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JP2004315661A - 半導体超微粒子及び電界発光素子 - Google Patents

半導体超微粒子及び電界発光素子 Download PDF

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JP2004315661A
JP2004315661A JP2003111677A JP2003111677A JP2004315661A JP 2004315661 A JP2004315661 A JP 2004315661A JP 2003111677 A JP2003111677 A JP 2003111677A JP 2003111677 A JP2003111677 A JP 2003111677A JP 2004315661 A JP2004315661 A JP 2004315661A
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Japan
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group
semiconductor
ligand
semiconductor crystal
periodic table
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Application number
JP2003111677A
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English (en)
Inventor
Tomohide Murase
友英 村瀬
Itaru Kamiya
格 神谷
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Publication date
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Abstract

【課題】半導体結晶が有する優れた発光特性等の特徴を保持しつつ、溶媒への良好な分散性を有し、電界発光素子等の電子デバイス用材料として好適な半導体超微粒子及びこれを用いた電界発光素子を提供すること。
【解決手段】励起状態からの発光スペクトルが観測される、例えば、CdSe(コア)/ZnS(シェル)型半導体結晶と、この半導体結晶の表面に配位し、励起状態からの発光スペクトルが観測されない、例えば、2−ナフタレンチオール(2NT)等の配位子とを有し、この半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位エネルギーと配位子のイオン化ポテンシャルとの差が2eV以下であり、且つ、半導体結晶の伝導帯における最低の電子準位エネルギーと配位子の電子親和力との差が2.5eV以下である半導体超微粒子であって、優れた発光特性と溶媒に対する良好な分散性を示し、電子デバイス用材料として好適な性質を示す。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体超微粒子及び電界発光素子に関し、より詳しくは、半導体結晶の表面に配位子が配位した構造を有する半導体超微粒子及びこれを発光層中に含有する電界発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、量子効果による制御された吸光や発光特性を有する半導体超微粒子は、新しい発光材料として注目されている。最近、このような半導体超微粒子の製造法として、従来から知られた真空製造プロセスに加え、溶液法により、半導体結晶の表面に有機化合物からなる配位子を有する半導体超微粒子を製造する方法が開発されている。例えば、トリオクチルホスフィン(TOPO)等のホスフィンオキシド類を溶媒兼配位子とした反応(非特許文献1、非特許文献2)、カルボン酸誘導体を配位子とした反応(非特許文献3)等が挙げられる。
【0003】
このような半導体結晶の表面が配位子に覆われた半導体超微粒子は、既存の有機蛍光体と比してシャープな発光スペクトルを示し、さらに、無機物ならではの高い耐久性という特徴を有し、また、既存の無機蛍光体と比して、溶媒に可溶であるために、この配位子に覆われた半導体超微粒子を含む素子などの作成時に湿式プロセスが適用可能である等の特徴を有している。
【0004】
もっとも、このような半導体超微粒子の表面を覆う配位子としては、溶媒に対する分散性を向上させ、また、半導体超微粒子を外場の影響から遮蔽する目的から、例えば、長鎖脂肪族炭化水素等の絶縁性が高く且つ嵩高い化合物が用いられている。このため、半導体結晶の表面が配位子に覆われた半導体超微粒子は、外場と半導体超微粒子とのキャリアのやりとり、外場から半導体超微粒子への効率的なエネルギー移動、または、半導体超微粒子を介したキャリア輸送等の、電子デバイスとして要求される性能が低い傾向があると考えられている。
【0005】
一方、このような半導体超微粒子を、新しい発光材料として電界発光素子等の電子デバイスへと適用すべく、配位子に覆われた半導体超微粒子にキャリア輸送能を付与するための方策が検討されている。例えば、半導体超微粒子が有する配位子を、配位子交換反応により、半導体超微粒子を合成する際に配位する有機化合物(初期配位子)から、他の有機化合物(機能配位子)へと交換することにより、半導体超微粒子の物性・機能の新規付与や改善を行うといった試みが報告されている。具体的には、例えば、配位子交換反応により、半導体超微粒子表面に蛍光性を有する縮合多環芳香族化合物を導入し、半導体結晶から有機配位子へのキャリア移動あるいはエネルギー移動を検討した例(非特許文献4)、オリゴチオフェン誘導体を半導体結晶表面に導入し、半導体結晶−オリゴチオフェン誘導体間の電子移動・エネルギー移動を検討した例(非特許文献5)が挙げられる。
【0006】
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリ(Jounal of Physical Chemistry)」,(米国),1994年,第98巻,p.4109−4117
【非特許文献2】
「ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリ(Jounal of Physical Chemistry)」,(米国),1997年,B−第101巻,p.9463−9475
【非特許文献3】
「ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリ(Jounal of Physical Chemistry)」,(米国),1999年,B−第103巻,p.9854−9858
【非特許文献4】
「ラングミュア(Langmuir)」,(米国),2001年,第17巻,p.2861
【非特許文献5】
「アドバンスド・マテリアルズ(Advanced Materials)」,(米国),2003年,第15巻,p.58
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献4の場合は、配位子交換後の半導体超微粒子を紫外光によって励起すると、蛍光性の配位子からの発光のみが観測され、半導体結晶に由来する特徴的な発光が消光されてしまう。さらに、非特許文献5の場合は、半導体結晶からの発光と配位子であるオリゴチオフェンからの発光とが合わせて観測されるものの、配位子の導入によって半導体結晶からの発光は大幅に消光(クエンチ)される現象が見られる。
