−1、18−2などによって収集された走行時間、ドア開閉回数、通電時間等の昇降機の稼動状況や、昇降機の周辺温度、塩分や硫黄分等の使用環境に関するデータを取得し、それぞれ、データベースシステム10の顧客データベース12、稼動実績データベース14などの所定のデータベースに格納する。
【0053】
保全実績収集部8は、保全作業員、営業員などが携帯する情報収集端末17−1において入力された点検/整備日、予防交換日、故障履歴、不具合データ、回収部品状態等の保全作業実績、ならびに、顧客名称、料金、いたずらの発生回数などの昇降機使用状況等の保全営業実績を取得し、それぞれ、データベースシステム10の顧客データベース12、保全実績データベース15などの所定のデータベースに格納する。
【0054】
部品寿命解析部9は、データベースシステム10に格納された実績データなどから、昇降機を構成する各部品の寿命分布を算出するものである。解析方法などの詳細は、後述する。
【0055】
次に、サプライヤ30と自社工場40との詳細を説明する。図4は、両者の本実施形態に関する部分を抽出したものである。
【0056】
本図に示すように、サプライヤ30と自社工場40とは、それぞれ、情報収集端末17−2と、保全事業支援システムに係わる入力を受け付け、必要な出力を表示するGUI部16−4と、生産や配送計画の立案支援を行なう生産/配送計画システム34と、イントラネット20−3とのインタフェースである通信処理部19−6とを備える。
【0057】
サプライヤ30と自社工場40は、情報収集端末17−2を介して、製品開発時に、製品仕様データ、数値データやナレッジデータなどの部品寿命試験結果、部品製造/配送リードタイム等の保全事業を支援するために必要な各種のデータを収集し、イントラネット20−3を介してデータベースシステム10の所定のデータベースに格納する。
【0058】
また、サプライヤ30および自社工場40は、GUI部16−4を介して、データベースシステム10より、部品寿命解析データ、故障データ、不具合データ等を取得することもできる。取得したデータは、次の製品開発時に活用することができる。
【0059】
データベースシステム10は、製品仕様データベース11、顧客データベース12、保全体制データベース13、稼動実績データベース14、保全実績データベース15などの、本システムに必要なデータを保持する。
【0060】
製品仕様データベース11には、例えば、製品構成、部品寿命、作業工数、部品単価など、製品の仕様に関するデータが格納される。
【0061】
顧客データベース12には、顧客名称、住所、製品等の納入情報、製品の使用環境など顧客に関するデータおよび顧客ごとに特筆すべき昇降機の使用環境などに関するデータが格納される。
【0062】
保全体制データベース13には、営業所の位置、作業員数、倉庫の位置など、事業者側の保全体制に関するデータが格納される。
【0063】
稼動実績データベース14には、走行時間、ドア開閉回数、通電時間など、稼動実績収集部7を介して収集される昇降機の稼動に関するデータを格納される。
【0064】
保全実績データベース15には、予防交換日、点検/整備日、予兆発報情報、故障履歴など、現場の作業員などにより収集端末を介して入力される昇降機保全の実績に関するデータが格納される。
【0065】
次に、意思決定支援システム1における営業支援部5の処理動作について、図を用いて説明する。
【0066】
図5に、営業支援部5の処理フローを、保全事業シミュレーション部2の処理とともに示す。なお、以下の処理は、メモリ等に格納された予め定められたプログラムに従い実行される処理である。
【0067】
営業支援部5は、GUI部16−2を介して利用者による処理内容の選択を受け付け、メモリに格納する(ステップS501)。処理内容は、SLA立案支援、顧客提案時期検討支援、要調査顧客抽出、といった営業支援部5において可能な処理から選択される。
【0068】
SLA立案支援の指示を受け付けると、SLA立案支援機能51は、SLA立案支援資料を作成するために必要な入力項目、例えば、所望の評価指標、シミュレーション条件、シミュレーション対象、表示したいSLAの遵守率(複数入力可能)といった情報の入力を受け付ける画面をメモリから読み出し、GUI部16−2に提示する(ステップS502)。
【0069】
