JP2004314218A - 回転鋸 - Google Patents
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Abstract
【課題】超硬質焼結体チップを用いた回転鋸で、特にハイシリコンアルミニウム合金などチップが土砂摩耗をしやすい材料の切断を行う際に、チッピングや台金の損傷が発生しにくく、耐久性が高くて寿命の長い回転鋸を提供する。
【解決手段】円板状の台金2の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、前記台座に超硬質焼結体からなるチップ4が固着された回転鋸1に関する。前記の超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップ長さ以上であって、台金2が鋼で構成されていて、チップポケット底部に超硬質粒子が固着されている回転鋸である。
【選択図】 図1
【解決手段】円板状の台金2の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、前記台座に超硬質焼結体からなるチップ4が固着された回転鋸1に関する。前記の超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップ長さ以上であって、台金2が鋼で構成されていて、チップポケット底部に超硬質粒子が固着されている回転鋸である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属材料などを切断するために刃部となるチップに超硬質焼結体を用いた回転鋸に関するものであり、チップや台金が土砂摩耗を受け易い材料の切断に好適な回転鋸に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドソーブレードを用いてコンクリートやアスファルト道路を切断すると、ダイヤモンド砥石セグメントの真下において台金が摩耗する。コンクリートやアスファルトに含まれている砂や砂利から発生する切粉がソーブレードの台金などに当たり、台金は摩耗して厚さが減少しやがて破損する。このような課題に対して特許文献1は、ダイヤモンドソーブレードの回転方向前面にダイヤモンド砥石セグメントと同等の耐摩耗性を有する耐摩耗性チップを接合したものを提案している。
【0003】
【特許文献1】
実開平3−88668号公報(第1、4〜6頁、図1〜4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1のソーブレードは、耐摩耗性のチップをダイヤモンド砥石セグメントのほかに余分に準備しなければならない。しかも一つ一つの耐摩耗性チップを薄い基板に接合しなければならず、高価なものになってしまい実用的ではない。そこで、本発明の目的は、台金回転方向前面のチップポケット部の耐摩耗性を高めた、安価で実用的な回転鋸を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明は、円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、台金が鋼で構成されていて、チップポケット底部の台金の上に超硬質粒子が固着されている回転鋸を提供するものである。
切粉が接触しやすく摩耗が生じやすいチップポケット底部に超硬質粒子が固着することで、台金が摩耗することを抑制し、回転鋸の長寿命化を実現できる。
【0006】
以下、本発明の構成をより詳しく説明する。
第一の発明において、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上である。回転鋸の切刃部分を回転方向前面から見たとき、最外周はチップであり以下順に超硬合金製の台座、更に台金で構成されるチップポケット底部へとつながっている。このとき台座の見える部分が、台座のチップポケット構成面である。そしてそのときのチップ半径方向の距離がチップの長さであり、チップポケット構成面の半径方向の距離がチップポケット構成面の長さとなる。耐摩耗性の高いものから順に並べると、超硬質焼結体からなるチップ、超硬合金製台座、台金を構成する鋼となる。被削材は、主としてチップ先端部で切断されるので最外周部に耐摩耗性の高いチップがあればよい。形成された切粉は、台座の部分で後部へ排出される。従って、切粉の流れをよくするためには、台座、特に台座中間部を長くすることが重要である。一方、価格面から見るとチップを構成する超硬質焼結体は超硬合金より高いので、チップを小さくし超硬合金製台座を大きくして台金の摩耗を防ぐことが考えられる。そこで、前記超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上とした。
【0007】
超硬合金製台座の一部が、チップの背面に位置する場合、台座の長さがチップの長さの倍以上の方が望ましい。チップを強固に台座に固着することができるからである。この構成の場合、実用性を考慮すれば、超硬合金製台座の長さの上限は、チップ長さの4倍以下程度である。それより大きくなるとチップにかかる抵抗によって、刃台が変形し易くなり、また刃振れが大きくなり好ましくない。
【0008】