【0008】
このように、配位子交換は、配位子に覆われた半導体超微粒子に新規物性を付与し又は改善する一方で、機能配位子と半導体結晶との組み合わせによっては、配位子の影響により半導体結晶の発光が消光し、高い発光効率という半導体超微粒子の特徴が失われたり、配位子からの発光が観測される場合も生じ、半導体超微粒子を電界発光素子へ適用するには、さらなる改善策が必要とされている。
【0009】
本発明は、このような半導体結晶の表面が有機化合物からなる配位子により覆われた半導体超微粒子を電界発光素子等の電子デバイスに応用する際に浮き彫りになった問題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、半導体結晶が有する優れた発光特性等の特徴を保持しつつ、溶媒への良好な分散性を有し、電界発光素子等の電子デバイス用材料として好適な半導体超微粒子及びこれを用いた電界発光素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明においては、半導体結晶の電子準位のエネルギーと有機化合物の配位子のイオン化ポテンシャル及び電子親和力との関係とが特定の範囲になるように、半導体結晶と配位子とを組み合わせた構成を採用している。即ち、本発明が適用される半導体超微粒子は、励起状態からの発光スペクトルが観測される半導体結晶と、この半導体結晶の表面に配位し、励起状態からの発光スペクトルが観測されない配位子とを有し、半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位エネルギーと配位子のイオン化ポテンシャルとの差が2eV以下であり、且つ、半導体結晶の伝導帯における最低の電子準位エネルギーと配位子の電子親和力との差が2.5eV以下であることを特徴とするものである。
【0011】
より具体的には、半導体超微粒子を構成する半導体結晶としては、周期表第14族元素、周期表第15族元素及び周期表第16族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、量子効果による発光特性を得ることができる。
【0012】
また、半導体結晶は、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物、周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物及び周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物によりシェルが形成されたコア−シェル構造を有することが好ましく、半導体結晶の量子効果による発光特性をさらに改良することができる。
【0013】
一方、本発明が適用される半導体超微粒子における配位子は、(a)置換基を有することがある二つ以上の環を持つ縮合多環芳香族炭化水素環基または縮合多環芳香族複素環基を有する有機化合物、及び(b)置換基を有することがある芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を少なくとも2個有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種の有機化合物であることが好ましい。このような有機化合物からなる配位子は、絶縁性および電子物性が改善され、半導体超微粒子と外場とのキャリアに関する障壁が減少する。
【0014】
なお、配位子には、配位子を半導体結晶の表面に配位させるための配位官能基として、周期表第15族元素又は周期表第16族元素を含有する官能基を有することを特徴とし、この配位子官能基により半導体結晶の表面に配位子が結合される。また、配位子と併用して、半導体結晶の表面に配位し、溶剤分散性を向上させる補助的配位子をさらに有することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明が適用される半導体超微粒子を含有する発光層を有する電界発光素子が提供される。電界発光素子は、基板上に、陽極、発光層及び陰極と、をこの順番に積層してなる構造を有するものである。
【0016】
本発明が適用される半導体超微粒子は、半導体結晶の電子準位のエネルギーとの関係が特定の範囲であるイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を有する有機化合物の配位子を用いることにより、配位子の電子構造に由来する絶縁性は大幅に緩和され、半導体超微粒子と外場とのキャリアに関する障壁が減少する。また、外場の励起エネルギーが半導体超微粒子内部へ効率良く移動する等の機能が付与される。そして、このような半導体超微粒子を含有する電界発光素子は、絶縁性が大幅に緩和されるため、電界発光素子中のキャリア輸送がスムーズに行われる。
【0017】
本発明が適用される半導体超微粒子は、既知の半導体超微粒子を、半導体超微粒子の価電子帯の中の最高の電子準位のエネルギーおよび伝導帯の中の最低の電子準位のエネルギーに対し、特定の範囲のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力をそれぞれ有する有機化合物と溶解性の向上に寄与する補助的配位子をその表面に共存させた半導体超微粒子とすることで、溶媒への良好な分散性を保持しつつ、電子物性が改善される。
【0018】
本発明が適用される半導体超微粒子は、シャープな発光スペクトルに加え、無機物ならではの高い耐久性という特徴を有し、また、溶媒に可溶である。さらに、既存の半導体超微粒子に比して電子物性が大幅に改善されており、電子デバイス、特に、電界発光素子の発光材料への適用が可能であり、その技術的価値は大きいものである。
【0019】
また、本発明が適用される半導体超微粒子は、半導体結晶に由来する励起状態からの発光スペクトルのみが観測され、配位子の励起状態からの発光スペクトルが観測されない。このような半導体超微粒子を含有する発光層を、陽極と陰極との間に存在させ、電界発光素子を作製することが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本実施の形態が適用される半導体超微粒子について説明する。
本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、半導体結晶を主体とし、この半導体結晶の表面に、有機化合物からなる配位子が配位した構造を有するものである。この主体となる半導体結晶の大きさをナノメートル(nm)レベルとすることで、量子効果によって生ずる量子化された準位エネルギーギャップを生じ、その結果、この量子化された準位エネルギーギャップに起因する電磁波の吸収および発生現象が観測される。電界発光素子として応用する上で、特に有用な発光波長範囲は、遠紫外〜赤外領域の光であり、通常150〜10000nm、好ましくは180〜8000nm、更に好ましくは200〜6000nm、最も好ましくは220〜4000nm程度の範囲である。尚、量子化された準位エネルギーギャップの大きさは、半導体超微粒子の粒径に依存する。
【0021】
