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JP2004311173A - 転位セグメント導体及び超電導ケーブル - Google Patents

転位セグメント導体及び超電導ケーブル Download PDF

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JP2004311173A
JP2004311173A JP2003101970A JP2003101970A JP2004311173A JP 2004311173 A JP2004311173 A JP 2004311173A JP 2003101970 A JP2003101970 A JP 2003101970A JP 2003101970 A JP2003101970 A JP 2003101970A JP 2004311173 A JP2004311173 A JP 2004311173A
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dislocation segment
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superconducting
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JP2003101970A
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Tomoshi Suzuki
知史 鈴木
Kenji Goto
謙次 後藤
Takashi Saito
隆 斉藤
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Fujikura Ltd
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Fujikura Ltd
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Abstract

【課題】転位セグメントを複数本、管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、基体周方向に生じる曲げ歪を抑制することが可能な、転位セグメント導体及び超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】本発明に係る転位セグメント導体は、テープ状の素線を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメント10を、断面外周が略円形をなす管体1の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体10において、転位セグメント10と管体1との間に、転位セグメント10の幅と略同一の幅を有する平板状の剛性体2を配したことを特徴としている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の素線を転位撚り合わせてなる転位セグメント導体及び超電導ケーブルに係る。より詳細には、転位セグメントとこれを載置する管体との間に剛性体を設けることにより、転位セグメントの形状保持能力を向上させた転位セグメント導体及び超電導ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導ケーブルに交流電流を通電した特の偏流を抑制する方法として、テープ状の超電導体からなる素線を複数本、転位撚り合わせてなる、転位超電導テープユニットと呼ばれる転位撚線構造(以下、転位セグメントと略称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−203958号公報
【0004】
図8は従来の転位セグメントを示す一例であり、図8(a)は斜視図、図8(b)はY−Y’部分の断面図である。図8に示すように、例えば複数本のテープ状の素線810を転位撚り合わせした転位セグメント800は、特定の素線810が、隣接する他の素線810の上に向かって渡る転位部(以下、転位渡り部と呼ぶ)820を形成している。例えば素線810が柔軟性に富んだ例えば金属材料で構成される場合には、素線810の幅を例えば2mm程度とすれば、転位渡り部820の長さを100mm程度に設定することができる。
【0005】
また、上記構成からなる転位セグメント800では、その構造を保持させるために、隣り合う転位渡り部820、820間(非転位渡り部830)の所定箇所が、保形テープ840によって結束されている。保形テープ840は一方の面全体に粘着剤が塗布されたもので、この粘着剤を介して素線810に貼着固定されている。