台金のチップポケット底部には超硬質粒子を固着する。チップポケット底部は切粉との接触により摩耗しやすい鋼の台金が露出しているので、超硬質粒子を固着することで、その部分の耐摩耗性を高めることができる。従って、従来のソーブレードのように、耐摩耗性のチップをダイヤモンド砥石セグメントのほかに余分に準備する必要もなく、ロウ付け接合のために、再度台金を加熱する必要もないので、台金の歪が防止できる。また、耐摩耗性チップに比べて超硬質粒子は台金からはずれにくい。超硬質粒子の固着は、台金だけでなく台座に行なっても良い。
【0009】
超硬質粒子の固着は、ダイヤモンド粒子またはCBN粒子のNiストライクメッキによる電着であることが望ましい。ダイヤモンド粒子またはCBN粒子は、特に硬質で耐摩耗性に優れる上、Niストライクメッキは、これら粒子の固着を容易に行なえる手段である。
【0010】
用いる超硬質粒子の平均粒径は、5〜50μmであることがさらに望ましい。5μmより小さいものは実用上使用しづらいためである。50μmより大きいものは超硬質粒子の固着面の粗さが粗くなり、切粉が引っかかり易くなって排出性が悪化するためである。
【0011】
超硬質粒子の固着は、通常、台金のチップポケット底部以外をマスキングし、メッキすることで行なう。一方、台金の側面部にマスキングしないでNiメッキによる超硬質粒子の電着を行なうと、超硬質粒子のチップポケット底部への固着と、台金側面の外周部のNi電気メッキとを同時進行できて効率的である。このメッキは、切粉や砂による台金への損傷や切粉の堆積を防止する。したがって、台金側面の外周部の電気メッキは、台金の摩耗を防ぎ、工具寿命を延ばし、工具精度を長時間維持する効果がある。また、台金の刃台に台座をロウ付けするときに台金外周部に発生する色むらをなくす効果もある。このメッキの厚みは10〜100μm程度が好ましい。
【0012】
超硬質粒子の固着が、超硬合金の基本組成であるWC−Coの溶射であってもよい。この場合WCが超硬質粒子であり、Coが接合材の働きをして、WCを強固に台金に接合することができる。また、台金に用いられる鋼は、S45C、SKS、マルエージ鋼であることが望ましい。マルエージ鋼は、従来の鋼に比べると焼入れ硬度と靭性を高くできる。従って、これらの物性を必要に応じ制御する自由度が高い。
【0013】
台座には、平刃チップと山刃チップが交互に固着されていることが望ましい。ここで平刃チップというのは、図4に示すチップの上端が平坦なものである。これに対して山刃チップは、図4の平刃チップの角部を切り落とし台形状の切刃としたものである。山刃チップの上端の切刃部は、平刃チップより高くなっているので、被削材に案内溝の役割を持つ溝を形成する。従って、回転鋸の振れを防ぐことができる。
【0014】
また、第二の発明は、円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、台金が超硬合金で構成されている回転鋸を提供する。台金自体を超硬合金とすることで、台金が摩耗することを抑制する。超硬合金自体、鋼に比較すると耐摩耗性の高い材料なので超硬質粒子をチップポケット底部に固着しなくても、回転鋸の寿命を長くできる。
【0015】
第二の発明は、剛性の高い超硬合金を台金として使用するので、3mm以下の厚さの台金に適している。この厚さ限定により、薄い取りしろで切断できる。また、超硬合金製台金の側面全面にメッキすると、超硬合金表面に研磨時などに生じたマイクロクラックをNiが埋めるので、台金の寿命が長くなる。しかしながら、超硬合金製台金は脆いので、制振用スリットや歪み防止用スリットなど亀裂の始点になり易い構造を避ける方が望ましい。
【0016】
台金と台座に使用される超硬合金は、種類が異なることが好ましい。台金用の超硬合金は、薄い板に加工しやすく、衝撃に強く、靭性の高い材料が使用される。これに対して台座に用いる超硬合金は、耐欠損性に優れ、かつ耐摩耗性の高い材料が選ばれる。チップポケット底部は、鋼の台金と同様に超硬質粒子を固着した方が長い寿命となる。
【0017】
第二の発明において、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上としている理由は第一の発明と同様である。また、台座に平刃チップと山刃チップとを交互に固着することが好ましい点も第一の発明と同様である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の回転鋸の側面を図1、そのチップ部を拡大して図2に示す。図1に示す本発明の回転鋸は、SKS5やSKS51などの鋼や超硬合金製の薄板円板からなる台金2の外周に、チップ4が接合されていて矢印Rの方向に回転させて被切断材料を切断する。台金には、制振用スリット11や歪み防止用スリット12が設けられている。
【0019】
図2は、チップ4とチップ周辺部を拡大した側面図である。台金の外周部には刃台2aが形成され、そこに台座3がロウ付けされる。さらにその上に、超硬合金基台4bと超硬質焼結体4aが接合されてなるチップ4がロウ付けなどの方法で接合されている。回転鋸の加工精度は、回転鋸の寸法精度に依存しているので、チップ4、台座3および台金の刃台2aそれぞれの寸法精度と、ロウ付け精度を高く維持することが重要である。台金の刃台2aに台座3をロウ付けし、ついで台座3にチップ4をロウ付けすると寸法精度を高くロウ付けできる。
