JP2004312201A - 圧電共振子、その製造方法、圧電フィルタ、デュプレクサ、通信装置 - Google Patents
圧電共振子、その製造方法、圧電フィルタ、デュプレクサ、通信装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】共振特性を改善できる圧電共振子、その製造方法、ならびに上記圧電共振子を用いた圧電フィルタ、デュプレクサ、通信装置を提供する。
【解決手段】空洞部17を有するSi基板12を設ける。空洞部17上に形成されている1層以上の圧電薄膜16を有する薄膜部の上下面を上部電極15bおよび下部電極15aを対向させて挟む振動部20を設ける。Si基板12の空洞部17および下部電極15aに渡って形成された絶縁薄膜18を設ける。Si基板12および圧電薄膜16の間、かつ、Si基板12における空洞部17の周囲部上にダミー層13を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】空洞部17を有するSi基板12を設ける。空洞部17上に形成されている1層以上の圧電薄膜16を有する薄膜部の上下面を上部電極15bおよび下部電極15aを対向させて挟む振動部20を設ける。Si基板12の空洞部17および下部電極15aに渡って形成された絶縁薄膜18を設ける。Si基板12および圧電薄膜16の間、かつ、Si基板12における空洞部17の周囲部上にダミー層13を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信装置等のフィルタとして好適な、ダイヤフラム型の圧電薄膜共振子、その製造方法、上記圧電共振子を用いた圧電フィルタやデュプレクサ、およびそれらを搭載する通信装置等の電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等の小型の通信装置には、多くのフィルタが用いられており、使用帯域の高周波化に伴い、圧電基板の厚み縦振動を利用した圧電共振子を用いた圧電フィルタを用いることが考えられている。
【0003】
圧電共振子の共振周波数は、圧電基板の厚さに反比例することから、超高周波領域では圧電基板を極めて薄く加工する必要がある。しかし、圧電基板自体の厚さを薄くするのは、その機械的強度や取り扱い上の制限等から、基本モードでは数100MHzが実用上の高周波限界とされてきた。
【0004】
このような限界を解決するために、従来から、圧電薄膜共振子が、フィルタや共振器として提案されている。図13に示すように、上記の圧電薄膜共振子1は、微細加工法を用いてSi基板2を部分的にエッチングすることにより、Si基板2の一部に数μm以下の厚さの薄膜支持部3を形成し、その上に一対の励振用電極として下部電極5a、上部電極5bを有するZnO圧電薄膜4を設けたものである(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような圧電薄膜共振子1では、薄膜支持部3は微細加工技術を用いて薄くすることができ、圧電薄膜4もスパッタリング等によって薄く形成することができるので、数100MHz〜数1000MHzまで高周波特性を伸ばすことができる可能性がある。
【0006】
しかし、上記従来技術では、ZnO、Siのヤング率の温度係数はともに負の符合となるために共振周波数の温度特性が悪くなるという欠点がある。
【0007】
この欠点を改善できる圧電薄膜共振子(特許文献2参照)を図14に示した。図14に示すように、上記圧電薄膜共振子7では、Si基板2の表面に熱酸化等によってSiO2薄膜8を形成し、Si基板2を部分的にエッチングすることによってSiO2薄膜8の一部で薄膜支持部3を形成し、その上に励振用電極として下部電極5a、上部電極5bを有するZnO圧電薄膜4を設けている。
【0008】
上記圧電薄膜共振子7においては、SiO2のヤング率の温度係数は、ZnOと異なり正の温度係数をもつため、ZnO圧電薄膜4の膜厚とSiO2からなる薄膜支持部3の膜厚との比をある適当な値に設定することによって、共振周波数の温度特性を安定化できる。また、安定なダイヤフラムの形成、放熱性向上のため、薄膜支持部としてSiO2、AlN、Al2O3を組み合わせた構造も提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−168674号公報(特願平11−350585号、公開日、2001年6月22日)
【0010】
【特許文献2】
特開昭58−121817号公報(公開日、1983年7月20日)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
結晶性の良い圧電薄膜を得るためには、その下地となる下部電極、さらにその下地となる絶縁膜の表面粗さが重要である。しかしながら、温度特性の改善のために最適な絶縁薄膜は、その表面粗さが小さいとは限らず、所望の特性の絶縁薄膜と結晶性の良い圧電薄膜との双方を得ることは困難であった。
【0012】
よって、上記従来技術では、所望の特性の絶縁薄膜を形成しているので、結晶性の良い圧電薄膜を形成することが困難であって、得られた圧電薄膜共振子の特性、例えば共振特性を示すQ値が上がらず、優れたフィルタ特性が所望するようには得られないという問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、圧電共振子の特性向上を図るために種々検討した結果、薄膜支持部の表面粗さ(Ra)が大きいと、圧電薄膜4を形成するZnO結晶性が劣化し、得られた圧電薄膜共振子の共振特性が劣化することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の圧電共振子の製造方法は、以上の課題を解決するために、開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子の製造方法であって、基板上にダミー層を形成する工程と、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、基板の一部を除去して前記開口部を形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程と、開口部側から、絶縁膜を下部電極および圧電薄膜上に形成する工程とを有することを特徴としている。
【0015】