【0006】
上記構成からなる転位セグメントを複数本、円筒状コアからなる管体(通称フォーマと呼称する)の周囲に螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体が広く知られている。その際、素線としてBi系超電導材料からなる線材を用い、素線の幅を2mm以下、厚さを0.2mm以上としたものが利用されている。しかしながら、Bi系超電導材料からなる線材は電流密度が低く、シース材に銀を用いているため強度が弱いという問題があった。
【0007】
上記問題を解消するため、Bi系超電導材料に代えてY系超電導材料の素線を用いた転位セグメントの開発が進められてきた。このY系超電導材料からなる転位セグメントを作製し、この転位セグメントで上述した構成の転位セグメント導体を製造し、液体窒素温度で使用可能な超電導ケーブルに用いる研究・開発が鋭意進められている。
【0008】
ところが、現在主に作製されているY系超電導材料の素線は、幅が10mm程度、厚さが0.1mm程度のテープ形状をなしている。このような寸法からなるテープ状の素線を単線で、あるいはテープ状の素線を複数本、撚り合わせてなる転位セグメントを、前述したフォーマに螺旋状に巻き付けた後、その上から絶縁テープを巻き付けた場合について、本発明者らは検討した。
【0009】
図9は、転位セグメントをフォーマに螺旋状に巻き付けた状態を示す図であり、(a)はフォーマの軸方向から見た断面図、(b)はフォーマ上に配された転位セグメントを上空から見た平面図である。図9(a)から明らかなように、テープ状の素線は、フォーマの外周方向に、フォーマ径相当の曲げ径で曲げられる力を受けた状態で固定されるので、場合によっては大きな歪みを受けることが分かった。極端な場合には、図9(a)に示すように、転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがある。
【0010】
図9(b)は、非転位渡り部を保形テープで結束し、転位渡り部にはそれぞれ5箇所(□印、番号1〜10で示す部分)に歪ゲージを設けた状態を示している。本発明者らは、厚さ0.1mm、幅5mmからなるテープ状の素線を6本撚り合わせて形成した転位セグメントを、径22mmのフォーマに螺旋巻きした場合の転位渡り部上に、歪ゲージを上述したとおり設け、各位置における歪みを測定した。
【0011】
図10は、歪ゲージの取り付け位置と周方向の曲げ歪との関係を示すグラフである。図10より次の点が明らかとなった。
(a)全ての測定地点、すなわち□印と番号α1〜番号α10で示す全ての地点において、少なからず周方向の曲げ歪が観測された。
(b)保形テープで結束された非転位渡り部の近傍に位置する測定地点における周方向の曲げ歪が極小値をなす傾向を示す。
【0012】
(c)周方向の曲げ歪は非転位渡り部から離れるに従い増加傾向を示し、非転位渡り部とその隣に位置する非転位渡り部との間の真ん中付近、すなわち転位渡り部の中心付近において、周方向の曲げ歪は極大値を有する。
【0013】
(4)上記グラフの結果から、周方向の曲げ歪は、非転位渡り部の付近で極小となり、転位渡り部の中心付近で極大となる正弦波(点線で示した曲線)とよく似た曲線形状をなすことが判明した。
(5)なお、図10において縦軸0.44付近を示す実線は、フォーマの径と転位セグメントの厚さから算出した歪を表しており、実測した周方向の曲げ歪の極大値とこの実線は、極めて一致することが確認された。
【0014】
このように周方向の曲げ歪が存在する転位セグメントを備えた転位セグメント導体では、図9(a)に示すように、極端な場合には転位セグメントの内部で幅方向において中折れ現象が発生する恐れがあり、電気伝導特性を大きく阻害する要因となる。
【0015】
したがって、電気ロスが生じたり、ひいては破断の危険性すらあるため、安定した電気伝導特性を維持するとともに、高い長期信頼性を確立するという側面からも、上記のような周方向の曲げ歪が発生しない構造を備えてなる転位セグメント導体の開発が期待されていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、転位セグメントを複数本、フォーマと呼ばれる円筒状コアからなる管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、基体周方向に生じる曲げ歪を抑制することが可能な、転位セグメント導体及び超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転位セグメント導体は、テープ状の素線を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメントを、断面外周が略円形をなす管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、前記転位セグメントと前記管体との間に、該転位セグメントの幅と略同一の幅を有する平板状の剛性体を配したことを特徴としている。