【0020】
台座3は、台座中間部よりも緩やかに傾斜した台座下部8を経由してチップポケット底部に至る。一方、チップポケット底部5は、超硬質粒子6がNiメッキにより固着され、この部分の耐摩耗性を高めている。Niの電気メッキ13は、例えば図2の斜線で示されている台金側面の外周部または台金側面の全面に形成することができる。台座3の中間部斜面7は、切粉が逃げ易いよう回転方向の後方へ行くほど幅が広がるように傾斜している。
【0021】
また、図2において、台座3は、チップポケット底部5より高い位置で台金の刃台2aにロウ付けされている。そして、台金の刃台2aは台金2より薄くなっているので、チップポケット底部5に到達した切粉は台座3と台金2の間隙を通って後方に排出され易くなっている。
【0022】
図3は本発明の別の実施例である。この例では、チップ4は直接台金の刃台2aに固着されている。台座3は、チップ4と台金の刃台2aの間に介在される部分がなく、チップの台金中心側に隣接して台金の刃台2aに固着されている。この方式は、台金が厚い場合にチップの接合強度が高くなるので利用される。チップポケット底部5に超硬質粒子6が固着されているので、チップポケット底部の摩耗は抑制される。
【0023】
図4は、回転鋸のチップを回転方向の前側から見たときの平刃チップの状態を示したものである。チップ先端に向かい先広がりの形状をしている。これは、チップの先端部のみで被削材を取り除き、それ以外の部分が被削材と接することを防ぐ効果がある。台座の長さをL1、台座の中間部長さをL2、チップの長さをL3、台座のチップポケット構成面の長さをL4とし、刃幅をW1、台座底の幅をW2とした。ただし、図中点線は、台座の上端部を示す。そして、W1はW2より大きくなっている。本発明では、L4がL3より長いことが重要である。また、台座3がチップの背面に位置する場合は、L1/L3が2以上であることが望ましい。L2の長さは、台座下部の長さと関係し適宜設定される。
【0024】
本発明の回転鋸は、チップを土砂摩耗させやすい材料の切断に適している。土砂摩耗とは、液体とその中に混在する固形物によって進む摩耗のことで、土砂が崩れるようなイメージで、切刃周辺が摩耗する摩耗形態のことである。本発明の回転鋸を使用することで、土砂摩耗を起こしやすい被削材に対しても台金の摩耗を防止でき、回転鋸の寿命を大幅に向上させることができる。具体的には、4〜20%シリコンアルミニウムやALC(軽量気泡コンクリート)、MMCなどの切断に好適な回転鋸を提供しようとするものである。特に、エンジンのシリンダブロックなどに用いられるハイシリコンアルミニウム合金を200℃以上に加熱した状態で切断する場合に特に効果がある。
【0025】
図1および図2において円板状の台金2の外周縁部に、台座3を台金の刃台2aに、チップ4を台座3にロウ付けする際の熱膨張による歪を抑制する歪み防止用スリット12を設けることができる。一般に、チップ4もしくはチップの台座3を台金2に接合するには、ロウ付けが用いられる。その際、台金2も加熱されて熱膨張するため、この膨張分を逃がしておかないと台金2が歪む。台金2が歪むと、チップ4の回転軌跡がずれるのでチッピングなどの原因となるばかりでなく、振れが発生する原因となる。チップ4がロウ付けされる外周縁部に歪み防止用スリット12を設けることで、台金2の歪みを防止し、チッピングを抑制することができる。
【0026】
また、図1において円板状の台金2に制振用のスリット11を設けることができる。制振用のスリット11は、台金2の強度を低下させずに振動の減衰性能を高くすることができる。土砂摩耗しやすい材料を切断するとき、切断抵抗により高速回転している台金2が変形し、切刃のチッピングの原因となることがある。制振用のスリット11は、台金2の変形を抑制し、切刃のチッピングを防止しさらに、切断時の騒音も抑制する。この制振用スリット11に、樹脂を充填すると効果的である。
【0027】
超硬質焼結体を構成する超硬質粒子の平均粒径は10〜100μmが望ましく、チップ4の刃先のすくい角は−1〜−20度の負角であることが望ましい。
【0028】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。本発明の回転鋸は24枚刃で、制振スリット11や歪み防止用スリット12を持つ。図2を参照して、チップ4の素材として超硬合金基台4b上に平均粒径50μmのダイヤモンド焼結体4aが接合されたブランクを、山刃チップおよび平刃チップの形状に切断した後、砥石による研削および研磨してチップ4を製作した。材質がS45Cの鋼製の台金2に接合された台座3の座ぐり部に、山刃チップと平刃チップを交互にろう付けした。
【0029】
次いでチップポケット底部5に平均粒径20μmのダイヤモンド粒子をNiにより電着し、同時に台金2の側面の外周部にNiを電気メッキ13した。具体的には、まず台金の両側面の外周部とチップポケット底部を除いてマスキングした。次に台金を立てて槽の中に入れ、超硬質粒子を含むメッキ液を循環しながらメッキした。まず、第一のメッキの条件である電流密度を1cm2あたり1mAとし、15分間メッキしてチップポケット底部5に超硬質粒子を仮止めした。次に台金を120度回転し、同じ条件でメッキした。この操作を3回繰り返して、全周に超硬質粒子を仮止めした。このとき超硬質粒子は、台金の側面部には止まらないので、側面部に固着しない。