(半導体結晶)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子における半導体結晶は、特に限定されず、例えば、半導体単結晶、複数半導体結晶組成が相分離した混晶、相分離の観察されない混合半導体結晶のいずれから構成することができる。また、後述するコア−シェル構造とすることも可能である。半導体結晶の粒径は、吸発光能等の電磁気学的特性の観点から、重量平均粒径として、通常0.5〜20nm、好ましくは1〜15nm、更に好ましくは2〜12nm、最も好ましくは2〜10nmである。半導体結晶の粒径が過度に小さい場合は、半導体結晶の粒径が過度に小さい場合は、独立した半導体結晶としての機能(例えば、発光能を与えるバンド構造の形成等)が低下したり、製造時の単離収率が極端に低下する場合がある。また、半導体結晶の粒径が過度に大きい場合は、凝集性が極端に増大したり、量子効果によるエキシトン吸発光の制御性が低下する場合がある。
【0022】
半導体結晶の量子効果による発光特性は、このような半導体結晶の粒径により制御される。この粒径は、通常、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で測定することが可能である。尚、半導体結晶に含有される元素の原子番号が小さいために電子線によるコントラストが小さい場合には、半導体超微粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による観察、溶液中の光散乱、中性子散乱測定と元素分析等の組成分析結果を組み合わせて測定することができる。
【0023】
半導体結晶の粒径分布は特に限定されないが、半導体結晶の量子効果による発光特性を利用する場合、このような粒径分布を変えて、必要とする発光波長幅を変化させることができる。例えば、粒径分布を、通常、標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、最も好ましくは±10%以内として狭くすることにより、発光波長幅を狭くすることができる。
【0024】
(半導体結晶の組成)
半導体結晶の組成は、特に限定されないが、具体例としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体;リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体;セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体;炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物;周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(又はIII−V族化合物半導体);周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物;周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(又はII−VI族化合物半導体);周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物;周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物;周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物;カルコゲンスピネル類;バリウムチタネート(BaTiO)等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、発光能の点で実用的に重要なものを組成式で示すと、例えば、SnS、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物;GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体;Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体;As、As、AsSe、AsTe、Sb、Sb、SbSe、SbTe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物;MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物が挙げられる。これらの中でも、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、CdO、CdS等は、毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性の点で好ましく、この観点でZnO及びZnSは更に好ましく、安全性、原料の経済性等の点でZnSは最も好ましい。また、CdSeとZnSeは発光の安定性の点で非常に好ましい。
【0026】
(コア−シェル構造)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子における半導体結晶は、内核(コア)と外殻(シェル)からなるいわゆるコア−シェル構造とすると、コアを成す半導体結晶の量子効果による発光能が改良されるので好適である。コア−シエル構造の場合、コアを形成する半導体結晶構造よりもバンドギャップエネルギーの大きな半導体結晶構造をシェルとして起用することにより、コア形成する半導体結晶の発光効率を減衰させる表面準位や結晶格子欠陥準位等を経由するエネルギー損失を防ぐことが可能である。
【0027】
このようなコア−シエル構造におけるシェルに好適に用いられる半導体結晶としては、コアを形成する半導体結晶のバンドギャップエネルギーにもよるが、通常、温度300Kのバルク状態におけるバンドギャップが、2.0eV以上、好ましくは、2.3eV以上、更に好ましくは2.5eV以上であるものが挙げられる。具体的には、例えば、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(III−V族化合物半導体);周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(II−VI族化合物半導体);周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が好適に用いられる。これらの中、好ましいシェルとなる半導体結晶組成は、BN、BAs、GaN等のIII−V族化合物半導体;ZnO、ZnS、ZnSe、CdS等のII−VI族化合物半導体;MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が挙げられる。また、最も好ましいのは、BN、BAs、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、MgSe等である。
【0028】
尚、上述した半導体結晶には、必要に応じて微量の各種元素をドープ物質(故意に添加する不純物の意味)として加えることができる。このようなドープ物質を添加することにより半導体結晶の発光特性を大きく向上させることができる。
【0029】
(配位子)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、半導体結晶の表面に配位する有機化合物の配位子を有する。半導体結晶と配位子との結合様式は、特に限定されないが、例えば、配位結合、共有結合、イオン結合等の比較的強い化学結合、ファンデルワールス力、水素結合、疎水−疎水相互作用、分子鎖の絡み合い効果等の比較的弱い可逆的な引力相互作用等が例示される。
【0030】
本実施の形態において、半導体超微粒子の表面に存在する有機化合物からなる配位子を機能配位子と呼ぶ。この機能配位子は、後述する初期配位子が有する嵩高く絶縁性が高いという立体的要因およびその電子物性が改善され、半導体超微粒子と外場とのキャリアに関する障壁が減少し、また、外場の励起エネルギーが半導体超微粒子内部へ効率良く移動する等の機能が付与される等の性質を有するものである。