【0018】
すなわち、かかる構成の上記構成の転位セグメント導体は、複数本のテープ状の素線を転位撚り合わせてなる転位セグメントを1本又は2本以上、断面外周が略円形をなす管体の周囲に、管体の長手方向に延びるように、螺旋状に巻き付けた構造からなる。
【0019】
このような構造を採用することにより、剛性の高い材料を基材とした素線を用いた際に強度の向上が図られると共に、例えば超電導体からなる素線を用いた場合、磁場発生時において素線に加わる強大な電磁力にも耐える強度を備えた転位セグメント導体を得ることができる。
【0020】
また、上記構成の転位セグメント導体では、前記転位セグメントと前記管体との間に、転位セグメントの幅より極端に狭かったり、あるいは極端に広かったりせず、転位セグメントの幅と略同一の幅を有し、少なくともこの転位セグメントが接するのする平板状の剛性体を配する。
【0021】
このような剛性体を配することにより、転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けた際に、転位セグメントの構造は剛性体に押し付けられることにより安定に保持される。そのため、剛性体を介さず管体に直接押し付けられていた従来の転位セグメントの問題、すなわち、転位セグメントが管体の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという問題が解消される。
【0022】
本発明においては、前記素線として金属基材上に超電導層を具備させたものを利用することができる。
本発明に係る転位セグメントでは、それぞれの素線ごとにフープ力に抗する方向に支える手段として個別に支持体を設けているので、従来のように基材に適当な柔軟性を有する材質のものを敢えて選択する必要は無くなる。したがって、転移撚り合わせ加工が難しいが、強度が高く剛性も高い金属基材を利用することが可能となる。特に、金属基材として、例えばステンレス鋼やハステロイ合金を使用すれば、引張強度や剛性を格段に強化できるのでより好ましい。
【0023】
また、本発明に係る超電導層としては、酸化物超電導体からなるものを利用することができる。
本発明に係る転位セグメントにおいては、上記金属基材を用いることができるので、蒸着等の薄膜形成技術を利用して金属基材の表面に高性能の酸化物超電導体層を形成することが容易だからである。
【0024】
本発明に係る超電導ケーブルは、上述した本発明の転位セグメント導体を用いて構成されたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図である。この形態の転位セグメント導体は、転位セグメント10を複数本、フォーマと呼ばれる円筒状コアからなる管体1の周囲に、螺旋状に巻き付けてなり、転位セグメント10と管体1との間に、転位セグメント10の幅と略同一の幅を有する平板状の剛性体2を配したものである。
【0027】
なお、図1(a)の転位セグメント導体では、剛性体2を管体1に沿わせて支持させるため、絶縁性または半導電性の支持用テープ3を用いた例を示したが、他の手段を用いても構わない。図1(b)の転位セグメント導体は、支持用テープ3に加えて、転位セグメント10を管体1に押しつけ固定するため、絶縁性または半導電性の支持用テープ4を配した点が、図1(a)の転位セグメント導体と異なる。
【0028】
前記転位セグメント10は、図3(a)に示すようにテープ状の超電導体からなる素線310を複数本(図面では6本)転位撚り合わせしてなる長尺の帯状のものである。図3に示した転位セグメント10の場合、複数本の素線310は非転位渡り部330においてのみ保形用テープで結束されており、転位渡り部320の素線310は自由な状態にある。
【0029】
個々の素線310は、図3(b)に示すように、この形態の転位セグメント10は、テープ状の超電導導体311に絶縁被覆層312を設けてなるものである。この複数本の素線310を集合して撚り合わせる際に、各テープ状の素線310をその長尺方向において、図3(a)に示すように順次その位置を代えて変位するように撚り合わされたものである。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、フォーマと呼ばれる円筒状コアからなる管体1の周囲に、転位セグメント10と略同幅の剛性体2を螺旋状に巻き付けたものを作製する。次いで、絶縁性または半導電性の支持用テープ3を用い、剛性体2を管体1に沿わせて支持させる。このように準備された管体1の外周に配された剛性体2上に、支持用テープ3を介して転位セグメント10を設けたものが、図1に示した転位セグメント導体である。