ここで、シミュレーション条件は、生成標本関数の数、シミュレーション期間、シミュレーション時間刻み、集計期間、集計時間の刻みであり、シミュレーション対象は、SLA立案対象顧客名である。また、評価指標として、ここでは、立案対象対象顧客が保有している昇降機の故障回数を例にあげて説明する。
【0070】
入力画面を介して上記条件の入力を受け付けると、メモリに格納し、SLA立案支援機能51は、受け付けた情報のうち、シミュレーション実行に必要な情報、すなわち、所望の評価指標、シミュレーション条件およびシミュレーション対象の情報を保全事業シミュレーション部2に送出する(ステップS503)。
【0071】
保全事業シミュレーション部2は、必要なデータをデータベースシステム10から取得してメモリに格納するとともに、ステップS503で受け取ったデータをメモリに格納する。そして、メモリに格納されたそれらのデータを用いて、保全作業シミュレータ24に、シミュレーション対象顧客の評価指標の確率分布を算出させ(ステップS504)、シミュレーションシミュレーション結果ファイル4に格納するとともに、営業支援部5に送出する(ステップS505)。
【0072】
SLA立案支援機能51は、受け取った評価指標(ここでは故障回数)の確率分布を元に、受け付けたSLA遵守率を達成する故障回数をそれぞれ算出してメモリに格納するとともに(ステップS506)、故障回数の確率分布に遵守率を達成する故障回数を重畳して出力する(ステップS507)。出力は、例えば、GUI部16−2の表示装置に表示させる。
【0073】
ここで、出力の一例を図6(a)に示す。本図において、それぞれx軸方向はシミュレーション対象、y軸方向は確率である。ここに入力されたSLA遵守率を達成する値を重畳する。
【0074】
SLAを立案する場合、SLAを遵守できる確率を求め、収益性を検討する必要があるが、利用者は、本図による出力結果を見ることで、所定のSLA遵守率と故障回数との関係を容易に把握することができる。例えば、所定の遵守率を80%とすると、本図の出力結果から、故障回数は5回/年と容易に判断することができ、顧客に、故障は年5回以下であることを保証するSLAを提案した場合、80%の確率で遵守できると判断することができる。
【0075】
なお、ステップ501において、顧客提案時期検討支援の選択を受け付けると、顧客提案時期検討支援機能52は、顧客提案時期検討を支援する資料を作成するために必要な入力項目、例えば、所望の評価指標、シミュレーション条件、シミュレーション対象、基準となる変化量といった情報の入力を受け付ける画面をGUI部16−2に表示する(ステップS502)。
【0076】
以下の処理において、顧客提案時期検討支援機能52は、各ステップの処理によって得られた結果をメモリに格納し、その後の処理に利用する。
【0077】
ここで、シミュレーション条件、対象はSLA立案支援の際と同様である。また、評価指標として、コスト、作業量、など各種考えられるが、ここでは、故障回数を例にあげて説明する。また、基準となる変化量は、判断時間とその時間の間に変化する基準量とで与えられる。
【0078】
入力画面を介して上記条件の入力を受け付けると、顧客提案時期検討支援機能52は、受け付けた情報のうち、シミュレーション実行に必要な情報、すなわち、所望の評価指標、シミュレーション条件およびシミュレーション対象の情報を保全事業シミュレーション部2に送出する(ステップS503)。
【0079】
ステップS504、S505の処理を経て、顧客提案時期検討支援機能52は、受け取った評価指標(ここでは故障回数)の確率分布を元に、各集計時間の刻み毎に故障回数の平均値を算出し(ステップS506)、変化量(判断時間と判断基準)を重畳して、例えば、GUI部16−2の表示装置に出力する(ステップS507)。
【0080】
ここで、出力の一例を図6(b)に示す。本図は、保全事業シミュレーション部2を用いて算出した故障回数、コスト、収益等の評価指標の時系列データから、顧客へのアプローチ時期を抽出するものである。本図では、予め設定された判定時間において、評価指標が予め設定された判定基準よりも大きい時刻を「料金改定提案時期」、「リニューアルの提案時期」等と抽出している。
【0081】
このような定量的な出力結果は、立案時の判断に寄与するだけでなく、顧客に対して、保全サービス商品の提案や説明をする際に、保全料金の正当性を示す説得力ある資料として提示することができ、料金体系の透明化につながる。
