JP2004306313A - 印刷版材料及び印刷版の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、自動化されたレーザー露光装置に好適な印刷版材料及び印刷版の作製方法に関し、特に印刷版出力時の記録位置精度に優れ、高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することである。
【解決手段】ロール状印刷版材料を、順次繰り出して所定長に切断する機構、露光部に固定する機構、レーザーによる画像露光を行う機構、及び排出する機構を有し、更に切断時にロール間の距離が200mm以内であるように配置された各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷版作製装置に用いられる印刷版材料であって、該印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフィルム印刷版であり、かつ、その表面に感熱性画像形成層を有することを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
【解決手段】ロール状印刷版材料を、順次繰り出して所定長に切断する機構、露光部に固定する機構、レーザーによる画像露光を行う機構、及び排出する機構を有し、更に切断時にロール間の距離が200mm以内であるように配置された各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷版作製装置に用いられる印刷版材料であって、該印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフィルム印刷版であり、かつ、その表面に感熱性画像形成層を有することを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料及び印刷版の作製方法に関し、特に自動化されたレーザー露光装置に好適な印刷版材料及び印刷版の作製方法を開示するものである。更に詳しくは、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、画像データを直接印刷版に記録するコンピュータ・トウ・プレート(CTP)が普及してきた。CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミ支持体を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての機能層を設けたフレキシブルタイプがある。近年、商業印刷においては印刷の多品種少部数化傾向が進み、市場では高品質で低価格な印刷版材料への要望が強い。従来のフレキシブルタイプの印刷版材料は、例えば特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいは特開2001−96710に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる。
【0003】
銀塩拡散転写方式は、露光後に湿式の現像と乾燥の工程が必要であり、画像形成工程での寸法精度が十分得られない。アブレーション方式は現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するためドット形状が不安定になりやすい。また、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。これらに対して、熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものは(例えば、特許文献1参照。)、画像形成後の印刷版をオフセット印刷機で印刷することにより湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して、これが印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去されるため特別な現像処理が不要であり、かつ熱溶融による画像形成のためドット形状がシャープであり高画質の印刷物が得られるという利点がある。
【0004】
しかしながら、フレキシブルタイプの印刷版はロール形状に巻き上げられた形態で使用されることが多く、通常は露光機内で自動搬送され、所定の長さに自動で切断して露光されるが、従来は切断の前後で発生する僅かな印刷版材料の斜行、露光部への固定不良、搬送ジャム等のために1版毎の露光位置が異なり、印刷時の位置精度が低下(いわゆるトンボズレ)することがあった。また、待機時に印刷版材料を固定しているニップロールの跡、切断部で発生した切り屑等による印刷品質の低下も見られ、熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものをフレキシブルタイプの印刷版に適用する上で、解決すべき重要な課題であった。
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満足する印刷版材料と特定の機構を有する印刷版形成装置とを組み合わせることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−138652号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特に自動化されたレーザー露光装置に好適な印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することに関し、更に詳しくは、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ、高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷版作製装置に用いられる印刷版材料であって、該印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフィルム印刷版であり、かつ、その表面に感熱性画像形成層を有することを特徴とする印刷版材料。
【0010】
2.印刷版形成層面を外巻きになるようにロール状に積層されており、かつ、730mm×860mmに断裁した印刷版材料の平置きカール量が正方向に0.5〜25mmであることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料。
【0011】
3.プラスチックフィルム基材上に親水性層、感熱性画像形成層をこの順に設けられたものであることを特徴とする前記1または2項に記載の印刷版材料。
【0012】
4.熱により画像形成された後、印刷機上で現像されるものであることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0013】
5.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断部から切断部後方のニップロールまでの距離が50mm以下になるよう配置されたことを特徴とする印刷版の作製方法。
【0014】
6.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断後のロール状印刷版材料先端を、切断部手前のニップロールまでの距離が20mm以下になるように巻き戻して待機することを特徴とする印刷版の作製方法。
【0015】
7.少なくとも切断部後方の材料表面に接触するローラーが、粘着性を有するローラーであることを特徴とする前記5または6項に記載の印刷版の作製方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる印刷版作製装置の一例を図1に基づいて説明する。
【0017】
図1は装置構成の断面を模式的に示したものである。図1において、1はロール状に巻かれた印刷版材料であり、2は切断部手前のニップロール、3は切断部、4は切断部後方のニップロール、5は露光部(露光ドラム)、6はレーザー露光ヘッドである。
【0018】
先ず印刷版材料の先端が繰り出され、ニップロール2、及び切断部3を経由してニップロール4へ送られる。このときニップロール2と4とのロール中心間距離は200mm以内であり、好ましくは150mm以内である。200mmを越えるとロール間における印刷版材料Fの幅方向における張力バランスを一定にすることが難しくなり、切断面の平行度が低下する。その結果、繰り返し露光位置精度が低下して印刷時のトンボズレを引き起こす。
【0019】
所定量の印刷版材料Fが繰り出された後、印刷版材料Fはニップロール2及び4には挟持固定された状態で、切断部3で切断される。このとき切断部3とニップロール4のロール中心間距離は50mm以内であることが好ましい。50mm以上の場合には切断面の平行度を確保することが難しくなり、繰り返し露光位置精度が低下して印刷時のトンボズレが問題となる。
【0020】
切断された印刷版材料Fは露光部(ドラム)へ送られ、減圧密着等で露光部表面に固定された後、レーザー露光ヘッド6によって画像露光された後排出される。ロール状に巻かれた印刷版材料1は切断後、一定量巻き取られて待機することが好ましく、その待機位置は印刷版材料の先端がニップロール2の後方20mm以内にあることが好ましい(図2参照。)。20mmを越えるとローラーで長時間ニップされた部分が印刷領域に入り印刷故障を引き起こすことがある。
【0021】