【0031】
ところで、本発明に係る転位セグメント導体を構成する転位セグメントにおいては、個々の素線310は、その長さ方向において転位セグメント10の表面側(外層側)に位置する場合と底面側(内層側)に位置する場合が交互に繰り返されるように配置されている。このような転位セグメント10の巻回方向は、S巻(右巻)の方向またはZ巻(左巻)の方向となっている。
【0032】
前述したフォーマと呼ばれる管体1は、例えばステンレス鋼、銅パイプなどの金属材料からなるものが用いられる。このような管体1の表面は、管体1と転位セグメント10との間の通電を抑制するために絶縁処理が施される形態が望ましい。図1の転位セグメント導体では、この役割を絶縁性または半導電性の支持用テープ3が担っている。また、図1では省略してあるが、管体1の内部空間には、内部冷媒流路が設けられる。
【0033】
素線310としては、図3(b)に示すようにテープ状の平角断面を備えた素線であれば、いかなる材料の素線であっても構わない。例えば、基材上に超電導層を設けてなる素線は、その断面形状が矩形状をなすので好適に用いられる。
【0034】
前記素線として金属基材上に超電導層を具備させたものを利用する場合には、転位セグメント10を構成するそれぞれの素線ごとにフープ力に抗する方向に支える手段として個別に支持体(不図示)を設けることにより、従来のように基材に適当な柔軟性を有する材質のものを敢えて選択する必要は無くなる。
【0035】
したがって、転位撚り合わせ加工は難しいが、強度が高く剛性も高い金属基材を利用することが可能となる。特に、金属基材として、例えばステンレス鋼やハステロイ合金を使用すれば、引張強度や剛性を格段に強化できるのでより好ましい。
【0036】
また、本発明に係る超電導層としては、酸化物超電導体からなるものを利用することができる。図3に示すように、転位セグメント10においては、上記金属基材を用いることができる。その結果、蒸着等の薄膜形成技術を利用して金属基材の表面に高性能の酸化物超電導体層を形成することが容易に可能となる。
【0037】
テープ状の素線310を超電導素線とする場合は、金属基材上に酸化物超電導層を形成したものや、断面視円形状の超電導多心素線(不図示)が圧延加工等により平坦化されたものが用いられ、この超電導素線の横断面形状は、矩形状とすることが好ましい。この超電導素線は、幅1.0mm〜15.0mm程度、厚さ0.05mm〜1.0mm程度の範囲のものとされる。
【0038】
本発明で用いる超電導材料としては、ハステロイ等の金属基板上にイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)中間層を介してYBaCu7−x(Y123)が成膜された酸化物超電導材料をはじめ、BiSrCaCu(Bi2212)、BiSrCaCu(Bi2223)、Bi1.6Pb0.4SrCaCuなどで示される組成をもつ酸化物超電導材料などの高温超電導材料、あるいはNbSn、NbAlなどのA15型材料からなる低温超電導材料を例示することができる。
【0039】
これらは1種を単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。これらは、単体では機械的に脆い性質を有する材料として知られている。
【0040】
高抵抗化膜312は、後述するシース材の硫化物からなるものであり、このなかでも硫化銀からなることが好ましい。また、高抵抗化膜312を紫外線硬化型樹脂被膜により構成することもできる。
【0041】
このような高抵抗化膜312は、後述する基地を形成するシース材よりも電気抵抗率が高くなっていることが、テープ状の超電導導体311の表面を高抵抗化することができ、隣接するテープ状の超電導導体311のシース材に渦電流が導通することがなく、各々のテープ状の超電導導体311の内部に渦電流が留まるようにできる点で好ましい。
【0042】
例えば、基地が電気抵抗率の低いAg(77Kにおいて電気抵抗率が0.3μΩcm)等から構成されている場合、該基地の周囲の高抵抗化膜22が電気抵抗率の高い硫化銀(77KにおいてAgの電気抵抗率の約103倍以上の電気抵抗率を有する)などから構成される。
【0043】
テープ状の支持材は、非磁性のオーステナイト系金属材料又は銅合金が用いられる。前者としては、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼等が挙げられる。後者としては、銅ニッケルや燐青銅、銅ベリリウム合金、銅ニオブ複合材、銅銀合金等の高強度を有する銅合金を挙げることができる。
【0044】
このテープ状の支持材の横断面形状は、テープ状の素線310をなす超電導導体311の横断面形状と同様の矩形状とすることが好ましい。この支持材の寸法としては、例えば幅1.0mm〜5.0mm程度、厚さ0.1mm〜1.0mm程度の範囲のものが好適に用いられる。