【0082】
また、ステップ501において、要調査顧客抽出の選択を受け付けると、要調査顧客抽出機能53は、要調査顧客を抽出することが可能な資料を作成するために必要な入力項目、例えば、所望の評価指標、シミュレーション条件、シミュレーション対象、調査の要否判定基準といった情報の入力を受け付ける画面をGUI部16−2に表示させる(ステップS502)。
【0083】
以下の処理において、要調査顧客抽出機能53は、各ステップの処理によって得られた結果をメモリに格納し、その後の処理に利用する。
【0084】
ここで、シミュレーション条件、対象はSLA立案支援の際と同様である。また、評価指標として、コスト、作業量、など各種考えられるが、ここでは、故障回数を例にあげて説明する。
【0085】
入力画面を介して上記条件の入力を受け付けると、要調査顧客抽出機能53は、受け付けた情報のうち、シミュレーション実行に必要な情報、すなわち、所望の評価指標、シミュレーション条件およびシミュレーション対象の情報を保全事業シミュレーション部2に送出する(ステップS503)。
【0086】
ステップS504、S505の処理を経て、要調査顧客抽出機能53は、シミュレーション対象顧客の保守実績をデータベースシステム10から取得し、入力された判断基準とともに、受け取った評価指標(ここでは故障回数)の確率分布に重畳して(ステップS506)、例えば、GUI部16−2の表示装置に出力する(ステップS507)。ここで、出力の一例を図6(c)に示す。
【0087】
営業支援部5の利用者は、本図に示す出力結果を見ることで、要調査顧客を容易に抽出することができる。そして、例えば、部品交換や故障発生が多い昇降機の場合、いたずらが多い、使用状況に変化があり稼動頻度が急増したなどの事情が考えられ、利用者は、営業員や保安員に調査を指示させ、実情を把握し、保安サービスや料金を改定したり、防犯カメラの設置を提案したりするなどの新たな保全サービスの提案を検討することができる。
【0088】
以上、営業支援部5の処理動作について説明した。
【0089】
次に、保全事業シミュレーション部2の処理動作について説明する。
【0090】
図7は、本実施形態で想定した具体的な部品を交換する保全作業の概念図である。本実施形態では、保全作業として予防交換、事後交換(呼称対応)の2種類を考える。
【0091】
ここで、予防交換とは、部品取り付けから予め個々の部品に関して定められた期間(以下、予防交換インターバルと呼ぶ)後に部品を交換するもので、部品寿命が予防交換インターバルより長い場合に行なわれるものである。一方、事後交換による保全作業(部品交換)は、故障により部品を交換するもので、部品寿命が予防交換インターバルより短い場合に行なわれるものである。
【0092】
両保全作業を別個に扱うのは、作業工数やコスト等を算出する際、両者が異なるからである。例えば、緊急対応時にコスト・工数(緊急配送、故障部品特定工数等)が発生するため、「事後交換」の方が「予防交換」よりもコスト・工数を要するのが一般的である。
【0093】
本実施形態では、保全作業回数の算出に、比較的容易に実現可能であるモンテカルロ法を用いた場合を例にあげて説明する。モンテカルロ法では、昇降機を構成する各部品の部品寿命をそれぞれ所定の確率変数に従った擬似乱数を用いて発生させ、各寿命と、予め定められた部品毎の予防交換予定インターバルとを比較することにより、予防交換、事後交換の回数をカウントする。もちろん、シミュレーション手法はモンテカルロ法によるものに限られない。例えば、保全作業プロセスを再生過程としてモデル化する手法などでもよい。
【0094】
なお、実際の保全作業では、この他にも点検・整備作業、法定点検作業等が存在するが、このような作業も上記作業と同様、定められた点検、整備作業予定インターバル、法定点検作業予定インターバルと、擬似乱数により発生させた部品寿命とを比較することにより、点検等の作業か、事後交換か、の回数をカウントできる。
【0095】
次に、保全事業シミュレーション部2における処理の流れを説明する。
【0096】
図8に、保全事業シミュレーション部の処理フローを示す。
【0097】
本図に示すように、保全事業シミュレーション部2は、営業支援部5または事業計画立案支援部3からシミュレーション条件、対象などのデータを受け付けると、保全作業シミュレータ24を起動するとともに、受け付けたデータをメモリに格納する(ステップS801)。