【0031】
本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、半導体結晶と機能配位子との間に、以下の条件を満足するものである。即ち、半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギー(単位;eV)と機能配位子のイオン化ポテンシャル(単位;eV)との差(ΔE1 単位;eV)の絶対値が、通常2.0以下、好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0032】
さらに、半導体結晶の伝導帯における最低の電子準位のエネルギー(単位;eV)と機能配位子の電子親和力(単位;eV)との差(ΔE2 単位;eV)の絶対値が、通常2.5以下、好ましくは2.3以下、更に好ましくは2.1以下である。
【0033】
本実施の形態が適用される半導体超微粒子において、半導体結晶と機能配位子との関係がこのような条件を満足し、且つ、半導体結晶の表面に機能配位子が配位した場合に、半導体結晶の励起状態からの発光は消光(クエンチ)せず、また、配位子の励起状態からの発光スペクトルが観測されない。即ち、機能配位子の存在は、半導体結晶の励起状態からの発光スペクトルに影響を及ぼさない。従来、半導体結晶の表面に、バンドギャップが小さい配位子を配位させると、配位子の影響により半導体結晶の発光が消光し、半導体超微粒子の特徴が失われることにより、例えば、電界発光素子等に適用することが困難とされていた。本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、上述したような、特定の条件を満足するように半導体結晶と機能配位子との組み合わせを選択することによって、例えば、外場と半導体超微粒子とのキャリアのやりとり、外場から半導体超微粒子への効率的なエネルギー移動、または、半導体超微粒子を介したキャリア輸送等の、電子デバイスとして要求される性能が改善される。
【0034】
一般に、半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギー及び伝導帯における最低の電子準位のエネルギーは、真空準位を基準として決定される。価電子帯における最高の電子準位のエネルギーは、価電子帯における最高の電子準位に存在する電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーとして定義され、伝導帯における最低の電子準位のエネルギーは真空準位にある電子が伝導帯における最低の電子準位に落ちて安定化するエネルギーとして定義される。
【0035】
また、半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギーは、走査型トンネル分光法を用いて、直接決定されるか、又は、半導体結晶の大きさを有する井戸形ポテンシャルに束縛された有効質量をもつ粒子の波動関数に対する近似計算から求められる。伝導帯における最低の電子準位のエネルギーは、上述の価電子帯における最高の電子準位のエネルギーから光学的バンドギャップを差し引いて求められるか、又は、走査型トンネル分光法を用いて、直接決定される。
【0036】
一方、一般に、有機化合物からなる機能配位子のイオン化ポテンシャル及び電子親和力は真空準位を基準として決定される。イオン化ポテンシャルは物質の最高被占分子軌道(HOMO)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーとして定義され、電子親和力は真空準位にある電子が物質の最低空分子軌道(LUMO)レベルに落ちて安定化するエネルギーとして定義される。
【0037】
有機化合物からなる機能配位子のイオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接測定されるが、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正することによっても求められる。後者の方法の場合は、例えば、飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、イオン化ポテンシャルは、次式により求められる。
イオン化ポテンシャル=酸化電位(vs.SCE)+4.3 eV
(モレキュラー・セミコンダクタース(Molecular Semiconductors),(米国),スプリンガ−フェアラーク(Springer−Verlag),1985年,p.98)。また、有機化合物の電子親和力は、上述のイオン化ポテンシャルから光学的バンドギャップを差し引いて求められるか、電気化学的な還元電位から上記の式で同様に求められる。
【0038】
尚、機能配位子に覆われた半導体結晶の励起状態からの発光のみが観測され、機能配位子の励起状態からの発光が観測されない状態とは、初期配位子が表面に存在する際に得られる半導体超微粒子の蛍光発光スペクトルのスペクトル形状と、機能配位子が表面に存在する際に得られる半導体超微粒子の蛍光発光スペクトルのスペクトル形状が、発光強度で規格化した場合に同一である状態を示す。すなわち、配位子交換した後の半導体超微粒子の発光スペクトルは配位子交換する前の発光スペクトルと同一のスペクトル形状であり、半導体結晶の表面に配位した機能配位子に由来する発光スペクトルが観測されない状態をいう。
【0039】
本実施の形態が適用される半導体超微粒子が有する機能配位子としては、半導体結晶の価電子帯における電子準位のエネルギーとイオン化ポテンシャルとの差、及び、半導体結晶の伝導帯における最低の電子準位のエネルギーと機能配位子の電子親和力との差が、前述した関係を満足するものであれば特に限定されないが、例えば、(a)置換基を有することがある二つ以上の環を持つ縮合多環芳香族炭化水素環基または縮合多環芳香族複素環基を有する有機化合物、(b)置換基を有することがある芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を少なくとも2個有する有機化合物が挙げられる。
【0040】
このような(a)置換基を有することがある二つ以上の環を持つ縮合多環芳香族炭化水素環基または縮合多環芳香族複素環基を有する有機化合物としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、クリセン、チエノチオフェン、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、カルバゾール、テトラチアフルバレン、アズレン等が挙げられ、さらに、これらの化合物の誘導体をその分子骨格の一部に有する有機化合物が挙げられる。これらの中でも、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントロリン、チエノチオフェン、カルバゾール、テトラリアフルバレンが好ましい。
【0041】
(b)置換基を有することがある芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を少なくとも2個有する有機化合物としては、例えば、ビフェニル、ターフェニル、フルオレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ビピリジン、トリフェニルアミン、フタロシアニン等が挙げられ、さらに、これらの誘導体をその分子骨格の一部に有する有機化合物が挙げられる。これらの中でも、フルオレン、ポリピロール、フタロシアミン、フタロシアニンが好ましい。