【0045】
シース材としては、例えばAg,Pt,Au等の貴金属あるいはそれらの合金からなるものが用いられる。従って、上述したような超電導多心素線から形成された超電導多心素線(超電導素線)311は、Ag,Pt,Au等の貴金属あるいはそれらの合金からなる金属シースの内部に複数のフィラメント状の超電導コアが分散された構造とされている。
【0046】
前述した絶縁被覆層312を構成する絶縁材料としては、例えばポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルイミドヒダントイン、エナメルなどが用いられる。このような絶縁被覆層312の厚さとしては、1〜50μm程度の範囲のものが用いられる。
【0047】
管体1の上に配される剛性体2としては、例えば延性があり、剛性が高く、塑性変形する金属からなるものが好適に用いられる。特に、剛性体2は管体1に巻き付けた際に、その形状が保持されることが好ましい。剛性体2の仕様としては、ヤング率が100GPa以上、降伏応力又は耐力が500MPa以上で、降伏歪が小さいものが望ましく、具体的にはステンレス鋼やリン青銅のような銅合金などが挙げられる。
【0048】
剛性体2を管体1に支持させる役目を担う支持用テープ3としては、電力ケーブルとして使用される場合、絶縁性または半導電性の材料が好ましく、具体的な材料としてはカーボン紙、クラフト紙、テフロン(登録商標)テープ、ポリイミドテープなどが挙げられる。
【0049】
転位セグメント10を管体1の外周側に押しつけて保持させる役目を担う支持用テープ4としては、支持用テープ3と同様に絶縁性または半導電性の材料が好ましく、具体的な材料としてはカーボン紙、クラフト紙、テフロン(登録商標)テープ、ポリイミドテープなどが挙げられる。
【0050】
本発明に係る転位セグメント10を構成する超電導素線としては、ハステロイ等の金属基板上に、YSZやYBCO等の超電導体層を成膜したものが好適である。例えば、幅5mmで厚さが0.1mmのYBCO線材(ハステロイ基板/YSZ中間層/YBCO超電導体層)が挙げられる。
【0051】
〔転位撚り合せ工程〕
次に、前述した素線310を複数本、転位撚り合せ機に供給する。転位撚り合せ機を用い、前記テープ状の素線310の複数本(図面では6本)を、所定の転位ピッチで転位撚り合わせて、図3(a)に示すような転位セグメント10を形成する。ここでの転位ピッチ(転位渡り部の長さ)としては、例えば20mm〜500mm程度の範囲が好適であるが、テープ線材の幅と厚さの組合せにより、転位ピッチの値は変わる。
【0052】
〔巻回工程1〕
上述した転位セグメント10と略同幅の剛性体2を、使用する転位セグメント10と同じ数とした複数組(例えば、24組)だけ、表面に絶縁処理が施された管体1の周囲に所定の螺旋ピッチでZ巻あるいはS巻で巻回した後、剛性体2の上に支持用テープ3を巻き付けて、剛性体2を管体1の外周に固定する。
【0053】
〔巻回工程2〕
次いで、上述した転位セグメント10の複数組(例えば、24組)が、個々の剛性体2の上に配されるように、管体1の周囲に所定の螺旋ピッチでZ巻あるいはS巻で巻回する。これにより、図1(a)に示すような転位セグメント導体が得られる。ここでの螺旋ピッチとしては、100〜2000mm程度の範囲内が好ましい。
【0054】
本発明に係る転位セグメント導体にあっては、ハステロイ基板上にYSZ中間層、YBCO超電導体層を設けてなるテープ状の素線310を複数本、転位撚り合わせた転位セグメント10を用いたことにより、内層側と外層側での層間電流勾配を抑制することができる。
【0055】
すなわち、超電導導体19をそのまま管体1の外周に多層巻回した場合に、自己磁場の影響から、転位セグメント導体を構成する最外層の素線310に多くの電流が流れ、転位セグメント導体の内層側に向かって実際に流れる電流が少なくなる層間電流勾配を生じる傾向があり、臨界電流密度が低下する傾向があるのに対して、本発明に係る転位セグメント導体では、転位撚り合せすることで1本の素線310を内層側と外層側を行き来するように配する構成したので、上記の層間電流勾配の発生を抑制できる。その結果、交流通電時の偏流を防止して臨界電流密度の劣化を防止できる転位セグメント導体が得られる。
【0056】
また、本発明に係る転位セグメント導体は、転位セグメント10と管体1との間に、転位セグメント10の幅より極端に狭かったり、あるいは極端に広かったりせず、転位セグメント10の幅と略同一の幅を有し、少なくとも転位セグメント10が接する平板状の剛性体を配したので、転位セグメント10を管体1の周囲に螺旋状に巻き付けた際に、転位セグメント10の構造は剛性体2に押し付けられ、より安定に保持される。
【0057】