【0098】
ここで、入力されるシミュレーション条件、対象などのデータは、生成標本関数の数、シミュレーション期間、シミュレーション時間刻み、集権期間、集計時間刻み、シミュレーション対象顧客、算出評価指標である。
【0099】
保全作業シミュレータ24は、まず、データベースシステム10にアクセスし、シミュレーション実行に必要なデータを取得し、メモリに格納する(ステップS802)。
【0100】
ここで、データベースシステム10から取得するデータは、入力を受け付けたシミュレーション対象顧客が保有する昇降機を構成する部品と、各部品の予防交換インターバルと、入力を受け付けた評価指標を算出するために必要なデータ、例えば、各部品の単価、各部品の交換に必要な作業工数、作業員のコスト、部品交換の単位などである。
【0101】
次に、保全作業シミュレータ24は、メモリから読み出した入力データを用い、受け付けた顧客の有する昇降機の各構成部品の予防交換、事後交換それぞれの回数の組み合わせの確率をモンテカルロ法にて算出し、メモリに格納する(ステップS803)。モンテカルロ法による算出の詳細は後述する。
【0102】
そして、保全作業シミュレータ24は、算出した部品交換回数の組み合わせの確率分布と、データベースシステム10から取得したデータをメモリから読み出し、入力を受け付けた評価指標を算出し、メモリに格納する(ステップS804)。
【0103】
保全事業シミュレーション部2は、保全作業シミュレータ24がステップS804で算出した結果をシミュレーション結果ファイル4に格納するとともに、指示元の営業支援部5または事業計画立案支援部3に受け渡す(ステップS805)。
【0104】
次に、保全作業シミュレータ24がモンテカルロ法により、保全作業(部品の予防交換および事後交換)の回数をカウントし、組み合わせの確率分布を求める処理の詳細を以下に説明する。
【0105】
まず、保全作業シミュレータ24のシミュレーション対象を説明する。
【0106】
図9は、保全作業シミュレータ24のシミュレーション対象の概念図である。
【0107】
本図に示すように、顧客Ci(i=1,・・・NC)はそれぞれNMi台の保全対象機器Mi j(j=1,・・・NMi)を有する。
【0108】
また、保全対象機器Mi jは、それぞれNPi j個の保全対象部品iPj k(k=1,・・・NPi j)を有するものとする。
【0109】
ここで、保全対象部品IPj kの部品寿命iτj kはそれぞれ確率密度関数Ifj k(iτj k)に従う確率変数とする。部品寿命の確率密度関数は多変数関数でも構わない。
【0110】
次に、保全作業シミュレータ24の処理手順を説明する。
【0111】
まず、以下の説明に用いる記号について定義する。
【0112】
【数1】
図10に、保全作業シミュレータ24の処理フローを示す。
【0113】
上述したように、本実施形態では、モンテカルロ法を用いる。本実施形態のシミュレーションの基本的な処理の流れは、部品寿命を擬似乱数列を用いて発生させ、保全作業の回数をカウントするというものである。
【0114】
なお、以下の処理は、メモリに格納された予め定められたプログラムに従って、保全作業シミュレータ24が行なう処理である。
【0115】
保全作業シミュレータ24は、起動すると、ステップS2において、指定された顧客の所有する昇降機の機種、その台数、各昇降機の構成部品、各構成部品の寿命の確率分布関数、各構成部品の予防交換インターバルとを含むデータを、それぞれ、データベースシステム10の顧客データベース12、製品仕様データベース11、保全実績データベース15などから取得し、メモリに格納する。
【0116】
続くステップS3において、メモリに格納されている作成した標本関数の数と、入力を受け付けてメモリに格納されている生成標本関数の数とを比較し、所望の本数だけ標本関数を生成したかを判定し、判定結果をメモリに格納する。そして、メモリに格納された判定結果を読み出し、[Yes]であればステップS4へ、[No]であればステップS14へ進む。
【0117】
ステップS4では、シミュレーション時刻t,作業回数カウンタ
iNWPj k(ta)、iNWBj k(ta)を0で初期化し、メモリに格納する。ここで、シミュレーション時刻tはある時間刻みを用いることにより,整数値をとるように離散化されているものとする。