上記方法によれば、下部電極より下に形成された絶縁膜の表面粗さに依存することなく、ダミー層により安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、得られた圧電共振子の共振特性を改善でき、所望するフィルタ特性が得られる。
【0016】
上記圧電共振子の製造方法では、ダミー層は算術平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であることが好ましい。上記方法によれば、ダミー層の算術平均表面粗さ(Ra)を1.0nm以下に設定することにより、より安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、得られた圧電共振子の共振特性を改善でき、より確実に所望するフィルタ特性が得られる。
【0017】
上記圧電共振子の製造方法においては、ダミー層が、絶縁体からなることが望ましい。上記方法によれば、ダミー層が導体であると、下部電極と基板との間で、ダミー層を挟んで導通し、圧電共振子の特性を悪化することがあるが、ダミー層を絶縁体から形成することによって、上記悪化を回避できる。
【0018】
上記圧電共振子の製造方法では、ダミー層が、SiO2またはSiNを主成分とする材料からなることが好ましい。ところで、ダミー層が導体であると、下部電極と基板との間で、ダミー層を挟んで導通し、圧電共振子の特性を悪化することがある。しかしながら、上記方法によれば、SiO2やSiNを主成分とする材料は、絶縁体であるので、ダミー層を絶縁体から形成することによって、上記悪化を回避できる。また、上記方法によれば、SiO2やSiNを主成分とする材料を用いることにより、Ra≦1.0nmとすることができると共に、RIE(反応性イオンエッチング)またはウェットエッチングが容易な材料であるので、優れた特性を備えた圧電共振子の製造を容易化できる。
【0019】
本発明の圧電共振子は、前記の課題を解決するために、開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子であって、前記基板の開口部および下部電極に渡って形成された絶縁膜と、前記基板および圧電薄膜の間、かつ、前記の基板における開口部の周囲部上に形成されたダミー層とを有することを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、下部電極より下に形成された絶縁膜の表面粗さに依存することなく、安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、共振特性を改善できる。
【0021】
上記圧電共振子においては、ダミー層が、絶縁体からなることが望ましい。上記圧電共振子では、前記絶縁膜が、SiO2、AlN、Al2O3の何れかを主成分とする材料からなることが好ましい。
【0022】
本発明の圧電フィルタは、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子を用いたことを特徴としている。上記圧電フィルタにおいては、圧電共振子を、ラダー構成にしてもよい。
【0023】
本発明のデュプレクサは、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子、あるいは上記の何れかに記載の圧電フィルタを用いたことを特徴としている。
【0024】
本発明の通信装置は、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子、あるいは上記の何れかに記載の圧電フィルタを用いたことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、優れた特性を有する圧電共振子を用いたので、特性の改善された、圧電フィルタ、デュプレクサ、通信装置とすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の各形態について図1ないし図12に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0027】
(実施の第一形態)
図1に示すように、本発明に係る実施の第一形態の圧電薄膜共振子11は、空洞部(開口部)17を有するSi基板12と、空洞部17上に形成されている、1層以上の圧電薄膜16の上下面を一対の上部電極15bおよび下部電極15aを互いに対向させて挟む構造の振動部20とを有している。
【0028】
さらに、上記圧電薄膜共振子11には、Si基板12の空洞部17の内壁および下部電極15aに渡って形成された絶縁薄膜(絶縁膜)18が形成されており、Si基板12および圧電薄膜16の間、かつ、Si基板12における空洞部17の径方向外向きの周囲部上に形成されたダミー層13が形成されている。
【0029】
本発明の圧電共振子では、ダミー層13を形成したことにより、下部電極15aより下に形成された、振動に寄与する絶縁薄膜18の表面粗さに依存することなく、安定して結晶性の良好な圧電薄膜16を形成できるため、共振特性も良好となる。
【0030】
次に、図2(a)ないし図2(e)に基づき、上記圧電薄膜共振子11の製造方法における各作製(工程)プロセスについて説明する。
【0031】
上記製造方法では、まず、図2(a)に示すように、Si基板12の表面上に、算術平均表面粗さRa:1.0nm以下のダミー層13として、例えば熱酸化、電子ビーム蒸着、スパッタリング法等の成膜法により、絶縁体膜、例えばSiO2膜を形成する。
【0032】
次に、ダミー層13上に、図2(b)に示すように、下部電極15a、ZnOまたはAlNを主成分とする圧電薄膜16、上部電極15bをこの順番にて順次それぞれ形成する。続いて、振動部(各電極対向部)20の下部(Si基板12側)に、図2(c)に示すように、異方性エッチング、RIE(Reactive Ion Etching)などの手段でSi基板12を除去し、空洞部17を形成する。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、振動部20の下部にある、ダミー層13部分をRIE、ウェットエッチング等の手段で除去してダミー層開口部13aを形成して下部電極15aおよび下部電極15aに覆われていない圧電薄膜16の一部を露出させる。
【0034】