ニップロール2、4のうち少なくとも一方は材料表面に付着した屑、塵芥を除去できるよう粘着性を有することが好ましい。特に好ましいのは、切断部後方のニップロール4が粘着性を有することである。印刷版材料Fを挟持する一対のロール両方が粘着性を有していても良いし、表面(印刷版形成層面)のみが粘着性であっても良い。ロールの粘着力は印刷版材料Fの厚み、スティフネス、表面粗さに応じて適宜選択することができる。粘着力が強すぎる場合は材料の蛇行や搬送ジャムが発生し、弱すぎる場合には屑・塵芥の除去能力が不十分になる。搬送性と屑・塵芥の除去能のバランスを最適化できるように上下のロールが異なる粘着力を有することも好ましい態様である。
【0022】
上記印刷版作製装置に使用される印刷版材料は総厚100〜250μmでかつスティフネスが20〜300gであり、かかる印刷版材料を使用することで装置内の安定搬送と断裁精度、及び印刷適性を確保することができる。
【0023】
本発明におけるスティフネスとは、株式会社東洋精機製作所製の「スティフネステスターUT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した値で定義する。
【0024】
(スティフネス測定条件)
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度 :10度
押し込み量 :2mm
スティフネスが20g未満であると搬送性が低下し、搬送経路でのジャムを発生する確率が高くなる。300gを越えると露光部での固定が不安定になり固定位置精度が低下する。特に露光部が円筒ドラムで材料を減圧密着により固定する場合はその差が顕著である。また、印刷時の取り扱い性も悪く安定した印刷が困難になる。
【0025】
印刷版材料は730mm×860mmに断裁した際の平置きカール量が正方向に0.5〜25mmであることが好ましい。本発明における平置きカール量とは、印刷版材料を730mm(ロール幅方向)×860mm(ロール巻方向)に切り出し、印刷版材料表面を下になるように平面に置いたときに印刷版材料端部と水平面間の距離(4角の平均値)のことである。
【0026】
カール量が25mmを越えると搬送経路でのジャム発生や断裁精度の低下が顕著になる。カール量が0.5mm以下(反対面側にカールする場合も含める)の場合は、露光部での固定が不安定になり固定位置精度が低下する。特に露光部が円筒ドラムの場合、材料を減圧密着で固定することが困難になる。
【0027】
カール量を調整するためにエージング処理を施した基材を用いて印刷版材料を作製することが好ましい。ここでエージング処理というのは基材をロール状態で、素材のTgより若干低い温度で熱処理することであり、例えばポリエチレンテレフタレート基材であれば40〜60℃で10〜100時間熱処理をかけることを意味する。
【0028】
ロール状に巻き上げた印刷版材料の状態で熱処理してカール量を調整することも好ましい。この場合、熱処理の温度と時間は巻き上げたロールの曲率によって適宜調整することができる。
【0029】
本発明に係る印刷版材料について説明する。
本発明で用いることのできる基材としては、金属板、紙、プラスチックフィルム、あるいはそれらの複合体である。取り扱い性の点からはプラスチックフィルムが特に好ましい。印刷版作製装置内での安定搬送性と印刷版としての取り扱い易さから基材の厚みとしては100〜250μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0030】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0031】
支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層が使用できる。帯電防止層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、混合して用いても良い。好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。
【0032】
帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。
これらプラスチックフィルムの表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていても良い。また、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に基材表面を粗面化することもできる。更に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けることも好ましい態様である。
【0033】
本発明の印刷版材料の親水性層に用いられる素材は、下記のものが挙げられる。
【0034】
親水性層マトリクスを形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリクスや、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリクス層、金属酸化物等が好ましく用いられる。特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他のいずれの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0035】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0036】
本発明では、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0037】
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0038】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0039】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能が不十分となる場合がある。
【0040】
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0041】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0042】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0043】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不十分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0044】
また、本発明の印刷版材料の親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0045】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0046】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不十分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0047】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加しても良いが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0048】
本発明の親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0049】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、または本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0050】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有しても良い。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0051】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0052】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0053】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0054】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0055】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0056】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0057】
粒径は1μm以上、1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましく、2μm〜6μmが更に好ましい。
【0058】
粒径が10μmを超えると、画像形成の解像度の低下や、ブランケット汚れの劣化が生じる懸念がある。本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量は適宜調整されるが、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0059】
