JP2004300608A - スチールコード及びビードワイヤー並びにタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴムとの初期接着力を損なうことなく、長期間の使用においても、接着力の低下を著しくに抑制し、タイヤなどの耐久性を大幅に向上させることのできる表面コーティングされたスチールコード、ビードワイヤ及びこれを用いたタイヤを提供すること。
【解決手段】ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂を表面コーティングしてなるゴム物品補強用スチールコード又はタイヤ用ビードワイヤ、及びこれを用いたゴム複合体並びにタイヤである。
【選択図】 なし
【解決手段】ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂を表面コーティングしてなるゴム物品補強用スチールコード又はタイヤ用ビードワイヤ、及びこれを用いたゴム複合体並びにタイヤである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のノボラック型樹脂をコーティングしてなるゴム物品補強用スチールコード及びタイヤ用ビードワイヤー、並びにこれを用いたゴム複合体及びタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等のタイヤのベルトやビード部には補強材として強度及び剛性に優れる高炭素鋼からなるスチールコードやビードワイヤが用いられている。これら補強材とゴムとの接着は重要であり、両者が強固に接着されないと、例えばタイヤ走行時に発生する熱や水分などにより、ゴムとの接着力の低下を引き起し、スチールコードやビードワイヤとゴムとが剥離し、タイヤ故障の原因につながることがある。また、車両の高速化や大型化に伴い長期熱履歴条件下での一層の耐久性が求められる傾向にある。
【0003】
このため、最近では、例えばスチールコード被覆ゴムに含リン有機化合物からなる過酸化物分解剤、フェノール類化合物をホルマリンで縮合したフェノール系化合物及びヘキサメチレンテトラミンなどを配合することが提案されている(特許文献1参照)。また、ビードワイヤ被覆ゴムに反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂及びメチレン供与体などを配合することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの場合、タイヤの長期間使用における接着力の低下は未だ大きく、一層の性能向上が求められている。
一方、従来より、タイヤ用ビードワイヤの保管に際して、防錆による初期接着力の低下防止を目的として、ビード製造後にクマロン樹脂などの熱可塑性樹脂をコーティングすることが知られている。しかし、この場合、タイヤ製造後の製品においては、樹脂はゴム中に溶解してしまうので、長期間使用によるビード界面部分における錆発生の懸念もあり、そのための接着力の低下も避けられないものであった。
【0004】
【特許文献1】
特開平2002−338739号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開平7−257117号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、初期接着力を高めるとともに、製品の長期使用においても、ゴムとの接着力の低下が著しく抑制され、特にタイヤの耐久性を大幅に向上させることのできる特定樹脂を表面コーティングしたスチールコード及びビードワイヤ、並びにこれを用いたゴム複合体及びタイヤを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、ノボラック型フェノール系樹脂をスチールコード又はビードワイヤーの表面にコーティングすることが有効なことを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂を表面コーティングしてなるゴム物品補強用スチールコードを提供するものである。
また本発明は、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂からなる樹脂を表面コーティングしてなるタイヤ用ビードワイヤを提供するものである。
さらに、本発明は、前記スチールコード又はビードワイヤとゴム組成物とからなる複合体、並びに該複合体を用いたタイヤを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、スチールコード又はビードワイヤからなる高炭素鋼の表面には、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂がコーティングされる。
前記スチールコードは、タイヤカーカスプライ,タイヤベルトプライやコンベアベルトなどの補強材として用いられるもので、高い強力が必要とされ、複数本のスチールフィラメントからなる単撚り又は複撚り構造のものである。このスチールコードは、ゴム組成物との接着性を良好にするために、通常、黄銅,亜鉛,あるいはこれにニッケルやコバルトを含有する合金でメッキされているが、黄銅メッキ(Cu/Zn合金)が好適である。黄銅メッキ中のCu含有率は75質量%以下、好ましくは55〜70質量%で、良好な初期接着力が得られる。
また、タイヤ用ビードワイヤは、カーカスコードの両端を支持し、タイヤをリムに固定する役割を有するタイヤビード部の補強材としてビードコアを構成しており、その被覆ゴム(ビードインシュレーションゴム)には硬質ゴムが用いられている。このビードワイヤは、ゴム組成物との接着性を良好にするために、通常ブロンズメッキ(Sn/Cu合金)されているが、メッキ中のSn含有率が2〜8質量%であると良好な初期接着力が得られる。
【0008】