【0042】
また、機能配位子としての有機化合物が有することがある置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、水酸基が好ましい。
【0043】
このような機能配位子は、低分子化合物又は高分子化合物のいずれも使用することができる。また、上述した(a)又は(b)の化合物の分子構造が、主鎖又は側鎖として含有されている高分子化合物を使用することができる。但し、上記の構造を有していても、半導体超微粒子表面に導入後に機能配位子の励起状態からの発光スペクトルが観測されるものは除かれる。
【0044】
有機化合物からなる機能配位子は、機能配位子を半導体結晶の表面に配位させるための配位官能基(アンカー)を有する。このような配位官能基としては、特に限定されないが、例えば、周期表第15族元素又は周期表第16族元素を含有する官能基が挙げられる。具体的には、周期表第15族元素を含有する官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、ニトリル基、イソシアネート基等の含窒素多重結合を有する官能基;ピリジン環、トリアジン環等の含窒素芳香環等の窒素含有官能基;1級ホスフィン基、2級ホスフィン基、3級ホスフィン基、1級ホスフィンオキシド基、2級ホスフィンオキシド基、3級ホスフィンオキシド基、1級ホスフィンセレニド基、2級ホスフィンセレニド基、3級ホスフィンセレニド基、ホスホン酸等のリン含有官能基等が挙げられる。これらの中、好ましく利用されるのは、ピリジン環等の窒素含有官能基;1級アミノ基、3級ホスフィン基、3級ホスフィンオキシド基、3級ホスフィンセレニド基、ホスホン酸基等のリン含有官能基が挙げられる。
【0045】
周期表第16族元素を含有する官能基としては、水酸基、メチルエーテル基、フェニルエーテル基、カルボキシル基等の酸素含有官能基;メルカプト基(別称はチオール基)、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、フェニルスルフィド基、メチルジスルフィド基、フェニルジスルフィド基、チオ酸基、ジチオ酸基、キサントゲン酸基、キサンテート基、イソチオシアネート基、チオカルバメート基、スルホ基、スルホキシド、チオフェン環等の硫黄含有官能基;−SeH、−SeCH、−SeC等のセレン含有官能基;−TeH、−TeCH、−TeC等のテルル含有官能基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、メルカプト基、メチルスルフィド基等の硫黄含有官能基が挙げられる。
【0046】
尚、半導体ナノ結晶に代表される半導体結晶に配位するこのような有機化合物からなる配位子の具体的な配位化学構造は十分に解明されていないが、本実施の形態においては、半導体超微粒子表面に上述した有機化合物が存在する限り、配位子官能基は必ずしもそのままの構造を保持していなくても良い。
【0047】
(補助的配位子)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、必要に応じて機能配位子と共に補助的配位子を任意の割合で併用することにより、機能配位子によって覆われた半導体超微粒子の溶剤への分散性又は溶解性を向上させ、半導体超微粒子の電子物性をさらに高めることができる。補助的配位子としては、特に限定されないが、例えば、半導体超微粒子の合成の際に使用される液相媒質の構成成分、配位子、界面活性剤等の有機化合物、又はこれらの有機化合物が何らかの化学変化を受けて生成する化合物等の有機成分が挙げられる。
【0048】
このような補助的配位子の具体例としては、例えば、トリアルキルホスフィン類、トリアルキルホスフィンオキシド類、アルカンスルホン酸類、アルカンホスホン酸類、アルキルアミン類、ジアルキルスルホキシド類等が挙げられる。これらの中、トリオクチルホスフィンオキシド、テトラデカンホスホン酸、ヘキサデシルアミンは、後述するホットソープ法による半導体超微粒子の合成に使用する反応溶媒としても兼用でき、また、配位子に覆われた半導体超微粒子の発光効率上昇に寄与し、溶剤に対する溶解度向上に寄与する等の補助的機能を有するので極めて好適である。
【0049】
(配位子の含有量)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子が有する機能配位子及び補助的配位子の含有量は、使用される半導体結晶の粒径により適宜選択することができ、特に限定されないが、半導体超微粒子を分散させる溶媒、樹脂バインダ等の有機マトリクス物質への分散性及び化学的安定性を考慮すると、後述する単離精製工程を経て十分に精製された状態で、半導体超微粒子中、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは15〜60重量%程度である。
【0050】
有機化合物からなる機能配位子及び補助的配位子の含有量は、例えば、各種元素分析や熱重量分析等により測定される。また、配位子を構成する有機化合物の化学種や化学的環境についての情報は、赤外吸収スペクトル(IR)や核磁気共鳴(NMR)スペクトルから得られる。尚、半導体超微粒子における機能配位子と補助的配位子とのモル比は、通常、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、更に好ましくは0.1〜10である。
【0051】
(半導体超微粒子の製造方法)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子の製造方法としては、従来行われている下記の半導体超微粒子の製造方法等、公知の任意の方法が挙げられる。例えば、高真空プロセスとしては、(a)分子ビームエピタキシー法、CVD法等;液相製造方法としては、(b)原料水溶液を、例えば、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、又はベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の非極性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ、この逆ミセル相中にて結晶成長させる逆ミセル法、(c)熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させるホットソープ法、さらに、(d)ホットソープ法と同様に、酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で半導体結晶成長を伴う溶液反応法等が挙げられる。これらの中でも、(b)〜(d)に例示した液相製造方法が好ましい。
【0052】
尚、(b)〜(d)に例示した液相製造方法において、半導体超微粒子の合成に際して表面に存在することとなる有機化合物を、初期配位子と呼ぶ。例えば、ホットソープ法における初期配位子の例としては、トリアルキルホスフィン類、トリアルキルホスフィンオキシド類、アルキルアミン類、ジアルキルスルホキシド類、アルカンホスホン酸等が挙げられる。
【0053】
(配位子交換反応)