本発明においては、基材と親水層の間に中間親水性層を設けることができる。中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。ただし、中間親水性層は多孔質であることの利点が少なく、また、より無孔質である方が塗膜強度の観点から好ましい。親水性マトリクス構造を形成する多孔質化材の含有量は、親水性層よりも少ないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0060】
中間親水性層で用いる粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、本発明に係る表面形態パラメータを満足するように適宜調整されるが、中間親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0061】
中間親水性層全体としても親水性層と同様に、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0062】
本発明に係る親水性層、中間親水性層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することができる。
【0063】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物を用いることが好好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0064】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0066】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0067】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であればいずれの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等いずれの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0068】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0069】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0070】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0071】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径を1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径を0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0072】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0073】
本発明に係る熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0074】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上、120℃以下、融点60℃以上、100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上、100℃以下、融点60℃以上、120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0075】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0076】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸のいずれかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0077】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0078】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていても良い。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0079】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0080】
本発明で用いることもできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0081】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0082】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知のいずれの方法で重合された高分子重合体からなるものでも良い。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、いずれの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いても良い。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0083】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を前述した多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0084】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていても良い。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0085】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0086】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0087】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0088】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0089】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0090】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。
【0091】
本発明の印刷版材料における画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0092】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いても良いが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0093】
本発明において、走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であっても良い。
【0094】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0095】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
実施例1
《支持体の作製》:プラスチックフィルムの作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定した未延伸フィルムを2軸で熱延伸し、平均膜厚が各々100、125、150、175、200、250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材1〜6)を作製した。
【0098】
《支持体の下引き処理》
上記で得られた基材1〜6の一方の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗設した(下引き面A)。また反対側の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗設(下引き面B)して下引き済み基材1A〜6Aを得た。
【0099】
〈下引き塗布液a〉
〈下引き塗布液b〉
ゼラチン 1%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05%
硬膜剤H−1 0.02%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02%
防黴剤F−1 0.01%
水 98.9%
【0100】
【化1】
【0101】
〈下引き塗布液c〉
〈下引き塗布液d〉
成分d−11:スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12:スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13:スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0102】
【化2】
【0103】
《印刷版材料の作製》
表1に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、及び表3に示す画像形成機能層塗布液を用いて下引き済み支持体の1A〜6A各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。その後、表3に示す画像形成機能層塗布液を、それぞれ、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、50℃で72時間のシーズニング処理を施して印刷版材料1B〜6Bを作製した。