【0030】
この後、第二のメッキの条件として、1cm2あたり10mAで20分間肉盛メッキし超硬質粒子をチップポケット底部にしっかり固着した。台金側面の外周部も、前記した第一のメッキの条件、第二のメッキの条件と同じ条件で自動的にメッキされる。このようにして製作された回転鋸を試料1とした。
【0031】
この回転鋸の仕様は以下の通りである。
外径 :250mm
台金厚み :3mm
平刃チップ刃幅W1 :4.5mm
山刃チップ刃幅 :2.5mm
刃先のすくい角 :−1°
【0032】
ここにおいて平刃チップ用の台座各部の寸法は、下記の通りである。なお、山刃チップは平刃チップより0.2mm高くしているので、山刃チップ用の台座の寸法L3、L1を下記の寸法に対してそれぞれ0.2mm長くしてある。
台座長さL1 :12mm
台座中間部長さL2:3mm
チップの長さL3:4mm
チップポケット構成面の長さL4:9mm
刃幅W1 :4.5mm
台座底の幅W2 :3mm
【0033】
試料2〜7および比較例1〜3の回転鋸の仕様については上記の試料1の仕様に準じた。ただし、台金2の材質、チップポケット底部5に固着する超硬質粒子の種類および固着の方法、台座3の長さL1とチップ4の長さL3の比を変化させたものを製作した。これらの内容を表1に示す。また、超硬合金を台金に用いた試料4〜7には、制振用スリットと歪み防止用スリットを設けず、試料4のNiの電気メッキは、側面全面に電気メッキした。なお、切刃の状況を一定にするために平刃チップの長さL3を一定とし、台座3の長さL1の値を変えて表1に示すL1/L3の回転鋸を製作した。また、電気メッキに変えてWC−Coを溶射した試料3は、超硬質粒子としてダイヤモンドを用いたものと同様に寿命の延長に効果があった。なお、WC−Coの溶射は、一般的に用いられている条件を用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
上記の回転鋸を用いて、ハイシリコンアルミニウム合金(Si含有率:12質量%)の切断を行った。切断条件を以下に示す。
回転数(周速度):2365min−1(1857m/min)
切り込み量 :30mm
送り速度 :360mm/min
被削材のサイズ :厚さ100mm×幅100mm×長さ300mmの角材
被削材の温度 :230℃
【0036】
上記の条件で切断を行い、寿命を測定した。その結果を表1に示す。鋼を台金とし超硬質粒子を電着していない比較例1および2とL1/L3が1.5の比較例3は、図2の点線で示した従来の摩耗状態9まで摩耗が進み、やがて台座3の保持強度が下がり、取れてしまった。ここで、寿命は、回転鋸の寿命までの切り口の切断面積の総和であり、1つの切り口の切断面積と切断個数をかけた数値である。
【0037】
表1に示すように、試料番号1〜7は比較例よりも高い寿命を示している。試料番号1は比較例3より寿命が短いが、これは台金の材質が異なるためである。試料番号1が長寿命であることは、同じS45Cを台金としている比較例1と比較すると明らかになる。超硬質粒子を固着した試料1は、その固着をしていない比較例1の寿命の2.5倍もの寿命がある。超硬質粒子固着の効果は、S45C以外の台金の場合にも認められる。さらに、超硬質粒子を固着しない場合でも、台金を超硬合金とした場合は寿命が延びることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の構成とすることによりチップポケット底部の摩耗を抑制できるので、本発明の回転鋸は著しく長い寿命となる。固着された超硬質粒子は、台金そのものに切断性能を持たせるので、台金へ切粉が溶着しにくくなる。また、鋼製の台金外周にNiを電気メッキすることにより、溶着による回転鋸の重量のアンバランスで誘発される振動を抑えることができる。その結果、切れ刃のチッピングや台金の損傷を防ぐことにより、工具寿命を飛躍的に長くすることができる。超硬合金製台金の側面部にメッキをすると、マイクロクラックの発生を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転鋸を示す側面図である。
【図2】図1のチップ周辺の拡大側面図である。
【図3】本発明の別の例で、チップ周辺の拡大側面図である。
【図4】本発明の回転鋸のチップを回転方向前面から見た正面図である。
【符号の説明】
1 回転鋸
2 台金
2a 台金の刃台
3 台座
4 チップ
4a 超硬質焼結体
4b 超硬合金基台
5 チップポケット底部
6 固着された超硬質粒子
7 台座中間部斜面
8 台座下部
9 従来の回転鋸の摩耗
11 制振用スリット
12 歪み防止用スリット
13 電気メッキ
14 台座のチップポケット構成面
L1 台座の長さ
L2 台座の中間部長さ
L3 チップの長さ
L4 チップポケット構成面の長さ
W1 刃幅
W2 台座底の幅
R 回転方向