本実施の形態が適用される半導体超微粒子は、前述した液相製造方法において半導体結晶の表面に配位した初期配位子を、配位子交換反応により機能配位子に交換することが好ましい。具体的には、例えば、前述したホットソープ法により得られるトリオクチルホスフィンオキシド等の初期配位子は、機能配位子を含有する液相中で行う配位子交換反応により、機能配位子と交換することが可能である。この場合、必要に応じて溶剤を使用した液相としても良く、使用する機能配位子が反応条件において液体である場合には、それ自身を溶媒とし他の溶剤を添加しない反応形式も可能である。例えば、メタノール等アルコール類中で行う方法、ジメチルスルホキシドとメタノール等アルコール類の混合溶媒中で行う方法、クロロホルム等ハロゲン化溶剤中で行う方法等が挙げられる。また、ホットソープ法により半導体結晶の表面に配位したトリオクチルホスフィンオキシド等の配位性有機化合物は、この半導体結晶をピリジン等の弱配位性化合物を含有する液相に分散させて除去する方法も応用可能である。この場合、通常、ピリジン等の弱配位性化合物中で配位性有機化合物を除去する第一工程と機能配位子を加える第二工程とからなる二段階反応で行われる。
【0054】
このような配位子交換反応に用いられる溶剤は、配位子に覆われた半導体超微粒子又はその生成物等の溶解度調整等の必要に応じ、任意の種類・組み合わせ・混合比を適宜選択することができ、特に限定されない。配位子交換反応が行われる反応温度は、有機物の熱劣化や交換反応の未完結を避けることを考慮すると、通常、−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、更に好ましくは10〜150℃、最も好ましくは20〜120℃程度の温度範囲である。また、配位子交換反応が行われる反応時間は、原料や反応温度により適宜選択されるが、通常、1分〜100時間、好ましくは5分〜70時間、更に好ましくは10分〜50時間、最も好ましくは10分〜30時間程度である。尚、配位子交換反応において、初期配位子に覆われた半導体結晶と機能配位子とを反応系に加える順序に制限はない。
【0055】
配位子交換反応は、酸化等の副反応を避けるため、窒素やアルゴン等の不活性気体雰囲気において行うのが望ましい。また、配位子交換反応だけでなく、超微粒子製造の後処理工程は、遮光された条件下で行われることが好ましい。
【0056】
配位子交換反応により生成した生成物は、通常、濾過、沈殿法と遠心分離法との併用、蒸留、昇華等の任意の方法により単離することができる。特に、半導体結晶の比重が通常の有機化合物より大きいことを利用した沈殿法と遠心分離法との併用が好ましい。遠心分離法は、配位子交換反応後の生成物を含有する溶液を、機能配位子が表面に存在する半導体超微粒子にとって貧溶媒となる溶媒中に投入し、生成する沈殿を含む懸濁液を遠心分離して行われる。得られた沈殿は、デカンテーション等により上澄み液と分離し、必要に応じ溶媒洗浄や再溶解と再沈殿/遠心分離を繰り返して精製度を向上させることも可能である。
【0057】
本実施の形態が適用される半導体超微粒子を用いて電界発光素子を作製することが可能である。電界発光素子の構造は、特に限定されないが、通常、ガラス等の基板上に、陽極、発光層及び陰極と、をこの順番に積層した構造を有する。本実施の形態が適用される半導体超微粒子を含有する発光層を用いた電界発光素子は、発光効率が高く、発光スペクトルがシャープであり、耐久性が良好である。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本実施の形態を、より具体的に説明する。尚、本実施の形態は、実施例に限定されるものではない。また、合成例、実施例中の%は、特に断らない限り総て重量基準である。
(測定装置と条件等)
(1)赤外吸収(IR)スペクトル
日本分光工業(株)製FT/IR−8000型FT−IRを使用して、23℃にて測定した。
(2)吸収スペクトル
ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計を使用して、光路長1cmの石英製セルを用いて室温で測定した。
(3)光励起発光(PL)スペクトル
日立製作所(株)製F−2500型分光蛍光光度計にて、スキャンスピード60nm/分、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フォトマル電圧400Vの条件で、光路長1cmの石英製セルを用いて測定した。
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
日立製作所(株)製H−9000UHR型透過電子顕微鏡(加速電圧300kV、観察時の真空度約7.6×10−9Torr)にて行った。
【0059】
(5)半導体超微粒子の電流電圧(IV)特性の評価
図3は、半導体超微粒子の電流電圧(IV)特性の評価を行うための電界発光素子を説明するための図である。ここに示された電界発光素子30は、ガラス基板31上に、幅3mmのストライプにパターニングされたインジウム・スズ酸化物(ITO)の透明導電膜(シート抵抗30Ω、厚さ150nm)からなる陽極32を積層したITO基板と、陽極32上にスピンコートにより積層された半導体超微粒子の均一な薄膜(厚さ約200nm)からなる発光層33と、真空蒸着により形成したアルミニウム(厚さ100nm)の陰極34とを有し、サイズ3mm×3mmの電極面積を有している。
【0060】
電界発光素子30における発光層33は以下の操作により作製した。前述したITO基板をアセトンによる超音波洗浄後、窒素ブローにより乾燥し、次に、陽極32上に、半導体超微粒子のクロロホルム溶液(濃度50mg/ml)を、回転数1000rpm、回転時間180秒の条件でスピンコートし、その後、真空下、室温で15時間乾燥して発光層33を作製した。
【0061】
また、陰極34は以下の操作により作製した。発光層33を形成したITO基板に、陰極蒸着用のマスクとして幅3mmのストライプ状シャドウマスクを陽極32のITOストライプと直交するように密着させ、これを真空蒸着装置内に設置し、油拡散ポンプを用いて、装置内を真空度1.2×10−5Torr(約1.6×10−3)以下まで排気し、続いて、タングステンボートに入れたアルミニウムを加熱して、基板温度40℃以下、蒸着速度1nm/秒で、厚さ100nmのアルミニウム層からなる陰極34を形成した。
【0062】
このような操作により作製した電界発光素子30を、ソースメータ(KEITHLEY社製モデル2400シリーズ)を用いて、電流電圧(IV)特性を測定した。
【0063】
(合成例1;初期配位子を有するCdSe超微粒子の合成)
無色透明のガラス製3口フラスコにトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)4gを入れ、乾燥Arガス雰囲気でマグネチックスターラーで攪拌しながら350℃に加熱した。別途、乾燥窒素雰囲気下で、セレン(単体の黒色粉末)0.05gをトリブチルホスフィン(TBP)2.19gに溶解した液体に、さらにジメチルカドミウムの10%n−ヘキサン溶液1.09gを混合溶解した原料溶液Aを、ゴム栓で封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に調製した。
【0064】
次に、原料溶液A2.0mlを、前記のTOPOの入ったフラスコに注入した。注入直後、設定温度を300℃とし、反応開始10分後に熱源を除去し約60℃に冷却された時点で無水メタノール10mlを注入して不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、固形粉末を得た。この固形粉末をトルエン2mlに溶解したトルエン溶液を調製し、このトルエン溶液を無水メタノール20ml中に注入し、室温で5分間撹拌し、遠心分離とデカンテーションにより固体沈殿を分離し、さらに、この固体を室温にて一晩真空乾燥して赤色固形粉体77mgを得た。