従って、本発明による剛性体2を配した転位セグメント導体であれば、図9(a)に示すような剛性体を介さず管体901に直接押し付けられていた従来の転位セグメント20の問題、すなわち、転位セグメント20が管体901の周方向(矢印の方向)に曲げられ、大きな歪みを受けるという問題が解消される。その結果、本発明に係る転位セグメント導体では、転位セグメントの構造が乱れることが無くなり、安定した導通環境が維持される。ゆえに、本発明によれば、従来より超電導特性の極めて安定な転位セグメント導体の提供が可能となる。
【0058】
<超電導ケーブル>
次に、上述した本発明に係る転位セグメント導線を用いた超電導ケーブルの実施形態について説明する。
図4は、転位セグメント導線が超電導ケーブルをなす一実施形態を示す斜視図である。なお、図4においては、超電導ケーブルの全体構成を詳述するため、図1に示した本発明に係る剛性体や支持体は省略してある。
【0059】
本実施形態の超電導ケーブル470は、交流電流通電時において偏流を抑制した構造を有するもので、パイプ状のフォーマ(管体)477の周囲に上記の転位セグメント10が螺旋状に巻回されて複数の超電導体層484が積層され、これら超電導体層484、484間に絶縁テープ等からなる層間絶縁層485が形成されたものである。また、超電導ケーブル470の外側には、図示しない半導体層、絶縁層、保護層、断熱層、防食層などが必要に応じて形成されて使用される。
【0060】
フォーマ477はステンレス鋼などからなり、その表面にはフォーマ477と転位セグメント10との間の通電を抑制するため絶縁処理が施されている。また、内部の空洞は液体窒素等の冷却媒体の流路として用いられ、転位セグメント10を構成する複数の素線の冷却が行われるようになっている。
【0061】
以上の超電導ケーブル470では、転位セグメントと管体との間に、転位セグメントの幅と略同一の幅を有し、少なくともこの転位セグメントが接するように平板状の剛性体を配したことにより、転位セグメントを管体の周囲に螺旋状に巻き付けた際に、転位セグメントの構造は剛性体に押し付けられることにより安定に保持されるので、転位セグメントが管体の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題が解消され、ひいては、安定した超電導特性の維持が図られる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る転位セグメント導体は、転位セグメントと管体との間に平板状の剛性体を配する構成を採用した。従って、このような転位セグメント導体であれば、これを構成する転位セグメントが管体の周方向に曲げられ、大きな歪みを受けるという従来の問題が解消されるので、超電導特性の安定性に優れ、長期信頼性の高い超電導ケーブルの提供に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転位セグメント導体の製造途中の様子を示す示す断面図である。
【図3】本発明に係る転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明に係る超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図5】従来の転位セグメントの一実施形態を示す概略図である。
【図6】従来の転位セグメント導体の一実施形態を示す断面図(a)と上方から見た平面図(b)である。
【図7】歪ゲージ取り付け位置と周方向曲げ歪との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
α1〜α10 歪ゲージ取り付け位置、1、901 管体、2 剛性体、3、4 支持テープ、10、20 転位セグメント、310、810 素線、320、820 転位渡り部、330、830 非転位渡り部、340、840 保形用テープ、470 超電導ケーブル。

Claims (4)

  1. テープ状の素線を複数本、転位撚り合わせてなる転位セグメントを、断面外周が略円形をなす管体の周囲に、螺旋状に巻き付けてなる転位セグメント導体において、
    前記転位セグメントと前記管体との間に、該転位セグメントの幅と略同一の幅を有する平板状の剛性体を配したことを特徴とする転位セグメント導体。
  2. 前記素線は金属基材上に超電導層を具備したものであることを特徴とする請求項1に記載の転位セグメント導体。
  3. 前記超電導層が酸化物超電導体からなることを特徴とする請求項2に記載の転位セグメント導体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の転位セグメントを用いたことを特徴とする超電導ケーブル。
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