また、本発明にける上記ビードワイヤは、ビードコア構造には特に限定されず、例えばストランドビード、6角ビード、ケーブルビード、プレートビードのいずれにも適用することができる。
前記スチールコード又はビードワイヤの表面には、ノボラック型フェノール樹脂及びノボラック型レゾルシン樹脂の少なくとも一方の樹脂をコーティングすることが必要である。
ここで、ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂は、フェノール又はレゾルシンをアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドを用いて縮合することにより得られるものであり、該樹脂は、加熱加圧条件下、例えばタイヤの加硫工程において、好ましくは後述するメチレン供与体などの硬化剤と反応して三次元架橋化ができるものである。また、このような樹脂には、モノマー成分として、フェノールやレゾルシン以外の例えばクレゾールなどのアルキルフェノール、カテコール、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼンなどとの共縮合体樹脂も含まれるが、中でも、フェノール及び/又はレゾルシンをモノマー成分とするノボラック型の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、適宜一種又は二種以上を選択して用いることができる。
【0009】
また、前記ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂の軟化点は40〜150℃であることが好ましい。軟化点が40℃未満では、特に夏場にコーティングする際、ビード表面の粘着性が高くなりすぎて工場作業性を阻害することがある。150℃を超えるとタイヤ加硫時のゴムとビードワイヤ間の接着が阻害され、接着力が低下することがある。この観点から、前記樹脂の軟化点は好ましくは60〜140℃である。
また、樹脂のコーティング量は0.005〜0.30mg/cm2が好ましい。コーティング量が少なすぎても、多すぎても充分な接着力が得られないことがある。
【0010】
これらの樹脂の溶剤としては、例えばベンゼン,トルエン,キシレン,酢酸エチルエステル及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。
本発明における複合体は、前記樹脂コーティングにより処理されたスチールコード又はビードワイヤにゴム組成物を被覆することにより得られる。例えば、カレンダーによりスチールコーティングゴムをスチールコードにコーティングすることにより、ベルトプライやカーカスプライとしての複合体を製造することができる。また、押出機によりビードインシュレーションゴムをビードワイヤにインシュレートすることにより、ビード構成部材としての複合体を製造することができる。
【0011】
前記ゴム組成物としては、通常、タイヤ製造に用いられるスチールコーティングゴム又はビードインシュレーションゴムを用いることができるが、硬化剤を配合することが好ましい。この硬化剤としては、前記ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂との反応・硬化の役割を果たすものであり、加熱時メチレン基を供与し得る化合物であり、例えばヘキサメチレンテトラミン,多価メチロール化メラミン誘導体などがあるが、好ましくはヘキサメチレンテトラミンである。この市販品としては大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(商標)などがある。硬化剤の配合量は、ゴム成分100質量部あたり、0.5〜3.0質量部が好ましい。0.5質量部未満では添加効果が充分でなく、3.0質量部を超えるともはや増量効果が得られないことがある。
【0012】
配合されたゴム中の硬化剤は、接着プロモーターとして作用し、スチールコード又はビードワイヤに表面コーティングされた前記樹脂と反応して強固な接着力が得られる。従って、従来の接着ゴム組成物における如く、高価なフェノール系樹脂を被覆ゴムに配合する必要はないので、該樹脂の使用量を著しく少なくすることができ、しかも良好な接着性が得られるので経済的にも有利である。
さらに、本発明においては、タイヤ用ビードワイヤにノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂をコーティングすることが同時に防錆効果を有するので、従来、ビードワイヤの保管時になされていたクマロン樹脂の表面塗布が不要となる。しかも、本発明においては、ビードワイヤとゴムとの界面で反応した硬化樹脂は、加硫後においてもゴム中への溶解はないので、特にタイヤを長期間使用しても接着力の低下を著しく抑制することが可能となる。
【0013】
本発明における前記ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムのいずれでもよいが、合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴム,ブタジエン−アクリルニトリル共重合体ゴム(NBR),エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記ゴム組成物においては、補強性充填剤として、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。例えばカーボンブラックとしてはFEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられる。
上記以外にも、本発明におけるゴム組成物には、亜鉛華,ステアリン酸,接着促進剤,加硫促進剤,老化防止剤など、通常ゴム業界で用いられる各種成分を適宜配合することができる。