【0065】
こうして得た赤色固体粉末をトルエンに溶解し、吸収スペクトルを測定したところピーク波長が548nmに観測された。また、励起光366nmによる発光スペクトルを測定したところ、緑色の発光帯(ピーク波長560nm)が観測された。さらに、この赤色固体粉末のIRスペクトルを測定したところ、TOPOに由来する吸収が観測され、このCdSe半導体結晶の表面には初期配位子としてTOPOが存在していることが確認された(CdSe−TOPOと略記する)。尚、CdSe半導体結晶の粒径は、3.9nmであった。
【0066】
(合成例2;初期配位子を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の合成)
褐色のガラス製3口フラスコにTOPO3gおよびテトラデカンホスホン酸(TDPA)0.060gを入れ、内部をAr置換し、100℃に昇温した。次に、フラスコ中に合成例1で得られたCdSe−TOPOの固形粉体0.03gとトリオクチルホスフィン(TOP)0.3gとn−ヘキサン0.5mlを加え、CdSe−TOPOを含有する溶液を調製した。これを100℃の減圧下で更に約1時間攪拌後、温度を160℃に昇温し、乾燥Arガスを用いて大気圧に復圧した。
【0067】
別途、乾燥窒素雰囲気下で、ジエチル亜鉛の1N濃度n−ヘキサン溶液0.42mlとビス(トリメチルシリル)スルフィド0.089mlをTOP3mlに溶解した原料溶液Bを、ゴム栓で封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に調製した。
【0068】
続いて、この原料溶液Bを、160℃に昇温したCdSe−TOPOを含有する溶液に30分間かけて滴下し、90℃に降温後約2時間攪拌を継続し、さらに室温にて約14時間静置後、再び90℃に昇温して4時間加熱撹拌を行った。次に、熱源を除去し、無水n−ブタノール2mlを反応液に加え、室温まで冷却した後に、さらに約90分間撹拌した。この反応液を、室温で無水メタノール20ml中に滴下し、20分間攪拌することにより沈殿操作により赤色不溶物を生じさせた。
【0069】
この赤色不溶物を、合成例1と同様に、遠心分離及びデカンテーションにより分離したのち、トルエン2mlに溶解してトルエン溶液を調製し、このトルエン溶液を、濾過後、無水メタノール20ml中に室温で注入し、5分間撹拌した後、遠心分離し、上澄みをデカンテーションにより除去し、赤色固体粉末を得た。この固体を室温で一晩真空乾燥して、赤色固体粉末40mgを得た。
【0070】
こうして得た赤色固体粉末をクロロホルムに溶解し、吸収スペクトルを測定したところ、ピーク波長が556nmに観測された。また、励起光366nmにより発光スペクトルを測定したところ、緑色の発光帯(ピーク波長569nm)が観測された。この発光は、同程度の溶液濃度において、合成例1で得たCdSe−TOPOの場合よりも明らかに発光強度が大きいことから、原料のCdSe超微粒子を用いてCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子が合成されたことが確認された。CdSe−TOPOの場合よりも発光強度が大きいのは、ZnSシェルが形成されたことにより、表面準位等を経由する非発光過程の寄与が抑制されたものと考えられる。尚、CdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の粒径は、5.5nmであった。
【0071】
また、この赤色固体粉末のIRスペクトルを測定したところ、TOPOに由来する吸収が観測されたことから、このCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の表面に、初期配位子としてTOPOが存在していることが確認された(CdSe/ZnS−TOPOと略記する)。
【0072】
尚、CdSe結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギーは6.7eVであり、光学的バンドギャップが2.2eVであることから、CdSe結晶の伝導帯の中の最低の電子準位のエネルギーは、4.5eVである。
【0073】
(実施例1;機能配位子として2−ナフタレンチオール(2NT)を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)型半導体超微粒子の合成)
配位子交換反応により、合成例2において得られたCdSe/ZnS−TOPOの初期配位子であるTOPOを2NTに交換し、半導体超微粒子(1)を合成した。2NTは以下の理由により、機能配位子である。
即ち、下記構造式で表される2NTのイオン化ポテンシャルは7.9eVであり、光学的バンドギャップは3.7eVと見積もられることから、2NTの電子親和力は4.2eVとなる。したがって、合成例2で合成されたZnSシェルを有するCdSe超微粒子と2NTのエネルギー準位を比較した場合、ZnSシェルを有するCdSe結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギー(6.7eV)と2NTのイオン化ポテンシャル(7.9eV)との差は1.2eV(7.9eV−6.7eV<2.5eV)であり、CdSe結晶の伝導帯における最低の電子準位のエネルギー(4.5eV)と2NTの電子親和力(4.2eV)との差は、0.3eV(4.5eV−4.2eV<2.0eV)である。
【0074】
【化1】
Figure 2004315661
【0075】
以下の手順で配位子交換反応を行った。
合成例2で得たCdSe/ZnS−TOPO5.0mgを、アルミニウム箔で隙間なく包んで遮光したガラス容器内で乾燥窒素雰囲気下、クロロホルム溶液(約1ml)とした。これを室温で攪拌しながら、2NTのクロロホルム溶液(10mg/ml)1mlを加え、室温遮光条件で3時間攪拌し、次に、反応溶液を無水メタノール10mlと混合し、得られた不溶物を遠心分離とデカンテーションにより分離した。分離した不溶物をメタノール10ml中に分散させ、超音波照射後、遠心分離及びデカンテーションを行い、固体生成物3.0mgを得た。
【0076】
この固体生成物は、クロロホルム等への溶媒に対する分散性を備えていた。また、固体生成物のIRスペクトルにより、2NTのナフタレン環に帰属される吸収帯が観測され、CdSe/ZnS半導体結晶の表面に機能配位子として2NTが配位したことが確認された(半導体超微粒子(1))。
【0077】
半導体超微粒子(1)のクロロホルム溶液の吸収スペクトルは、ピーク波長が555nmに観測された。また、図1は、半導体超微粒子(1)の発光スペクトルである。図1に示すように、励起光366nmによる発光スペクトルは、ピーク波長が571nmである緑色の発光帯が観測され、発光素子として十分な発光強度が得られた。これらの結果は、配位子交換反応を行う前のCdSe/ZnS−TOPOとほぼ同じであった。尚、機能配位子の2NTに由来する発光スペクトルは観測されなかった。
【0078】
また、図4は、半導体超微粒子(1)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子の電流電圧(IV)特性を示す図である。図4には、比較のため、配位子交換反応前の初期配位子を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子のIV特性を併せて記載してある。図4の結果から、半導体超微粒子(1)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子は、初期配位子を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子と比べて、低電圧から電流値の立ち上がりが観測され、5ボルトの印加時の電流値が20倍以上になることから、配位子の電子構造に由来する絶縁性が大幅に緩和されていることが分かる。