【0104】
〈親水性層1用塗布液の調製〉
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0105】
尚、各素材の詳細は以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0106】
【表1】
【0107】
〈親水性層2用塗布液の調製〉
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0108】
尚、各素材の詳細は以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0109】
【表2】
【0110】
〈画像形成機能層塗布液の調製〉
【0111】
【表3】
【0112】
【化3】
【0113】
上記で作製した印刷版材料を、730mm幅で32mの長さに切断し、画像形成層塗工面が外側になるように、内径76.5mmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の試料1C〜6Cを作製した。
【0114】
175μmの基材を使用した試料(4C)3本をロール形状のまま、55℃/20%RHの環境で各々24時間、72時間、120時間保存してカール量を調整した試料(4D、4E、4F)を作製した。
【0115】
作製した印刷版材料は以下の評価を行う直前に、23℃/55%RHの環境下に24時間放置し、前述の方法によりスティフネス及びカール量を測定した。結果を表4に示す。
【0116】
《印刷版材料の評価》
評価用装置として、図1に示すような2対の駆動系に接続されたニップロールとそれらニップロール間に設けた1つの切断部を有する搬送ユニットを使用した。2対のニップロール及び切断部の材料搬送経路は水平に配置した。2対のニップロールはギアの切り替えにより、独立駆動、動機駆動が可能になっている。また、2対のニップロール間の距離も任意に変更できるような機構を有している。ロールニップ圧力は独立して調整可能であり、本発明では各々の厚みの材料がスリップしない最低ニップ圧力の1.2倍を標準条件とした。切断部は上刃が刃先角45℃の丸刃であるロータリーカット方式の切断ユニットを使用した。
【0117】
作製した印刷版材料を上記搬送ユニットに通し、所定長の印刷版材料を作製した。このとき、表4に示すように2対のニップロール間の距離、切断部から切断部後方のニップロールまでの距離、切断後のロール状印刷版材料先端を、切断部手前のニップロールまで巻き戻して待機する距離、ニップロール材質を変化させて搬送テストを行った。
【0118】
更に、比較例として下記構成の印刷版材料を作製し、同様にスティフネス及びカール量を測定し、搬送テストを行った。
【0119】
〔比較例〕
A)基材として厚み150μmのポリプロピレンフィルムを使用した。(印刷版材料7C)
B)基材として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。(印刷版材料8C)
C)基材として厚み300μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した(印刷版材料9C)
D)印刷版材料は4Cを使用し、ニップロール間距離を250mmにした。
【0120】
更に、本発明の一例としてニップロールまでの距離及び待機量について下記の変更を実施した。
【0121】
a)印刷版材料は4Cを使用し、切断部から後方ニップロールまでの距離を75mmにした。
【0122】
b)印刷版材料は4Cを使用し、切断後の待機量を30mmにした。
【0123】
【表4】
【0124】
上述の搬送ユニットで所定長さに切断した印刷版材料を、発振波長830nmの半導体レーザー露光ユニットと材料を固定する減圧吸引孔を有する直径350mmの回転ドラムとを搭載した露光装置で露光評価を行った。レーザービームのスポット径は約18μm、副走査方向の解像度2400dpi(尚、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)で、175線相当の網点画像を露光した。露光ヘッドとドラムの距離は、レーザーのビームウエスト中心が印刷版材料の表面に位置するように調整した。また、印刷版材料面での露光エネルギーが150〜350mJ/cm2になるようにレーザー出力とドラムの回転数を調整した。
【0125】
上記のように画像形成した印刷版試料について、下記の印刷条件で印刷版としての諸特性を評価した。
【0126】
印刷機 :DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インク:トーヨーキングハイエコーM紅(東洋インク社製)
(評価項目)
1)版材の切断精度
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った。全試料の繰り出し方向の長さ(1試料は幅手3点の平均値)を測定し、基準長860mmからの差の絶対値を算出した。
【0127】
2)直角精度
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った。全試料の印刷前版材の2対角線の距離差の絶対値を平均して算出した。
【0128】
3)搬送性
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った際、搬送ジャムの発生した枚数を計測した。
【0129】
4)現像性
印刷開始のシークエンスをPS版の印刷シークエンスで行い、非画線部のインク汚れが完全になくなるまでの枚数を計測した。
【0130】
5)寸法安定性
印刷前に版面に25μm幅のキズを2カ所50cm離してつけた。100枚印刷後の印刷紙面と3000枚印刷後の印刷紙面で2カ所のキズの距離がどのくらい変化したかで寸法変化を測定した。
【0131】
6)印刷品質
1000枚印刷後のベタパッチ、50%平網パッチ、5%平網パッチ部を各々900cm2目視及びルーペで観察し、印刷画像の素抜け、網点の欠けの有無を観察した。
【0132】
○:印刷画像部の素抜け、網点の欠け印刷面積の2%以下
△:印刷画像部の素抜け、網点の欠けが3〜5%以下
×:印刷画像部の素抜け、網点の欠けが6%以上
7)耐刷性
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた。(印刷は3万枚まで行った)
評価結果を表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
上表より、比較例に対し本発明に係る構成にすることにより、切断精度、直角精度、搬送性、現像性、寸法安定性、印刷品質、及び耐刷性を総合的に満足できることが分かった。
【0135】
【発明の効果】
本発明により、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ、高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷版作製方法に係る装置の構成を、断面として模式的に示したものである。
【図2】印刷版材料が切断された状態を示す、装置断面の模式図である。
【符号の説明】
1 印刷版材料ロール
2 切断部手前ニップロール
3 切断部(カッターユニット)
4 切断部後方ニップロール
5 露光部(露光ドラム)
6 レーザー露光ヘッド
7 スクイズロール
F 印刷版材料
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料及び印刷版の作製方法に関し、特に自動化されたレーザー露光装置に好適な印刷版材料及び印刷版の作製方法を開示するものである。更に詳しくは、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、画像データを直接印刷版に記録するコンピュータ・トウ・プレート(CTP)が普及してきた。CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミ支持体を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての機能層を設けたフレキシブルタイプがある。近年、商業印刷においては印刷の多品種少部数化傾向が進み、市場では高品質で低価格な印刷版材料への要望が強い。従来のフレキシブルタイプの印刷版材料は、例えば特開平5−66564号に開示されるようなフィルム基材上に銀塩拡散転写方式の感光層を設けたもの、あるいは特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層し、表層をレーザー露光でアブレーションさせて印刷版を形成するように構成されたもの、あるいは特開2001−96710に開示されるようなフィルム基材上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により親水性層あるいは画像形成層を画像様に発熱させることで画像形成層を親水性層上に溶融固着させるもの等が挙げられる。
【0003】