なお、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素などの不活性なガスを用いることができる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(1)ビードワイヤの引抜き試験
試作タイヤのビード部より、ゴム中の埋没長さが1cmであるサンプルを切り出し、その中の1本のビードワイヤをインストロンにより引き抜き、その際に最大となる引き抜き力を測定した。
【0015】
実施例1〜12及び比較例1
ブロンズメッキしてなる直径1.4mmのビードワイヤ表面に、ノボラック型フェノール樹脂をコーティングした。
このように表面コーティングしたビードワイヤに、押出機を用いて第1表に示すビードインシュレーションゴム組成物をインシュレートして、ストランドビード(複合体)を製造し、これをビード部材として、通常の方法によりサイズ195/70R14の乗用車用タイヤを製造した。
【0016】
【表1】
【0017】
(注)
*加硫促進剤DM:ジベンゾチアジルジサルファイド
接着性の評価のために、生産直後タイヤのビード部よりサンプルを切り出し、前記の方法により、ビードワイヤの引抜き試験を行った。また、タイヤをリム組みし、屋外に2年間放置したタイヤについて、同様の引抜き試験を行なった。結果を第2表に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
上記の結果、本発明に係る実施例1〜12のタイヤは、比較例1に比べて、2年間放置後の接着力の低下は著しく小さいものであった。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、特定のノボラック樹脂を表面コーティングしたスチールコード又はビードワイヤを用いることにより、強固な初期接着力が得られるとともに、長期間の使用においても接着力の低下を大幅に抑制し、ゴムとの良好な接着性を保持することができる。また、本発明におけるビードワイヤは、防錆性にも優れているので保管上の問題もない。従って、本発明は、特に耐久性に優れたタイヤの生産に有効に適用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のノボラック型樹脂をコーティングしてなるゴム物品補強用スチールコード及びタイヤ用ビードワイヤー、並びにこれを用いたゴム複合体及びタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等のタイヤのベルトやビード部には補強材として強度及び剛性に優れる高炭素鋼からなるスチールコードやビードワイヤが用いられている。これら補強材とゴムとの接着は重要であり、両者が強固に接着されないと、例えばタイヤ走行時に発生する熱や水分などにより、ゴムとの接着力の低下を引き起し、スチールコードやビードワイヤとゴムとが剥離し、タイヤ故障の原因につながることがある。また、車両の高速化や大型化に伴い長期熱履歴条件下での一層の耐久性が求められる傾向にある。
【0003】
このため、最近では、例えばスチールコード被覆ゴムに含リン有機化合物からなる過酸化物分解剤、フェノール類化合物をホルマリンで縮合したフェノール系化合物及びヘキサメチレンテトラミンなどを配合することが提案されている(特許文献1参照)。また、ビードワイヤ被覆ゴムに反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂及びメチレン供与体などを配合することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの場合、タイヤの長期間使用における接着力の低下は未だ大きく、一層の性能向上が求められている。
一方、従来より、タイヤ用ビードワイヤの保管に際して、防錆による初期接着力の低下防止を目的として、ビード製造後にクマロン樹脂などの熱可塑性樹脂をコーティングすることが知られている。しかし、この場合、タイヤ製造後の製品においては、樹脂はゴム中に溶解してしまうので、長期間使用によるビード界面部分における錆発生の懸念もあり、そのための接着力の低下も避けられないものであった。
【0004】
【特許文献1】
特開平2002−338739号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開平7−257117号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、初期接着力を高めるとともに、製品の長期使用においても、ゴムとの接着力の低下が著しく抑制され、特にタイヤの耐久性を大幅に向上させることのできる特定樹脂を表面コーティングしたスチールコード及びビードワイヤ、並びにこれを用いたゴム複合体及びタイヤを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、ノボラック型フェノール系樹脂をスチールコード又はビードワイヤーの表面にコーティングすることが有効なことを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂を表面コーティングしてなるゴム物品補強用スチールコードを提供するものである。
また本発明は、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂からなる樹脂を表面コーティングしてなるタイヤ用ビードワイヤを提供するものである。
さらに、本発明は、前記スチールコード又はビードワイヤとゴム組成物とからなる複合体、並びに該複合体を用いたタイヤを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、スチールコード又はビードワイヤからなる高炭素鋼の表面には、ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂がコーティングされる。
