JP2004319469A - 負極活物質およびそれを用いた非水電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リチウムの吸蔵・放出が可能な非水電解質二次電池用負極活物質が、Si、Sn、Siを含む合金、およびSnを含む合金よりなる群より選択される少なくとも1種で構成された内層と、内層上に形成された酸化ケイ素または酸化スズからなる厚さ0.2〜1000nmの表面層とを有する。
【選択図】なし
Description
また、黒鉛粉末をリチウム二次電池の負極材料として用いた場合には、黒鉛粉末の理論容量(372mAh/g)がリチウム金属単体の理論容量の10%程度であるため、リチウム金属を負極材料に用いた場合よりも電池容量が小さくなる。このため、近年における高エネルギー密度化の要請に充分に応えることができないという欠点がある。
例えば、特許文献1では、M1-x/100Six/100(式中、Mは、Ni、Fe、CoまたはMnであり、x(at%)は、x≧50である。)で表される負極材料が開示されている。
大気中にて高周波溶解して合金溶湯を作製する際、酸素が混入し、合金表面に酸化ケイ素の層が形成される。酸化ケイ素は抵抗率が1012Ω・m(モスクワ冶金出版所「最新酸化物便覧」)と大きい。このため、充放電反応する際、合金表面でのLiイオンの吸蔵・放出がスムーズに行われず、反応抵抗が大きくなりやすい。
このことから、発明者らが鋭意検討した結果、この問題を解決するためには、合金粉末および薄膜の表面における酸化ケイ素の層の厚さを規定することが有効であることが分かった。
Si、Sn、Siを含む合金、およびSnを含む合金よりなる群より選択される少なくとも1種で構成された内層と、前記内層上に形成された酸化ケイ素または酸化スズからなる平均厚さ0.2〜1000nmの表面層とを有することを特徴とする。
前記表面層の平均厚さが、1〜100nmであるのが好ましい。
前記表面層の平均厚さが、1〜10nmであるのが好ましい。
前記表面層の厚さが、平均厚さの±50%以内の範囲にあることが好ましい。
前記合金が、少なくともSi相またはSn相と、SiまたはSn、ならびにTi、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、MnおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む合金相とからなることが好ましい。
さらに、前記負極活物質は、非晶質Si相を含むことが好ましい。
また、本発明は、上記の負極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。
表面層の厚さは、上述した平均厚さの50%以内であるのが好ましい。このとき、電極反応が均一化され、さらにサイクル寿命特性および高温保存特性が向上する。
なお、SiまたはSnと合金化させる元素の割合が多くなると、得られる合金の容量が減少するので、必要以上にSiまたはSnと合金化させる元素の割合を多くすることは好ましくない。
このような合金を用いることにより、充放電サイクルの繰り返しにともなう負極活物質の微粉化を抑制する効果をさらに大きくすることができ、さらなるサイクル寿命特性の向上が期待できる。
薄膜を作製する方法としては、真空蒸着法、化学的気相成長法(CVD法)、スパッタ法、メッキ法、溶射法など、薄膜が得られる方法であればいずれの方法を用いてもよい。薄膜の厚さは100μm以下が好ましく、緻密な膜でも多孔質な膜でもよい。多孔質な膜としては、孔の形状が柱状のものや、複数の層からなり、層間に隙間が設けられた積層構造などが挙げれられる。
なお、非晶質Si相とは、広角X線回折法により得られたSiの回折パターンにおいて、Si相の結晶面に帰属する回折角(2θ)に位置するピークの半価幅からシェラーの式によって算出した結晶子サイズが30nm以下のものをいう。非晶質Si相は、非晶質相や微結晶質相からなる。
《実施例1〜12、比較例1〜9》
(1)負極活物質の作製
実施例1〜6、および比較例1〜4では、SiまたはSnを含む合金を以下の方法で合成した。各合金の組成を表1に示す。
次に、負極活物質粉末の表面上に、種々の厚みの酸化ケイ素または酸化スズからなる表面層を形成するために、各合金を表1に示すように雰囲気、温度、および時間を変えて熱処理した。
SiまたはSn粉末を、1重量%のフッ酸および40重量%のフッ化アンモニウムを含む水溶液中に室温で5分間浸漬した後、真空中60℃で乾燥した。その後、SiまたはSn粉末の表面上に、種々の厚みの酸化ケイ素または酸化スズからなる表面層を形成するために、SiおよびSn粉末を表2に示すように雰囲気、温度、および時間を変えて熱処理した。
上記で得られた実施例1〜12および比較例1〜8の負極活物質、ならびにさらに比較として黒鉛(比較例9)を用いてそれぞれ負極を作製した。
表1および2に示す各負極活物質の粉末と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのPVdF(ポリフッ化ビニリデン)とを重量比75:20:5の割合で混合し混合物を得た。この混合物を脱水N−メチルピロリジノンに分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体としての電解銅箔に塗布し、乾燥した後、圧延して負極を得た。なお、負極の作製は、すべてAr雰囲気中で行った。