銀塩拡散転写方式は、露光後に湿式の現像と乾燥の工程が必要であり、画像形成工程での寸法精度が十分得られない。アブレーション方式は現像処理を必要としないが、表層のアブレーションにより画像を形成するためドット形状が不安定になりやすい。また、アブレーションした表層の飛散物による材料表面や露光装置内部の汚染が発生することがある。これらに対して、熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものは(例えば、特許文献1参照。)、画像形成後の印刷版をオフセット印刷機で印刷することにより湿し水で非画像部の画像形成層のみ膨潤溶解して、これが印刷初期の印刷紙(損紙)上に転写除去されるため特別な現像処理が不要であり、かつ熱溶融による画像形成のためドット形状がシャープであり高画質の印刷物が得られるという利点がある。
【0004】
しかしながら、フレキシブルタイプの印刷版はロール形状に巻き上げられた形態で使用されることが多く、通常は露光機内で自動搬送され、所定の長さに自動で切断して露光されるが、従来は切断の前後で発生する僅かな印刷版材料の斜行、露光部への固定不良、搬送ジャム等のために1版毎の露光位置が異なり、印刷時の位置精度が低下(いわゆるトンボズレ)することがあった。また、待機時に印刷版材料を固定しているニップロールの跡、切断部で発生した切り屑等による印刷品質の低下も見られ、熱溶融画像を親水性層上に形成する方式のものをフレキシブルタイプの印刷版に適用する上で、解決すべき重要な課題であった。
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満足する印刷版材料と特定の機構を有する印刷版形成装置とを組み合わせることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−138652号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特に自動化されたレーザー露光装置に好適な印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することに関し、更に詳しくは、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ、高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷版作製装置に用いられる印刷版材料であって、該印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフィルム印刷版であり、かつ、その表面に感熱性画像形成層を有することを特徴とする印刷版材料。
【0010】
2.印刷版形成層面を外巻きになるようにロール状に積層されており、かつ、730mm×860mmに断裁した印刷版材料の平置きカール量が正方向に0.5〜25mmであることを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料。
【0011】
3.プラスチックフィルム基材上に親水性層、感熱性画像形成層をこの順に設けられたものであることを特徴とする前記1または2項に記載の印刷版材料。
【0012】
4.熱により画像形成された後、印刷機上で現像されるものであることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0013】
5.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断部から切断部後方のニップロールまでの距離が50mm以下になるよう配置されたことを特徴とする印刷版の作製方法。
【0014】
6.ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断後のロール状印刷版材料先端を、切断部手前のニップロールまでの距離が20mm以下になるように巻き戻して待機することを特徴とする印刷版の作製方法。
【0015】
7.少なくとも切断部後方の材料表面に接触するローラーが、粘着性を有するローラーであることを特徴とする前記5または6項に記載の印刷版の作製方法。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる印刷版作製装置の一例を図1に基づいて説明する。
【0017】
図1は装置構成の断面を模式的に示したものである。図1において、1はロール状に巻かれた印刷版材料であり、2は切断部手前のニップロール、3は切断部、4は切断部後方のニップロール、5は露光部(露光ドラム)、6はレーザー露光ヘッドである。
【0018】
先ず印刷版材料の先端が繰り出され、ニップロール2、及び切断部3を経由してニップロール4へ送られる。このときニップロール2と4とのロール中心間距離は200mm以内であり、好ましくは150mm以内である。200mmを越えるとロール間における印刷版材料Fの幅方向における張力バランスを一定にすることが難しくなり、切断面の平行度が低下する。その結果、繰り返し露光位置精度が低下して印刷時のトンボズレを引き起こす。
【0019】
所定量の印刷版材料Fが繰り出された後、印刷版材料Fはニップロール2及び4には挟持固定された状態で、切断部3で切断される。このとき切断部3とニップロール4のロール中心間距離は50mm以内であることが好ましい。50mm以上の場合には切断面の平行度を確保することが難しくなり、繰り返し露光位置精度が低下して印刷時のトンボズレが問題となる。
【0020】
切断された印刷版材料Fは露光部(ドラム)へ送られ、減圧密着等で露光部表面に固定された後、レーザー露光ヘッド6によって画像露光された後排出される。ロール状に巻かれた印刷版材料1は切断後、一定量巻き取られて待機することが好ましく、その待機位置は印刷版材料の先端がニップロール2の後方20mm以内にあることが好ましい(図2参照。)。20mmを越えるとローラーで長時間ニップされた部分が印刷領域に入り印刷故障を引き起こすことがある。
【0021】
ニップロール2、4のうち少なくとも一方は材料表面に付着した屑、塵芥を除去できるよう粘着性を有することが好ましい。特に好ましいのは、切断部後方のニップロール4が粘着性を有することである。印刷版材料Fを挟持する一対のロール両方が粘着性を有していても良いし、表面(印刷版形成層面)のみが粘着性であっても良い。ロールの粘着力は印刷版材料Fの厚み、スティフネス、表面粗さに応じて適宜選択することができる。粘着力が強すぎる場合は材料の蛇行や搬送ジャムが発生し、弱すぎる場合には屑・塵芥の除去能力が不十分になる。搬送性と屑・塵芥の除去能のバランスを最適化できるように上下のロールが異なる粘着力を有することも好ましい態様である。
【0022】
上記印刷版作製装置に使用される印刷版材料は総厚100〜250μmでかつスティフネスが20〜300gであり、かかる印刷版材料を使用することで装置内の安定搬送と断裁精度、及び印刷適性を確保することができる。
【0023】
本発明におけるスティフネスとは、株式会社東洋精機製作所製の「スティフネステスターUT−100−230」を使用し、以下の条件で測定した値で定義する。
【0024】
(スティフネス測定条件)
サンプルサイズ:10×8cm(有効面積8×8cm)
たわみ角度 :10度
押し込み量 :2mm
スティフネスが20g未満であると搬送性が低下し、搬送経路でのジャムを発生する確率が高くなる。300gを越えると露光部での固定が不安定になり固定位置精度が低下する。特に露光部が円筒ドラムで材料を減圧密着により固定する場合はその差が顕著である。また、印刷時の取り扱い性も悪く安定した印刷が困難になる。
【0025】
印刷版材料は730mm×860mmに断裁した際の平置きカール量が正方向に0.5〜25mmであることが好ましい。本発明における平置きカール量とは、印刷版材料を730mm(ロール幅方向)×860mm(ロール巻方向)に切り出し、印刷版材料表面を下になるように平面に置いたときに印刷版材料端部と水平面間の距離(4角の平均値)のことである。
【0026】
カール量が25mmを越えると搬送経路でのジャム発生や断裁精度の低下が顕著になる。カール量が0.5mm以下(反対面側にカールする場合も含める)の場合は、露光部での固定が不安定になり固定位置精度が低下する。特に露光部が円筒ドラムの場合、材料を減圧密着で固定することが困難になる。
【0027】
カール量を調整するためにエージング処理を施した基材を用いて印刷版材料を作製することが好ましい。ここでエージング処理というのは基材をロール状態で、素材のTgより若干低い温度で熱処理することであり、例えばポリエチレンテレフタレート基材であれば40〜60℃で10〜100時間熱処理をかけることを意味する。
【0028】
ロール状に巻き上げた印刷版材料の状態で熱処理してカール量を調整することも好ましい。この場合、熱処理の温度と時間は巻き上げたロールの曲率によって適宜調整することができる。
【0029】
本発明に係る印刷版材料について説明する。
本発明で用いることのできる基材としては、金属板、紙、プラスチックフィルム、あるいはそれらの複合体である。取り扱い性の点からはプラスチックフィルムが特に好ましい。印刷版作製装置内での安定搬送性と印刷版としての取り扱い易さから基材の厚みとしては100〜250μmが好ましく、特に好ましくは150〜250μmである。
【0030】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0031】
支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層が使用できる。帯電防止層に用いられる金属酸化物粒子の材料としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、MgO、BaO、MoO3、V2O5及びこれらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、混合して用いても良い。好ましい金属酸化物としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgOである。