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属材料などを切断するために刃部となるチップに超硬質焼結体を用いた回転鋸に関するものであり、チップや台金が土砂摩耗を受け易い材料の切断に好適な回転鋸に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドソーブレードを用いてコンクリートやアスファルト道路を切断すると、ダイヤモンド砥石セグメントの真下において台金が摩耗する。コンクリートやアスファルトに含まれている砂や砂利から発生する切粉がソーブレードの台金などに当たり、台金は摩耗して厚さが減少しやがて破損する。このような課題に対して特許文献1は、ダイヤモンドソーブレードの回転方向前面にダイヤモンド砥石セグメントと同等の耐摩耗性を有する耐摩耗性チップを接合したものを提案している。
【0003】
【特許文献1】
実開平3−88668号公報(第1、4〜6頁、図1〜4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1のソーブレードは、耐摩耗性のチップをダイヤモンド砥石セグメントのほかに余分に準備しなければならない。しかも一つ一つの耐摩耗性チップを薄い基板に接合しなければならず、高価なものになってしまい実用的ではない。そこで、本発明の目的は、台金回転方向前面のチップポケット部の耐摩耗性を高めた、安価で実用的な回転鋸を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明は、円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、台金が鋼で構成されていて、チップポケット底部の台金の上に超硬質粒子が固着されている回転鋸を提供するものである。
切粉が接触しやすく摩耗が生じやすいチップポケット底部に超硬質粒子が固着することで、台金が摩耗することを抑制し、回転鋸の長寿命化を実現できる。
【0006】
以下、本発明の構成をより詳しく説明する。
第一の発明において、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上である。回転鋸の切刃部分を回転方向前面から見たとき、最外周はチップであり以下順に超硬合金製の台座、更に台金で構成されるチップポケット底部へとつながっている。このとき台座の見える部分が、台座のチップポケット構成面である。そしてそのときのチップ半径方向の距離がチップの長さであり、チップポケット構成面の半径方向の距離がチップポケット構成面の長さとなる。耐摩耗性の高いものから順に並べると、超硬質焼結体からなるチップ、超硬合金製台座、台金を構成する鋼となる。被削材は、主としてチップ先端部で切断されるので最外周部に耐摩耗性の高いチップがあればよい。形成された切粉は、台座の部分で後部へ排出される。従って、切粉の流れをよくするためには、台座、特に台座中間部を長くすることが重要である。一方、価格面から見るとチップを構成する超硬質焼結体は超硬合金より高いので、チップを小さくし超硬合金製台座を大きくして台金の摩耗を防ぐことが考えられる。そこで、前記超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上とした。
【0007】
超硬合金製台座の一部が、チップの背面に位置する場合、台座の長さがチップの長さの倍以上の方が望ましい。チップを強固に台座に固着することができるからである。この構成の場合、実用性を考慮すれば、超硬合金製台座の長さの上限は、チップ長さの4倍以下程度である。それより大きくなるとチップにかかる抵抗によって、刃台が変形し易くなり、また刃振れが大きくなり好ましくない。
【0008】
台金のチップポケット底部には超硬質粒子を固着する。チップポケット底部は切粉との接触により摩耗しやすい鋼の台金が露出しているので、超硬質粒子を固着することで、その部分の耐摩耗性を高めることができる。従って、従来のソーブレードのように、耐摩耗性のチップをダイヤモンド砥石セグメントのほかに余分に準備する必要もなく、ロウ付け接合のために、再度台金を加熱する必要もないので、台金の歪が防止できる。また、耐摩耗性チップに比べて超硬質粒子は台金からはずれにくい。超硬質粒子の固着は、台金だけでなく台座に行なっても良い。
【0009】
超硬質粒子の固着は、ダイヤモンド粒子またはCBN粒子のNiストライクメッキによる電着であることが望ましい。ダイヤモンド粒子またはCBN粒子は、特に硬質で耐摩耗性に優れる上、Niストライクメッキは、これら粒子の固着を容易に行なえる手段である。
【0010】
用いる超硬質粒子の平均粒径は、5〜50μmであることがさらに望ましい。5μmより小さいものは実用上使用しづらいためである。50μmより大きいものは超硬質粒子の固着面の粗さが粗くなり、切粉が引っかかり易くなって排出性が悪化するためである。
【0011】
超硬質粒子の固着は、通常、台金のチップポケット底部以外をマスキングし、メッキすることで行なう。一方、台金の側面部にマスキングしないでNiメッキによる超硬質粒子の電着を行なうと、超硬質粒子のチップポケット底部への固着と、台金側面の外周部のNi電気メッキとを同時進行できて効率的である。このメッキは、切粉や砂による台金への損傷や切粉の堆積を防止する。したがって、台金側面の外周部の電気メッキは、台金の摩耗を防ぎ、工具寿命を延ばし、工具精度を長時間維持する効果がある。また、台金の刃台に台座をロウ付けするときに台金外周部に発生する色むらをなくす効果もある。このメッキの厚みは10〜100μm程度が好ましい。