【0118】
続くステップS5では、それぞれの部品iPj kの寿命iτj kを確率密度関数ifj k(iτj k)に従う擬似乱数を用いて、部品寿命を決定し,更に決定された寿命を前記時間刻みを用いて離散化し、メモリに格納する。
【0119】
次に、メモリに格納された部品寿命を用いて,部品iPj kが寿命に到達する時刻itlj k=t+ iτj kを算出し、メモリに格納する。
【0120】
続くステップS6において,現シミュレーション時刻tにおいて交換作業が発生する(t=itlj k,もしくは,部品取付から予防交換インターバルだけ時間が経過)部品が存在するかどうかを、メモリに格納された部品寿命と、現シミュレーション時刻tとを比較することで判定し、判定結果および交換作業が発生した部品を特定する情報をメモリに格納する。
【0121】
そして、メモリに格納された判定結果を読み出し、[Yes]の場合にはステップS7へ,[No]であればステップS11へ進む。
【0122】
ステップS7では,メモリに格納された現シミュレーション時刻tが評価指標集計期間内かどうかを、メモリに格納された評価指標集計期間の終わりの時刻と比較することで判定し、判定結果をメモリに格納する。メモリに格納された判定結果を読み出し、[Yes]であればステップ8,[No]であればステップS10へ進む。
【0123】
ステップS8では、ステップS6において交換作業が発生すると判定された部品をメモリから読み出し、読み出した部品iPj kが寿命に達する時刻itlj kを集計時間刻みdtaを用いて離散化し(下記数式2)、メモリに格納し、ステップS9へ進む。ここで、[x]−は、ガウス記号であり,xを超えない最大の整数値を表す。
【0124】
【数2】
続くステップS9では,ステップS6において交換作業が発生すると判定された部品iPj kと現シミュレーション時刻tとをメモリから読み出し、両者を比較することで、当該部品に対して行われる交換作業の種別(予防交換もしくは事後交換)を判定し、メモリに格納された該当作業回数のカウンタ(iNWPj k(ta)もしくはiNWBj k(ta))を読み出して、1だけ増加し、メモリに再度格納し、ステップS10へ移行する。
【0125】
ステップS10では、ステップS6において交換作業が発生すると判定された部品をメモリから読み出し、当該部品iPj kに対して新たな部品寿命iτj kを設定し、寿命到達時間itlj kを算出し,メモリに格納し、ステップS6に移行する。
【0126】
ステップS11では、メモリから読み出したシミュレーション時刻tを1だけ増加し、再度メモリに格納し、ステップS12に進む。
【0127】
続くステップS12では、シミュレーション時刻tと利用者により設定されたシミュレーション期間とをメモリから読み出し、両者を比較することで、シミュレーション時刻tが利用者により設定されたシミュレーション期間を超えたかどうかを判定し、その結果をメモリに格納する。判定結果をメモリから読み出し、[Yes]の場合にはステップS13へ、[No]の場合にはステップS6へ移行する。
【0128】
続くステップS13では、それぞれの部品に対する作業回数iNWPj k(ta)、iNWBj k(ta)に応じて下記の数式3をメモリから読み出し、1だけ増加して再度メモリに格納し、ステップS3に進む。
【0129】
【数3】
ステップS14では保全作業カウンタをメモリから読み出し、同じくメモリから読み出した作成した標本関数の本数の値で割り、保全作業回数iNWPj k、iNWBj kの確率関数の下記数式4を算出し、メモリに格納する。
【0130】
【数4】
続くステップS15では、必要に応じて、メモリに格納された保全作業回数を読み出し、データベースシステム10から読み出してメモリに格納された下記の各データを用いて、保全コスト、保全工数の確率分布や、期待値等の評価指標を算出し、メモリに格納する。
【0131】
ここで、評価指標算出式の一例を以下に示す。
続くステップS16において、ステップS15で算出した結果をメモリから読み出し、シミュレーション結果ファイル4に出力し、また、必要に応じて、営業支援部5、事業計画立案支援部3に受け渡す、GUI部16−2の表示画面に出力するなどして終了する。
【0132】
このように、本実施形態の保全事業シミュレーション部2は、この保全作業シミュレータ24の処理により様々な評価指標の出力が可能である。これらの出力を利用して、営業活動や事業計画の立案を支援することができる。