次に、図2(e)に示すように、ダミー層13部分を除去した側からSiO2、AlN、Al2O3などの振動に寄与する絶縁薄膜18を電子ビーム蒸着、スパッタリング法などの成膜法により上記露出部分、ダミー層開口部13aの内壁、および空洞部17の内壁の上に形成する。なお、絶縁薄膜18は、上記露出部分を覆うように形成されればよい。
【0035】
励振用電極として作用する下部電極15a、上部電極15bはリフトオフ蒸着法、エッチング法等により形成される。圧電薄膜16はスパッタリング、CVD等の成膜法で形成される。
【0036】
ところで、従来は、Si基板上に形成された絶縁薄膜の上に下部電極/圧電薄膜/上部電極からなる振動部を形成していたため、共振特性(フィルタ特性)の良い圧電薄膜を得るためには、下地となる下部電極、更に下部電極の下地となる絶縁薄膜を算術平均表面粗さRaの小さなものにする必要があった。
【0037】
しかし、絶縁薄膜に用いる材料によっては、例えばAlNのように、Raを小さくすることが難しい材料があり、材料選択の自由度は低いという問題が生じていた。
【0038】
本実施の形態では、Si基板12上に設けたダミー層13の上に、下部電極15a/圧電薄膜16/上部電極15bからなる振動部20を形成した上で、空洞部17に開口するダミー層13部分を除去し、最後に絶縁薄膜18を空洞部17側から付加している。
【0039】
したがって、本実施の形態においては、Raが小さいダミー層13を予め形成する(つまりSi基板と下部電極15aまたは圧電薄膜16との間に設ける)ことで、ダミー層13上に形成される下部電極15aのRaを小さくできる。このことから、上記ダミー層13や下部電極15aの上に形成される、圧電薄膜16を、簡便に、確実に特性良く得ることができて、得られた圧電薄膜共振子11の共振特性を改善できる。
【0040】
さらに、ダミー層13部分の除去後に絶縁薄膜18を付加するので、絶縁薄膜18についてはRaを小さく設定する必要はなく、AlN、Al2O3、SiO2などから材料を幅広く選択することができる。
【0041】
なお、ダミー層13は絶縁体であることが望ましい。ダミー層13はSi基板12上の全面に形成されており、ダミー層13が導体であると、下部電極15aとSi基板12との間で、ダミー層13を挟んで導通し、圧電薄膜共振子11の特性を悪化するように影響する。
【0042】
以下に、ダミー層13の算術平均表面粗さが1.0nm以下が望ましいことについて説明する。
【0043】
まず、下部電極15aの算術平均表面粗さ(Ra)が小さくなると、その上に形成される圧電薄膜16の配向性が向上し、良好な共振特性が得られることが、図3、図4から分かる。一般に、ラダー型の圧電フィルタに用いられる圧電薄膜共振子として必要なQは200以上であり、図4に示すように、下部電極15aの算術平均表面粗さ(Ra)2.5nm以下であると、得られた圧電薄膜共振子のQが200以上となる。
【0044】
よって、圧電フィルタを構成するために好適な200以上のQを有する圧電薄膜共振子を得るには、下部電極の算術平均表面粗さ(Ra)2.5nm以下である必要があることが分かる。
【0045】
次に、算術平均粗さ(Ra)2.5nm以下である下部電極を形成するには、その下地層となるダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)が小さい必要がある。図5に示すように、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であると、その上に形成される、下部電極の算術平均表面粗さ(Ra)は、2.5nm以下となることが分かる。
【0046】
つまり、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)1.0nm以下とすることで、算術平均粗さ(Ra)2.5nm以下である下部電極15aを形成することができて、配向性の高い圧電薄膜16が得られ、ひいては圧電フィルタを構成するために好適な200以上のQを有する圧電薄膜共振子11を得ることができる。したがって、上記ダミー層13は、圧電薄膜16の結晶性(配向性)を制御して共振特性を調整(改善)できる圧電薄膜制御層としての機能を備えていることになる。
【0047】
なお、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)については、圧電薄膜16においては、より大きなQが望ましいことから、より好ましくは0.6nm以下である。
【0048】
(実施の第二形態)
本発明に係る実施の第二形態の圧電薄膜共振子11は、図7に示すように、絶縁薄膜18上に、さらに、AlN、Al2O3、SiO2などからなる、他の絶縁薄膜19が設けられている。上記絶縁薄膜19の形成方法については、絶縁薄膜18と同様である。また、本実施の第二形態では、前記の実施の第一形態と同様な機能を有する部材については、実施の第一形態と同一の部材番号を付与してそれらの説明を省いた。
【0049】
本実施の第二形態では、絶縁薄膜を多層構造としているため、Qや周波数温度特性など、向上させたい特性に合わせて、SiO2とAl2O3、SiO2とAlNのように所望の材料を組み合わせて、使用することができる。よって、様々な特性を改善することができる。
【0050】
なお、上記実施の第一および第二形態では、ダミー層13として、Si基板12上に熱酸化や蒸着、スパッタなどで形成したSiO2を挙げているが、これ以外にダミー層13に好適に用いることができる材料は、絶縁体、Ra≦1.0nm、かつRIE(反応性イオンエッチング)またはウェットエッチングが容易な材料であればよく、例えば、SiO2以外にSiNが挙げられる。
【0051】
また、上記実施の第一および第二形態においては、電極材料としてAlを用いたが、圧電共振子に好適な電極材料としては、Al、Ni、Cu、Mo、Ag、W、Ta、Au、Pt、Tiもしくはこれらの金属を主成分とする合金が挙げられる。
【0052】
さらに、絶縁薄膜18や絶縁薄膜19として、SiO2、AlN、Al2O3のそれぞれを付加した場合の効果を以下にそれぞれ説明する。SiO2は、圧電薄膜16のZnOと温度係数の符号が異なるため周波数温度特性調整用として効果を有する。AlNは、Qの高い材料であるため圧電共振子のQ向上が図れると共に、熱伝導率が大きいことから、電力投入時のフィルタの温度上昇を抑制できるため耐電力性の向上に効果が備えている。
【0053】