【0032】
帯電防止層の厚みは、0.01〜1μmであることが好ましい。
これらプラスチックフィルムの表面は、親水性層との密着性を確保するためにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が施されていても良い。また、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に基材表面を粗面化することもできる。更に親水性官能基を有するラテックス、あるいは水溶性樹脂による下引き層を設けることも好ましい態様である。
【0033】
本発明の印刷版材料の親水性層に用いられる素材は、下記のものが挙げられる。
【0034】
親水性層マトリクスを形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリクスや、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリクス層、金属酸化物等が好ましく用いられる。特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他のいずれの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0035】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0036】
本発明では、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。本発明で用いることのできるコロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0037】
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0038】
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0039】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能が不十分となる場合がある。
【0040】
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0041】
(M1、(M2)0.5)m(AlmSinO2)(m+n)・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0042】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0043】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで、親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不十分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0044】
また、本発明の印刷版材料の親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0045】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0046】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不十分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0047】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加しても良いが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0048】
本発明の親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0049】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、または本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0050】
また、本発明においては、水溶性樹脂を含有しても良い。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
【0051】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0052】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0053】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0054】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができるが、塗布液中での沈降を抑制するために、多孔質な金属酸化物粒子を用いることが好ましい。多孔質な金属酸化物粒子としては、前述の多孔質シリカ粒子や多孔質アルミノシリケート粒子を好ましく用いることができる。
【0055】
また、無機素材で被覆された粒子としては、例えば、ポリメチルメタアクリレートやポリスチレンといった有機粒子を芯材とし、芯材粒子よりも粒径の小さな無機粒子で被覆した粒子が挙げられる。無機粒子の粒径としては、芯材粒子の1/10〜1/100程度であることが好ましい。また、無機粒子としては、同様にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなど、公知の金属酸化物粒子を用いることができる。被覆方法としては、種々の公知の方法を用いることができるが、ハイブリダイザのような空気中で芯材粒子と被覆材粒子とを高速に衝突させて芯材粒子表面に被覆材粒子を食い込ませて固定、被覆する乾式の被覆方法を好ましく用いることができる。
【0056】
また、有機粒子の芯材を金属メッキした粒子も用いることができる。このような粒子としては、例えば、樹脂粒子に金メッキを施した積水化学工業社製の「ミクロパールAU」等が挙げられる。
【0057】
粒径は1μm以上、1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましく、2μm〜6μmが更に好ましい。
【0058】
粒径が10μmを超えると、画像形成の解像度の低下や、ブランケット汚れの劣化が生じる懸念がある。本発明では、粒径が1μm以上の粒子の添加量は適宜調整されるが、親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。親水性層全体としては、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0059】
本発明においては、基材と親水層の間に中間親水性層を設けることができる。中間親水性層に用いる素材としては、親水性層と同様の素材を用いることができる。ただし、中間親水性層は多孔質であることの利点が少なく、また、より無孔質である方が塗膜強度の観点から好ましい。親水性マトリクス構造を形成する多孔質化材の含有量は、親水性層よりも少ないことが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0060】
中間親水性層で用いる粒径が1μm以上の粒子の添加量としては、本発明に係る表面形態パラメータを満足するように適宜調整されるが、中間親水性層全体の1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0061】
中間親水性層全体としても親水性層と同様に、有機樹脂やカーボンブラック等の炭素を含有する素材の含有比率が低いことが親水性を向上させるために好ましく、これらの素材の合計が9質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
【0062】
本発明に係る親水性層、中間親水性層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することができる。
【0063】
光熱変換素材としては、赤外吸収色素、無機・有機顔料、金属、金属酸化物を用いることが好好ましく、具体的には下記のような素材を挙げることができる。
【0064】
赤外吸収色素としては、シアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0066】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0067】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であればいずれの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等いずれの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0068】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0069】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、特開平9−25126号、特開平9−237570号、特開平9−241529号、特開平10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0070】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0071】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径を1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径を0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0072】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、親水性層や下層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0073】