【0012】
超硬質粒子の固着が、超硬合金の基本組成であるWC−Coの溶射であってもよい。この場合WCが超硬質粒子であり、Coが接合材の働きをして、WCを強固に台金に接合することができる。また、台金に用いられる鋼は、S45C、SKS、マルエージ鋼であることが望ましい。マルエージ鋼は、従来の鋼に比べると焼入れ硬度と靭性を高くできる。従って、これらの物性を必要に応じ制御する自由度が高い。
【0013】
台座には、平刃チップと山刃チップが交互に固着されていることが望ましい。ここで平刃チップというのは、図4に示すチップの上端が平坦なものである。これに対して山刃チップは、図4の平刃チップの角部を切り落とし台形状の切刃としたものである。山刃チップの上端の切刃部は、平刃チップより高くなっているので、被削材に案内溝の役割を持つ溝を形成する。従って、回転鋸の振れを防ぐことができる。
【0014】
また、第二の発明は、円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、台金が超硬合金で構成されている回転鋸を提供する。台金自体を超硬合金とすることで、台金が摩耗することを抑制する。超硬合金自体、鋼に比較すると耐摩耗性の高い材料なので超硬質粒子をチップポケット底部に固着しなくても、回転鋸の寿命を長くできる。
【0015】
第二の発明は、剛性の高い超硬合金を台金として使用するので、3mm以下の厚さの台金に適している。この厚さ限定により、薄い取りしろで切断できる。また、超硬合金製台金の側面全面にメッキすると、超硬合金表面に研磨時などに生じたマイクロクラックをNiが埋めるので、台金の寿命が長くなる。しかしながら、超硬合金製台金は脆いので、制振用スリットや歪み防止用スリットなど亀裂の始点になり易い構造を避ける方が望ましい。
【0016】
台金と台座に使用される超硬合金は、種類が異なることが好ましい。台金用の超硬合金は、薄い板に加工しやすく、衝撃に強く、靭性の高い材料が使用される。これに対して台座に用いる超硬合金は、耐欠損性に優れ、かつ耐摩耗性の高い材料が選ばれる。チップポケット底部は、鋼の台金と同様に超硬質粒子を固着した方が長い寿命となる。
【0017】
第二の発明において、超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上としている理由は第一の発明と同様である。また、台座に平刃チップと山刃チップとを交互に固着することが好ましい点も第一の発明と同様である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の回転鋸の側面を図1、そのチップ部を拡大して図2に示す。図1に示す本発明の回転鋸は、SKS5やSKS51などの鋼や超硬合金製の薄板円板からなる台金2の外周に、チップ4が接合されていて矢印Rの方向に回転させて被切断材料を切断する。台金には、制振用スリット11や歪み防止用スリット12が設けられている。
【0019】
図2は、チップ4とチップ周辺部を拡大した側面図である。台金の外周部には刃台2aが形成され、そこに台座3がロウ付けされる。さらにその上に、超硬合金基台4bと超硬質焼結体4aが接合されてなるチップ4がロウ付けなどの方法で接合されている。回転鋸の加工精度は、回転鋸の寸法精度に依存しているので、チップ4、台座3および台金の刃台2aそれぞれの寸法精度と、ロウ付け精度を高く維持することが重要である。台金の刃台2aに台座3をロウ付けし、ついで台座3にチップ4をロウ付けすると寸法精度を高くロウ付けできる。
【0020】
台座3は、台座中間部よりも緩やかに傾斜した台座下部8を経由してチップポケット底部に至る。一方、チップポケット底部5は、超硬質粒子6がNiメッキにより固着され、この部分の耐摩耗性を高めている。Niの電気メッキ13は、例えば図2の斜線で示されている台金側面の外周部または台金側面の全面に形成することができる。台座3の中間部斜面7は、切粉が逃げ易いよう回転方向の後方へ行くほど幅が広がるように傾斜している。
【0021】
また、図2において、台座3は、チップポケット底部5より高い位置で台金の刃台2aにロウ付けされている。そして、台金の刃台2aは台金2より薄くなっているので、チップポケット底部5に到達した切粉は台座3と台金2の間隙を通って後方に排出され易くなっている。
【0022】
図3は本発明の別の実施例である。この例では、チップ4は直接台金の刃台2aに固着されている。台座3は、チップ4と台金の刃台2aの間に介在される部分がなく、チップの台金中心側に隣接して台金の刃台2aに固着されている。この方式は、台金が厚い場合にチップの接合強度が高くなるので利用される。チップポケット底部5に超硬質粒子6が固着されているので、チップポケット底部の摩耗は抑制される。
【0023】
図4は、回転鋸のチップを回転方向の前側から見たときの平刃チップの状態を示したものである。チップ先端に向かい先広がりの形状をしている。これは、チップの先端部のみで被削材を取り除き、それ以外の部分が被削材と接することを防ぐ効果がある。台座の長さをL1、台座の中間部長さをL2、チップの長さをL3、台座のチップポケット構成面の長さをL4とし、刃幅をW1、台座底の幅をW2とした。ただし、図中点線は、台座の上端部を示す。そして、W1はW2より大きくなっている。本発明では、L4がL3より長いことが重要である。また、台座3がチップの背面に位置する場合は、L1/L3が2以上であることが望ましい。L2の長さは、台座下部の長さと関係し適宜設定される。