【0079】
(実施例2;機能配位子としてバソフェナントロリン(BPHEN)を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)型半導体超微粒子の合成)
配位子交換反応により、合成例2で得られたCdSe/ZnS−TOPOの初期配位子をBPHENに交換し、半導体超微粒子(2)を合成した。BPHENは、以下の理由により機能配位子である。
即ち、下記構造式で表されるBPHENのイオン化ポテンシャルは6.4eVであり、BPHENの光学的バンドギャップは3.4eVと見積もられることから、BPHENの電子親和力は3.0eVとなる。したがって、合成例2で合成されたZnSシェルを有するCdSe超微粒子とBPHENのエネルギー準位を比較した場合、CdSe結晶の価電子帯における最高の電子準位のエネルギー(6.7eV)とBPHENのイオン化ポテンシャル(6.4eV)との差は0.3eV(6.7eV−6.4eV<2.0eV)であり、CdSe結晶の伝導帯の中の最低の電子準位のエネルギー(4.5eV)とBPHENの電子親和力(3.0eV)との差は、1.5eV(4.5eV−3.0eV<2.5eV)である。
【0080】
【化2】
Figure 2004315661
【0081】
以下の手順で配位子交換反応を行った。
合成例2で得たCdSe/ZnS−TOPO5mgを、アルミニウム箔で隙間なく包んで遮光したガラス容器内で乾燥窒素雰囲気下、クロロホルム溶液(約1ml)とした。これを室温で攪拌しながら、BPHENのクロロホルム溶液(10mg/ml)1mlを加え、室温遮光条件で3時間攪拌した。その後、反応溶液を無水メタノール10mlと混合し、得られた不溶物を遠心分離とデカンテーションにより分離した。こうして分離した不溶物をメタノール10ml中に分散させ、超音波照射後、遠心分離及びデカンテーションを行い、固体生成物3.4mgを得た。
【0082】
この固体生成物は、クロロホルム等への溶媒に対する分散性を備えていた。また、この固体生成物のIRスペクトルにより、BPHENに帰属される吸収帯が観測され、CdSe/ZnS半導体結晶の表面に機能配位子としてBPHENが存在することが確認された(半導体超微粒子(2))。
【0083】
半導体超微粒子(2)のクロロホルム溶液の吸収スペクトルは、ピーク波長が555nmに観測された。また、図2は、半導体超微粒子(2)の発光スペクトルである。図2に示すように、励起光366nmによる発光スペクトルは、ピーク波長が570nmである緑色の発光帯が観測され、発光素子として十分な発光強度が得られた。これらの結果は、配位子交換を行う前のCdSe/ZnS−TOPOとほぼ同じであった。尚、機能配位子のBPHENに由来する発光スペクトルは観測されなかった。
【0084】
また、図5は、半導体超微粒子(2)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子の電流電圧(IV)特性を示す図である。図5には、比較のため、配位子交換反応前の初期配位子を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子のIV特性を併せて記載してある。図5の結果から、半導体超微粒子(2)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子は、初期配位子を有するCdSe(コア)−ZnS(シェル)超微粒子の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子と比べて、低電圧から電流値の立ち上がりが観測され、5ボルトの印加時の電流値が25倍以上になることから、配位子の電子構造に由来する絶縁性が大幅に緩和されていることが分かる。
【0085】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、電界発光素子等の電子デバイス用材料として好適な半導体超微粒子及びこれを用いた電界発光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体超微粒子(1)の発光スペクトルである。
【図2】半導体超微粒子(2)の発光スペクトルである。
【図3】半導体超微粒子の電流電圧(IV)特性の評価を行うための電界発光素子を説明するための図である。
【図4】半導体超微粒子(1)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子の電流電圧(IV)特性を示す図である。
【図5】半導体超微粒子(2)の薄膜からなる電界層を有する電界発光素子の電流電圧(IV)特性を示す図である。
【符号の説明】
30…電界発光素子、31…ガラス基板、32…陽極、33…発光層、34…陰極

Claims (7)

  1. 励起状態からの発光スペクトルが観測される半導体結晶と、
    前記半導体結晶の表面に配位し、励起状態からの発光スペクトルが観測されない配位子と、を有し、
    前記半導体結晶の価電子帯における最高の電子準位エネルギーと前記配位子のイオン化ポテンシャルとの差が2eV以下であり、
    前記半導体結晶の伝導帯における最低の電子準位エネルギーと前記配位子の電子親和力との差が2.5eV以下であることを特徴とする半導体超微粒子。
  2. 前記半導体結晶は、周期表第14族元素、周期表第15族元素及び周期表第16族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体超微粒子。
  3. 前記半導体結晶は、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物、周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物及び周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物によりシェルが形成されたコア−シェル構造を有することを特徴とする請求項1記載の半導体超微粒子。
  4. 前記配位子は、(a)置換基を有することがある二つ以上の環を持つ縮合多環芳香族炭化水素環基または縮合多環芳香族複素環基を有する有機化合物、及び(b)置換基を有することがある芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を少なくとも2個有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の半導体超微粒子。
  5. 前記配位子は、当該配位子を前記半導体結晶の表面に配位させるための配位官能基として、周期表第15族元素又は周期表第16族元素を含有する官能基を有することを特徴とする請求項1記載の半導体超微粒子。
  6. 前記半導体結晶の表面に配位し、溶剤分散性を向上させる補助的配位子をさらに有することを特徴とする請求項1記載の半導体超微粒子。
  7. 基板と、
    前記基板上に、陽極、発光層及び陰極と、をこの順番に積層してなり、
    前記発光層が、請求項1記載の半導体超微粒子を含有することを特徴とする電界発光素子。
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