本発明に係る熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0074】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上、120℃以下、融点60℃以上、100℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上、100℃以下、融点60℃以上、120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0075】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げて作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0076】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸のいずれかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0077】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0078】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていても良い。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0079】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0080】
本発明で用いることもできる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0081】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0082】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知のいずれの方法で重合された高分子重合体からなるものでも良い。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、いずれの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いても良い。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0083】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を前述した多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0084】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化、もしくは異なる素材で被覆されていても良い。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0085】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
【0086】
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、更に水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0087】
水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。
【0088】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0089】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0090】
構成層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましい。
【0091】
本発明の印刷版材料における画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0092】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1000nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いても良いが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0093】
本発明において、走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であっても良い。
【0094】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0095】
本発明に関しては、特に(3)項記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)項記載の露光方式が用いられる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
実施例1
《支持体の作製》:プラスチックフィルムの作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定した未延伸フィルムを2軸で熱延伸し、平均膜厚が各々100、125、150、175、200、250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材1〜6)を作製した。
【0098】
《支持体の下引き処理》
上記で得られた基材1〜6の一方の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗設した(下引き面A)。また反対側の面に、8W/m2・分の条件でコロナ放電処理を行いながら下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し、更にその上にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗設(下引き面B)して下引き済み基材1A〜6Aを得た。
【0099】
〈下引き塗布液a〉
〈下引き塗布液b〉
ゼラチン 1%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05%
硬膜剤H−1 0.02%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02%
防黴剤F−1 0.01%
水 98.9%
【0100】
【化1】
【0101】
〈下引き塗布液c〉
〈下引き塗布液d〉
成分d−11:スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12:スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13:スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0102】
【化2】
【0103】
《印刷版材料の作製》
表1に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)、表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)、及び表3に示す画像形成機能層塗布液を用いて下引き済み支持体の1A〜6A各々のA面上にワイヤーバーを用いて塗布した。親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いてそれぞれ乾燥付量が2.5g/m2、0.6g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥したのちに60℃で24時間の加熱処理を施した。その後、表3に示す画像形成機能層塗布液を、それぞれ、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2になるように塗布して50℃で3分間乾燥したのちに、50℃で72時間のシーズニング処理を施して印刷版材料1B〜6Bを作製した。
【0104】
〈親水性層1用塗布液の調製〉
表1に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過して親水性層1用塗布液を調製した。
【0105】
尚、各素材の詳細は以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0106】
【表1】
【0107】
〈親水性層2用塗布液の調製〉