【0133】
なお、上述の保全事業シミュレーション部2は、保全作業に関する評価指標(部品交換回数、コスト、作業量等)を算出する保全作業シミュレータ24から構成される比較的簡易なモデルを用いたものである。
【0134】
保全事業シミュレーション部2はこれに限られない。その他の例を図2(b)および図2(c)に示す。
【0135】
図2(b)に示した保全事業シミュレーション部2は、図2(a)のものを発展させたものであり、保全作業シミュレータ24に加え、ロジスティクス・シミュレータ25および間接作業シミュレータ26を有する。
【0136】
ロジスティクス・シミュレータ25、間接作業シミュレータ26は、それぞれ、入力データ27に加えて保全作業シミュレータ24の結果を入力とし、部品物流に関する評価指標(在庫量、配送量等)、間接業務に関する評価指標(報告書作成工数等)を算出するものであり、保全作業シミュレータ24からの一方向の連成のみを考慮したモデルである。
【0137】
ここで、本実施形態の保全事業シミュレーション部2における「連成」とは、それぞれのシミュレータによるシミュレーション結果が互いに影響を及ぼすことを言う。例えば、欠品などにより部品が配送されなかったり、部品発注業務などの間接業務をこなす人員が不足したりすると、予定通り作業が行なわれなくなり、この結果、故障が発生し、部品の緊急手配、輸送が必要となる、といった例などである。
【0138】
図2(c)に示した保全事業シミュレーション部2は、図2(b)のものをさらに発展させたものであり、保全作業シミュレータ24、ロジスティクス・シミュレータ25、間接作業シミュレータ26の相互の連成を考慮したモデルを用いたものである。
【0139】
図2(b)、(c)で用いられるロジスティクス・シミュレータ25、間接作業シミュレータ26は、保全作業シミュレータ24で算出した保全作業発生回数の確率分布を入力として用いたモンテカルロ法等により実現することができる。
【0140】
図2(b)、図2(c)や、保全作業シミュレータ24、ロジスティクス・シミュレータ25、間接作業シミュレータ26等を別個に利用する場合も同様に考えられる。
【0141】
次に部品寿命解析部9の詳細について説明する。
【0142】
図11は部品寿命解析部9の構成図である。本図に示すように、部品寿命解析部9は、部品解析エンジン32と部品寿命解析ナレッジデータベース33とを備える。
【0143】
部品寿命解析エンジン32は、与えられたデータを基に部品寿命分布を算出する解析エンジンであり、部品寿命解析ナレッジDB33は、解析時に用いる部品寿命解析に関するナレッジを格納するものである。
【0144】
次に、部品寿命解析エンジンの処理動作を説明する。
【0145】
図12は、部品寿命解析エンジン32の処理フロー図である。
【0146】
なお、下記の処理は、予め定められたプログラムに従って、記憶部に記憶されたデータを用いて、CPUが行なうものである。
【0147】
部品寿命解析エンジン32は、実行の指示を受け付けると、ステップS21において、部品寿命解析に関するナレッジを部品寿命解析ナレッジDB33より取得し、記憶部に記憶する。
【0148】
ここで、部品寿命解析に関するナレッジとは、「温泉の近くで使用される部品と、通常の環境で使用される部品は分けて解析」、「部品Xは累積走行時間ではなく、使用年数で寿命が決まる」、「部品Yの寿命はワイブル分布に従う」といった類のものであり、部品寿命解析時に利用される。
【0149】
次のステップS22では、部品寿命試験データ(製品開発時試験データ、回収した部品の余寿命試験データ等)や、故障実績データ等の解析元データをデータベースシステム10より取得し、記憶部に記憶する。
【0150】
次のステップS23では、ステップS22で取得した解析元データとステップS21で取得した部品寿命解析に関するナレッジとを読み出し、解析元データをナレッジに従い取捨選択を行い、その結果を記憶部に記憶する。この時、部品寿命ではなく顧客起因の要因(いたずら等)により故障となった故障データも取り除く。
【0151】
ステップS24では、ステップS23で選別された元データを記憶部から読み出し、読み出したデータを用いて、部品寿命解析を行い、その結果を記憶部に記憶する。
【0152】