Al2O3は、Qの高い材料であるため、圧電共振子のQ向上を図ることができると共に、圧電薄膜16のZnOと応力の符号が異なるため、ダイヤフラムの応力調整に効果がある。なお、当然のことながら、図7に示すように、上記SiO2、AlN、およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも二つによる多層構造にすることも有効である。
【0054】
また、上記の実施の各形態では、一層の圧電薄膜16を用いた例を挙げたが、2層以上の多層にしてもよく、その場合には、各層にそれぞれ一対の上部電極および下部電極を設けることが好ましい。
【0055】
これらのような、本実施の各形態の圧電共振子11は、図8ないし図10に示すように、T型ラダーの圧電フィルタ、L型ラダーの圧電フィルタ、複数のL型ラダーを組み合わせたの圧電フィルタに好適に使用される。また、上記圧電共振子11または各圧電フィルタは、図11に示すように、複数、例えば2つの上記圧電共振子11または各圧電フィルタを有するデュプレクサ21にも好適に使用される。デュプレクサ21は、携帯電話等の小型通信装置といった、互いに通過帯域が近接しているが相違する、受信側と送信側とを互いに分離するためのものである。
【0056】
続いて、図12を参照しながら、本発明の圧電共振子または圧電フィルタを搭載した通信装置100について説明する。上記通信装置100は、受信を行うレシーバ側(Rx側)として、アンテナ101、アンテナ共用部/RFTopフィルタ102、アンプ103、Rx段間フィルタ104、ミキサ105、1stIFフィルタ106、ミキサ107、2ndIFフィルタ108、1st+2ndローカルシンセサイザ111、TCXO(temperature compensated crystal oscillator(温度補償型水晶発振器))112、デバイダ113、ローカルフィルタ114を備えて構成されている。Rx段間フィルタ104からミキサ105へは、図12に二本線で示したように、バランス性を確保するために各平衡信号にて送信することが好ましい。
【0057】
また、上記通信装置100は、送信を行うトランシーバ側(Tx側)として、上記アンテナ101および上記アンテナ共用部/RFTopフィルタ102を共用すると共に、TxIFフィルタ121、ミキサ122、Tx段間フィルタ123、アンプ124、カプラ125、アイソレータ126、APC(automatic power control (自動出力制御))127を備えて構成されている。
【0058】
そして、上記アンテナ共用部/RFTopフィルタ102、Rx段間フィルタ104、Tx段間フィルタ123には、上述した本実施の各形態に記載の圧電フィルタが好適に利用できる。
【0059】
よって、上記通信装置は、用いた圧電フィルタが、良好な伝送特性(通過帯域が広帯域、通過帯域外の大減衰量)を備えていることにより、良好な送受信機能と共に小型化を図れるものとなっている。
【0060】
【発明の効果】
本発明の圧電共振子の製造方法は、以上のように、基板上にダミー層を形成する工程と、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、基板の一部を除去して開口部を形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程と、開口部側から、絶縁膜を下部電極および圧電薄膜上に形成する工程とを有する方法である。
【0061】
それゆえ、上記方法は、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程とを有することによって、従来のように絶縁膜上にて圧電薄膜を形成するときの上記圧電薄膜の特性劣化を回避できて、共振特性といったフィルタ特性を改善できるという効果を奏する。
【0062】
本発明の圧電共振子は、以上のように、基板の開口部上に形成されている、圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を上部電極および下部電極を対向させて挟む振動部とを有する圧電共振子であって、基板の開口部および下部電極に渡って形成された絶縁膜と、基板および圧電薄膜の間、かつ、前記の基板における開口部の周囲部上に形成されたダミー層とを有する構成である。
【0063】
それゆえ、上記構成は、基板および圧電薄膜の間にダミー層を有するので、絶縁膜とは無関係にダミー層を設定できて、従来のように絶縁膜上に形成された圧電薄膜の共振特性劣化を回避できて、共振特性といったフィルタ特性を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電共振子における、実施の第一形態の断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、上記圧電共振子の製造方法を示す各工程図である。
【図3】圧電共振子における、下部電極の表面粗さと圧電薄膜の圧電特性との間の関係を示すグラフである。
【図4】圧電共振子における、下部電極の表面粗さと圧電薄膜の他の圧電特性(Q)との間の関係を示すグラフである。
【図5】圧電共振子における、ダミー層の表面粗さと下部電極の表面粗さとの間の関係を示すグラフである。
【図6】圧電共振子における、ダミー層の表面粗さと圧電薄膜の圧電特性(Q)との間の関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る圧電共振子における、実施の第二形態の断面図である。
【図8】本発明に係る、圧電フィルタの回路図である。
【図9】上記圧電フィルタの一変形例を示す回路図である。
【図10】上記圧電フィルタの他の変形例を示す回路図である。
【図11】本発明のデュプレクサのブロック図である。
【図12】本発明の通信装置のブロック図である。
【図13】従来の圧電共振子の断面図である。
【図14】従来の他の圧電共振子の断面図である。
【符号の説明】
12 Si基板(基板)
13 ダミー層
15a 下部電極
15b 上部電極
16 圧電薄膜
17 空洞部(開口部)
20 振動部