表2に記載の各素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過して親水性層2用塗布液を調製した。
【0108】
尚、各素材の詳細は以下の通りであり、表中の数値は質量部を表す。
【0109】
【表2】
【0110】
〈画像形成機能層塗布液の調製〉
【0111】
【表3】
【0112】
【化3】
【0113】
上記で作製した印刷版材料を、730mm幅で32mの長さに切断し、画像形成層塗工面が外側になるように、内径76.5mmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の試料1C〜6Cを作製した。
【0114】
175μmの基材を使用した試料(4C)3本をロール形状のまま、55℃/20%RHの環境で各々24時間、72時間、120時間保存してカール量を調整した試料(4D、4E、4F)を作製した。
【0115】
作製した印刷版材料は以下の評価を行う直前に、23℃/55%RHの環境下に24時間放置し、前述の方法によりスティフネス及びカール量を測定した。結果を表4に示す。
【0116】
《印刷版材料の評価》
評価用装置として、図1に示すような2対の駆動系に接続されたニップロールとそれらニップロール間に設けた1つの切断部を有する搬送ユニットを使用した。2対のニップロール及び切断部の材料搬送経路は水平に配置した。2対のニップロールはギアの切り替えにより、独立駆動、動機駆動が可能になっている。また、2対のニップロール間の距離も任意に変更できるような機構を有している。ロールニップ圧力は独立して調整可能であり、本発明では各々の厚みの材料がスリップしない最低ニップ圧力の1.2倍を標準条件とした。切断部は上刃が刃先角45℃の丸刃であるロータリーカット方式の切断ユニットを使用した。
【0117】
作製した印刷版材料を上記搬送ユニットに通し、所定長の印刷版材料を作製した。このとき、表4に示すように2対のニップロール間の距離、切断部から切断部後方のニップロールまでの距離、切断後のロール状印刷版材料先端を、切断部手前のニップロールまで巻き戻して待機する距離、ニップロール材質を変化させて搬送テストを行った。
【0118】
更に、比較例として下記構成の印刷版材料を作製し、同様にスティフネス及びカール量を測定し、搬送テストを行った。
【0119】
〔比較例〕
A)基材として厚み150μmのポリプロピレンフィルムを使用した。(印刷版材料7C)
B)基材として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。(印刷版材料8C)
C)基材として厚み300μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した(印刷版材料9C)
D)印刷版材料は4Cを使用し、ニップロール間距離を250mmにした。
【0120】
更に、本発明の一例としてニップロールまでの距離及び待機量について下記の変更を実施した。
【0121】
a)印刷版材料は4Cを使用し、切断部から後方ニップロールまでの距離を75mmにした。
【0122】
b)印刷版材料は4Cを使用し、切断後の待機量を30mmにした。
【0123】
【表4】
【0124】
上述の搬送ユニットで所定長さに切断した印刷版材料を、発振波長830nmの半導体レーザー露光ユニットと材料を固定する減圧吸引孔を有する直径350mmの回転ドラムとを搭載した露光装置で露光評価を行った。レーザービームのスポット径は約18μm、副走査方向の解像度2400dpi(尚、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)で、175線相当の網点画像を露光した。露光ヘッドとドラムの距離は、レーザーのビームウエスト中心が印刷版材料の表面に位置するように調整した。また、印刷版材料面での露光エネルギーが150〜350mJ/cm2になるようにレーザー出力とドラムの回転数を調整した。
【0125】
上記のように画像形成した印刷版試料について、下記の印刷条件で印刷版としての諸特性を評価した。
【0126】
印刷機 :DAIYA1F−1(三菱重工業社製)
印刷用紙:北越製紙 ミューコート 104.7g/m2
湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液
インク:トーヨーキングハイエコーM紅(東洋インク社製)
(評価項目)
1)版材の切断精度
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った。全試料の繰り出し方向の長さ(1試料は幅手3点の平均値)を測定し、基準長860mmからの差の絶対値を算出した。
【0127】
2)直角精度
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った。全試料の印刷前版材の2対角線の距離差の絶対値を平均して算出した。
【0128】
3)搬送性
切断量を860mmに設定し、35枚連続して搬送・切断を行った際、搬送ジャムの発生した枚数を計測した。
【0129】
4)現像性
印刷開始のシークエンスをPS版の印刷シークエンスで行い、非画線部のインク汚れが完全になくなるまでの枚数を計測した。
【0130】
5)寸法安定性
印刷前に版面に25μm幅のキズを2カ所50cm離してつけた。100枚印刷後の印刷紙面と3000枚印刷後の印刷紙面で2カ所のキズの距離がどのくらい変化したかで寸法変化を測定した。
【0131】
6)印刷品質
1000枚印刷後のベタパッチ、50%平網パッチ、5%平網パッチ部を各々900cm2目視及びルーペで観察し、印刷画像の素抜け、網点の欠けの有無を観察した。
【0132】
○:印刷画像部の素抜け、網点の欠け印刷面積の2%以下
△:印刷画像部の素抜け、網点の欠けが3〜5%以下
×:印刷画像部の素抜け、網点の欠けが6%以上
7)耐刷性
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた。(印刷は3万枚まで行った)
評価結果を表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
上表より、比較例に対し本発明に係る構成にすることにより、切断精度、直角精度、搬送性、現像性、寸法安定性、印刷品質、及び耐刷性を総合的に満足できることが分かった。
【0135】
【発明の効果】
本発明により、印刷版出力時の記録位置精度に優れ、かつ、高品質な印刷物が得られる印刷版材料及び印刷版の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷版作製方法に係る装置の構成を、断面として模式的に示したものである。
【図2】印刷版材料が切断された状態を示す、装置断面の模式図である。
【符号の説明】
1 印刷版材料ロール
2 切断部手前ニップロール
3 切断部(カッターユニット)
4 切断部後方ニップロール
5 露光部(露光ドラム)
6 レーザー露光ヘッド
7 スクイズロール
F 印刷版材料
Claims (7)
- ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷版作製装置に用いられる印刷版材料であって、該印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフィルム印刷版であり、かつ、その表面に感熱性画像形成層を有することを特徴とする印刷版材料。
- 印刷版形成層面を外巻きになるようにロール状に積層されており、かつ、730mm×860mmに断裁した印刷版材料の平置きカール量が正方向に0.5〜25mmであることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
- プラスチックフィルム基材上に親水性層、感熱性画像形成層をこの順に設けられたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
- 熱により画像形成された後、印刷機上で現像されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、及び露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断部から切断部後方のニップロールまでの距離が50mm以下になるよう配置されたことを特徴とする印刷版の作製方法。
- ロール状に巻かれた印刷版材料を順次繰り出して所定長に切断する機構、切断された印刷版材料を露光部に固定する機構、固定された印刷版材料表面にレーザーによる画像露光を行う機構、露光後の印刷版材料を排出する機構を有し、更に切断時に切断部の前後にロール間の距離が200mm以内であるように配置された少なくとも各1対のニップロールで印刷版材料を挟持するよう構成された印刷作製装置を用いる印刷版の作製方法であって、前記印刷版材料が総厚100〜250μm及びスティフネス20〜300gのフレキシブルフィルム印刷版材料であり、かつ、切断後のロール状印刷版材料先端を、切断部手前のニップロールまでの距離が20mm以下になるように巻き戻して待機することを特徴とする印刷版の作製方法。
- 少なくとも切断部後方の材料表面に接触するローラーが、粘着性を有するローラーであることを特徴とする請求項5または6に記載の印刷版の作製方法。
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-
2003
- 2003-04-03 JP JP2003100203A patent/JP2004306313A/ja active Pending
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