なお、部品寿命解析については、ワイブル・ハザード解析等数多くの手法が知られ、これらの手法を用いて行なう。
【0153】
最後のステップS25において、ステップS24で得られた部品寿命解析結果を記憶部から読み出し、製品使用DBに格納して終了する。
【0154】
以上、部品寿命解析エンジン32の処理を説明した。
【0155】
以上説明したように、本実施形態の保全事業支援システムによれば、保全事業シミュレータ2で算出した評価指標の確率分布のデータを利用することにより、個々の顧客の昇降機の稼動の特性を抽出することが容易になる。そして、抽出した特性に基づいて、個々の顧客に応じた保全サービスの立案を支援するための情報を出力することができる。
【0156】
また、シミュレーション結果を視覚化して出力することにより、立案した保全サービスの特徴を顧客に対して定量的に説明することを支援する。これらは、料金体系の明確化、簡易なSLA(サービスレベルアグリーメント)の設定を可能とする。
【0157】
また、本実施形態によれば、営業活動を行なうべき顧客を効率的に抽出することを支援し、効果的な顧客へのアプローチ時期を決定することを支援できる。これらは、営業活動の効率化につながる。
【0158】
さらに、本実施形態の保全事業支援システムによれば、上述のように営業活動の効率化とともに、事業計画立案支援部3により事業計画の立案を行なうことができる。これにより、保全事業計画の無理/無駄を省くことができる。
【0159】
また、サプライヤ30、自社工場40とデータを共有することにより、サプライや30や自社工場40の生産/配送計画システムと連携して製品開発の支援、部品生産/配送計画の立案支援が可能となる。
【0160】
本実施形態によれば、保全事業に関するシミュレータを核とした保全事業支援システムにより、従来は経験に基づく情報に頼っていた業務に対して、シミュレータを用いて論理的な手段により算出された精度の高い支援情報を提供することができ、これにより、保全事業全体の効率的な運営が可能となる。
【0161】
なお、本実施形態は、昇降機の保全事業を例にあげて説明をしたが、本発明を適用可能な保全対象は昇降機に限られない。販売後、所定期間保守管理の必要な製品全般の保全事業に適用可能である。
【0162】
【発明の効果】
個々のユーザの要求に応じた保全サービスの立案を支援することにより、当該サービスの立案を容易にし、顧客満足度を高めるとともに、事業者にとっても効率のよい保全事業の運営を実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本実施形態を適用した保全事業支援システムの全体構成を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施形態の保全事業シミュレーション部の機能構成図である。(a)は基本的な保全事業シミュレータの機能構成図であり、(b)は、第1の発展例、(c)は第2の発展例である。
【図3】図3(a)〜(f)は、それぞれ、本実施形態の保全事業シミュレーション部の出力イメージ図である。
【図4】図4は、サプライヤおよび自社工場の本実施形態に関する機能を抽出した図である。
【図5】図5は、本実施形態の営業支援部の処理フローである。
【図6】図6(a)〜(c)は、それぞれ、本実施形態の営業支援部の出力イメージ図である。
【図7】図7は、本実施形態の保全作業の概念を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施形態の保全事業シミュレーション部の処理フローである。
【図9】図9は、本実施形態の保全作業シミュレータのシミュレーション対象の概念を説明するための図である。
【図10】図10は、本実施形態の保全作業シミュレータの処理フローである。
【図11】図11は、本実施形態の部品寿命解析部の機能構成図である。
【図12】図12は、本実施形態の部品寿命解析部の処理フローである。
【符号の説明】