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信装置等のフィルタとして好適な、ダイヤフラム型の圧電薄膜共振子、その製造方法、上記圧電共振子を用いた圧電フィルタやデュプレクサ、およびそれらを搭載する通信装置等の電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等の小型の通信装置には、多くのフィルタが用いられており、使用帯域の高周波化に伴い、圧電基板の厚み縦振動を利用した圧電共振子を用いた圧電フィルタを用いることが考えられている。
【0003】
圧電共振子の共振周波数は、圧電基板の厚さに反比例することから、超高周波領域では圧電基板を極めて薄く加工する必要がある。しかし、圧電基板自体の厚さを薄くするのは、その機械的強度や取り扱い上の制限等から、基本モードでは数100MHzが実用上の高周波限界とされてきた。
【0004】
このような限界を解決するために、従来から、圧電薄膜共振子が、フィルタや共振器として提案されている。図13に示すように、上記の圧電薄膜共振子1は、微細加工法を用いてSi基板2を部分的にエッチングすることにより、Si基板2の一部に数μm以下の厚さの薄膜支持部3を形成し、その上に一対の励振用電極として下部電極5a、上部電極5bを有するZnO圧電薄膜4を設けたものである(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような圧電薄膜共振子1では、薄膜支持部3は微細加工技術を用いて薄くすることができ、圧電薄膜4もスパッタリング等によって薄く形成することができるので、数100MHz〜数1000MHzまで高周波特性を伸ばすことができる可能性がある。
【0006】
しかし、上記従来技術では、ZnO、Siのヤング率の温度係数はともに負の符合となるために共振周波数の温度特性が悪くなるという欠点がある。
【0007】
この欠点を改善できる圧電薄膜共振子(特許文献2参照)を図14に示した。図14に示すように、上記圧電薄膜共振子7では、Si基板2の表面に熱酸化等によってSiO2薄膜8を形成し、Si基板2を部分的にエッチングすることによってSiO2薄膜8の一部で薄膜支持部3を形成し、その上に励振用電極として下部電極5a、上部電極5bを有するZnO圧電薄膜4を設けている。
【0008】
上記圧電薄膜共振子7においては、SiO2のヤング率の温度係数は、ZnOと異なり正の温度係数をもつため、ZnO圧電薄膜4の膜厚とSiO2からなる薄膜支持部3の膜厚との比をある適当な値に設定することによって、共振周波数の温度特性を安定化できる。また、安定なダイヤフラムの形成、放熱性向上のため、薄膜支持部としてSiO2、AlN、Al2O3を組み合わせた構造も提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−168674号公報(特願平11−350585号、公開日、2001年6月22日)
【0010】
【特許文献2】
特開昭58−121817号公報(公開日、1983年7月20日)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
結晶性の良い圧電薄膜を得るためには、その下地となる下部電極、さらにその下地となる絶縁膜の表面粗さが重要である。しかしながら、温度特性の改善のために最適な絶縁薄膜は、その表面粗さが小さいとは限らず、所望の特性の絶縁薄膜と結晶性の良い圧電薄膜との双方を得ることは困難であった。
【0012】
よって、上記従来技術では、所望の特性の絶縁薄膜を形成しているので、結晶性の良い圧電薄膜を形成することが困難であって、得られた圧電薄膜共振子の特性、例えば共振特性を示すQ値が上がらず、優れたフィルタ特性が所望するようには得られないという問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、圧電共振子の特性向上を図るために種々検討した結果、薄膜支持部の表面粗さ(Ra)が大きいと、圧電薄膜4を形成するZnO結晶性が劣化し、得られた圧電薄膜共振子の共振特性が劣化することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の圧電共振子の製造方法は、以上の課題を解決するために、開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子の製造方法であって、基板上にダミー層を形成する工程と、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、基板の一部を除去して前記開口部を形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程と、開口部側から、絶縁膜を下部電極および圧電薄膜上に形成する工程とを有することを特徴としている。
【0015】
上記方法によれば、下部電極より下に形成された絶縁膜の表面粗さに依存することなく、ダミー層により安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、得られた圧電共振子の共振特性を改善でき、所望するフィルタ特性が得られる。
【0016】
上記圧電共振子の製造方法では、ダミー層は算術平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であることが好ましい。上記方法によれば、ダミー層の算術平均表面粗さ(Ra)を1.0nm以下に設定することにより、より安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、得られた圧電共振子の共振特性を改善でき、より確実に所望するフィルタ特性が得られる。
【0017】
上記圧電共振子の製造方法においては、ダミー層が、絶縁体からなることが望ましい。上記方法によれば、ダミー層が導体であると、下部電極と基板との間で、ダミー層を挟んで導通し、圧電共振子の特性を悪化することがあるが、ダミー層を絶縁体から形成することによって、上記悪化を回避できる。
【0018】
上記圧電共振子の製造方法では、ダミー層が、SiO2またはSiNを主成分とする材料からなることが好ましい。ところで、ダミー層が導体であると、下部電極と基板との間で、ダミー層を挟んで導通し、圧電共振子の特性を悪化することがある。しかしながら、上記方法によれば、SiO2やSiNを主成分とする材料は、絶縁体であるので、ダミー層を絶縁体から形成することによって、上記悪化を回避できる。また、上記方法によれば、SiO2やSiNを主成分とする材料を用いることにより、Ra≦1.0nmとすることができると共に、RIE(反応性イオンエッチング)またはウェットエッチングが容易な材料であるので、優れた特性を備えた圧電共振子の製造を容易化できる。