前記スチールコードは、タイヤカーカスプライ,タイヤベルトプライやコンベアベルトなどの補強材として用いられるもので、高い強力が必要とされ、複数本のスチールフィラメントからなる単撚り又は複撚り構造のものである。このスチールコードは、ゴム組成物との接着性を良好にするために、通常、黄銅,亜鉛,あるいはこれにニッケルやコバルトを含有する合金でメッキされているが、黄銅メッキ(Cu/Zn合金)が好適である。黄銅メッキ中のCu含有率は75質量%以下、好ましくは55〜70質量%で、良好な初期接着力が得られる。
また、タイヤ用ビードワイヤは、カーカスコードの両端を支持し、タイヤをリムに固定する役割を有するタイヤビード部の補強材としてビードコアを構成しており、その被覆ゴム(ビードインシュレーションゴム)には硬質ゴムが用いられている。このビードワイヤは、ゴム組成物との接着性を良好にするために、通常ブロンズメッキ(Sn/Cu合金)されているが、メッキ中のSn含有率が2〜8質量%であると良好な初期接着力が得られる。
【0008】
また、本発明にける上記ビードワイヤは、ビードコア構造には特に限定されず、例えばストランドビード、6角ビード、ケーブルビード、プレートビードのいずれにも適用することができる。
前記スチールコード又はビードワイヤの表面には、ノボラック型フェノール樹脂及びノボラック型レゾルシン樹脂の少なくとも一方の樹脂をコーティングすることが必要である。
ここで、ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂は、フェノール又はレゾルシンをアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドを用いて縮合することにより得られるものであり、該樹脂は、加熱加圧条件下、例えばタイヤの加硫工程において、好ましくは後述するメチレン供与体などの硬化剤と反応して三次元架橋化ができるものである。また、このような樹脂には、モノマー成分として、フェノールやレゾルシン以外の例えばクレゾールなどのアルキルフェノール、カテコール、ハイドロキノン等のジヒドロキシベンゼンなどとの共縮合体樹脂も含まれるが、中でも、フェノール及び/又はレゾルシンをモノマー成分とするノボラック型の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、適宜一種又は二種以上を選択して用いることができる。
【0009】
また、前記ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂の軟化点は40〜150℃であることが好ましい。軟化点が40℃未満では、特に夏場にコーティングする際、ビード表面の粘着性が高くなりすぎて工場作業性を阻害することがある。150℃を超えるとタイヤ加硫時のゴムとビードワイヤ間の接着が阻害され、接着力が低下することがある。この観点から、前記樹脂の軟化点は好ましくは60〜140℃である。
また、樹脂のコーティング量は0.005〜0.30mg/cm2が好ましい。コーティング量が少なすぎても、多すぎても充分な接着力が得られないことがある。
【0010】
これらの樹脂の溶剤としては、例えばベンゼン,トルエン,キシレン,酢酸エチルエステル及びメチルエチルケトンなどが挙げられる。
本発明における複合体は、前記樹脂コーティングにより処理されたスチールコード又はビードワイヤにゴム組成物を被覆することにより得られる。例えば、カレンダーによりスチールコーティングゴムをスチールコードにコーティングすることにより、ベルトプライやカーカスプライとしての複合体を製造することができる。また、押出機によりビードインシュレーションゴムをビードワイヤにインシュレートすることにより、ビード構成部材としての複合体を製造することができる。
【0011】
前記ゴム組成物としては、通常、タイヤ製造に用いられるスチールコーティングゴム又はビードインシュレーションゴムを用いることができるが、硬化剤を配合することが好ましい。この硬化剤としては、前記ノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂との反応・硬化の役割を果たすものであり、加熱時メチレン基を供与し得る化合物であり、例えばヘキサメチレンテトラミン,多価メチロール化メラミン誘導体などがあるが、好ましくはヘキサメチレンテトラミンである。この市販品としては大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(商標)などがある。硬化剤の配合量は、ゴム成分100質量部あたり、0.5〜3.0質量部が好ましい。0.5質量部未満では添加効果が充分でなく、3.0質量部を超えるともはや増量効果が得られないことがある。
【0012】
配合されたゴム中の硬化剤は、接着プロモーターとして作用し、スチールコード又はビードワイヤに表面コーティングされた前記樹脂と反応して強固な接着力が得られる。従って、従来の接着ゴム組成物における如く、高価なフェノール系樹脂を被覆ゴムに配合する必要はないので、該樹脂の使用量を著しく少なくすることができ、しかも良好な接着性が得られるので経済的にも有利である。
さらに、本発明においては、タイヤ用ビードワイヤにノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型レゾルシン樹脂をコーティングすることが同時に防錆効果を有するので、従来、ビードワイヤの保管時になされていたクマロン樹脂の表面塗布が不要となる。しかも、本発明においては、ビードワイヤとゴムとの界面で反応した硬化樹脂は、加硫後においてもゴム中への溶解はないので、特にタイヤを長期間使用しても接着力の低下を著しく抑制することが可能となる。
【0013】