1・・・意思決定支援システム、2・・・保全事業シミュレーション部、3・・・事業計画立案支援部、4・・・シミュレーション結果ファイル、5・・・営業支援部、6・・・実績データ収集/解析システム、7・・・稼動実績収集部、8・・・保全実績収集部、9・・・部品寿命解析部、10・・・データベースシステム、11・・・製品仕様DB、12・・・顧客DB、13・・・保全体制DB、14・・・稼動実績DB、15・・・保全実績DB、16−1、16−2・・・GUI部、16−3、16−4・・・利用端末、17−1・・作業実績収集端末、17−2・・・顧客データ収集端末、19−1、19−2、19−3、19−4、19−5、19−6・・・通信処理部、20−1、20−2、20−3、通信回線、21−1、20−2・・・顧客ビル、30・・・サプライヤ、40・・・自社工場、24・・・保全作業シミュレータ、25・・・ロジスティクス・シミュレータ、26・・・間接作業シミュレータ、27・・・入力データ、28・・・出力データ、32・・・部品寿命解析エンジン、33・・・部品寿命解析ナレッジDB、34・・・生産/配送計画システム
Claims (9)
- 保全対象機器を構成する各部品の部品寿命と予め定められた保全方式とを用いて、前記各部品の保全作業回数の組み合わせの確率分布を算出する確率分布算出手段を備えることを特徴とする保全事業シミュレータ。
- 保全対象機器を構成する各部品の保全作業回数の組み合わせの確率分布を算出する保全事業シミュレータであって、
前記部品各々の部品寿命を予め定められた確率分布関数に従って擬似乱数により発生させる部品寿命発生手段と、
前記部品寿命発生手段において発生させた部品寿命と予め定められた前記部品各々の交換時期とに基づいて、それぞれ、故障が発生したことにより部品を交換する(事後交換)回数と、前記交換時期となったことにより部品を交換する(予防交換)回数とをカウントし、前記事後交換および前記予防交換の前記部品それぞれの回数の組み合わせの確率分布を算出する確率分布算出手段と、を備える
ことを特徴とする保全事業シミュレータ。 - 請求項2記載の保全事業シミュレータにおいて、
前記確率分布算出手段が算出した前記確率分布から、予め保持している前記部品の特性に関する情報を用いて、保全作業に必要な部品数とコストと作業の工数とを含む評価指標を算出する評価指標算出手段をさらに備える
ことを特徴とする保全事業シミュレータ。 - 保全対象機器の稼動実績に関するデータから、当該保全対象機器を保有する顧客に提供する保全サービスの立案を支援する保全サービス立案支援システムであって、
請求項3記載の保全事業シミュレータと、
前記保全事業シミュレータによって算出された評価指標を用いて、前記保全サービスの立案時に有用な情報を算出する営業支援システムとを備える
ことを特徴とする保全サービス立案支援システム。 - 請求項4記載の保全サービス立案支援システムであって、
前記有用な情報は、前記顧客の保有する保全対象機器の、サービスレベルアグリーメント契約の所定の遵守率を示す情報であることを特徴とする保全サービス立案支援システム。 - 請求項4または5記載の保全サービス立案支援システムであって、
前記有用な情報は、新たな保全サービスを前記顧客に提示する時期を決定するための判断材料となる情報であることを特徴とする保全サービス立案支援システム。 - 請求項4、5、または、6記載の保全サービス立案支援システムであって、
前記有用な情報は、前記評価指に前記顧客の保有する保全対象機器の稼動実績を重ね合わせた情報であることを特徴とする保全サービス立案支援システム。 - 保全対象機器の稼動実績に関するデータから保全サービスの立案を支援するとともに、保全事業計画の立案を支援する保全事業支援システムであって、
請求項4〜7いずれか1項記載の保全サービス立案支援システムと、
前記保全事業シミュレータに前記評価指標の算出を複数回行なわせることによって保全事業計画の立案を支援する保全事業計画立案支援システムと、を備える
ことを特徴とする保全事業支援システム。 - 保全対象機器を構成する各部品の保全作業回数の組み合わせの確率分布を算出する保全作業回数確率分布算出方法であって、
前記部品各々の部品寿命を、予め定められた確率分布関数に従って擬似乱数により発生させる部品寿命発生ステップと、
前記部品寿命発生ステップにおいて発生させた部品寿命と予め定められた前記部品各々の交換時期とに基づいて、それぞれ、故障が発生したことにより部品を交換する(事後交換)回数と、前記交換時期となったことにより部品を交換する(予防交換)回数とをカウントし、前記事後交換および前記予防交換の前記部品それぞれの回数の組み合わせの確率分布を算出する確率分布算出ステップと、を備える
ことを特徴とする保全作業回数確率分布算出方法。
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