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのPVdFとを重量比85:10:5の割合で混合し、混合物を得た。この混合物を脱水N−メチルピロリジノンに分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体としてのアルミニウム箔に塗布し、乾燥した後、圧延して正極を得た。
非水電解質二次電池として図1に示す構造の円筒形リチウムイオン二次電池を以下のように作製した。図1は、円筒形リチウムイオン二次電池の概略縦断面図である。
上記で得られた正極5と負極6とをセパレータ7を介して重ね、渦巻き状に巻回して電極体4を作製した。電極体4の上部および下部にそれぞれ絶縁リング8を配した。正極5は正極リード板5aを介して封口板2に、負極6は負極リード板6aを介して電池ケース(負極缶)1の底部に、それぞれ接続した。そして、この電極体4を電池ケース1内に収納し、非水電解液を注液した。非水電解液には、LiPF6を1mol/L含むエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)を用いた。
(イ)酸化ケイ素または酸化スズ層の定性および厚さの測定
酸化ケイ素層の定性には、理学電機工業製XPS-7000を用い、X線源にはAl−Kαを使用した。電圧10kV、電流10mAの条件で、測定元素をSi2pとし、114〜94eVの範囲で、0.08eVのステップで、ナロースキャンした。
Arイオンによるエッチングを行い、ケイ素に対する酸化ケイ素のピークの積分強度比が50%以下になるときの最表面からのエッチング深さを、酸化ケイ素層の厚さとした。エッチング条件は、加速電圧500V、エッチング角度90°、イオン電流密度160μA/cm2とし、エッチングレートはSiO2換算で0.5〜5nm/分の範囲で行った。なお、最小のエッチング深さは、0.2nmである。そして、負極に用いられる粉末状の負極活物質における任意の5箇所を測定して得られた値の平均値を平均厚さとした。
20℃の環境下にて、0.6Aで4.2Vまで充電した後、0.4Aで2.5Vまで放電するサイクルを繰り返し行った。そして、このときの1サイクル目の放電容量C1および100サイクル目の放電容量C2を調べた。放電容量C1に対する放電容量C2の比率P(%)を下記に示す式により算出し、各電池のサイクル寿命特性を評価した。なお、P値が85%以上のとき、サイクル寿命特性が良好であると判断した。
P(%)=(C2/C1)×100
交流インピーダンス法を用い、周波数1kHz時の電池の内部抵抗を測定した。測定は、上記の充放電サイクルの1サイクル目と100サイクル目の放電後に行った。
上記と同様の充放電を5サイクル繰り返し、5サイクル目の放電容量C3を求めた。そして、6サイクル目の充電後に、電池を80℃の恒温槽中に3日間保存した。保存後、20℃の環境下で0.4Aで2.5Vまで放電して、放電容量C4を求めた。5サイクル目の放電容量C3に対する放電容量C4の比率Q(%)を下記に示す式により算出して、電池の高温保存特性を評価した。なお、Qの値が85%以上のとき、高温保存特性が良好であると判断した。
Q(%)=(C4/C3)×100
上記の各試験の評価結果を表3に示す。
負極活物質の表面における酸化ケイ素または酸化スズ層の平均厚さは、実施例1、4、7および10では100nm、実施例2、5、8および11では1000nm、実施例3、6、9および12では0.2nmであった。
Siと、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選択される少なくとも一つを含む元素とを組み合わせて表4に示す合金を実施例1と同様の方法により作製した(実施例13〜23)。また、Snと、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、MnおよびFeよりなる群から選択される少なくとも一つを含む元素とを組み合わせて表4に示す組成の合金を実施例1と同様の方法により作製した(実施例24〜34)。
表5に示す組成の合金を以下の方法により作製した。
まず、所定の元素を塊状あるいは板状、あるいは粒状のまま任意の比率で混合し、Ar雰囲気中で高周波溶解法により溶融させた後、Ar雰囲気中でガスアトマイズ法により冷却して、負極活物質としての球状合金粉末を作製した。これらの合金をAr雰囲気中で45ミクロンメッシュの篩に通すことにより平均粒径28μmの粒子からなる合金粉末を得た。そして、これらの合金粉末について、実施例35および37では実施例1と同様の条件で、実施例36および38では実施例4と同様の条件で、熱処理を行った。
Si薄膜を以下に示す種々の方法を用いて作製した。
真空蒸着法では、Siの塊を約0.00003Torrの真空中で、電子ビームにて蒸発させ、電解銅箔上にSi薄膜を形成した(実施例39)。
上記で得られた各Si薄膜について、体積比が0.5:99.5の酸素とArの雰囲気中で、300℃にて1時間熱処理を行った。
SiとTiの塊を約0.00003Torrの真空中で、電子ビームにて蒸発させ、電解銅箔上にTiSi2合金薄膜を形成した。この合金薄膜について、体積比が0.5:99.5の酸素とArの雰囲気中で、300℃にて1時間熱処理を行った。
めっき用の液組成としては、0.1mol/LのH2SO4水溶液にSnSO4を0.1mol/L溶解したものを用いた。このめっき液100mlに電解銅箔を浸漬した。浴温度は40℃とし、浸漬時間は15分間とした。そして、このSn薄膜について、体積比が0.5:99.5の酸素とArの雰囲気中で、150℃にて1時間熱処理を行った。