【0024】
本発明の回転鋸は、チップを土砂摩耗させやすい材料の切断に適している。土砂摩耗とは、液体とその中に混在する固形物によって進む摩耗のことで、土砂が崩れるようなイメージで、切刃周辺が摩耗する摩耗形態のことである。本発明の回転鋸を使用することで、土砂摩耗を起こしやすい被削材に対しても台金の摩耗を防止でき、回転鋸の寿命を大幅に向上させることができる。具体的には、4〜20%シリコンアルミニウムやALC(軽量気泡コンクリート)、MMCなどの切断に好適な回転鋸を提供しようとするものである。特に、エンジンのシリンダブロックなどに用いられるハイシリコンアルミニウム合金を200℃以上に加熱した状態で切断する場合に特に効果がある。
【0025】
図1および図2において円板状の台金2の外周縁部に、台座3を台金の刃台2aに、チップ4を台座3にロウ付けする際の熱膨張による歪を抑制する歪み防止用スリット12を設けることができる。一般に、チップ4もしくはチップの台座3を台金2に接合するには、ロウ付けが用いられる。その際、台金2も加熱されて熱膨張するため、この膨張分を逃がしておかないと台金2が歪む。台金2が歪むと、チップ4の回転軌跡がずれるのでチッピングなどの原因となるばかりでなく、振れが発生する原因となる。チップ4がロウ付けされる外周縁部に歪み防止用スリット12を設けることで、台金2の歪みを防止し、チッピングを抑制することができる。
【0026】
また、図1において円板状の台金2に制振用のスリット11を設けることができる。制振用のスリット11は、台金2の強度を低下させずに振動の減衰性能を高くすることができる。土砂摩耗しやすい材料を切断するとき、切断抵抗により高速回転している台金2が変形し、切刃のチッピングの原因となることがある。制振用のスリット11は、台金2の変形を抑制し、切刃のチッピングを防止しさらに、切断時の騒音も抑制する。この制振用スリット11に、樹脂を充填すると効果的である。
【0027】
超硬質焼結体を構成する超硬質粒子の平均粒径は10〜100μmが望ましく、チップ4の刃先のすくい角は−1〜−20度の負角であることが望ましい。
【0028】
(実施例1)
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。本発明の回転鋸は24枚刃で、制振スリット11や歪み防止用スリット12を持つ。図2を参照して、チップ4の素材として超硬合金基台4b上に平均粒径50μmのダイヤモンド焼結体4aが接合されたブランクを、山刃チップおよび平刃チップの形状に切断した後、砥石による研削および研磨してチップ4を製作した。材質がS45Cの鋼製の台金2に接合された台座3の座ぐり部に、山刃チップと平刃チップを交互にろう付けした。
【0029】
次いでチップポケット底部5に平均粒径20μmのダイヤモンド粒子をNiにより電着し、同時に台金2の側面の外周部にNiを電気メッキ13した。具体的には、まず台金の両側面の外周部とチップポケット底部を除いてマスキングした。次に台金を立てて槽の中に入れ、超硬質粒子を含むメッキ液を循環しながらメッキした。まず、第一のメッキの条件である電流密度を1cm2あたり1mAとし、15分間メッキしてチップポケット底部5に超硬質粒子を仮止めした。次に台金を120度回転し、同じ条件でメッキした。この操作を3回繰り返して、全周に超硬質粒子を仮止めした。このとき超硬質粒子は、台金の側面部には止まらないので、側面部に固着しない。
【0030】
この後、第二のメッキの条件として、1cm2あたり10mAで20分間肉盛メッキし超硬質粒子をチップポケット底部にしっかり固着した。台金側面の外周部も、前記した第一のメッキの条件、第二のメッキの条件と同じ条件で自動的にメッキされる。このようにして製作された回転鋸を試料1とした。
【0031】
この回転鋸の仕様は以下の通りである。
外径 :250mm
台金厚み :3mm
平刃チップ刃幅W1 :4.5mm
山刃チップ刃幅 :2.5mm
刃先のすくい角 :−1°
【0032】
ここにおいて平刃チップ用の台座各部の寸法は、下記の通りである。なお、山刃チップは平刃チップより0.2mm高くしているので、山刃チップ用の台座の寸法L3、L1を下記の寸法に対してそれぞれ0.2mm長くしてある。
台座長さL1 :12mm
台座中間部長さL2:3mm
チップの長さL3:4mm
チップポケット構成面の長さL4:9mm
刃幅W1 :4.5mm
台座底の幅W2 :3mm
【0033】
試料2〜7および比較例1〜3の回転鋸の仕様については上記の試料1の仕様に準じた。ただし、台金2の材質、チップポケット底部5に固着する超硬質粒子の種類および固着の方法、台座3の長さL1とチップ4の長さL3の比を変化させたものを製作した。これらの内容を表1に示す。また、超硬合金を台金に用いた試料4〜7には、制振用スリットと歪み防止用スリットを設けず、試料4のNiの電気メッキは、側面全面に電気メッキした。なお、切刃の状況を一定にするために平刃チップの長さL3を一定とし、台座3の長さL1の値を変えて表1に示すL1/L3の回転鋸を製作した。また、電気メッキに変えてWC−Coを溶射した試料3は、超硬質粒子としてダイヤモンドを用いたものと同様に寿命の延長に効果があった。なお、WC−Coの溶射は、一般的に用いられている条件を用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