【0019】
本発明の圧電共振子は、前記の課題を解決するために、開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子であって、前記基板の開口部および下部電極に渡って形成された絶縁膜と、前記基板および圧電薄膜の間、かつ、前記の基板における開口部の周囲部上に形成されたダミー層とを有することを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、下部電極より下に形成された絶縁膜の表面粗さに依存することなく、安定して結晶性の良好な圧電薄膜を形成できるため、共振特性を改善できる。
【0021】
上記圧電共振子においては、ダミー層が、絶縁体からなることが望ましい。上記圧電共振子では、前記絶縁膜が、SiO2、AlN、Al2O3の何れかを主成分とする材料からなることが好ましい。
【0022】
本発明の圧電フィルタは、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子を用いたことを特徴としている。上記圧電フィルタにおいては、圧電共振子を、ラダー構成にしてもよい。
【0023】
本発明のデュプレクサは、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子、あるいは上記の何れかに記載の圧電フィルタを用いたことを特徴としている。
【0024】
本発明の通信装置は、前記の課題を解決するために、上記の何れかに記載の圧電共振子、あるいは上記の何れかに記載の圧電フィルタを用いたことを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、優れた特性を有する圧電共振子を用いたので、特性の改善された、圧電フィルタ、デュプレクサ、通信装置とすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の各形態について図1ないし図12に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0027】
(実施の第一形態)
図1に示すように、本発明に係る実施の第一形態の圧電薄膜共振子11は、空洞部(開口部)17を有するSi基板12と、空洞部17上に形成されている、1層以上の圧電薄膜16の上下面を一対の上部電極15bおよび下部電極15aを互いに対向させて挟む構造の振動部20とを有している。
【0028】
さらに、上記圧電薄膜共振子11には、Si基板12の空洞部17の内壁および下部電極15aに渡って形成された絶縁薄膜(絶縁膜)18が形成されており、Si基板12および圧電薄膜16の間、かつ、Si基板12における空洞部17の径方向外向きの周囲部上に形成されたダミー層13が形成されている。
【0029】
本発明の圧電共振子では、ダミー層13を形成したことにより、下部電極15aより下に形成された、振動に寄与する絶縁薄膜18の表面粗さに依存することなく、安定して結晶性の良好な圧電薄膜16を形成できるため、共振特性も良好となる。
【0030】
次に、図2(a)ないし図2(e)に基づき、上記圧電薄膜共振子11の製造方法における各作製(工程)プロセスについて説明する。
【0031】
上記製造方法では、まず、図2(a)に示すように、Si基板12の表面上に、算術平均表面粗さRa:1.0nm以下のダミー層13として、例えば熱酸化、電子ビーム蒸着、スパッタリング法等の成膜法により、絶縁体膜、例えばSiO2膜を形成する。
【0032】
次に、ダミー層13上に、図2(b)に示すように、下部電極15a、ZnOまたはAlNを主成分とする圧電薄膜16、上部電極15bをこの順番にて順次それぞれ形成する。続いて、振動部(各電極対向部)20の下部(Si基板12側)に、図2(c)に示すように、異方性エッチング、RIE(Reactive Ion Etching)などの手段でSi基板12を除去し、空洞部17を形成する。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、振動部20の下部にある、ダミー層13部分をRIE、ウェットエッチング等の手段で除去してダミー層開口部13aを形成して下部電極15aおよび下部電極15aに覆われていない圧電薄膜16の一部を露出させる。
【0034】
次に、図2(e)に示すように、ダミー層13部分を除去した側からSiO2、AlN、Al2O3などの振動に寄与する絶縁薄膜18を電子ビーム蒸着、スパッタリング法などの成膜法により上記露出部分、ダミー層開口部13aの内壁、および空洞部17の内壁の上に形成する。なお、絶縁薄膜18は、上記露出部分を覆うように形成されればよい。
【0035】
励振用電極として作用する下部電極15a、上部電極15bはリフトオフ蒸着法、エッチング法等により形成される。圧電薄膜16はスパッタリング、CVD等の成膜法で形成される。
【0036】
ところで、従来は、Si基板上に形成された絶縁薄膜の上に下部電極/圧電薄膜/上部電極からなる振動部を形成していたため、共振特性(フィルタ特性)の良い圧電薄膜を得るためには、下地となる下部電極、更に下部電極の下地となる絶縁薄膜を算術平均表面粗さRaの小さなものにする必要があった。
【0037】
しかし、絶縁薄膜に用いる材料によっては、例えばAlNのように、Raを小さくすることが難しい材料があり、材料選択の自由度は低いという問題が生じていた。
【0038】
本実施の形態では、Si基板12上に設けたダミー層13の上に、下部電極15a/圧電薄膜16/上部電極15bからなる振動部20を形成した上で、空洞部17に開口するダミー層13部分を除去し、最後に絶縁薄膜18を空洞部17側から付加している。
【0039】
したがって、本実施の形態においては、Raが小さいダミー層13を予め形成する(つまりSi基板と下部電極15aまたは圧電薄膜16との間に設ける)ことで、ダミー層13上に形成される下部電極15aのRaを小さくできる。このことから、上記ダミー層13や下部電極15aの上に形成される、圧電薄膜16を、簡便に、確実に特性良く得ることができて、得られた圧電薄膜共振子11の共振特性を改善できる。
【0040】