めっき用の液組成としては、0.1mol/LのH2SO4水溶液にSnSO4とCoSO4をそれぞれ0.1mol/L溶解したものを用いた。このめっき液100mlに電解銅箔を浸漬した。浴温度は40℃とし、浸漬時間は15分間とした。そして、この合金薄膜について、体積比が0.5:99.5の酸素とArの雰囲気中で、150℃にて1時間熱処理を行った。
実施例40と同様の方法によりSi薄膜を作製した。このSi薄膜について、Ar雰囲気中で800℃にて1時間熱処理を行った。その後、体積比が0.5:99.5の酸素とArの雰囲気中で、300℃にて1時間熱処理を行った。なお、広角X線回折法により得られたSiの回折パターンにおいて、Si相の結晶面に帰属する回折角(2θ)に位置するピークの半価幅からシェラーの式によって算出した結晶子サイズが40nmであった。このことから、この薄膜が結晶質Si相からなることが確認された。
銅箔上に形成された各薄膜状の負極活物質を負極として用いた以外は、実施例1と同様の方法により電池A39〜A45をそれぞれ作製した。これらの負極活物質および電池を実施例1と同様の方法により評価した。なお、薄膜の表面に形成された酸化ケイ素または酸化スズ層の平均厚さは、薄膜上の任意の5箇所を測定した値の平均値とした。その結果を表6に示す。
これは、非晶質Si相は結晶質Si相に比べ、充放電の繰り返しにともなう微粉化を抑制する効果が大きいためであると考えられる。
実施例1と同様の方法により作製したTiSi3合金について、厚さの異なる表面層を形成するために、表7に示す条件で熱処理を行った。
実施例39と同様の方法により作製したSi薄膜について、厚さの異なる表面層を形成するために、表9に示す条件で熱処理を行った。
また、さらに好ましくは、薄膜表面の酸化ケイ素層の平均厚さが1〜10nmである。このとき、良好な高温保存特性を維持した状態で、さらにサイクル寿命特性が向上した。
電池の充放電に伴い、負極では、Liイオンと電子が供給または放出される。例えば、負極活物質が薄膜状である場合、集電体上にSi薄膜を形成した後に、熱処理を行うため、集電体とSi薄膜との間には酸化ケイ素層は存在しない。このため、充電時における電子の経路は、集電体、Si内層の順であり、表面に形成された酸化ケイ素の層を通る電子の割合は少ない。
なお、上記では、薄膜にSiを用いた場合を説明したが、Sn、Siを含む合金、およびSnを含む合金を用いた場合でも同様の効果が得られる。
実施例1〜55では、粉末状および薄膜状の負極活物質における酸化ケイ素または酸化スズからなる表面層の厚さは、いずれも平均厚さの±50%以内の範囲であった。そこで、平均厚さは実施例40と同様であるが、測定した5箇所のうち少なくとも1箇所が、平均厚さの±50%を超える場合を検討した。
上記で得られた薄膜状の負極活物質を用いた以外は、実施例40と同様の方法により電池A56を作製した。この薄膜および電池を実施例40と同様の方法により評価した。その評価結果を実施例40の結果とともに表11に示す。
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 電極体
5 正極
6 負極
7 セパレータ
5a 正極リード板
6a 負極リード板
8 絶縁リング
Claims (9)
- リチウムの吸蔵・放出が可能な非水電解質二次電池用負極活物質であって、
Si、Sn、Siを含む合金、およびSnを含む合金よりなる群より選択される少なくとも1種で構成された内層と、前記内層上に形成された酸化ケイ素または酸化スズからなる平均厚さ0.2〜1000nmの表面層とを有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質。 - 前記表面層の平均厚さが、1〜100nmである請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 前記表面層の平均厚さが、1〜10nmである請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 前記表面層の厚さは、平均厚さの±50%以内の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 前記合金が、SiまたはSnと、Ti、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、MnおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 前記合金が、少なくともSi相またはSn相と、SiまたはSn、ならびにTi、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、MnおよびFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む合金相とからなる請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 薄膜状または粉末状である請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 非晶質Si相を含む請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の負極活物質を用いた非水電解質二次電池。
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