上記の回転鋸を用いて、ハイシリコンアルミニウム合金(Si含有率:12質量%)の切断を行った。切断条件を以下に示す。
回転数(周速度):2365min−1(1857m/min)
切り込み量 :30mm
送り速度 :360mm/min
被削材のサイズ :厚さ100mm×幅100mm×長さ300mmの角材
被削材の温度 :230℃
【0036】
上記の条件で切断を行い、寿命を測定した。その結果を表1に示す。鋼を台金とし超硬質粒子を電着していない比較例1および2とL1/L3が1.5の比較例3は、図2の点線で示した従来の摩耗状態9まで摩耗が進み、やがて台座3の保持強度が下がり、取れてしまった。ここで、寿命は、回転鋸の寿命までの切り口の切断面積の総和であり、1つの切り口の切断面積と切断個数をかけた数値である。
【0037】
表1に示すように、試料番号1〜7は比較例よりも高い寿命を示している。試料番号1は比較例3より寿命が短いが、これは台金の材質が異なるためである。試料番号1が長寿命であることは、同じS45Cを台金としている比較例1と比較すると明らかになる。超硬質粒子を固着した試料1は、その固着をしていない比較例1の寿命の2.5倍もの寿命がある。超硬質粒子固着の効果は、S45C以外の台金の場合にも認められる。さらに、超硬質粒子を固着しない場合でも、台金を超硬合金とした場合は寿命が延びることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の構成とすることによりチップポケット底部の摩耗を抑制できるので、本発明の回転鋸は著しく長い寿命となる。固着された超硬質粒子は、台金そのものに切断性能を持たせるので、台金へ切粉が溶着しにくくなる。また、鋼製の台金外周にNiを電気メッキすることにより、溶着による回転鋸の重量のアンバランスで誘発される振動を抑えることができる。その結果、切れ刃のチッピングや台金の損傷を防ぐことにより、工具寿命を飛躍的に長くすることができる。超硬合金製台金の側面部にメッキをすると、マイクロクラックの発生を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転鋸を示す側面図である。
【図2】図1のチップ周辺の拡大側面図である。
【図3】本発明の別の例で、チップ周辺の拡大側面図である。
【図4】本発明の回転鋸のチップを回転方向前面から見た正面図である。
【符号の説明】
1 回転鋸
2 台金
2a 台金の刃台
3 台座
4 チップ
4a 超硬質焼結体
4b 超硬合金基台
5 チップポケット底部
6 固着された超硬質粒子
7 台座中間部斜面
8 台座下部
9 従来の回転鋸の摩耗
11 制振用スリット
12 歪み防止用スリット
13 電気メッキ
14 台座のチップポケット構成面
L1 台座の長さ
L2 台座の中間部長さ
L3 チップの長さ
L4 チップポケット構成面の長さ
W1 刃幅
W2 台座底の幅
R 回転方向
Claims (8)
- 円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、前記台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、
前記超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、
台金が鋼で構成されていて、
チップポケット底部の台金の上に超硬質粒子が固着されていることを特徴とする回転鋸。 - 前記超硬質粒子の固着が、ダイヤモンド粒子またはCBN粒子のNiストライクメッキによる電着であることを特徴とする請求項1に記載の回転鋸。
- 前記超硬質粒子の平均粒径は、5〜50μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の回転鋸。
- 前記台金の側面の外周部には、Niが電気メッキされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転鋸。
- 前記超硬質粒子の固着が、WC粒子の溶射であることを特徴とする請求項1または4に記載の回転鋸。
- 台金に用いられる鋼が、S45C、SKS、マルエージ鋼のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回転鋸。
- 前記台座に固着されたチップは、平刃チップと山刃チップが交互に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の回転鋸。
- 円板状の台金の外周に複数の超硬合金製台座が設けられ、前記台座に超硬質焼結体からなるチップが固着された回転鋸であって、
前記超硬合金製台座のチップポケット構成面の長さがチップの長さ以上であり、
台金が超硬合金で構成されていることを特徴とする回転鋸。
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