さらに、ダミー層13部分の除去後に絶縁薄膜18を付加するので、絶縁薄膜18についてはRaを小さく設定する必要はなく、AlN、Al2O3、SiO2などから材料を幅広く選択することができる。
【0041】
なお、ダミー層13は絶縁体であることが望ましい。ダミー層13はSi基板12上の全面に形成されており、ダミー層13が導体であると、下部電極15aとSi基板12との間で、ダミー層13を挟んで導通し、圧電薄膜共振子11の特性を悪化するように影響する。
【0042】
以下に、ダミー層13の算術平均表面粗さが1.0nm以下が望ましいことについて説明する。
【0043】
まず、下部電極15aの算術平均表面粗さ(Ra)が小さくなると、その上に形成される圧電薄膜16の配向性が向上し、良好な共振特性が得られることが、図3、図4から分かる。一般に、ラダー型の圧電フィルタに用いられる圧電薄膜共振子として必要なQは200以上であり、図4に示すように、下部電極15aの算術平均表面粗さ(Ra)2.5nm以下であると、得られた圧電薄膜共振子のQが200以上となる。
【0044】
よって、圧電フィルタを構成するために好適な200以上のQを有する圧電薄膜共振子を得るには、下部電極の算術平均表面粗さ(Ra)2.5nm以下である必要があることが分かる。
【0045】
次に、算術平均粗さ(Ra)2.5nm以下である下部電極を形成するには、その下地層となるダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)が小さい必要がある。図5に示すように、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であると、その上に形成される、下部電極の算術平均表面粗さ(Ra)は、2.5nm以下となることが分かる。
【0046】
つまり、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)1.0nm以下とすることで、算術平均粗さ(Ra)2.5nm以下である下部電極15aを形成することができて、配向性の高い圧電薄膜16が得られ、ひいては圧電フィルタを構成するために好適な200以上のQを有する圧電薄膜共振子11を得ることができる。したがって、上記ダミー層13は、圧電薄膜16の結晶性(配向性)を制御して共振特性を調整(改善)できる圧電薄膜制御層としての機能を備えていることになる。
【0047】
なお、ダミー層13の算術平均表面粗さ(Ra)については、圧電薄膜16においては、より大きなQが望ましいことから、より好ましくは0.6nm以下である。
【0048】
(実施の第二形態)
本発明に係る実施の第二形態の圧電薄膜共振子11は、図7に示すように、絶縁薄膜18上に、さらに、AlN、Al2O3、SiO2などからなる、他の絶縁薄膜19が設けられている。上記絶縁薄膜19の形成方法については、絶縁薄膜18と同様である。また、本実施の第二形態では、前記の実施の第一形態と同様な機能を有する部材については、実施の第一形態と同一の部材番号を付与してそれらの説明を省いた。
【0049】
本実施の第二形態では、絶縁薄膜を多層構造としているため、Qや周波数温度特性など、向上させたい特性に合わせて、SiO2とAl2O3、SiO2とAlNのように所望の材料を組み合わせて、使用することができる。よって、様々な特性を改善することができる。
【0050】
なお、上記実施の第一および第二形態では、ダミー層13として、Si基板12上に熱酸化や蒸着、スパッタなどで形成したSiO2を挙げているが、これ以外にダミー層13に好適に用いることができる材料は、絶縁体、Ra≦1.0nm、かつRIE(反応性イオンエッチング)またはウェットエッチングが容易な材料であればよく、例えば、SiO2以外にSiNが挙げられる。
【0051】
また、上記実施の第一および第二形態においては、電極材料としてAlを用いたが、圧電共振子に好適な電極材料としては、Al、Ni、Cu、Mo、Ag、W、Ta、Au、Pt、Tiもしくはこれらの金属を主成分とする合金が挙げられる。
【0052】
さらに、絶縁薄膜18や絶縁薄膜19として、SiO2、AlN、Al2O3のそれぞれを付加した場合の効果を以下にそれぞれ説明する。SiO2は、圧電薄膜16のZnOと温度係数の符号が異なるため周波数温度特性調整用として効果を有する。AlNは、Qの高い材料であるため圧電共振子のQ向上が図れると共に、熱伝導率が大きいことから、電力投入時のフィルタの温度上昇を抑制できるため耐電力性の向上に効果が備えている。
【0053】
Al2O3は、Qの高い材料であるため、圧電共振子のQ向上を図ることができると共に、圧電薄膜16のZnOと応力の符号が異なるため、ダイヤフラムの応力調整に効果がある。なお、当然のことながら、図7に示すように、上記SiO2、AlN、およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも二つによる多層構造にすることも有効である。
【0054】
また、上記の実施の各形態では、一層の圧電薄膜16を用いた例を挙げたが、2層以上の多層にしてもよく、その場合には、各層にそれぞれ一対の上部電極および下部電極を設けることが好ましい。
【0055】
これらのような、本実施の各形態の圧電共振子11は、図8ないし図10に示すように、T型ラダーの圧電フィルタ、L型ラダーの圧電フィルタ、複数のL型ラダーを組み合わせたの圧電フィルタに好適に使用される。また、上記圧電共振子11または各圧電フィルタは、図11に示すように、複数、例えば2つの上記圧電共振子11または各圧電フィルタを有するデュプレクサ21にも好適に使用される。デュプレクサ21は、携帯電話等の小型通信装置といった、互いに通過帯域が近接しているが相違する、受信側と送信側とを互いに分離するためのものである。
【0056】
続いて、図12を参照しながら、本発明の圧電共振子または圧電フィルタを搭載した通信装置100について説明する。上記通信装置100は、受信を行うレシーバ側(Rx側)として、アンテナ101、アンテナ共用部/RFTopフィルタ102、アンプ103、Rx段間フィルタ104、ミキサ105、1stIFフィルタ106、ミキサ107、2ndIFフィルタ108、1st+2ndローカルシンセサイザ111、TCXO(temperature compensated crystal oscillator(温度補償型水晶発振器))112、デバイダ113、ローカルフィルタ114を備えて構成されている。Rx段間フィルタ104からミキサ105へは、図12に二本線で示したように、バランス性を確保するために各平衡信号にて送信することが好ましい。