本発明における前記ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムのいずれでもよいが、合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),イソプレンゴム(IR),ブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴム,ブタジエン−アクリルニトリル共重合体ゴム(NBR),エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)及びこれらの混合物などが挙げられる。
前記ゴム組成物においては、補強性充填剤として、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。例えばカーボンブラックとしてはFEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられる。
上記以外にも、本発明におけるゴム組成物には、亜鉛華,ステアリン酸,接着促進剤,加硫促進剤,老化防止剤など、通常ゴム業界で用いられる各種成分を適宜配合することができる。
なお、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素などの不活性なガスを用いることができる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(1)ビードワイヤの引抜き試験
試作タイヤのビード部より、ゴム中の埋没長さが1cmであるサンプルを切り出し、その中の1本のビードワイヤをインストロンにより引き抜き、その際に最大となる引き抜き力を測定した。
【0015】
実施例1〜12及び比較例1
ブロンズメッキしてなる直径1.4mmのビードワイヤ表面に、ノボラック型フェノール樹脂をコーティングした。
このように表面コーティングしたビードワイヤに、押出機を用いて第1表に示すビードインシュレーションゴム組成物をインシュレートして、ストランドビード(複合体)を製造し、これをビード部材として、通常の方法によりサイズ195/70R14の乗用車用タイヤを製造した。
【0016】
【表1】
【0017】
(注)
*加硫促進剤DM:ジベンゾチアジルジサルファイド
接着性の評価のために、生産直後タイヤのビード部よりサンプルを切り出し、前記の方法により、ビードワイヤの引抜き試験を行った。また、タイヤをリム組みし、屋外に2年間放置したタイヤについて、同様の引抜き試験を行なった。結果を第2表に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
上記の結果、本発明に係る実施例1〜12のタイヤは、比較例1に比べて、2年間放置後の接着力の低下は著しく小さいものであった。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、特定のノボラック樹脂を表面コーティングしたスチールコード又はビードワイヤを用いることにより、強固な初期接着力が得られるとともに、長期間の使用においても接着力の低下を大幅に抑制し、ゴムとの良好な接着性を保持することができる。また、本発明におけるビードワイヤは、防錆性にも優れているので保管上の問題もない。従って、本発明は、特に耐久性に優れたタイヤの生産に有効に適用することができる。
Claims (10)
- ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂からなる樹脂を表面コーティングしてなるゴム物品補強用スチールコード。
- ノボラック型フェノール樹脂及び/又はノボラック型レゾルシン樹脂を表面コーティングしてなるタイヤ用ビードワイヤ。
- 樹脂の軟化点が、40〜150℃である請求項1又は2記載のスチールコード又はビードワイヤ。
- 樹脂のコーティング量が、0.005〜0.30mg/cm2である請求項1ないし3のいずれかに記載のスチールコード又はビードワイヤ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスチールコード又はビードワイヤとゴム組成物とからなる複合体。
- ゴム組成物が、前記樹脂の硬化剤を配合したものである請求項5記載の複合体。
- 硬化剤が、ヘキサメチレンテトラミンである請求項6記載の複合体。
- 硬化剤の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5〜3.0質量部である請求項6又は7記載の複合体。
- 請求項5ないし8のいずれかに記載の複合体を用いてなるタイヤ用ビード部材。
- 請求項5ないし8のいずれかに記載の複合体を用いてなるタイヤ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003093986A JP2004300608A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | スチールコード及びビードワイヤー並びにタイヤ |
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JP2003093986A JP2004300608A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | スチールコード及びビードワイヤー並びにタイヤ |
Publications (1)
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---|---|
JP2004300608A true JP2004300608A (ja) | 2004-10-28 |
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ID=33406655
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Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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