【0057】
また、上記通信装置100は、送信を行うトランシーバ側(Tx側)として、上記アンテナ101および上記アンテナ共用部/RFTopフィルタ102を共用すると共に、TxIFフィルタ121、ミキサ122、Tx段間フィルタ123、アンプ124、カプラ125、アイソレータ126、APC(automatic power control (自動出力制御))127を備えて構成されている。
【0058】
そして、上記アンテナ共用部/RFTopフィルタ102、Rx段間フィルタ104、Tx段間フィルタ123には、上述した本実施の各形態に記載の圧電フィルタが好適に利用できる。
【0059】
よって、上記通信装置は、用いた圧電フィルタが、良好な伝送特性(通過帯域が広帯域、通過帯域外の大減衰量)を備えていることにより、良好な送受信機能と共に小型化を図れるものとなっている。
【0060】
【発明の効果】
本発明の圧電共振子の製造方法は、以上のように、基板上にダミー層を形成する工程と、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、基板の一部を除去して開口部を形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程と、開口部側から、絶縁膜を下部電極および圧電薄膜上に形成する工程とを有する方法である。
【0061】
それゆえ、上記方法は、ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程とを有することによって、従来のように絶縁膜上にて圧電薄膜を形成するときの上記圧電薄膜の特性劣化を回避できて、共振特性といったフィルタ特性を改善できるという効果を奏する。
【0062】
本発明の圧電共振子は、以上のように、基板の開口部上に形成されている、圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を上部電極および下部電極を対向させて挟む振動部とを有する圧電共振子であって、基板の開口部および下部電極に渡って形成された絶縁膜と、基板および圧電薄膜の間、かつ、前記の基板における開口部の周囲部上に形成されたダミー層とを有する構成である。
【0063】
それゆえ、上記構成は、基板および圧電薄膜の間にダミー層を有するので、絶縁膜とは無関係にダミー層を設定できて、従来のように絶縁膜上に形成された圧電薄膜の共振特性劣化を回避できて、共振特性といったフィルタ特性を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電共振子における、実施の第一形態の断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、上記圧電共振子の製造方法を示す各工程図である。
【図3】圧電共振子における、下部電極の表面粗さと圧電薄膜の圧電特性との間の関係を示すグラフである。
【図4】圧電共振子における、下部電極の表面粗さと圧電薄膜の他の圧電特性(Q)との間の関係を示すグラフである。
【図5】圧電共振子における、ダミー層の表面粗さと下部電極の表面粗さとの間の関係を示すグラフである。
【図6】圧電共振子における、ダミー層の表面粗さと圧電薄膜の圧電特性(Q)との間の関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る圧電共振子における、実施の第二形態の断面図である。
【図8】本発明に係る、圧電フィルタの回路図である。
【図9】上記圧電フィルタの一変形例を示す回路図である。
【図10】上記圧電フィルタの他の変形例を示す回路図である。
【図11】本発明のデュプレクサのブロック図である。
【図12】本発明の通信装置のブロック図である。
【図13】従来の圧電共振子の断面図である。
【図14】従来の他の圧電共振子の断面図である。
【符号の説明】
12 Si基板(基板)
13 ダミー層
15a 下部電極
15b 上部電極
16 圧電薄膜
17 空洞部(開口部)
20 振動部
Claims (10)
- 開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子の製造方法であって、
基板上にダミー層を形成する工程と、
ダミー層上に下部電極、圧電薄膜、上部電極を順次形成する工程と、
基板の一部を除去して前記開口部を形成する工程と、
開口部に露出した下部電極下のダミー層を除去する工程と、
開口部側から、絶縁膜を下部電極および圧電薄膜上に形成する工程とを有することを特徴とする、圧電共振子の製造方法。 - 請求項1記載の圧電共振子の製造方法において、
ダミー層は算術平均表面粗さ(Ra)が1.0nm以下であることを特徴とする、圧電共振子の製造方法。 - 請求項1または2に記載の圧電共振子の製造方法において、
ダミー層が、SiO2またはSiNを主成分とする材料からなることを特徴とする、圧電共振子の製造方法。 - 開口部を有する基板と、前記開口部上に形成されている、1層以上の圧電薄膜を有する薄膜部の上下面を少なくとも一対の上部電極および下部電極を対向させて挟む構造の振動部とを有する圧電共振子であって、
前記基板の開口部および下部電極に渡って形成された絶縁膜と、
前記基板および圧電薄膜の間、かつ、前記の基板における開口部の周囲部上に形成されたダミー層とを有することを特徴とする、圧電共振子。 - 請求項4記載の圧電共振子において、
ダミー層が、絶縁体からなることを特徴とする、圧電共振子。 - 請求項4または5記載の圧電共振子において、
前記絶縁膜が、SiO2、AlN、Al2O3の何れかを主成分とする材料からなることを特徴とする、圧電共振子。 - 請求項4ないし6の何れかに記載の圧電共振子を用いたことを特徴とする、圧電フィルタ。
- 請求項4ないし6の何れかに記載の圧電共振子を、ラダー構成にしたことを特徴とする、圧電フィルタ。
- 請求項4ないし6の何れかに記載の圧電共振子、あるいは請求項7または8記載の圧電フィルタを用いたことを特徴とする、デュプレクサ。
- 請求項4ないし6の何れかに記載の圧電共振子、あるいは請求項7または8記載の圧電フィルタを用いたことを特徴とする、通信装置。
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